説明

樹脂成形体

【課題】汎用性の高い成形手法により、屈折率の高い酸化物微粒子を樹脂中に非常によく分散させることで外観に優れ、かつ、機械強度を大きく低下させない樹脂成形体を提供することが課題とした。
【解決手段】酸化物一次粒子同士が接触する面積を抑えた数珠状に連なった形状で、また酸化物一次粒子で形成された空隙を有する多孔質酸化物を用い、透明性樹脂との混合時に一部もしくは全部が酸化物一次粒子まで破砕され、酸化物一次粒子が樹脂中にナノ分散する。ナノ分散することで、添加剤による白濁を防ぐことができ、屈折率の高い酸化物微粒子により樹脂成形体の光沢性を向上することができる。また、添加量が多くとも、機械強度を大きく低下させない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率の高い酸化物微粒子を樹脂中に分散させた樹脂成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭電化製品などには高い意匠性が求められている。筐体や部品などの多くは樹脂製のものが多い。一般には意匠性を持たせるために表面に塗装が行なわれる。しかしながら、塗装では利用範囲が限られてしまう。特許文献1によると、高光沢感、メタリック感を持たせるために、ポリプロピレン系複合材料からなるコア層とポリプロピレンと着色剤からなるスキン層とで構成される樹脂成形体を提供している。また、特許文献2によると、酸化チタン微粒子を、飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸からなる分散剤とともに、非水性溶媒に混合した後、湿式粉砕する方法をとることで、酸化チタンが均一に分散したポリマー系ナノコンポジットが得られるとしている。
【特許文献1】特許第3149710号公報
【特許文献2】特開2008−69046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の手法によると、樹脂成形体はスキン層の表面の平滑性と透明性によるもので、屈折率を増大させるものではなく、光沢性は十分ではない。また、特許文献2の手法によると、非水溶溶媒が必要であり、成形方法が制限されるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、このような課題を解決するものであり、汎用性の高い成形手法により、屈折率の高い酸化物微粒子を樹脂中に非常によく分散させることで外観に優れ、かつ、機械強度を大きく低下させない樹脂成形体を提供することができる。
【発明の効果】
【0005】
以上のように、本願発明によると、酸化物一次粒子同士が接触する面積を抑えた数珠状に連なった形状で、また酸化物一次粒子で形成された空隙を有する多孔質酸化物を用い、透明性樹脂との混合時に一部もしくは全部が酸化物一次粒子まで破砕され、酸化物一次粒子が樹脂中にナノ分散する。ナノ分散することで、添加剤による白濁を防ぐことができ、屈折率の高い酸化物微粒子により樹脂成形体の光沢性を向上することができる。また、添加量が多くとも、機械強度を大きく低下させない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
第1の発明は、樹脂と酸化物一次粒子から形成される多孔質酸化物を含み、前記多孔質酸化物は、一次粒子同士が接触する面積を抑えた数珠状に連なった形状で、また一次粒子で形成された空隙を有しており、前記透明性樹脂との混合時に一部もしくは全部が酸化物一次粒子まで破砕されることにより、前記酸化物一次粒子が前記樹脂中に分散した樹脂成形体であり、屈折率の高い酸化物微粒子がナノ分散することにより、添加剤による白濁を防ぐことができ、樹脂成形体の光沢性を向上することができる。また、添加量が多くとも、機械強度を大きく低下させない。
【0007】
第2の発明は、多孔質酸化物は、ゾルゲル法により酸化物湿潤ゲルを得るゲル化工程と、前記酸化物湿潤ゲル内の水を溶媒で置換除去する置換除去工程と、前記置換除去工程に
より湿潤ゲル内に存在する溶媒を除く乾燥工程とを経て得られる多孔質酸化物を含む樹脂成形体であり、乾燥時に収縮を抑えることでより破砕されやすい多孔質酸化物を作製でき、ナノ分散に適した多孔質酸化物となる。
【0008】
第3の発明は、ゾルゲル法に用いる酸化物源としてチタンアルコキシド、もしくは、チタニアゾルの少なくとも1種類を用いた多孔質酸化物を含む樹脂成形体であり、チタンアルコキシド、もしくは、チタニアゾルの使用は、反応を制御しやすいことをいかし、ゲル化速度を制御することで一次粒子径を調整することで非常にもろい多孔質酸化物を作製でき、樹脂中での酸化物の分散性を高めることが可能である。
【0009】
第4の発明は、多孔質酸化物は酸化チタンであり、屈折率が高いため、ナノ分散することにより、より樹脂成形体の光沢性を向上することができる。
【0010】
第5の発明は、樹脂が熱可塑性樹脂であり、加熱により溶融した粘度の高い樹脂により、多孔質酸化物が非常によく破砕および分散し、光沢性が向上するとともに、電化製品の筐体としてよく利用されているため、展開の幅を広げることができる。
【0011】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における破砕した多孔質酸化物を含む樹脂成形体の断面模式図である。樹脂12中に破砕した多孔質酸化物13は一部もしくは全部が酸化物一次粒子にまで破砕され分散している。破砕した酸化物13は樹脂12との混合の応力によって破砕されるもので多孔質酸化物が非常にもろい構造をしているため一部もしくは全部が酸化物一次粒子にまで破砕したものである。酸化物一次粒子にまで破砕され樹脂に分散することでナノ分散し、光沢性に優れた樹脂成形体となる。また、酸化物は、屈折率が2.0以上であることが望ましく、例えば、チタニアやジルコニアが挙げられる。
【0012】
樹脂12は破砕した多孔質酸化物13が一部もしくは全部が酸化物一次粒子にまで破砕され分散しているので、樹脂12中で白濁することなく、また、機械強度を大きく低下させることなく、樹脂成形体を作製できる。
【0013】
破砕した多孔質酸化物13は、樹脂12との混合の際に応力により一部もしくは全部が酸化物一次粒子まで破砕される。1nm未満では凝集しやすく、凝集が多いと機械強度の低下が大きいため、破砕した多孔質酸化物13の代表径が1nm以上であることが望ましい。また、上限について述べると、10μm以上の多孔質酸化物は破砕されやすいため存在しない。また、白濁を防ぐためには、樹脂中に存在する多孔質酸化物の代表径が0.4μm以下になることが望ましく、より効果的であるのは樹脂中に存在する多孔質酸化物の代表径が0.1μm以下である。
【0014】
樹脂12と破砕した多孔質酸化物13の混合割合の下限は光沢性を向上させるためには、10wt%以上が望ましい。上限は、機械強度が大幅に低下してしまうので60wt%以下が望ましい。
【0015】
樹脂12は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられるが、多孔質酸化物が非常によく破砕および分散させるために、樹脂と多孔質酸化物との混合の際に粘性が高いことが望ましい。汎用性の高さから、望ましくは、熱可塑性樹脂がよい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸が挙げられる。
【0016】
さらに、添加剤として、分散性を向上させる分散剤、劣化を抑える酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、結晶化を促進させる結晶化核剤、そして、各種機械物性を向上させる繊維系フ
ィラー、ゴム成分などや、そして、導電性、磁性、熱伝導性、制振性、断熱、軽量、電磁波吸収、反射、熱線輻射、難燃性など各種特性を付与するフィラーが外観の良さを損なわない限りは含まれていてもかまわない。
【0017】
図2は樹脂と混合する前の多孔質酸化物の一部を拡大した模式図である。樹脂と混合する前の多孔質酸化物21は、酸化物一次粒子23の粒子径が1nm〜0.4μmであればよく、より望ましくは1nm〜0.1μmである。これは、分散している一次粒子が可視光の波長より十分に小さくないと外観を損ねてしまうためである。また、多孔質酸化物11は空隙12を有し、その空隙率は50%〜99%であればよく、より望ましくは70%以上の空隙率である。これは空隙率が低いと多孔質酸化物が破砕されにくいためで、また、空隙率が高ければ破砕されやすいが、空隙率が99%以上の多孔質酸化物を作製するには特別な設備、手法が必要になってくるため作製が困難である。
【0018】
図3は樹脂と混合し破砕した多孔質酸化物の一部を拡大した模式図である。破砕した酸化物21は、一部あるいは全部が酸化物一次粒子22にまで破砕される。一次粒子が結びついた状態の酸化物23は、破砕の力、時間が不足すると残り、一次粒子が小さすぎた場合や多孔質酸化物作製時に収縮が著しかった場合に、一部多孔質酸化物が酸化物一次粒子にまで破砕されずに残ることがある。しかし、逆に時間が長すぎた場合には、一度分散した酸化物一次粒子が再凝集する可能性があるので適度な時間で混合を止める必要がある。ただし、樹脂中に含まれる状態が0.4μm以下であり、機械物性を大きく低下させない程度であれば、すべてが破砕されている必要はない。
【0019】
多孔質酸化物を樹脂と混合する方法について説明する。多孔質酸化物の均一分散方法として、樹脂や樹脂出発原料との混合による力で破砕および分散させる方法を採る。ただし、樹脂がペレットである場合、予め樹脂のペレットや粉末と大きさなどを合わせておくことが均一な分散に望ましい。また、樹脂出発原料が液体である場合には混合前に予め多孔質酸化物をミキサーやジェットミルなどで細かくしておくことが望ましい。樹脂がペレットやパウダーである場合には、ミキサーなどで細かくしておくことは、分散にかかる時間も短縮でき樹脂の劣化なども抑えられる。なお、予め粉砕する場合には、多孔質酸化物の空隙を破砕してしまう強い粉砕方法は、多孔質酸化物を凝集および安定化させてしまうため、樹脂中での破砕した酸化物の分散を阻害する要因となるので注意が必要である。樹脂との混合には、通常樹脂とフィラーとの混ぜ合わせに使用する装置、例えば、タンブラー、溶融混合機、ロールミル、ニーダー、加圧式ニーダー、二軸押出し機、単軸押出し機、バンバリーミキサーなどでよい。次に混ぜ合わせた樹脂の成形方法は、圧縮成形、押し出し成形、射出成形、熱成形、ブロー成形、カレンダ成形など挙げられるが、成形方法に特に制限は無く、樹脂の性質、成形品の形状を考慮した成形法であればよい。
【0020】
(実施の形態2)
本実施の形態では、多孔質酸化物の作製方法について説明する。多孔質酸化物を調製する工程は主に以下の3つの工程からなる。
(1)ゲル化工程
(2)置換除去工程
(3)乾燥工程
各工程についての詳細を述べる。
【0021】
(1)ゲル化工程
ゾルゲル法により金属アルコキシドもしくは金属酸化物ゾルの少なくとも1種類を湿潤ゲル原料とし、水およびアルコールを溶媒とし、必要に応じて触媒を添加することで、金属アルコキシドの加水分解、それに引き続き起こる縮重合反応によって一次粒子が生成し、前記一次粒子が数珠状に連なることで多孔質骨格が形成されることにより湿潤ゲルを得
る工程である。
【0022】
酸化物源として、金属アルコキシドは反応を制御しやすく、広く用いられているものであり、テトラメトキシド、テトラエトキシド、テトライソプロポキシド、テトラブトキシド等のテトラアルコキシド、および、トリアルコキシド、ジアルコキシド、金属キレートを湿潤ゲル原料として、1種類もしくは2種類以上の混合物を湿潤ゲル原料として用いることができる。
【0023】
金属テトラアルコキシドは4つのアルコキシ基を持ち、加水分解することでそれぞれの方向に縮合重合反応が進行していく。アルコキシ基の炭素数に応じた反応性の違いや、触媒量、触媒の種類によりゲル化の進行を制御でき、樹脂と混合後の分散性の制御、分散後の破砕した多孔質酸化物のサイズの制御など可能な多孔質酸化物を作製することが容易となる。例えば、アルコキシ基の炭素数の多いアルコキシドでは反応性が遅く、アルコキシ基の種類を選ぶことでゲル化速度を制御することができ、また、触媒量は湿潤ゲルのゲル化速度を制御でき、ゲル化速度を遅らせ、一次粒子サイズの大きな多孔質酸化物を作製することができる。ゲル化速度を早くすることで、一次粒子の小さな多孔質酸化物を作製できる。
【0024】
酸触媒の使用について説明する。酸触媒では、まずアルコキシドのアルコキシ基の酸素に水素イオンが付加し、次に水が求核的に攻撃し、アルコキシ基がアルコールとして脱離し加水分解が進行する。この加水分解反応と、加水分解で生成した水酸基の縮合重合反応が同時に進行することでゲル化が起こる。しかし、水が少ない場合には、加水分解が遅く、一方で縮合重合反応が進行するため、一次元、あるいは二次元方向に縮合重合反応が進行する。そのため、三次元方向への重合による粒子同士の結合を減少させることができる。
【0025】
トリアルコキシド、ジアルコキシドはそれぞれ3つ、2つのアルコキシ基をもち、残りはそれぞれ1つ、2つのアルキル基を持つ。加水分解することで、縮合重合反応が進行するが、アルキル基は加水分解、縮合重合反応が進行しないので、縮合重合反応の方向が制御された、また、結合の数が制限された湿潤ゲルが形成される。このように作製された多孔質酸化物は一次粒子同士の繋がりが弱いものとなる。ただし、ジアルコキドのみではゲル化しない。そのため、混合物として用いることが考えられるが、混合物の割合、主にアルコキシ基の数によって一次粒子サイズが決定される。また、モノマーだけでなくオリゴマーを用いることも可能である。
【0026】
金属アルコキシドにチタンアルコキシドを用いると、屈折率の高い、多孔質酸化物を得ることができる。チタンアルコキシドは反応性が高く、酸性下で加水分解を行なうことが望ましい。また、チタンキレートと混合して使用することで反応を遅らせることができる。また、ヘキシレングリコール、ピナコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなどを添加することで反応を遅らせることも可能である。
【0027】
ゲル化工程の後に、湿潤ゲル表面に疎水基を導入し、表面を疎水化することで、乾燥時に溶媒から働く毛管力を減少させることができ、乾燥時に起こる収縮を抑えることで、より破砕されやすい多孔質酸化物を作製できる。湿潤ゲル表面への疎水基の導入には、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基の導入、フッ化物や、フッ素の導入などが挙げられる。
【0028】
乾燥工程については後で述べるが、表面処理との関係を少しここで述べる。超臨界乾燥を用いる場合は、特に表面処理を施す必要は無いが、非超臨界乾燥を用いる場合は、毛管
力を無視できないので、表面疎水化処理を施すことが望ましい。また、超臨界乾燥を用いた方法であっても多孔質酸化物表面を疎水化処理することは、親油性の樹脂との親和性を増し分散性がよくなること、保存の際に、空気中の水分の吸着を防ぐことで多孔質酸化物の収縮を抑制することなど優位性があるので、必要に応じて行なうのがよい。
【0029】
表面疎水化処理を施さない場合にも、多孔質酸化物の空隙が大きければ、毛管力を下げることができるので、多孔質酸化物の一次粒子系を大きくすることで多孔質酸化物の乾燥時の収縮を抑制することができる。このように、超臨界乾燥を用いた方法と同様に乾燥時の収縮を抑えた多孔質酸化物の作製できる。また、多孔質酸化物表面を疎水化していないので親水性を有する樹脂との親和性を持ち分散性がよく、また、空気中での保存性を向上させるものである。
【0030】
(2)置換除去工程
湿潤ゲル内の水を溶媒で置換除去する工程である。この工程は次の乾燥工程の準備という面が強く、それぞれの乾燥方法に適した溶媒に置換されることが望ましい。
【0031】
熱風乾燥について説明すると、乾燥時に溶媒からの毛管力が多孔質体骨格に力を及ぼす。毛管力は、表面張力に比例するため、毛管力を抑えるためには、表面張力の低い溶媒が望ましい。例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、より望ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類、アセトンなどのケトン類、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの芳香族などが挙げられる。
【0032】
超臨界乾燥について説明すると、臨界温度、臨界圧力が低いものが適している。例えば、二酸化炭素である。二酸化炭素は、臨界温度が31.3℃で、臨界圧力が72.9atmである。超臨界流体として二酸化炭素を用いるために、ここでは、置換除去工程でアルコールに置換しておく方法を採る。超臨界二酸化炭素との相溶性がよい溶媒で置換することが望ましい。
【0033】
凍結乾燥について説明すると、常温常圧で液体であり、三重点の温度が−30℃程度までの溶媒であればよく、水、t−ブチルアルコールなどが例として挙げられる。また、完全に置換されていなくてもよく、大部分が置換されていればよい。
【0034】
(3)乾燥工程
乾燥工程は、湿潤ゲル内部に存在する溶媒を取り除く工程である。乾燥手法として、超臨界乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、自然乾燥などが挙げられる。熱風乾燥について説明すると、湿潤ゲルを乾燥容器に入れ、温度をかけ、溶媒の蒸発により乾燥を行なう。なお、乾燥容器は耐圧容器であり、加圧をしながら乾燥する方法が、毛管力をさらにさげることができるのでより望ましい。溶媒の蒸発の際には、溶媒からの毛管力が多孔質体細孔に力を及ぼすが、表面張力が低い溶媒に置換を行なっているため軽減することができる。乾燥時の収縮を抑えることは、多孔質酸化物の凝集、安定化を抑えることであり、樹脂との混合での分散性をよくすることに繋がる。
【0035】
超臨界乾燥は、気−液界面が出現しないので表面張力を減少させることができ、多孔質酸化物の収縮が非常に小さく、熱風乾燥で乾燥した多孔質酸化物より破砕されやすい多孔質酸化物となる。方法は一般的な超臨界乾燥でよく、炭酸超臨界乾燥やアルコール超臨界乾燥などがある。超臨界流体の二酸化炭素を用いた超臨界乾燥について説明する。アルコールなどで置換された湿潤ゲルを高圧容器内へ移し、超臨界二酸化炭素を流通させる。二酸化炭素は、臨界温度が31.3℃で、臨界圧力が72.9atmであるが、溶媒の存在、たとえばアルコールとの共存で臨界温度、臨界圧力が上昇する。そのため、臨界状態に
十分な温度80℃、圧力160atmにして連続的に超臨界二酸化炭素を流通させ、アルコールの完全除去をした。
【0036】
凍結乾燥は、溶媒が固体となり、減圧下の乾燥で昇華となるため液体からの乾燥のような表面張力は働かず、収縮が非常に少ない多孔質酸化物を作製することができ、熱風乾燥で乾燥した多孔質酸化物より破砕されやすい多孔質酸化物となる。また、超臨界乾燥に比べコストが低く行なうことができる。ただし、昇華により気圧があがること、昇華により潜熱としてエネルギーが奪われるため乾燥に時間がかかる点などが問題点である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかる多孔質酸化物を破砕した酸化物を含有した樹脂は、従来と比較して、光沢性に優れたものとなる。塗装の工程が不要なことに加え、通常の成形方法で製造することができ、低コスト化が可能である。外観が求められるあらゆる製品の内装や外装などに展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1の実施の形態における破砕した多孔質酸化物を含む樹脂の断面模式図
【図2】本発明の第1の実施の形態における樹脂と混合する前の多孔質酸化物を拡大した模式図
【図3】本発明の第1の実施の形態における樹脂と混合した後の破砕した多孔質酸化物を拡大した模式図
【符号の説明】
【0039】
11 樹脂成形体
12 樹脂
13 破砕した多孔質酸化物
21 多孔質酸化物
22 空隙
23 一次粒子
31 破砕した多孔質酸化物
32 酸化物一次粒子
33 一次粒子同士が結びついた状態の酸化物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と酸化物一次粒子から形成される多孔質酸化物を含み、一次粒子同士が接触する面積を抑えた数珠状に連なった形状で、また一次粒子で形成された空隙を有しており、前記樹脂との混合時に一部もしくは全部が酸化物一次粒子まで破砕されることにより、前記酸化物一次粒子が前記樹脂中に分散した樹脂成形体。
【請求項2】
多孔質酸化物は、ゾルゲル法により酸化物湿潤ゲルを得るゲル化工程と、前記酸化物湿潤ゲル内の水を溶媒で置換除去する置換除去工程と、前記置換除去工程により湿潤ゲル内に存在する溶媒を除く乾燥工程とを経て得られる多孔質酸化物を含む請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
ゾルゲル法に用いる酸化物源として金属アルコキシド、金属酸化物ゾルの少なくとも1種類を用いた多孔質酸化物を含む請求項2に記載の樹脂成形体。
【請求項4】
多孔質酸化物は酸化チタンを主成分とする請求項1から請求項3いずれか1項に記載の樹脂成形体。
【請求項5】
樹脂が熱可塑性樹脂である請求項1から請求項4いずれか1項に記載の樹脂成形体。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−215681(P2010−215681A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60518(P2009−60518)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】