説明

樹脂成形部品の製造方法

【課題】必要部分の寸法精度の向上を図り、歩留まりの改善を図ることのできる樹脂成形部品の製造方法を提供する。
【解決手段】互いに対向する1対のアーム11を有し、アーム11の対向部間の間隔Hに精度が要求される樹脂成形部品の製造方法において、1対のアーム11の各々の先端部に成形用のゲート21を配置し、2つのゲート21とそれら2つのゲート21をつなぐランナ22を含めた部分の樹脂残留部を、1対のアームの先端間をつなぐブリッジ部材20として一体に付けた状態で樹脂成形部品10を射出成形し、ブリッジ部材20を付けた状態のまま射出成形品をアニール処理し、アニール処理後にゲート21の位置でブリッジ部材20をカットして製品を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1対のアームの対向部間の間隔に精度が要求される略U字状の樹脂成形部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のヘッドアップディスプレイ装置のミラーを動かすスライド板として、この種の樹脂成形部品が使われている。
図2はその使用例を示している。図中符号10で示すものが略U字状のスライド板(樹脂成形部品)、50で示すものがミラーである。スライド板10は、互いに対向する1対のアーム11を有しており、1対のアーム11の基端が連結部12によって相互に連結され、1対のアーム11の各先端が自由端として解放されている。
【0003】
そして、1対のアーム11の対向面に突設した凸部13の間に、回動可能に支持されたミラー50の操作端51を挟んでおり、図示されないステッピングモータとその出力軸に設けられたボールネジ機構によって、スライド板10を矢印Aのようにリニア駆動することにより、ミラー50を矢印Bのように回動させて、ミラー50の角度を調節できるようになっている。
【0004】
図3はスライド板10の詳細図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
このスライド板10は、互いに対向する1対のアーム11を有し、1対のアーム11の基端が連結部12によって相互に連結され、1対のアーム11の各先端が自由端として解放され、全体として略U字状に形成されている。アーム11の先端の対向面にはそれぞれ凸部13が設けられ、凸部13の先端間(対向部間)の間隔Hに高精度が要求されている。また、連結部12には側方からU字形の切欠14が設けられている。
【0005】
このスライド板10を成形するに当たっては、1対のアーム11の各々の先端部に成形用のゲート21を配置し、2つのゲート21とそれら2つのゲート21をつなぐランナ22を含めた部分の樹脂残留部を、1対のアーム11の先端間をつなぐブリッジ部材20として一体に付けた状態で射出成形している。また、U字形の切欠14の開口端には、寸法保持のためのストッパ25を一体に設けている。これらブリッジ部材20やストッパ25は、製品としては不要であるため、成形後にカットしている。
【0006】
製品であるスライド板10を得るまでの従来の製造方法を、図4を用いて説明すると、まず、(a)に示すように、ゲート21とランナ22を有するブリッジ部材20をアーム11の先端に付けた状態でスライド板10を成形する。次に(b)に示すように、成形直後に不要部であるブリッジ部材20をカットする。カット後に、(c)に示すように、成形品をアニール室30に入れてアニール処理する。そして、(d)に示すように、アニール処理後の部品を製品として提供している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来は、部品の成形直後にアーム11の先端間をつなぐブリッジ部材20をカットし、その後でアニール処理をしているため、成形条件の微妙な変化や材料ロットの変更などにより、図4(d)中の矢印Cで示すように、アーム11が内側に倒れるように変形することがあり、寸法選別を実施した際に歩留まりが悪くなる問題があった。例えば、20%以上が不良品となることがあった。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、必要部分の寸法精度の向上を図り、歩留まりの改善を図ることのできる樹脂成形部品の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、互いに対向する1対のアームを有し、該1対のアームの基端が連結部によって相互に連結され、該1対のアームの各先端が自由端として解放され、上記1対のアームの対向部間の間隔に精度が要求される樹脂成形部品の製造方法において、上記1対のアームの各々の先端部に成形用のゲートを配置し、該2つのゲートとそれら2つのゲートをつなぐランナを含めた部分の樹脂残留部を、上記1対のアームの先端間をつなぐブリッジ部材として一体に付けた状態で上記樹脂成形部品を射出成形し、上記ブリッジ部材を付けた状態のまま射出成形品をアニール処理し、アニール処理後に上記ゲートの位置で上記ブリッジ部材をカットして製品を得ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、射出成形した部品をブリッジ部材を付けたままアニール処理し、部品の内部残留応力を取り除いた後に、ブリッジ部材をカットするので、アームの対向部間の間隔の精度を高めることができる。従って、寸法選別した場合の歩留まりを良くすることができ、無駄を低減してコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の製造方法の流れを示す工程図である。
【図2】樹脂成形部品(スライド板)の使用例を示す斜視図である。
【図3】樹脂成形部品(スライド板)の詳細図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】従来の製造方法の流れを示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明の実施形態の製造方法の流れを示す工程図である。
ここで製造する部品(スライド板10)の形状は、従来品と同様であるので、図3を参照し、ここでは特に説明はしない。
【0013】
本実施形態の製造方法では、(a)に示すように、まず、1対のアーム11の各々の先端部に成形用のゲート21を配置し、2つのゲート21とそれら2つのゲート21をつなぐランナ22を含めた部分の樹脂残留部を、1対のアーム11の先端間をつなぐブリッジ部材20として一体に付けた状態でスライド板(樹脂成形部品)10を射出成形する。使用する樹脂の種類は、ポリアセタール樹脂などのエンジニアリングプラスチックである。
【0014】
次に、(b)に示すように、成形直後にブリッジ部材20をカットせず、ブリッジ部材20を付けた状態のまま、射出成形品をアニール室30に入れてアニール処理し、内部歪みを除去する。そして、アニール処理後に、(c)に示すように、ゲート21の位置でブリッジ部材20をカットして、(d)のような製品(スライド板10)を得る。
【0015】
このように、射出成形した部品をブリッジ部材20を付けたままの状態でアニール処理し、部品の内部残留応力を取り除いた後に、ブリッジ部材20をカットするようにした場合、アーム11の凸部13間の間隔Hの精度を極めて高く維持することができる。従って、寸法選別した場合の歩留まりを良くすることができ、無駄を低減してコストダウンを図ることができる。
【符号の説明】
【0016】
10 スライド板(樹脂成形部品)
11 アーム
12 連結部
20 ブリッジ部材
21 ゲート
22 ランナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する1対のアームを有し、該1対のアームの基端が連結部によって相互に連結され、該1対のアームの各先端が自由端として解放され、上記1対のアームの対向部間の間隔に精度が要求される樹脂成形部品の製造方法において、
上記1対のアームの各々の先端部に成形用のゲートを配置し、該2つのゲートとそれら2つのゲートをつなぐランナを含めた部分の樹脂残留部を、上記1対のアームの先端間をつなぐブリッジ部材として一体に付けた状態で上記樹脂成形部品を射出成形し、上記ブリッジ部材を付けた状態のまま射出成形品をアニール処理し、アニール処理後に上記ゲートの位置で上記ブリッジ部材をカットして製品を得ることを特徴とする樹脂成形部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−152641(P2011−152641A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13797(P2010−13797)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(594111292)三菱マテリアルシ−エムアイ株式会社 (54)
【Fターム(参考)】