説明

樹脂成形品用金型装置及びこの装置の製造方法

【課題】樹脂成形品を製造する過程において、成形する樹脂成形品が湾曲状または凹凸状に屈曲された形状であっても、効率よく金型を加熱及び冷却させることができる樹脂成形品用金型装置及び当該装置の製造方法を提供する。
【解決手段】金型を加熱する加熱管10と、加熱後の金型を冷却する冷却管20とを備える樹脂成形品用金型装置1において、金型内にて前記加熱管10及び前記冷却管20が湾曲および/または屈曲している。この樹脂成形品用金型装置1は、前記金型内に溝部を形成し、該溝部内に、湾曲および/または屈曲している前記加熱管10及び前記冷却管20を収容し、加熱管10及び冷却管20を収容した金型の溝部内に、溶融金属の液状媒体を投入し、ついで該液状媒体を固化させることにより製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂成形の際、金型の加熱及び冷却を効率よく行うことができる樹脂成形品用金型装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に樹脂成形品を形成するには、雄金型と雌金型との間に形成されたキャビティー内に、高温で溶融した樹脂材料を射出して形成する金型装置の使用が知られている。かかる金型装置においては、通常、金型を加熱する管状の加熱装置と、加熱後の金型を冷却する管状の冷却装置とが具備されている。一般的な加熱装置は、金型内に配置させた管内に熱水やオイル等の液体を流通させ、その熱により金型を加熱させていた。また、冷却装置においては、金型内に配置させた管内に冷水を通水させ、その冷水により金型を冷却させていた。
【0003】
また、例えば、特許文献1では、高品質の成形体を得ることができる金型装置及びこれを用いた成形体の製造方法が提案されており、この特許文献1記載の金型装置は、それぞれ成形体を得るための対象表面を有する一対の金型を対向して配置すると共に互いに加圧することにより成形体を製造し、少なくとも一方の金型は、前記対象表面側から、前記対象表面を形成する対象表面構成部材と、前記対象表面構成部材を保持すると共に加熱手段と冷却手段の双方を具備するキャビティー型と、前記キャビティー型を保持する主型とを備えている。ここで、前記加熱手段及び前記冷却手段がそれぞれ前記キャビティー型に対して前記対象表面と平行な面内方向にも前記対象表面と垂直な方向にも対称に配置されたことを特徴としている。
【0004】
また、特許文献1記載の成形体の製造方法は、前記加熱手段により前記キャビティー型の温度を上昇させる工程と、一対の前記金型を互いに加圧することにより成形体を得る工程と、前記冷却手段により前記キャビティー型の温度を下降させる工程と、得られた成形体を前記金型装置から取り出す工程と、を備えたことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−89327号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の一般的な金型装置や特許文献1記載の金型装置においては、金型内に配置されている管状の加熱装置や冷却装置が直線状に形成されている。直線状に形成されているのは、固化状体の金型内に湾曲または屈曲状の孔を穿孔させ、その孔の中に管状体を配置させるには、非常に手間やコストがかかり、困難であるとともに非効率的であるという理由からである。そのため、成形する樹脂成形品が湾曲状であったり凹凸状に屈曲された形状であったりした場合には、直線状の加熱装置または冷却装置では、金型や樹脂成形品を効率よく加熱または冷却させることができなかった。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記問題点を解消し、樹脂成形品を製造する過程において、成形する樹脂成形品が湾曲状または凹凸状に屈曲された形状であっても、効率よく金型を加熱及び冷却させることができる樹脂成形品用金型装置及び当該装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の樹脂成形品用金型装置は、金型を加熱する加熱管と、加熱後の金型を冷却する冷却管とを備える樹脂成形品の金型装置において、金型内にて前記加熱管及び前記冷却管が湾曲および/または屈曲していることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の樹脂成形品用金型装置においては、前記加熱管及び前記冷却管が、成形する樹脂成形品の形状に沿って金型内に好適に配設されている。
【0010】
また、前記加熱管及び冷却管が銅パイプにて形成されていることが好ましい。
【0011】
本発明の樹脂成形品用金型装置の製造方法は、金型を加熱する加熱管と、加熱後の金型を冷却する冷却管とを備える樹脂成形品用金型装置であって、金型内にて前記加熱管及び前記冷却管が湾曲および/または屈曲している樹脂成形品用金型装置の製造方法において、
前記金型内に溝部を形成し、該溝部内に、湾曲および/または屈曲している前記加熱管及び前記冷却管を収容し、加熱管及び冷却管を収容した金型の溝部内に、溶融金属の液状媒体を投入し、ついで該液状媒体を固化させることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の樹脂成形品用金型装置の製造方法においては、前記液状媒体がアルミニウムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、金型内に配置する筒状の加熱管及び冷却管が、成形する樹脂成形品の形状に沿って金型内に配設され得ることから、樹脂成形品を効率よく加熱または冷却させることができる。
【0014】
また、金型内に溝部を形成し、かかる溝部内に筒状の加熱管及び冷却管を収容させ、加熱管及び冷却管を収容させた金型の溝部内に液状媒体を投入して固化させるため、如何なる形状の樹脂成形品であっても、その形状に沿った加熱管及び冷却管を金型内に配設させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における樹脂成形品用金型装置の平面図である。
【図2】前記金型装置の一部を断面にした正面図である。
【図3】図1に示す金型装置の側面図である。
【図4】連結装置の斜視図である。
【図5】金型の製造方法の第一工程を示す断面図である。
【図6】前記製造方法の第二工程を示す断面図である。
【図7】前記製造方法の第三工程を示す断面図。
【図8】他の好適例である本発明における樹脂成形品用金型装置の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の樹脂成形品用金型装置における実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の一実施の形態に係る金型装置1は、雄金型2と雌金型3とを備えている。この金型装置1は、雄金型2及び/または雌金型3を加熱する加熱管10と、加熱後の金型を冷却する冷却管20とを具備する。なお、加熱管10及び冷却管20は、雄金型2、雌金型3のどちらか一方、もしくは両方に装着しても構わないが、本実施形態においては雌金型3に具備した状態を示す。
【0017】
加熱管10及び冷却管20は筒状に形成されており、両端には、熱水もしくは冷水を吸水または排水する連結装置30が装着されている。加熱管10及び冷却管20は、導電性の高い銅、銀、真鍮、アルミ等の素材が好ましく、特に、導電性や加工面を考慮した場合、銅で形成することが好ましい。
【0018】
加熱管10は一端が吸水用連結装置31に、他端は排水用連結装置32にそれぞれ連結されている。加熱管10は、吸水用連結装置31から送水された熱水を管内に通水させ、熱水の温度により雌金型3を加熱させるものである。また、加熱管10は、図1に示すように、雌金型装置3内に複数並列した状態で配置される。
【0019】
加熱管10は、一部が湾曲状または屈曲状に形成されている。特に、加熱管10は、成形する樹脂成形品Aの形状に沿った状態で雌金型3内に配設される。図2に示すように、成形する樹脂成形品Aが湾曲状である場合、雌金型3の表面も湾曲状を呈する。そのため、樹脂成形品Aが配置される雌金型3の内部のキャビティー側表面近傍に加熱管10を配置させる。これにより、雌金型3を介して樹脂成形品Aに熱を均一に、且つ効率よく伝えることが可能になる。その結果、高温で溶融した樹脂材料を射出して形成する射出成形において、樹脂成形の際に生じるウエルドラインを未然に防ぐことができる。
【0020】
冷却管20は、一端が吸水用連結装置31に、他端は排水用連結装置32にそれぞれ連結されている。冷却管20は、吸水用連結装置31から送水された冷却装置により冷やされた冷却水を通水し、この冷却水により加熱状態の雌金型3を冷却させることができる。かかる冷却管20は、加熱管10の下部に複数配置される。
【0021】
また、冷却管20は、一部が湾曲状または屈曲状に形成される。特には、冷却管20は、樹脂成形品A及び加熱管10の形状に沿った状態で雌金型3内に配設される。これにより、高温に加熱された雌金型3及び樹脂成形品Aを効率よく冷却させることができる。
【0022】
加熱管10及び冷却管20は、図2において緩やかな湾曲状に形成されているが、これに限らず、図8に示すように、箱状の樹脂成形品Bを成形する場合、雌金型3の形状に沿った屈曲状に形成することが好ましい。これにより、雌金型3を介して樹脂成形品Bに熱や冷気を効率よく伝えることができる。さらに、樹脂成形品Bの形状に応じ、加熱管10及び冷却管20を螺旋状、湾曲部と屈曲部を組み合わせた形状等、様々な形状に形成してもよい。
【0023】
連結装置30は、加熱管10に熱水を、冷却管20に冷水を送り込む吸水用連結装置31と、熱水及び冷水を金型外へ排水する排水用連結装置32とからなる。連結装置30は、図4に示すように、矩形状の枠体部33と、枠体部33内に具備された、熱水を吸水する熱水吸水部34と、熱水吸水部34から送水された熱水を加熱管10に送水する第一熱水送水部35と、加熱管10へ熱水を送り込む第二熱水送水部36とを備える。また、連結装置30は、冷却水を吸水する冷水吸水部37、第一冷水送水部38、第二冷水送水部39を具備する。
【0024】
次に、加熱管10及び冷却管20における雌金型3の加熱方法及び冷却方法を図2及び図3に基づき説明する。
まず、雌金型3を加熱させる場合、ヒーター等で加熱された熱水を熱水吸水管40から雌金型3内に送り込む。送り込まれた熱水は、熱水送水管41から吸水用連結装置31内に送水され、送水された熱水は熱水吸水部34から第一熱水送水部35を通水し、第二熱水送水部36から加熱管10に送り込まれる。加熱管10内に送り込まれた熱水により雌金型3は加熱され、加熱後、熱水は排水用連結装置32から雌金型3の外部へ排水される。
【0025】
一方、雌金型3を冷却させる場合には、冷却装置(図示せず)にて冷やされた冷水を、冷水吸水管42から雌金型3内に送り込む。送り込まれた冷水は、冷水送水管43から吸水用連結装置31内に送水され、送水された冷水は冷水吸水部37から第一冷水送水部38を通水し、第二冷水送水部39から冷却管20に送り込まれる。冷却管20内に送り込まれた冷水により雌金型3は冷却され、冷却後、冷水は排水用連結装置32から雌金型3の外部へ排水される。
【0026】
次に、本発明における金型の製造方法の詳細を、図5乃至図7に基づいて説明する。
図5は、製造方法の第一工程を示すもので、反転させた状態の雌金型3の底面に、加熱管10及び冷却管20を収容させる溝部4を形成した状態を示す。また、溝部4の上部には、一端に吸水用連結装置31と他端に排水用連結装置32とを装着した、湾曲形状の加熱管10及び冷却管20が反転した状態で配置されている。
【0027】
図6は、製造方法の第二工程を示すもので、雌金型3に形成された溝部4内に、吸水用連結装置31と排水用連結装置32を装着した加熱管10及び冷却管20を収容させた状態である。加熱管10及び冷却管20を溝部4内に収容させた後、溝部4内に、溶融した金属の液状媒体Cを投入する。液状媒体Cは、特に、熱伝導性と加工性の優れたアルミニウムを用いることが好ましい。この際、アルミニウムを800℃まで加熱して液状体とし、かかるアルミニウムの液状媒体Cを溝部4内に投入する。アルミニウムが液状媒体Cであるため、如何なる形状の加熱管10及び冷却管20であっても、隙間なく密着させることができる。
【0028】
図7は、製造方法の第三工程を示すもので、溝部4内に投入した液状媒体Cが固化した状態を示す。この際、加熱管10及び冷却管20は、予め成形する樹脂成形品の形状に沿って形成されているため、如何なる形状の樹脂成形品であっても、その形状に沿って加熱管10及び冷却管20を雌金型3内に配設させることができる。
【0029】
上述のように、雌金型3内に溝部4を形成し、かかる溝部4内に筒状の加熱管10及び冷却管20を収容させ、加熱管10及び冷却管20を収容させた雌金型3の溝部4内に液状媒体Cを投入して固化させるため、容易に、且つ効率よく金型及び樹脂成形品を加熱、または冷却させることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 金型装置
2 雄金型
3 雌金型
4 溝部
10 加熱管
20 冷却管
30 連結装置
31 吸水用連結装置
32 排水用連結装置
33 枠体部
34 熱水吸水部
35 第一熱水送水部
36 第二熱水送水部
37 冷水吸水部
38 第一冷水送水部
39 第二冷水送水部
40 熱水吸水管
41 熱水送水管
42 冷水吸水管
43 冷水送水管
A 樹脂成形品
B 樹脂成形品
C 液状媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を加熱する加熱管と、加熱後の金型を冷却する冷却管とを備える樹脂成形品用金型装置において、金型内にて前記加熱管及び前記冷却管が湾曲および/または屈曲していることを特徴とする樹脂成形品用金型装置。
【請求項2】
前記加熱管及び前記冷却管が、成形する樹脂製品の形状に沿って金型内に配設されている請求項1記載の樹脂成形品用金型装置。
【請求項3】
前記加熱管及び冷却管が銅パイプにて形成されている請求項1または2記載の樹脂成形品用金型装置。
【請求項4】
金型を加熱する加熱管と、加熱後の金型を冷却する冷却管とを備える樹脂成形品用金型装置であって、金型内にて前記加熱管及び前記冷却管が湾曲および/または屈曲している樹脂成形品用金型装置の製造方法において、
前記金型内に溝部を形成し、該溝部内に、湾曲および/または屈曲している前記加熱管及び前記冷却管を収容し、加熱管及び冷却管を収容した金型の溝部内に、溶融金属の液状媒体を投入し、ついで該液状媒体を固化させることを特徴とする樹脂成形品用金型装置の製造方法。
【請求項5】
前記液状媒体がアルミニウムである請求項4記載の樹脂成形品用金型装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−30522(P2012−30522A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172943(P2010−172943)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(509152404)有限会社平成モールディング (4)
【Fターム(参考)】