説明

樹脂封止型センサ

【課題】温度変化に起因して外装筒から封止樹脂が外れるのを防止し、耐久性を高めることができる樹脂封止型センサを提供する。
【解決手段】樹脂封止型センサ10は、金属製の外装筒15の内部に、封止樹脂14によってセンサ素子13を封止している。外装筒15は、軸方向に弾性変形可能な構造を有する。外装筒15は、周壁部23が線状部材24を螺旋状に巻回してなるコイルばねによって構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の外装筒内に封止樹脂によってセンサ素子を封止している樹脂封止型センサに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置や冷蔵庫等に使用される熱交換器や冷媒配管には、冷媒の温度を検出するための温度センサが取り付けられており、この温度センサとしては専らサーミスタが用いられている。従来のサーミスタとして、例えば図6に示すように、リード線112が接続されたサーミスタ素子113に保護樹脂114Aを塗装して硬化させ、その後、サーミスタ素子113を外装ケース115内に収容して封止樹脂114Bにより封止した樹脂封止型のものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
外装ケース115は、アルミニウム等の熱伝導率の大きい金属により形成され、軸方向の一端部が底部122によって閉鎖された有底円筒形状に形成されている。保護樹脂114Aは、サーミスタ素子113を被覆して水分の浸入を防止しており、封止樹脂114Bは、サーミスタ素子17及び保護樹脂114Aを包囲した状態で外装ケース115の内面に接着されている。そして、サーミスタ素子113は、外装ケース115の外面を被測温物に接触させることによって外装ケース115及び封止樹脂114B等を介して被測温物の温度を検出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−298002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6に示す封止樹脂形のサーミスタ110において、封止樹脂114B及び保護樹脂114A(以下、これらを「封止樹脂114B等」という)は、金属製の外装ケース115よりも線膨張係数が大きいため、検出温度の変化によって外装ケース115よりも大きく熱膨張又は熱収縮する。
しかし、封止樹脂114B等は、加熱時に外装ケース115の底部122によって軸方向一方側への熱膨張が制限され、さらに、外装筒115の周壁部123によって径外方向への熱膨張も制限されるため、外装筒115の開口115A側への熱膨張が大きくなり、封止樹脂114B等に対して当該開口115Aから抜け出す方向の大きな応力が発生する。このような応力が長期間に亘って繰り返し生じると、次第に外装筒115と封止樹脂114B等との接着力が弱まり、外装筒115から封止樹脂114B等を引き抜くような負荷がかかったときに、封止樹脂114B等が外装筒115から外れてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、温度変化に起因して外装筒から封止樹脂が外れるのを防止し、耐久性を高めることができるセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、金属製の外装筒の内部に、封止樹脂によってセンサ素子を封止している樹脂封止型センサであって、前記外装筒の周壁部が、軸方向に弾性変形可能に構成されていることを特徴とする。
本発明の樹脂封止型センサによれば、外装筒の周壁部が軸方向に弾性変形可能に構成されているので、封止樹脂が温度変化によって軸方向に熱膨張した場合であっても、これに追従して外装筒の周壁部が軸方向に伸張することによって、封止樹脂と外装筒との接着力が弱まるのを防止することができる。これにより、外装筒からの封止樹脂の外れを防止し、温度センサの耐久性を向上することが可能となる。
【0008】
(2) 上記構成において、前記外装筒の周壁部は、線状部材を螺旋状に巻回してなるコイルばねによって構成されていることが好ましい。
これによって、外装筒の周壁部を簡単且つ安価に軸方向に弾性変形可能な構造とすることができる。
【0009】
(3) 前記コイルばねにおいて、軸方向に隣接する線状部材間には隙間が形成されていることが好ましい。
このように、軸方向に隣接する線状部材間に隙間が形成されることによって、封止樹脂が軸方向に熱膨張した場合だけでなく冷却によって熱収縮した場合でも、それに追従して外装筒を収縮させることができる。
【0010】
(4) 前記コイルばねにおいて、軸方向に隣接する線状部材同士は互いに密着していてもよい。
このように、軸方向に隣接する線状部材同士が互いに密着している場合には、封止樹脂の熱膨張に追従して外装筒を軸方向に伸張させることができ、特に、加熱環境で用いられるセンサとして好適に使用することができる。また、センサの製造時に、外装筒内部へ注入された封止樹脂が線状部材間から漏れるおそれもない。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂封止型センサによれば、温度変化に起因して外装筒から封止樹脂が外れるのを防止し、耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る樹脂封止型センサの一部断面を含む側面図である。
【図2】同樹脂封止型センサの部分断面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る樹脂封止型センサの部分断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る樹脂封止型センサの側面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る樹脂封止型センサの部分断面図である。
【図6】従来技術に係る樹脂封止型センサの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る樹脂封止型センサを示す側面図である。
本実施の形態の樹脂封止型センサは温度センサ10であり、測温部11とリード線12とを備えている。測温部11は、センサ素子13と、このセンサ素子13を収容する外装筒15と、センサ素子13を被覆する被覆樹脂16と、この被覆樹脂16で被覆されたセンサ素子13を外装筒15内に封止する封止樹脂14とを備えている。リード線12は、一端部がセンサ素子13に固着されるとともに、他端部側が被覆樹脂16及び封止樹脂14から突出し、図示しない温度検出回路に接続される。
【0014】
本実施の形態の温度センサ10は、空気調和装置等に設けられた冷媒管17内を流動する冷媒18の温度を検出するため、冷媒管17の外周面に固定されたセンサホルダ19に取り付けられている。センサホルダ19は、銅等の熱伝導率の大きい金属によって有底円筒形状に形成されており、冷媒管17の外周面にろう付け等によって固着されている。温度センサ10の測温部11は、センサホルダ19の筒内に挿入された状態で、冷媒管17の外周面に近いセンサホルダ19の内周面に押し付けられるように保持ばね20によって保持されている。したがって、温度センサ10は、冷媒管17に接触したセンサホルダ19の温度を検出することで、間接的に冷媒18の温度を検出する。
【0015】
温度センサ10の外装筒15は、有底円筒形状に形成され、底部22と周壁部23とを有している。底部22及び周壁部23は、それぞれ銅、アルミニウム、ステンレス等の金属、好ましくは熱伝導率の大きい金属により形成されている。
図2は、樹脂封止型センサ(温度センサ10)の部分断面図であり、周壁部23は、金属製の線状部材24を螺旋状に巻回してなるコイルばねにより構成され、軸方向に弾性変形可能である。線状部材24は、断面が円形等で1mm程度の太さに形成され、常温かつ無負荷状態において、軸方向に隣接する線状部材24の間には隙間tが形成されている。したがって、周壁部23は、軸方向に関して伸張する方向に弾性変形可能であるとともに、隙間tの寸法分だけ収縮する方向にも弾性変形可能とされている。底部22は、周壁部23の軸方向一方の端部を閉塞することができるように円板状に形成され、当該周壁部23の端部に溶接や蝋付け等によって固着されている。
【0016】
被覆樹脂16及び封止樹脂14は、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の合成樹脂によって形成されている。被覆樹脂16は、特に防水性や防湿性に優れた合成樹脂により形成され、センサ素子13を被覆することによって水分の浸入を防いでいる。封止樹脂14は、特に外装筒15に対する接着性に優れた合成樹脂により形成され、外装筒15の内周面に強固に接着されている。なお、被覆樹脂16や封止樹脂14の材質は、防水性や防湿性、外装筒15に対する接着性を確保することができれば、特に限定されるものではない。また、封止樹脂14により、防水性や防湿性、外装筒15に対する接着性を十分に確保することができれば、被覆樹脂16を省略し、封止樹脂14だけでセンサ素子13を被覆するとともに外装筒15内に封止してもよい。
【0017】
センサ素子13は、温度によって電気抵抗が変化する特性を備えたサーミスタが用いられている。そして、リード線12を介して付与された電圧の変化を検出回路にて測定することによって温度を検出するように構成されている。センサ素子13は、被覆樹脂16によって被覆された後に外装筒15内に収容され、封止樹脂14を外装筒15内に注入して硬化させることによって、外装筒15内に封止されている。
【0018】
以上の構成において、温度センサ10の封止樹脂14は、金属製の外装筒15よりも線膨張係数がかなり大きいため、検出温度の変化によって外装筒15よりも大きく熱膨張又は熱収縮する。また、外装筒15は底部22によって軸方向一端側が閉塞されているので、封止樹脂14は加熱時に底部22側への熱膨張が制限され、その分、開口15A側へ軸方向に大きく熱膨張する。さらに、封止樹脂14は外装筒15の周壁部23によって外周が包囲されているので、この周壁部23によって径外方向への熱膨張も制限され、その分、開口15A側へさらに大きく熱膨張する。つまり、封止樹脂14には、開口15Aから抜け出す方向の大きな応力が発生し、周壁部23と封止樹脂14との接着面に大きなせん断力が作用する可能性がある。
【0019】
しかしながら、本実施の形態では、外装筒15の周壁部23は、軸方向に弾性変形可能なコイルばねによって構成されているので、封止樹脂14の熱膨張又は熱収縮に追従して軸方向に伸張又は収縮することができる。そのため、周壁部23と封止樹脂14との接着面に生じるせん断力が小さくなり、封止樹脂14と外装筒15との接着力も弱まり難くなる。したがって、外装筒15から封止樹脂14が外れるのを防止することができ、温度センサ10の耐久性を高めることが可能となる。
【0020】
なお、外装筒15の周壁部23に形成された線状部材24間の隙間tは、封止樹脂14の注入時に漏れが生じない程度の隙間とされていればよい。そして、封止樹脂14を隙間tから漏れない程度に当該隙間tに入り込ませれば、外装筒15と封止樹脂14との接着面積を増大させ、接着力を強くすることができる。また、封止樹脂14が隙間tに入り込んで食い込むことによって、外装筒15から封止樹脂14が外れるのを防止することが可能となる。
【0021】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る樹脂封止型センサの部分断面図である。本実施の形態の樹脂封止型センサ10は、外装筒15の底部22が、線状部材24を巻回することによって構成されている点で第1の実施の形態と異なっている。すなわち、周壁部23を構成する線状部材24を、軸方向の一端側において湾曲半径が徐々に小さくなるように巻回することによって周壁部23を閉じ、これを底部22としたものである。本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の作用効果を奏し、さらに、周壁部23と底部22とが線状部材24によって一体に形成されているので、底部22を別部品で製作したり、底部22と周壁部23とを接合したりする作業工程が不要となり、部品点数減及び製造工数減を図ることができる。
【0022】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る樹脂封止型センサの側面図である。本実施の形態の樹脂封止型センサ10は、外装筒15の周壁部23において、軸方向に隣接する線状部材24の間には隙間が形成されず、線状部材24が互いに密着した状態となっている。そのため、外装筒15は収縮する方向へ弾性変形はできないが、伸張する方向への弾性変形は可能となっている。したがって、専ら常温から高温域の範囲で用いられる温度センサとして好適である。また、本実施の形態では、外装筒15から封止樹脂14を注入したときに線状部材24間から漏れるおそれもない。
【0023】
図5は、本発明の第4の実施の形態に係る樹脂封止型センサの部分断面図である。本実施の形態の樹脂封止型センサは、外装筒15の周壁部23が、径方向内側に凹んだ環状の谷部23Bと径方向外側に突出した環状の山部23Cとを軸方向に交互に備えたベローズ構造に形成され、軸方向に弾性変形可能に構成されたものである。したがって、本実施の形態においても上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏する。また、凸部23Cの内側に封止樹脂14が入り込むことによって、外装筒15と封止樹脂14との接着面積が増大するので、両者の接着力を強くすることができる。また、封止樹脂14が凸部23Cの内側に入り込んで食い込むことによって外装筒15から封止樹脂14が外れるのを防止することが可能となる。
【0024】
本発明は、上記実施の形態に限定されることなく適宜設計変更可能である。例えば、上記実施の形態においては、周壁部23の全体がコイルばねによって構成されているが、軸方向の一部のみをコイルばねによって構成してもよい。
また、上記実施の形態では、外装筒15を軸方向に弾性変形可能にする構造としてコイルばねやベローズ構造を採用しているが、本発明は、これら以外の他の構造を採用することも可能である。
本発明は、封止樹脂14によって外装筒15内にセンサ素子13を封止したものであれば温度センサ10に限定されず、例えば、LEDやフォトダイオード等の光学素子を用いて液体の表面位置を検出する液面センサ等、他のセンサにも適用することができる。特に、本発明は、温度変化が激しい環境で使用されるセンサに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
10 温度センサ
11 測温部
13 センサ素子
14 封止樹脂
15 外装筒
22 底部
23 周壁部
24 線状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の外装筒(15)の内部に、封止樹脂(14)によってセンサ素子(13)を封止している樹脂封止型センサであって、
前記外装筒(15)の周壁部(23)が、軸方向に弾性変形可能に構成されていることを特徴とする樹脂封止型センサ。
【請求項2】
前記外装筒(15)の周壁部(23)が、線状部材(24)を螺旋状に巻回してなるコイルばねによって構成されている請求項1に記載の樹脂封止型センサ。
【請求項3】
前記コイルばねにおいて、軸方向に隣接する線状部材(24)間に隙間(t)が形成されている請求項2に記載の樹脂封止型センサ。
【請求項4】
前記コイルばねにおいて、軸方向に隣接する線状部材(24)同士が互いに密着している請求項2に記載の樹脂封止型センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−7747(P2011−7747A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153944(P2009−153944)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】