説明

樹脂系改質剤の製造方法及び樹脂系改質剤製造装置

【課題】
合成樹脂廃材を酸素欠乏状態にて燃焼させ、その燃焼した熱により前記合成樹脂廃材の残りの一部を溶融・熱分解させて樹脂系改質剤を製造する樹脂系改質剤の製造方法において、燃焼時間が経過するに従って、ロストル上に燃焼残渣が堆積し、その燃焼残渣の上に他の原料が埋没して埋め込まれ、原料の燃焼が継続しなくなることや、生成されたワックス状溶融物が燃焼残渣と混じって樹脂系改質剤の品質を低下させたり、更に生成されたワックス状溶融物が燃焼残渣に吸収され又は吸収されたりして消失し、樹脂系改質剤を効率良く製造することができなかった。
【解決手段】
合成樹脂廃材の長手方向を鉛直方向に保持させて合成樹脂廃材を溶融・熱分解させる。これにより、溶融化したワックス状溶融物はその横断面内で分離されたものとなり、品質の良好な樹脂系改質剤を効率良く製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂廃材をその一部の燃焼により熱分解させ、樹脂・ゴム等の特性改質、インク・塗料或いは顔料用等に使用されるワックス状物質を製造する樹脂系改質剤製造装置への空気導入方法及びその樹脂系改質剤製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数種の合成樹脂若しくはカーボンブラックや無機系添加材を含む樹脂から構成される合成樹脂廃材を加熱溶融して熱分解させ、ワックス状物質を製造する樹脂系改質剤の製造装置として、種々のものが提案されている。(例えば特許文献1〜3)
これにより、ポリエチレン樹脂等の合成樹脂廃棄物を原料として処理し、樹脂・ゴム等の特性改質、インク・塗料或いは顔料用としてワックス状物質を製造できる。
【0003】
この開示された樹脂系改質剤製造装置は、図16に示すように、ワックス状物質溶融物を溜めておく有底円筒状の受溜用タンクTが、タンク上端開口部1bを有し、かつ、支脚1aによって支持されて設けられている。
【0004】
該受溜用タンクTのタンク上端開口部1bには、合成樹脂廃材等の原料Aを加熱溶融する円筒状の燃焼用バスケット2が一体的に載架されて固設されている。該燃焼用バスケット2の側壁には、多数の空気導入孔2bが、燃焼用バスケット2の内部と外部とを連通するように、上記側壁の厚さ方向に穿設されている。
【0005】
燃焼用バスケット2の下端開口部2aには、閉塞した箱状の触媒槽(脱可塑化促進用バスケット)4が、下端開口部2aを下側から塞ぐように取り付けられている。触媒槽4は、その全壁が多孔状となる網目状部4aを有しており、その触媒槽4内に溶融物Bの脱可塑化促進用の金属触媒、例えば白金や銅からなる線状触媒4bを溶融物Bが通過し得るように充填されている。
【0006】
燃焼用バスケット2に供給する空気量を調節する円筒状のエアーバランサー5が燃焼用バスケット2の外周を覆うように、上記燃焼用バスケット2の外周に対し所定の間隔をおいて設置されている。そのエアーバランサー5の下部には、空気導入用開口部5aが設けられている。
【0007】
前記受溜用タンクTと燃焼用バスケット2との間には、受溜用タンクT内にて生成した可燃性の高熱ガスGを効率よく燃焼用バスケット2内に送出するために、連通管9が複数、受溜用タンクTの外壁に対し上下方向に沿ってそれぞれ設置されている。各連通管9には受溜用タンクTからのガスを燃焼用バスケット2に送り出すポンプ10が、上記高熱ガスGの送出を促進するためにそれぞれ設けられている。
【0008】
受溜用タンクTの内底部には、ワックス状物質Cの溶融している温度を電気加熱によって上昇させる加熱手段として、パイプ状のヒーター6が設置されている。また、受溜用タンクTの内部には、ワックス状物質Cの溶融している温度を検出するバイメタルや熱電対などの温度センサ7が温度検出手段として設置されている。
【0009】
前記ヒーター6には、該ヒーター6をオン・オフ制御もしくは比例制御するためのマイコン等の制御手段8がワックス状物質Cの溶融物を所定温度に保つように設けられている。
【0010】
上記の燃焼用バスケット2内の下部には、原料Aを載置して、溶融・熱分解するための原料受皿であるロストル3が、燃焼用バスケット2の下端開口部2aを上方から塞ぐように、上記燃焼用バスケット2内の周壁に取り付けられている。
【0011】
上述した製造装置においてワックス状物質を製造するには、まず、原料Aとして、可燃性の例えば架橋ポリエチレン単独、或いは、架橋ポリエチレンと非架橋や低架橋のポリエチレン等のポリオレフィンを少量混合して用い、原料Aを原料投入用ホッパー6から所定量燃焼用バスケット2のロストル3上に投入する。
【0012】
次いで、原料Aに含まれる架橋ポリエチレンに着火すると、ワックス状物質生成用の合成樹脂は熱分解して溶融し、その溶融物Bはロストル孔部3aから滴下し、触媒槽4の触媒間を通過して受溜用タンクTに落下する。
【0013】
このとき、触媒槽4および受溜用タンクT内は高架橋ポリエチレンの燃焼による酸素の消失で徐々に酸欠状態となり、酸欠状態で熱分解したワックス状物質Cは受溜用タンクTに溜まる。
【0014】
このように、溶融して高熱状態となっているワックス状物質Cは、酸欠状態において一部が気化して可燃性の高熱ガスGを発生する。この高熱ガスGは、受溜用タンクTと燃焼用バスケット2との間に設けた連通管9により燃焼用バスケット2内に送出される。
【0015】
該連通管9は受溜用タンクT内にて生成した可燃性の高熱ガスGを効率よく燃焼用バスケット2内に送出するためのもので、複数本が受溜用タンクTの外壁に対し上下方向に沿って設置され、各連通管9には受溜用タンクTからのガスを燃焼用バスケット2に送り出すポンプ10が、上記高熱ガスGの送出を促進するために設けられている。高熱ガスGは、燃焼用バスケット2内に送り出された前記原料Aの燃焼場所において、燃焼用バスケット2の空気導入孔2aから導入される空気と混合されて燃焼し、原料Aの溶融を継続させる。このように装置を構成することにより、立ち上げ時において熱エネルギの供給を必要とするが、その後は自立的に熱エネルギが供給されるようになる。
【0016】
【特許文献1】特開昭60−190494号公報
【特許文献2】特開平10−128747号公報
【特許文献3】特開2003−206373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述の樹脂系改質剤の製造装置は、原料Aを酸素欠乏状態で燃焼させる燃焼炉の下方に配置されたロストル3が、原料Aを搭載して燃焼させる役目を成すものの、原料Aを燃焼させて生成された燃焼残渣A'をそのままロストル3上に載置したままにするものであった。
【0018】
このため、初め図17に示すようにロストル3の上がきれいなものであっても、燃焼の時間が経過するに従って図18に示すように、ロストル3上に燃焼残渣A'が堆積し、その燃焼残渣A'の上に、図19に示すように他の原料Aが埋没して埋め込まれ、原料Aの燃焼が継続しなくなることや、生成されたワックス状溶融物が燃焼残渣A'と混じって樹脂系改質剤の品質を低下させたり、更に生成されたワックス状溶融物が燃焼残渣A'に吸収され又は吸収されたワックス状溶融物が燃焼して消失したりし、樹脂系改質剤を効率良く製造することができない等の課題があった。
【0019】
特に、原料Aが電力ケーブルの絶縁層として用いられた合成樹脂廃材の場合は、図20に示すように、架橋ポリエチレン材A1の両側面に電界緩和用の半導電層A2を持つものが多く、このような半導電層A2を含む原料Aの場合は半導電層A2の燃焼部分が燃焼残渣A'としてロストル上に堆積し、製造される樹脂系改質剤の品質が低下したり効率良く製造することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願はかかる点に鑑みなされたもので、その第1発明は、横断面方向で組成の異なる合成樹脂廃材の一部を酸素欠乏状態にて燃焼させ、その燃焼した熱により前記合成樹脂廃材の残りの一部を溶融・熱分解させ、溶融化したワックス状溶融物を取り出して樹脂系改質剤を製造する樹脂系改質剤の製造方法において、合成樹脂廃材の長手方向を鉛直方向に保持させて短尺合成樹脂廃材を溶融・熱分解させることを特徴とする。
【0021】
また、本願の第2発明は、燃焼筒の下方に配置された基台上で、横断面方向で組成の異なる合成樹脂廃材の一部を酸素欠乏状態にて燃焼させ、その燃焼した熱により前記合成樹脂廃材の残りの一部を溶融・熱分解させ、燃焼炉の下方から溶融化したワックス状溶融物を取り出して樹脂系改質剤を製造する樹脂系改質剤製造装置において、合成樹脂廃材の長手方向を鉛直方向に保持する垂直支持ホルダが基台上に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本願の両発明は、いずれも横断面方向で組成の異なる合成樹脂廃材をその長手方向が鉛直となるように配置させて燃焼させ、その燃焼した熱により前記短尺合成樹脂廃材の残りの一部を溶融・熱分解させて溶融化したワックス状溶融物を取り出すので、溶融化したワックス上溶融物はその横断面内で分かれたもととなり、品質の良好な樹脂系改質剤を効率良く製造することができる特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、以下に示すような、種々の実施形態を採用することができる。
【0024】
基台は側壁が傾斜状に形成された凸形状を有し、その傾斜側壁に間隔を置いて複数の垂直支持ホルダが立設されていることを特徴とする。
【0025】
垂直支持ホルダは線状体を螺旋状に加工した螺旋体で構成されていることを特徴とする。
【0026】
基台と螺旋体との間に螺旋体の中心軸と中心軸を同じくする合成樹脂廃材受台が配置されていることを特徴とする。
【0027】
合成樹脂廃材受台はその中心軸から放射状に配置された板状体で形成されていることを特徴とする。
【0028】
合成樹脂廃材受台はその中心軸から放射状に配置されたワイヤで形成されていることを特徴とする。
【0029】
合成樹脂廃材受台はその中心軸から放射状に配置された板状体とワイヤとで形成されていることを特徴とする。
【0030】
合成樹脂廃材受台はその中心部が窪んだ形状であることを特徴とする。
【0031】
合成樹脂廃材受台が配置された箇所の受台には貫通孔が形成され、その貫通孔に合成樹脂廃材受台の中心部が嵌め込まれていることを特徴とする。
【0032】
合成樹脂廃材受台は下方に燃焼筒の中心軸方向に突出するリング状の縮径フランジが形成され、前記縮径フランジには上下に貫通する燃焼残渣排出貫通孔が形成され、前記縮径フランジ上にリング状の凹溝を有しこの凹溝の内周側に上下に貫通する中心貫通孔を有する回転皿が載置され、前記凹溝上には上下方向に貫通する燃焼残渣排出孔が形成され、更に底辺部が前記回転皿の回転に伴って前記凹溝上をスライドするように配置された燃焼残渣ストッパーが燃焼筒側に固定され、前記回転皿の上に前記基台が配置され、基台上で溶融・熱分解されて生成されたワックス状溶融物を前記中心貫通孔を通して取り出し、基台上で形成された燃焼残渣を凹溝上に落下させ、燃焼残渣を前記燃焼残渣排出孔及び燃焼残渣排出貫通孔を通じて燃焼筒外に取り出すようにしたことを特徴とする。
【0033】
燃焼残渣排出貫通孔の下方に螺旋スクリューが配置されたことを特徴とする。
【0034】
合成樹脂廃材が燃焼する燃焼部分よりも上方部分における燃焼炉内に、外部からの空気を螺旋状に回転させながら上方方向に噴出させる空気噴出口が配置されていることを特徴とする。
【0035】
ロストルの上に逆ハの字型形状のホッパーが重ねられて配置されたことを特徴とする。
【実施例1】
【0036】
以下本発明を図示した一実施例に基づき更に詳しく説明する。図1〜図4は本一実施例の樹脂系改質剤製造装置を示すもので、図1は装置全体の断面説明図、図2〜図4はそれぞれ要部分解断面説明図である。しかしながら、図16に示す支脚などの補助部品は省略されて描かれている。図1〜図4において、20は燃焼炉、30は燃焼炉20の中央付近の内壁部に配置された空気取込装置、40は燃焼炉20の下部に配置された回転駆動装置、50は燃焼炉20の下部に配置された燃焼残渣排出装置、60は燃焼炉20の下部に配置された受溜用タンク、70は本発明において特に特徴的な合成樹脂廃材支持部である。
【0037】
燃焼炉20は、鉄板等の耐熱性の材料で形成された複数の短尺円筒体21a〜21fの端部にそれぞれ溶接によってフランジ22が取付けられ、それぞれの短尺円筒体21が互いのフランジ22を突合わされ、ボルト・ナット等の連結具23で連結されることにより燃焼筒(外壁)24が構成されている。しかしながら、最下部の短尺円筒体21fの下方端部の周辺には径が縮小する縮径フランジ22'が溶接等で取り付けられ、更にその縮径フランジ22'の内径端部に受溜用タンク60の一部を構成する短尺円筒体60'が溶接によって取り付けられている。
【0038】
燃焼筒24の上部開口には燃焼筒24を覆う耐熱性の逆フラスコ形状の蓋25が被せられ、その中央部に形成された排気孔25'から燃焼筒24内で燃焼して生成された排気ガスが排出される。
短尺円筒体21fの縮径フランジ22'上に後述の回転皿45等を介して、受台26が配置されている。
【0039】
空気取込装置30は、耐熱性の空気導入台31と空気噴出部34とで構成されている。
空気導入台31は燃焼筒24の一部を構成する短尺円筒体21cを兼ねるものであり、その断面形状が図5に示すように、U字溝32がループ状に形成され、そのU字溝32の外壁外側の対角線位置における2箇所に空気導入ノズル33がループ状のU字溝32の接線方向に沿って配置されて構成されている。この空気導入ノズル33はU字溝32に連通している。
【0040】
空気噴出部34は、前記短尺円筒体21bよりも小径の小径円筒体35と、短尺円筒体21bと小径円筒体35との間に配置される空気噴出方向変換部36とで構成され、この短尺円筒体21bと小径円筒体35と空気噴出方向変換部36とで空気噴出口37を構成している。
【0041】
空気噴出方向変換部36は、短尺円筒体21bと小径円筒体35の径との中間の径を持つ中間円筒体38の上部円周上にその中間円筒体38の軸線に対して斜めにスリット38'が形成され、更に各スリット38'に羽板39が差込まれて配置されて構成されている(図6参照)。
【0042】
これにより、空気導入ノズル33から図示しない空気ポンプを介して風量が制御された空気が導入されると、その空気は、U字溝32を経由して羽板39に達し、ここで空気の流れの向きが斜めに配置された羽板39で曲げられ、燃焼筒24の内周壁から螺旋状に回転しながら上方に向って噴出される。
【0043】
回転駆動装置40は、駆動動力を発生させる駆動源41と、その駆動源41によって回転する回転皿45と、回転ローラ49によって構成されている。
【0044】
回転皿45は、図7に示すように、ドーナツ状に形成され、その内周と外周とに上方に突出する内周壁45'と外周壁45''とがそれぞれ形成されている。これにより内周壁45'と外周壁45''とによってリング状の溝46が形成されている。また内周壁45'は外周壁45''よりも高さが小さくなるように構成され、更に外周壁45''には所定間隔毎に配置された複数の駆動窓47が形成されている。更に、前記溝46には対角線の位置に貫通孔48が形成されている。
【0045】
このように構成された回転皿45は、前記縮径フランジ22'上に前記回転ローラ49を介して載置されている。この回転ローラ49は回転皿45を縮径フランジ22'上で摩擦抵抗を少なくして回転させる役目を果たすものである。
【0046】
駆動源41は、電磁ソレノイドや空気ポンプなどによってその作用部が短尺円筒体21fの接線方向に筐体42内で直線状に往復移動するようになっており、その作用部には作用片43が取り付けられ、短尺円筒体21fの側壁に形成された駆動窓21f'を通って燃焼筒24内に突出し、前記回転皿45の外周壁45''に形成された駆動窓47に嵌め込まれている(図1及、図4び図8参照)。また、前記作用片43は複数の駆動窓47で形成される水平面内の一方向にのみ折れ曲がるように構成されている。
【0047】
従って、作用部が前記折れ曲がる方向と反対側に移動すると、作用片が駆動窓47と係合して回転皿45をその移動方向に回転させ、作用片43が前記折れ曲がる方向に移動すると、作用片43が今まで嵌合していた駆動窓47から外れて次の駆動窓47に嵌合する。これにより、作用部が直線上に一往復移動すると、その度毎に回転皿45を1個分の駆動窓47の長さだけ回転させることができる。
【0048】
燃焼残渣排出装置50は、回転皿45上に配置され更に短尺円筒体21fの内壁に固定された板状の燃焼残渣ストッパー51(図1及び図4参照)と、燃焼残渣ストッパー51が配置された位置における縮径フランジ22'の下方に配置されたスクリューコンベア52(図1及、図4び図8参照)等で構成されている。
スクリューコンベア52は内壁が円筒形状に構成された筐体内に螺旋状に形成された図示しない螺旋スクリューが配置され、この螺旋スクリューが図示しないモータによって回転させられることにより、螺旋スクリュー上に落ちた燃焼残渣が螺旋スクリューで運搬されて筐体の端部に配置された燃焼残渣収納体に収納されるように構成されている。
燃焼残渣ストッパーが位置する縮径フランジ22'には燃焼残渣排出貫通孔22''が形成されている。
【0049】
合成樹脂廃材支持部70は、本発明における特徴的な部分であり、円錐台形の基台71、とその基台71上に鉛直方向に搭載された複数のスパイラル状の支持体76とで構成されている。
支持体76の下部外周の対角線位置には、支持脚77が一体に取り付けられている。また基台71上には複数の支持孔72が形成され、前記支持脚77がこの支持孔72に差し込まれて支持体76を基台71上に鉛直方向に保持するようになっている。更に、基台71には、前記により鉛直に配置された支持体76と同軸的に配置された貫通筒73が配置されている。
【0050】
更に、前記貫通筒73と、支持体76との間には支持体76内に配置される図示しない原料を空間的に載置するための合成樹脂廃材受台80がその樹脂導入ガイド棹80'を貫通筒73に差し込まれて配置されている。
この合成樹脂廃材受台80は、鳥の足を逆様にしたような構造で、線状体が中央から放射状に配置され中央が窪んだY字構造81に構成されている。
【0051】
次に本実施例を動作とともに更に詳しく説明する。
上述した製造装置においてワックス状物質(樹脂系改質剤)を製造するには、予め、回転駆動装置40及び燃焼残渣排出装置50を稼動させて置く。これにより、燃焼炉内の回転皿45が間欠的に回転し、これに載せられた基台71、及び支持体76も同期して間欠的に回転する。更に、スクリューコンベア52の螺旋スクリューも回転し、後述する螺旋スクリュー上に載せられる燃焼残渣が搬送可能の状態になる。
【0052】
次に、図20に示すような架橋ポリエチレン材A1の両側面に電界緩和用の半導電層A2を持つ可燃性の材料の原料を図示しないロボットや人為によって各支持体76の筒状内に挿入して合成樹脂廃材受台80上に載置する。
【0053】
次いで、原料下端部の架橋ポリエチレンに着火して燃焼させる。燃焼し始めると、燃焼炉内等に封じ込められて酸素が徐々に消失して酸素欠乏状態となる。この状態を図示しない燃焼筒内に設置された熱電対で温度が測定され又は(及び)燃焼筒に形成された覗き窓を介して工業用テレビにより炎が測定され、この測定情報に基づいて空気取込装置30を適切に稼動させる。酸素の取り込み量が多過ぎると、原料の多くが燃焼してしまい樹脂系改質剤の歩留まりが悪くなる。反対に酸素の取り込み量が少なくなると燃焼が消失してしまう。従って、前記測定情報に基づき、空気取込装置30を適切に制御して酸素の供給を適切に行う。
【0054】
この時、空気取込装置30は燃焼筒24の内周壁から螺旋状に回転しながら空気を上方に向って噴出させるので、その噴出された空気が直接炎に触れて、炎が暴れを発生させることがなく、安定して燃焼させることができる。
【0055】
このようにして、合成樹脂廃材受台80上に載置され、支持体76によって鉛直に配置された原料は、前記空気取込装置30によって供給された空気によってその一部が継続的に燃焼を維持する。このように、立ち上げ時において熱エネルギの供給を必要とするが、その後は自立的に燃焼が継続する。
【0056】
この時、原料Aは図20に示すように、鉛直に配置された上下で同じ組成のものとなっており(同じ組成が長手方向に連続している)、且つ架橋ポリエチレン材A1と半導電層A2とは熱膨張率が異なることから、両者は図11に示すようにそれぞれ乖離して架橋ポリエチレン材A1の殆どは熱分解してワックス状物質生成用の樹脂系改質剤として、また半導電層A2の殆どは燃焼して炭化物の煤となって水平面内の別々な位置に生成される。
【0057】
このようにして生成された樹脂系改質剤は、合成樹脂廃材受台80の表面を伝わって基台71に形成された貫通筒73を通り、受溜用タンク60に落下し受溜用タンク60内に溜められる。また生成された前記炭化物の煤やその他の生成物は燃焼残渣となって合成樹脂廃材受台80の表面や基台71の上表面に付着する。このとき、合成樹脂廃材受台80や基台71は、前記したとおり回転駆動装置40によって間欠的に回転させられている。このため、この間欠的な回転に伴って振動が発生する。この結果、合成樹脂廃材受台80に付着している燃焼残渣は振るい落とされ、基台71の上表面に落下する。また、基台71の上表面に付着したり落下した燃焼残渣は、上記振動によって外周側に傾斜した勾配によって基台71の外周側に移動し回転皿45の溝46内に落下する。
【0058】
回転皿45は前記のとおり回転駆動装置40によって間欠的に回転させられている、このため、回転皿45の溝46内に落下した燃焼残渣はその溝46内で燃焼残渣ストッパー51によって塞き止められ、燃焼残渣ストッパー51の回転手前側に集められる。回転皿45が更に回転して、回転皿45の溝46内に形成された貫通孔48と、縮径フランジ22'に形成された燃焼残渣排出貫通孔22''とが重なると、それらの孔から前記集合させられた燃焼残渣が通過して、その下のスクリューコンベア52の螺旋スクリュー上に落ちる。螺旋スクリューは前記したとおり、モータ等によって回転されているので螺旋スクリューの長手方向に運搬されて図示しない燃焼残渣収納体に収納される。
【0059】
原料が燃焼しかつ樹脂系改質剤として回収されて原料が不足して来た時は、所定量、燃焼筒24内に原料が投入されて継ぎ足される。
【0060】
以上詳述したように、本実施例は原料が燃焼炉内で鉛直に保持されて燃焼する。このため、燃焼熱で生成された樹脂系改質剤は貫通筒73を通って、受溜用タンク60に蓄積され、また燃焼によって発生する燃焼残渣は、基台71の傾斜した勾配によって基台71の外周側に移動し回転皿45の溝46内に落下し、生成された樹脂系改質剤と混じることを少なくして回収される。これにより、生成された樹脂系改質剤は品質の良好なものとなって効率良く製造することができる。
【実施例2】
【0061】
図12は本発明の異なる合成樹脂廃材受台80の他の実施例を示すものである。この実施例は、板状のブレード82Aが樹脂導入ガイド棹82Bの周りに放射状に配置され、更にこれらブレード82Aの外周には筒体82Cが一体構造に構成され、更にこれら一体構造を支持するための支持脚82Dが互いに対向する対角線位置に形成されている。支持脚82Dは傾斜する基台71上に形成された支持脚保持部74に差し込まれて保持され、また、樹脂導入ガイド棹82Bは基台71上に形成された貫通筒73に差し込まれている。
【0062】
図13は本発明の更に異なる合成樹脂廃材受台80の他の実施例を示すものである。この実施例は、板状のブレード83Aと線状のブレード83B(短尺のものと長尺のものがある)とが樹脂導入ガイド棹83Cの周りに放射状に配置され、ブレード82Aの外周に配置された筒体83Dによってこれらを一体に固定・保持している。更にこれら一体構造を支持するための支持脚83Eが筒体83Dの対角線位置に形成されている。この支持脚83Eは傾斜する基台71上に形成された支持脚保持部74に差し込まれて保持され、また、樹脂導入ガイド棹83Cは基台71上に形成された貫通筒73に差し込まれている。
【0063】
図14は本発明の更に異なる合成樹脂廃材受台80の他の実施例を示すものである。この実施例は板状のブレード84A(短尺のものと長尺のものがある)と線状のブレード84Bとが樹脂導入ガイド棹84Cの周りに放射状に配置され、更にこれらブレード84Aとブレード84Bとは、樹脂導入ガイド棹84Cと同軸的に配置された筒体84Dによって一体構造に保持され、更に筒体84Dと樹脂導入ガイド棹84Cとの間に配置されたリング84Eによって一体構造に構成されている。更にこれら一体構造を支持するための支持脚84Fが筒体84Dの対角線位置に形成されている。この支持脚84Fは傾斜する基台71上に形成された支持脚保持部74に差し込まれて保持され、また、樹脂導入ガイド棹84Cは基台71上に形成された貫通筒73に差し込まれている。
【0064】
上記のとおり構成された各合成樹脂廃材受台80は、図15に示すように、原料Aを載置して、生成された樹脂系改質剤を、板状ブレードや線状ブレード及び樹脂導入ガイド棹を伝わらせる役目を成す。そして生成された樹脂改質剤を、基台の貫通筒を通過させて受溜用タンクに落下させ、受溜用タンク内に溜める。
【0065】
その他の実施例
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施例を示す全体断面説明図。
【図2】図1の要部分解断面説明図。
【図3】図1の他の要部分解断面説明図。
【図4】図1の更に異なる他の要部分解断面説明図。
【図5】本発明の一実施例における要部分解斜視図。
【図6】本発明の一実施例における他の要部分解斜視図。
【図7】本発明の一実施例における更に異なる他の要部分解斜視図。
【図8】本発明の一実施例における更に異なる他の要部分解斜視図。
【図9】本発明の一実施例における要部斜視図。
【図10】本発明の一実施例における要部拡大斜視図。
【図11】本発明の一実施例における動作を説明するための説明図。
【図12】本発明の他の実施例における要部説明図であり、イは平面説明図、ロは断面端面図。
【図13】本発明の更に異なる他の実施例における要部説明図であり、イは平面説明図、ロは断面端面図。
【図14】本発明の更に異なる他の実施例における要部説明図であり、イは平面説明図、ロは断面端面図。
【図15】本発明の他の一実施例における動作を説明するための説明図。
【図16】従来の一例を示す断面説明図。
【図17】従来の一例の動作時における要部斜視図。
【図18】従来の一例の他の動作時における要部斜視図。
【図19】従来の一例の更に異なる他の動作時における要部斜視図。
【図20】原料の一例を示す斜視図。
【符号の説明】
【0067】
20 燃焼炉
21a 短尺円筒体
21b 短尺円筒体
21c 短尺円筒体
21d 短尺円筒体
21e 短尺円筒体
21f 短尺円筒体
21f' 駆動窓
22 フランジ
22' 縮径フランジ
22'' 燃焼残渣排出貫通孔
23 連結具
24 燃焼筒
25 蓋
25' 排気孔
30 空気取込装置
31 空気導入台
32 U字溝
33 空気導入ノズル
34 空気噴出部
35 小径円筒体
36 空気噴出方向変換部
37 空気噴出口
38 中間円筒体
38' スリット
39 羽板
40 回転駆動装置
41 駆動源
42 筐体
43 作用片
45 回転皿
45' 内周壁
45'' 外周壁
46 溝
47 駆動窓
48 貫通孔
49 回転ローラ
50 燃焼残渣排出装置
51 燃焼残渣ストッパー
52 スクリューコンベア
60 受溜用タンク
60' 短尺円筒体
70 合成樹脂廃材支持部
71 基台
72 支持孔
73 貫通筒
74 支持脚保持部
76 支持体
77 支持脚
80 合成樹脂廃材受台
80' 樹脂導入ガイド棹
81 Y字構造
82A ブレード
82B 樹脂導入ガイド棹
82C 筒体
82D 支持脚
83A ブレード(板)
83B ブレード(線)
83C 樹脂導入ガイド棹
83D 筒体
83E 支持脚
84A ブレード(板)
84B ブレード(線)
84C 樹脂導入ガイド棹
84D 筒体
84E リング
84F 支持脚
A' 燃焼残渣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面方向で組成の異なる合成樹脂廃材の一部を酸素欠乏状態にて燃焼させ、その燃焼した熱により前記合成樹脂廃材の残りの一部を溶融・熱分解させ、溶融化したワックス状溶融物を取り出して樹脂系改質剤を製造する樹脂系改質剤の製造方法において、合成樹脂廃材の長手方向を鉛直方向に保持させて合成樹脂廃材を溶融・熱分解させることを特徴とする樹脂系改質剤の製造方法。
【請求項2】
燃焼筒の下方に配置された基台上で、横断面方向で組成の異なる合成樹脂廃材の一部を酸素欠乏状態にて燃焼させ、その燃焼した熱により前記合成樹脂廃材の残りの一部を溶融・熱分解させ、燃焼炉の下方から溶融化したワックス状溶融物を取り出して樹脂系改質剤を製造する樹脂系改質剤製造装置において、合成樹脂廃材の長手方向を鉛直方向に保持する垂直支持ホルダが基台上に配置されていることを特徴とする樹脂系改質剤製造装置。
【請求項3】
基台は側壁が傾斜状に形成された凸形状を有し、その傾斜側壁に間隔を置いて複数の垂直支持ホルダが立設されていることを特徴とする請求項2に記載の樹脂系改質剤製造装置。
【請求項4】
垂直支持ホルダは線状体を螺旋状に加工した螺旋体で構成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の樹脂系改質剤製造装置。
【請求項5】
基台と螺旋体との間に螺旋体の中心軸と中心軸を同じくする合成樹脂廃材受台が配置されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の樹脂系改質剤製造装置。
【請求項6】
合成樹脂廃材受台はその中心軸から放射状に配置された板状体で形成されていることを特徴とする請求項5に記載の樹脂系改質剤製造装置。
【請求項7】
合成樹脂廃材受台はその中心軸から放射状に配置されたワイヤで形成されていることを特徴とする請求項5に記載の樹脂系改質剤製造装置。
【請求項8】
合成樹脂廃材受台はその中心軸から放射状に配置された板状体とワイヤとで形成されていることを特徴とする請求項5に記載の樹脂系改質剤製造装置。
【請求項9】
合成樹脂廃材受台はその中心部が窪んだ形状であることを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか1つに記載の樹脂系改質剤製造装置。
【請求項10】
合成樹脂廃材受台が配置された箇所の受台には貫通孔が形成され、その貫通孔に合成樹脂廃材受台の中心部が嵌め込まれていることを特徴とする請求項5乃至請求項9のいずれか1つに記載の樹脂系改質剤製造装置。
【請求項11】
燃焼筒はその燃焼筒の下方で燃焼筒の中心軸方向に突出するリング状の縮径フランジが形成され、前記縮径フランジには上下に貫通する燃焼残渣排出貫通孔が形成され、前記縮径フランジ上にリング状の凹溝を有しこの凹溝の内周側に上下に貫通する中心貫通孔を有する回転皿が載置され、前記凹溝上には上下方向に貫通する燃焼残渣排出孔が形成され、更に底辺部が前記回転皿の回転に伴って前記凹溝上をスライドするように配置された燃焼残渣ストッパーが燃焼筒側に固定され、前記回転皿の上に前記基台が配置され、基台上で溶融・熱分解されて生成されたワックス状溶融物を前記中心貫通孔を通して取り出し、基台上で形成された燃焼残渣を凹溝上に落下させ、燃焼残渣を前記燃焼残渣排出孔及び燃焼残渣排出貫通孔を通じて燃焼筒外に取り出すようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の樹脂系改質剤製造装置。
【請求項12】
燃焼残渣排出貫通孔の下方に螺旋スクリューが配置されたことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1つに記載の樹脂系改質剤製造装置。
【請求項13】
合成樹脂廃材が燃焼する燃焼部分よりも上方部分における燃焼炉内に、外部からの空気を螺旋状に回転させながら上方方向に噴出させる空気噴出口が配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか1つに記載の樹脂系改質剤製造装置。
【請求項14】
基台の上に逆ハの字型形状のホッパーが重ねられて配置されたことを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれか1つに記載の樹脂系改質剤製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図20】
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【図9】
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【図10】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−56075(P2007−56075A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240226(P2005−240226)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(593047426)社団法人電線総合技術センター (16)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】