説明

樹脂用成形金型および樹脂成形方法

【課題】 従来の樹脂用成形金型では、熱伝導率が非常に高い黒鉛系材が高配合された樹脂部材に対しては流動性の悪化を十分に防止することができなかった。また、キャビティ内に金型とは別部材である入れ子を設ける必要があるため、金型の部品点数が増加してコスト高となってしまっていた。
【解決手段】 金属部材にて構成される金型母材11のキャビティ面11aに、熱伝導率が0.1W/m・K以下、摩擦係数が1.0以下、且つビッカース硬度が1500Hv以上である薄膜層13が形成され、重量比で黒鉛を主成分として含有する樹脂部材の成形に用いられる樹脂用成形金型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂部材射出時における、樹脂部材の流動性悪化を防止可能な樹脂用成形金型および樹脂成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用または可搬用等の動力源として注目されている燃料電池には、該燃料電池の各セル間に配置され、水素や酸素の流路を形成するとともに、隣り合う水素の層と酸素の層とを仕切る役割を担うセパレータが備えられている。
このセパレータは、隣り合うセル間の電気的コネクタとしての役割も果たしているため、良好な導電性が必要とされる。
従来は、焼成カーボンを機械加工したものがセパレータとして多く用いられてきたが、最近では熱硬化性樹脂をバインダとして導電材を添加したものを用いる場合が増加してきている。
また、セパレータの材料として熱硬化性樹脂を使用した場合は、該熱硬化性樹脂の固化時間が長くかかり(例えば数分程度)、大量生産には不向きであるため、熱可塑性樹脂を用いて短縮する(例えば固化時間を数分から数十秒へ短縮することができる)ことも行われている。
【0003】
前述のような樹脂部材をセパレータに適用する場合、該セパレータの接触抵抗を低下させるために、樹脂部材に対する導電材の添加割合を高くする必要がある。例えば、樹脂部材に、黒鉛系材で構成される導電材が60wt%以上の割合で配合されている。
しかし、樹脂部材に高い割合で黒鉛系材等の導電材を配合すると、成形時に樹脂部材の流動性が著しく低下し、射出成形することが困難となる。
これは、成形時において、樹脂部材が金型のキャビティ面と接触したときに、急速に冷却されて固化するためであるが、黒鉛系材を高配合した樹脂部材は非常に熱伝導率が高いため、固化速度が特に速い。
従って、黒鉛系材を高配合した樹脂部材では、射出成形を行うことが、特に薄肉成形することが困難となっている。また、セパレータは複雑な溝形状を有しているので、離型がし難く、無理に離型しようとすると応力がかかって変形してしまう恐れもある。
【0004】
そこで、樹脂部材が急速に冷却されることによる成形性の低下を防止するために、金型のキャビティ面に、熱伝導性が低い部材からなる入れ子を設けることが行われている。つまり、熱伝導性が低い入れ子の断熱効果により、キャビティ内に射出された樹脂部材が急速に冷却されることを防止して、成形性の向上を図っている。
また、入れ子の表面には、金型の寿命向上や離型性向上のために、高硬度で低摩擦係数な特性を有する薄膜が形成されている。
このような、熱伝導性が低い入れ子をキャビティ内に設けた金型としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されるものがある。
【特許文献1】特開平11−34068号公報
【特許文献2】特開2003−19717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、キャビティ内に射出された樹脂部材から金型への伝熱を防止するために設けられた入れ子の熱伝導率は、例えば特許文献1に示される入れ子の場合、0.2×10−2〜2×10−2cal/cm・sec・deg(≒0.84〜8.4W/m・K)程度であり、特許文献1に示される入れ子の場合、1.3〜6.3W/m・K程度である。
しかし、この程度の熱伝導率を有する部材にて構成された入れ子をキャビティ内に設けた場合、黒鉛系材を含まない樹脂部材であれば、金型のキャビティ面と接触したときの固化による流動性の悪化を、ある程度効果的に防止することができるが、熱伝導率が非常に高い黒鉛系材が高配合された樹脂部材に対しては流動性の悪化を十分に防止することができなかった。
また、前述の金型では、キャビティ内に金型とは別部材である入れ子を設ける必要があるため、金型の部品点数が増加してコスト高となってしまう。
そこで、本発明においては、黒鉛系材を高配合した樹脂部材に対しても、効果的に流動性の悪化防止を図ることができるとともに、良好な離型性を備えた金型を、別部材である入れ子を組み込むことなく提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する樹脂用成形金型および樹脂成形方法は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1記載の如く、金属部材にて構成される金型のキャビティ表面に、熱伝導率が0.1W/m・K以下、摩擦係数が1.0以下、且つビッカース硬度が1500Hv以上である薄膜層が形成され、重量比で黒鉛を主成分として含有する樹脂部材の成形に用いられる。
これにより、入れ子等の別部材をキャビティ内に組み込むことなく、黒鉛系材を高配合した樹脂部材の熱が金型母材側へ伝達されることを防止して硬化速度を遅くすることができ、樹脂部材はキャビティへの射出時に固化することなく良好な流動性を保持することができる。
従って、樹脂部材を射出成形してできた成形品を薄肉成形することが可能となる。また、金型の部品点数が減少するため、コスト低減を図ることができる。
そして、薄膜層表面の摩擦係数が低いので、成形品の離型性が非常に良好となる。
さらに、薄膜層の硬度が非常に高いので、使用によるキャビティ面の摩耗を抑えることができて、樹脂用成形金型の寿命を延ばすことができる。
【0007】
また、請求項2記載の如く、請求項1に記載の樹脂用成形金型を用いた樹脂成形方法であって、金型のキャビティ内に樹脂部材を射出する前に、前記薄膜層を、加熱手段にて加熱する。
これにより、キャビティ内に射出された樹脂部材は、薄膜層から熱の供給を受けることができ、温度の低下が抑えられて流動性を保持することが可能となって、射出開始から固化するまでの時間を長くすることができる。
従って、さらに成形品の薄肉成形化を図ることが可能となる。
【0008】
また、請求項3記載の如く、前記加熱手段により、薄膜層を、金型のキャビティ内に樹脂部材を射出するときの金型温度以上の温度にまで、加熱する。
これにより、樹脂部材への伝熱を十分に行うことができ、安定した薄肉成形を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂部材の熱が金型母材側へ伝達されることが防止されて、樹脂部材はキャビティへの射出時に良好な流動性を保持することができる。
従って、成形品を薄肉成形することができるとともに、成形品の離型性が非常に良好となり、樹脂用成形金型の寿命を延ばすこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0011】
本発明にかかる樹脂用成形金型1は、金属部材にて構成される金型母材11のキャビティ面11aに薄膜層13を形成して構成されている。
薄膜層13は、例えばTiAlN等のセラミックスにて構成されており、該薄膜層13の熱伝導率は0.1W/m・K以下に構成され、摩擦係数は1.0以下に構成され、さらにビッカース硬度が1500Hv以上に構成されている。
【0012】
また、本樹脂用成形金型1は、特に、重量比で黒鉛を主成分として含有する樹脂部材の成形に用いられ、該樹脂部材は、例えば、燃料電池の各セル間に配置され、水素や酸素の流路を形成するとともに、隣り合う水素の層と酸素の層とを仕切る役割を担うセパレータに成形される。
例えば、本樹脂用成形金型1により成形される樹脂部材は、熱可塑性樹脂であり、導電材としての黒鉛を60wt%以上の割合で含有している(樹脂部材全体の成分のうち60wt%以上が黒鉛である)。
このように、樹脂部材に黒鉛を高配合することで、該樹脂部材を、燃料電池における隣り合うセル間の電気的コネクタとしての役割を担う、良好なセパレータに成形することが可能となっている。
【0013】
樹脂部材に配合される黒鉛は熱伝導率が非常に高いため、成形時においてキャビティ内に射出された樹脂部材が、熱伝導性が高い金属部材にて構成される金型母材11に直接触れると、該樹脂部材が急速に冷却されて固化または流動性が著しく低下することとなる。
しかし、本樹脂用成形金型1は、金型母材11のキャビティ面11aに前記薄膜層13を形成しているので、キャビティ内に射出された樹脂部材は薄膜層13に接触し、金型母材11に直接触れることはない。
【0014】
樹脂部材が触れる薄膜層13は、熱伝導率が0.1W/m・K以下の低熱伝導率な部材にて構成されているので、黒鉛が高配合された樹脂部材の熱が金型母材11側へ伝達されることが防止されて硬化速度が遅くなり、樹脂部材はキャビティへの射出時に固化することなく良好な流動性を保持することができる。
これにより、入れ子等の別部材をキャビティ内に組み込むことなく、樹脂部材を射出成形してできた成形品を薄肉成形することが可能となり、部品点数を削減して低コスト化を図ることもできる。
なお、薄膜層13は、例えば5μm程度の厚みに形成されるが、膜厚寸法が大きい程、大きな断熱効果を奏することができる。
【0015】
また、薄膜層13の表面は低摩擦係数な面に構成されており、薄膜層13表面の摩擦係数は1.0以下となっている。
ここで、黒鉛が高配合された樹脂部材をキャビティ内に射出した場合、黒鉛が高配合された樹脂部材は、通常(黒鉛を含まない)の樹脂部材のようなファウンテンフローを示さず、キャビティ面を滑るように流れていく、といった挙動を示す。
【0016】
従って、本樹脂用成形金型1のように、樹脂部材と接触する薄膜層13の表面を低摩擦係数に構成しておくと、樹脂部材の滑りの効果を増大させ、該樹脂部材の流動性を高めることができて、成形品の薄肉化を図ることが可能となる。
また、薄膜層13の表面の摩擦係数を低く設定すると、成形品の離型性が非常に良好となる。
なお、通常(黒鉛を含まない)の樹脂部材の流れはファウンテンフローを示すので、キャビティ面を滑ることはなく、薄膜層13を形成した場合と形成しない場合とでの樹脂部材の挙動は変化しない。
【0017】
また、金型母材11のキャビティ面11aに薄膜層13を形成する場合、金型母材11のキャビティ面11aの面粗度が高いほど(キャビティ面11aが鏡面に近いほど)、成形品の離型性の向上、および樹脂部材の流動性の向上を図ることができる。
さらに、本例では、薄膜層13としてセラミックを用いているが、それに限るものではなく、樹脂用成形金型1に用いた場合に耐熱性(例えば400℃以上の耐熱性)を有する材料であればよい。
【0018】
また、樹脂用成形金型1においては、金型母材11のビッカース硬度が400Hvに構成され、薄膜層13のビッカース硬度が1500Hv以上に構成されており、薄膜層13は金型母材11の硬度の3倍以上の硬度を有している。
このように、非常に高い硬度を有した薄膜層13をキャビティ面11aに形成することで、使用によるキャビティ面11aの摩耗を抑えることができて、樹脂用成形金型1の寿命を延ばすことができる。
【0019】
以上のごとく構成される、キャビティ内に射出される樹脂部材の流動性を向上して成形品の薄肉化、および離型性の向上を図ることが可能な樹脂用成形金型1においては、次のような樹脂成形方法により射出成形を行うことで、さらに成形品の薄肉化を図ることができる。
【0020】
つまり、図2に示すように、樹脂用成形金型1のキャビティ内に樹脂部材を射出する前に、前記薄膜層13を、レーザー照射器21等の加熱手段にて加熱し、加熱が完了した後にキャビティ内への樹脂部材の射出を開始する。
この場合、薄膜層13のレーザー照射器21による加熱は、該薄膜層13の温度が、キャビティ内に樹脂部材を射出するときの金型母材11の温度以上となるまで行う。
このように、薄膜層13を加熱すると、該薄膜層13は熱伝導率が低く構成されているので、その熱を薄膜層13内(特に薄膜層13の表面側)に一時的に蓄熱することができる。
【0021】
また、キャビティ内に射出される樹脂部材は黒鉛が高配合されていて熱伝導率が非常に高いため、キャビティ内に射出された樹脂部材には、薄膜層13に蓄熱された熱が迅速に伝わる。
このように、薄膜層13から熱の供給を受けた樹脂部材は、温度の低下が抑えられて流動性を保持することができ、射出開始から固化するまでの時間を長くすることができる。
これにより、樹脂部材を射出成形してできた成形品を薄肉成形することが可能となる。
【0022】
また、薄膜層13をレーザー照射器21により加熱した後は、速やかに樹脂部材のキャビティ内への射出を開始する方が、効果が高く望ましい。
これは、加熱された薄膜層13から金型母材11へ熱が伝達されて、該薄膜層13の温度が低下する前に、樹脂部材のキャビティ内への充填を完了することができるからである。
【0023】
また、レーザー照射器21による薄膜層13の加熱温度を金型母材11の温度以上とすることで、樹脂部材への伝熱を十分に行うことができ、安定した薄肉成形を行うことが可能となっている。
さらに、この場合、薄膜層13の加熱温度は高い方が望ましいが、樹脂部材に劣化等の悪影響を与えないように、射出する樹脂部材の分解温度以下に設定することが望ましい。
【0024】
また、本例では、薄膜層13を加熱する手段としてレーザー照射器21を用いているが、これに限るものではなく、薄膜層13を急速に加熱できるものであればよい。
【0025】
なお、樹脂部材のキャビティ内への射出完了後の冷却期間においては、薄膜層13に蓄熱されていた熱は、既に樹脂部材や金型母材11へ放出されており、該薄膜層13の温度と金型母材11の温度とは同じ温度となるため、離型性に悪影響を与えることもない。
【実施例】
【0026】
次に、キャビティ面11aに薄膜層13を形成した、本樹脂用成形金型1の実施例について具体的に説明する。
本例では、表1に示すような実施例1、実施例2、比較例1および比較例2の樹脂用成形金型1を作成し、これらの金型について、導電性フィラーを添加した熱可塑性樹脂を射出成形した際の、薄肉成形性および離型性についての評価を行った。
【0027】
【表1】

【0028】
〔実施例1〕
上記表1、および図3に示すように、実施例1にかかる樹脂用成形金型1は、キャビティ面11aに2層の薄膜層13を形成しており、金型母材11側の第1薄膜層13aはTiAlにて構成され、表面側の第2薄膜層13bはTiAlNにて構成されている。
第1薄膜層13aの膜厚は5μmであり、熱伝導率は0.05W/m・Kであり、ビッカース硬度は600Hvである。
また、第2薄膜層13bの膜厚は5μmであり、熱伝導率は0.05W/m・Kであり、摩擦係数は0.5であり、ビッカース硬度は600Hvである。
【0029】
〔実施例2〕
上記表1、および図4に示すように、実施例2にかかる樹脂用成形金型1は、キャビティ面11aに1層の薄膜層13を形成しており、該薄膜層13はTiNにて構成されている。
薄膜層13の膜厚は5μmであり、熱伝導率は0.07W/m・Kであり、摩擦係数は0.4であり、ビッカース硬度は2500Hvである。
【0030】
〔比較例1〕
上記表1に示すように、比較例1にかかる樹脂用成形金型1は、キャビティ面11aに1層の薄膜層13を形成しており、該薄膜層13はTiNにて構成されている。
薄膜層13の膜厚は2μmであり、熱伝導率は0.07W/m・Kであり、摩擦係数は0.4であり、ビッカース硬度は2500Hvである。
【0031】
〔比較例2〕
上記表1に示すように、比較例2にかかる樹脂用成形金型1は、キャビティ面11aに1層の薄膜層13を形成しており、該薄膜層13は硬質Crメッキにて構成されている。
薄膜層13の膜厚は10μmであり、熱伝導率は1W/m・K以上であり、摩擦係数は0.2であり、ビッカース硬度は2500Hvである。
【0032】
なお、実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2における樹脂用成形金型1の金型母材11は、全てプリハードン鋼(40HRC)にて構成されており、そのビッカース硬度は400Hvとなっている。
【0033】
これらの実施例1、実施例2、比較例1および比較例2の樹脂用成形金型1により成形を行う樹脂部材としては、20wt%の液晶ポリマーと80wt%の黒鉛とを二軸押出機にて混練したものを用いた。
また、樹脂用成形金型1は、板厚が2mmの成形品(セパレータ)を成形可能な金型であり、成形時の金型温度は200℃に設定した。
さらに、射出成形機は、宇部興産機械製の350t横型高速電動射出成形機(スクリュウ径φ52)を用いて、初期金型開き量を4mmとし、樹脂部材の射出後に350tでプレスして、射出プレス成形を行った。
【0034】
このようにして、それぞれの樹脂用成形金型1にて成形した成形品について、薄肉成形性および離型性の評価を行ったところ、実施例1の樹脂用成形金型1で成形した成形品は、薄肉成形性および離型性の両方が、金型母材11のみの場合(薄膜層13を形成しない場合)に比べて大幅に良好であった。
また、実施例2の樹脂用成形金型1で成形した成形品は、薄肉成形性については金型母材11のみの場合に比べて良好であり、離型性については金型母材11のみの場合に比べて大幅に良好であった。
【0035】
これに対し、比較例1の樹脂用成形金型1で成形した成形品は、離型性については金型母材11のみの場合に比べて良好であったものの、薄肉成形性については金型母材11のみの場合と同等であった。
さらに、比較例2の樹脂用成形金型1で成形した成形品は、離型性については金型母材11のみの場合に比べて大幅に良好であったものの、薄肉成形性については金型母材11のみの場合に比べて悪化していた。
【0036】
このように、実施例1および実施例2では、薄肉成形性および離型性の両方について、金型母材11のみの場合に比べて大幅に良好または良好という結果が得られたが、比較例1および比較例2では、薄肉成形性について金型母材のみの場合と比べて同等または悪化するという結果が得られた。
【0037】
次に、前述の実施例1の樹脂用成形金型1を用いて、成形前(キャビティ内に樹脂部材を射出する前)に薄膜層13を加熱した場合の薄肉成形性についての評価を行った。
使用した樹脂部材、金型温度、射出成形機、および射出プレス成形条件は前述の「薄肉成形性および離型性についての評価」の場合と同じである。
また、薄膜層13の加熱手段としては、COレーザー(100W)を用い、樹脂用成形金型1としては、成形される成形品の厚みを1mm〜2mmの範囲で可変な金型を用いた。さらに、薄膜層13の加熱後の温度は330℃であった。
【0038】
このように、薄膜層13を加熱した後に成形を行った場合に成形可能な、成形品の最小板厚を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
表2によると、薄膜層13を加熱した後に成形を行った場合は、成形可能な成形品の最小板厚は1.5mmであった。
これに対し、薄膜層13を加熱しなかった場合は、成形可能な成形品の最小板厚は2.0mmであった。
これにより、成形前に薄膜層13を加熱することで、成形品のさらなる薄肉成形化が可能であることが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明にかかる樹脂用成形金型を示す側面断面図である。
【図2】樹脂用成形金型におけるキャビティ面に形成された薄膜層を加熱する様子を示す側面断面図である。
【図3】薄膜層が形成された樹脂用成形金型の第1の実施例を示す図である。
【図4】薄膜層が形成された樹脂用成形金型の第1の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 樹脂用成形金型
11 金型母材
11a キャビティ面
13 薄膜層
21 レーザー照射器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材にて構成される金型のキャビティ表面に、熱伝導率が0.1W/m・K以下、摩擦係数が1.0以下、且つビッカース硬度が1500Hv以上である薄膜層が形成され、
重量比で黒鉛を主成分として含有する樹脂部材の成形に用いられることを特徴とする樹脂用成形金型。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂用成形金型を用いた樹脂成形方法であって、
金型のキャビティ内に樹脂部材を射出する前に、
前記薄膜層を、加熱手段にて加熱することを特徴とする樹脂成形方法。
【請求項3】
前記加熱手段により、薄膜層を、金型のキャビティ内に樹脂部材を射出するときの金型温度以上の温度にまで、加熱することを特徴とする請求項2に記載の樹脂成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−297742(P2006−297742A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122398(P2005−122398)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】