説明

樹脂成形物の表面処理方法および表面処理樹脂組成物

【課題】本発明は、ケイ素含有重合体を主成分とする樹脂成形物の表面に、遷移金属の微粒子を形成させる、樹脂成形物の表面処理方法ならびに処理物を提供することを課題としている。また本発明は、任意の材質・形状の基材の表面に形成した樹脂成形物の表面に、精細な形状の導体層、金属メッキ層、配線パターンなどを形成する方法ならびに処理物を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明の樹脂成形物の表面処理方法は、多重結合を含む基を有する特定のケイ素含有化合物(A)と、ケイ素含有重合体(B)とを含有する樹脂組成物からなる樹脂成形物を、遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液と接触させて、樹脂成形物上に遷移金属の微粒子を形成させることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形物上に導体層あるいは金属メッキ層を形成する、樹脂組成物の表面処理方法、ならびに表面処理樹脂成形物に関する。また、本発明は、樹脂成形物上に、導体層あるいは金属メッキ層を、任意の形状に、かつ高い精細性で形成する樹脂組成物の表面処理方法、ならびに表面処理樹脂成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
情報電子機器の小型化、高機能化が急速に進む昨今、電子回路においても、配線の微細化、高密度化、立体化などへの要求が高まっている。従来のエッチング、鍍金といった加工法では、技術的、コスト的に難しくなるケースもあり、簡便で高度な加工が可能な、新しい導体層形成方法、メタライズ方法が求められる様になっている。
【0003】
一方、近年、ポリシランに代表される有機ケイ素重合体を、導電性材料として用いることが研究されている(非特許文献1)。そして、ポリシランを銀イオンでドーピングすることにより、賦形性に優れる導電性塗膜を形成する方法(特許文献1)や、基板上に形成したポリシラン膜に貴金属塩でドーピングして無電解鍍金することにより金属層を形成する方法(特許文献2)、また、基板上のポリシラン膜を酸素の存在下で露光した後に貴金属塩でドーピングして無電解鍍金することにより、パターン化された金属層を形成する方法(特許文献3)等の新しい配線形成方法が開示されている。また、パターンを微細化する方法として、基板上のポリシラン薄膜にパラジウム塩を接触させてパラジウムコロイド層を形成した後、そのパラジウムコロイド層上に感光性樹脂層を形成して、これに露光、現像処理を施してパターン化された溝を形成し、この溝に無電解鍍金による導電性金属層を充填形成することで高精細な金属パターンを得る方法が開示されている(特許文献4)。
【0004】
しかしながら、これら従来の方法においては、ポリシラン上にドープできる金属は、銀、パラジウム等の貴金属であり、材料が高価であるという課題があった。電子回路用の配線としては、安価で導電性の高い銅が一般的に用いられているが、このような銅を代表する遷移金属は、特許文献2に「標準酸化還元電位が0.54 Vより低い銅やニッケルの塩では、本ケイ素含有高分子で還元ができない」との記述がある様に、そのイオンをポリシラン上にドープし金属へ還元することはできていなかった。また特許文献4の様に、配線を微細化する方法としても、パターンの型となる感光性樹脂層を塗工、露光、現像する処理が必要であるなど、従来は多くの工程を要するものであった。このように、ポリシランに代表されるケイ素重合体を用いた基体表面への導体層形成技術においては、安価な遷移金属材料のみでの導体層形成、さらには簡略なプロセスによるパターンの微細化方法の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開平10−120907号公報
【特許文献2】特開2002−105656号公報
【特許文献3】特開平10−268521号公報
【特許文献4】特開2000−138442号公報
【非特許文献1】「有機ケイ素材料科学の新展開」 桜井英樹監修、(株)シーエムシー出版刊、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ケイ素含有重合体を主成分とする樹脂成形物の表面に、遷移金属の微粒子を形成させ、所望によりさらに安価で有用な金属材料をメタライズ処理する、樹脂成形物の
表面処理方法ならびに処理物を提供することを課題としている。また本発明は、任意の材質・形状の基材の表面に形成した樹脂成形物の表面に、精細な形状の導体層、金属メッキ層、配線パターンなどを形成する、樹脂成形物の表面処理方法ならびに処理物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、従来遷移金属塩を還元することはできないと考えられていたケイ素含有重合体が、遷移金属塩のアニオンを選択することにより、還元できることを見出した。さらにケイ素含有重合体の還元性を利用して、ケイ素含有重合体上あるいは重合体中に遷移金属微粒子を析出させることを見出した。また、さらにこれに鍍金を施すことにより導電性金属薄膜が得られること、また、遷移金属塩懸濁液を作用させる前にフォトマスクなどを用いるなどして紫外光を部分的に照射することにより、非露光部に主に遷移金属微粒子が生成することを見出し、この後の鍍金により、パターン化された導体層を有する物品が得られることを見出した。さらに本発明者は、このような性質を有するケイ素含有重合体を、多重結合を置換基として有するケイ素含有化合物と共に組成物として基体上に製膜して、露光、遷移金属ドープ、さらに鍍金を施すことにより、微細なパターンを有する導体層が基体上に形成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の樹脂成形物の表面処理方法は、
下記式(1)、(2)および(3)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のケイ素含有化合物(A)と、
ケイ素含有重合体(B)と
を含有する樹脂組成物からなる樹脂成形物を、
カウンターアニオンがケイ素含有重合体のケイ素原子に配位し得る遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液と接触させることにより、
前記樹脂成形物上および/または樹脂成形物中に、遷移金属の微粒子を形成させることを特徴としている。
【0008】
【化1】

【0009】
(式(1)中、R1は、ビニル基、アリル基、イソプロペノキシ基、フェニルエチニル基
の群から選ばれる多重結合を含む基である。R2は、同一でも異なっていてもよく、ビニ
ル基、アリル基、イソプロペノキシ基、フェニルエチニル基の群からなる多重結合を含む基、または、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群から選ばれる原子もしくは基であり、少なくとも一つは多重結合を含む基である。R3
、同一でも異なっていてもよく、ビニル基、アリル基、イソプロペノキシ基、フェニルエチニル基の群から選ばれる多重結合を含む基、または、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群から選ばれる原子もしくは基である。X1は、
直接結合、−O−、−NH−、−CH2−、−CH2CH2−、の群から選ばれる連結基である。mは、0〜2の整数を表す。)
【0010】
【化2】

【0011】
(式(2)中、R4は、同一でも異なっていてもよく、ビニル基、アリル基、イソプロペ
ノキシ基、フェニルエチニル基の群からなる多重結合を含む基、もしくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群からなる置換基であり、少なくとも一つは多重結合を含む基である。X2は、−O−、または−NH−である。nは、3
〜5の整数を表す。)
【0012】
【化3】

【0013】
(式(3)中、R5は、同一でも異なっていてもよく、ビニル基、アリル基、イソプロペ
ノキシ基、フェニルエチニル基の群から選ばれる多重結合を含む基、または、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群から選ばれる原子もしくは基であり、少なくとも一つは多重結合を含む基である。rは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群から選ばれる原子もしくは基である。aは3〜4の整数、bは0〜1の整数で、a+b=4である。)
このような本発明の樹脂成形物の表面処理方法では、前記遷移金属塩が、遷移金属の酢酸塩、フッ化物塩、塩化物塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物塩、アルコラート塩、シュウ酸塩およびカルボン酸塩からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の樹脂成形物の表面処理方法では、樹脂成形物に部分的に光を照射し、加熱処理した後に、該樹脂成形物を、前記遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液と接触させることが好ましい。
【0015】
本発明の樹脂成形物の表面処理方法では、樹脂成形物が、基板上あるいは立体物上に、ケイ素含有化合物(A)とケイ素含有重合体(B)と、溶媒とを含む塗布液を塗布し、溶媒を除去して得られた樹脂組成物被膜であることが好ましい。
【0016】
本発明の樹脂成形物の表面処理方法では、樹脂成形物が、基板上に、基板あるいは立体物上に、ケイ素含有化合物(A)とケイ素含有重合体(B)と、溶媒とを含む塗布液を塗布し、溶媒を除去して得られた樹脂組成物被膜であり、
樹脂成形物に部分的に光を照射し、加熱処理した後に、該樹脂成形物を、前記遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液と接触させて、前記樹脂成形物上の非露光部に遷移金属の微粒子を形成させ、
さらに金属メッキを行って、非露光部に金属メッキ層を形成することが好ましい。
【0017】
また、本発明では、樹脂成形物が、立体物上に、ケイ素含有化合物(A)とケイ素含有重合体(B)と、溶媒とを含む塗布液を塗布し、溶媒を除去して得られた樹脂組成物被膜であり、
樹脂成形物に部分的に光を照射し、加熱処理した後に、該樹脂成形物を、前記遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液と接触させて、前記樹脂成形物上の非露光部に遷移金属の微粒子を形成させ、
さらに金属メッキを行って、非露光部に金属メッキ層を形成することも好ましい。
【0018】
本発明の表面処理樹脂成形物は、上記本発明の樹脂成形物の表面処理方法で得られることを特徴としている。
また、本発明の表面処理樹脂成形物は、
前記式(1)、(2)および(3)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のケイ素含有化合物(A)と、
ケイ素含有重合体(B)と
を含有する樹脂組成物からなる樹脂成形物の表面の少なくとも一部に、
遷移金属微粒子が形成されてなることを特徴としている。
【0019】
このような本発明の表面処理樹脂成形物では、樹脂成形物が、基板上あるいは立体物上に形成された樹脂組成物被膜であることが好ましく、樹脂成形物が、基材あるいは立体物と一体であることがより好ましい。
【0020】
本発明の表面処理樹脂成形物では、遷移金属微粒子が形成された部位に、さらに金属メッキ層が形成されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、多重結合を置換基として有するケイ素含有化合物とケイ素含有重合体とからなる樹脂成形物を、特定の遷移金属塩溶液と接触させる事で、その表面に遷移金属層を形成することができる。さらには、樹脂成形物の一部を露光することにより、樹脂成形物上の所望の箇所のみに、高精細に遷移金属層を形成することができ、さらに金属メッキ層を形成することもできる。このような本発明の表面処理によれば、導電性の付与や、帯電防止機能の付与を行うことができる。また本発明によれば、任意の形状物に装飾上の美観を与えたメタライズ製品を提供することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の樹脂成形物の表面処理方法では、特定のケイ素含有化合物(A)と、ケイ素含有重合体(B)とを含有する樹脂成形物を、遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液と接触させることにより、樹脂成形物の表面および/または内部に、遷移金属の微粒子を形成させる。
【0023】
ケイ素含有化合物(A)
本発明で用いられるケイ素含有化合物(A)は、下記式(1)、(2)および(3)のいずれかで表される、多重結合を含む基を有する化合物よりなる群から選ばれる1種以上である。
【0024】
【化4】

【0025】
(式(1)中、R1は、ビニル基、アリル基、イソプロペノキシ基、フェニルエチニル基
の群から選ばれる多重結合を含む基である。R2は、同一でも異なっていてもよく、ビニ
ル基、アリル基、イソプロペノキシ基、フェニルエチニル基の群からなる多重結合を含む基、または、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群から選ばれる原子もしくは基であり、少なくとも一つは多重結合を含む基である。R3
、同一でも異なっていてもよく、ビニル基、アリル基、イソプロペノキシ基、フェニルエチニル基の群から選ばれる多重結合を含む基、または、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群から選ばれる原子もしくは基である。X1は、
直接結合、−O−、−NH−、−CH2−、−CH2CH2−、の群から選ばれる連結基である。mは、0〜2の整数を表す。)
【0026】
【化5】

【0027】
(式(2)中、R4は、同一でも異なっていてもよく、ビニル基、アリル基、イソプロペ
ノキシ基、フェニルエチニル基の群からなる多重結合を含む基、もしくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群からなる置換基であり、少なくとも一つは多重結合を含む基である。X2は、−O−、または−NH−である。nは、3
〜5の整数を表す。)
【0028】
【化6】

【0029】
(式(3)中、R5は、同一でも異なっていてもよく、ビニル基、アリル基、イソプロペ
ノキシ基、フェニルエチニル基の群から選ばれる多重結合を含む基、または、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群から選ばれる原子もしくは基であり、少なくとも一つは多重結合を含む基である。rは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群から選ばれる原子もしくは基である。aは3〜4の整数、bは0〜1の整数で、a+b=4である。)
前記式(1)で表される化合物としては、ジビニルメチルシラン、ジメチルジビニルシラン、ジビニルフェニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、ジアリルメチルシラン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルフェニルシラン、ジアリルジフェニルシラン、メチルトリビニルシラン、フェニルトリビニルシラン、メチルトリアリルシラン、フェニルトリアリルシラン、トリビニルシラン、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシラン、トリアリルシラン、トリアリルメトキシシラン、トリアリルエトキシシラン、テトラビニルシラン、テトラアリルシラン、ビス(フェニルエチニル)ジメチルシラン、ジイソプロペノキシジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジフェニル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラビニルジシロキサン、1,1,1,3,3,3−ヘキサビニルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジメチル−1,3−ジフェニル−1,3−ジビニルジシラザン、1,3−ジアリル−1,3−ジメチル−1,3−ジフェニルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラン、1,3−ジアリル−1,1,3,3−テトラメチルジシラン、1,4−ジビニル−1,1,4,4−テトラメチルジシリルエタン、1,5−ジビニル−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,1,3,5,5−ペンタメチルトリシロキサン、1,5−ジビニル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン等が好ましく用いられる。
【0030】
前記式(2)で表される化合物としては、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタメチル−2,4,6,8,10−ペンタビニルシクロペンタシロキサン、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリビニルシクロトリシラザン、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシラザン等が好ましく用いられる。
【0031】
前記式(3)で表される化合物としては、トリス(ビニルジメチルシロキシ)メチルシラン、テトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シラン等が好ましく用いられる。
これらのケイ素含有化合物(A)は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ケイ素含有重合体(B)
本発明で用いられるケイ素含有重合体(B)としては、ポリシラン類として公知の重合体をいずれも好適に用いることができるが、Si−H結合もしくはSi−Si結合を有する重合体が好ましく、さらにはSi−H結合を有する重合体がより好ましい。
【0033】
また、本発明で用いられるケイ素含有重合体(B)としては、下記式(4)で表される重合体を好適に用いることができる。
(G12Si)n …(4)
(式(4)中、G1、G2は、それぞれ独立に、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキン基、アリール基、複素環基を表し、nは5〜100,000の整数を表す。)
また式(4)で表される重合体この中では、G1、G2のいずれかが水素であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明で用いられるケイ素含有重合体(B)は、成形可能であればよく、特に限定されるものではないが、前述したケイ素含有化合物(A)とともに溶媒に溶解あるいは分散し
た塗布液をとし、これを基材上に塗布し、溶媒を除去して樹脂組成物膜を形成できるのがのぞましい。このためケイ素含有重合体(B)の重量平均分子量は、合成の容易さ、溶媒への溶解性、成膜性などから、500〜6,000,000程度の範囲が好ましい。
【0035】
本発明で用いるケイ素含有重合体(B)は、既知の合成法で合成でき、高純度の窒素雰囲気下で製造されるのが好ましい。
ケイ素含有重合体(B)は、一種単独で用いてもよく、また、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
樹脂組成物
本発明に係る樹脂成形物を構成する樹脂組成物は、上述したケイ素含有化合物(A)およびケイ素含有重合体(B)を含有していればよく、特に限定されるものではないが、ケイ素含有重合体(B)100質量部に対するケイ素含有化合物(A)の割合が、好ましくは0.1〜200質量部、より好ましくは1〜100質量部、さらに好ましくは10〜50質量部であることが望ましい。ケイ素含有化合物(A)の量が、ケイ素含有重合体(B)100質量部に対して0.1質量部よりも少ない場合には、樹脂組成物の架橋反応が不十分となり、後続する遷移金属塩との接触時などにおいて、樹脂成形物の耐溶剤性が低下し、パターンの解像度が低下する場合があるため好ましくない。また、200質量部よりも多い場合には、樹脂成形体上に形成される遷移金属微粒子層の均質性が低下する場合があるので好ましくない。
【0037】
本発明に係るケイ素含有化合物(A)は、単独で用いてもよいが、過酸化物、過酸エステル類、1,3,5−トリアジン類、アミンオキシド類、ホスフィンオキシド類、スルフィンオキシド類、スルフォン類、アゾ化合物等のような光ラジカル発生剤と共に用いることも好ましい。このため本発明に係る樹脂組成物は、溶媒以外の成分として、上述したケイ素含有化合物(A)およびケイ素含有重合体(B)を含有していればよいが、さらに過酸化物、過酸エステル類、1,3,5−トリアジン類、アミンオキシド類、ホスフィンオキシド類、スルフィンオキシド類、スルフォン類、アゾ化合物等のような光ラジカル発生剤を含有してもよい。
【0038】
また、本発明に係る樹脂組成物は、所望に応じて、樹脂に添加される公知の添加剤を含有してもよい。
樹脂成形物
本発明に係る樹脂成形物は、上述したケイ素含有化合物(A)とケイ素含有重合体(B)とを含有する樹脂組成物からなるものであって、その成形法および形状は特に限定されないが、好ましくは、溶媒を含有する樹脂組成物である塗布液を基材上に塗布し、溶媒を除去して得られた成形物であることが好ましい。
【0039】
基板または立体物などの基材上に、樹脂組成物の被膜あるいは薄膜を形成する方法としては、溶媒を含有する樹脂組成物である塗布液を調製し、該塗布液を基体上に塗布した後、常圧あるいは減圧で常温下、または加温して溶媒を揮散させ薄膜を得る方法が挙げられる。このときの乾燥温度は30℃〜160℃の範囲が好ましい。
【0040】
塗布液としては、ケイ素含有化合物(A)、ケイ素含有重合体(B)および所望により光ラジカル発生剤などのその他の添加剤とを含む樹脂組成物を、溶媒に溶解あるいは分散した塗布液をいずれも用いることができる。溶媒の種類は、樹脂組成物の成分を溶解あるいは分散し得るものであれば特に限定されることなく用いることができ、また、塗付する基材に応じて選択して用いることができる。好適に用いられる溶媒の例としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、メタノール
、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
樹脂成形物の成形に用いる塗布液の濃度は、基板あるいは立体物などの基材に塗布し得る濃度であればよく、成形物の形成方法に応じて任意の濃度とすることができる。
塗布液の基材上への塗布は、どのような方法で行ってもよく、特に限定されるものではないが、例えば、ディップコート法、スプレー法、キャスト法、インクジェット法、スクリーン印刷法などが挙げられる。
【0042】
基材としては、溶媒を含有する樹脂組成物である塗布液を塗布できる材料であれば、材質は特に問わないが、さまざまな用途で実績のあるガラス、石英、ポリイミド、シリコン、ガラスエポキシ樹脂が好ましく、これらの材料からなる平板あるいは立体形状物が好適である。また、PETフィルムなど、溶液流延法により樹脂をフィルム状に成形する際に用いられるフィルム状あるいは板状の基材を用いることも好ましい。さらに、本発明に係る塗布液は任意の形状の物体に塗布できるので、フレキシブル基板、多層基板やビルドアップ基板などの配線基板や、光電素子や半導体素子を載せる非平板状のパッケージ、太陽電池や各種ディスプレーなどの大型機器の配線、医療機器などの高密度微細配線を要する基板、マイクロマシンのMEMS形成のための配線を要する基板を基材とすることができる。また基材に形成されたケイ素含有重合体組成物の膜を基体から剥離させて、フィルムあるいはシート状の樹脂成形物として用いてもよい。さらに本発明では、塗布液を基材の表面処理したい面の全面に塗布して樹脂成形物を得てもよいし、配線基板のスルーホール部や上に挙げた基体の配線を要する箇所にのみに塗布して成形物を形成させてもよい。
【0043】
このような本発明で用いる樹脂成形物は、樹脂組成物のみからなる成形物であってもよく、樹脂成形物が基板や立体物などの基材上に樹脂組成物の被膜として形成されたものであって、基板あるいは立体物と一体となったものであってもよい。いずれの場合にも、樹脂組成物が被膜状あるいは薄膜状に形成された樹脂成形物であることが、露光処理あるいは加熱による架橋形成などの工程において良好な効果が得られるため好ましい。
【0044】
樹脂成形物が基材上に被膜状あるいは薄膜状に成形されている場合、樹脂成形物の厚さは、通常0.01μm以上であるのが望ましく、たとえば0.01〜1000μm、好ましくは0.1〜100μm程度の厚さとすることができる。樹脂成形物の厚さが0.01μm未満であると、遷移金属の微粒子形成、および所望に応じて金属メッキ層を形成する場合に、遷移金属の微粒子層あるいは金属メッキ層が不均一となる場合があり、また、厚すぎる場合には溶媒の除去などの効率が低下する場合があるほか、樹脂成形物が基板あるいは立体物などの基材と一体である場合に密着性が低下する場合がある。
【0045】
露光
本発明では、樹脂成形物上への遷移金属微粒子の形成を、樹脂成形物の表面全体に対して行ってもよく、所望の一部のみに行ってもよい。樹脂成形物上への遷移金属微粒子の形成を、任意の一部のみに施す場合、遷移金属微粒子を形成したい部位をマスキングして露光することにより、潜像を形成し、非露光部のみに遷移金属微粒子を形成することができる。
【0046】
本発明では、未露光の樹脂成形物に遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液を接触させた場合には、樹脂成形物が還元性を有することにより、接触部位に遷移金属微粒子を形成させることができる。一方で、紫外光の露光により樹脂成形物の還元性は消失する。この性質を利用して、所望のパターンが形成されたフォトマスクを通して紫外光を露光することにより、樹脂成形体の非露光部にのみ選択的に遷移金属を析出させることができ、レジスト等
を用いることなく簡便に、任意のパターンの形成が可能となる。ここで用いる紫外光の光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、ハロゲンランプなどの光源が好ましいがこの限りではない。
【0047】
加熱処理
本発明に係る樹脂成形体は、加熱処理を行うことにより樹脂組成物内で架橋構造が形成され、遷移金属塩のドープ時などにおける耐溶剤性が向上し、遷移金属微粒子層の安定性が向上する効果が得られる。パターンを形成する場合など、前述した紫外光の露光を樹脂成形体の一部に行う場合には、加熱処理は露光後に行うのが望ましい。加熱処理の温度は、50〜200℃の範囲であるのが好ましい。
【0048】
遷移金属塩
本発明の表面処理方法で用いる遷移金属塩は、そのカウンターアニオンが、ケイ素含有重合体(B)のケイ素原子に配位し得る遷移金属塩である。ここで、ケイ素含有重合体のケイ素原子に配位しうる遷移金属塩のカウンターアニオンとは、そのアニオン中心の原子のポーリング(Pauling)の電気陰性度が、好ましくはBr(臭素)の値を超えるものである。
【0049】
本発明で用いられる遷移金属塩としては、遷移金属の酢酸塩、フッ化物塩、塩化物塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物塩、アルコラート塩、シュウ酸塩、カルボン酸塩からなる群の1種または2種以上が好ましく挙げられる。遷移金属としてはさまざまな用途に用いられる、銅、ニッケル、鉄、コバルト、チタン、バナジウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、クロム、マンガンが好ましく、なかでも銅、ニッケル、鉄、コバルトが実用的に特に好ましい。遷移金属塩の量は、該ケイ素含有重合体組成物100質量部に対して通常1〜1000質量部、好ましくは1〜100質量部である。遷移金属塩溶液あるいは懸濁液の溶剤としては、該遷移金属塩をある量溶解し、該ケイ素含有重合体組成物を少量のみ溶解する溶媒が好ましい。具体的にはアセトニトリル,メタノール,エタノール,2−プロパノールが好ましい。
【0050】
本発明では、遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液を、樹脂成形物と接触させることにより、樹脂成形物上および/または樹脂成形物中に、遷移金属の微粒子を析出させることができる。樹脂成形物の一部に対して前述の露光を行った場合には、樹脂成形物上および/または樹脂成形物中の非露光部のみに遷移金属の微粒子を形成させることができる。
【0051】
金属メッキ
本発明の表面処理方法では、樹脂成形物上および/または樹脂成形物中に遷移金属の微粒子を形成させた後、遷移金属微粒子の形成部に対してさらに金属メッキを行うことも好ましい。本発明の表面処理方法では、樹脂成形物の一部に対して前述の露光を行った場合には、非露光部のみに選択的に金属メッキ層を形成させることができる。金属をメッキすることにより装飾性や、導電性、配線の信頼性を高めることができる。メッキを行う金属としては、銅、ニッケル、金、銀などが好ましく挙げられ、該ケイ素含有重合体組成物により還元されて生成する遷移金属微粒子と同一でも異なっていても良い。
【0052】
遷移金属微粒子が形成された樹脂成形物上への金属メッキは、無電解メッキにより好適に行うことができる。上記方法にて形成され遷移金属微粒子は通常触媒活性を有し、無電解メッキ液に浸漬することにより、好適に金属層を形成することができる。形成された金属層は、導体層として作用する。
【0053】
無電解メッキ液は、公知の金属メッキ液を広く用いることができるが、好ましい例として、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、銅、ニッケル、コバルトの無電解メッキ液を
挙げることができる。無電解メッキ液へ浸漬する際、メッキ液の温度は用いるメッキ液の種類にもよるが、通常10〜150℃、より好ましくは25〜80℃である。またメッキ液への浸漬時間もメッキ液の種類にもよるが、通常1分〜12時間、より好ましくは5分〜1時間である。
【0054】
また、本発明の表面処理方法では、無電解メッキにより表面に金属層を形成した表面処理樹脂成形物を、そのまま好適に用いることができるが、必要に応じて、さらに電解メッキ処理を行うこともできる。電解メッキ処理を行うことによって、樹脂成形物の、無電解メッキにより形成された金属層上のみに電解メッキによる金属層が積層される。電解メッキには、公知の電解メッキ液を広く用いることができ、特に限定されるものではないが、好ましくは、金、銅、ニッケル等の電解メッキ液を挙げることができる。電解メッキの処理条件は、用いるメッキ液の種類によるが、通常電圧0.01〜10V、電流0.1〜1
0A、メッキ時間1分〜12時間、より好ましくは5分〜1時間である。
【0055】
金属メッキ層の厚みは、使用される目的に応じて選択できるが、通常0.01〜100μm、好ましくは0.1〜50μmの厚みが好ましい。
表面処理樹脂成形物
本発明に係る表面処理樹脂成形物は、上述した表面処理方法により好適に製造することができる。
【0056】
たとえば、プリント配線基板を作製する場合の好適な製造方法としては、プリント配線基板となる基体の上に、樹脂組成物を含む塗布液を塗布し、溶媒を除去することにより樹脂組成物薄膜を形成し、配線パターンに対応したパターンが形成されたフォトマスクを通して、紫外光を露光する。次にこれを好ましくは50〜200℃で加熱処理して遷移金属塩溶液あるいは懸濁液に浸漬すると、光を露光した部分には遷移金属微粒子が生成せず、非露光部にのみ遷移金属微粒子が形成される。これに金属無電解メッキすると、非露光部の遷移金属微粒子が形成された部分にのみ、メッキ金属が析出して金属配線パターンが得られる。基体にスルーホールが形成されている場合等、スルーホール内にもケイ素含有重合体組成物の層が形成され、フォトマスクでスルーホール部に光が当たらないようにすると、スルーホール内に金属メッキが施されて配線基板の表裏の導通をとることができる。この場合も基体の材料は広い材料から選択できる。従来配線基板として用いられているガラスエポキシ基板や、ポリイミド基板が好適に用いられる。また立体物に同様の処理を行うことにより、少なくとも外表面に配線パターンを備えた光電素子や半導体素子搭載用パッケージなどが得られる。
【0057】
またたとえば、立体物を基材とし、その上にケイ素含有重合体組成物の薄膜を塗布形成し、これを遷移金属塩溶液に浸漬するなどしてケイ素含有重合体組成物全面に遷移金属微粒子を析出させて、この上に金属メッキをすることにより、表面をメタライズした立体物を得ることができる。この場合、基材の材料は、樹脂組成物を含む塗布液を塗布して、樹脂組成物薄膜を形成し得るものであればよく、広い材料から選択する事ができる。
【0058】
また本発明で得られる物品としては、例えば配線基板、電子素子、受発光素子、電子素子や光素子を収めるパッケージ、電磁シールド材料などの電子部品、光学部品や電子材料、アンテナ、モーター、インダクタンス素子などの磁性部品あるいは磁性材料、マイクロマシンの構造体、金属色を有する装飾品などが好ましい例として挙げられるが、この限りではない。
【0059】
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、部はすべて質量部を表し、物性値は25℃における値である。本発明で用いるケイ素含有重合体は、ウルツ(Wurz)法やメタロセン法などの既知の合成法で合成できる。また各実施例および比較例において、紫外光露光は、オーク製作所製HMW−532D(超高圧水銀灯)を用いて行い、無電解銅鍍金の鍍金浴は奥野製薬工業製のATSアドカッパー液を用いた。
[ケイ素系重合体(ポリシラン)の合成例]
予め乾燥させた1Lの2つ口フラスコに、フェニルシランPhSiH(信越化学工業社製)108g、およびトルエン(和光純薬工業社製;脱水グレード)60mLを装入し
、窒素雰囲気・室温下で撹拌して均一な溶液とした。これに(Cp)2ZrMe2(アルドリッチ社製)0.63gを装入し24時間撹拌を続けた。得られた樹脂溶液にトルエン
320mL、1N-塩酸 160mLを装入し撹拌後分液を行い、有機相を4回水洗した。有機相は硫酸マグネシウムで脱水した後、ろ過で硫酸マグネシウムを除、トルエンを減圧留去した。得られた粘度の高い黄色溶液にTHF80mLを加え均一に溶解させた。この黄色溶液を、強撹拌したアセトニトリル1L中に排出し、透明な上澄みをデカンテーションで除いた。この洗浄操作を計2回実施し室温下真空乾燥を8時間行うことで、淡黄色粉のポリフェニルシラン(PhSiH)70gを得た(重量平均分子量8,000)。
【0060】
[実施例1]
ケイ素含有重合体(B)として上記合成例で得たポリフェニルシラン(C65SiH)20部と、多重結合を置換基として有するケイ素含有化合物(A)としてジメチルジビニルシラン4部とを、トルエン180部に溶解し、ガラスエポキシ基板上にスピンコート(500rpm、20秒)し、60 ℃で30分減圧乾燥して、基板上にポリシラン組成
物の膜を形成した。この基板に、ライン/スペース(L/S)で100μm、50μm、30μm、20μmのストライプパターンが描かれたフォトマスクを通して紫外光を1.2J/cm2照射した。この基板を150℃で1時間減圧乾燥し、室温まで冷却した後に
、窒素雰囲気下で0.5部の酢酸銅(I)を99.5部のアセトニトリルに溶かした溶液
に10分間浸漬し、アセトニトリルで10秒間洗浄して5分間窒素気流で乾燥した。さらにこの基板を無電解銅鍍金液に30分間浸漬した後、水洗し、5分間窒素気流乾燥させて、表面に銅層を形成した基板を得た。形成された最も微細な銅ストライプパターンの線幅は、50μmであった。
【0061】
[実施例2〜16]
多重結合を置換基として有するケイ素含有化合物(A)とその添加量を、表1に示す種類および量に変更する以外は、実施例1と同様にして操作を行い、ガラスエポキシ基板上に銅層を形成した。用いた化合物、添加量と実施の結果を表1に示す。多重結合を置換基として有するケイ素含有化合物を各種実施した結果、いずれも形成された最も微細な銅ストライプパターンの線幅は、50μmであった。
【0062】
[比較例1]
多重結合を置換基として有するケイ素含有化合物(A)を用いず、実施例1と同様の操作を行い、ガラスエポキシ基板上に銅層を形成した。実施の結果を表1に示す。形成された最も微細な銅ストライプパターンの線幅は、100μmであり、50μm幅のパターンは形成されていなかった。
【0063】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る樹脂成形体の表面処理方法および表面処理物は、回路基板、半導体基板等の電子材料作成、太陽電池や各種ディスプレーなどの大型機器の配線に使用する導電性材料、電磁シールド材、ロボット、情報家電、携帯電話、携帯機器などの分野に応用可能であり、電気、電子、通信分野に広く用いることができる他、自動車、モーターなどの部品や内臓検査・治療などの医療器具の微細配線、マイクロマシンの構造体を接続する配線やメタライズ等にも応用可能である。また、磁性をもつ遷移金属を使用すれば、磁気材料としても応用できる。その他、表面に金属層を形成した装飾品の作成にも応用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)、(2)および(3)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のケイ素含有化合物(A)と、
ケイ素含有重合体(B)と
を含有する樹脂組成物からなる樹脂成形物を、
カウンターアニオンがケイ素含有重合体のケイ素原子に配位し得る遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液と接触させることにより、
前記樹脂成形物上および/または樹脂成形物中に、遷移金属の微粒子を形成させることを特徴とする樹脂成形物の表面処理方法。
【化1】

(式(1)中、R1は、ビニル基、アリル基、イソプロペノキシ基、フェニルエチニル基
の群から選ばれる多重結合を含む基である。R2は、同一でも異なっていてもよく、ビニ
ル基、アリル基、イソプロペノキシ基、フェニルエチニル基の群からなる多重結合を含む基、または、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群から選ばれる原子もしくは基であり、少なくとも一つは多重結合を含む基である。R3
、同一でも異なっていてもよく、ビニル基、アリル基、イソプロペノキシ基、フェニルエチニル基の群から選ばれる多重結合を含む基、または、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群から選ばれる原子もしくは基である。X1は、
直接結合、−O−、−NH−、−CH2−、−CH2CH2−、の群から選ばれる連結基である。mは、0〜2の整数を表す。)
【化2】

(式(2)中、R4は、同一でも異なっていてもよく、ビニル基、アリル基、イソプロペ
ノキシ基、フェニルエチニル基の群からなる多重結合を含む基、もしくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群からなる置換基であり、少なくとも一つは多重結合を含む基である。X2は、−O−、または−NH−である。nは、3
〜5の整数を表す。)
【化3】

(式(3)中、R5は、同一でも異なっていてもよく、ビニル基、アリル基、イソプロペ
ノキシ基、フェニルエチニル基の群から選ばれる多重結合を含む基、または、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群から選ばれる原子もしく
は基であり、少なくとも一つは多重結合を含む基である。rは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基の群から選ばれる原子もしくは基である。aは3〜4の整数、bは0〜1の整数で、a+b=4である。)
【請求項2】
前記遷移金属塩が、遷移金属の酢酸塩、フッ化物塩、塩化物塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物塩、アルコラート塩、シュウ酸塩およびカルボン酸塩からなる群から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形物の表面処理方法。
【請求項3】
樹脂成形物に部分的に光を照射し、加熱処理した後に、該樹脂成形物を、前記遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液と接触させることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形物の表面処理方法。
【請求項4】
樹脂成形物が、基板上あるいは立体物上に、ケイ素含有化合物(A)とケイ素含有重合体(B)と、溶媒とを含む塗布液を塗布し、溶媒を除去して得られた樹脂組成物被膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂成形物の表面処理方法。
【請求項5】
樹脂成形物が、基板上に、基板あるいは立体物上に、ケイ素含有化合物(A)とケイ素含有重合体(B)と、溶媒とを含む塗布液を塗布し、溶媒を除去して得られた樹脂組成物被膜であり、
樹脂成形物に部分的に光を照射し、加熱処理した後に、該樹脂成形物を、前記遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液と接触させて、前記樹脂成形物上の非露光部に遷移金属の微粒子を形成させ、
さらに金属メッキを行って、非露光部に金属メッキ層を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂成形物の表面処理方法。
【請求項6】
樹脂成形物が、立体物上に、ケイ素含有化合物(A)とケイ素含有重合体(B)と、溶媒とを含む塗布液を塗布し、溶媒を除去して得られた樹脂組成物被膜であり、
樹脂成形物に部分的に光を照射し、加熱処理した後に、該樹脂成形物を、前記遷移金属塩の溶液あるいは懸濁液と接触させて、前記樹脂成形物上の非露光部に遷移金属の微粒子を形成させ、
さらに金属メッキを行って、非露光部に金属メッキ層を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂成形物の表面処理方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかの処理方法で得られることを特徴とする表面処理樹脂成形物。
【請求項8】
前記式(1)、(2)および(3)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のケイ素含有化合物(A)と、
ケイ素含有重合体(B)と
を含有する樹脂組成物からなる樹脂成形物の表面の少なくとも一部に、
遷移金属微粒子が形成されてなることを特徴とする表面処理樹脂成形物。
【請求項9】
樹脂成形物が、基板上あるいは立体物上に形成された樹脂組成物被膜であることを特徴とする請求項8に記載の表面処理樹脂成形物。
【請求項10】
樹脂成形物が、基材あるいは立体物と一体であることを特徴とする請求項9に記載の表面処理樹脂成形物。
【請求項11】
遷移金属微粒子が形成された部位に、さらに金属メッキ層が形成されてなることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の表面処理樹脂成形物。

【公開番号】特開2009−173748(P2009−173748A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12718(P2008−12718)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】