説明

樹脂組成物およびそれを用いた発光装置

【課題】高い耐熱性を有し、強靭で容易にクラック等の損傷が発生し難い樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂と、該樹脂中に分散された重合体粒子とを含有してなり、
前記重合体粒子が、2官能性のラジカル重合性単量体および3官能性以上のラジカル重合性単量体をこれらの単量体の合計モル数に対して15モル%以上170モル%以下の重合開始剤存在下で重合させて得られた平均粒子径が150nm以下であるラジカル重合体粒子であり、
該ラジカル重合体粒子が30重量%以下の割合で含まれている樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性および靭性に優れ、要すれば良好な透光性を有する光学材料としても有用である樹脂組成物、およびそれを用いた発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば光学用プラスチックスには、その高い透明性要求を満たすためアモルファス構造を有する樹脂が使用されている。アモルファス構造は分子配列の規則性の無いランダムな2次構造を有し、結晶性樹脂や半結晶性樹脂のように結晶分子間の分子間力による自己強化機能が期待できず強度的に劣る傾向にある。また、複屈折などの光学的性能を優先するあまり、剛直な芳香族構造を分子構造に導入できないことが多いので靭性にも劣る。
【0003】
各種発光装置の高出力化や高密度実装化により、これらの光学用プラスチックスは高度の耐熱性、耐光性を求められるためガラス転移温度の一層の向上が図られている。しかし、ガラス転移温度の向上は弾性率および成形時の残留応力の増大をもたらす結果、靭性の低下がますます問題となる。例えば、汎用されている砲弾型発光ダイオードをガラス転移温度100℃と150℃の透明な酸無水硬化型エポキシ樹脂で封止した場合、ガラス転移温度150℃のエポキシ樹脂を用いた製品は各種環境試験で容易に封止樹脂にクラックが発生してしまう。かたやガラス転移温度100℃のエポキシ樹脂を用いた製品はクラックは発生し難いが100℃を超える環境試験に全く耐えることができないので用途が限られてしまう。
【0004】
また近年これら光学用プラスチックスへ無機ナノ粒子を分散し屈折率を変化させたり効率よく波長変換させる試みがなされている(特許文献1及び2)が、これら無機ナノ粒子は樹脂分子と強力なインターラクションを発生し樹脂分子の自由な運動を抑制する。その結果、樹脂の弾性率が大きく向上する反面、粘りのない靭性が更に低下した機械物性となることがある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−15063号公報
【特許文献2】特開2005−197476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、安価かつ簡便な手法により、高い耐熱性を有し、強靭で容易にクラック等の損傷が発生し難い樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定のラジカル重合体からなる粒子を樹脂中に分散させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、上記課題を解決するものとして、
樹脂と、該樹脂中に分散された重合体粒子とを含有してなり、
前記重合体粒子が、2官能性のラジカル重合性単量体および3官能性以上のラジカル重合性単量体をこれらの単量体の合計モル数に対して15モル%以上170モル%以下の重合開始剤存在下で重合させて得られた平均粒子径が150nm以下であるラジカル重合体粒子であり、
該ラジカル重合体粒子が30重量%以下の割合で含まれている樹脂組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記樹脂組成物の好適な実施形態として、前記の樹脂及びラジカル重合体粒子がともに透光性を有し、該ラジカル重合体粒子が前記透光性樹脂中にナノ分散され、組成物としても透光性である樹脂組成物を提供する。
【0010】
さらに、本発明者らは、該透光性樹脂組成物を発光装置に用いられる透光性部材用材料として有用であることを見出し、本発明は、樹脂組成物からなる透光性部材を備えた発光装置をも提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱性および靭性の高い樹脂組成物が提供される。樹脂中に分散される重合体粒子は応力緩和可能で容易に樹脂へ分散、溶解する枝分かれ状の有機巨大分子からなるためと考えられる。
【0012】
該樹脂組成物が透光性である実施形態の場合には、発光装置用の透光性部材用の材料として好適である。
【0013】
かかる透光性樹脂組成物を部材として備えた発光装置は耐熱性、耐光性、靭性に優れていて長期に渡って信頼性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を最良の実施形態その他の様々な実施形態に即して説明する。
[樹脂組成物]
−樹脂成分−
本発明の樹脂組成物の必須成分である樹脂成分としては、該ラジカル重合体粒子を溶解分散させることができ室温で硬質であることを満たすものであれば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよく、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性汎用ポリマー、フッ素樹脂、液晶ポリマー、PPS、ポリサルフォン樹脂等の熱可塑性耐熱ポリマー、またエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができ、好ましくはエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂である。
【0015】
樹脂組成物に透光性が求められる場合には、例えばPMMA樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、エポキシ樹脂、硬質シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂が挙げられる。特に、エポキシ樹脂、硬質シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂が好ましい。
【0016】
−ラジカル重合体粒子−
本発明に用いられるラジカル重合体からなる粒子(「重合体粒子」という)の製造方法は、特開2005−120288号公報に詳しく説明されている通りである。即ち、2官能性のラジカル重合性単量体(A)および3官能性以上のラジカル重合性単量体(B)の合計モル数に対して、特定の範囲のモル比の重合開始剤(C)を使用することにより、重合体微粒子を簡便に製造することができるものである。
(C)の使用量は、(A)および(B)の合計モル数に対して、通常15モル%以上、好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは35モル%以上、特に好ましくは40モル%以上、最も好ましくは50モル%以上であり、通常170モル%以下、好ましくは160モル%以下、さらに好ましくは150モル%以下である。(C)の使用量が15モル%未満の場合は重合体はゲル化してしまう。また170モル%を越える場合は重合体は生成しない。
【0017】
上記において、官能性とは、1つの化合物が高分子化合物を生成する際に示す潜在的な結合手の数をいう。
2官能性ラジカル重合性単量体(A)としては、例えば、下記(1)〜(13)の単量体で2官能性のもの、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
(1)ビニル系炭化水素
((1)−1)脂肪族ビニル系炭化水素:エチレン、ジフェニルエチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、前記以外のα−オレフィン等
((1)−2)脂環式ビニル系炭化水素:シクロヘキセン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン等
((1)−3)芳香族ビニル系炭化水素:スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ビニルナフタレン等。
【0018】
(2)カルボキシル基含有ビニル系単量体及びその塩
(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等のカルボキシル基含有ビニル系単量体;並びに、これらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アミン塩もしくはアンモニウム塩等。
【0019】
(3)スルホン基含有ビニル系単量体、ビニル系硫酸モノエステル化物及びこれらの塩
ビニルスルホン酸(塩)、(メタ)アリルスルホン酸(塩)、メチルビニルスルフォネート、スチレンスルホン酸(塩)、α−メチルスチレンスルホン酸(塩)、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸(塩)、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸(塩)、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸(塩)、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(塩)、3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(塩)、アルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸(塩)、ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(エチレン、プロピレン、ブチレン:単独、ランダム、ブロックでもよい)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル化物(塩)[ポリ(n=5〜15)オキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステル化物(塩)等]、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル(塩)、その他以下の一般式(1)〜(3)で示される化合物等。[上記における塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アミン塩もしくはアンモニウム塩が挙げられる。]
【0020】
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜15のアルキル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nが複数の場合同一でも異なっていてもよく、異なる場合はランダムでもブロックでもよい。Xはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミンカチオンを示し、Arはベンゼン環を示し、nは1〜50の整数を示す。)
【0021】
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜15のアルキレン基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nが複数の場合同一でも異なっていてもよく、異なる場合はランダムでもブロックでもよい。Xはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、アミンカチオンを示し、Arはベンゼン環を示し、nは1〜50の整数を示す。)
【0022】
【化3】

(式中、R'はフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキル基
、Xはアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムもしくはアミンカチオンを示す。)
【0023】
(4)燐酸基含有ビニル系単量体
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル燐酸モノエステル、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、フェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、(メタ)アクリル酸アルキルホスホン酸類、例えば、2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸(塩)等。
【0024】
(5)ヒドロキシル基含有ビニル系単量体
ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、庶糖アリルエーテル等。
【0025】
(6)含窒素ビニル系単量体
((6)−1)アミノ基含有ビニル系単量体:アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アリルアミン、クロチルアミン、N,N−ジメチルアミノスチレン、メチルα−アセトアミノアクリレート、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルチオピロリドン、N−アリールフェニレンジアミン、アミノカクリレート、4ービニルピクリレート、4ービニルピルバゾール、アミノチアゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノイミダゾール、アミノメルカプトチアゾール、これらの塩等、
((6)−2)アミド基含有ビニル系単量体:(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N'−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N−メチルN−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン等、
((6)−3)ニトリル基含有ビニル系単量体:(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン等、
((6)−4)4級アンモニウムカチオン基含有ビニル系単量体:ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジアリルアミン等の3級アミノ基含有ビニル系単量体の4級化物(メチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネート等の4級化剤を用いて4級化したもの)、
((6)−5)ニトロ基含有ビニル系単量体:ニトロスチレン等。
【0026】
(7)エポキシ基含有ビニル系単量体
グルシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、p−ビニルフェニルグリシジルエーテル等。
【0027】
(8)ハロゲン元素含有ビニル系単量体
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、1−クロロプロピレン、ジクロロエチレン、アリルクロライド、クロルスチレン、ブロムスチレン、ジクロルスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン等。
【0028】
(9)ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン
酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソプロペニルアセテート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル2−ブトキシエチルエーテル、3,4−ジヒドロ1,2−ピラン、2−ブトキシ−2'−ビニロキシジエチルエーテル、ビニル2−エチルメルカプトエチルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルフェニルケトン、p−ビニルジフェニルサルファイド、ビニルエチルサルファイド、ビニルエチルスルフォン、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)等。
【0029】
(10)(メタ)アクリル酸エステル
炭素数1〜50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、2−メルカプトエチル(メタ)アクリレート等。
【0030】
(11)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系単量体
ポリエチレングリコール(分子量300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物モノ(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド30モル付加物モノ(メタ)アクリレート等。
【0031】
(12)ケイ素含有ビニル系単量体
ビニルトリアルコキシシラン、ビニルモノメチルジアルコキシシラン、ビニルトリメチルシラン、モノビニルポリジメチルシロキサン、モノビニルポリメチルフェニルシロキサン、モノビニルポリフェニルシロキサン等
【0032】
(13)その他のビニル系単量体
アセトキシスチレン、フェノキシスチレン、エチルα−エトキシアクリレート、イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、シアノアクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルメチルベンジルイソシアネート、4−ビニル−t−ブチルベンゼンカルボペルオキシエステル等。
【0033】
これらのうちで好ましいものは、(1)ビニル系炭化水素、(1)のうち特に((1)−1)脂肪族ビニル系炭化水素、((1)−3)芳香族ビニル系炭化水素、(2)カルボキシル基含有ビニル系単量体、(6)含窒素ビニル系単量体、(6)のうち特に((6)−2)アミド基含有ビニル系単量体、(8)ハロゲン元素含有ビニル系単量体、(9)ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトンおよび(10)(メタ)アクリル酸エステルであり、特にエチレン、ジフェニルエチレン、スチレン、エチルスチレン、(メタ)アクリル酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、塩化ビニル、アリルクロライド、酢酸ビニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(12)ケイ素含有ビニル系単量体等である。
【0034】
ラジカル重合体粒子の製造に用いられる3官能性以上のラジカル重合性単量体(B)としては、例えば、上記で2官能性ラジカル重合性単量体として例示した(1)〜(12)の化合物と同種の化合物であって、しかし3官能性以上の官能性を有する化合物およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち、3官能性のものが好ましい。
具体例としては、以下のものが挙げられる。
(1)ビニル系炭化水素
((1)−1)脂肪族ビニル系炭化水素:イソプレン、ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン、1,3,5−ヘキサトリエン等
((1)−2)脂環式ビニル系炭化水素:シクロペンタジン、シクロヘキサジエン等
((1)−3)芳香族ビニル系炭化水素:ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン等。
【0035】
(2)カルボキシル基含有ビニル系単量体及びその塩
マレイン酸モノアリル、フタル酸モノアリル、フマル酸モノビニル、マレイン酸モノビニル、イタコン酸モノビニル等のカルボキシル基含有ビニル系単量体;並びにこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カルシウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)等。
【0036】
(3)スルホン基含有ビニル系単量体、ビニル系硫酸モノエステル化物及びこれらの塩
ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン、ジビニルスルフォキサイド、ジアリルジサルファイド等。
【0037】
(4)燐酸基含有ビニル系単量体
ジアリルフェニルホスフェイト等。
【0038】
(5)ヒドロキシル基含有ビニル系単量体
ジビニルグリコール(1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール)等。
【0039】
(6)含窒素ビニル系単量体
ジアリルアミン、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルシアヌレート、1−シアノブタジエン、メチレンビスアクリルアミド、ビスマレイミド等。
【0040】
(8)ハロゲン元素含有ビニル系単量体
クロロプレン、ジアリルアミンハイドロクロライド等。
【0041】
(9)ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン
マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、アジピン酸ジビニル、アジピン酸ジアリル、フマル酸ビニルアルキルエステル、マレイン酸ジビニル、イタコン酸ジビニル、イタコン酸ジビニルアルキルエステル、ビニルシンナメート、クロトン酸ビニル、アリルシンナメート、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、2−メトキシブタジエン、ジビニルケトン、ビニル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アリロキシアルカン類[ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等]等。
【0042】
(10)(メタ)アクリル酸エステル
(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸アリル、多価アルコール類のポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等。
【0043】
(11)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系単量体
ポリエチレングリコール(分子量300)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)ジアクリレート等。
【0044】
(12)ケイ素含有ビニル単量体
ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニルテトラメチルシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、ジビニルポリジメチルシロキサン、ジビニルポリメチルフェニルシロキサン、ジビニルポリフェニルシロキサン等
【0045】
(13)その他のビニル系単量体
1,4−ジビニルパーフルオロブタン等。
【0046】
これらのうち好ましいものは(1)ビニル系炭化水素、(1)のうち特に((1)−3)芳香族ビニル系炭化水素、(9)ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、および(11)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系単量体の3官能性以上のものであり、特にジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタアクリレート、ジアリルアジペート、(12)ケイ素含有ビニル単量体等である。
【0047】
以上説明したラジカル重合性単量体(A)および(B)の一方又は両方が、一緒に用いられる樹脂成分と反応する置換基を有していてもよい。例えば樹脂成分がエポキシ樹脂の場合、ラジカル重合性単量体(A)として(2)カルボキシル基含有ビニル系単量体及びその塩のうち活性水素を有するもの、(6)含窒素ビニル系単量体のうち活性水素を有するもの、(7)エポキシ基含有ビニル系単量体等が好ましい。ラジカル重合性単量体(B)として(2)カルボキシル基含有ビニル系単量体及びその塩のうち活性水素を有するもの、(6)含窒素ビニル系単量体のうち活性水素を有するものである。樹脂成分がシリコーン樹脂の場合、ラジカル重合性単量体(A)として(12)ケイ素含有ビニル系単量体のうちビニルトリアルコキシシラン、ビニルモノメチルジアルコキシシランである。ラジカル重合性単量体(B)として(12)ケイ素含有ビニル単量体等が好ましい。
【0048】
上記のラジカル重合体粒子の製造に用いられる重合開始剤(C)としては、パーオキサイド重合開始剤、アゾ重合開始剤、およびパーオキサイド重合開始剤と還元剤とを併用したレドックス重合開始剤、および上記の2種以上の混合物等が挙げられる。
【0049】
パーオキサイド重合開始剤としては、油溶性パーオキサイド重合開始剤及び水溶性パーオキサイド重合開始剤等が用いられる。
油溶性パーオキサイド重合開始剤としては、
(1)ケトンパーオキサイド(メチルエチルパーオキサイド、メチルイソブチルパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)
(2)ハイドロパーオキサイド(1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等)
(3)ジアシルパーオキサイド(イソブチリルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)
【0050】
(4)ジアルキルパーオキサイド(ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシヘキサン)、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキセン、トリス(t−ブチルペルオキシ)トリアジン等)
(5)パーオキシケタール(1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ペルオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−)ブチルペルオキシ)ブタン、4,4−ジ−t−ブチルペルオキシ吉草酸−n−ブチルエステル、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン等)
【0051】
(6)アルキルパーエステル(1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、α−クミルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオペンタノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−アミルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルペルオキシヘキサヒドロテトラフタレート、t−アミルペルオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−ブチルペルオキシトリメチルアジペート等)
【0052】
(7)パーカーボネート(ジ−3−メトキシブチルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−イソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルペルオキシカルボニロイル)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルペルオキシカーボネート等)が挙げられる。 これらのうちで好ましいものは、(1)ケトンパーオキサイド、(2)ハイドロパーオキサイド、(4)ジアルキルパーオキサイドおよび(6)アルキルパーエステルであり、特に好ましいものは、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイドおよびt−ブチルパーオキシベンゾエートである。
【0053】
水溶性パーオキサイド重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、過酢酸、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等が挙げられ、好ましいものは、過酸化水素水、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムである。
【0054】
アゾ重合開始剤としては、油溶性アゾ重合開始剤及び水溶性アゾ重合開始剤等が使用できる。
油溶性アゾ重合開始剤としては、
(1)アゾニトリル系[2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2'−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等]。
(2)アゾアミド系(2,2'−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド、2,2'−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2'−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド等)
(3)その他(2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル2,2'−アゾビスイソブチレート、1,1'−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等)等が挙げられる。
これらのうちで好ましいものは(1)アゾニトリル系、(3)その他であり、特に好ましいものは、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2'−アゾビスイソブチレートである。
【0055】
水溶性アゾ重合開始剤としては、
(1)アゾニトリル系(2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等)
(2)アゾアミド系(2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン等]
【0056】
(3)脂環式アゾアミド系(2,2'−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェートジハイドレート、2,2'−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジハイドロクロライド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン等]等が挙げられる。
これらのうちで好ましいものは、(1)アゾニトリル系、(2)アゾアミド系であり、特に好ましいものは、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミドである。
【0057】
レドックス重合開始剤としては、油溶性レドックス重合開始剤及び水溶性レドックス重合開始剤等が用いられる。
【0058】
−−油溶性レドックス重合開始剤−−
パーオキサイド重合開始剤としては、例えば、ヒドロペルオキサイド(tert−ブチルヒドロキシペルオキサイド、クメンヒドロキシペルオキサイド等)、過酸化ジアルキル(過酸化ラウロイル等)及び過酸化ジアシル(過酸化ベンゾイル等)等の油溶性過酸化物等が挙げられる。
還元剤としては、第三アミン(トリエチルアミン、トリブチルアミン等)、ナフテン酸塩、メルカプタン(メルカプトエタノール、ラウリルメルカプタン等)、有機金属化合物(トリエチルアルミニウム、トリエチルホウ素及びジエチル亜鉛等)等の油溶性還元剤等が挙げられる。
これらのなかで、パーオキサイド重合開始剤と還元剤の好ましい具体的な組み合わせの例としては、クメンヒドロペルオキシド−トリエチルアルミニウム、過酸化ベンゾイル−トリエチルアミン等が挙げられる。
【0059】
−−水溶性レドックス重合開始剤−−
パーオキサイド重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、過酸化水素及びヒドロペルオキサイド(tert−ブチルヒドロキシペルオキサイド、クメンヒドロキシペルオキサイド等)等の水溶性過酸化物等が挙げられる。
【0060】
還元剤としては、例えば、2価鉄塩、亜硫酸水素ナトリウム、アルコール、ジメチルアニリン等が挙げられる。
これらのなかで、パーオキサイド重合開始剤と還元剤の好ましい具体的な組み合わせの例としては、過酸化水素−2価鉄塩、過硫酸塩−亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0061】
前記ラジカル重合性単量体(A)100モルに対して、前記ラジカル重合性単量体(B)は、反応性の観点から好ましくは20モル以上、さらに好ましくは30モル以上、特に好ましくは40モル以上であり、反応性の観点から好ましくは500モル以下、さらに好ましくは400モル以下、特に好ましくは200モル以下である。
【0062】
重合体粒子は重合開始剤(C)の存在下で(A)および(B)を重合して得られるが、(C)に加え抑制剤(D)の存在下に(A)および(B)を重合することがさらに好ましい。
抑制剤(D)としては、以下の(D1)、および(D2)が挙げられる。
抑制剤(D1)としては、ラジカル重合性を抑制する効果を有する化合物が挙げられる。
抑制剤(D2)としては、一般にラジカル重合時に用いられる公知の重合禁止剤が挙げられる。抑制剤(D)は、(A)および(B)の重合反応時に滴下して加えることが好ましい。
【0063】
抑制剤(D1)の具体例としては、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、チオフェン、テトラメチルチイラムジスルフィド、メチルベンジルオキシイミノアセテート、グリオキシリックオキシムエーテル等が挙げられる。これらのうち好ましいものは、メチルベンジルオキシイミノアセテート等が挙げられる。
【0064】
抑制剤(D2)の具体例としては、キノン系重合禁止剤(ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、デュロキノン、ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチルベンゾキノン、2,6−ジ−t−ブチルベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等)、アルキルフェノール系重合禁止剤(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等)、アミン系重合禁止剤 (アルキル化ジフェニルアミン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等)、ジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤 (ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等)、N−オキシル系重合禁止剤(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル等)等が挙げられる。
【0065】
これらのうち好ましいものとしては、キノン系重合禁止剤、アルキルフェノール系重合禁止剤、アミン系重合禁止剤等であり、特に好ましいものとしては、ヒドロキノン、デュロキノン、ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチルベンゾキノン、2,6−ジ−t−ブチルベンゾキノン、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、アルキル化ジフェニルアミン、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等である。
【0066】
抑制剤(D)の使用量は、2官能性のラジカル重合性単量体(A)および3官能性以上のラジカル重合性単量体(B)の合計モル数に対して、反応性の観点から、通常1モル%以上2,000モル%以下、好ましくは3モル%以上500モル%以下である。
【0067】
上記(C)を(A)および(B)に添加する方法は、以下の方法が好ましく例示される。
(1)(A)および(B)に予め(C)を混合した後重合する方法。
(2)(A)および(B)に予め(C)の一部を混合し重合を開始した後、さらに残りの(C)を重合中に添加する方法。
(3)(A)および(B)の重合を開始した後、(C)を重合反応物中に添加して重合を行う方法。
必要により(D)を添加する場合も(C)と同様の方法で添加することができる。
【0068】
(A)および(B)、必要により(D)の重合方法としては、公知の方法、例えば溶液重合、分散重合、沈殿重合および塊状重合等が挙げられる。これらのうち好ましいものは溶液重合および沈殿重合である。分子量調節の点から有機溶剤中で重合を行うのが好ましい。重合反応は常圧、加圧密閉下、または減圧下で行われ、加圧密閉下で行うのが好ましい。重合反応の温度は好ましくは50〜200℃、さらに好ましくは70〜150℃である。
【0069】
上記の重合反応は有機溶剤の存在下で行うことが好ましい。
有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素系溶剤;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素系溶剤;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどのハロゲン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系またはエステルエーテル系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤、N−メチルピロリドンなどの複素環式化合物系溶剤、ならびにこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
【0070】
これらのうち好ましいのは、芳香族炭化水素系溶剤、塩素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤等であり、特に好ましいものはベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル、テオラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等である。
【0071】
上記の重合反応を有機溶剤の存在下で行う場合、重合反応物全体における有機溶剤の含量は、好ましくは1重量%〜300重量%、さらに好ましくは10重量%〜100重量%である。
【0072】
上記の製造方法で得られる重合体粒子の重量平均分子量(以下Mwと略記)は、好ましくは10,000〜1,000,000、さらに好ましくは20,000〜800,000、最も好ましくは40,000〜700,000である。
なお、重合体粒子の重量平均分子量の測定方法としては、静的光散乱法、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法、膜浸透圧法、低角度光散乱法等が挙げられる。これらのうち精度の観点から、静的光散乱法での測定が好ましい。
【0073】
該重合体粒子は、ガラス転移温度が−40℃以下であることが好ましく、−60℃以下であることがより好ましい。このような重合体粒子は、ラジカル重合性単量体(A)としてポリエチレングリコール(分子量300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド10モル付加物モノ(メタ)アクリレート、モノビニルポリジメチルシロキサン、モノビニルポリメチルフェニルシロキサン、モノビニルポリフェニルシロキサン等を用い、ラジカル重合性単量体(B)としてポリエチレングリコール(分子量300)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)ジアクリレート、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニルテトラメチルシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、ジビニルポリジメチルシロキサン、ジビニルポリメチルフェニルシロキサン、ジビニルポリフェニルシロキサン等を用いることにより得られる。ガラス転移温度の下限は通常−120℃程度である。
【0074】
前記重合体粒子の1次粒子の体積平均粒子径は、好ましくは1nm以上、さらに好ましくは2nm以上、最も好ましくは3nmであり、好ましくは300nm以下、さらに好ましくは200nm以下、最も好ましくは100nm以下、極めて好ましくは45nm以下である。透光性、特に透明性が求められる場合には、可視光散乱が発生しない200nm以下であることが好ましい。従って、平均粒子径は150nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。
【0075】
上記体積平均粒子径の測定法は透過型電子顕微鏡測定、沈降法、エレクトロゾーン法、静的光散乱法、小角散乱法(SAXS)、広角散乱(XRD)、超小角散乱(USAXS)等が挙げられるが、測定粒度範囲の適合性より、静的光散乱法、小角散乱法、および透過型電子顕微鏡測定が好ましく、静的光散乱法および透過型電子顕微鏡測定が最も好ましい。
【0076】
本発明に用いられる重合体粒子を重合反応物から取り出す方法としては、溶液重合後、有機溶剤を除去し重合体粒子を取り出す方法、溶液重合後、重合混合物中に沈殿溶媒(脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤等)を注入し、析出した重合体粒子を濾別し取り出す方法、塊状重合後、重合混合物を有機溶剤(上記芳香族炭化水素系溶剤、塩素系溶剤、エステル系溶剤エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アミド系溶剤、スルホキシド系溶剤)に溶解した後、上記沈殿溶媒を注入し、析出した重合体粒子を取り出す方法、上記沈殿溶媒中にて重合し、析出した重合体粒子を濾別して取り出す方法、スプレードライにて重合体粒子を取り出す方法等が挙げられる。
【0077】
本発明に用いられる重合体粒子の上記製造方法の特徴として、以下のものが例示される。
(1)低粘度ポリマーが簡便な方法で得られる。
(2)ナノ粒子を得ることができ、組成の自由度が高い。
(3)複数個の二重結合を粒子状ポリマー分子内部に含むため、マクロマーとしての展開が可能である。
(4)高分岐で多数の多様な官能性末端基を含む三次元ポリマーが得られる。
(5)官能基の分布がポリマー粒子の中心から外側表面に向かって傾斜を持つ。
(6)ポリマー末端に開始剤残基を組み込むことができる。
(7)種々の溶剤に溶解性の高いポリマーが得られる。
(8)油溶性、水溶性、いずれのモノマーにも適用できる。
(9)任意の架橋密度の粒子状ポリマーが得られる。
【0078】
−その他の成分−
本発明の樹脂組成物には必要に応じてその他の成分を配合することができ、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等のポリマー用安定剤;シリカ、アルミナ、酸化チタン等の無機フィラー等が挙げられる。これらは求められる機械的強度、光学特性(例、透明性、光拡散性)に応じて適宜添加しあるいは添加しない。LED素子において、樹脂組成物を用いる部材に波長変換が求められる場合には蛍光体を添加してもよい。
【0079】
−組成など−
本発明の樹脂組成物において、前記のラジカル重合体粒子は相互の凝集性に欠けるため樹脂組成物中で隣接すると、その箇所が欠陥となって成形体の強度の低下を招き易い。したがって、樹脂組成物中のラジカル重合体粒子の含有量は30重量%以下が好ましく、更に透光性を配慮したならば10重量%以下がより好ましい。ただし、0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましい。
[発光装置]
本発明の樹脂組成物は透光性を有する場合、発光装置に用いられる透光性部材用材料として特に適している。
【0080】
発光装置としては、例えば発光ダイオード、液晶用導光板、各種信号灯器等が挙げられ、透光性部材としては、例えば封止樹脂体、蛍光体含有層、レンズ、ダイボンド接着剤、アンダーフィル樹脂、導光板等が挙げられる。
発光装置は特に限定されず、砲弾型、表面実装型など種々の形態をとることができる。例えば、図1に示すような砲弾型発光ダイオードがある。図1は砲弾型発光ダイオードを示す概略断面図である。
砲弾型発光ダイオードは、サファイア基板と、その上面に積層された半導体層と、その半導体層に形成された正の電極及び負の電極と、を含んでなる発光素子10と、発光素子10の正の電極及び負の電極を導電性ワイヤー30によってそれぞれ導電接続されたリードフレーム20(20a、20b)と、発光素子10の外周及びリードフレーム20の一部を被覆するモールド部材40と、から構成されている。なお、発光素子10において、サファイア基板上の半導体層には発光層(図示しない)が設けられており、この発光層から出力される光の発光スペクトルは、紫外から青色領域(500nm以下)に発光ピーク波長を有する。
【0081】
この砲弾型発光ダイオードは、例えば以下のようにして製造される。
発光素子10をダイボンダーにセットし、カップが設けられたリードフレーム20aに、電極側を上にして(フェイスアップ)発光素子10をダイボンド(接着)する。ダイボンド後、発光素子10がダイボンドされたリードフレーム20をワイヤーボンダーに移送し、発光素子10の負の電極をカップの設けられたリードフレーム20aに金線でワイヤーボンドし、正の電極をもう一方のリードフレーム20bにワイヤーボンドする。次に、予めモールド部材40が注入されたモールド型枠の中にリードフレーム20を浸漬した後、型枠をはずして樹脂を硬化させ、砲弾型発光ダイオードを作製する。
本発明の樹脂組成物は、上記のモールド部材40に使用する。
なお、上記のモールド部材40中に蛍光体を含有させてもよく、また、リードフレーム20aのカップ内に蛍光体を混ぜたプリコート部材を配置してもよい。蛍光体の種類は特に問わない。
【実施例】
【0082】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の記載において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0083】
得られた粒子のMwおよび1次粒子の体積平均粒子径は以下の方法で測定した。
Mw:静的光散乱法による。具体的には多角度光散乱検出器(昭和電工製)で測定した。
1次粒子の体積平均粒子径:透過型電子顕微鏡(日立製)により測定した。
〔合成例1〕
【0084】
冷却管と温度計を備えた開放型反応容器にトルエン1000部を仕込み反応容器内の酸素を含む空気を窒素で置換した後、窒素気流下に70℃まで昇温した。ついで、ジビニルアジペート(B)792部(4モル)およびイソブチルビニルエーテル(A)601部(6モル)の混合単量体10モルとアゾビスイソブチロニトリル(C)820部(5モル)の混合物を2時間かけて滴下した。(A)および(B)の合計モル数に対する(C)のモル数は50モル%、(A)100モルに対する(B)のモル数は67モルである。さらに、同温度で12時間熟成した後、ヘキサン2500部を投入し、重合混合物を沈殿させ、濾別することで重合体粒子(J)を得た。粒子収率は55%であった。重合体粒子(J)のMwは520,000、体積平均粒子径は12nmであった。
【0085】
〔実施例1〕
ビスフェノールAジグリシジルエーテル100部、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物80部、エチレングリコール2部、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7オクチル酸塩2部よりなる組成物に合成例1で得られた重合体粒子(J)を5%となるよう室温下に均一に分散させ硬化前の透光性エポキシ樹脂組成物を調製した。銅合金よりなるリードフレームへInGaNよりなる発光素子を銀ペーストでマウントし直径35μmの金ワイヤーでリ-ドフレームと発光素子間の電気的接続が可能なようにした。PPSよりなるキャスティングケースへ前記透光性エポキシ樹脂組成物を注ぎ発光素子付きリードフレームを挿入し130℃で4時間の硬化を行い封止した。硬化終了後、キャスティングケースよりリードフレームを引き抜き、砲弾型発光ダイオードを得た。
【0086】
〔比較例1〕
ビスフェノールAジグリシジルエーテル100部、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物80部、エチレングリコール2部、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7オクチル酸塩2部よりなる硬化前の透光性エポキシ樹脂組成物を調製した。銅合金よりなるリードフレームにInGaNよりなる発光素子を銀ペーストでマウントし直径35μmの金ワイヤーでリ-ドフレームと発光素子間の電気的接続が可能なようにした。PPSよりなるキャスティングケースへ前記透光性エポキシ樹脂組成物を注ぎ発光素子付きリードフレームを挿入し120℃で1時間、130℃で3時間の硬化を行い封止した。硬化終了後、キャスティングケースよりリードフレームを引き抜き、砲弾型発光ダイオードを得た。
【0087】
〔評価実験〕
実施例1ならびに比較例1で得た砲弾型発光ダイオードを下記条件にて耐環境試験に付し封止樹脂として使用した透光性樹脂組成物へのクラック発生数(個)を調べた。
冷熱衝撃温度範囲:−40℃〜100℃
冷熱衝撃サイクル:−40℃1分/室温1分/100℃1分
冷熱媒:フッ素系溶剤
試験母数:発光ダイオード各100個
【0088】
【表1】

実施例1の発光ダイオードは比較例1の発光ダイオードより耐環境性能に優れており、比較的厳しい屋外環境下でも使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に係る樹脂組成物は発光装置、特に半導体発光素子を封止する封止部材に使用することができる。その発光装置は、屋内及び屋外の照明、ディスプレイ、液晶用バックライト等に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】砲弾型発光ダイオードを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0091】
10 発光素子
20 リードフレーム
30 導電性ワイヤー
40 モールド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、該樹脂中に分散された重合体粒子とを含有してなり、
前記重合体粒子が、2官能性のラジカル重合性単量体および3官能性以上のラジカル重合性単量体をこれらの単量体の合計モル数に対して15モル%以上170モル%以下の重合開始剤存在下で重合させて得られた平均粒子径が150nm以下であるラジカル重合体粒子であり、
該ラジカル重合体粒子が30重量%以下の割合で含まれている樹脂組成物。
【請求項2】
前記ラジカル重合体のガラス転移温度が−40℃以下である請求項1に係る樹脂組成物。
【請求項3】
前記の樹脂及びラジカル重合体粒子がともに透光性を有し、該ラジカル重合体粒子が前記透光性樹脂中にナノ分散され、組成物としても透光性である請求項1又は2に係る樹脂組成物。
【請求項4】
発光装置に用いられる透光性部材用である請求項3に係る樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3に記載の樹脂組成物からなる透光性部材を備えた発光装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−269999(P2007−269999A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97948(P2006−97948)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】