説明

樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体

【課題】 地球環境への負荷が小さく、かつ、安価で、耐熱性、成形性に優れたポリ乳酸樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有する樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)とを含有する樹脂組成物であって、(A)と(B)の質量比(A/B)が10/90〜99/1であり、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量が0.6%以下、または99.4%以上であることを特徴とする樹脂組成物。さらに結晶核剤(D)を含有する前記樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化を促進させたポリ乳酸樹脂およびポリオレフィン樹脂を含む組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、成形用の原料としては、ポリプロピレン樹脂(PP)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ポリアミド樹脂(PA6、PA66等)、ポリエステル樹脂(PET、PBT等)、ポリカーボネート樹脂(PC)等が使用されている。このような樹脂から製造された成形物は成形性、機械的強度に優れているが、廃棄する際、ゴミの量を増すうえに、自然環境下で殆ど分解されないために、埋設処理しても半永久的に地中に残留する。
【0003】
そこで、近年、環境保全の見地から、生分解性ポリエステル樹脂が注目されている。中でもポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどは、大量生産可能なためコストも安く、有用性が高い。
特に、ポリ乳酸は既にトウモロコシやサツマイモ等の植物を原料として工業生産が可能となっており、使用後に焼却されても、これらの植物の生育時に吸収した二酸化炭素を考慮すると、炭素の収支として中立であることから、地球環境への負荷の低い樹脂とされている。
【0004】
しかしながら、ポリ乳酸については、このような長所がある一方、硬くてもろいために、衝撃強度が不足し、また加水分解を受けやすいために耐久性(耐加水分解性)も十分でないという問題がある。また、融点は比較的高いものの、ガラス転移温度(Tg)が低いために耐熱性が不足するという問題もある。一方、耐熱性を上げるためには結晶化を十分高める必要があり、例えば、射出成形においては、金型温度や成形サイクル時間等の設定条件でコントロールすることができる。しかしながら、実際に結晶化を高めるためには、金型温度を比較的高めにする必要があり、それに伴い、成形サイクル時間も比較的長くしなければならない。そのため、生産性あるいは操業性が低下する問題を有している。
また、ポリ乳酸以外の他の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂である、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸等も、耐熱性、耐衝撃性、耐久性が十分とはいえない。
【0005】
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂100%からなる組成物は、上記のように成形用材料として使用する場合に物性や生産面の制約を受けるため、単独遣いで普及させることは難しいと考えられるようになってきた。また、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂に他の非生分解性の樹脂を混合しても、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂がポリ乳酸のような植物由来の樹脂であれば、これが広く使用されることによって石油由来の樹脂の使用を低減することとなり、結果として石油資源の節約に貢献できるため環境に好ましいとする考え方が浸透してきている。そしてポリ乳酸に混合する樹脂としては、普及性、価格などの点や、製造の際の環境への負荷が小さいことから、ポリオレフィン樹脂が好ましいとされている。
【0006】
ところで、ポリ乳酸自体の結晶化促進としては、特許文献1に特定のカルボン酸アミド/エステルの配合が、特許文献2にトリシクロヘキシルトリメシン酸アミドの配合が、特許文献3にエチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドの配合が、特許文献4にメタアクリル酸エステルによる架橋が、特許文献5にイソシアネートによる架橋が、特許文献6にL体含有量を95%以上にすることが提案されているが、いずれも、効果は不充分である。また、これらは成形時の金型温度をポリオレフィン樹脂の通常の成形時よりもかなり高い100℃前後の高温にする必要があり、そのため、ポリオレフィン樹脂と混合した場合、ポリオレフィン樹脂自体の優れた成形性を活かすことが困難である。
【0007】
一方、ポリ乳酸とポリオレフィン樹脂のアロイ技術としては、特許文献7に降温結晶化温度の高いポリプロピレンを用いることが提案されているが、成形品の荷重たわみ温度そのものについては評価されていない。また、特許文献8に高分子量のポリプロピレンを用いかつ無機充填剤を用いることが提案されているが、金型温度は30℃と低く、ポリ乳酸の結晶化進行による耐熱性付与については考慮されていない。さらに、特許文献9に、D/L比率が特定範囲のポリ乳酸を用いることが提案されているが、90℃を充分上回るDTUL(小荷重)を得るためにはポリ乳酸配合量の半分に高価なポリ−D−乳酸を用いなければならず、コストの点で大きな問題があった。
【特許文献1】特開2006−137397号公報
【特許文献2】特開2006−328163号公報
【特許文献3】特開2003−226801号公報
【特許文献4】特開2003−128901号公報
【特許文献5】特開2002−003709号公報
【特許文献6】特開2007−051274号公報
【特許文献7】特開2007−177038号公報
【特許文献8】特開2007−145912号公報
【特許文献9】特開2007−009008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、前記問題点を解決し、地球環境への負荷が小さく、かつ、安価で、耐熱性、成形性に優れたポリ乳酸樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有する樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸樹脂として、D体含有量が低いかもしくは高いポリ乳酸樹脂を用い、このポリ乳酸樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有する樹脂組成物が、上記の課題を解決することを見いだし、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は次のとおりである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)とを含有する樹脂組成物であって、(A)と(B)の質量比(A/B)が10/90〜99/1であり、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量が0.6%以下、または99.4%以上であることを特徴とする樹脂組成物。
(2)さらに無機充填材(C)を含有し、その含有量が0.5〜50質量%であることを特徴とする(1)記載の樹脂組成物。
(3)無機充填材(C)が、タルクであることを特徴とする(2)記載の樹脂組成物。
(4)ポリ乳酸樹脂(A)が(メタ)アクリル酸エステル化合物と過酸化物とともに溶融混練されたものであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(5)さらに結晶核剤(D)を含有し、その含有量が0.03〜5質量%であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(6)結晶核剤(D)が、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、有機ホスホン酸塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする(5)記載の樹脂組成物。
(7)結晶核剤(D)が、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N′−エチレンビス12ヒドロキシステアリン酸アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、5スルホイソフタル酸ジメチル金属塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする(5)記載の樹脂組成物。
(8)さらに、相溶化剤(E)を含有し、その含有量が0.05〜30質量%であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(9)相溶化剤(E)が、スチレン系単量体とオレフィン系単量体とを含有するブロック共重合体であることを特徴とする(8)記載の樹脂組成物。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリ乳酸樹脂とポリオレフィン樹脂とを含有する樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂として、D体含有量が低いかもしくは高いポリ乳酸樹脂を用いたことによって、ポリ乳酸樹脂の結晶化速度が速くなり、射出成形時の成形サイクル時間を短縮でき、耐熱性がより向上する。これにより、環境負荷の小さいポリ乳酸樹脂の利用範囲を大きく広げることが可能となり、本発明の産業上の利用価値はきわめて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)とを含有する樹脂組成物であって、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量が0.6%以下であるか、または99.4%以上であることを特徴とする。
【0012】
本発明の樹脂組成物を構成するポリ乳酸樹脂(A)は、D体含有量が0.6%以下であるか、または99.4%以上であることが必要であり、0.3%以下であるか、または99.7%以上であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)としてD体含有量がこの範囲外であるポリ乳酸樹脂を用いた場合、成形時の金型温度を90〜120℃より低く設定すると、耐熱性を有する成形体を得ることができない。
本発明において、D体含有量が0.6%以下であるポリ乳酸樹脂(A)を使用する際に、ポリ乳酸樹脂として、D体含有量が0.08%未満のものを入手あるいは作製することが困難になることがあるが、本発明においては、D体含有量が0.08%未満のポリ乳酸樹脂も使用することもできる。同様に、D体含有量が99.4%以上であるポリ乳酸樹脂(A)を使用する際に、ポリ乳酸樹脂として、D体含有量が99.92%を超えるものを入手あるいは作製することが困難になることがあるが、本発明においては、D体含有量が99.92%を超えるポリ乳酸樹脂も使用することもできる。
【0013】
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量とは、ポリ乳酸樹脂(A)を構成する総乳酸単位のうち、D乳酸単位が占める割合(%)である。したがって、例えば、D体含有量が0.6%のポリ乳酸樹脂(A)の場合、このポリ乳酸樹脂(A)は、D乳酸単位が占める割合が0.6%であり、L乳酸単位が占める割合が99.4%である。
【0014】
本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量は、後述するように、ポリ乳酸樹脂(A)を分解して得られるL乳酸とD乳酸を全てメチルエステル化し、L乳酸のメチルエステルとD乳酸のメチルエステルとをガスクロマトグラフィー分析機で分析する方法により算出した。
【0015】
本発明に用いるポリ乳酸樹脂(A)としては、市販の各種ポリ乳酸樹脂のうち、D体含有量が本発明で規定する範囲のポリ乳酸樹脂を用いることができる。
また、ポリ乳酸樹脂(A)として、乳酸の環状2量体であるラクチドのうち、D体含有量の充分低いL−ラクチド、または、L体含有量の充分低いD−ラクチドを原料に用いて、作製したものを使用することもできる。
さらに、本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)として、2種以上のポリ乳酸樹脂を組み合わせてもよい。この場合、D体含有量が本発明で規定する範囲外であるポリ乳酸樹脂、たとえば、D体含有量が0.6%を超えるポリ乳酸樹脂を併用してもよく、このようなポリ乳酸樹脂と、本発明で規定するD体含有量を満足するポリ乳酸樹脂とを組み合わせて得られるポリ乳酸樹脂(A)において、そのD体含有量が0.6%以下であればよい。同様に、ポリ乳酸樹脂(A)を構成するポリ乳酸樹脂として、D体含有量が99.4%未満のポリ乳酸樹脂を併用してもよく、組み合わせて得られるポリ乳酸樹脂(A)において、そのD体含有量が99.4%以上であればよい。
【0016】
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)の190℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)(JIS規格K−7210(試験条件4)による値)は、0.1〜50g/10分であることが好ましく、0.2〜20g/10分であることがより好ましく、0.5〜10g/10分であることがさらに好ましい。メルトフローレートが50g/10分を超える場合は、溶融粘度が低すぎて成形物の機械的特性や耐熱性が劣る場合がある。また、メルトフローレートが0.1g/10分未満の場合は成形加工時の負荷が高くなって、操業性が低下する場合がある。
【0017】
ポリ乳酸樹脂(A)は公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して製造される。また、ポリ乳酸樹脂(A)のメルトフローレートを所定の範囲に調節する方法として、メルトフローレートが大きすぎる場合は、少量の鎖長延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を用いて樹脂の分子量を増大させる方法が挙げられる。逆に、メルトフローレートが小さすぎる場合はメルトフローレートの大きなポリエステル樹脂や低分子量化合物と混合する方法が挙げられる。
【0018】
本発明の樹脂組成物において、ポリ乳酸樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸エステル化合物と過酸化物とともに溶融混練されたものであることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)をこれらとともに溶融混練することにより、結晶化を促進し、耐熱性を改善させることができる。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体的な化合物としては、ポリ乳酸樹脂(A)との反応性が高く、モノマーが残りにくく、かつ、毒性が少なく、樹脂の着色も少ないことから、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有するか、または、1個以上の(メタ)アクリル基と1個以上のグリシジル基もしくはビニル基を有する化合物が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシ(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジアクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジアクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジメタクリレート、または、これらのアルキレングリコール部が様々な長さのアルキレンの共重合体、ブタンジオールメタクリレート、ブタンジオールアクリレート等が挙げられる。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステル化合物の添加量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.05〜1質量部であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量部未満では、目的とする耐熱性が得られず、また、添加量が20質量部を超えると、混練時の操業性が低下する。
【0021】
過酸化物は、(メタ)アクリル酸エステル化合物とポリ乳酸樹脂(A)との反応を促進し、結晶化促進および耐熱性改善をより効果的に達成することを目的として溶融混練されるものであり、具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメンなどが挙げられる。
【0022】
過酸化物の添加量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.02〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがさらに好ましい。添加量が0.02質量部未満では、目的とする効果が得られず、また、添加量が20質量部を超えると、混練時の操業性が低下する場合がある。
【0023】
本発明で用いられるポリオレフィン樹脂(B)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリブテン、ポリイソブチレン、シクロオレフィン樹脂などを挙げることができる。なかでも、ポリプロピレン、ポリエチレンが好ましく、ポリプロピレンが最も好ましい。なお、耐熱性・耐久性の面からはアイソタクチックポリプロピレンが好ましい。ポリオレフィン樹脂は有機化過酸化物などで三次元架橋されたものでもよいし、一部が塩素化されていてもよいし、酢酸ビニル、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸などとの共重合体でもかまわない。
【0024】
ポリオレフィン樹脂(B)の分子量は、特に限定されないが、その指標となるメルトフローレートについては、例えば、ポリプロピレン樹脂の場合、230℃、荷重2.16kgにおける値が0.1〜70g/10分の範囲であれば好ましく使用することができる。さらに好ましくは、0.5〜50g/10分の範囲である。
【0025】
本発明の樹脂組成物において、ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)との配合比率としては、その質量比(A/B)が10/90〜99/1であることが必要であり、29/71〜91/9であることが好ましく、29/71〜83/17であることがより好ましい。
ポリオレフィン樹脂(B)の配合比率が1質量%未満であると、ポリオレフィン樹脂(B)の添加効果が見られず、衝撃強度や耐熱性の向上が不十分となる。また、ポリオレフィン樹脂(B)の割合が90質量%を超えると、ポリ乳酸樹脂(A)の比率が少なすぎて、環境に配慮した樹脂組成物とは言い難くなる。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)およびポリオレフィン樹脂(B)の結晶化を促進し、また、金型から取り出す際の作業性を向上させ、さらに、成形品の耐熱性を改善することを目的として、無機充填材(C)を含有することが好ましい。
無機充填材(C)としては、例えば、タルク、マイカ、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ベントナイト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、酸化チタン、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維、スメクタイト、バーミキュライト、及び膨潤性フッ素雲母等の膨潤性層状珪酸塩が挙げられる。なかでもタルクが最も好ましい。市販のものとしては、例えば、林化成製タルクMW−HSTなどが挙げられる。
これら無機充填材(C)は、1種のみ添加してもよいし、2種以上を添加してもよい。
本発明の樹脂組成物において、無機充填材(C)の含有量は0.5〜50質量%であることが好ましい。無機充填材(C)の含有量が50質量%を超えると混練性に劣る場合があり、0.5質量%未満では目的の効果を得ることが出来ない。
【0027】
本発明の樹脂組成物には、ポリ乳酸樹脂(A)およびポリオレフィン樹脂(B)の結晶化を促進し、耐熱性を改善することを目的として結晶核剤(D)を含有することも好ましい。
結晶核剤(D)として用いる化合物については特に限定されず、種々のものを用いることができる。市販のものとしては、例えば、川研ファインケミカル社製WX−1、新日本理化社製TF−1、アデカ社製T−1287N、トヨタ社製マスターバッチKX238Bなどが挙げられる。結晶化促進効果の点から、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、有機ホスホン酸塩から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0028】
有機アミド化合物としては、下記一般式(1)、(2)で表される化合物が、また有機ヒドラジド化合物としては、一般式(3)で表される化合物が好ましい。
R1−(CONH−R2)a (1)
[式中、R1は炭素数2〜30の飽和あるいは不飽和の脂肪鎖、飽和あるいは不飽和の脂肪環、あるいは、芳香環を表す。R2は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基あるいはシクロアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、あるいは、式(a)〜(d)のいずれかで表される基を表し、1つ以上の水素原子がヒドロキシル基で置換されてもよい。aは2〜6の整数を表す。]
【化1】

[式中、R3は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、フェニル基、あるいは、ハロゲン原子を表す。lは1〜5の整数を表す。]
【化2】

[式中、R4は炭素数1〜4の直鎖状、あるいは、分岐鎖状のアルキレン基を表す。R5は前記のR3と同義である。mは0〜5の整数を表す。]
【化3】

[式中、R6は前記のR3と同義である。nは1〜5の整数を表す。]
【化4】

[式中、R7は前記のR4と、R8は前記のR3とそれぞれ同義である。oは0〜6の整数を表す。]
R9−(NHCO−R10)f (2)
[式中、R9は炭素数2〜30の飽和あるいは不飽和の脂肪鎖、不飽和の脂肪環、あるいは、芳香環を表す。R10は前記のR2と同義である。fは2〜6の整数を表す。]
R11−(CONHNHCO−R12)h (3)
[式中、R11は炭素数2〜30の飽和あるいは不飽和の脂肪鎖、不飽和の脂肪環、あるいは、芳香環を表す。R12は前記のR2と同義である。hは2〜6の整数を表す。]
【0029】
一般式(1)〜(3)で表される具体的な化合物としては、例えば、ヘキサメチレンビス−9、10−ジヒドロキシステアリン酸ビスアミド、p−キシリレンビス−9、10ジヒドロキシステアリン酸アミド、デカンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、ヘキサンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアニリド、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、N,N′−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N′−ジシクロヘキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジドなどがあげられる。
【0030】
このうち、樹脂中への分散性および耐熱性の面から、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジドが好ましく、さらに、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミドが特に好ましい。
【0031】
カルボン酸エステル化合物としては、種々のものを用いることができるが、例えば、脂肪族ビスヒドロキシカルボン酸エステル等が好ましい。
【0032】
有機スルホン酸塩としては、スルホイソフタル酸塩など、種々のものを用いることができるが、中でも、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩が、結晶化促進効果の点から好ましい。さらに、バリウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、ナトリウム塩などが好ましい。
【0033】
フタロシアニン系化合物としては、種々のものを用いることができるが、遷移金属錯体を用いることが好ましく、中でも、銅フタロシアニンが結晶化促進効果の点から好ましい。
メラミン系化合物としては、種々のものを用いることができるが、結晶化促進効果の点から、メラミンシアヌレートを用いることが好ましい。
有機ホスホン酸塩としては、フェニルホスホン酸塩が、結晶化促進効果の点から好ましい。そのうち、特にフェニルホスホン酸亜鉛が好ましい。
結晶核剤(D)としては、これらのものを単独、あるいは、2種以上を併用して配合することができる。なお、これら有機系の結晶核剤(D)に対して、無機系の各種結晶核剤を併用しても構わない。
【0034】
本発明の樹脂組成物において、結晶核剤(D)の含有量は0.03〜5質量%であることが好ましい。結晶核剤(D)の含有量が0.03質量%未満では、配合することの効果が乏しく、5質量%を超えて添加すると、経済的に不利である場合が多い。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、相溶化剤(E)を含有することが好ましい。相溶化剤(E)を含有することにより、ポリ乳酸樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の相溶性が改善され、耐衝撃性あるいは外観を改善することができる。
相溶化剤(E)としては相溶化効果をもつあらゆるものを用いることができるが、たとえば、種々の共重合体を好適に用いることができる。相溶化効果の点から、共重合体のうち、スチレン系単量体とオレフィン系単量体とを含有するブロック共重合体が特に好ましい。好ましい市販品としては、JSR社製スチレン系/オレフィン系ブロック共重合体エラストマー『ダイナロン8630P』などが挙げられる。その他、日本油脂社製エポキシ基含有ポリエチレン・アクリルグラフト共重合ポリマー『モディパーA4200』なども、好適な例として挙げられる。
本発明の樹脂組成物において、相溶化剤(E)の含有量は0.05〜30質量%であることが好ましい。相溶化剤(E)の含有量が0.05質量%未満では、配合することの効果が乏しく、30質量%を超えて添加すると、経済的に不利である場合が多い。
【0036】
本発明の樹脂組成物にはその特性を大きく損なわない限りにおいて、難燃剤、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、植物繊維、耐候剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等を添加することができる。難燃剤としては、難燃性、あるいは、耐久性の点から、例えば、縮合リン酸エステル類などが例示される。熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが例示される。植物繊維としては、例えば、ケナフ繊維などが例示される。可塑剤としては、例えば、グリセリンジアセトモノカプレート、グリセリンジアセトモノラウレート、あるいは、アセチルクエン酸トリブチルなどが例示される。なお、本発明のポリエステル樹脂組成物にこれらを混合する方法は特に限定されない。
【0037】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、インブロ、発泡シート成形、および、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により、各種成形体とすることができる。すなわち、射出成形してなる成形体、あるいは、押出し成形してなるフィルム、シート、および、これらフィルム、シートから加工してなる成形体、あるいは、ブロー成形してなる中空体、および、この中空体から加工してなる成形体などとすることができる。
【0038】
本発明においては、とりわけ、射出成形法を採ることが好ましく、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等も採用できる。本発明の樹脂組成物に適した射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度を樹脂組成物の融点または流動開始温度以上、好ましくは170〜250℃、最適には170〜230℃の範囲とし、また、金型温度は樹脂組成物の(融点−40℃)以下とするのが適当である。シリンダ温度が低すぎると成形品にショートが発生するなど操業性が不安定になったり、過負荷に陥りやすく、逆に、成形温度が高すぎると樹脂組成物が分解し、得られる成形体の強度が低下したり、着色する等の問題が発生しやすく、ともに好ましくない場合がある。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、成形の際に結晶化を促進させることにより、その耐熱性をさらに高めることができる。このための方法としては、例えば、射出成形時に金型内で結晶化を促進させる方法があり、その場合には、樹脂組成物のガラス転移温度以上、(融点−40℃)以下に保たれた金型内で、一定時間、成形品を保持した後、金型より取り出す方法が好適である。また、このような方法をとらずに金型より取り出された成形品であっても、あらためて、ガラス転移温度以上、(融点−40℃)以下で熱処理することにより、結晶化を促進することができる。
【0040】
本発明の成形体の具体例としては、パソコン筐体部品および筐体、携帯電話筐体部品および筐体、その他OA機器筐体部品、コネクター類等の電化製品用樹脂部品;バンパー、インストルメントパネル、コンソールボックス、ガーニッシュ、ドアトリム、天井、フロア、エンジン周りのパネル等の自動車用樹脂部品をはじめ、コンテナーや栽培容器等の農業資材や農業機械用樹脂部品;浮きや水産加工品容器等の水産業務用樹脂部品;皿、コップ、スプーン等の食器や食品容器;注射器や点滴容器等の医療用樹脂部品;ドレーン材、フェンス、収納箱、工事用配電盤等の住宅・土木・建築材用樹脂部品;花壇用レンガ、植木鉢等の緑化材用樹脂部品;クーラーボックス、団扇、玩具等のレジャー・雑貨用樹脂部品;ボールペン、定規、クリップ等の文房具用樹脂部品等が挙げられる。
また本発明の樹脂組成物は、フィルム、シート、パイプ等の押出成形品、中空成形品等とすることもできる。その例としては、農業用マルチフィルム、工事用シート、各種ブロー成形ボトルなど多数挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。
下記の実施例及び比較例の評価に用いた測定法は次のとおりである。
【0042】
(1)D体含有量:
ポリ乳酸樹脂(A)または樹脂組成物の約0.3gを1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した後、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させた。このサンプル5mL、純水3mL、および、塩化メチレン13mLを混合して振り混ぜた。静置分離後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard製HP−6890SeriesGCsystemでGC測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをD体含有量(%)とした。
【0043】
(2)メルトフローレート(MFR):
JIS K7210に準拠し、ポリ乳酸樹脂(A)は、190℃、荷重2.16kgで測定し、ポリオレフィン樹脂(B)は、230℃、荷重2.16kgで測定した。
【0044】
(3)成形サイクル時間:
射出成形時において、所定の金型温度(85℃)で、射出時間を一定とし、冷却時間を変更した際に、成形片が変形したり、スプルーやランナーがちぎれたりしない最低の時間を成形サイクル時間とした。
【0045】
(4)耐衝撃性:
ISO179に準拠して、ノッチをつけてシャルピー衝撃強度を測定した。衝撃強度が2.5kJ/m以下を×、2.5kJ/mを超え3.0kJ/m以下を△、3.0kJ/mを超え4.5kJ/m以下を○、4.5kJ/mを超えるものを◎とした。
【0046】
(5)耐熱性:
ISO 75に準拠して、荷重0.45MPaで熱変形温度を測定した。熱変形温度が80℃以下を×、80℃を超え90℃以下を△、90℃を超え100℃以下を○、100℃を超えるものを◎とした。
【0047】
(6)表面外観:
射出成形した試験片の表面を目視観察した。ヒケ、膨れ、剥離など不良点が全くなく、均一できれいな場合を◎とし、◎より若干劣るが試験片の表面にヒケ、膨れ、剥離など不良点はない場合を○とし、試験片の表面のごく一部にヒケ、膨れ、剥離など不良点がある場合を△とし、試験片の表面にヒケ、膨れ、剥離など不良点があり、外観不良の場合を×とした。
【0048】
(7)操業性:
混練押出時に、ストランド切れなどの乱れがなく、また、ストランドの切断も問題なくおこなえた場合を○とし、混練押出時に、ストランドが乱れる、あるいは、ストランドの固化不良のため切断が困難などの状況が生じた場合を△とした。
【0049】
以下の実施例及び比較例に用いた原料は次の通りである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A):
トヨタ社製『S−12』(L体99.9モル%、D体0.1モル%、MFR=8)
ネイチャーワークス社製『6201D』(L体98.6モル%、D体1.4モル%、MFR=10)
(2)ポリオレフィン樹脂(B):
日本ポリプロ社製ポリプロピレン『ノバテックBC03C』(MFR=30)
日本ポリプロ社製ポリプロピレン『ノバテックBC6C』(MFR=2.5)
(3)無機充填材(C):
林化成社製タルク『MW−HST』(平均粒径2.7μm)
(4)結晶核剤(D):
新日本理化社製トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド『TF−1』
(5)(メタ)アクリル酸エステル化合物:
日本油脂製エチレングリコールジメタクリレート『ブレンマーPDE−50』
(6)過酸化物:
日本油脂製ジ−t−ブチルパーオキサイド『パーブチルD』
(7)相溶化剤(E):
JSR社製スチレン系/オレフィン系ブロック共重合体エラストマー『ダイナロン8630P』
【0050】
実施例1
東芝機械製二軸混練機TEM−37を用い、ポリ乳酸樹脂(A)『S−12』54質量部と、ポリオレフィン樹脂(B)『BC03C』41質量部と、無機充填材(C)1質量部と、結晶核剤(D)1質量部と、相溶化剤(E)3質量部とをドライブレンドして供給ホッパーから供給し、押出温度190℃、ダイ出口温度190℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hにて、溶融混練した。混練された樹脂をストランド状に押出し、水浴で冷却後、ペレタイザーでペレット状に切断した。
得られた樹脂組成物ペレットを乾燥後、東芝機械社製の射出成形機IS−80G型を用いて、シリンダ設定温度210℃で射出成形し、金型温度85℃にて、一般物性測定用試験片(ISO型)を作製した。試験片作製の際、成形サイクルを測定した。その後、作製した試験片を各種測定に供した。
【0051】
実施例2〜9、比較例1〜2
ポリ乳酸樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、無機充填材(C)、結晶核剤(D)、相溶化剤(E)の種類と量を変えた以外は、実施例1と同様に樹脂組成物ペレットや試験片を作製、評価した。
【0052】
実施例10
東芝機械製二軸混練機TEM−37を用い、ポリ乳酸樹脂(A)『S−12』55質量部と、ポリオレフィン樹脂(B)『BC03C』42質量部と、相溶化剤(E)3質量部とをドライブレンドして供給ホッパーから供給し、押出温度190℃、ダイ出口温度190℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量20kg/hにて、溶融混練した。さらに、(メタ)アクリル酸エステル化合物0.1質量部と過酸化物0.2質量部とをシリンダ内に供給した。混練された樹脂をストランド状に押出し、水浴で冷却後、ペレタイザーでペレット状に切断した。
得られた樹脂組成物ペレットを乾燥後、東芝機械社製の射出成形機IS−80G型を用いて、シリンダ設定温度210℃で射出成形し、金型温度85℃にて、一般物性測定用試験片(ISO型)を作製した。試験片作製の際、成形サイクルを測定した。その後、作製した試験片を各種測定に供した。
【0053】
実施例11
ポリ乳酸樹脂(A)、ポリオレフィン樹脂(B)、無機充填材(C)、結晶核剤(D)の量を変えた以外は、実施例10と同様に樹脂組成物ペレットや試験片を作製、評価した。
【0054】
実施例1〜11、比較例1〜2の結果をまとめて表1に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
実施例1〜11においては、耐熱性、耐衝撃性に優れた成形品が得られ、成形サイクル時間も良好であった。
実施例のうち、実施例1〜3、5、9〜11においては、樹脂組成物に無機充填材(C)や結晶核剤(D)が適当量配合されたり、ポリ乳酸樹脂(A)が(メタ)アクリル酸エステル化合物と過酸化物ともに溶融混練されたりしているため、成形サイクル時間、耐熱性において、特に優れた結果が得られ、混練操業性も良好であった。
そのうち、実施例1においては、無機充填材(C)、結晶核剤(D)をともに配合したため、成形サイクル時間において著しく優れた結果が得られた。また、実施例11においては、無機充填材(C)と結晶核剤(D)とがともに配合され、さらに、ポリ乳酸樹脂(A)が(メタ)アクリル酸エステル化合物と過酸化物とを溶融混練されているため、成形サイクル時間において特に著しく優れた結果が得られた。
また実施例1〜4においては、相溶化剤(E)を適当量配合したため、耐衝撃性、外観において特に優れた結果が得られ、混練操業性も良好であった。
なお、実施例7においては、無機充填材(C)を過大に配合したため、混練時のストランドが若干不安定になる傾向が見られた。また、実施例8においては、相溶化剤(E)を過大に配合したため、混練時のストランドが若干不安定になる傾向が見られ、また、ストランド切断が若干困難な傾向が見られた。
一方、比較例1においては、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量が本発明で規定する範囲外であったため、耐熱性、成形サイクル時間において劣る結果となった。また、比較例2においては、ポリオレフィン樹脂(B)の配合量が少なかったため、耐衝撃性、耐熱性に劣る結果となり、また、コスト的にも不利であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(A)とポリオレフィン樹脂(B)とを含有する樹脂組成物であって、(A)と(B)の質量比(A/B)が10/90〜99/1であり、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量が0.6%以下、または99.4%以上であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
さらに無機充填材(C)を含有し、その含有量が0.5〜50質量%であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
無機充填材(C)が、タルクであることを特徴とする請求項2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ポリ乳酸樹脂(A)が(メタ)アクリル酸エステル化合物と過酸化物とともに溶融混練されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
さらに結晶核剤(D)を含有し、その含有量が0.03〜5質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
結晶核剤(D)が、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、有機ホスホン酸塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5記載の樹脂組成物。
【請求項7】
結晶核剤(D)が、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N′−エチレンビス12ヒドロキシステアリン酸アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、5スルホイソフタル酸ジメチル金属塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項5記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、相溶化剤(E)を含有し、その含有量が0.05〜30質量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項9】
相溶化剤(E)が、スチレン系単量体とオレフィン系単量体とを含有するブロック共重合体であることを特徴とする請求項8記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなる成形体。

【公開番号】特開2009−185244(P2009−185244A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28995(P2008−28995)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】