樹脂封止型半導体装置の製造方法
【課題】トランスファモールド法で半導体チップを封止するモールド樹脂を形成する樹脂封止型半導体装置の製造方法において、モールドゲート部での樹脂の流動性を確保しつつ、そこに形成される樹脂を何ら不具合が発生することなく下地層から選択的に除去する方法を提供する。
【解決手段】半導体チップ30が実装され、一端側に樹脂を流入させるためのモールドゲート部MGが設けられて、その上に金属パターン層20が露出して設けられた配線基板10を用意し、配線基板10にモールド型50を設置して半導体チップ30の周りにキャビティCを設け、モールドゲート部MG上に樹脂流入部Rを設ける。さらに、樹脂流入部Rを通して樹脂をキャビティC内に充填して半導体チップ30を封止するモールド樹脂60を形成した後に、モールドゲート部MG上に形成されたゲート樹脂部62を折り取ることによって金属パターン層20から選択的に除去する。
【解決手段】半導体チップ30が実装され、一端側に樹脂を流入させるためのモールドゲート部MGが設けられて、その上に金属パターン層20が露出して設けられた配線基板10を用意し、配線基板10にモールド型50を設置して半導体チップ30の周りにキャビティCを設け、モールドゲート部MG上に樹脂流入部Rを設ける。さらに、樹脂流入部Rを通して樹脂をキャビティC内に充填して半導体チップ30を封止するモールド樹脂60を形成した後に、モールドゲート部MG上に形成されたゲート樹脂部62を折り取ることによって金属パターン層20から選択的に除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂封止型半導体装置の製造方法に係り、さらに詳しくは、トランスファモールド法で半導体チップを封止するモールド樹脂を形成することを含む樹脂封止型半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線層を備えた配線基板の上に半導体チップが実装されて構成される半導体装置には、半導体チップがモールド樹脂で封止された構造の樹脂封止型半導体装置がある。樹脂封止型半導体装置では、半導体チップがモールド樹脂で封止されることによって、半導体チップ及びそれが接続される配線基板の接続部が保護されている。
【0003】
半導体チップをモールド樹脂で封止する方法としては、モールド型を用いたトランスファモールド法が一般的に採用される。トランスファモールド法では、半導体チップに対応する部分に凹部を備えたモールド型で配線基板及び半導体チップを挟んで半導体チップの回りにキャビティを構成し、溶融した樹脂を配線基板の端部に設けられたモールドゲート部上からキャビティへと加圧移動させる。そして、加熱することによってキャビティ内の樹脂を硬化させることにより半導体チップがモールド樹脂で封止される。
【0004】
そのようなトランスファモールド法に関連する技術としては、特許文献1には、配線基板上にワイヤボンディングで接続されて実装された複数の半導体チップを一括モールディング方式によってモールド樹脂で封止した後に、配線基板を切断して個々の半導体装置を得ることが記載されている。
【特許文献1】特開2002−343818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したトランスファモールド法では、配線基板のモールドゲート部上に、モールド樹脂に繋がる不要なゲート樹脂部が形成されて残るので、そのゲート樹脂部を除去する必要がある。ゲート樹脂部を除去する方法としては、モールド型を取り外した後に、ゲート樹脂部を折り取る方法がある。モールドゲート部上のゲート樹脂部を除去することを一般的にゲートブレイクと呼ぶ。
【0006】
図1には、モールド樹脂が形成される前の配線基板及び半導体チップの様子が示されている。図1に示すように、配線層120を備えた配線基板100の上にソルダレジスト200が形成され、その実装領域上に固着された半導体チップ300がワイヤ300aによって配線基板100の配線層120の接続部に接続されている。そして、配線基板100の一端側にはモールドゲート部MGが設けられており、モールドゲート部MGには樹脂が半導体チップ300側にスムーズに流入するように、配線層120と同時に形成された金属層400が一体的に設けられている。
【0007】
図2には、半導体チップ300の周りにモールド樹脂500を形成し、上記したような方法でモールドゲート部MGのゲート樹脂部を折り取って除去した後のモールドゲート部MGの様子が示されている。配線基板100のモールドゲート部MGの金属層400は樹脂を半導体チップ300側にスムーズに流入させることはできるものの、モールドゲート部MGの全体に金属層400が配置されているため、ゲート樹脂部は金属層200と密着性が高い状態で硬化して残される。
【0008】
このため、図2に示すように、ゲート樹脂部を折り取って除去する際に、その下の金属層400が引っ張られて同時に剥がれてしまう問題がある。また、モールドゲート部MGに、モールド樹脂500に繋がる樹脂が除去しきれずに残ってしまう場合がある。
【0009】
モールドゲート部MGの金属層400に剥がれが発生すると、その後の配線基板100の搬送においてトラブルが発生しやすくなると共に、半導体チップ300に関係をもたせた配線層120やソルダレジスト200などにダメージ(傷やクラックなど)が発生しやすくなる。
【0010】
本発明は以上の課題を鑑みて創作されたものであり、トランスファモールド法で半導体チップを封止するモールド樹脂を形成する樹脂封止型半導体装置の製造方法において、モールドゲート部での樹脂の流動性を確保しつつ、そこに形成される樹脂を何ら不具合が発生することなく下地層から選択的に除去する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は樹脂封止型半導体装置の製造方法に係り、実装領域に半導体チップが実装され、一端側に樹脂を前記半導体チップの周りに流入させるためのモールドゲート部が設けられた配線基板であって、前記モールドゲート部に抜きパターンを内部にもつ金属パターン層が露出して設けられた前記配線基板を用意する工程と、前記配線基板にモールド型を設置することにより、前記半導体チップの周りにキャビティを設けると共に、モールドゲート部の前記金属パターン層の上に前記キャビティに繋がる樹脂流入部を設ける工程と、前記モールドゲート部上の前記樹脂流入部を通して前記樹脂を前記キャビティ内に充填して前記半導体チップを封止するモールド樹脂を形成する工程と、前記樹脂流入部に形成されたゲート樹脂部を前記金属パターン層に対して選択的に除去する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明では、まず、実装領域に半導体チップが実装された配線基板が用意される。この配線基板の一端側には半導体チップの周りに樹脂を流入するためのモールドゲート部が設けられており、モールドゲート部には内部に抜きパターンが設けられて構成される金属パターン層が配置されている。
【0013】
そして、配線基板にモールド型が配置されて、半導体チップの周りに配置されるキャビティとそれに繋がってモールドゲート部上に配置される樹脂流入部とが設けられる。さらに、樹脂がモールドゲート部の樹脂流入部を通過してキャビティに充填されて、硬化することによって半導体チップを封止するモールド樹脂が形成される。このとき、モールドゲート部には金属パターン層(好適には最上が金層)が配置されているので、樹脂がスムーズにモールドゲート部を通過してキャビティに流れ込んでいく。このとき同時に、モールドゲート部上の樹脂流入部にも硬化したゲート樹脂部が形成される。
【0014】
さらに、モールド型が取り外された後に、モールドゲート部上のゲート樹脂部が折り取られて除去される。本発明では、配線基板のモールドゲート部に金属パターン層を配置することにより、その全面に金属層を配置する場合よりも樹脂との接触面積を少なくして接着強度が弱くなるようにしている。このため、ゲート樹脂部を除去する際に、ゲート樹脂部が金属パターン層から容易に除去されて金属パターン層の剥がれが防止される。その結果、半導体チップに関係をもたせた配線基板の配線層などにダメージが発生することが防止される。
【0015】
このように、本発明では、トランスファモールド法において、モールドゲート部における樹脂の流動性と剥離性を両立させることができるので、信頼性の高い樹脂封止型半導体装置を歩留りよく製造することができる。
【0016】
上記した発明の好適な態様では、モールドゲート部の金属パターン層は、複数の島状パターンが連結部によって相互に繋がって構成される。
【0017】
また、上記した発明の好適な態様では、金属パターン層の抜きパターンを含む全体の配置面積を100%とするとき、抜きパターンのトータル面積は5乃至20%に設定される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明では、信頼性の高い樹脂封止型半導体装置を高い歩留りで製造できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0020】
図3は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法で使用される配線基板の構成を模式的に示す平面図である。図3に示すように、本実施形態で使用される配線基板10では、樹脂などの絶縁材料かからなるコア基板12の上に接続部25を備えた配線層(不図示)が形成されている。そして、配線基板10の最上には、配線層の接続部25上に第1開口部14xが設けられたソルダレジスト14が形成されており、ソルダレジスト14には半導体チップが実装される複数の実装領域A(破線で囲まれた領域)が画定されている。
【0021】
また、配線基板10の一端側にソルダレジスト14の第2開口部14yが設けられており、その第2開口部14yが樹脂を実装領域A側に流入するためのモールドゲート部MGとなっている。さらに、モールドゲート部MGの入口(配線基板10の縁部)には所定の間隔を空けてソルダレジスト部14aが設けられて、各ソルダレジスト部14aの間の領域にモールドゲート部MGの入口が分割されて配置されている。
【0022】
さらに、モールドゲート部MGには、金属パターン層20が露出して配置されている。ここで、図4(a)及び(b)を参照して、モールドゲート部MGの金属パターン層20について詳しく説明する。図4(a)は図3のモールドゲート部MGのBで示される領域の部分拡大図、図4(b)は図4(a)のII−IIに沿った断面図である。
【0023】
図4(a)及び(b)に示すように、モールドゲート部MGでは、コア基板12の上に内部に抜きパターン20xが設けられた金属パターン層20が配置されている。金属パターン層20は複数の四角状の島状パターン20aとそれらを相互に繋ぐ連結部20bとによって構成されている。また、図4(b)に示すように、金属パターン層20は、銅(Cu)層パターン16の上にニッケル(Ni)/金(Au)層18が被覆されて構成され、最上に金層が露出した状態となっている。
【0024】
後述する製造方法で説明するように、樹脂がモールドゲート部MGを通過して実装領域A上に実装される半導体チップの周りに流入されて半導体チップを封止するモールド樹脂が形成される。このため、本実施形態では、モールドゲート部MGには樹脂の十分な流動性を確保できる程度に金属パターン層20が設けられている。金属パターン層20の材料としては各種の金属を使用できるが、樹脂の流動性をより安定させるという観点からは金属パターン層20の最上が金層であることが好ましい。
【0025】
さらに、半導体チップを封止するモールド樹脂を形成する際にモールドゲート部MGの金属パターン層20上にも硬化したゲート樹脂部が形成される。このため、本実施形態では、そのゲート樹脂部を金属パターン層20から選択的に除去するために、モールドゲート部MGに内部に所要の抜きパターン20xをもつ金属パターン層20を設けることにより、ゲート樹脂部と金属パターン層20との接触面積が少なくなるようにしている。
【0026】
つまり、本実施形態では、モールドゲート部MGにパターン化された金属パターン層20を配置することにより、樹脂の十分な流動性を確保しつつ、硬化された樹脂との接着強度が弱くなるようにしている。
【0027】
具体的には、モールドゲート部MGに配置された金属パターン層20の抜きパターンを含む全体の配置面積を100%とすると、抜きパターンのトータル面積は5〜20%(好適には10〜20%(例えば13.5%))に設定される。
【0028】
本願発明者の実験によれば、抜きパターン20xのトータル面積を5%未満とする場合は、金属パターン層20とゲート樹脂部との接触面積が比較的大きくなるので、ゲート樹脂部を除去した後に、金属パターン層20に剥がれやふくれが確認された。逆に、抜きパターン20xのトータル面積が20%を越える場合は、金属パターン層20とゲート樹脂部との接触面積が比較的小さくなって金属パターン層20に剥がれやふくれは発生しないが、樹脂を流入する際の流動性が悪くなることが確認された。
【0029】
金属パターン層20のパターン形状としては、図4(a)の例以外にも各種のパターン形状を採用できる。本実施形態では、残しパターン同士が繋がった状態で抜きパターンが形成された形状が好ましく、例えば、図5に示すように、複数の四角状の抜きパターン20xが規則的に配置されて画定される格子状の金属パターン層20を採用してもよい。
【0030】
次に、本実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法について説明する。図6〜図12は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図、図13は同じく樹脂封止型半導体装置の一例を示す断面図である。
【0031】
まず、図3のI−Iに沿った断面図である図6を参照しながら配線基板10の断面からみた配線構造について説明する。図6に示すように、配線基板10のコア基板12にはスルーホール12xが設けられており、スルーホール12xの内壁には銅からなるスルーホールめっき層22が形成されている。また、コア基板12の両面側にはスルーホールめっき層22を介して相互接続される銅からなる配線層24がそれぞれ形成されている。スルーホール12xの孔には樹脂体11が充填されている。
【0032】
また、コア基板12の両面側には、配線層24の上に第1開口部14xが設けられたソルダレジスト14がそれぞれ形成されており、その第1開口部14x内にNi/Au層からなる接続部25が形成されている。そして、前述したように、配線基板10のコア基板12の一端側にはソルダレジスト14の第2開口部14yが設けられてモールドゲート部MGが配置されている。モールドゲート部MGには、銅層パターン16の上にNi/Au層18が順に被覆されて構成される金属パターン層20が配置されている。
【0033】
モールドゲート部MGの銅層パターン16は配線基板10の配線層24と同時に形成される。そして、モールドゲート部MGの銅層パターン16及び配線層24はめっき給電ライン(不図示)に接続されており、モールドゲート部MGのNi/Au層18は、ソルダレジスト14が形成された後に、配線層24の接続部25(Ni/Au層)と同時に電解めっきによって形成される。
【0034】
なお、前述した図4(a)及び図5の例では、めっき給電経路を確保する都合上、金属パターン層20は一体的に繋がって形成されているが、無電解めっきで銅層パターン16の上にNi/Au層18を形成する場合やNi/Au層18を省略する場合は、図4(a)において島状パターン20aを相互に分離して形成してもよい。
【0035】
本実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法では、まず、上記したようなモールドゲート部MGに金属パターン層20が設けられた配線基板10を用意する。次いで、図7に示すように、素子形成面が上側になるように半導体チップ30をダイアタッチ材32によってソルダレジスト14の実装領域A(図3参照)に固着する。続いて、ワイヤボンディング法により、半導体チップ30の接続電極(不図示)と配線基板10の配線層24の接続部25とをワイヤ34によって接続する。前述した図3のソルダレジスト14の複数の実装領域Aに半導体チップ30がそれぞれ同様に実装される。
【0036】
次いで、トランスファモールド法により、半導体チップ30を封止するモールド樹脂を形成する。すなわち、図8に示すように、まず、下型51及び上型53を備えたモールド型50を用意する。そして、下型51の上に図7の半導体チップ30が実装された配線基板10を配置する。さらに、下面側に第1凹部53xと第2凹部53yとを備えた上型53を配線基板10の上に配置する。
【0037】
このようにして、配線基板10を下型51と上型53とによって挟むことにより、上型53の第1凹部53xとモールドゲート部MGとによって樹脂流入部Rが構成され、上型53の第2凹部53yと半導体チップ30及び配線基板10とよってモールド樹脂が充填されるキャビティCが構成される。さらに、樹脂流入部RとキャビティCとの間には、上型53に設けられた突出部53zによって樹脂を折り取るための折取部Bが構成される。なお、モールド型50によって前述した図3の複数の実装領域Aに実装された各半導体チップ30の周りに相互に連通するキャビティCがそれぞれ構成される。
【0038】
次いで、図9に示すように、モールド型50に繋がって下側に配置されたポット(不図示)に投入された円筒状の熱硬化樹脂(エポキシ樹脂など)からなる樹脂タブレットをプランジャ(不図示)で押し上げることにより、溶融された樹脂をモールドゲート部MG上の樹脂流入部R及び折取部Bを通してキャビティCに流し込む。このとき、配線基板10のモールドゲート部MGには、最上がAu層からなる金属パターン層20が配置されているので、樹脂がモールドゲート部MGをスムーズに通過してキャビティCに流れ込んでいく。
【0039】
さらに、キャビティCに押し込まれた樹脂を熱処理して硬化させることにより、半導体チップ30の周りのキャビティC内に半導体チップ30を封止するモールド樹脂60を形成する。このとき同時に、モールドゲート部MG上の樹脂流入部R及び折取部Bにも硬化したゲート樹脂部62が形成される。
【0040】
次いで、図10に示すように、上型53を取り外してモールド樹脂60及ゲート樹脂部62を露出させた後に、モールドゲートMG部上のゲート樹脂部62を折取部Bで折り取ってモールド樹脂60から切り離す。ゲート樹脂部62の折取部Bは薄膜で形成されるためゲート樹脂部62を折取部Bで容易に折り取ることができる。
【0041】
本実施形態では、前述したように、配線基板10のモールドゲート部MGに配置された金属パターン層20は、内部に抜きパターン20xが設けられることでゲート樹脂部62との接触面積を少なくして接着強度が弱くなるようにしている。
【0042】
このため、ゲート樹脂部62を折り取って除去する際に、ゲート樹脂部62は金属パターン層20から容易に剥離される。従って、金属パターン層20の剥がれの発生が防止されると共に、モールド樹脂60に繋がってゲート樹脂部62が中途半端に残ることもない。このようにして、モールドゲート部MG上のゲート樹脂部62が除去されてゲートブレイクが完了し、半導体チップ30、ワイヤ34及び配線層24の接続部25を封止するモールド樹脂60が画定されて残される。
【0043】
続いて、図11に示すように、下型51が配線基板10から取り外される。さらに、図12に示すように、配線基板10の下面側(半導体チップ30の実装面と反対側)の配線層24の接続部25にはんだボールを搭載するなどして外部接続端子64を形成する。さらに、外部接続端子64を設ける前又は後に、モールドゲート部MGが分離された状態で個々の半導体装置が得られるように配線基板10が切断される。これにより、図13に示すように、本実施形態に係るBGA型の樹脂封止型半導体装置1が得られる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法では、配線基板10のモールドゲート部MGに金属パターン層20を配置することで、樹脂の流動性を確保しつつ、モールドゲート部MGに形成されるゲート樹脂部62と金属パターン層20との接触面積を少なくしてそれらの接着強度が弱くなるようにしている。
【0045】
これにより、ゲート樹脂部62を除去する際に、モールドゲート部MGの金属パターン層20に剥がれが発生したり、それによって半導体チップ30に関係をもたせた配線層24やソルダレジスト14などにダメージが生じたりすることが防止される。その結果、信頼性の高い樹脂封止型半導体装置を高い歩留りで製造できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1はトランスファモールド法におけるモールド樹脂が形成される前の半導体チップが実装された配線基板の様子を示す断面図である。
【図2】図2はトランスファモールド法におけるモールドゲート部の樹脂を除去する際の問題点を示す平面図である。
【図3】図3は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法で使用される配線基板を示す平面図である。
【図4】図4(a)は図3の配線基板のモールドゲート部の金属パターン層を示す部分拡大平面図、図4(b)は図4(a)のII−IIに沿った断面図である。
【図5】図5は図3の配線基板のモールドゲート部の変形例の金属パターン層を示す部分拡大平面図である。
【図6】図6は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)であり、図3のI−Iに沿った断面図に相当する。
【図7】図7は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【図8】図8は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【図9】図9は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【図10】図10は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【図11】図11は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【図12】図12は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
【図13】図13は本発明の実施形態に係る樹脂封止型半導体装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…樹脂封止型半導体装置、10…配線基板、11…樹脂体、12…コア基板、12x…スルーホール、14…ソルダレジスト、14x,14y…開口部、16…銅層パターン、18…Ni/Au層、20…金属パターン層、20a…島状パターン、20b…連結部、20x…抜きパターン、22…スルーホールめっき層、24…配線層、25…接続部、30…半導体チップ、32…ダイアタッチ材、34…ワイヤ、50…モールド型、51…下型、53…上型、53x…第1凹部、53y…第2凹部、53z…突出部、60…モールド樹脂、62…ゲート樹脂部、64…外部接続端子、MG…モールドゲート部、B…折取部、C…キャビティ、R…樹脂流入部。
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂封止型半導体装置の製造方法に係り、さらに詳しくは、トランスファモールド法で半導体チップを封止するモールド樹脂を形成することを含む樹脂封止型半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線層を備えた配線基板の上に半導体チップが実装されて構成される半導体装置には、半導体チップがモールド樹脂で封止された構造の樹脂封止型半導体装置がある。樹脂封止型半導体装置では、半導体チップがモールド樹脂で封止されることによって、半導体チップ及びそれが接続される配線基板の接続部が保護されている。
【0003】
半導体チップをモールド樹脂で封止する方法としては、モールド型を用いたトランスファモールド法が一般的に採用される。トランスファモールド法では、半導体チップに対応する部分に凹部を備えたモールド型で配線基板及び半導体チップを挟んで半導体チップの回りにキャビティを構成し、溶融した樹脂を配線基板の端部に設けられたモールドゲート部上からキャビティへと加圧移動させる。そして、加熱することによってキャビティ内の樹脂を硬化させることにより半導体チップがモールド樹脂で封止される。
【0004】
そのようなトランスファモールド法に関連する技術としては、特許文献1には、配線基板上にワイヤボンディングで接続されて実装された複数の半導体チップを一括モールディング方式によってモールド樹脂で封止した後に、配線基板を切断して個々の半導体装置を得ることが記載されている。
【特許文献1】特開2002−343818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したトランスファモールド法では、配線基板のモールドゲート部上に、モールド樹脂に繋がる不要なゲート樹脂部が形成されて残るので、そのゲート樹脂部を除去する必要がある。ゲート樹脂部を除去する方法としては、モールド型を取り外した後に、ゲート樹脂部を折り取る方法がある。モールドゲート部上のゲート樹脂部を除去することを一般的にゲートブレイクと呼ぶ。
【0006】
図1には、モールド樹脂が形成される前の配線基板及び半導体チップの様子が示されている。図1に示すように、配線層120を備えた配線基板100の上にソルダレジスト200が形成され、その実装領域上に固着された半導体チップ300がワイヤ300aによって配線基板100の配線層120の接続部に接続されている。そして、配線基板100の一端側にはモールドゲート部MGが設けられており、モールドゲート部MGには樹脂が半導体チップ300側にスムーズに流入するように、配線層120と同時に形成された金属層400が一体的に設けられている。
【0007】
図2には、半導体チップ300の周りにモールド樹脂500を形成し、上記したような方法でモールドゲート部MGのゲート樹脂部を折り取って除去した後のモールドゲート部MGの様子が示されている。配線基板100のモールドゲート部MGの金属層400は樹脂を半導体チップ300側にスムーズに流入させることはできるものの、モールドゲート部MGの全体に金属層400が配置されているため、ゲート樹脂部は金属層200と密着性が高い状態で硬化して残される。
【0008】
このため、図2に示すように、ゲート樹脂部を折り取って除去する際に、その下の金属層400が引っ張られて同時に剥がれてしまう問題がある。また、モールドゲート部MGに、モールド樹脂500に繋がる樹脂が除去しきれずに残ってしまう場合がある。
【0009】
モールドゲート部MGの金属層400に剥がれが発生すると、その後の配線基板100の搬送においてトラブルが発生しやすくなると共に、半導体チップ300に関係をもたせた配線層120やソルダレジスト200などにダメージ(傷やクラックなど)が発生しやすくなる。
【0010】
本発明は以上の課題を鑑みて創作されたものであり、トランスファモールド法で半導体チップを封止するモールド樹脂を形成する樹脂封止型半導体装置の製造方法において、モールドゲート部での樹脂の流動性を確保しつつ、そこに形成される樹脂を何ら不具合が発生することなく下地層から選択的に除去する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は樹脂封止型半導体装置の製造方法に係り、実装領域に半導体チップが実装され、一端側に樹脂を前記半導体チップの周りに流入させるためのモールドゲート部が設けられた配線基板であって、前記モールドゲート部に抜きパターンを内部にもつ金属パターン層が露出して設けられた前記配線基板を用意する工程と、前記配線基板にモールド型を設置することにより、前記半導体チップの周りにキャビティを設けると共に、モールドゲート部の前記金属パターン層の上に前記キャビティに繋がる樹脂流入部を設ける工程と、前記モールドゲート部上の前記樹脂流入部を通して前記樹脂を前記キャビティ内に充填して前記半導体チップを封止するモールド樹脂を形成する工程と、前記樹脂流入部に形成されたゲート樹脂部を前記金属パターン層に対して選択的に除去する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明では、まず、実装領域に半導体チップが実装された配線基板が用意される。この配線基板の一端側には半導体チップの周りに樹脂を流入するためのモールドゲート部が設けられており、モールドゲート部には内部に抜きパターンが設けられて構成される金属パターン層が配置されている。
【0013】
そして、配線基板にモールド型が配置されて、半導体チップの周りに配置されるキャビティとそれに繋がってモールドゲート部上に配置される樹脂流入部とが設けられる。さらに、樹脂がモールドゲート部の樹脂流入部を通過してキャビティに充填されて、硬化することによって半導体チップを封止するモールド樹脂が形成される。このとき、モールドゲート部には金属パターン層(好適には最上が金層)が配置されているので、樹脂がスムーズにモールドゲート部を通過してキャビティに流れ込んでいく。このとき同時に、モールドゲート部上の樹脂流入部にも硬化したゲート樹脂部が形成される。
【0014】
さらに、モールド型が取り外された後に、モールドゲート部上のゲート樹脂部が折り取られて除去される。本発明では、配線基板のモールドゲート部に金属パターン層を配置することにより、その全面に金属層を配置する場合よりも樹脂との接触面積を少なくして接着強度が弱くなるようにしている。このため、ゲート樹脂部を除去する際に、ゲート樹脂部が金属パターン層から容易に除去されて金属パターン層の剥がれが防止される。その結果、半導体チップに関係をもたせた配線基板の配線層などにダメージが発生することが防止される。
【0015】
このように、本発明では、トランスファモールド法において、モールドゲート部における樹脂の流動性と剥離性を両立させることができるので、信頼性の高い樹脂封止型半導体装置を歩留りよく製造することができる。
【0016】
上記した発明の好適な態様では、モールドゲート部の金属パターン層は、複数の島状パターンが連結部によって相互に繋がって構成される。
【0017】
また、上記した発明の好適な態様では、金属パターン層の抜きパターンを含む全体の配置面積を100%とするとき、抜きパターンのトータル面積は5乃至20%に設定される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明では、信頼性の高い樹脂封止型半導体装置を高い歩留りで製造できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0020】
図3は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法で使用される配線基板の構成を模式的に示す平面図である。図3に示すように、本実施形態で使用される配線基板10では、樹脂などの絶縁材料かからなるコア基板12の上に接続部25を備えた配線層(不図示)が形成されている。そして、配線基板10の最上には、配線層の接続部25上に第1開口部14xが設けられたソルダレジスト14が形成されており、ソルダレジスト14には半導体チップが実装される複数の実装領域A(破線で囲まれた領域)が画定されている。
【0021】
また、配線基板10の一端側にソルダレジスト14の第2開口部14yが設けられており、その第2開口部14yが樹脂を実装領域A側に流入するためのモールドゲート部MGとなっている。さらに、モールドゲート部MGの入口(配線基板10の縁部)には所定の間隔を空けてソルダレジスト部14aが設けられて、各ソルダレジスト部14aの間の領域にモールドゲート部MGの入口が分割されて配置されている。
【0022】
さらに、モールドゲート部MGには、金属パターン層20が露出して配置されている。ここで、図4(a)及び(b)を参照して、モールドゲート部MGの金属パターン層20について詳しく説明する。図4(a)は図3のモールドゲート部MGのBで示される領域の部分拡大図、図4(b)は図4(a)のII−IIに沿った断面図である。
【0023】
図4(a)及び(b)に示すように、モールドゲート部MGでは、コア基板12の上に内部に抜きパターン20xが設けられた金属パターン層20が配置されている。金属パターン層20は複数の四角状の島状パターン20aとそれらを相互に繋ぐ連結部20bとによって構成されている。また、図4(b)に示すように、金属パターン層20は、銅(Cu)層パターン16の上にニッケル(Ni)/金(Au)層18が被覆されて構成され、最上に金層が露出した状態となっている。
【0024】
後述する製造方法で説明するように、樹脂がモールドゲート部MGを通過して実装領域A上に実装される半導体チップの周りに流入されて半導体チップを封止するモールド樹脂が形成される。このため、本実施形態では、モールドゲート部MGには樹脂の十分な流動性を確保できる程度に金属パターン層20が設けられている。金属パターン層20の材料としては各種の金属を使用できるが、樹脂の流動性をより安定させるという観点からは金属パターン層20の最上が金層であることが好ましい。
【0025】
さらに、半導体チップを封止するモールド樹脂を形成する際にモールドゲート部MGの金属パターン層20上にも硬化したゲート樹脂部が形成される。このため、本実施形態では、そのゲート樹脂部を金属パターン層20から選択的に除去するために、モールドゲート部MGに内部に所要の抜きパターン20xをもつ金属パターン層20を設けることにより、ゲート樹脂部と金属パターン層20との接触面積が少なくなるようにしている。
【0026】
つまり、本実施形態では、モールドゲート部MGにパターン化された金属パターン層20を配置することにより、樹脂の十分な流動性を確保しつつ、硬化された樹脂との接着強度が弱くなるようにしている。
【0027】
具体的には、モールドゲート部MGに配置された金属パターン層20の抜きパターンを含む全体の配置面積を100%とすると、抜きパターンのトータル面積は5〜20%(好適には10〜20%(例えば13.5%))に設定される。
【0028】
本願発明者の実験によれば、抜きパターン20xのトータル面積を5%未満とする場合は、金属パターン層20とゲート樹脂部との接触面積が比較的大きくなるので、ゲート樹脂部を除去した後に、金属パターン層20に剥がれやふくれが確認された。逆に、抜きパターン20xのトータル面積が20%を越える場合は、金属パターン層20とゲート樹脂部との接触面積が比較的小さくなって金属パターン層20に剥がれやふくれは発生しないが、樹脂を流入する際の流動性が悪くなることが確認された。
【0029】
金属パターン層20のパターン形状としては、図4(a)の例以外にも各種のパターン形状を採用できる。本実施形態では、残しパターン同士が繋がった状態で抜きパターンが形成された形状が好ましく、例えば、図5に示すように、複数の四角状の抜きパターン20xが規則的に配置されて画定される格子状の金属パターン層20を採用してもよい。
【0030】
次に、本実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法について説明する。図6〜図12は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図、図13は同じく樹脂封止型半導体装置の一例を示す断面図である。
【0031】
まず、図3のI−Iに沿った断面図である図6を参照しながら配線基板10の断面からみた配線構造について説明する。図6に示すように、配線基板10のコア基板12にはスルーホール12xが設けられており、スルーホール12xの内壁には銅からなるスルーホールめっき層22が形成されている。また、コア基板12の両面側にはスルーホールめっき層22を介して相互接続される銅からなる配線層24がそれぞれ形成されている。スルーホール12xの孔には樹脂体11が充填されている。
【0032】
また、コア基板12の両面側には、配線層24の上に第1開口部14xが設けられたソルダレジスト14がそれぞれ形成されており、その第1開口部14x内にNi/Au層からなる接続部25が形成されている。そして、前述したように、配線基板10のコア基板12の一端側にはソルダレジスト14の第2開口部14yが設けられてモールドゲート部MGが配置されている。モールドゲート部MGには、銅層パターン16の上にNi/Au層18が順に被覆されて構成される金属パターン層20が配置されている。
【0033】
モールドゲート部MGの銅層パターン16は配線基板10の配線層24と同時に形成される。そして、モールドゲート部MGの銅層パターン16及び配線層24はめっき給電ライン(不図示)に接続されており、モールドゲート部MGのNi/Au層18は、ソルダレジスト14が形成された後に、配線層24の接続部25(Ni/Au層)と同時に電解めっきによって形成される。
【0034】
なお、前述した図4(a)及び図5の例では、めっき給電経路を確保する都合上、金属パターン層20は一体的に繋がって形成されているが、無電解めっきで銅層パターン16の上にNi/Au層18を形成する場合やNi/Au層18を省略する場合は、図4(a)において島状パターン20aを相互に分離して形成してもよい。
【0035】
本実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法では、まず、上記したようなモールドゲート部MGに金属パターン層20が設けられた配線基板10を用意する。次いで、図7に示すように、素子形成面が上側になるように半導体チップ30をダイアタッチ材32によってソルダレジスト14の実装領域A(図3参照)に固着する。続いて、ワイヤボンディング法により、半導体チップ30の接続電極(不図示)と配線基板10の配線層24の接続部25とをワイヤ34によって接続する。前述した図3のソルダレジスト14の複数の実装領域Aに半導体チップ30がそれぞれ同様に実装される。
【0036】
次いで、トランスファモールド法により、半導体チップ30を封止するモールド樹脂を形成する。すなわち、図8に示すように、まず、下型51及び上型53を備えたモールド型50を用意する。そして、下型51の上に図7の半導体チップ30が実装された配線基板10を配置する。さらに、下面側に第1凹部53xと第2凹部53yとを備えた上型53を配線基板10の上に配置する。
【0037】
このようにして、配線基板10を下型51と上型53とによって挟むことにより、上型53の第1凹部53xとモールドゲート部MGとによって樹脂流入部Rが構成され、上型53の第2凹部53yと半導体チップ30及び配線基板10とよってモールド樹脂が充填されるキャビティCが構成される。さらに、樹脂流入部RとキャビティCとの間には、上型53に設けられた突出部53zによって樹脂を折り取るための折取部Bが構成される。なお、モールド型50によって前述した図3の複数の実装領域Aに実装された各半導体チップ30の周りに相互に連通するキャビティCがそれぞれ構成される。
【0038】
次いで、図9に示すように、モールド型50に繋がって下側に配置されたポット(不図示)に投入された円筒状の熱硬化樹脂(エポキシ樹脂など)からなる樹脂タブレットをプランジャ(不図示)で押し上げることにより、溶融された樹脂をモールドゲート部MG上の樹脂流入部R及び折取部Bを通してキャビティCに流し込む。このとき、配線基板10のモールドゲート部MGには、最上がAu層からなる金属パターン層20が配置されているので、樹脂がモールドゲート部MGをスムーズに通過してキャビティCに流れ込んでいく。
【0039】
さらに、キャビティCに押し込まれた樹脂を熱処理して硬化させることにより、半導体チップ30の周りのキャビティC内に半導体チップ30を封止するモールド樹脂60を形成する。このとき同時に、モールドゲート部MG上の樹脂流入部R及び折取部Bにも硬化したゲート樹脂部62が形成される。
【0040】
次いで、図10に示すように、上型53を取り外してモールド樹脂60及ゲート樹脂部62を露出させた後に、モールドゲートMG部上のゲート樹脂部62を折取部Bで折り取ってモールド樹脂60から切り離す。ゲート樹脂部62の折取部Bは薄膜で形成されるためゲート樹脂部62を折取部Bで容易に折り取ることができる。
【0041】
本実施形態では、前述したように、配線基板10のモールドゲート部MGに配置された金属パターン層20は、内部に抜きパターン20xが設けられることでゲート樹脂部62との接触面積を少なくして接着強度が弱くなるようにしている。
【0042】
このため、ゲート樹脂部62を折り取って除去する際に、ゲート樹脂部62は金属パターン層20から容易に剥離される。従って、金属パターン層20の剥がれの発生が防止されると共に、モールド樹脂60に繋がってゲート樹脂部62が中途半端に残ることもない。このようにして、モールドゲート部MG上のゲート樹脂部62が除去されてゲートブレイクが完了し、半導体チップ30、ワイヤ34及び配線層24の接続部25を封止するモールド樹脂60が画定されて残される。
【0043】
続いて、図11に示すように、下型51が配線基板10から取り外される。さらに、図12に示すように、配線基板10の下面側(半導体チップ30の実装面と反対側)の配線層24の接続部25にはんだボールを搭載するなどして外部接続端子64を形成する。さらに、外部接続端子64を設ける前又は後に、モールドゲート部MGが分離された状態で個々の半導体装置が得られるように配線基板10が切断される。これにより、図13に示すように、本実施形態に係るBGA型の樹脂封止型半導体装置1が得られる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法では、配線基板10のモールドゲート部MGに金属パターン層20を配置することで、樹脂の流動性を確保しつつ、モールドゲート部MGに形成されるゲート樹脂部62と金属パターン層20との接触面積を少なくしてそれらの接着強度が弱くなるようにしている。
【0045】
これにより、ゲート樹脂部62を除去する際に、モールドゲート部MGの金属パターン層20に剥がれが発生したり、それによって半導体チップ30に関係をもたせた配線層24やソルダレジスト14などにダメージが生じたりすることが防止される。その結果、信頼性の高い樹脂封止型半導体装置を高い歩留りで製造できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1はトランスファモールド法におけるモールド樹脂が形成される前の半導体チップが実装された配線基板の様子を示す断面図である。
【図2】図2はトランスファモールド法におけるモールドゲート部の樹脂を除去する際の問題点を示す平面図である。
【図3】図3は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法で使用される配線基板を示す平面図である。
【図4】図4(a)は図3の配線基板のモールドゲート部の金属パターン層を示す部分拡大平面図、図4(b)は図4(a)のII−IIに沿った断面図である。
【図5】図5は図3の配線基板のモールドゲート部の変形例の金属パターン層を示す部分拡大平面図である。
【図6】図6は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)であり、図3のI−Iに沿った断面図に相当する。
【図7】図7は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【図8】図8は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【図9】図9は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【図10】図10は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【図11】図11は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【図12】図12は本発明の実施形態の樹脂封止型半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
【図13】図13は本発明の実施形態に係る樹脂封止型半導体装置の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…樹脂封止型半導体装置、10…配線基板、11…樹脂体、12…コア基板、12x…スルーホール、14…ソルダレジスト、14x,14y…開口部、16…銅層パターン、18…Ni/Au層、20…金属パターン層、20a…島状パターン、20b…連結部、20x…抜きパターン、22…スルーホールめっき層、24…配線層、25…接続部、30…半導体チップ、32…ダイアタッチ材、34…ワイヤ、50…モールド型、51…下型、53…上型、53x…第1凹部、53y…第2凹部、53z…突出部、60…モールド樹脂、62…ゲート樹脂部、64…外部接続端子、MG…モールドゲート部、B…折取部、C…キャビティ、R…樹脂流入部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装領域に半導体チップが実装され、一端側に樹脂を前記半導体チップの周りに流入させるためのモールドゲート部が設けられた配線基板であって、前記モールドゲート部に抜きパターンを内部にもつ金属パターン層が露出して設けられた前記配線基板を用意する工程と、
前記配線基板にモールド型を設置することにより、前記半導体チップの周りにキャビティを設けると共に、モールドゲート部の前記金属パターン層の上に前記キャビティに繋がる樹脂流入部を設ける工程と、
前記モールドゲート部上の前記樹脂流入部を通して前記樹脂を前記キャビティ内に充填して前記半導体チップを封止するモールド樹脂を形成する工程と、
前記樹脂流入部に形成されたゲート樹脂部を前記金属パターン層に対して選択的に除去する工程とを有することを特徴とする樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記配線基板を用意する工程において、前記金属パターン層は、最上に金層を備えていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記配線基板を用意する工程において、前記金属パターン層は、複数の島状パターンが連結部によって相互に繋がって構成されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記配線基板を用意する工程において、前記金属パターン層の抜きパターンを含む全体の配置面積を100%とするとき、前記抜きパターンのトータル面積は5乃至20%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記配線基板を用意する工程において、
前記配線基板には、前記モールドゲート部及び該配線基板の配線層の接続部の上に開口部が設けられたソルダレジストが形成されており、
前記半導体チップは前記ソルダレジストの上に実装され、前記配線層の前記接続部にワイヤで接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記配線基板にモールド型を設置する工程において、前記モールド型は、前記配線基板の下に配置される下型と、前記配線基板及び前記半導体チップの上側に配置されて前記キャビティ及び前記樹脂流入部を構成する上型とによって構成され、
前記ゲート樹脂部を除去する工程において、前記ゲート樹脂部を折り取って前記モールド樹脂から分離することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記配線基板を用意する工程において、前記配線基板には複数の前記実装領域に複数の前記半導体チップがそれぞれ実装されており、
前記ゲート樹脂部を除去する工程の後に、
前記モールドゲート部が分離された状態で個々の半導体装置が得られるように前記配線基板を切断する工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記配線基板を用意する工程において、前記配線層は前記配線基板のスルーホールを介して相互接続された状態で前記配線基板の両面側に設けられており、
前記配線基板を切断する工程の前又は後に、前記配線基板の前記半導体チップと反対面側の前記配線層に接続される外部接続端子を設ける工程をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項1】
実装領域に半導体チップが実装され、一端側に樹脂を前記半導体チップの周りに流入させるためのモールドゲート部が設けられた配線基板であって、前記モールドゲート部に抜きパターンを内部にもつ金属パターン層が露出して設けられた前記配線基板を用意する工程と、
前記配線基板にモールド型を設置することにより、前記半導体チップの周りにキャビティを設けると共に、モールドゲート部の前記金属パターン層の上に前記キャビティに繋がる樹脂流入部を設ける工程と、
前記モールドゲート部上の前記樹脂流入部を通して前記樹脂を前記キャビティ内に充填して前記半導体チップを封止するモールド樹脂を形成する工程と、
前記樹脂流入部に形成されたゲート樹脂部を前記金属パターン層に対して選択的に除去する工程とを有することを特徴とする樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記配線基板を用意する工程において、前記金属パターン層は、最上に金層を備えていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記配線基板を用意する工程において、前記金属パターン層は、複数の島状パターンが連結部によって相互に繋がって構成されることを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記配線基板を用意する工程において、前記金属パターン層の抜きパターンを含む全体の配置面積を100%とするとき、前記抜きパターンのトータル面積は5乃至20%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記配線基板を用意する工程において、
前記配線基板には、前記モールドゲート部及び該配線基板の配線層の接続部の上に開口部が設けられたソルダレジストが形成されており、
前記半導体チップは前記ソルダレジストの上に実装され、前記配線層の前記接続部にワイヤで接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記配線基板にモールド型を設置する工程において、前記モールド型は、前記配線基板の下に配置される下型と、前記配線基板及び前記半導体チップの上側に配置されて前記キャビティ及び前記樹脂流入部を構成する上型とによって構成され、
前記ゲート樹脂部を除去する工程において、前記ゲート樹脂部を折り取って前記モールド樹脂から分離することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記配線基板を用意する工程において、前記配線基板には複数の前記実装領域に複数の前記半導体チップがそれぞれ実装されており、
前記ゲート樹脂部を除去する工程の後に、
前記モールドゲート部が分離された状態で個々の半導体装置が得られるように前記配線基板を切断する工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記配線基板を用意する工程において、前記配線層は前記配線基板のスルーホールを介して相互接続された状態で前記配線基板の両面側に設けられており、
前記配線基板を切断する工程の前又は後に、前記配線基板の前記半導体チップと反対面側の前記配線層に接続される外部接続端子を設ける工程をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−60160(P2008−60160A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−232524(P2006−232524)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】
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