説明

樹脂発泡シートの製造方法

【課題】生産効率の低下を抑制しつつ、品質不良を抑制することが可能な樹脂発泡シートの製造方法を提供する。
【解決手段】押出機内で発泡剤を含んだ樹脂組成物を溶融混練しつつ前記押出機の先端部に装着されたダイから押出発泡させて発泡シートを連続的に形成させる押出工程を備えた樹脂発泡シートの製造方法であって、前記ダイの温度を前記押出工程での温度よりも高くして前記樹脂組成物を前記ダイから吐出させる予備吐出工程と、前記予備吐出工程の後、前記ダイに霧状の水を噴霧することにより前記ダイの温度を前記押出工程での温度まで低くする予備冷却工程とをさらに備え、前記予備吐出工程及び前記予備冷却工程の後、前記押出工程を実施することを特徴とする樹脂発泡シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレン系樹脂等をベース樹脂とした樹脂発泡シートは、食品用トレーなどの熱成形品の原材料などに広く用いられている。
例えば、ポリスチレン系樹脂発泡シートは、通常、ポリスチレン系樹脂組成物の連続的な押出発泡によって製造されており、一旦、長尺帯状のものがロール状に巻き取られた原反ロールなどと呼ばれる状態にされた後で成形加工に利用されている。
【0003】
より具体的には、固体状のポリスチレン系樹脂組成物を押出機内で発泡剤等と共に溶融混練し、該押出機の先端部に装着したサーキュラーダイの円環状のダイスリットから溶融混練物を押出発泡させて円筒状の発泡体を連続的に形成させる押出工程を実施し、かかる押出工程で形成された発泡体を冷却マンドレルで内側から冷却した後に切断装置で押出方向に沿った連続的な切込みを入れて展開し、得られた帯状のポリスチレン系樹脂発泡シートをロール状に巻き取るような方法で前記原反ロールが作製されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−156854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したような樹脂発泡シートの製造においては、ダイ内部で樹脂組成物が十分に溶融していないと、押出機内の圧力が上昇してダイスリットを通過する樹脂組成物の量が変動したり、樹脂組成物のダイ内部における溶融樹脂組成物の通過が部分的に規制されたりすると、樹脂発泡シートに外観不良等の不具合が発生するおそれがある。
【0006】
かかる樹脂組成物の溶融不足が生じる原因としては、押出工程後に一旦押出機を停めると、ダイ内の樹脂に溶解していたガスが抜け、樹脂の粘度が上がることが考えられる。このため、押出工程における開始時には連続運転中よりもダイ、あるいは押出機の温度を高く設定せざるを得ない。そうしないと押出工程開始時に金型にかかる圧力が上昇し、スクリューにかかる負荷も上がるため設備を壊す原因ともなるからである。また、押出機内が空の状態から押出工程を開始した場合でも、開始時に樹脂の粘度が上昇する。
【0007】
そこで、押出工程開始時の圧力、負荷低減のために、押出工程を開始する前に予め、ダイを押出工程よりも高い温度で加熱して該ダイから樹脂組成物を予備的に吐出することが考えられる。このように、ダイを加熱して予備吐出を行うことにより、溶融が不十分な樹脂組成物がダイに到達してもダイ内部で溶融させることが可能となるため、樹脂組成物の溶融不足に起因する上記外観不良等の不具合を抑制することが可能となる。
【0008】
しかし、かかる予備吐出工程を行った後、押出工程を開始するまでにはダイの温度を押出工程での温度に戻しておく必要があるところ、ダイを自然冷却した場合には、ダイの温度が押出工程での温度に到達するまでに時間がかかり過ぎる。すなわち、冷却時間が長くなり過ぎるため、生産効率の低下を招くことになる。また、ダイに空気を吹き付けて冷却を行った場合でも、冷却時間を十分に短縮することは困難である。
【0009】
そこで、ダイに水をかけることによって該ダイを冷却することが考えられる。水をかけることによって、ダイ表面で発生した水の蒸発による気化熱を利用することができるため、空気を用いた冷却よりも冷却効率を向上させることが可能となる。
【0010】
しかし、単に水をかけるのみでは、ダイの冷却作用にバラツキが生じ、樹脂発泡シートの特性にバラツキが生じるおそれがある。
【0011】
本発明は、上記のような問題に鑑み、生産効率の低下を抑制しつつ、品質不良を抑制することが可能な樹脂発泡シートの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、霧状の水をダイに噴霧することによって、ダイの冷却時間を短くしつつ、樹脂発泡シートの外観不良、厚みのバラツキといった特性の低下も抑制し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の樹脂発泡シートの製造方法は、
押出機内で発泡剤を含んだ樹脂組成物を溶融混練しつつ前記押出機の先端部に装着されたダイから押出発泡させて発泡シートを連続的に形成させる押出工程を備えた樹脂発泡シートの製造方法であって、
前記ダイの温度を前記押出工程での温度よりも高くして前記樹脂組成物を前記ダイから吐出させる予備吐出工程と、
前記予備吐出工程の後、前記ダイに霧状の水を噴霧することにより前記ダイの温度を前記押出工程での温度まで低くする予備冷却工程とをさらに備え、
前記予備吐出工程及び前記予備冷却工程の後、前記押出工程を実施することを特徴とする。
【0014】
上記構成の樹脂発泡シートの製造方法によれば、上記予備吐出工程にてダイの温度を押出工程での温度よりも高くして樹脂組成物をダイから吐出させることによって、ダイにおける樹脂組成物の溶融不足を抑制することができるため、かかる溶融不足に起因する品質の低下を抑制することができる。また、上記予備冷却工程にてダイに霧状の水を噴霧することによりダイの温度を押出工程での温度まで低くすることによって、ダイの冷却時間を短縮しつつダイの冷却ムラを抑制することができる。従って、上記予備吐出工程及び予備冷却工程の後に押出工程を実施することによって、生産効率の低下を抑制しつつ、品質不良を抑制することが可能となる。
【0015】
前記霧状の水の平均粒径は、5μm〜50μmであることが好ましい。
【0016】
このように、霧状の水の平均粒径が5μm〜50μmであることによって、冷却効率をより向上させることができる。
【0017】
前記霧状の水は、ドライフォグであることが好ましい。
【0018】
このように、霧状の水がドライフォグであることによって、冷却効率をより向上させつつダイやその周辺の構成部材に錆が発生することを防止することができる。
【0019】
前記樹脂発泡シートは、ポリスチレン系樹脂発泡シートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、生産効率の低下を抑制しつつ、品質不良を抑制することが可能な樹脂発泡シートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る樹脂発泡シートの製造方法に用いられる製造設備を示す概略構成図
【図2】図1のAA’矢視断面図であって、ダイに霧状の水が噴霧されている状態の一例を模式的に示す図
【図3】ダイに霧状の水が噴霧されている状態の他の例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂発泡シートの製造方法に用いられる製造設備を示す概略構成図であり、図2は、図1のAA’矢視断面図であって、ダイに霧状の水が噴霧されている状態の一例を模式的に示す図であり、図3は、ダイに霧状の水が噴霧されている状態の他の例を模式的に示す図である。
【0024】
本実施形態では、前記樹脂発泡シートがポリスチレン系樹脂発泡シートである場合について説明するが、前記樹脂発泡シートは、かかるポリスチレン系樹脂発泡シートに限定されるものではなく、その他、前記樹脂発泡シートとして、ポリエチレン系樹脂発泡シート、ポリプロピレン系樹脂発泡シート、ポリエチレンテレフタレート系樹脂発泡シート等が挙げられる。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る樹脂発泡シートの製造方法に用いられる製造設備には、発泡剤を含んだ樹脂組成物を溶融混練するための押出機としてタンデム押出機1が備えられている。
該押出機1の先端部には、前記樹脂組成物を発泡状態で押出して円筒状の発泡体FBを形成させるためのサーキュラーダイ(ダイ)2が装着されている。
また、前記製造設備には、サーキュラーダイ2の前面において開口している円環状のダイスリットから円筒状に吐出される前記発泡体FBを内面側から冷却するとともに発泡体を拡径して所定の大きさの円筒状に形成させるための冷却マンドレル3が備えられている。
【0026】
本実施形態に係る樹脂発泡シートの製造設備には、冷却マンドレル3によって冷却された円筒状の発泡体FBを展開して帯状のポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ともいう)を形成させ得るように発泡体FBに押出方向に沿った連続的な切込みを設けるための切断装置4とがさらに備えられている。
【0027】
押出機1は、上流側押出機1aと下流側押出機1bの2台の押出機が連結されたものであり、上流側押出機1aには、ポリスチレン系樹脂発泡シートの形成材料を投入するためのホッパー11と、ガス供給装置15から炭化水素などの発泡剤をシリンダー内に供給するためのガス導入部12とが設けられている。
【0028】
上流側押出機1a及び下流側押出機1b内にはそれぞれ、不図示の攪拌搬送スクリューが備えられており、上流側押出機1a及び下流側押出機1bは、発泡剤を含んだポリスチレン系樹脂組成物を加熱溶融しながら攪拌搬送スクリューによって混練しつつサーキュラーダイ2へと搬送することができる。
【0029】
そして、下流側押出機1bの先端部には、円環状のダイスリット(樹脂吐出口)が形成された前記サーキュラーダイ2が装着されている。
【0030】
サーキュラーダイ2は、その前方に設置された冷却マンドレル3に向けて押出機1で溶融混練された樹脂組成物を発泡状態で円筒状に押出すべく構成されており、冷却マンドレル3は、サーキュラーダイ2自体よりも大径な円柱形状を有しており、その外周面をサーキュラーダイ2から押出された円筒状の発泡体FBの内面に摺接させて該発泡体FBを内側から冷却しうるように備えられている。
なお、本実施形態においては、サーキュラーダイ2と冷却マンドレル3とは、該冷却マンドレル3の円柱形状の中心軸を延長した延長線上に前記ダイスリットの略中心が位置するようにして備えられている。
したがって、サーキュラーダイ2から冷却マンドレル3までの間の発泡体FB’はサーキュラーダイ2から冷却マンドレル3に向けて略均等に拡径されることになる。
【0031】
切断装置4は、冷却マンドレル3の下流側において円筒状の発泡体FBに左右一対の切り込みを入れるための切断刃CTを有し、本実施形態における発泡シートの製造設備には、切り込みが入れられて上下に二分割された筒状の発泡体FBをそれぞれ平坦なシート状に展開するためのローラ91と、この展開された発泡シートSを上ロールURと下ロールLRとの2本の原反ロールとして巻き取るための巻取りローラ92が備えられている。
該巻取りローラ92は、サーキュラーダイ2のダイスリットから連続的に発泡体FBが押し出されている間、一定の引取速度で発泡シートSを巻取り得るように速度調整機構を有している。
そして、円筒状の発泡体FBは、この巻取りローラ92によって発泡シートSが巻き取られることによって下流側に引き寄せられることになり、自動的に切断装置4に供給されて切断刃CTによって連続的に切込みが入れられることになる。
【0032】
本実施形態においては、図2に示すように、サーキュラーダイ2の側方に噴霧装置21が備えられている。
【0033】
噴霧装置21は、サーキュラーダイ2に向けて霧状の水FWを噴霧することによりサーキュラーダイ2を冷却するものである。かかる噴霧装置21は、2流体ノズルからなる噴霧ノズル21aと、噴霧ノズル21aに供給される水を収容するタンク21bと、噴霧ノズル21aに供給される圧縮エアを発生させるエアコンプレッサー21cとを備えている。
【0034】
かかる噴霧装置21は、エアコンプレッサー21cで発生した圧縮エアが噴霧ノズル21a内に供給され、タンク21bに収容された水が不図示のポンプによって噴霧ノズル21a内に供給され、噴霧ノズル21a内で圧縮エアと水とが混合されて噴霧ノズル21aの開口から吐出されることにより、霧状の水を噴霧するようになっている。
【0035】
なお、本実施形態においては、噴霧ノズル21aに水を供給して噴霧を行うが、その他、従来公知の添加剤等が添加された水を供給して噴霧を行うこともできる。
【0036】
サーキュラーダイ2に対して外側から噴霧ノズル21aにより霧状の水を噴霧することによって、サーキュラーダイ2の冷却時間を短縮しつつ、冷却ムラを抑制することができる。
【0037】
噴霧ノズル21aから吹き付けられる霧状の水の平均粒径は、5μm〜50μmであることが好ましく、10μm〜45μmであることがより好ましい。かかる平均粒径は、レーザー回析法によって測定することができ、具体的には、噴霧ノズル先端から500mm離れた場所でレーザー光を通過する液滴(粒子)全ての粒径を測定し、その平均を算出することによって得ることができる。
【0038】
平均粒径が5μm以上であることにより、霧状の水がサーキュラーダイ2の表面近傍に到達する前に蒸発することを抑制したり、サーキュラーダイ2から熱を奪い易くしたりすることができるため、サーキュラーダイ2の冷却効率を向上させることができる。また、50μm以下であることにより、霧状の水がサーキュラーダイ2表面に対して濡れ難くなり、付着し難くなることができるため、サーキュラーダイ2や、その周辺の部材に錆が発生することを防止することができる。また、サーキュラーダイ2の周囲に、より広範に霧状の水を分布させ易くすることができるため、サーキュラーダイ2の冷却バラツキを抑制することができる。
このうち、平均粒径が20μm〜50μmたる霧状の水は、ドライフォグと称されており、前記霧状の水がドライフォグであることにより、サーキュラーダイ2に対して非常に濡れ難くなるため、冷却効率を高めつつ、サーキュラーダイ2やその周辺の構成部材に錆が発生することを防止できる。
【0039】
このようなドライフォグを噴霧することが可能な噴霧ノズルとしては、セトジェット(SETOJet、株式会社いけうち製)、アキジェット(登録商標、AKIJet、株式会社いけうち製)、BMI(株式会社いけうち製)等が挙げられる。
【0040】
霧状の水の平均粒径は、水量とエア圧力によって調整することができる。
【0041】
また、噴霧ノズル21aから噴霧された霧状の水の広がりや到達距離は、圧縮エアの圧力、エア供給量、水の供給量等によって調整することができる、また、サーキュラーダイ2に対する霧状の水の分布状態は、サーキュラーダイ2と噴霧ノズル21aとの距離、噴霧ノズル21aからの霧状の水の広がり、噴霧ノズル21aの配置、数量、冷却状態等によって調整することができる。図2には、噴霧ノズル21aが4つ配置された例を示したが、この数量は特に限定されるものではない。その他、例えば、図3に示すように、噴霧ノズル21aが2つ配置されていてもよい。
【0042】
ここで、サーキュラーダイ2と噴霧ノズル21aとの距離が短くなる程、霧状の水が濡れ易くなる傾向にある。かかる観点を考慮すれば、サーキュラーダイ2と噴霧ノズル21aとの距離は、例えば、900mm以上であることが好ましく、1000mm以上であることがより好ましい。一方、サーキュラーダイ2の周囲に霧状の水を十分に分布させるという観点を考慮すれば、上記距離は、2000mm以下であることが好ましく、1800mm以下であることがより好ましい。
【0043】
なお、本発明に用いられる製造装置は、上記例示に限定されるものではい。
【0044】
次いで、上記のような製造設備を用いた本実施形態の樹脂発泡シートの製造方法について説明する。
【0045】
本実施形態の樹脂発泡シートの製造方法は、押出機内で発泡剤を含んだ樹脂組成物を溶融混練しつつ前記押出機の先端部に装着されたダイから押出発泡させて発泡シートを連続的に形成させる押出工程を備えた樹脂発泡シートの製造方法であって、前記ダイの温度を前記押出工程での温度よりも高くして前記樹脂組成物を前記ダイから吐出させる予備吐出工程と、前記予備吐出工程の後、前記ダイに霧状の水を噴霧することにより前記ダイの温度を前記押出工程での温度まで低くする予備冷却工程とをさらに備え、前記予備吐出工程及び前記予備冷却工程の後、前記押出工程を実施する。
【0046】
本実施形態においては、具体的には、以下の工程を実施することによってポリスチレン系樹脂発泡シートを作製する。
すなわち、本実施形態においては、
(1)本実施形態のポリスチレン系樹脂発泡シートの作製に必要な材料を調製すべく、樹脂組成物を基材樹脂とし、これに必要な配合剤を加えてポリスチレン系樹脂発泡シートの原材料を調製する配合工程、
(2)前記押出機の先端部に装着されたダイの温度を押出工程での温度よりも高くして、前記ポリスチレン系樹脂組成物を押出機内で溶融混練しつつ前記ダイから吐出させる予備吐出工程、
(3)前記予備吐出工程の後、前記ダイに霧状の水を噴霧することにより前記ダイの温度を押出工程での温度まで低くする予備冷却工程、
(4)前記冷却工程後、押出機内で前記配合工程によって調製された原材料を発泡剤と共に溶融混練しつつ前記ダイから押出発泡させて円筒状の発泡体を連続的に形成させる押出工程、
(5)前記円筒状の発泡体を展開して帯状の発泡体を形成させるべく前記円筒状の発泡体に押出方向に沿った連続的な切込みを設ける切断工程、
(6)前記切り込みが設けられた筒状の発泡体を平坦なシート状に展開させる展開工程、
(7)前記展開工程で形成された平坦な発泡シートをロール状に巻き取る巻取り工程、
を実施することにより樹脂発泡シートを作製する。
以下に、個々の工程についてより詳しく説明する。
【0047】
(1)配合工程
この配合工程は、発泡シートの原材料となる樹脂組成物(ここではポリスチレン系樹脂組成物)の配合を調整する工程であり、一般的な樹脂発泡シートの作製における場合と同様に、計量器や混練機といった装置を用いて実施可能である。
一例を挙げると、ポリスチレン系樹脂と各種の配合剤を含んだマスターバッチとをドライブレンドする方法が挙げられる。
また、ポリスチレン系樹脂とその他の配合剤とを全て含むペレットを、例えば、ニーダーや二軸混練機などといった一般的な混練装置を用いて作製する方法が挙げられる。
【0048】
なお、前記樹脂組成物はポリスチレン系樹脂に特に限定されるものではなく、前記樹脂組成物としては、その他、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等を用いることができる。
【0049】
前記ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの複数を組み合わせた共重合体等が挙げられる。
【0050】
また、ポリスチレン系樹脂としては、上記スチレン系単量体とこのスチレン系単量体と共重合可能なビニル単量体との共重合体であってもよく、このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性単量体などが挙げられる。
【0051】
なお、ポリスチレン系樹脂組成物には、ポリスチレン系樹脂以外の樹脂成分を含有させても良く、例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジクロルフェニレン−1,4−エーテル)等のポリフェニレンエーテル系樹脂を含有させてもよい。
【0052】
さらには、高分子型帯電防止剤なども含有させることができる。
この高分子型帯電防止剤としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステルアミドなどのアイオノマーやその第四級アンモニウム塩、ポリエーテル−ポリスチレンブロック共重合体(ポリエーテル系ブロックとポリスチレン系ブロックのブロック共重合体)等が挙げられる。
【0053】
このような樹脂成分以外に、ポリスチレン系樹脂組成物に含有させる成分としては、例えば、低分子型帯電防止剤などの機能性成分や、発泡のための気泡核剤などの発泡に関する成分を挙げることができる。
【0054】
なお、この低分子型帯電防止剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアニオン性界面活性剤や、その他の界面活性剤又はアルカリ金属塩などの低分子型帯電防止剤が挙げられる。
【0055】
前記発泡に関する成分としては、例えば、前記ガス導入部12から導入される発泡剤とともに気泡を形成させるための気泡核剤や、あるいは、熱分解してガスを発生させる化合物粒子などが挙げられる。
【0056】
前記気泡核剤(気泡調整剤)としては、一般に気泡核剤として用いられているものであれば、特に限定されるものではなく例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物、ポリテトラフルオロエチレンなどの有機化合物などの粒子が挙げられる。
なお、気泡核剤は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0057】
この気泡核剤とともに用いられる発泡剤としては、従来、押出発泡に用いられているものを本実施形態においても採用することができ、例えば、ブタンなどの炭化水素、窒素、二酸化炭素、アルゴン、水等を使用することができる。
【0058】
また、熱分解してガスを発生させる化合物粒子としては、例えば、アゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムとクエン酸の混合物などを用いることができる。
【0059】
さらに、このポリスチレン系樹脂組成物を構成させる成分として、一般的なポリマー発泡成形体の形成に用いられる配合剤を含有させることができ、例えば、耐候剤や老化防止剤といった各種安定剤、滑剤などの加工助剤、スリップ剤、防曇剤、顔料、充填剤などを適宜含有させることができる。
これらの配合剤をポリスチレン系樹脂組成物にどのような配合割合で含有させるかについては、ポリスチレン系樹脂発泡シートの最終的な用途などに応じて適宜調整すればよい。
【0060】
(2)予備吐出工程
前記予備吐出工程では、押出機1の上流側押出機1a及び下流側押出機1bを、押出工程と同様に加熱することができる。すなわち、押出機1の上流側押出機1a及び下流側押出機1bを押出工程での温度と同じ温度まで加熱することができる。そして、このように上流側押出機1a及び下流側押出機1bを加熱しつつ、下流側押出機1bの先端部に取り付けたサーキュラーダイ2の温度が押出工程での温度よりも高くなるように該サーキュラーダイ2を加熱し、後述する押出工程と同様に、発泡剤を含んだポリスチレン系樹脂組成物を上流側押出機1a及び下流側押出機1bで溶融混練し、サーキュラーダイ2の円環状のダイスリットから吐出させることができる。
かかる予備吐出工程でのサーキュラーダイ2の温度は、押出工程での温度よりも高い温度であれば特に限定されるものではなく、例えば、樹脂組成物の融点等に応じて該樹脂組成物の溶融不足を抑制できるような温度に適宜設定することができる。
なお、当該予備吐出工程でサーキュラーダイ2を加熱するのに合わせて、下流側押出機1bの温度が押出工程での温度よりも高くなるように該下流側押出機1bを加熱することもできる。
【0061】
(3)予備冷却工程
前記冷却工程では、予備吐出工程後、噴霧装置21を用いてサーキュラーダイ2に霧状の水を噴霧することによって、サーキュラーダイ2の温度を押出工程での温度まで低下させて、サーキュラーダイ2を冷却することができる。そして、サーキュラーダイ2の温度が押出工程での温度まで低下したとき、噴霧装置21による霧状の水の噴霧を停止することができる。
なお、上記したようにサーキュラーダイ2の加熱に合わせて下流側押出機1bの温度を押出工程での温度よりも高くした場合には、当該予備冷却工程を実施している間に、下流側押出機1bの温度が押出工程での温度まで低くなるように該下流側押出機1bを冷却することもできる。かかる下流側押出機1bの冷却は、例えば、下流側押出機1bとしてシリンダーにパイプが巻き付けられたものを用い、該パイプに水等を流すことによって行うことができる。
【0062】
(4)押出工程
前記押出工程は、前記予備冷却工程後、先の配合工程によって調製されたポリスチレン系樹脂組成物を前記押出機1内で溶融混練し、該溶融混練物を押出機1の先端に取り付けたサーキュラーダイ2の円環状のダイスリットから押出発泡させて円筒状の発泡体FBを連続的に形成させることによって実施することができる。
例えば、前記押出工程は、押出機内の上流側領域(上流側押出機1a)で発泡剤を含んだ樹脂組成物を溶融混練しつつ下流側領域(下流側押出機1b)へと送り、下流側領域の先端部に装着されたダイを前記上流側領域よりも低い温度で加熱しつつ該ダイから押出発泡させて発泡シートを連続的に形成させることによって実施することができる。
この場合、例えば溶融混練を実施する方法としては、上流側押出機1a内にホッパー11からポリスチレン系樹脂組成物を投入し、ポリスチレン系樹脂組成物の融点以上の温度で加熱しつつ十分に溶融混練し、この溶融混練物にガス導入部12から発泡剤を圧入することにより添加してさらに混練して下流側押出機1bに搬送し、続いて、下流側押出機1bで押出発泡に適した溶融粘度とすべく上流側押出機1aよりも温度を低下させて混練を行う方法等が挙げられる。
このときのサーキュラーダイ2の温度は、下流側押出機1bの温度と同じ温度に設定することができる。また、下流側押出機1bの温度は、押出工程を開始する前に、予め、上流側押出機1aの温度と同じ温度まで一旦上昇させた後、上記した上流側押出機1aよりも低い温度まで低下させることによって調整することができる。
【0063】
また、前記円筒状の発泡体FBを形成させる方法としては、前記下流側押出機1bで適度な溶融粘度となるように温度調整された溶融混練物を前記サーキュラーダイ2の円環状のダイスリットから連続的に吐出させて発泡させる従来の樹脂発泡シートの製造方法と同様の方法を採用することができる。
【0064】
その後、必要に応じてこの発泡体FBに空冷を実施した後に、冷却マンドレル3での冷却と拡径とを実施する。
このとき冷却マンドレル3によって拡径された円筒状の発泡体FBを冷却マンドレル3の外周面に摺接させて冷却マンドレル上を通過中に十分冷却させる。
【0065】
なお、上記した溶融混練を実施する方法としては、上記の他、例えば、上流側押出機1a及び下流側押出機1bを、これら全体を通して上流側から下流側に向かって漸次温度が上昇するように加熱させつつ、上記と同様にポリスチレン系樹脂組成物を上流側押出機1aに投入して溶融混練し、該上流側押出機1aに発泡剤を圧入してさらに混練し、下流側押出機1bに搬送して混練を行う方法が挙げられる。
【0066】
(5)切断工程、(6)展開工程、(7)巻取り工程
前記切断工程、展開工程及び巻き取り工程は、樹脂発泡シートの製造において一般的に行われる方法を用いて実施することができる。
【0067】
上記したように、予備吐出工程にてダイの温度を押出工程での温度よりも高くして樹脂組成物をダイから吐出させることによって、ダイにおける樹脂組成物の溶融不足を抑制することができるため、かかる樹脂組成物の溶融不足に起因する品質の低下を抑制することができる。また、予備冷却工程にてダイに霧状の水を噴霧することによりダイの温度を押出工程での温度まで低くすることによって、ダイの冷却時間を短縮しつつダイの冷却ムラを抑制することができる。従って、上記予備吐出工程と予備冷却工程の後に押出工程を実施することによって、生産効率の低下を抑制しつつ、品質不良を抑制することが可能となる。
【0068】
なお、ここでは詳述しないが、本発明の効果が著しく損なわれない範囲においては、樹脂発泡シートの製造方法に関して上記例示の事象以外に従来公知の事柄を採用が可能である。また、本実施形態では、サーキュラーダイを用いたが、押出機から溶融混練物を吐出して樹脂発泡シートを形成可能であれば、その他のダイを用いることもできる。さらに、上記製造方法では、サーキュラーダイに対応して切断工程及び展開工程を設けたが、ダイの種類や形成される樹脂発泡シートの形状に応じて切断工程及び展開工程を設けない構成としたり、その他の工程を採用したりすることもできる。
【実施例】
【0069】
実施例1
図1及び図2に示すように噴霧ノズルを4つ備えた樹脂発泡シートの製造設備と同様の製造設備を用いて、サーキュラーダイと各噴霧ノズルとの距離を1100mm、エア圧を0.5MPa、エアホース径を6.0mm、噴霧ノズルから噴霧される霧状の水の平均粒径を20μmに設定した。
また、押出工程(連続運転生産)開始前での上流側押出機の温度を200℃、下流側押出機の温度を180℃に設定した。また、予備吐出工程でのサーキュラーダイの温度を200℃、押出工程でのサーキュラーダイの温度を155℃に設定した。
【0070】
上流側押出機内にポリスチレン系樹脂(XC−515、DIC社製)を投入して溶融混練を行い、発泡剤たる混合ブタン(イソ/ノルマル=68/32、コスモ石油社製)を圧入してさらに混練しつつ、溶融混練物をサーキュラーダイから吐出することにより予備吐出工程を実施した。吐出量は、600kg/hであった。その後、サーキュラーダイに向けて噴霧ノズルから霧状の水を噴霧することによってサーキュラーダイの温度を155℃まで冷却することにより、予備冷却工程を実施した。その結果、ダイの温度が押出工程での温度に冷却されるまでの冷却時間は、40分であった。
【0071】
その後、サーキュラーダイを押出工程での温度で加熱しつつ20分間安定させた後、押出工程、切断工程及び展開工程を実施することにより、発泡シートを得た。上記予備冷却工程を実施している間に下流側押出機先端部のシリンダー温度を60℃まで低下させた。
そして、得られた発泡シートの外観不良を目視で調べると共に、ダイヤルシックネスゲージによって発泡シートの厚みバラツキ(幅方向に50mm間隔で21点測定したときの最大値と最小値との差)を調べた。結果を表1に示す。
【0072】
実施例2
図3に示すのと同様に噴霧ノズルを2つ備え、サーキュラーダイと各噴霧ノズルとの距離を2000mm、エア圧を0.3MPa、エアホース径を6.0mmとすること以外は実施例1と同様にして、予備吐出工程を実施した後、予備冷却工程を実施した。その結果、吐出量は600kg/hであり、冷却時間は49分であった。また、実施例1と同様にして押出工程、切断工程及び展開工程を実施して発泡シートを得、得られた発泡シートの外観不良及び厚みバラツキを調べた。結果を表1に示す。
【0073】
比較例1
自然放冷すること以外は実施例1と同様にして、予備吐出工程を実施した後、予備冷却工程を実施した。その結果、吐出量は600kg/h、冷却時間は65分であった。また、実施例1と同様にして、得られた発泡シートの外観不良及び厚みバラツキを調べた。結果を表1に示す。
【0074】
比較例2
噴霧装置の代わりに空気を噴出するエア噴出装置を用いること以外は実施例1と同様にして、予備吐出工程を実施した後、予備冷却工程を実施した。エア噴出装置に供給されるエア圧を0.5MPa、噴出量を2m3/minに設定した。その結果、冷却時間は、58分であった。また、実施例1と同様にして、得られた発泡シートの外観不良及び厚みバラツキを調べた。結果を表1に示す。
【0075】
比較例3
噴霧装置の代わりにホースで水をダイの上方200mmの高さから100L/hで垂れ流してダイを冷却すること以外は実施例1と同様にして、予備吐出工程を実施した後、予備冷却工程を実施した。その結果、冷却時間は12分であった。また、実施例1と同様にして、得られた発泡シートの外観不良及び厚みバラツキを調べた。結果を表1に示す。
【表1】

【0076】
表1に示すように、実施例1、2では、比較例1、2と比べて冷却時間が短縮されていた。また、比較例3では、ポリスチレン系樹脂の固形状のブツが発砲シート表面に多数発生し、外観不良が認められ、シート厚みバラツキも0.58mmと大きくなった。さらに、実施例1と実施例2とでは、実施例1の冷却時間の方が実施例2の冷却時間よりも短かった。
【符号の説明】
【0077】
1 押出機
2 サーキュラーダイ(ダイ)
3 冷却マンドレル
21 噴霧装置
21a 噴霧ノズル
21b タンク
21c エアコンプレッサー
CT 切断刃
FB 発泡体
FW 霧状の水
S ポリスチレン系樹脂発泡シート(樹脂発泡シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機内で発泡剤を含んだ樹脂組成物を溶融混練しつつ前記押出機の先端部に装着されたダイから押出発泡させて発泡シートを連続的に形成させる押出工程を備えた樹脂発泡シートの製造方法であって、
前記ダイの温度を前記押出工程での温度よりも高くして前記樹脂組成物を前記ダイから吐出させる予備吐出工程と、
前記予備吐出工程の後、前記ダイに霧状の水を噴霧することにより前記ダイの温度を前記押出工程での温度まで低くする予備冷却工程とをさらに備え、
前記予備吐出工程及び前記予備冷却工程の後、前記押出工程を実施することを特徴とする樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項2】
前記霧状の水の平均粒径は、5μm〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項3】
前記霧状の水は、ドライフォグであることを特徴とする請求項2に記載の樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂発泡シートは、ポリスチレン系樹脂発泡シートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂発泡シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−75427(P2013−75427A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216590(P2011−216590)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(510218870)株式会社積水化成品天理 (9)
【Fターム(参考)】