説明

樹脂成形体及びその製造方法

【課題】導電材と樹脂との間の良好な密着性を有する樹脂成形工程及びその製造方法を提供する。
【解決手段】気泡100を含む気泡層10aと、前記気泡層の表面に選択的に設けられ前記気泡層より高い密度を有するスキン層10bと、を有する樹脂部10と、前記気泡層に接して設けられた導電体20と、を備えたことを特徴とする樹脂成形体1であり、気泡を含む気泡層と、その表面10Sの少なくとも一部を被覆し前記気泡層より高い密度を有するスキン層とを有する樹脂部を成形する樹脂成形工程と、前記スキン層を選択的に除去して前記気泡層を露出させるスキン層除去工程と、前記選択的に露出した気泡層の表面に導電体を形成する導電体形成工程と、を備えたことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体及びその製造方法に関し、より詳細には、樹脂と、導電体と、を備えた樹脂成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistant)等の電子機器に用いられる回路基板及びその製造方法がいくつか提案されている(例えば、特許文献1)。これら電子機器は、その用途の拡大に伴い、さらなる小型化、軽量化が要求され、限られた空間・領域内に複雑な電気回路を形成することが求められている。このため、機器の筐体に直接電気回路を形成することについて検討が行われている。
【特許文献1】特開2007−88288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、導電材と樹脂との間の良好な密着性を有する樹脂成形体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、気泡を含む気泡層と、前記気泡層の表面に選択的に設けられ前記気泡層より高い密度を有するスキン層と、を有する樹脂部と、前記気泡層に接して設けられた導電体と、を備えたことを特徴とする樹脂成形体が提供される。
【0005】
また、本発明の他の一態様によれば、気泡を含む気泡層とその表面の少なくとも一部を被覆し前記気泡層より高い密度を有するスキン層とを有する樹脂部を成形し、前記スキン層を選択的に除去して前記気泡層を選択的に露出させ、前記選択的に露出した気泡層の表面に導電体を形成してなることを特徴とする樹脂成形体が提供される。
【0006】
また、本発明のさらに別の一態様によれば、気泡を含む気泡層と、その表面の少なくとも一部を被覆し前記気泡層より高い密度を有するスキン層とを有する樹脂部を成形する樹脂成形工程と、前記スキン層を選択的に除去して前記気泡層を露出させるスキン層除去工程と、前記選択的に露出した気泡層の表面に導電体を形成する導電体形成工程と、を備えたことを特徴とする樹脂成形体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、導電材と樹脂との間の良好な密着性を有する樹脂成形体及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本実施形態に係る樹脂成形体の一例(具体例1)を表した模式図である。図1(a)は具体例1に係る樹脂成形体1の模式斜視図であり、図1(b)は樹脂成形体1の模式断面図である。
【0009】
図1に表したように、樹脂成形体1は、樹脂部10と、導電体20と、を備えている。樹脂部10は、気泡100を含む気泡層10aと、気泡層10aの表面に選択的に設けられ、気泡層10aより高い密度を有するスキン層(表皮層)10bと、を有する。導電体20は、樹脂部10の表面のうち気泡層10aの表面に接して設けられている。かかる構成により、導電体20と樹脂部10との間の密着性が適切に確保される。
【0010】
また、図1に表したように、樹脂部10の表面のうち気泡層10aの表面は凹部を有し、導電体20がこの凹部の表面に接して設けられる構成にしてもよい。かかる構成により、導電体20と樹脂部10との間の密着性はさらに向上する。
【0011】
また、樹脂部10の表面10sは緻密なスキン層10bにより形成される平滑面を有するため、樹脂成形体1は外観や触感に優れるとともに、樹脂部10の表面に別の成形体を積み重ねる多層化を行うことが容易となる。
【0012】
なお、樹脂成形体1、気泡層10a、スキン層10b、導電体20の大きさは、用途等に応じて適宜選択することができる。スキン層10bの厚さとしては、例えば10〜100μmとすることができる。また、気泡層10a内の気泡100の含有率は、例えば10%であってよく、気泡100の大きさは、例えば数μm〜数十μmであってよい。
【0013】
樹脂部10の材料としては、例えば、ポリカーボネート、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体の樹脂)、ポリアミド等が挙げられる。
【0014】
図2は、樹脂成形体1の別例を表した模式断面図である。
図2(a)に表したように、樹脂部10と、導電体20と、を備えた成形体の表面のうち導電体20が設けられた表面は、略平坦な面であってよい。かかる構成により、樹脂成形体1の外観や触感はさらに優れたものとなり、また多層化がさらに容易となる。
【0015】
また、同図に表したように、導電体20は、複数の種類の導電層20a、20b、20c等からなる積層構造を有してよい。この場合、例えば、導電層20aは良好な導電性を有する材料(例えば、銅や銀)から構成され、導電層20b、20cは導電層20aの防錆機能を有する材料(例えば、ニッケルや金)から構成されてよい。
【0016】
また、図2(b)に表したように、樹脂成形体1は、樹脂部10と、導電体20と、を備えた成形体の表面のうち導電体20が設けられた表面に設けられた、絶縁体からなる被覆層30をさらに備えてよい。被覆層30の材料は、樹脂成形体の用途に応じて、有機、無機の広範な絶縁材料から選択することができる。被覆層30は、例えば、加飾性、耐蝕性(防錆など)、耐衝撃性等の機能を有する材料から構成されてよい。ここで、加飾性の機能とは、例えば、導電体20のパターンを見えなくする機能や、導電体20が形成されている領域とその周囲の領域とが同様の外観・触感を呈するようにする機能である。
【0017】
本実施形態に係る樹脂成形体は、導電体と絶縁体との密着性が要求される任意の部材に用いることができ、例えば携帯電子機器の電気回路(アンテナ等)に適用することができる。とりわけ、電子機器の筐体にアンテナ等の電気回路を直接形成する場合に好適に用いることができる。
【0018】
(本実施形態の効果)
次に、本実施形態の効果について、図3及び図4を参照しつつ説明する。
図3は、樹脂部10の気泡層10aの構造を表した写真である。この写真は、図1(b)のA−A線断面の写真である。気泡層10aは、超臨界流体を用いて作製した。
【0019】
図3に表したように、気泡層10aは、三次元網目構造(スポンジ状構造)を有しており、微細な気泡100を有する。気泡100の大きさは、図3では約10μmである。なお、図示しないが、スキン層10bはこのような気泡を含まず、緻密な構造を有している。
【0020】
図4は、本実施形態の効果を説明するための模式断面図である。図4(a)は、導電体20の側面近傍を表した模式断面図であり、図4(b)は、導電体20の底面近傍を表した模式断面図である。
【0021】
図4(a)及び(b)に表したように、具体例1では、導電体20は、気泡100を含む気泡層10aと接している。ここで、導電体20との界面を形成する気泡層10aの表面10cは、気泡100の存在により複雑な凹凸形状を有している。このため、導電体20は、気泡100の存在していた領域に入り込んだ導電体20の部分によって係止され、Vの方向に剥離されにくくなる。従って、導電体20と樹脂部10との密着性が適切に確保される。これにより、具体例1に係る樹脂成形体1は、例えば電子機器の筐体の表面に電気回路を直接形成する場合などに好適に用いることができる。
【0022】
また、図4(a)に表したように、具体例1では、樹脂部10の表面10sは緻密なスキン層10bにより形成される平滑面を有する。このため、樹脂成形体1は、外観や触感に優れるとともに、多層化に有利であるという効果も有する。
【0023】
なお、本実施形態では気泡を含む樹脂を用いるため、軽量性、耐衝撃性、断熱性等の付随的効果が得られる。
【0024】
(樹脂成形体の製造方法)
次に、本実施形態に係る樹脂成形体の製造方法について、図5〜図12を参照しつつ説明する。
本実施形態に係る樹脂成形体の製造方法は、気泡を含む気泡層を有する樹脂であって、その表面の少なくとも一部に前記気泡層より高い密度を有するスキン層を有する樹脂を成形する樹脂成形工程と、前記スキン層を選択的に除去して前記気泡層を選択的に露出させるスキン層除去工程と、前記選択的に露出した気泡層の表面に導電体を形成する導電体形成工程と、を備える。
【0025】
まず、樹脂成形工程について、図5〜図8を参照しつつ説明する。
図5〜図8は、樹脂部10を成形する方法を例示する模式図である。樹脂成形方法としては、例えば、超臨界流体や発泡剤を用いた方法が挙げられる。
【0026】
図5は、発泡剤を用いて樹脂部10を成形する方法(化学発泡)を例示した模式断面図である。図5に表したように、金型300に、発泡剤を含んだ樹脂部10の材料を供給する。ここで、樹脂部10の材料は、先端において中心部から周囲へ湧き出るように進む(ファウンテン・フロー:fountain flow)。そして、金型300近傍では急冷されて緻密なスキン層が形成される。一方、それ以外の領域(コア層)では、発泡剤の作用により気泡が生じ、気泡層が形成される。このようにして、気泡層10aとスキン層10bとを有する樹脂部10が成形される。スキン層10bの厚さは、樹脂部10の材料の流速や、樹脂部10の材料及び金型300の温度を調節することにより、所望の値にすることができる。
【0027】
図6〜図8は、超臨界流体を用いて樹脂部10を成形する方法を例示した模式図である。
【0028】
図6及び図7に表したように、射出成形機400のシリンダ401に対し、樹脂材料及び超臨界流体(例えば、窒素(N2)や二酸化炭素(CO2))を導入する。シリンダ401の中では、例えば図7に表したように混合スクリュー402を用いて、樹脂材料と超臨界流体とを混合する。なお、シリンダ401内の圧力が逃げないようにするため、シリンダ401の端部にはシャットオフノズル404が設けられている。
【0029】
その後、樹脂材料と超臨界流体との混合体からなる樹脂部10の材料は、シャットオフノズル404から射出され、金型301に送られる。
【0030】
金型301内における樹脂部10の材料の挙動は、図5に関して前述した通常の射出成形の場合と同様である。すなわち、ファウンテン・フローの態様で材料を流入させる。これにより、金型301近傍ではスキン層が形成されるとともに、それ以外の領域(コア層)では超臨界流体の作用により気泡が生じ、気泡層が形成される。このようにして、気泡層10aとスキン層10bとを有する樹脂部10が成形される。スキン層10bの厚さについては、図5に関して前述した通りである。
【0031】
このようにして、図7(b)に表したように樹脂成形体(樹脂部10)の製品が作製される。図7(c)及び(d)に表したように、樹脂部10は、気泡層10aとスキン層10bとを有する。
【0032】
一方、図8は、超臨界流体を用いて樹脂部10を成形する別の方法を例示した模式斜視図である。図8に表したように、まず、金型302に樹脂材料を供給し、その後、樹脂材料に超臨界流体(例えば、窒素(N2)や二酸化炭素(CO2))を供給する。
【0033】
樹脂材料に供給された超臨界流体は、圧力の低下により気化する。ここで、超臨界流体の圧力や温度を適宜調節することにより、超臨界流体が気化しないようにすることができる。例えば、金型302を冷やしてその表面を低温にすることにより、金型302近傍で超臨界状態が保たれるようにすることができる。このようにして、金型302近傍においては、緻密なスキン層10bが形成される。一方、それ以外の領域(コア層)では、超臨界流体の作用により気泡が生じ、気泡層10aが形成される。このようにして、気泡層10aとスキン層10bとを有する樹脂部10が成形される。スキン層10bの厚さは、金型302の温度を調節することにより、所望の値にすることができる。
【0034】
次に、スキン層除去工程について説明する。スキン層10bは、電気回路等の所望のパターンで除去することができる。スキン層除去方法としては、例えば、ショットブラスト、液体ホーニング、レーザ加工、及び切削加工(エンドミル等の切削工具を用いた切削加工)から選択される方法が挙げられる。これにより、スキン層10bは選択的に除去され、気泡層10aが選択的に露出する。
【0035】
この時、スキン層10bのみならず、気泡層10aの一部も選択的に除去してよい。これにより、導電体20と気泡層10aとの接触面を増大せしめることができる。すなわち、気泡層10aが凹部を有し、この凹部に導電体20が形成されることにより、導電体20は気泡層10aによって横から把持される形態となる。この結果、前述した複雑な表面形状を持つ表面10cによる導電体20の係止効果は高まり、密着性のさらなる向上が図られる。
【0036】
スキン層10bや気泡層10aが除去される深さについては、予め除去加工の時間と除去深さとの関係についてデータを取り、このデータを元に適切な時間だけ除去加工を行うなどにより、所望の深さでこれらを除去することができる。
なお、スキン層除去工程の後に、必要に応じ、削りかすを除去するための洗浄を行ってもよい。
【0037】
次に、導電体形成工程について、図9〜図12を参照しつつ説明する。図9及び図10は、導電体形成工程の一例(製造方法例1)を表した模式工程断面図であり、図11及び図12は導電体形成工程の他の一例(製造方法例2)を表した模式工程断面図である。
【0038】
(製造方法例1)
まず、製造方法例1について、図9及び図10を参照しつつ説明する。製造方法例1では、塗布法を用い、また必要に応じてめっき法を併用して導電体20を形成する。
【0039】
まず、図9(a)及び図9(b)に表したように、気泡層10aとスキン層10bとを有する樹脂部10に対して、例えばショットブラストを行い、スキン層10bを選択的に除去する。図では、気泡層10aも選択的に除去している。
【0040】
その後、図9(c)に表したように、スキン層10bの除去によって生じた空間に導電体20(第1の導電層20a)を導入する。導電層20aの導入方法としては、例えば塗布法が挙げられ、より具体的には、例えばスクリーン印刷、パッド印刷、及びインクジェットから選択される方法が挙げられる。導電層20aの材料としては、任意の導電体材料を用いることができるが、例えば、銅、銀、カーボン(炭素)等を用いることができる。スクリーン印刷及びパッド印刷の場合はこれら材料のペーストを用い、インクジェットの場合はこれら材料のナノ粒子からなるインクを用いる。また、導電層20aの厚さは、用途に応じて適宜選択可能であるが、電気回路に用いる場合、例えば約10μmが挙げられる。
【0041】
その後、図10(a)及び図10(b)に表したように、必要に応じて、耐蝕性向上、表面硬度向上、電気抵抗低減等を図るため、第2の導電層20b及び第3の導電層20cを導入してよい。導電層20bの材料としては、例えばニッケルが挙げられる。導電層20cの材料としては、例えば金が挙げられる。導電層20b及び導電層20cの厚さは、用途に応じて適宜選択可能であるが、電気回路に用いる場合、例えば、導電層20bは2〜3μm、導電層20cは1μmとすることができる。また、導電層20bや導電層20cの導入方法としては、例えば、電気めっきが挙げられる。
【0042】
その後、図10(c)に表したように、必要に応じて、加工体の表面のうち導電体20が形成された表面に絶縁体からなる被覆層30を形成してよい。被覆層30の形成方法としては、例えば、印刷法、塗布法、フィルム貼付等が挙げられる。
【0043】
(製造方法例2)
次に、製造方法例2について、図11及び図12を参照しつつ説明する。製造方法例2では、めっき法のみを用いて導電体20を形成する。
まず、図11(a)に表したように、樹脂部10を成形した後、樹脂部10の表面にマスク層50を形成する。マスク層50の材料としては、例えば、プリント基板に用いられる感光性材料(いわゆるレジスト材料)や、水溶性のポリビニルアルコール(PVA)が挙げられる。マスク層50の形成方法としては、加工体をマスク層50の材料の液体に浸ける方法や、加工体にマスク層50の材料を刷毛(はけ)で塗る方法などが挙げられる。
【0044】
マスク層50にレジスト材料を用いた場合、マスク層50は、(1)樹脂部10の表面をパターニングする機能と、(2)スキン層10bの表面にめっきがされるのを防ぐ機能と、を併せ持つ。この場合、所定のパターンを有するマスクを介してマスク層50の表面に光を照射することにより、マスク層50がパターニングされる(選択的に除去される)。その後、前述した方法によりスキン層を選択的に除去する。マスク層50が存在するため、マスク層50の下部にあるスキン層10bは除去されず、マスク層50が存在しない領域でのみ、スキン層10bが選択的に除去される。このようにして、図11(b)に表したように、所定のパターンにより気泡層10aが選択的に露出した、マスク層50を有する樹脂部10が形成される。
【0045】
一方、マスク層50にPVAを用いた場合は、マスク層50は、スキン層10bの表面にめっきがされるのを防ぐ機能のみを有する。この場合、前述した方法を用いて、所定のパターンにより、マスク層50及びスキン層10bを同時に選択的に除去する。これにより、図11(b)に表したように、所定のパターンにより気泡層10aが選択的に露出した、マスク層50を有する樹脂部10が形成される。
【0046】
また、別の方法として、PVA等の水溶性材料を、スクリーン印刷によりパターン化して塗布することもできる。この場合、マスク層50は、レジスト材料と同様に、(1)樹脂部10の表面をパターニングする機能と、(2)スキン層10bの表面にめっきがされるのを防ぐ機能と、を併せ持つことになる。
【0047】
その後、図11(c)に表したように、加工体表面に、例えば無電解めっきを用いて、めっきの種(たね)となる導電性物質(第1の導電層20a)を形成する。導電層20aの材料としては、例えば銅やパラジウムが挙げられる。導電層20aの厚さは、例えば約1μmが挙げられる。
【0048】
その後、図12(a)に表したように、マスク層50及びマスク層50を被覆する第1の導電層20aを除去する。マスク層50にPVA等の水溶性材料を用いた場合は、加工体を浸水させることにより、容易にこれらを除去することができる。また、必要に応じて、スキン層10b近傍の導電層20aを、例えばウェットエッチングにより除去してもよい。
【0049】
その後、図12(b)に表したように、第1の導電層20aの表面に第2の導電層20bを導入する。導電層20bには、例えば銅や銀を用いることができる。導電体20bの厚さは、用途に応じて適宜選択可能であるが、電気回路に用いる場合、例えば約10μmが挙げられる。導電層20bの導入方法としては、例えば電気めっきが挙げられる。
【0050】
その後、必要に応じて、耐蝕性向上、表面硬度向上、電気抵抗低減等を図るため、第3の導電層20c及び第4の導電層20dを形成してよい。これらの材料としては、例えば、第3の導電層20cにはニッケル、第4の導電層20dには金が挙げられる。また、これらの厚さは、用途に応じて適宜選択可能であるが、電気回路に用いる場合、例えば、導電層20cは2〜3μm、導電層20dは1μmとすることができる。また、これらの導入方法としては、例えば電気めっきが挙げられる。
【0051】
その後、図12(c)に表したように、必要に応じて、図10(c)に関して前述した要領で被覆層30を形成してよい。
なお、上記で用いた電気めっきについては、電気回路の仕様等に応じて、これを無電解めっきとすることができる。この場合、マスク層を用いる等により、所望の形状で導電体20をパターニングすることができる。
【0052】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態に係る樹脂成形体の一例(具体例1)を表した模式図である。
【図2】樹脂成形体1の別例を表した模式断面図である。
【図3】樹脂部10の気泡層10aの構造を表した写真である。
【図4】本実施形態の効果を説明するための模式断面図である。
【図5】発泡剤を用いて樹脂部10を成形する方法(化学発泡)を例示した模式断面図である。
【図6】超臨界流体を用いて樹脂部10を成形する方法を例示した模式図である。
【図7】超臨界流体を用いて樹脂部10を成形する方法を例示した模式図である。
【図8】超臨界流体を用いて樹脂部10を成形する別の方法を例示した模式斜視図である。
【図9】導電体形成工程の一例(製造方法例1)を表した模式工程断面図である。
【図10】導電体形成工程の一例(製造方法例1)を表した模式工程断面図である。
【図11】導電体形成工程の他の一例(製造方法例2)を表した模式工程断面図である。
【図12】導電体形成工程の他の一例(製造方法例2)を表した模式工程断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 樹脂成形体
10 樹脂部
10a 気泡層
10b スキン層
10c 表面
10s 表面
20 導電体
20a 第1の導電層
20b 第2の導電層
20c 第3の導電層
20d 第4の導電層
30 被覆層
50 マスク層
100 気泡
300 金型
301 金型
302 金型
400 射出成形機
401 シリンダ
402 混合スクリュー
404 シャットオフノズル
V 方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気泡を含む気泡層と、前記気泡層の表面に選択的に設けられ前記気泡層より高い密度を有するスキン層と、を有する樹脂部と、
前記気泡層に接して設けられた導電体と、
を備えたことを特徴とする樹脂成形体。
【請求項2】
気泡を含む気泡層とその表面の少なくとも一部を被覆し前記気泡層より高い密度を有するスキン層とを有する樹脂部を成形し、
前記スキン層を選択的に除去して前記気泡層を選択的に露出させ、
前記選択的に露出した気泡層の表面に導電体を形成してなることを特徴とする樹脂成形体。
【請求項3】
前記樹脂部は、前記スキン層に隣接して設けられ前記気泡層に至る凹部を有し、
前記導電体は、前記凹部に設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
前記スキン層の表面と、前記導電体の表面と、は、略平坦な面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
【請求項5】
前記導電体は、複数の種類の導電層からなる積層構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
【請求項6】
前記導電体の表面に設けられた、絶縁体からなる被覆層をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の樹脂成形体。
【請求項7】
気泡を含む気泡層と、その表面の少なくとも一部を被覆し前記気泡層より高い密度を有するスキン層とを有する樹脂部を成形する樹脂成形工程と、
前記スキン層を選択的に除去して前記気泡層を露出させるスキン層除去工程と、
前記選択的に露出した気泡層の表面に導電体を形成する導電体形成工程と、
を備えたことを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂成形工程において、超臨界流体または発泡剤を用いることを特徴とする請求項7記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項9】
前記スキン層除去工程において、ショットブラスト、液体ホーニング、レーザ加工、及び切削加工から選択される方法を用いることを特徴とする請求項7または8に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項10】
前記導電体形成工程は、スクリーン印刷、パッド印刷、及びインクジェットから選択される方法を用いて第1の導電層を形成する工程を含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項11】
前記導電体形成工程は、前記第1の導電層を形成する工程の後に、めっきを用いて第2の導電層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項10記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項12】
前記樹脂成形工程と、前記スキン層除去工程と、の間に、前記樹脂の表面にマスク層を形成する工程をさらに備え、
前記スキン層除去工程は、前記マスク層と、前記スキン層と、を選択的に除去して前記気泡層を選択的に露出させる工程であり、
前記導電体形成工程は、
加工体の表面に無電解めっきを用いて第1の導電層を形成する工程と、
前記マスク層及び前記マスク層を被覆した前記第1の導電層を除去する工程と、
めっきを用いて第2の導電層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1つに記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項13】
前記導電体形成工程は、前記第2の導電層を形成する工程の後に、めっきを用いて第3の導電層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項12記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項14】
前記導電体形成工程の後に、前記導電体の表面に、絶縁体からなる被覆層を形成する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項7〜13のいずれか1つに記載の樹脂成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図3】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−76110(P2010−76110A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243704(P2008−243704)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】