説明

樹脂組成物の製造方法、樹脂組成物、反射板および発光装置

【課題】二軸押出造粒機を用いて液晶ポリエステル内に多量の酸化チタンを拡散させる際に、その拡散性を改善する。
【解決手段】液晶ポリエステルは、上流供給部107−1から、シリンダー101内に供給される。また、酸化チタンは、中間供給部107−2から、シリンダー101内に供給される。酸化チタンの一部は、上流供給部107−1から、シリンダー101内に供給してもよい。液晶ポリエステルよりも下流側で酸化チタンをシリンダー101内に供給することにより、上流供給部107−1における噛み込み不良の発生等を抑制して、酸化チタンの均一性を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶ポリエステル等の熱可塑性樹脂に、例えば酸化チタン等の充填材を分散する工程を含む樹脂組成物の製造方法と、かかる製造方法を用いて製造される樹脂組成物と、かかる樹脂組成物を用いた反射板および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光装置用の反射板を樹脂組成物で形成する技術が知られている。樹脂組成物で形成した反射板は、無機材料で形成した反射板と比較して、加工性や軽量性の点で優れている。その反面、樹脂組成物製の反射板は、一般に、光反射率や熱伝導率で、無機材料製の反射板に劣っている。したがって、樹脂組成物製反射板の実用性を高めるためには、樹脂組成物の光反射率や熱伝導率を高めることが望まれる。
【0003】
樹脂組成物の光反射率や熱伝導率を高くする方法としては、例えば、樹脂内に無機材料を充填して分散させる方法が知られている。無機充填材を使用する場合には、樹脂として、液晶ポリエステルを使用することが望ましい。液晶ポリエステルは、他の種類の樹脂と比較して、無機充填材が高濃度に充填された場合であっても流動性や機械強度を十分な高さに維持できるという長所を有している。加えて、液晶ポリエステルは、耐熱性が高く、薄肉加工が容易であるという長所も有している。このため、樹脂として液晶ポリエステルを使用し且つ充填材として光反射率を高くできるような材料を選択することにより、優れた反射板を得ることができると考えられている。
【0004】
反射板形成材料としての液晶ポリエステル樹脂組成物は、例えば下記特許文献1に開示されている。特許文献1の液晶ポリエステル樹脂組成物は、上述したような液晶ポリエステル樹脂組成物の長所に加えて、白色度が高い(すなわち、可視光領域の低波長部分での反射率が高い)という長所を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−256673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂組成物の工業的生産方法においては、充填材を分散させる手段として、例えば押出造粒機が使用される。押出造粒機とは、シリンダー内に設けられたスクリューによって、そのシリンダー内の被混練物を混練する装置である。被混練物は、スクリューの回転に伴って下流側に移動され、下流側端部のノズルから外部に押し出される。押出造粒機には、単軸のもの(スクリューが1本のもの)や多軸のもの(スクリューが2本以上のもの)があるが、一般的には二軸押出造粒機が多く使用されている。
【0007】
従来、押出造粒機を用いた充填材分散工程では、ヒーターでシリンダーを加熱しつつ、該シリンダーに樹脂組成物と充填材とを同時に供給していた。そして、これらの材料をスクリューで混練することにより、充填材の分散を行っていた。
【0008】
しかしながら、従来の充填材分散工程には、液晶ポリエステル等の低粘度樹脂組成物を使用する場合に、無機充填材を均一に分散させ難くなるという欠点があった。かかる欠点は、無機充填材が微細で充填濃度が高い場合に、特に顕著となる。
【0009】
加えて、微細な無機充填材を高濃度に充填する場合、無機充填材がスクリューに対して滑りやすくなって、噛み込み不良が発生するという欠点も生じていた。噛み込み不良が生じると、樹脂組成のばらつきが生じ易くなるとともに、樹脂組成物が下流側に移動し難くなって生産性が悪化する。
【0010】
そこで、本発明は、このような事情に鑑み、樹脂組成物に充填材を分散させる際に、充填材を均一に分散させ且つ噛み込み不良の発生を抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するため、本発明者は、熱可塑性樹脂と充填材とを異なる位置からシリンダーに供給することに着目し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、請求項1に記載の発明は、シリンダー内に設けられたスクリューで熱可塑性樹脂および充填材を上流側から下流側に流動させて押出口から押し出すことにより、該熱可塑性樹脂内に該充填材を分散させる樹脂組成物の製造方法であって、前記シリンダーに配置された第1供給部から、前記熱可塑性樹脂を供給し、前記シリンダーの、前記第1供給部と前記押出口との中央よりも上流側に配置された第2供給部から、前記充填材を供給する樹脂組成物の製造方法としたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記第1供給部から、全ての前記熱可塑性樹脂および一部の前記充填材を供給し、且つ、前記第2供給部から、残りの前記充填材を供給することを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の構成に加え、前記シリンダー内に供給される前記熱可塑性樹脂と前記充填材との比が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して前記充填材20質量部以上200質量部以下であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成に加え、前記充填材の体積平均粒径が0.05μm以上20μm以下であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の構成に加え、前記熱可塑性樹脂が液晶ポリエステルであり、且つ、前記充填材が無機物質であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の構成に加え、前記充填材が、酸化チタンであることを特徴とする。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の構成に加え、前記充填材が、酸化アルミニウムで表面処理された酸化チタンであることを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、請求項5に記載の構成に加え、前記充填材が、塩素法により製造された酸化チタンであることを特徴とする。
【0020】
また、請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載の構成に加え、前記シリンダーの、前記第2供給部よりもさらに下流側の第3供給部から、他の種類の充填材を供給する第3供給処理をさらに含むことを特徴とする。
【0021】
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の構成に加え、前記他の種類の充填材がガラス繊維であることを特徴とする。
【0022】
また、請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法により製造された樹脂組成物としたことを特徴とする。
【0023】
また、請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の樹脂組成物を形成してなる反射板としたことを特徴とする。
【0024】
また、請求項13に記載の発明は、発光素子と、該発光素子から放射された光を反射する反射板とを備える発光装置において、前記反射板が請求項11に記載の樹脂組成物を形成してなる発光装置としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
各請求項に記載の発明によれば、供給位置を、上流側から熱可塑性樹脂を供給する第1供給部と、下流側から充填材を供給する第2供給部とに分けたので、充填材を従来よりも均一に分散させることができるとともに、噛み込み不良を抑制することができる。
【0026】
請求項11に記載の発明によれば、樹脂組成物の製造時に充填材を均一に分散させることができ且つ噛み込み不良を抑制することができるので、光反射率や熱伝導率等の特性むらが少ない樹脂組成物を安価に提供することができる。
【0027】
請求項12に記載の発明によれば、樹脂組成物の製造時に充填材を均一に分散させることができ且つ噛み込み不良を抑制することができるので、光反射率や熱伝導率等の特性むらや製品ばらつきが少ない反射板を安価に提供することができる。
【0028】
請求項13に記載の発明によれば、樹脂組成物の製造時に充填材を均一に分散させることができ且つ噛み込み不良を抑制することができるので、光反射率や熱伝導率等の特性むらや製品ばらつきが少ない発光装置を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態で使用する二軸押出造粒機の構造を示す概念的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0031】
まず、この実施の形態の製造方法、すなわち、押出造粒機を用いて熱可塑性樹脂に充填材を分散させる方法について説明する。
【0032】
<押出造粒機>
【0033】
この実施の形態では、二軸押出造粒機を使用して、熱可塑性樹脂に充填材を分散させる。二軸押出造粒機とは、二軸のスクリューを備える溶融混練押出機である。
【0034】
二軸押出造粒機は、スクリューの回転方式によって、同方向回転型、異方向回転型、不完全噛み合い型等に分類される。さらに、同方向回転型の二軸押出造粒機には一条ねじ型、二条ねじ型、三条ねじ型等があり、また、異方向回転型の二軸押出造粒機には平行軸型、斜軸型等がある。この実施の形態では、同方向回転型で一条ねじ型の二軸押出造粒機を使用する場合を例に採って説明する。
【0035】
図1は、この実施の形態で使用する二軸押出造粒機100の構造を概略的に示す概念図である。
【0036】
図1の二軸押出造粒機100において、シリンダー101は、樹脂組成物と充填材とを混練するための容器である。
【0037】
シリンダー101内には、スクリュー102が設けられている。なお、この実施の形態の押出造粒機100は二軸式であるため実際には二本スクリューを備えているが、図1では1本のスクリュー102のみが示されている。ここで、下流供給部107−3(後述)よりも下流においては、スクリュー102は、押出方向に対して正方向のねじスクリュー(すなわち、被混練物を押出方向に輸送できるように構成されたねじスクリュー)に構成することが望ましい。例えばスクリュー102としてフルフライトスクリューを使用することにより、熱可塑性樹脂や充填材を押出方向に効率よく輸送することができ、その結果、溶融樹脂の低分子量化を抑制することができる。
【0038】
スクリュー102には、ニーディング部103−1、103−2、103−3が設けられている。これらニーディング部103−1、103−2、103−3を設けることで、シリンダー101内に供給される熱可塑性樹脂等を効率良く混練することが可能となるので、充填材の分散性を向上させることができる。ニーディング部103−1、103−2、103−3としては、ニーディングディスク(右ニーディングディスク、ニュートラルニーディングディスク、左ニーディングディスク)、ミキシングスクリュー等を使用することができる。
【0039】
モーター104は、変速機105を介して、スクリュー102に連結されている。これにより、モーター104でスクリュー102を回転駆動することができ、また、変速機105で回転速度を調整できる。
【0040】
ヒーター106は、シリンダー101の外側面を覆うように配置されており、シリンダー101の内部を加熱するために使用される。ヒーター106の加熱方法は特に限定されず、例えばアルミ鋳込ヒーター、真鍮鋳込ヒーター、バンドヒーター、スペースヒーター等を採用することができる。また、ヒーター106を複数の加熱部品によって構成してもよい。
【0041】
供給部107−1、107−2、107−3は、シリンダー101に被混練物を供給するために使用される。供給部107−1、107−2、107−3は、それぞれ、シリンダー101の内部に被混練物を供給する供給口(図示せず)と、これらの供給口に被混練物を導くためのホッパーとを備えている。上流供給部107−1は、シリンダー101の上流側端部付近に設けられる。中間供給部107−2は、上流供給部107−1とシリンダー101の下流側端部との中央よりも上流側に設けられる。また、下流供給部107−3は、中間供給部107−2よりも下流側に設けられる。なお、これら供給部107−1、107−2、107−3には、被混練物をシリンダー101内に定量的に供給するための定量フィーダーを設けてもよい。後述するように、この実施の形態では、上流供給部107−1から、熱可塑性樹脂(例えば液晶ポリエステル)が供給される。また、後述の充填材A(例えば酸化チタン)の一部や充填材B(例えばガラス繊維)の一部を上流供給部107−1から供給してもよい。中間供給部107−2からは、かかる充填材Aの残りが供給される。また、熱可塑性樹脂の一部や充填材Bの一部を中間供給部107−2から供給してもよい。下流供給部107−3からは、必要に応じて、充填材Bが供給される。また、熱可塑性樹脂の一部や充填材Aの一部を下流供給部107−3から供給してもよい。
【0042】
シリンダー101には、複数(図1では3個)のベント108−1、108−2、108−3が設けられている。ベント108−1、108−2、108−3は、図示しない真空ポンプに連結されている。これにより、シリンダー101内の真空脱気を行うことができる。また、ベント108−1、108−2、108−3に真空ポンプを連結せず、単にシリンダー101内のガスを大気中に解放する目的で使用してもよい。この実施の形態の製造工程では著しくストランドを脆弱化させるほどのガスは発生しないが、真空脱気により発生ガスを排出することが望ましい。また、最も下流側にあるベント108−3のみを用いて真空脱気することとすれば、効率的に発生ガスを排出することができる。
【0043】
シリンダー101の下流側端部には、ダイス109が設けられている。そして、このダイス109には、被混練物を押し出すためのノズル110が設けられている。また、ダイス109は、ダイス用ヒータ111で加熱される。
【0044】
以下、図1の二軸押出造粒機100に供給される熱可塑性樹脂および充填材A、Bについて、詳細に説明する。
【0045】
<熱可塑性樹脂>
【0046】
この実施の形態では、熱可塑性樹脂として、液晶ポリエステルを使用する。この実施の形態で使用する液晶ポリエステルは、サーモトロピック液晶ポリエステルとも呼ばれるポリエステルであり、450℃以下の温度で光学的に異方性を示す溶融体を形成する。液晶ポリエステルの種類としては、以下のようなものがある。
(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジオールの組み合わせを重合して得られるもの
(2)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合して得られるもの
(3)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせを重合して得られるもの
(4)ポリエチレンテレフタレート等の結晶性ポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるもの
【0047】
ここで、液晶ポリエステルの製造において、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸または芳香族ジオールの代わりに、それらのエステル形成性誘導体を使用することも可能である。このようなエステル形成性誘導体を用いることにより、液晶ポリエステルの製造が容易になる。
【0048】
以下、エステル形成性誘導体について、簡単に説明する。
【0049】
エステル形成性誘導体としては、分子内にカルボキシル基を有するもの(例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸や、芳香族ジカルボン酸)や、分子内にフェノール性ヒドロキシル基(例えば、芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジオール)を有するものがある。カルボキシル基を有するエステル形成性誘導体としては、当該カルボキシル基を高反応性の酸ハロゲン基や酸無水物などの基に転化したものや、当該カルボキシル基とエステル交換反応によりポリエステルを生成するようなアルコール類やエチレングリコール等とがエステルを形成しているもの等を挙げることができる。また、分子内にフェノール性ヒドロキシル基を有するもの場合は、フェノール性ヒドロキシル基と低級カルボン酸類とでエステルを形成して当該フェノール性ヒドロキシル基のエステル交換反応によりポリエステルが生成されるようにしたもの等も挙げることができる。
【0050】
さらに、エステル形成性を阻害しない程度であれば、上述の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸または芳香族ジオールは、その芳香環の水素原子の一部または全部が、塩素原子、フッ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基に置換されていてもよい。
【0051】
この実施の形態に係る液晶ポリエステルの構造単位としては、下記のものを例示することができる。
【0052】
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位:

【0053】
上記構造単位は、芳香環に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を置換基として有していてもよい。
【0054】
芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位:

【0055】
上記構造単位は、芳香環にハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を置換基として有していてもよい。
【0056】
芳香族ジオールに由来する構造単位:

【0057】
上記構造単位は、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基を置換基として有していてもよい。
【0058】
より好適な液晶ポリエステルとしては、その構造単位の組み合わせが下記(a)〜(h)となっているものが挙げられる。
(a):(A1)
、(B1)および(C1)からなる組み合わせ、または、(A1)、(B1)、(B2)および(C1)からなる組み合わせ
(b):(A2)
、(B3)および(C2)からなる組み合わせ、または(A2)、(B1)、(B3)および(C2)からなる組み合わせ
(c):(A1)および(A2)からなる組み合わせ。
(d):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(A1)の一部または全部を(A2)に置きかえたもの
(e):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(B1)の一部または全部を(B3)に置きかえたもの
(f):(a)の構造単位の組み合わせにおいて、(C1)の一部または全部を(C3)に置きかえたもの
(g):(b)の構造単位の組み合わせにおいて、(A2)の一部または全部を(A1)に置きかえたもの
(h):(c)の構造単位の組み合わせに、(B1)と(C2)を加えたもの
【0059】
このように、この実施の形態で使用する液晶ポリエステルとしては、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位として(A1)および/または(A2)を有し、芳香族ジオールに由来する構造単位として(B1)、(B2)および(B3)のいずれか一つ以上を有し、且つ、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位として(C1)、(C2)および(C3)のいずれか一つ以上を有するものが望ましい。
【0060】
この実施の形態の樹脂組成物をLED発光装置の反射板に使用する場合には、液晶ポリエステルとして、流動温度が270〜400℃のものを採用することが望ましく、300〜380℃のものを採用することがさらに望ましい。流動温度が270℃未満の液晶ポリエステルで当該反射板を形成した場合、LEDモジュール組み立て工程等の高温環境下で、変形したり、ブリスター(膨れ異常)を発生させたりするおそれがある。一方、流動温度が400℃を超える液晶ポリエステルで当該反射板を形成する場合、溶融加工温度が高くなりすぎて、反射板の製造に不向きである。ここで、流動温度とは、内径1mm、長さ10mmのノズルを持つ毛細管型レオメータを用い、9.8MPa(メガパスカル)の荷重において、4℃/分の昇温速度で加熱溶融体をノズルから押し出すときに、溶融粘度が4800Pa・秒となる温度を意味している。流動温度は、液晶ポリエステルの分子量を表す指標となっている(例えば、小出直之編「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」第95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。
【0061】
この実施の形態の液晶ポリエステルを製造する方法は、特に限定されず、種々の公知の方法を採用することができる。但し、この実施の形態の樹脂組成物をLED発光装置に使用する場合には、本願出願人による特許出願である特願2003−48945(特開2004−256673号公報)に提案されているように、YI(Yellowness Index)値32以下の液晶ポリエステルを製造できるような方法が望ましい。
【0062】
以下、特願2003−48945で開示された液晶ポリエステル製造方法について説明する。
【0063】
この製造方法では、まず、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ジカルボン酸の混合物に脂肪酸無水物を混合し、次に、窒素雰囲気中130〜180℃で反応させることによって芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジオールのヒドロキシル基を脂肪酸無水物でアシル化する。そして、このようにして得られたアシル化物(芳香族ヒドロキシカルボン酸アシル化物および芳香族ジオールアシル化物)を昇温して反応副生物を反応系外に留去しながら、これらアシル化物のアシル基と芳香族ヒドロキシカルボン酸アシル化物および芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基との間にエステル交換を生じさせて重縮合させることにより、液晶ポリエステルが得られる。
【0064】
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ジカルボン酸の混合物中における、ヒドロキシル基とカルボキシル基との比は、0.9〜1.1であることが好ましい。
【0065】
脂肪酸無水物の使用量は、芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジオールのフェノール性ヒドロキシル基の合計に対して、0.95〜1.2倍当量であることが好ましく、1〜1.12倍当量であることがより好ましい。脂肪酸無水物の使用量を少なくすることにより、液晶ポリエステルの着色を抑えることができる。しかし、かかる使用量が少なすぎると、重縮合時に未反応の芳香族ジオールまたは芳香族ジカルボン酸が昇華しやすくなって反応系が閉塞する場合がある。一方、脂肪酸無水物の使用量が1.2倍当量を超えると、生成される液晶ポリエステルの着色が無視できなくなって生成体の色調を悪化させるおそれがある。
【0066】
この実施の形態で使用する脂肪酸無水物は、特に限定されず、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β−ブロモプロピオン酸等を使用できる。また、これらを二種類以上混合して使用してもよい。価格と取り扱い性の観点からは、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸が好ましく、無水酢酸がより好ましい。
【0067】
エステル交換(重縮合)反応は、130〜400℃の範囲で0.1〜50℃/分の割合で昇温させながら反応させることが好ましく、150〜350℃の範囲で0.3〜5℃/分の割合で昇温しながら反応させることがより好ましい。
【0068】
特願2003−48945に開示されているように、エステル交換(重縮合)反応は、液晶ポリエステルの製造をより円滑にするという観点と、生成される液晶ポリエステルの着色を十分抑制するという観点とから、窒素原子を2原子以上含む複素環状有機塩基化合物(含窒素複素環状有機塩基化合物)の存在下で行うことが望ましい。かかる含窒素複素環状有機塩基化合物としては、例えばイミダゾール化合物、トリアゾール化合物、ジピリジリル化合物、フェナントロリン化合物、ジアザフェナントレン化合物等が挙げられる。これらの中で、反応性の観点からイミダゾール化合物が好ましく使用され、入手が容易であることから1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾールがより好ましく使用される。
【0069】
また、エステル交換(重縮合)反応をより促進して重縮合速度を増加させる目的で、上述の複素環状有機塩基化合物以外の触媒を使用することもできる。但し、金属塩等を触媒として使用する場合には、その金属塩が液晶ポリエステルに不純物として残存することになるので、反射板のような電子部品には悪影響を及ぼす場合がある。これに対して、上述の含窒素複素環状有機塩基化合物を触媒として使用する場合は、かかる悪影響が発生し難く、この実施の形態の液晶ポリエステルを製造する際の触媒として特に好適である。
【0070】
エステル交換(重縮合)反応をさらに進行させて重合度を上げる方法としては、エステル交換(重縮合)反応の反応容器内を減圧する方法や、反応生成物を冷却固化後に粉末状に粉砕して該粉末を250〜350℃で2〜20時間固相重合する方法などがある。このような方法で重合度を上げることで、好適な流動温度の液晶ポリエステルを製造することが容易となる。簡便な設備を使用できる点では、固相重合を用いることが好ましい。
【0071】
上述のアシル化およびエステル交換反応による重縮合や、重合度を上げる目的で実施される減圧重合や固相重合等は、窒素等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0072】
このようにして製造された液晶ポリエステルは、YI値が32以下の液晶ポリエステルであり、この実施の形態の熱可塑性樹脂として使用される液晶ポリエステルとして好適である。ここで、YI値は、液晶ポリエステル製試験片を色差計で測定することで得られる。YI値は、物体の黄色度を表す指標であり、ASTM(米国材料試験協会;American Society for Testing and Materials)規格のD1925に定義されているように、下式(1)で得られる。下式(1)において、X値、Y値、Z値は、それぞれXYZ表色系における光源色の三刺激値である。
【0073】
YI=[100(1.28X−1.06Z)/Y] ・・・(1)
【0074】
上述したように、含窒素複素環状有機塩基化合物を触媒として用いて製造された液晶ポリエステルは、YI値が32以下となるため、非常に好適である。但し、複数種類の液晶ポリエステルを混合することによってYI値が32以下の液晶ポリエステル混合物を得ることも可能である。複数種類のポリエステルを混合する場合、上述した色差計等を用いて液晶ポリエステル混合物のYI値を測定して、この実施の形態に好適な液晶ポリエステルを選択してもよい。
【0075】
<充填材A>
【0076】
充填材Aは、中間供給部107−2から供給される充填材である。また、上述のように、充填材Aの一部を上流供給部107−1から供給してもよい。
【0077】
充填材Aとしては、例えば酸化鉄、群青、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化チタン等の顔料や、例えばガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、チタン酸繊維、ウォラストナイト、アスベスト等の無機繊維、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ドロマイト、各種金属粉末、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、焼石膏等の粉末、炭化ケイ素、アルミナ、ボロンナイトライト、ホウ酸アルミニウムや窒化ケイ素等の、粉粒状、板状、ウィスカー状の無機化合物が使用できる。
【0078】
充填材Aの粒径は、特に限定されない。但し、充填材Aの粒径が十分に大きい場合は、分散性の悪化や噛み込み不良といった本発明の課題(上述)が発生し難く、したがって、充填材Aの平均粒径が小さい場合の方が、この実施の形態の製造方法による効果が大きい。すなわち、粒径が小さいほど、嵩密度が小さくなったり、スクリューの噛み込み性が低下して利するため、この実施の形態による製造方法を効果が発揮される。かかる観点からすれば、この実施の形態において、充填材Aの平均粒径は、0.05〜20μmが好ましく、0.10〜15μmであることがより好ましく、0.15〜10μmであることがさらに好ましく、0.17〜5μmであることが最も好ましい。
【0079】
この実施の形態では、平均粒径を充填材Aに係る粒子の最長寸法とした。充填材Aが平均粒径測定用溶媒(酸化チタン等)で十分に凝集等する場合は、まず、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で外観を撮影する。さらに、画像解析装置(例えば、株式会社ニレコ製の「ルーゼックスIIIU」等)を用いて、そのSEM写真から一次粒子の各粒径区間における粒子量(%)をプロットして分布曲線を求める。そして、その分布曲線から、累積度50%の値を求めることにより、体積平均粒径が得られる。一方、充填材A平均粒径測定用の溶媒で十分に凝集等しない場合は、レーザー回折等によって平均粒径を求めることができる。
【0080】
充填材Aの配合量は、特に限定されないが、配合量が少ない場合には本発明の課題が発生し難く、したがって、配合量の多い場合の方が、この実施の形態の製造方法による効果が大きい。その一方で、配合量が多すぎると、この実施の形態の方法による製造自体が困難になる傾向がある。かかる観点からすれば、かかる配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して20〜200質量部が好ましく、25〜150質量部がより好ましく、40〜100質量部がさらに好ましい。充填材Aとして、複数種類の充填材の混合物を使用する場合には、その合計量が、かかる配合量の範囲内であればよい。
【0081】
この実施の形態の製造方法では、充填材Aとして、酸化チタンを使用する。酸化チタン充填材は、主成分が酸化チタンであればよく、企図せずに含有される不純物が含まれていてもよい。基本的に、樹脂充填材用の酸化チタンとして市販されているものであれば、この実施の形態の充填材Aとしてそのまま使用できる。また、酸化チタンに対して後述のような表面処理を施したものをこの実施の形態の充填材Aとして使用することもできる。
【0082】
充填材Aに含有される酸化チタンの結晶形は、特に限定されず、ルチル型であっても、アナターゼ型であっても、両者を混合したものであってもよい。但し、この実施の形態の樹脂組成物を用いて反射板を作製する場合、高い反射率や優れた耐候性等を得るためには、充填材Aとして、ルチル型酸化チタンを含有しているものを使用することが望ましく、ルチル型酸化チタンからなるものを使用することがさらに望ましい。
【0083】
酸化チタンを使用する場合も、充填材Aの平均粒径は、特に限定されない。但し、この実施の形態の樹脂組成物を用いて反射板を作製する場合、高い反射率を得るためおよび充填材Aの分散均一性を十分に高くするためには、かかる平均粒径を反射板の厚さに応じて適宜選択することが望ましい。最適な平均粒径は、反射板の厚さ等の条件に応じて異なるが、一般的には、0.10〜1μmとすることが好ましく、0.15〜0.50μmとすることがより好ましく、0.18〜0.40μmとすることがさらに好ましい。
【0084】
充填材Aとして酸化チタンを使用する場合、かかる酸化チタンに表面処理を施してもよい。例えば、無機金属酸化物を用いて表面処理を施すことにより、分散性や耐候性等の特性を向上できる場合がある。無機金属酸化物としては、例えば酸化アルミニウム(すなわち、アルミナ)を使用することが好ましい。但し、製造工程で凝集等が発生せず、取り扱い上の問題がなければ、表面処理されていない酸化チタンを使用する方が、耐熱性や強度の点からは好ましい。
【0085】
酸化チタンの製造方法は、特に限定されず、例えば塩素法でもよいし、硫酸法でもよい。但し、充填材Aとしてルチル型酸化チタンを採用したい場合には、塩素法を用いることが望ましい。また、上述したような平均粒径の酸化チタンを得やすい製造条件を選択することが好ましい。塩素法を用いて酸化チタンを製造する場合、まず、チタン源である鉱石(ルチル鉱やイルメナイト鉱から得られる合成ルチル鉱)と塩素とを1000℃付近で反応させて粗四塩化チタンを生成し、この粗四塩化チタンを精留で精製することによって四塩化チタンを得る。この四塩化チタンを酸素で酸化することによって、酸化チタンを得ることができる。塩素法を用いる場合、この酸化工程の条件を適当に設定することにより、白色度(すなわち、可視光領域の低波長部分での反射率)が高い樹脂組成物を得やすくなる。また、かかる酸化工程の条件の定め方により、粗大粒子の生成を抑制して、所望の平均粒径を得やすくなる。
【0086】
充填材Aとして使用できる酸化チタンとしては、例えば、塩素法で製造されたものとしては、石原産業株式会社製の「TIPAQUE CR−60」や、「TIPAQUE CR−58」を挙げることができる。また、硫酸法で製造されたものとしては、テイカ株式会社製の「TITANIX JR−301」や「WP0042」、堺化学工業株式会社製の「SR−1」、「SR−1R」、「D−2378」等を挙げることができる。
【0087】
<充填材B>
【0088】
この実施の形態の製造方法では、上述の充填材Aに加えて、下流供給部107−3から充填材Bを供給することができる。充填材Bは、例えば、この実施の形態に係る樹脂組成物を用いて作製された反射板の機械特性を向上させたい場合等に、供給される。
【0089】
充填材Bとしては、例えばガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、チタン酸繊維、ウォラストナイト、アスベスト、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機繊維や、二酸化ケイ素、カオリン、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、ドロマイト、各種金属粉末、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、焼石膏等の粉末や、炭化ケイ素、アルミナ、ボロンナイトライト、ホウ酸アルミニウムや窒化ケイ素等の、粉粒状、板状、ウィスカー状の無機化合物を使用できる。
【0090】
これらの中でも、樹脂組成物の性能低下を抑えつつ実用的な機械強度を反射板に与えるという観点からは、ガラス繊維やチタン酸繊維、ウォラストナイト等の無機繊維、二酸化ケイ素やホウ酸アルミニウム、窒化ケイ素等の粉粒状、板状、ウィスカー状の無機化合物またはタルクが好ましい。
【0091】
充填材Bには、集束剤を使用してもよいが、液晶ポリエステルの耐熱性の低下を抑制するという観点からは、集束剤の使用量を少なくする方が好ましい。
【0092】
充填材Bとしては、体積平均粒径を20μm以上とすることが望ましい。平均粒径の比較的大きいものを使用することにより、分散性やフィード性を上述の充填材Aよりも優れたものとすることができる。ここで、体積平均粒径は、上述の充填材Aの場合と同様にして測定した、最長寸法の平均粒径である。
【0093】
充填材Bの配合量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100質量部に対して、5〜100質量部が望ましく、5〜90質量部が特に望ましい。充填材Bの配合量が多すぎると、充填材Aが高充填されている場合に樹脂組成物の特性低下が無視できなくなったり、小型成形品を成形する場合の成形加工性が顕著となったりするためである。
【0094】
<添加剤>
【0095】
この実施の形態の製造方法では、上述の充填材A、Bに加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、例えば、フッ素樹脂、高級脂肪酸エステル化合物、脂肪酸金属石鹸類等の離型改良剤や、染料、顔料等の着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤等の通常の添加剤等を添加してもよい。また、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等の外部滑剤効果を有する添加剤を添加してもよい。
【0096】
<樹脂組成物の製造工程>
【0097】
次に、この実施の形態に係る樹脂組成物の製造工程を説明する。
【0098】
まず、シリンダー101、ダイス13の加熱を開始する。この加熱には、ヒーター106、111が用いられる。ヒーター106の設定温度は、熱可塑性樹脂としての液晶ポリエステルの流動温度(上述)をTmとして、Tm±50℃とすることが望ましい。
【0099】
シリンダー101が加熱されると、次に、モーター104の駆動を開始する。これにより、スクリュー102の回転が、開始される。
【0100】
そして、第1供給処理すなわち上流供給部107−1からシリンダー101内への熱可塑性樹脂(ここでは液晶ポリエステル)の供給を開始し、さらに、第2供給処理すなわち中間供給部107−2からシリンダー101内への充填材A(ここでは酸化チタン)の供給を開始する。これにより、液晶ポリエステルと酸化チタンとがスクリュー102で混練されて、液晶ポリエステル内に酸化チタンが拡散される。
【0101】
上述のように、この実施の形態の二軸押出造粒機100はニーディング部103−1、103−2、103−3を備えているので、液晶ポリエステルと酸化チタンとを効率良く混練することができ、したがって酸化チタンの分散性を向上させることができる。
【0102】
混練された液晶ポリエステルおよび酸化チタンは、下流側に徐々に移動して、ノズル110から押し出される。
【0103】
スクリュー102の回転速度や、モーター104の許容トルクは、大きい方が望ましい。これらの値が大きい方が、ノズル110からの吐出量が多くなって、生産性が向上するからである。また、生成される樹脂組成物が著しい熱履歴を受けないようにする上で、押出速度がなるべく速くなるようにスクリュー102の回転速度を設定することが望ましい。
【0104】
従来の樹脂組成物製造工程(すなわち、液晶ポリエステルおよび酸化チタンの両方を上流供給部107−1からシリンダー101内に供給する製造工程)では、酸化チタンの充填量(供給量)が多い場合等に、スクリュー102に対する噛み込み不良が発生し、液晶ポリエステルおよび酸化チタンの下流方向への送りが十分に行われなくなっていた。このため、液晶ポリエステルおよび酸化チタンが上流供給部107−1付近に滞留してしまい、生産性の低下や樹脂組成のばらつきの原因になっていた。これに対して、この実施の形態の製造工程では、上流供給部107−1から液晶ポリエステルを供給し且つ中間供給部107−2から酸化チタンを供給することとしたので、上流供給部107−1での噛み込み不良が発生し難い。そして、スクリュー102によって液晶ポリエステルが移動する途中で酸化チタンを供給することができる。この結果、この実施の形態によれば、生産性を向上させることができるとともに、樹脂組成のばらつきを抑えることができ、さらに、酸化チタンの分散性を向上させることができる。
【0105】
ここで、この実施の形態では、酸化チタンの一部を液晶ポリエステルとともに上流供給部107−1から供給することも可能である。上流供給部107−1から供給される酸化チタンの量が十分に少ない場合は、噛み込み不良は発生せず、生産性の低下等を招くおそれは無いからである。すなわち、噛み込み不良等の不都合が生じない範囲内であれば、酸化チタンの一部を上流供給部107−1から供給してもよい。不都合が生じない供給量は、熱可塑性樹脂や充填物Aの種類や各種製造条件等に応じて決まる。
【0106】
酸化チタンの一部を上流供給部107−1から供給する場合、予め、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、タンブラー等を用いて液晶ポリエステルと酸化チタンを混合してから、該混合物を上流供給部107−1に投入するすることが望ましい。これにより、酸化チタンの分散性をさらに向上させることができる。
【0107】
また、液晶ポリエステルの一部を中間供給部107−2から供給することとしても良い。
【0108】
さらに、この実施の形態では、必要に応じて、下流供給部107−3からシリンダー101内に充填材Bを供給することができる。上述のように、下流供給部107−3は、上流供給部107−1や中間供給部107−2よりも、下流側に設けられている。その理由は、充填材Aを多量に供給する場合、かかる充填材Aの分散率を高めるためにはスクリュー102を用いて強く混練する必要が生じ、このため、充填材Bの成分を損なうおそれが生じるためである。例えば、充填材Aが酸化チタンで充填材Bがガラス繊維等の繊維状フィラーの場合、かかる充填材Bを液晶ポリエステル或いは酸化チタンの同じ供給部から供給すると(すなわち、上流供給部107−1または中間供給部107−2から供給すると)、繊維状充填材Bが折れ易くなり、その結果、充填材Bを拡散することによる効果(例えば、樹脂組成物で形成された反射板の機械的強度を高めるという効果)が減少してしまう。これに対して、この実施の形態では、上流供給部107−1や中間供給部107−2よりも下流側から充填材Bを供給することとしたので充填材Bが損なわれ難く、したがって充填材Bを拡散することによる効果を十分に確保することができる。
【0109】
なお、充填材Bの一部を上流供給部107−1や中間供給部107−2から供給することにしてもよいが、充填材Bの90%以上を下流供給部107−3から供給することが望ましい。
【0110】
また、この実施の形態では、熱可塑性樹脂(ここでは液晶ポリエステル)の90%以上を上流供給部107−1および中間供給部107−2から供給し、充填材Aの90%以上を上流供給部107−1および中間供給部107−2から供給することが望ましく、熱可塑性樹脂の60%以上を上流供給部107−1から供給し、充填材Aの30〜70%を中間供給部107−2から供給することがより望ましい。
【0111】
以上のようにしてノズル110から押し出されたストランドは、種々公知の手段によって切断されて、ペレット状の造粒物(すなわち「ペレット」)に加工される。ストランドの切断に当たっては、予めストランドを空冷或いは水冷して固化させてもよい。切断に用いるカッターは特に限定されないが、一般には、回転刃と固定刃とを組み合わせてなるカッターが使用される。
【0112】
上述の添加剤を樹脂組成物に添加する場合は、充填材A或いは充填材Bとともに供給部107−2、107−3から供給してもよいし、ペレットに混ぜ込むこととしてもよい。ペレットから反射板を作製する場合には、ペレットに添加剤を混ぜ込む方が、良好な反射率を得やすくなる。
【0113】
<反射板の製造工程>
【0114】
この実施の形態では、上述のペレットを成形することにより、反射板を製造する。この実施の形態によれば、充填材Aを均一性良く分散させた樹脂組成物を使用して、反射率や熱伝導性等の特性に優れた反射板を得ることができる。
【0115】
成形方法としては、種々の慣用技術を使用することができ、特に限定されない。成型方法としては、例えば射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法等を用いることができるが、射出成形が特に好ましい。射出成形を行うときの成形温度(射出成形器に設けられるノズルの設定温度)は、液晶ポリエステルの流動温度をTmとして、Tm−20℃〜Tm+50℃とすることが望ましく、Tm−15℃〜Tm+30℃の範囲とすることがより望ましく、Tm−10℃〜Tm+20℃とすることが特に望ましい。成形温度が低すぎると液晶ポリエステルの流動性が低下して成形性の悪化や反射板強度の低下を招くおそれがあり、また、成形温度が高すぎると液晶ポリエステルの劣化が激しくなって反射率の低下を招くおそれがあるためである。
【0116】
このような製造方法により、薄肉部の機械的強度が十分に高い反射板を製造することができる。かかる薄肉部の厚さは、0.03mm〜3.0mmとすることが好ましく、0.05〜2mmとすることがより好ましく、0.05〜1mmとすることが特に好ましい。
【0117】
<発光装置>
【0118】
上述のようにして製造した反射板は、例えば、電気、電子、自動車、機械等の分野で使用する光反射板に使用でき、特に、可視光用の反射板として好適である。例えばハロゲンランプやHID(High Intensity Discharge)ランプ等の光源装置のランプリフレクターや、LED(Light Emitting Diode)や有機EL(Electroluminescence)等の発光素子を用いた発光装置や表示装置の反射板として、好適である。
【0119】
特に、例えばLED素子を用いた発光装置では、製造時の素子実装工程や半田付け工程等で反射板が高温に曝されることになるが、この実施の形態の反射板は高温プロセスでブリスター等の変形を生じ難いという利点を有している。したがって、この実施の形態の反射板を用いることにより、輝度等の特性に優れた発光装置を得ることができる。
【実施例】
【0120】
以下、本発明の実施例として、上記実施の形態の製造方法におけるフィード性の評価結果について、表1を用いて説明する。本実施例において、製造条件等は、次のとおりである。
【0121】
二軸押出造粒機としては、東芝機械株式会社製のTEM41SS(C10からC22の13バレル構成)と、アイ・ケー・ジー株式会社製のPMT47(C0からC9の10バレル構成)とを使用した。
【0122】
これらの二軸押出造粒機に、それぞれ上述の上流供給部、中間供給部、下流供給部を設けた。表1では、各供給部の設置位置を対応するバレルの番号で示している。
【0123】
吐出量は、二軸押出造粒機に投入した熱可塑性樹脂および充填材A、Bの1時間あたりの総質量(単位:kg/h)を示している。
【0124】
フィード性の評価結果は、機械性能を考慮した量産性の観点から、優れるものを◎、通常程度のものを○、やや劣るものを△、劣るものを×とした。
【0125】
充填材Aとしては、「TIPAQUE CR−60」(以下、単に「CR−60」と記す)と「TIPAQUE CR−58」(以下、単に「CR−58」と記す)を使用した(共に石原産業株式会社製)。CR−60は、アルミナ表面処理を施した酸化チタンであり、平均粒径は0.2μmであった。また、CR−58は、アルミナ表面処理を施した酸化チタンであり、平均粒径は0.3μmであった。
【0126】
充填材Bとしては、ガラス繊維である、CS03JAPX−1(オーウェンスコーニング株式会社製)、EFDE90−01(セントラル硝子株式会社製)、EFH75−01(セントラル硝子株式会社製)を使用した。
【0127】
以下、表1の評価に使用した各サンプルの製造方法について説明する。
(1)実施例1
【0128】
まず、攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および環流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、テレフタル酸358.8g(2.16モル)、イソフタル酸39.9g(0.24モル)および無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込み、1−メチルイミダゾールを0.2g添加し、反応器内を十分に窒素ガスで置換した。次いで、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、その温度を保持して1時間環流させた。
【0129】
続いて、1−メチルイミダゾールを0.9g添加し、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了として室温まで冷却することにより、プレポリマーを得た。
【0130】
次いで、このプレポリマーを粗粉砕機で粉砕し、粉砕後の粉末を窒素雰囲気下で室温から250℃まで1時間かけて昇温し、さらに250℃から305℃まで5時間かけて昇温し、305℃で3時間保持することで固相重合を行った。その後、これを冷却することにより、液晶ポリエステルを得た。以下、この液晶ポリエステルを、「液晶ポリエステル1」と記す。液晶ポリエステル1の流動温度は、357℃であった。
【0131】
この液晶ポリエステル1に対して、二軸押出機TEM41SSを用い、表1に示す供給箇所と配合量で充填材A、Bを供給し、液晶ポリエステル樹脂組成物を溶解押出してストランドを得、かかるストランドを切断することによりペレットを製造した。
(2)実施例2、3、5、比較例2、3、参考例2
【0132】
上述の液晶ポリエステル1と、各種充填材をタンブラーミキサーを用いて混合した後、二軸押出機TEM41SSで、表1に示す供給箇所と配合量で充填材A、Bを供給し、液晶ポリエステル樹脂組成物を溶解押出してストランドを得、かかるストランドを切断することによりペレットを製造した。
(3)実施例4
【0133】
まず、攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および環流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)および無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込み、1−メチルイミダゾールを0.2g添加し、反応機内を十分に窒素ガスで置換した。次いで、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、その温度を保持して1時間環流させた。
【0134】
続いて、1−メチルイミダゾールを0.9g添加し、留出する副生酢酸や未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温した。そして、トルクの上昇が認められる時点を反応終了として室温まで冷却することにより、プレポリマーを得た。
【0135】
次いで、このプレポリマーを粗粉砕機で粉砕し、粉砕後の粉末を窒素雰囲気下で室温から250℃まで1時間かけて昇温し、さらに250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することで固相重合を行った。その後、これを冷却することにより、液晶ポリエステルを得た。以下、この液晶ポリエステルを、「液晶ポリエステル2」と記す。液晶ポリエステル2の流動温度は、327℃であった。
【0136】
この液晶ポリエステル2に対して、二軸押出機TEM41SSを用い、表1に示す供給箇所と配合量で充填材A、Bを供給し、液晶ポリエステル樹脂組成物を溶解押出してストランドを得、かかるストランドを切断することによりペレットを製造した。
(4)実施例6、7
【0137】
まず、攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および環流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)および無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込み、1−メチルイミダゾールを0.2g添加し、反応機内を十分に窒素ガスで置換した。次いで、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、その温度を保持して1時間環流させた。
【0138】
続いて、1−メチルイミダゾールを0.9g添加し、留出する副生酢酸や未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温した。そして、トルクの上昇が認められる時点を反応終了として室温まで冷却することにより、プレポリマーを得た。
【0139】
次いで、このプレポリマーを粗粉砕機で粉砕し、粉砕後の粉末を窒素雰囲気下で室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から240℃まで0.5時間かけて昇温し、240℃で10時間保持することで固相重合を行った。その後、これを冷却することにより、液晶ポリエステルを得た。以下、この液晶ポリエステルを、「液晶ポリエステル3」と記す。液晶ポリエステル3の流動温度は、291℃であった。
【0140】
この液晶ポリエステル3と液晶ポリエステル2に対して、二軸押出機TEM41SSを用い、表1に示す供給箇所と配合量で充填材A、Bを供給し、液晶ポリエステル樹脂組成物を溶解押出してストランドを得、かかるストランドを切断することによりペレットを製造した。
(5)比較例1、参考例1
【0141】
上述の液晶ポリエステル1と、各種充填材をタンブラーミキサーを用いて混合した後、二軸押出機PMT47で、表1に示す供給箇所と配合量で充填材A、Bを供給し、液晶ポリエステル樹脂組成物を溶解押出してストランドを得、かかるストランドを切断することによりペレットを製造した。
【0142】
表1の比較例1〜3からわかるように、従来の製造方法(液晶ポリエステルおよび全ての酸化チタンを上流供給部から供給する方法)では、酸化チタンの供給量が少ない場合には高いフィード性を得られるが(比較例2)、酸化チタンの供給量が多くなるほどフィード性が悪化した(比較例1、3)。
【0143】
これに対して、実施例1〜7では、酸化チタンの供給量の多少に拘わらず、優れたフィード性を得ることができた。すなわち、表1からわかるように、実施例1〜7のフィード性は、酸化チタンを充填しない場合(参考例1、2参照)と同等であった。
【表1】

【0144】
以上説明したように、この実施の形態によれば、分散工程を、上流側から熱可塑性樹脂を供給する処理(第1供給処理)と、下流側から充填材を供給する処理(第2供給処理)とに分けたので、充填材を従来よりも均一に分散させることができるとともに、噛み込み不良を抑制することができた。
【0145】
したがって、この実施の形態によれば、光反射率や熱伝導率等の特性むらが少ない樹脂組成物を安価に提供することができる。
【0146】
その結果、光反射率や熱伝導率等の特性むらや製品ばらつきが少ない反射板を安価に提供することができ、これにより、高特性の発光装置を安価に提供することができる。
【符号の説明】
【0147】
100……二軸押出造粒機
101……シリンダー
102……スクリュー
103−1、103−2、103−3……ニーディングディスク
104……モーター
105……変速機
106……ヒーター
107−1……上流供給部
107−2……中間供給部
107−3……下流供給部
108−1、108−2、108−3……ベント
109……ダイス
110……ノズル
111……ダイス用ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー内に設けられたスクリューで熱可塑性樹脂および充填材を上流側から下流側に流動させて押出口から押し出すことにより、該熱可塑性樹脂内に該充填材を分散させる樹脂組成物の製造方法であって、
前記シリンダーに配置された第1供給部から、前記熱可塑性樹脂を供給し、
前記シリンダーの、前記第1供給部と前記押出口との中央よりも上流側に配置された第2供給部から、前記充填材を供給する
ことを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第1供給部から、全ての前記熱可塑性樹脂および一部の前記充填材を供給し、且つ、
前記第2供給部から、残りの前記充填材を供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記シリンダー内に供給される前記熱可塑性樹脂と前記充填材との比が、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して前記充填材20質量部以上200質量部以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記充填材の体積平均粒径が0.05μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が液晶ポリエステルであり、且つ、前記充填材が無機物質であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記充填材が、酸化チタンであることを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記充填材が、酸化アルミニウムで表面処理された酸化チタンであることを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記充填材が、塩素法により製造された酸化チタンであることを特徴とする請求項5に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記シリンダーの、前記第2供給部よりもさらに下流側の第3供給部から、他の種類の充填材を供給する第3供給処理をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記他の種類の充填材がガラス繊維であることを特徴とする請求項9に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法により製造されたことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の樹脂組成物を形成してなることを特徴とする反射板。
【請求項13】
発光素子と、該発光素子から放射された光を反射する反射板とを備える発光装置において、
前記反射板が請求項11に記載の樹脂組成物を形成してなることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−26579(P2011−26579A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146553(P2010−146553)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】