説明

樹脂粉体およびその製造方法

【課題】薄膜であり、かつ膜厚が均一な被覆層を備え、被覆による所望の特性が発現された、被覆樹脂微粒子からなる樹脂粉体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂粉体は、樹脂微粒子の表面にモノマーを重合させて得られた重合体からなる被覆層を備える被覆樹脂微粒子からなり、前記被覆樹脂微粒子は、該樹脂微粒子表面と、前記重合体とが、炭素−炭素結合により化学的に結合し、かつ被覆層の膜厚が0より大きく60nm以下であり、樹脂微粒子の単位表面積当たりの前記重合体の質量が2〜150mg/mであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粉体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリマー微粒子の開発が活発化しており、産業上さまざまな用途で幅広く使用されている。なかでも、粒子形状が球形で粒度分布の狭いポリマー微粒子は、その加工性、流動性、表面物性の良さから滑り性付与剤、トナー、塗料用艶消し剤、光拡散用の添加剤、低密度ポリエチレンからなる包装材のブロッキング防止材をはじめ、フィルター、分離膜、分散剤、粉体塗装、樹脂改質剤、コーティング剤、絶縁フィラー、結晶核剤、クロマトグラフィー用充填剤や免疫診断試薬用担体等の用途に広く利用されている。
【0003】
これらポリマー粒子の材質は、アクリル樹脂系、スチレン樹脂系、メラミン樹脂系、ポリオレフィン系など多種にわたるが、結晶性や融点が高く、高い化学的安定性を有するといった特長から、ポリオレフィン系樹脂の微粒子が注目されている。ポリオレフィン系樹脂微粒子は、他の材料に見られない耐水・耐油性、耐薬品性や生体安全性といった特長を有しており、その特長を活かした、さまざまな新材料、新用途が考案・実用化されている。
【0004】
例えば、ポリエチレン微粒子やポリプロピレン粒子、およびそれらの表面改質を施したものは、化学や生物系物質の高効率な分離用カラム充填剤として、また高比表面積の吸着材や触媒担体などとして利用することができる。また、薬物などの送達と除放を担わせた担体としての利用や、分散性の悪い微粒子物質を均一に分散させるための散布剤や、化粧品素材として肌への良好な感触効果をもたらす安全性の高い微粒子材料に活用される。その他、リチウム電池やリチウムイオン2次電池のセパレータ用部材、光拡散・反射・反射防止などの機能を持った光学フィルター用部材、セラミックなどの焼結多孔体の高性能バインダー、通気性フィルムなどの賦孔材、免疫化学的活性物質固定化用担体、微小細孔・高比表面積焼結フィルターなど機能性新材料用途への応用が積極的に検討されている。
【0005】
ポリオレフィン系樹脂は基本的に炭素原子と水素原子のみから構成されており、軽量かつ安価な上に、優れた物性と加工性を持つという特性を有する反面、金属や他の樹脂などの異種材料との親和性や接着性、反応性に乏しい。したがって、このような特性を有するポリオレフィン系樹脂で構成された微粒子を上記の各種用途に利用する場合には、他の部材との親和性や接着性、反応性に優れた極性基あるいは極性セグメントを微粒子表面に導入する必要がある。
【0006】
表面に極性基や極性セグメントが導入されたポリオレフィン微粒子としては、例えば、特許文献1に開示されているようなEVAの表面にn−ブチルアクリレートの重合体セグメントを導入したものや、特許文献2に開示されているような極性基含有高分子量ポリオレフィン粒子などが挙げられるが、これらの文献に記載の方法ではコア部とシェル層との間の結合力は比較的弱く、用途によっては両者の分離により所定の機能が発現しなくなる場合がある。
【0007】
一方、ポリオレフィンに極性セグメントを導入する方法としては、ハロゲン化ポリオレフィンとリビングラジカル重合との組合せによる方法が開示されている(特許文献3)。この方法で製造された重合体は、ポリオレフィンセグメントと極性セグメントとが炭素−炭素結合により化学結合しているため、上記のようなコア部とシェル層との分離といった問題は起こりえない。しかしながら、特許文献3に記載の方法を用いるだけではコアシェル型構造の重合体を製造することは困難であり、また、この方法によりコアシェル型粒子を製造した例はない。
【0008】
また、特許文献4〜8には、
ポリオレフィン樹脂に予めハロゲン含有有機基を導入し、そしてこのポリオレフィン樹脂を用いてシートを成形し、次いでシート表面のハロゲン原子を開始基として表面グラフト重合することにより、シート表面にグラフト重合体からなる被覆層を形成する方法と、
ポリオレフィン樹脂からなるシートに直接ハロゲン含有有機基を導入し、次いでシート表面のハロゲン原子を開始基として表面グラフト重合することにより、シート表面にグラフト重合体からなる被覆層を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−182925号公報
【特許文献2】特開2007−161896号公報
【特許文献3】WO2006/088197号パンフレット
【特許文献4】特開2008−37950号公報
【特許文献5】特開2008−63532号公報
【特許文献6】特開2008−63533号公報
【特許文献7】特開2008−63534号公報
【特許文献8】特開2008−95083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記文献4〜8に記載の従来技術においても、以下の点で改善の余地を有していた。
【0011】
予めハロゲン含有有機基を導入したポリオレフィン樹脂を成形し、次いで成形体表面のハロゲン原子を開始基として表面グラフト重合する方法では、成形体内部までハロゲン原子が含有されているため、ポリオレフィン基材本来の性質が損なわれる可能性があった。さらにグラフト重合においても表層内部に存在するハロゲン原子に浸潤によってモノマーやモノマー溶液が到達し、グラフト重合が進行するため、ごく最表面のみに均一な被覆層を形成することが困難であった。
【0012】
また、成形体表面に直接ハロゲン化を施し、ついでグラフト重合する方法においても、ハロゲン化の過程において、ハロゲン化剤の溶液もしくは液体のハロゲン化剤に成形体を浸すため、表層内部まで臭素化され、次いで行うグラフト重合においてモノマーやモノマー溶液の浸潤によって、表層内部からもグラフト重合が進行するため、ごく最表面のみに均一な被覆層を形成することが困難であった。
【0013】
特に上記のような問題は、微粒子を基材とする場合、比表面積が大きくなるため顕在化し、効率よく最表面のみをグラフト重合できないため、所望の特性が得られないことがあった。また、微粒子を基材とする場合、比表面積が大きくなるため、被覆層を形成させ、所望の特性を得るためには十分な量モノマーをグラフト重合する必要があり、基材の特性を保持することが困難なうえ、高価なモノマーを用いる場合経済的にも問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下に示すことができる。
(1)樹脂微粒子の表面にモノマーを重合させて得られた重合体からなる被覆層を備える被覆樹脂微粒子において、前記樹脂微粒子表面と、前記重合体とが、炭素−炭素結合により化学的に結合し、かつ被覆層の膜厚が0より大きく60nm以下であり、樹脂微粒子の単位表面積当たりの前記重合体の質量が2〜150mg/mであることを特徴とする被覆樹脂微粒子からなる樹脂粉体。
【0015】
(2)前記樹脂微粒子の単位表面積当たりの前記重合体の質量が2〜100mg/mであることを特徴とする(1)に記載の樹脂粉体。
【0016】
(3)前記被覆樹脂微粒子が前記重合体を0.1重量%以上含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の樹脂粉体。
【0017】
(4)前記被覆樹脂微粒子の平均粒子径が1〜100μmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂粉体。
【0018】
(5)前記樹脂微粒子は、ポリオレフィンからなることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂粉体。
【0019】
(6)前記樹脂微粒子の表面をプラズマ処理して未結合手を形成させたのち、反応性ガスを接触させることにより前記未結合手に重合開始基を結合させ、前記重合開始基よりモノマーを表面グラフト重合させることにより得られた重合体からなる被覆層を備える被覆樹脂微粒子からなる(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂粉体。
【0020】
(7)前記樹脂微粒子の表面を、反応性ガスを含むガス雰囲気下でプラズマ処理することにより重合開始基を結合させ、前記重合開始基よりモノマーを表面グラフト重合させることにより得られた重合体からなる被覆層を備える被覆樹脂微粒子からなる(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂粉体。
【0021】
(8)前記プラズマ処理は、3×10Pa以上、15×10Pa以下の圧力下で行われることを特徴とする(6)または(7)に記載の樹脂粉体。
(9)前記反応性ガスはハロゲン原子を含有するガスであり、前記重合開始基はハロゲン原子またはハロゲン原子を含む原子団であることを特徴とする(6)〜(8)のいずれかに記載の樹脂粉体。
【0022】
(10)前記表面グラフト重合は、原子移動ラジカル重合であることを特徴とする(6)〜(9)のいずれかに記載の樹脂粉体。
(11)前記モノマーは、炭素―炭素不飽和結合を有する有機化合物から1種以上選択されることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の樹脂粉体。
【0023】
(12)樹脂粉体をプラズマ処理して、前記樹脂粉体を構成する樹脂微粒子の表面に未結合手を形成する工程と、前記未結合手が形成された樹脂微粒子に反応性ガスを接触させて、前記未結合手に、前記反応性ガスから構成される原子あるいは原子団を結合させる工程と、前記原子あるいは原子団を重合開始基としてモノマーを表面グラフト重合させることにより、樹脂微粒子表面に重合体からなる被覆層を形成し、被覆樹脂微粒子を得る工程と、を含む被覆樹脂微粒子からなる樹脂粉体の製造方法。
【0024】
(13)樹脂微粒子からなる樹脂粉体を、反応性ガスを含むガス雰囲気下でプラズマ処理することにより、前記樹脂粉体を構成する樹脂微粒子の表面に前記反応性ガスから構成される原子あるいは原子団を結合させる工程と、
前記原子あるいは原子団を重合開始基としてモノマーを表面グラフト重合させることにより、樹脂微粒子表面に重合体からなる被覆層を形成し、被覆樹脂微粒子を得る工程と、
を含む被覆樹脂微粒子からなる樹脂粉体の製造方法。
【0025】
(14)前記プラズマ処理は、3×10Pa以上、15×10Pa以下で行われることを特徴とする(12)または(13)に記載の樹脂粉体の製造方法。
(15)前記表面グラフト重合は原子移動ラジカル重合であることを特徴とする(12)〜(14)のいずれかに記載の樹脂粉体の製造方法。
(16)前記モノマーは、炭素―炭素不飽和結合を有する有機化合物から1種以上選択されることを特徴とする(12)〜(15)のいずれかに記載の樹脂粉体の製造方法。
【0026】
(17)前記反応性ガスは、ハロゲン原子を含むガスであることを特徴とする(12)〜(16)いずれかに記載の樹脂粉体の製造方法。
(18)前記樹脂微粒子は、ポリオレフィンからなることを特徴とする(12)〜(17)のいずれかに記載の樹脂粉体の製造方法。
【0027】
(19)プラズマを発生させる放電室中に、前記樹脂微粒子からなる前記樹脂粉体を落下させ、前記樹脂粉体の落下中にプラズマ処理を施すことを特徴とする(12)〜(18)のいずれかに記載の樹脂粉体の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るコアシェル型粒子は、被覆層と基材粒子が炭素−炭素結合で化学的に結合しているため、加工性、耐薬品性、電気的性質、機械的性質、摺動性、耐摩耗性、耐衝撃性などに優れ、かつ他部材との接着性、親和性に優れる。同時に、当該被覆層は基材粒子の最表面に均一な薄膜となって形成されており、基材本来の性質を損なわず、さらに最小限の被覆層成分で効率よく効果を発揮するため、経済的にも有利な効果を奏す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態にかかる製造装置を示す模式図である。
【図2】製造装置の放電管の長手方向と直交する方向にそった断面図である。
【図3】本発明の変形例にかかる製造装置を示す模式図である。
【図4】図4は実施例1で得られたコアシェル微粒子断面の透過型電子顕微鏡による観察結果を示す。
【図5】図5は実施例2で得られたコアシェル微粒子断面の透過型電子顕微鏡による観察結果を示す。
【図6】図6は実施例3で得られたコアシェル微粒子断面の透過型電子顕微鏡による観察結果を示す。
【図7】図7は実施例4で得られたコアシェル微粒子断面の透過型電子顕微鏡による観察結果を示す。
【図8】図8は実施例5で得られたコアシェル微粒子断面の透過型電子顕微鏡による観察結果を示す。
【図9】図9は実施例6で得られたコアシェル微粒子断面の透過型電子顕微鏡による観察結果を示す。
【図10】図10は比較例1で得られた微粒子断面の透過型電子顕微鏡による観察結果を示す。
【図11】図11は比較例2で得られた微粒子断面の透過型電子顕微鏡による観察結果を示す。
【図12】図12は分散性評価における結果をプロットしたグラフである。
【図13】図13は分散性評価における結果を、分散性とグラフト重合体の含量との相関をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明に係る樹脂粉体について具体的に説明する。
本実施形態の樹脂粉体は、コアシェル微粒子である被覆樹脂微粒子からなるものである。被覆樹脂微粒子は、表面に重合開始基を結合した樹脂微粒子(コア粒子)の表面において、炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するモノマーを上記重合開始基より表面グラフト重合することにより得られたグラフト重合体からなる被覆層(シェル層)を備える。
【0031】
本実施形態の樹脂粉体は、樹脂微粒子表面に存在する樹脂と、グラフト重合体とが、炭素−炭素結合により化学的に強固に結合しており、樹脂微粒子からの被覆層の剥離が抑制されている。
【0032】
本実施形態の樹脂粉体に含まれる被覆樹脂微粒子は、平均粒子径が1〜100μm、好ましくは3〜50μmである。平均粒子径は、レーザー回折散乱法により測定することができる。
【0033】
また、被覆層の膜厚は、0より大きく60nm以下、好ましくは5〜30nmである。被覆層の膜厚は、透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することができる。また、「0より大きく」とは透過型電子顕微鏡によって観測できる膜厚以上のことを示し、本実施形態では2nm以上である。上記の膜厚で樹脂微粒子表面を均一に被覆されているので、樹脂微粒子のバルクとしての特性を損なうことなく、表面の性質のみを変えることができ、被覆層による所望の特性を得ることができる。
【0034】
さらに、樹脂微粒子の単位表面積当たりのグラフト重合体の質量を、2〜150mg/m、好ましくは2〜130mg/m、より好ましくは2〜100mg/m、さらに好ましくは4〜70mg/m、さらにより好ましくは4〜50mg/mとすることができる。また、グラフト重合体の含量は、被覆樹脂微粒子からなる樹脂粉体を100重量%とした場合において、0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは2重量%以上とすることができる。そして、上限値は、基材の性質を保持し、経済的に有利な効果を発揮させる観点から、10重量%以下、好ましくは5重量%以下とすることができる。
【0035】
被覆層の膜厚および樹脂微粒子の単位表面積当たりのグラフト重合体の質量が、いずれも上記範囲であることにより、比表面積が大きい樹脂微粒子であっても、粒子表面に均一な被覆層が効率よく形成されており、被覆層による所望の特性、例えば加工性、耐薬品性、電気的性質、機械的性質、摺動性、耐摩耗性、耐衝撃性、他部材との接着性や親和性等を得ることができる。さらに、上記効果の観点から、被覆層の膜厚、樹脂微粒子の単位表面積当たりのグラフト重合体の質量、およびグラフト重合体の含量がいずれも上記範囲であることが好ましい。また、上記効果の観点から、粒子表面全体に上記被覆層を備えていることがより好ましい。
【0036】
樹脂微粒子を構成する樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;脂環式炭化水素樹脂;熱可塑性ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリエステルイミド樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)等のポリスチレン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;ポリ酢酸ビニル樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;熱可塑性ポリベンゾイミダゾール樹脂等が挙げられる。これらから1種以上選択して用いることができる。
【0037】
また、エポキシ樹脂、硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、硬化型ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、メラニン樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂等の硬化性樹脂等も用いることができる。
【0038】
本実施形態においては、ポリオレフィン樹脂を用いることが好ましく、ポリエチレン樹脂を用いることがより好ましい。
【0039】
本発明に係る樹脂粉体を構成する被覆樹脂微粒子の被覆層は炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つを有するモノマーの単独重合体または共重合体からなる。
【0040】
本発明で用いられるモノマーの具体例として、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン系モノマー、ブタジエン、イソプレン等のジエン系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等、更には、末端にアクロイル基、メタクロイル基やスチリル基などの炭素−炭素不飽和結合を有し、分子量が100〜100000のマクロモノマー等が挙げられる。本実施形態において用いられる前記モノマーは、これらから1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0041】
本実施形態で用いられるグラフト重合体としては、(メタ)アクリル酸およびその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、スチレンおよびその誘導体から選ばれる1種以上の単量体を、(共)重合して得られる重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸の単独重合体および共重合体がより好ましく、特に、メタクリル酸メチル、スチレン、アクリル酸メチル、アクリロニトリル、アクリル酸ブチル、アクリルアミドの単独重合体あるいは、これらを主モノマーとした共重合体が好ましい。
【0042】
また、グラフト重合体からなる被覆層は、他の溶剤との親和性あるいは他樹脂との親和性が重要となる用途で使用する場合、有機溶媒に不溶な重合体や、表面が非平滑となる重合体は好ましくない。
【0043】
以下に、本発明に係る樹脂粉体の製造方法について詳細に説明する。
【0044】
本実施形態の樹脂粉体は、コアシェル微粒子である被覆樹脂微粒子からなるものである。被覆樹脂微粒子は、表面に重合開始基を結合した樹脂微粒子(コア粒子)の表面において、炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するモノマーを上記重合開始基より表面グラフト重合することにより得られたグラフト重合体からなる被覆層(シェル層)を備える。このような樹脂粉体の製造方法としては、例えば以下の工程(A)及び(B)を順次実施する方法が挙げられる。
【0045】
工程(A):プラズマを発生させる放電室中に、樹脂微粒子からなる樹脂粉体を通過させ、樹脂微粒子表面に重合開始基を導入する工程
工程(B):溶媒中において、工程(A)で得られた樹脂微粒子表面にモノマーを接触させ、前記重合開始基よりグラフト重合させることにより、樹脂微粒子表面にグラフト重合体からなる被覆層を形成する工程。
【0046】
<工程(A)>
以下、前記工程(A)を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0047】
本実施形態においては、樹脂微粒子表面に重合開始基を結合する方法として、次の二通りの方法を用いることができる。
方法(1):樹脂微粒子表面を不活性ガス下でプラズマ処理し、樹脂微粒子表面に未結合手を形成させた後、反応性ガスを接触させる方法。
方法(2):反応性ガスを含む雰囲気下で直接樹脂微粒子表面をプラズマ処理する方法。
プラズマ処理による作用を受ける層は、樹脂微粒子表面から深さ数十オングストロームの範囲であるので、上記の方法を用いることにより、樹脂微粒子本来の性質を損なうことなく最表面のみに重合開始基を導入することができる。さらに最表面に導入された重合開始基よりグラフト重合を施すため、得られるグラフト重合体は樹脂微粒子の表面を均一な薄膜で効率よく被覆することができる。そのため、本実施形態の被覆樹脂微粒子を含む樹脂粉体は、樹脂微粒子本来の特性を保持したまま、被覆層による所望の特性が効率よく発現する。
【0048】
本実施形態におけるプラズマは3×10Pa以上、15×10Pa以下の圧力状態で発生させる(いわゆる大気圧プラズマである)。
多くの工業的プラズマプロセスで用いられている低圧プラズマでは高い真空度を得られる排気システムが必要であるが、大気圧プラズマを用いる場合は上記のような排気システムを必要としないため、安定したプロセスで粉体を処理することができる。
【0049】
本実施形態で用いられる重合開始基としては、モノマーのグラフト重合を開始できるものであれば特に制限はないが、原子移動ラジカル重合の開始基となるハロゲン原子またはハロゲン原子を含む原子団が好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選ばれ、これらの組み合わせであっても良い。本発明においては、臭素を用いることが特に好ましい。
【0050】
反応性ガスとして、上記ハロゲン原子またはハロゲンを含む原子団を含むものが好ましく、さらには塩素ガス、クロロメタン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、臭素ガス、モノブロモメタン、ジブロモメタン、トリクロロメタンが室温付近での蒸気圧が低く気化し易いという点で好ましい。本発明においては臭素ガス、トリブロモメタンを用いることが特に好ましい。
【0051】
方法(1)に記載の不活性ガスは希ガスであり、ヘリウム、アルゴンを用いることが大気圧で絶縁破壊電圧が低いという点で望ましい。
【0052】
方法(2)に記載の反応性ガスを含む雰囲気は、上記反応性ガスと上記不活性ガスの混気である。
【0053】
さらに図1を参照して、表面が反応性ガスで処理された樹脂微粒子の製造方法を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0054】
はじめに、図1を参照して、表面が反応性ガスで処理された樹脂微粒子の製造に用いられる製造装置1Aの概要について説明する。
【0055】
製造装置1Aは、粉体P1をプラズマ処理するための装置である。
本実施形態では、製造装置1Aは、表面が反応性ガスで処理された樹脂微粒子を含む粉体P2を製造するための装置である。本実施形態においては、ハロゲン化された粉体P2を製造するための装置を例に説明する。この製造装置1Aは、プラズマを発生させるための第1の電極231および第2の電極232と、第1の電極231および第2の電極232間に粉体P1を供給する粉体供給部3と、第1の電極231および第2の電極232間で発生したプラズマにより処理された樹脂微粒子の表面をハロゲン化するハロゲン化手段4とを備える。
【0056】
ハロゲン化手段4は、プラズマ処理された粉体P1が供給される容器(反応容器)43と、容器43中にハロゲン原子を含むガスを供給するガス供給部44とを有する。
【0057】
次に、図1および図2を参照して、製造装置1Aについて詳細に説明する。図2は、放電管2の断面図である。
【0058】
製造装置1Aは、放電管2と、粉体供給部3と、ハロゲン化手段4とを備える。
放電管2は、長手方向が鉛直方向に沿うように配置された三重管により構成されている。具体的には、図2に示すように、放電管2は、第1の筒部201と、この第1の筒部201を囲むように設けられた第2の筒部202と、この第2の筒部202を囲むように設けられた第三の筒部203とを備える。
【0059】
第1の筒部201内部には、第1の電極231が配置されている。この第1の電極231は、円筒状であり、第1の筒部201の内面に固定されている。この第1の電極231には、高周波電源25から供給される電力が印加される。
【0060】
第1の筒部201の内部には、第1の筒部201内部に冷却媒体(たとえば、水等の液体)を供給するための供給管204が配置されている。冷却媒体は、供給管204から供給され、第1の筒部201と供給管204外面との間を通り、第1の電極231を冷却する。その後、第1の筒部201の上端に設けられた排出管205から排出される。
【0061】
第2の筒部202は、第1の筒部201を囲むように設けられている。この第2の筒部202の外面側には、第2の電極232が配置されている。具体的には、第2の電極232は、第2の筒部202の外面に取り付けられている。
【0062】
第2の電極232は、第2の筒部202の外面に螺旋状に固定されている。また、第2の電極232は接地されている。第2の電極232は、第1の電極231と対向配置されており、第1の電極231と、第2の電極232とで挟まれた空間が放電室(放電空間)2Aとなる。具体的には、第1の筒部201の外面と、第2の筒部202の内面との間に放電室2Aが形成されることとなる。
【0063】
第三の筒部203は、第2の筒部202を囲むように設けられている。第2の筒部202には、上端部と、下端部にフランジ部202A,202Bが形成され、このフランジ部202A,202Bに挟まれるように第三の筒部203が配置される。
【0064】
この第三の筒部203の内面と、第2の筒部202外面との間には冷却媒体(たとえば、水等の液体)が供給され、第2の電極232が冷却媒体により冷却される構造となっている。具体的には、第三の筒部203の下端部に冷却媒体を供給するための供給管206が接続され、第三の筒部203の上端部に冷却媒体を排出する排出管207が接続されている。冷却媒体は、下方から上方にむかって流れることとなる。
【0065】
以上のような放電管2には、放電管2内に粉体P1を供給するための粉体供給部3が接続されている。
粉体供給部3は、第1の電極231と第2の電極232との間、すなわち、第1の筒部201の外面と、第2の筒部202の内面との間に粉体P1を供給するものである。
【0066】
ここで、粉体P1は、樹脂微粒子を含んでなり、たとえば、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂である。
【0067】
また、粉体P1は、微粒子で構成されることが好ましく、微粒子は、平均粒径が3μm以上、100μm以下であることが好ましい。なお、平均粒径(d50)は、レーザー回折散乱法(後述するCv値の測定方法と同様の方法)により測定されたものである。このような粒径の粉体を使用することで、粉体P1の落下速度(プラズマ中を通過する時間)を調整し、粉体P1を確実にプラズマ処理しやすくすることができる。
【0068】
さらに、粉体P1は、粒度分布がCV値で30%以下であることが好ましい。
このように、粒度分布が狭い粉体P1を使用することで、粉体P1の落下速度を均一化でき、粉体P1を確実にプラズマ処理することができる。
【0069】
ここで、CV値は、標準偏差÷粒子径平均値×100で示されるものであり、レーザー回折散乱法により測定することができる。具体的には、標準偏差は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、メタノール中に粉体を5分間超音波処理することにより分散させ、粒子径の測定を行うことにより算出される。なお、d50値を粒子径平均値とする。
【0070】
粉体供給部3は、粉体P1が収容された収容部32と、この収容部32を振動させて、収容部32の開口から粉体P1を排出させるためのバイブレータ33とを有する。バイブレータ33には、振動管331が接続され、この振動管331が収容部32内に配置されている。振動管331を振動させることで、収容部32の開口からの粉体P1の排出が調整される。
【0071】
収容部32から排出された粉体P1は、配管Lを通り、第1の筒部201の外面と、第2の筒部202の内面との間に供給される。配管Lには、プラズマを発生させるためのガスを供給するガス供給部7が接続されている。粉体P1は、配管Lに供給され、ガス流にのり、第1の筒部201の外面と、第2の筒部202の内面との間に落下することとなる。
【0072】
さらに、製造装置1Aは、放電管2内でプラズマ処理された粉体P1を回収するとともにハロゲン化を行うハロゲン化手段4を有する。
【0073】
このハロゲン化手段4は、第2の筒部202に連通し、逆円錐形状に形成された粉体回収槽41と、この回収槽41の下端部に接続された配管42と、配管42の端部に接続された反応容器43と、ガス供給部44と、容器45とを備える。
【0074】
配管42にはバルブ421が取り付けられている。
反応容器43は、放電管2から排出された粉体をハロゲン化するための容器である。この反応容器43には、ハロゲン原子を含むガスを供給するためのガス供給部44が接続されている。また、反応容器43には、ソーダ石灰が充填された容器45が接続されている。
【0075】
なお、本発明において用いられる製造装置は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば、前記実施形態では、粉体P1を、プラズマを発生させるためのガス流にのせて、第一の電極231および第二の電極232間に落下させていたが、これに限らず、粉体を搬送するための搬送専用のガスを使用してもよい。
さらには、前記実施形態では、粉体供給部3は、バイブレータ33による振動で、粉体P1を供給するとしたが、粉体の供給方法は、これに限られるものではない。
【0076】
また、前記実施形態の製造装置の構造に加え、図3に示すように、第一の筒部201に、第一の筒部201を振動させるための、振動部6を取り付けてもよい。第一の筒部201を振動させることで、第一の筒部201と第二の筒部202との間に供給された粉体P1に振動を与え、粉体P1が第一の筒部201と第二の筒部202との間の放電室2A中を落下しやすくすることができる。また、粉体P1の落下速度を制御することが可能となる。
さらに、第二の筒部202に対し、振動部を取り付けてもよく、第一の筒部201、第二の筒部202の双方に振動部を取り付けてもよい。
また、前記実施形態では、冷却の媒体として液体を使用したが、ガスを使用してもよい。
【0077】
次に、以上のような製造装置1Aを使用した方法(1)による粉体P2の製造方法について説明する。
【0078】
はじめに、放電管2内でプラズマを発生させる。具体的には、ガス供給部7から、第1の電極231、第2の電極232間にプラズマ発生用のガスを供給する。プラズマ発生用のガスとしては、たとえば、ヘリウムガス、アルゴンガス等の希ガス等である。これらのガスのうち2以上を混合したガスをプラズマ発生用のガスとしてもよい。これに加え、放電用ガス供給口221からも、プラズマ発生用のガスが供給される。
【0079】
第1の電極231および第2の電極232に印加し、プラズマを発生させる。なお、プラズマを、3×10Pa以上、15×10Pa以下の圧力状態で発生させる(いわゆる大気圧プラズマである)。
【0080】
次に、粉体供給部3から、放電管2に対し、粉体P1を供給する。このとき、粉体P1の収容部32からの排出量を調整するために、バイブレータ33により、振動管331を振動させる。粉体P1は、ガス供給部7からのガス流にのり、放電管2内に落下する。粉体P1は、プラズマ発生用のガスの一部を用いて、放電管2内の放電室2Aに導かれることとなる。
【0081】
次に、粉体P1は、放電管2内でプラズマ処理され、粉体を構成する粒子表面に未結合手が形成される。アルゴン、ヘリウム等の不活性なガス中に粉体P1が存在している間は、粉体P1の未結合手は、そのままの状態となる。
【0082】
このような粉体P1は、ハロゲン化手段4に回収される。具体的には、粉体P1は、粉体回収槽41、配管42をとおり、反応容器43に到達する。あらかじめ、反応容器43内には、ガス供給部44からハロゲン原子を含むガスを供給しておく。反応容器43中で、粉体P1の未結合手にハロゲン原子が結合し、粉体P1がハロゲン化されることとなる。これにより、表面がハロゲン化された樹脂微粒子を含む粉体P2を得ることができる。
【0083】
なお、反応容器43中のハロゲン原子を含むガスは、ソーダ石灰が充填された容器45を通り、外部に放出される。このとき、ソーダ石灰にハロゲン原子が吸着除去される。
【0084】
さらに図1を参照して、方法(2)に記載の表面が反応性ガスで処理された樹脂微粒子の製造方法を図面に基づいて説明する。
【0085】
前記方法(1)と同様、はじめに、放電管2内でプラズマを発生させる。具体的には、ガス供給部7から、第1の電極231、第2の電極232間にプラズマ発生用のガスを供給する。プラズマ発生用のガスとしては、たとえば、ヘリウムガス、アルゴンガス等の希ガス等である。これらのガスのうち2以上を混合したガスをプラズマ発生用のガスとしてもよい。これに加え、放電用ガス供給口221からは、プラズマ発生用のガスと反応性ガスの混合ガスが供給される。具体的には、プラズマ発生用のガスに気化したブロモホルムや臭素ガスを混合したもので、これらのガスのうち2以上を混合したガスを反応性用ガスとして混合してもよい。
【0086】
第1の電極231および第2の電極232に印加し、プラズマを発生させる。なお、プラズマを、3×10Pa以上、15×10Pa以下の圧力状態で発生させる(いわゆる大気圧プラズマである)。
【0087】
次に、粉体供給部3から、放電管2に対し、粉体P1を供給する。このとき、粉体P1の収容部32からの排出量を調整するために、バイブレータ33により、振動管331を振動させる。粉体P1は、ガス供給部7からのガス流にのり、放電管2内に落下する。粉体P1は、プラズマ発生用のガスの一部を用いて、放電管2内の放電室2Aに導かれることとなる。
【0088】
次に、粉体P1は、放電管2内でプラズマ処理される。反応性ガスを混合したガス雰囲気下でプラズマ処理することにより、粉体を構成する粒子表面に直接、ハロゲン及びハロゲンを含む原子団を結合することができる。
【0089】
このような粉体P1は、反応容器43に回収される。具体的には、粉体P1は、粉体回収槽41、配管42をとおり、反応容器43に到達する。これにより、プラズマ処理により表面が直接ハロゲン化された樹脂微粒子を含む粉体P2を得ることができる。
【0090】
<工程(B)>
以下、前記工程(B)について説明する。
【0091】
本実施形態における被覆樹脂微粒子を含む樹脂粉体の製造方法は、粉体P2を構成する樹脂微粒子表面において、炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するモノマーを表面グラフト重合することにより、グラフト重合体からなる被覆層を形成するものである。
【0092】
具体的には、粉体P2を構成する樹脂微粒子表面において、該表面に存在するラジカル重合開始基(粉体P1の未結合手に結合したハロゲン原子)を開始点として、炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するモノマーを表面グラフト重合することにより製造するものである。
【0093】
粉体P2を構成する樹脂微粒子表面において、制御ラジカル重合法によりモノマーを表面グラフト重合することで、極性重合体の分子量、分子量分布および分子末端の制御など、一次構造を制御することが可能である。
【0094】
本実施形態においては、グラフト重合体からなる被覆層を形成するための制御ラジカル重合法の種類は特に限定されないが、グラフト重合体の種類、重合条件のより適切な手法を選ぶことができる。
【0095】
本実施形態においては、原子移動ラジカル重合法は、選択できるモノマー種の豊富さから、グラフト重合体を導入(被覆層を形成)するために好ましい制御ラジカル重合法である。
【0096】
本発明に係わる制御ラジカル重合を行うに当たり、溶媒を使用してもしなくても良い。使用できる溶媒としては、重合反応を阻害せず、かつラジカル重合開始基が導入された樹脂微粒子を溶解させるものでなければ何れでも使用することができるが、例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロルエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノールおよびtert−ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキシアニソールのようなエーテル系溶媒等をあげることができる。また、水を溶媒とすることもできる。これらの溶媒は、単独でも2種以上を混合して使用してもよい。
【0097】
重合温度は、ラジカル重合開始基が導入された樹脂微粒子が溶融または膨潤しない温度でかつラジカル重合反応が進行する温度であれば任意に設定できる。所望する重合体の重合度、使用するラジカル重合開始剤および溶媒の種類や量によって一様ではないが、通常、−50℃〜150℃、好ましくは0℃〜80℃である。重合反応は場合によって減圧、常圧または加圧の何れでも実施できる。上記重合反応は、酸素を除去した後、副反応を抑えるため窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0098】
このようにして得られる本発明の樹脂粉体は、樹脂添加剤、フィルム用添加剤、塗料用添加剤、化粧品、液晶表示素子用スペーサー、導電性微粒子用樹脂微粒子等の用途への展開が考えられる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
はじめに、臭素化およびそれに続くグラフト重合の処理対象となる粒子を以下のようにして製造した。
【0100】
(超高分子量ポリエチレン(PE)微粒子(平均粒径9μm)の製造)
(Mg含有担体成分(B1−1)の調製)
無水塩化マグネシウム95.2g(1.0mol)、デカン442mlおよび2−エチルヘキシルアルコール390.6g(3.0mol)を130℃で2時間反応を行い均一溶液(成分(B1))を得た。次に、充分に窒素置換した内容積1000mlのフラスコに、成分(B1)50ml(マグネシウム原子換算で50mmol)、精製デカン283ml、およびクロロベンゼン117mlを装入し、オルガノ社製クレアミックスCLM−0.8Sを用い、回転数15000rpmの攪拌下、液温を0℃に保持しながら、精製デカンで希釈したトリエチルアルミニウム52mmolを、30分間にわたって滴下装入した。その後、液温を5時間かけて80℃に昇温し、1時間反応させた。次いで、80℃を保持しながら、再び、精製デカン希釈のトリエチルアルミニウム98mmolを、30分間にわたって滴下装入し、その後さらに1時間加熱反応した。反応終了後、濾過にて固体部を採取し、トルエンにて充分洗浄し、100mlのトルエンを加えてMg含有担体成分(B1−1)のトルエンスラリーとした。
【0101】
(固体触媒成分(B1−1−A2−172)の調製)
充分に窒素置換した内容積1000mlのフラスコに、Mg含有担体成分(B1−1)をマグネシウム原子換算で20mmol、および精製トルエン600mlを装入し、攪拌下、室温に保持しながら、下記遷移金属化合物(A2−172)のトルエン溶液(0.0001mmol/ml)20mlを20分にわたって滴下装入した。1時間攪拌した後、濾過にて固体部を採取し、トルエンにて充分洗浄し、精製デカンを加えて固体触媒成分(B1−1−A2−172)の200mlデカンスラリーとした。
【0102】
【化1】

【0103】
超高分子量PE微粒子(平均粒径9μm)の調製
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン500mlを装入し、室温でエチレン100リットル/hrを15分間流通させ、液相及び気相を飽和させた。続いて63℃に昇温した後、エチレンを12リットル/hrで流通させたまま、トリエチルアルミニウムのデカン溶液(Al原子で1.0mmol/ml)1.25ml、固体触媒成分(B1−1−A2−172)、5.33ml(Zr原子換算で0.00008mmol)を加え、温度を維持したまま3分間攪拌し、エマルゲンE−108(花王(株)製)40mgを加えてすぐ、エチレン圧の昇圧を開始した。10分かけてエチレン圧を0.8MPa・Gに昇圧し、圧を維持するようエチレンを供給しながら65℃で2時間重合を行なった。その後、オートクレーブを冷却し、エチレンを脱圧した。得られたポリマースラリーを濾過後、ヘキサンで洗浄し、80℃で10時間減圧乾燥することにより、ポリマー粒子51.9gを得た。生成ポリマー粒子のメジアン径(d50)は9.4μm、Cv値は13.5%であった。なお、標準偏差、d50は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、メタノールに粉体を5分間超音波処理することにより分散させ、粒子径の測定を行うことにより算出した。
【0104】
[実施例1]
(1)プラズマ処理による臭素化ポリエチレン微粒子の合成
1.プラズマ処理による微粒子表面における未結合手の形成
図1に示した製造装置1Aを用いて、上記超高分子量ポリエチレン微粒子からなる粉体(粉体P1)の処理を行なった。粉体P1を5g、収容部32に収納した後、ヘリウムガスにてガス置換を行ない、収容部32の開口を開けると同時にバイブレータ33を作動させて粉体P1の供給を開始した。
プラズマを形成するために13.56MHzの高周波電力を印加し、プラズマを形成する。第一の電極231,第二の電極232間の放電室内で粉体P1がプラズマ処理される。高周波は10kHzのパルスを同期させることにより、電力印加時間と休止時間を50%と50%に区分して電力を供給した。そして、供給高周波電力は、1.8kWから2.5kWになるように調整して供給した。5gの粉体P1に対してプラズマ照射時間30分とした。またヘリウムの供給流量は、ガス供給入口71から1L/分、放電用ガス供給口221からは2L/分であった。
プラズマ処理後の粉体P1は反応容器43に捕集され、続けて臭素ガス処理を行った。
【0105】
2.臭素ガス処理
予め、臭素液を液体窒素で凍結させ蒸気圧を低下させておき、反応容器43は油回転ポンプ(図示せず)で真空引きを行っておいた。次に供給バルブ432を開放し、臭素ガスを反応容器43内に導入し、圧力100Torrに保ちながら粉体P1と臭素とを1時間接触させた。このようにして臭素ガス処理を行なうことで得られた粉体P2を、X線光電子分光(XPS)により測定し、粉体P2を構成する微粒子表面の元素組成比を定量したところ、対炭素比率にて0.72%であることが確認できた。さらにイオンクロマトにより得られた粉体P2の臭素元素の含有量を測定したところ0.034wt%であった。
【0106】
(2)表面グラフト重合によるコアシェル微粒子の合成
内容積20mlのガラス製反応容器に、(1)で得られた臭素化PE微粒子からなる粉体2.0gとトルエン8.3ml、メチルメタクリレート(MMA)3.3ml、グリシジルメタクリレート(GMA)1.7mlを入れ、凍結脱気により窒素置換を施す。そのまま気相部を窒素雰囲気下に保ったまま25℃で攪拌しながら、臭素化銅(I)7.65mg、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)18.5mgのトルエン溶液0.5mlを加え、80℃に昇温し150分攪拌を続けた。その後、冷却させた反応液を濾過し、得られたパウダーを25mlのアセトンスラリーにして30分攪、さらに再び濾過した後、25mlのメタノールスラリーとして30分攪拌し洗浄を行った。洗浄を行った後、濾過して得られたパウダーを減圧下80℃で10時間乾燥した。収量変化からグラフト重合体の含量を計算したところ2.2wt%であり、単位表面当たりのグラフト重合体の質量は32.4mg/mであった。
また、一般的なアクリル樹脂の密度(1.2mg/m)を用い、前述した単位表面積あたりの質量を厚みに換算すると27.0nmであり、後述する透過型電子顕微鏡観察の実測値である22nmと近似した値となった。
【0107】
[実施例2]
表面グラフト重合によるコアシェル微粒子の合成
内容積20mlのガラス製反応容器に、実施例1(1)で得られた臭素化PE微粒子からなる粉体500mgとトルエン8.3ml、メチルメタクリレート(MMA)3.3ml、グリシジルメタクリレート(GMA)1.7mlを入れ、凍結脱気により窒素置換を施す。そのまま気相部を窒素雰囲気下に保ったまま25℃で攪拌しながら、臭素化銅(I)7.65mg、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)18.5mgのトルエン溶液0.5mlを加え、80℃に昇温し150分攪拌を続けた。その後、冷却させた反応液を濾過し、得られたパウダーを10mlのアセトンスラリーにして30分攪、さらに再び濾過した後、10mlのメタノールスラリーとして30分攪拌し洗浄を行った。洗浄を行った後、濾過して得られたパウダーを減圧下80℃で10時間乾燥した。収量変化からグラフト重合体の含量を計算したところ0.34wt%であり、単位表面当たりの極性重合体の質量は5.0mg/mであった。
また、一般的なアクリル樹脂の密度(1.2mg/m)を用い、前述した単位表面積あたりの質量を厚みに換算すると4.2nmに相当し、後述する透過型電子顕微鏡観察の実測値である3nmと近似した値となった。
【0108】
[実施例3]
(1)プラズマ処理による臭素化PE微粒子の合成
図1に示した製造装置1Aを用いて、前記超高分子量ポリエチレン微粒子からなる粉体(粉体P1)の処理を行なった。粉体P1を5g、収容部32に収納した後、ヘリウムガスにてガス置換を行う。放電管2内部をヘリウムガスで満たした後、100℃に加熱したトリブロモメタンをバブリングによりガス化し、キャリアガスのヘリウムとともに放電場に導入する。また流通経路はブロモホルムの液化を防ぐためリボンヒーターにて加熱しておく。次にプラズマを形成するために13.56MHzの高周波電力を印加し、プラズマを形成する。次に収容部32の開口を開けると同時にバイブレータ33を作動させて粉体P1の供給を開始し、第一の電極231,第二の電極232間の放電室内で粉体P1がプラズマ処理される。高周波は10kHzのパルスを同期させることにより、電力印加時間と休止時間を50%と50%に区分して電力を供給した。そして、供給高周波電力は、1.8kWから2.2kWになるように調整して供給した。5gの粉体P1に対してプラズマ照射時間30分とした。またヘリウムの供給流量は、ガス供給入口71から2L/分、放電用ガス供給口221からは8L/分であった。
プラズマを通過した粉体は放電管2下方に装着した反応容器43の中に回収され、空気に触れないよう3時間放置した。
この様にして得られた粉体P2を、X線光電子分光(XPS)により分析し、粉体P2を構成する微粒子表面の元素組成比を定量したところ、対炭素比率にて5.31%であることが確認できた。さらにイオンクロマトにより得られた粉体P2の臭素元素の含有量を測定したところ0.160wt%であった。
【0109】
(2)表面グラフト重合によるコアシェル微粒子の合成
内容積20mlのガラス製反応容器に、(1)で得られた臭素化PE微粒子からなる粉体500mgとトルエン8.3ml、メチルメタクリレート(MMA)3.3ml、グリシジルメタクリレート(GMA)1.7mlを入れ、凍結脱気により窒素置換を施す。そのまま気相部を窒素雰囲気下に保ったまま25℃で攪拌しながら、臭素化銅(I)7.65mg、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)18.5mgのトルエン溶液0.5mlを加え、80℃に昇温し150分攪拌を続けた。その後、冷却させた反応液を濾過し、得られたパウダーをアセトンスラリー10mlで30min、メタノールスラリー10mlで30min洗浄した。洗浄を行った後、濾過して得られたパウダーを減圧下80℃で10時間乾燥した。収量変化からグラフト重合体の含量を計算したところ1.8wt%であり、単位表面当たりのグラフト重合体の質量は26.5mg/mであった。
また、一般的なアクリル樹脂の密度(1.2mg/m)を用い、前述した単位表面積あたりの質量を厚みに換算すると、22.1nmに相当し、後述する透過型電子顕微鏡観察の実測値である18nmと近似した値となった。
【0110】
[実施例4]
図1に示した製造装置1Aを用いて、前記超高分子量ポリエチレン微粒子からなる粉体(粉体P1)の処理を行なった。粉体P1を5g、収容部32に収納した後、ヘリウムガスにてガス置換を行う。放電管2内部をヘリウムガスで満たした後、100℃に加熱したトリブロモメタンをバブリングによりガス化し、3.0mL/分の流量のヘリウムとともに放電場に導入する。また流通経路はブロモホルムの液化を防ぐためリボンヒーターにて加熱しておく。次にプラズマを形成するために13.56MHzの高周波電力を印加し、プラズマを形成する。次に収容部32の開口を開けると同時にバイブレータ33を作動させて粉体P1の供給を開始し、第一の電極231,第二の電極232間の放電室内で粉体P1がプラズマ処理される。高周波は10kHzのパルスを同期させることにより、電力印加時間と休止時間を50%と50%に区分して電力を供給した。そして、供給高周波電力は、1.8kWから2.2kWになるように調整して供給した。5gの粉体P1に対してプラズマ照射時間30分とした。またヘリウムの供給流量は、ガス供給入口71から2L/分、放電用ガス供給口221からは8L/分であった。
プラズマを通過した粉体は放電管2下方に装着した反応容器43の中に回収され、空気に触れないよう3時間放置した。
この様にして得られた粉体P2を、X線光電子分光(XPS)により分析し、粉体P2を構成する微粒子表面の元素組成比を定量したところ、対炭素比率にて1.06%であることが確認できた。
【0111】
(2)表面グラフト重合によるコアシェル微粒子の合成
予め、用いるメチルメタクリレート(MMA)とグリシジルメタクリレート(GMA)を、アルミナを吸着剤とした固相抽出法で処理し、重合禁止剤を除去しておく。内容積20mlのガラス製反応容器に、(1)で得られた臭素化PE微粒子からなる粉体500mgとトルエン8.3ml、メチルメタクリレート(MMA)3.3ml、グリシジルメタクリレート(GMA)1.7mlを入れ、凍結脱気により窒素置換を施す。そのまま気相部を窒素雰囲気下に保ったまま25℃で攪拌しながら、臭素化銅(I)7.65mg、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)18.5mgのトルエン溶液0.5mlを加え、80℃に昇温し150分攪拌を続けた。その後、冷却させた反応液を濾過し、得られたパウダーをアセトンスラリー10mlで30min、メタノールスラリー10mlで30min洗浄した。洗浄を行った後、濾過して得られたパウダーを減圧下80℃で10時間乾燥した。収量変化からグラフト重合体の含量を計算したところ4.2wt%であり、単位表面当たりのグラフト重合体の質量は59.2mg/mであった。透過型電子顕微鏡観察によると膜厚は26nmであった。
【0112】
[実施例5]
図1に示した製造装置1Aを用いて、前記超高分子量ポリエチレン微粒子からなる粉体(粉体P1)の処理を行なった。粉体P1を5g、収容部32に収納した後、ヘリウムガスにてガス置換を行う。放電管2内部をヘリウムガスで満たした後、100℃に加熱したトリブロモメタンをバブリングによりガス化し、3.5mL/分の流量のヘリウムとともに放電場に導入する。また流通経路はブロモホルムの液化を防ぐためリボンヒーターにて加熱しておく。次にプラズマを形成するために13.56MHzの高周波電力を印加し、プラズマを形成する。次に収容部32の開口を開けると同時にバイブレータ33を作動させて粉体P1の供給を開始し、第一の電極231,第二の電極232間の放電室内で粉体P1がプラズマ処理される。高周波は10kHzのパルスを同期させることにより、電力印加時間と休止時間を50%と50%に区分して電力を供給した。そして、供給高周波電力は、1.8kWから2.2kWになるように調整して供給した。5gの粉体P1に対してプラズマ照射時間30分とした。またヘリウムの供給流量は、ガス供給入口71から2L/分、放電用ガス供給口221からは8L/分であった。
プラズマを通過した粉体は放電管2下方に装着した反応容器43の中に回収され、空気に触れないよう3時間放置した。
この様にして得られた粉体P2を、X線光電子分光(XPS)により分析し、粉体P2を構成する微粒子表面の元素組成比を定量したところ、対炭素比率にて1.52%であることが確認できた。
【0113】
(2)表面グラフト重合によるコアシェル微粒子の合成
予め、用いるメチルメタクリレート(MMA)とグリシジルメタクリレート(GMA)をアルミナを吸着剤とした固相抽出法で処理し、重合禁止剤を除去しておく。内容積20mlのガラス製反応容器に、(1)で得られた臭素化PE微粒子からなる粉体500mgとトルエン8.3ml、メチルメタクリレート(MMA)3.3ml、グリシジルメタクリレート(GMA)1.7mlを入れ、凍結脱気により窒素置換を施す。そのまま気相部を窒素雰囲気下に保ったまま25℃で攪拌しながら、臭素化銅(I)7.65mg、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)18.5mgのトルエン溶液0.5mlを加え、80℃に昇温し150分攪拌を続けた。その後、冷却させた反応液を濾過し、得られたパウダーをアセトンスラリー10mlで30min、メタノールスラリー10mlで30min洗浄した。洗浄を行った後、濾過して得られたパウダーを減圧下80℃で10時間乾燥した。収量変化からグラフト重合体の含量を計算したところ7.4wt%であり、単位表面当たりのグラフト重合体の質量は109.0mg/mであった。透過型電子顕微鏡観察によると膜厚は34nmであった。
【0114】
[実施例6]
図1に示した製造装置1Aを用いて、前記超高分子量ポリエチレン微粒子からなる粉体(粉体P1)の処理を行なった。粉体P1を5g、収容部32に収納した後、ヘリウムガスにてガス置換を行う。放電管2内部をヘリウムガスで満たした後、100℃に加熱したトリブロモメタンをバブリングによりガス化し、4.0mL/分の流量のヘリウムとともに放電場に導入する。また流通経路はブロモホルムの液化を防ぐためリボンヒーターにて加熱しておく。次にプラズマを形成するために13.56MHzの高周波電力を印加し、プラズマを形成する。次に収容部32の開口を開けると同時にバイブレータ33を作動させて粉体P1の供給を開始し、第一の電極231,第二の電極232間の放電室内で粉体P1がプラズマ処理される。高周波は10kHzのパルスを同期させることにより、電力印加時間と休止時間を50%と50%に区分して電力を供給した。そして、供給高周波電力は、1.8kWから2.2kWになるように調整して供給した。5gの粉体P1に対してプラズマ照射時間30分とした。またヘリウムの供給流量は、ガス供給入口71から2L/分、放電用ガス供給口221からは8L/分であった。
プラズマを通過した粉体は放電管2下方に装着した反応容器43の中に回収され、空気に触れないよう3時間放置した。
この様にして得られた粉体P2を、X線光電子分光(XPS)により分析し、粉体P2を構成する微粒子表面の元素組成比を定量したところ、対炭素比率にて2.52%であることが確認できた。
【0115】
(2)表面グラフト重合によるコアシェル微粒子の合成
予め、用いるメチルメタクリレート(MMA)とグリシジルメタクリレート(GMA)をアルミナを吸着剤とした固相抽出法で処理し、重合禁止剤を除去しておく。内容積20mlのガラス製反応容器に、(1)で得られた臭素化PE微粒子からなる粉体500mgとトルエン8.3ml、メチルメタクリレート(MMA)3.3ml、グリシジルメタクリレート(GMA)1.7mlを入れ、凍結脱気により窒素置換を施す。そのまま気相部を窒素雰囲気下に保ったまま25℃で攪拌しながら、臭素化銅(I)7.65mg、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)18.5mgのトルエン溶液0.5mlを加え、80℃に昇温し150分攪拌を続けた。その後、冷却させた反応液を濾過し、得られたパウダーをアセトンスラリー10mlで30min、メタノールスラリー10mlで30min洗浄した。洗浄を行った後、濾過して得られたパウダーを減圧下80℃で10時間乾燥した。収量変化からグラフト重合体の含量を計算したところ8.6wt%であり、単位表面当たりのグラフト重合体の質量は126.7mg/mであった。透過型電子顕微鏡観察によると膜厚は36nmであった。
【0116】
[比較例1]
(1)化学的手法による臭素化ポリエチレン微粒子の合成
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、前記超高分子量PE微粒子からなる粉体300gおよびクロロベンゼン1.2Lを入れ、室温で窒素バブリング(10L/H)を実施した後、気相部を窒素雰囲気下に保ったまま80℃に昇温し、臭素3.0mlを加え6時間加熱攪拌した。反応液を濾過して得られたパウダーを2Lのアセトン中に加え、室温で攪拌、濾過後ポリマーを80℃で減圧乾燥して298gの白色PEパウダーを得た。得られたポリマー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.040wt%であった。
【0117】
(2)表面グラフト重合によるコアシェル微粒子の合成
内容積20mlのガラス製反応容器に、(1)で得られた臭素化PE微粒子からなる粉体2.00gとトルエン8.3ml、メチルメタクリレート(MMA)3.3ml、グリシジルメタクリレート(GMA)1.7mlを入れ、凍結脱気により窒素置換を施す。そのまま反応容器を窒素雰囲気下に保ち25℃で攪拌しながら、臭素化銅(I)7.65mg、N,N,N',N'',N''―ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)18.5mgのトルエン溶液0.5mlを加え、80℃に昇温し150分攪拌を続けた。その後、冷却させた反応液を濾過し、得られたパウダーを10mlのアセトンスラリーにして30分攪、さらに再び濾過した後、10mlのメタノールスラリーとして30分攪拌し洗浄を行った。洗浄を行った後、濾過して得られたパウダーは減圧下80℃で10時間乾燥した。得られたパウダーは減圧下60℃で10時間乾燥した。収量変化からグラフト重合体の含量を計算したところ1.9wt%であった。また、図10に示される透過型電子顕微鏡による観察結果の通り、[実施例1]、[実施例3]と同程度のグラフト重合体の含量であるにも拘らず、被覆層は観測されなかった。
【0118】
[比較例2]
表面グラフト重合によるコアシェル微粒子の合成
十分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、比較例1(1)で得た臭素化PEパウダー200gとメチルメタクリレート(MMA)333ml、グルシジルメタクリレート167ml、トルエン833mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)765mg(5.33mmol)、PMDETAml(10.67mmol)を加え、80℃に昇温しで150分攪拌を続けた。その後反応液スラリーを濾過し、濾紙上のポリマーをアセトン2.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたポリマーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して224.86gの固体状ポリマーを得た。収量増加分から計算したグラフト重合体の含量は11wt%であった。また、後述する透過型電子顕微鏡観察の通り、実施例と比較して5倍以上の高いグラフト重合体の含量であるにも拘らず、被覆層は観測されなかった。
【0119】
<表面形態観察>
実施例1〜3で得られたコアシェル微粒子及び比較例1,2で得られた微粒子について、透過型電子顕微鏡による断面観察を行った。微粒子をエポキシ樹脂に包埋させ、ミクロトームで面だしした後、酸化ルテニウムで染色し透過型電子顕微鏡で観察した。図4〜9に、実施例1〜6で得られたコアシェル微粒子の透過型電子顕微鏡による観察結果を順に示し、図10,11に、比較例1、2で得られた微粒子の透過型電子顕微鏡による観察結果を順に示す。
【0120】
実施例1〜6についてはMMA,GMAの共重合体からなる厚さ5〜40nmの均一で明瞭な被覆層が観測されたが、比較例1および比較例2においては、明瞭な被覆層を観察することができなかった。
【0121】
<分散性評価>
実施例1、比較例1,2で得られた粉体、未修飾PE微粒子からなる粉体について以下の方法により分散性評価を行った。25℃の条件下、内容積1mlのサンプル瓶の中に、乾燥させた樹脂粉体5mgと所定の体積比で調製したジメチルホルムアミド(DMF)と水の混合分散媒0.5mlを入れ振とうした後、超音波照射を3分間実施した。30分静置した後、得られた分散液をマイクロシリンジ(HAMILTON製(80630))で10μl取り出し、スライドグラスの上に滴下、カバーグラスをして、光学顕微鏡(KEYENCE製、「VH−Z450」)を用いて450倍の倍率で観測した。ソフトウェア「macview」を用い、得られた顕微鏡画像から、視野サイズ1013μm×1345μmにおいて観測された粒子の個数をカウントした。なお凝集した粒子については凝集体1つを1個としてカウントしている。
【0122】
上記の方法によれば、分散性が優れる場合には、顕微鏡観察において一定の視野の中に非凝集の微粒子が高密度で観測されるため多くの個数がカウントされるが、多くの粉体が分散せず沈降・浮遊している場合や、微粒子が凝集している場合はカウントされる個数が少なくなる。カウント数の結果を表1に示し、また図12では、表1の結果を誘電率に対してプロットした。なお、誘電率は混合分散媒において体積の加成性が成り立つと仮定し概算した。
【0123】
【表1】

【0124】
上記の結果によると、実施例1は比較例1とほぼ同等の極性ポリマー含量でありながら、高含水率の分散媒においても、より高い分散性を示すことがわかった。さらに比較例2は実施例1の5倍程度の極性ポリマーを含んでいるにもかかわらず、実施例1の方が高い分散性を示した。
おおむねカウント数500以上では目視による観察によると、沈降・浮遊物は確認できず、均一に分散している。
【0125】
実施例2〜6で得られた被覆樹脂微粒子は、粒子表面全体に均一で明瞭な被覆層を有していることから、実施例1の被覆樹脂微粒子と同様に高い分散性を示すことが推認された。さらに、実施例1〜6の結果から、樹脂微粒子表面全体に均一で明瞭な被覆層を備え、その膜厚が0より大きく60nm以下であり、かつ樹脂微粒子の単位表面積当たりの重合体の質量が2〜150mg/mであることにより、被覆層に様々な特性を付与することが可能となり、加工性、耐薬品性、電気的性質、機械的性質、摺動性、耐摩耗性、耐衝撃性などに優れることが推認された。
【0126】
さらに実施例2〜6で得られた粉体について、実施例1および比較例1,2で得られた粉体との分散性を比較するため、DMF/水=2/8中での分散性について上記同様の方法で評価した。実施例2〜6、比較例1,2で得られた粉体のカウント数を、表2に示す。さらに、グラフト重合体の含量を横軸にプロットした結果を図13に示す。
【0127】
【表2】

【0128】
表2および図13に示すように、本実施例で得られた被覆樹脂微粒子はグラフト重合体の含量が少量であっても、分散性の向上が顕著であり、特に実施例1の2.2重量%以上ではその効果が最大化していることが確認された。すなわち、本発明により形成された被覆層において、単位表面積当たりの重合体の質量が0.1重量%以上、好ましくは2重量%以上であることにより、さらに効率よく所望の特性を発揮していることが推認された。一方、比較例では、グラフト重合体の導入による分散性の向上が確認できるが、その効果は実施例で得られたものよりも低いことが確認された。
【符号の説明】
【0129】
1A 製造装置
2 放電管
2A 放電室
3 粉体供給部
4 ハロゲン化手段
6 振動部
7 ガス供給部
25 高周波電源
32 収容部
33 バイブレータ
41 回収槽
42 配管
43 反応容器
44 ガス供給部
45 容器
71 ガス供給入口
201 第1の筒部
202 第2の筒部
202A,202B フランジ部
203 第三の筒部
204 供給管
205 排出管
206 供給管
207 排出管
221 放電用ガス供給口
231 第1の電極
232 第2の電極
331 振動管
421 バルブ
432 供給バルブ
L 配管
P1 粉体
P2 粉体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂微粒子の表面にモノマーを重合させて得られた重合体からなる被覆層を備える被覆樹脂微粒子において、
前記樹脂微粒子表面と、前記重合体とが、炭素−炭素結合により化学的に結合し、かつ被覆層の膜厚が0より大きく60nm以下であり、樹脂微粒子の単位表面積当たりの前記重合体の質量が2〜150mg/mであることを特徴とする被覆樹脂微粒子からなる樹脂粉体。
【請求項2】
前記樹脂微粒子の単位表面積当たりの前記重合体の質量が2〜100mg/mであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂粉体。
【請求項3】
前記被覆樹脂微粒子が前記重合体を0.1重量%以上含むことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂粉体。
【請求項4】
前記被覆樹脂微粒子の平均粒子径が1〜100μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂粉体。
【請求項5】
前記樹脂微粒子は、ポリオレフィンからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂粉体。
【請求項6】
前記樹脂微粒子の表面をプラズマ処理して未結合手を形成させたのち、反応性ガスを接触させることにより前記未結合手に重合開始基を結合させ、前記重合開始基よりモノマーを表面グラフト重合させることにより得られた重合体からなる被覆層を備える被覆樹脂微粒子からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂粉体。
【請求項7】
前記樹脂微粒子の表面を、反応性ガスを含むガス雰囲気下でプラズマ処理することにより重合開始基を結合させ、前記重合開始基よりモノマーを表面グラフト重合させることにより得られた重合体からなる被覆層を備える被覆樹脂微粒子からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂粉体。
【請求項8】
前記プラズマ処理は、3×10Pa以上、15×10Pa以下の圧力下で行われることを特徴とする請求項6または7に記載の樹脂粉体。
【請求項9】
前記反応性ガスはハロゲン原子を含有するガスであり、前記重合開始基はハロゲン原子またはハロゲン原子を含む原子団であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の樹脂粉体。
【請求項10】
前記表面グラフト重合は、原子移動ラジカル重合であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の樹脂粉体。
【請求項11】
前記モノマーは、炭素―炭素不飽和結合を有する有機化合物から1種以上選択されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の樹脂粉体。
【請求項12】
樹脂粉体をプラズマ処理して、前記樹脂粉体を構成する樹脂微粒子の表面に未結合手を形成する工程と、
前記未結合手が形成された樹脂微粒子に反応性ガスを接触させて、前記未結合手に、前記反応性ガスから構成される原子あるいは原子団を結合させる工程と、
前記原子あるいは原子団を重合開始基としてモノマーを表面グラフト重合させることにより、前記樹脂微粒子表面に重合体からなる被覆層を形成し、被覆樹脂微粒子を得る工程と、
を含む、被覆樹脂微粒子からなる樹脂粉体の製造方法。
【請求項13】
樹脂微粒子からなる樹脂粉体を、反応性ガスを含むガス雰囲気下でプラズマ処理することにより、前記樹脂微粒子の表面に前記反応性ガスから構成される原子あるいは原子団を結合させる工程と、
前記原子あるいは原子団を重合開始基としてモノマーを表面グラフト重合させることにより、前記樹脂微粒子表面に重合体からなる被覆層を形成し、被覆樹脂微粒子を得る工程と、
を含む、被覆樹脂微粒子からなる樹脂粉体の製造方法。
【請求項14】
前記プラズマ処理は、3×10Pa以上、15×10Pa以下で行われることを特徴とする請求項12または13に記載の樹脂粉体の製造方法。
【請求項15】
前記表面グラフト重合は原子移動ラジカル重合であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の樹脂粉体の製造方法。
【請求項16】
前記モノマーは、炭素―炭素不飽和結合を有する有機化合物から1種以上選択されることを特徴とする請求項12〜15のいずれか1項に記載の樹脂粉体の製造方法。
【請求項17】
前記反応性ガスは、ハロゲン原子を含むガスであることを特徴とする請求項12〜16いずれか1項に記載の樹脂粉体の製造方法。
【請求項18】
前記樹脂微粒子は、ポリオレフィンからなることを特徴とする請求項12〜17のいずれか1項に記載の樹脂粉体の製造方法。
【請求項19】
プラズマを発生させる放電室中に、前記樹脂微粒子からなる前記樹脂粉体を落下させ、前記樹脂粉体の落下中にプラズマ処理を施すことを特徴とする請求項12〜18のいずれか1項に記載の樹脂粉体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図12】
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【図13】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−254969(P2010−254969A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72890(P2010−72890)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(502350504)学校法人上智学院 (50)
【Fターム(参考)】