説明

樹脂組成物の製造方法及び成形体

【課題】生分解性樹脂の分散性が良好な樹脂組成物を提供することが可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)生分解性樹脂と、(B)前記(A)生分解性樹脂と反応性を有する化合物とを混練して樹脂組成物前駆体を製造する第一混練工程と、前記樹脂組成物前駆体と、(C)ポリオレフィン系樹脂と、を混練する第二混練工程と、を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物の製造方法及びこの樹脂組成物により得られる成形体に関するものである。具体的には、生分解性樹脂を含有し、耐衝撃性に優れる樹脂組成物の製造方法及びこの樹脂組成物により得られる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の枯渇の問題、炭酸ガスの排出による地球温暖化問題等から、カーボンニュートラルな材料として、ポリ乳酸やポリブチレンサクシネート等の植物由来の原料から製造される樹脂が注目されている。しかしながら、植物由来の樹脂の機械的強度は低いため、ポリオレフィン系樹脂とあわせて用いることが検討されている。
例えば、特許文献1には、ポリオレフィン樹脂、生分解性樹脂(脂肪族ポリエステル系生分解性ポリマー)、及び酸又はエポキシ基含有ポリオレフィンを含有する樹脂組成物が開示されている。この特許文献1には、酸又はエポキシ基含有ポリオレフィンを使用することで、加工性や耐衝撃性、弾性率等の物性バランスに優れた組成物及び成形体を提供することが可能となる、と記載されている。
【特許文献1】特開2006−077063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂組成物は、生分解性樹脂の分散性が十分でなく、成形体を製造した場合に得られた成形体の機械的強度が所望の水準に満たない場合がある。
以上の従来技術の問題に鑑み、本発明は、生分解性樹脂の分散性が良好な樹脂組成物を提供することが可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、生分解性樹脂と、ポリオレフィン系樹脂との混練をある特定の方法で混練することにより生分解性樹脂の分散性を改善することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
本発明は(A)生分解性樹脂と、(C)ポリオレフィン系樹脂とを含有する樹脂組成物の製造方法であって、前記(A)生分解性樹脂と、(B)前記(A)生分解性樹脂と反応性を有する化合物とを混練して樹脂組成物前駆体を製造する第一混練工程と、前記樹脂組成物前駆体と、前記(C)ポリオレフィン系樹脂と、を混練する第二混練工程と、を有する樹脂組成物の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、生分解性樹脂の分散性が良好な樹脂組成物を提供することが可能となる。これにより、得られる成形体の衝撃強度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[樹脂組成物の製造方法]
〔第一混練工程〕
本発明に係る樹脂組成物の製造方法は、第一混練工程と第二混練工程とを有する。
「第一混練工程」では、(A)生分解性樹脂(以下、(A)成分ともいう)と、(B)前記(A)生分解性樹脂と反応性を有する化合物(以下、(B)成分ともいう)とを混練して樹脂組成物前駆体を製造する。生分解性樹脂と、この生分解性樹脂と反応性を有する化合物とを混練して樹脂組成物前駆体を製造することにより、生分解性樹脂とポリオレフィン系樹脂との相容性を向上させることが可能となる。
【0008】
<(A)成分>
第一混練工程において使用する(A)生分解性樹脂は、JIS K6953に規定された方法に準拠して測定した生分解度が前記試験法に規定された期間内(180日間)で60%以上である樹脂である。(A)生分解性樹脂は一般に、植物由来の原料から製造される樹脂である。植物由来の原料から製造される樹脂としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(ブチレンサクシネート−(δ−オキシカプロエート))、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル等が挙げられる。また、この(A)成分は、生分解性樹脂のポリオレフィン系樹脂との共重合体や、生分解性樹脂のポリオレフィン系樹脂とのグラフト重合体であってもよい。
これらのうち剛性が高く、分子末端にカルボキシル基を有しているため反応性が高いこと、さらに入手し易いこと、等の特徴を有するポリ乳酸を用いることが好ましい。また、(A)生分解性樹脂は単独又は組み合わせて用いることが可能である。
(A)生分解性樹脂としてのポリ乳酸は、それを構成している乳酸成分中のL体の比率が94モル%以上のものであることが好ましい。L体の比率をこのような範囲とすることにより融点の低下を防ぐことが可能となる。また、(A)生分解性樹脂は、ポリ乳酸と他の生分解性樹脂との共重合体であってもかまわない。他の生分解性樹脂としては、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(ブチレンサクシネート−(δ−オキシカプロエート))、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸エステル等が挙げられる。
【0009】
(A)生分解性樹脂の重量平均分子量としては、1万〜50万あることが好ましく、5万〜40万であることがより好ましい。さらに好ましくは7万〜30万である。重量平均分子量が1万以上であると、衝撃強度に優れた成形体を得ることが可能となる。また、重量平均分子量を50万以下であると、(A)生分解性樹脂の分散性が良好となる。
また、(A)生分解性樹脂としてのポリ乳酸は、その分子量は6万以上であることが好ましい。
【0010】
(A)生分解性樹脂の合成方法は限定されない。例えばポリ乳酸は、乳酸からの直接重縮合法、及びラクチドを経由する開環重合法等が挙げられる。
ポリエチレンサクシネート及びポリブチレンサクシネートは、例えば、特開平6−271656号公報に記載の方法により製造することができる。この方法では、(無水)こはく酸とエチレングリコール(又は1,4−ブタンジオール)とをエステル交換してオリゴマーを得、次いで得られたオリゴマーを重縮合する。
また、特開平4−189822号公報や特開平5−287068号公報に記載されているように、ポリエチレンサクシネート及びポリブチレンサクシネートを製造する際にジイソシアナート又はテトラカルボン酸二無水物を架橋剤として用いてもよい。
また、ポリカプロラクトンは、ε−カプロラクトンとエチレングリコール、ジエチレングリコール等のジオールとを触媒の存在下で反応させて得られる。この反応において用いられる触媒としては、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化合物等が挙げられる。これらの触媒を0.1ppm〜5000ppm添加し、100℃〜230℃好ましくは不活性気体中で単量体を重合させることによってポリカプロラクトンが得られる。これらの製法は、例えば、特公昭35−189号、特公昭35−497号、特公昭40−23917号、特公昭40−26557号、特公昭43−2473号、特公昭47−14739号、特開昭56−49720号、特開昭58−61119号等に開示されている。
【0011】
<(B)成分>
本発明では、(B)前記(A)生分解性樹脂と反応性を有する化合物が用いられる。(B)成分としては、エポキシ基を含有する化合物の重合体、不飽和カルボン酸を含有する化合物の重合体から選ばれる一種以上の化合物が挙げられる。
【0012】
(B)成分として用いられるエポキシ基を含有する化合物の重合体としては、エチレンに由来する単量体単位と、エポキシ基を有する単量体に由来する単量体単位と、を有する共重合体が挙げられる。エポキシ基を有する単量体としては、例えば、グリシジルメタアクリレート、グリシジルアクリレート等のα,β−不飽和グリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル等のα,β−不飽和グリシジルエーテルを挙げることができ、好ましくはグリシジルメタアクリレートである。このような共重合体としては、具体的には、グリシジルメタアクリレート−エチレン共重合体(例えば、住友化学製 商品名ボンドファースト)等が挙げられる。
【0013】
また、エポキシ基を有する化合物としては、グリシジルメタアクリレート−スチレン共重合体やグリシジルメタアクリレート−アクリロニトリル−スチレン共重合体、グリシジルメタアクリルレート−プロピレン共重合体が挙げられる。
また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、水添又は非水添のスチレン−共役ジエン系等に、エポキシ基を有する単量体を、溶液若しくは溶融混練でグラフト重合させて得られたグラフト重合体を用いることも可能であるが、このグラフト重合体と上記エポキシ基を含有する化合物の重合体とを比較すると、エポキシ基を有する単量体の付加量をより多くすることができることから、エポキシ基を含有する化合物の重合体を用いることがより好ましい。
【0014】
また、(B)成分として用いられるエポキシ基を含有する化合物の重合体は、エポキシ基を含有する化合物以外の他の単量体に由来する単量体単位を有していてもよい。このような単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和ビニルエステル等が挙げられる。
【0015】
エポキシ基を含有する化合物の重合体において、エポキシ基を有する単量体に由来する単量体単位の含有量は、0.01質量%〜30質量%であり、より好ましくは0.1質量%〜20質量%である(ただし、エポキシ基を有するエチレン系重合体中の全単量体単位の含有量を100質量%とする)。なお、エポキシ基を有する単量体に由来する単量体単位の含有量は、赤外法により測定される。
【0016】
エポキシ基を含有する化合物の重合体のメルトフローレイトは、0.1g/10分〜300g/10分であり、好ましくは0.5g/10分〜80g/10分である。ここでいうメルトフローレイトとは、JIS K 7210(1995)に規定された方法によって、試験荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定される。
【0017】
エポキシ基を含有する化合物の重合体は、例えば、高圧ラジカル重合法、溶液重合法、乳化重合法等により、エポキシ基を有する単量体とエチレンと、必要に応じて他の単量体とを共重合する方法、エチレン系樹脂にエポキシ基を有する単量体をグラフト重合させる方法等により製造することができる。
【0018】
また、不飽和カルボン酸を含有する化合物の重合体としては、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸三元共重合体(住友化学株式会社製 商標名ボンダイン)等が挙げられる。
エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸三元共重合体は、高圧ラジカル共重合によって製造される共重合体である。α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステルとしては、炭素数が3個〜8個の不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸等のアルキルエステルであって、具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソブチル等が挙げられる。これらのうちでも特にアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチルが好ましい。これらのコモノマーは1単独又は二種以上組み合わせて用いることもできる。
なお、エポキシ基を含有する化合物の重合体と不飽和カルボン酸を含有する化合物の重合体とを比較すると、生分解性樹脂との反応性の観点からエポキシ基を含有する化合物の重合体を用いることがより好ましい。
【0019】
不飽和カルボン酸を含有する化合物の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、水添及び非水添のスチレン−共役ジエン系ブロックエラストマー等に、不飽和カルボン酸を溶液若しくは溶融混練でグラフト重合させた物質を用いることも可能であるが、このグラフト共重合体と上記共重合体ではとを比較すると、不飽和カルボン酸の付加量が多くできるという点で共重合体を用いることがより好ましい。
なお、上記成分(B)は、JIS K6953に規定された方法に準拠して測定した生分解度が前記試験法に規定された期間(180日間)内で60%未満である。
【0020】
また、第一混練工程では、前記(B)成分とともに、前記(A)生分解性樹脂と相容性を有する化合物を添加してもよく、このような化合物としては、オキシメチレン、ラクチド、ヒドロキシアルカノエート、でんぷんから選ばれる1種以上の化合物を用いることが可能である。
【0021】
「第一混練工程」では、上記(A)成分と上記(B)成分とを混練して樹脂組成物前駆体を製造する。
第一混練工程の混練温度は(A)成分と(B)成分のうちの融点が高い方の成分の融点温度以上であり、(当該融点プラス10℃)以上、(当該融点温度プラス150℃)以下である。好ましくは(当該融点プラス40℃)以上、(当該融点プラス100℃以下)である。第一混練工程の混練温度をこのような温度範囲とすることにより、(A)成分と(B)成分との相容化や反応を十分に進行させることが可能となる。例えば、(A)成分にポリ乳酸系樹脂、(B)成分にエポキシ基を含有する化合物の重合体、(C)成分にポリプロピレン系樹脂を用いた場合、第一混練工程の混練温度は200℃以上であることが好ましく、230℃以上であることがより好ましく、235℃以上であることがさらに好ましい。なお、混練温度は、混練機のシリンダに設けられている樹脂出口から押し出されて直ぐの溶融状態の樹脂組成物前駆体に熱電対を接触させて測定することが可能である。
【0022】
また、第一混練工程の混練時間は、(A)成分及び(B)成分が熱劣化せず、かつ、両成分の反応がよりよく進行するように適宜決定すればよいが、1秒〜1800秒であり、2秒〜600秒であることが好ましく、3秒〜300秒であることがより好ましい。混練時間を1秒以上とすることにより、(A)成分と(B)成分との相容化や反応を十分に行うことが可能となる。これによって得られる成形体中の(A)成分の分散粒子径が大きくなり、機械的強度が低くなることを防止することが可能となる。混練時間を1800秒以下とすることにより、各成分が熱劣化してしまうことを防止することが可能となる。これによって、得られる成形体の機械的強度が低下したり、外観が悪化してしまうことを防止することが可能となる。
【0023】
混練時間は、バッチ式混練機の場合には、溶融樹脂を混練している時間であり、連続式混練機の場合には、滞留時間分布のピーク時間である。ピーク時間を得る方法としては、(A)成分と(B)成分と同時に顔料を連続式混練機にホッパーから投入し、混練機の出口から押し出された溶融樹脂を一定時間毎にサンプリングし、着色度が最も高い時間を求める方法が挙げられる。
【0024】
〔第二混練工程〕
そして「第二混練工程」では、第一混練工程により得られた樹脂組成物前駆体と、(C)ポリオレフィン系樹脂とを混練して樹脂組成物を製造する。
【0025】
<(C)成分>
(C)ポリオレフィン系樹脂としては、オレフィンの単独重合体、2種以上のオレフィンの共重合体が挙げられる。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂などが挙げられる。このうち、ポリプロピレン樹脂であることが好ましい。これらの(C)ポリオレフィン樹脂は、単独で用いてもよく又は二種以上を併用してもよい。
【0026】
ポリエチレン樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。エチレン−α−オレフィン共重合体に用いられるα−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。中でも、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
【0027】
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体成分又は主にプロピレンからなる共重合体成分(以下、重合体成分(I)ともいう)と、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分(以下、共重合体成分(II)ともいう)からなるポリプロピレン系共重合体等が挙げられる。これらのポリプロピレン樹脂は、単独で用いてもよく又は2種以上を併用してもよい。
【0028】
ポリプロピレン樹脂を構成するα−オレフィンは、炭素数4〜12のα−オレフィンであり、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。このうち1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
【0029】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム共重合体等が挙げられる。また、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられる。
【0030】
上記重合体成分(I)と、上記共重合体成分(II)とからなるポリプロピレン系共重合体の重合体成分(I)における主にプロピレンからなる共重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分等が挙げられる。また、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分(前記共重合体成分(II))としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。なお、上記共重合体成分(II)におけるエチレン及び/又はα−オレフィンの含有量は、10質量%〜70質量%である。
【0031】
そして、前記重合体成分(I)と前記共重合体成分(II)からなるポリプロピレン系共重合体としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体等が挙げられる。
【0032】
(C)ポリオレフィン樹脂として用いられるポリプロピレン樹脂は、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、又は、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体であることが好ましい。
【0033】
(C)ポリオレフィン樹脂の製造方法は、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法による製造方法が挙げられる。重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒、チーグラー・ナッタ型触媒が挙げられる。また、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、又はシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物からなる触媒系、又は、これらの触媒を無機粒子等に担持させた担持型触媒系等が挙げられる。なお、成分(C)は、JIS K6953に規定された方法に準拠して測定した生分解度が前記試験法に規定された期間(180日間)内で60%未満である。
【0034】
また、重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒によるスラリー重合法、溶媒重合法、無溶媒による液相重合法、気相重合法、又はそれらを連続的に行う気相−気相重合法、液相−気相重合法等が挙げられ、これらの重合方法は、回分式(バッチ式)であってもよく、連続式であってもよい。また、(C)ポリオレフィン樹脂を一段階で製造する方法であってもよく、二段階以上の多段階で製造する方法であってもよい。
特に、上記重合体成分(I)と上記共重合体成分(II)からなるポリプロピレン系共重合体の製造方法として、好ましくは、前記重合体成分(I)を製造する段階と、前記共重合体成分(II)を製造する段階と、の少なくとも二段階の工程を有する多段階の製造方法が挙げられる。
【0035】
(C)ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(以下、MFRともいう)は、0.01g/10分〜400g/10分である。MFRが400g/10分を超えた場合、機械的強度が低下する傾向にある。そして、機械的強度や生産安定性の観点から、1g/10分〜400g/10分であることが好ましく、5g/10分〜200g/10分であることがより好ましく、10g/10分〜150g/10分であることが更に好ましい。本発明におけるMFRは、ASTM D1238に従って、ポリプロピレンの場合には230℃、21.2N荷重で、ポリエチレンの場合には190℃、21.2N荷重で測定した値である。
【0036】
<(D)成分>
(A)成分の分散粒子径を小さくし、得られる成形体の耐衝撃性を向上させ、かつ、(C)ポリオレフィン系樹脂との相容性をより向上させるために、第一混練工程中或いは第一混練工程と第二混練工程との間に、(D)エラストマー類(以下、(D)成分ともいう)を更に添加してもよい。更には、全量の一部の(D)成分を第一混練工程中に添加し、残りの(D)成分を第一混練工程と第二混練工程との間に添加する態様も採用することができる。
(D)エラストマー類は、(C)成分以外の共重合体を用いる。例えば、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、非晶性又は低結晶性のエチレン系エラストマー、ブタジエン−スチレンエラストマー、ブタジエン−アクリロニトリルエラストマー、水添又は非水添のスチレン−共役ジエン系ブロックエラストマー、ポリエステルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム等が挙げられる。エラストマー類として、好ましくは非晶性又は低結晶性のエチレン系エラストマーである。
【0037】
上記エチレン系エラストマーは、エチレンに由来する単量体単位を主成分として含有するエラストマーであり、例えば、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチレン系不飽和エステル共重合体等が挙げられる。
【0038】
このようなエチレン系重合体として好ましくは、エチレンと1種類以上のα−オレフィンとの共重合体であるエチレン−α−オレフィン共重合体である。このα−オレフィンとして好ましくは、炭素数3〜12のα−オレフィンである。具体的には、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、ノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
【0039】
水添又は非水添のスチレン−共役ジエン系ブロックエラストマーとしては、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレンブテン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体等が挙げられる。
【0040】
エチレン系エラストマーの密度は、得られる成形体の機械的強度の観点から、好ましくは850kg/m3〜910kg/m3である。より好ましくは855kg/m3〜900kg/m3である。例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体の密度の場合、好ましくは850kg/m3以上であり、得られる樹脂組成物の引張破断伸びの観点から、好ましくは910kg/m3以下である。より好ましくは855kg/m3〜900kg/m3である。ここでいう密度とは、JIS K 6760−1981に規定された方法により、アニール無しで測定される。
【0041】
エチレン系エラストマーのMFRは、得られる成形体の機械的強度の観点から、好ましくは0.1g/10分〜100g/10分である。より好ましくは0.3g/10分〜50g/10分であり、さらに好ましくは0.5g/10分〜40g/10分である。例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体のMFRは、好ましくは0.1g/10分以上であり、得られる成形体の機械的強度を高める観点から100g/10分以下である。より好ましくは0.3g/10分〜50g/10分であり、さらに好ましくは0.5g/10分〜40g/10分である。
ここでいうMFRとは、JIS K 7210(1995)に規定された方法によって、試験荷重21.18N、試験温度190℃の条件で測定される。
【0042】
エチレン系エラストマーの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、得られる成形体の機械的強度の観点から、好ましくは1.8〜3.5であり、より好ましくは1.8〜2.5であり、最も好ましくは1.8〜2.2である。例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布は、好ましくは1.8〜3.5であり、より好ましくは1.8〜2.5であり、最も好ましくは1.8〜2.2である。なお、成分(D)は、JIS K6953に規定された方法に準拠して測定した生分解度が前記試験法に規定された期間(180日間)内で60%未満である。
【0043】
エチレン系エラストマーの融解温度は、得られる成形体の機械的強度の観点から好ましくは110℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。エチレン系エラストマーの融解熱量は、得られる樹脂組成物の引張破断伸びの観点から、好ましくは110J/g以下であり、より好ましくは100J/g以下である。例えばエチレン−α−オレフィン共重合体の融解温度は、110℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。エチレン−α−オレフィン共重合体の融解熱量は、好ましくは110J/g以下であり、より好ましくは100J/g以下である。
【0044】
エチレン系エラストマーの製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。
例えばエチレン−α−オレフィン共重合体は、チーグラー・ナッタ系触媒、メタロセン錯体や非メタロセン錯体等の錯体系触媒を用いた、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、気相重合法、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法、溶液重合法等により製造することが好ましい。中でもチーグラー・ナッタ系触媒や錯体系触媒を用いて重合する方法を用いることが好ましく、メタロセン触媒の存在下に重合する方法を用いることが好ましい。
【0045】
第二混練工程の混練温度としては(A)成分、(B)成分及び(C)成分のいずれかの成分のうちで、融点が最も高い成分の融点以上であって、(当該融点プラス10℃)以上、(当該融点プラス150℃以下である。また、好ましくは(当該融点プラス40℃)以上、(当該融点プラス100℃)以下である。第二混練工程の混練温度をこのような温度範囲とすることにより、(A)成分と(B)成分とを(C)成分中に十分に分散させることができ、また、(A)成分と(B)成分の反応を進行させることができる。例えば、(A)成分にポリ乳酸系樹脂、(B)成分にエポキシ基を含有する化合物の重合体、(C)成分にポリプロピレン系樹脂を用いた場合、第二混練工程の混練温度は200℃以上であることが好ましく、230℃以上であることがより好ましく、235℃以上であることがさらに好ましい。
【0046】
また、第二混練工程の混練時間は、(A)成分および(C)成分が熱劣化せず、かつ、(A)成分が(C)成分中に十分に分散するように適宜決定すればよいが、1秒〜1800秒であり、2秒〜600秒であることが好ましく、3秒〜300秒であることがより好ましい。混練時間を1秒以上とすることにより、相容化や反応を十分に行うことが可能となる。これによって(A)成分の分散粒子径が大きくなり、機械的強度が低くなることを防止することが可能となる。混練時間を1800秒以下とすることにより、各成分が熱劣化してしまうことを防止することが可能となる。これによって、得られる成形体の機械的強度が低下したり、外観が悪化してしまうことを防止することが可能となる。なお、混練時間は第一混練工程と同様の手順で測定することができる。
【0047】
第一混練工程及び第二混練工程の混練設備は、一般に市販されているものを使用できる。混練設備としては、バッチ式混練設備や連続式混練設備等が挙げられる。バッチ式混練設備としてはバンバリーミキサーが例示され、連続式混練設備としては単軸混練機や二軸混練機が例示される。また、第二混練工程として加工機(射出成形機、Tダイ押出機、ブロー成形機、フィルム成形機)も使用可能である。
【0048】
本発明に係る樹脂組成物の製造方法において、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、および(D)成分の添加量としては、(A)成分、(B)成分、および(C)成分の合計量を100質量%としたとき、(A)成分の添加量が1〜70質量%であり、好ましくは10質量%〜55質量%であり、より好ましくは20質量%〜45質量%である。また(B)成分の添加量は1〜30質量%であり、好ましくは2質量%〜20質量%であり、より好ましくは3質量%〜10質量%である。そして(C)成分の添加量が30〜98質量%であり、好ましくは40質量%〜90質量%であり、より好ましくは50質量%〜80質量%である。(D)成分の量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計100質量%としたときに、0.1〜50質量%であり、好ましくは1〜30質量%である。
【0049】
(A)成分の添加量が過剰であると、分散粒子径が大きくなり、耐衝撃強度が低下する傾向にある。また、(B)成分が過少であると、(A)成分の分散粒子径が大きくなり、耐衝撃強度が低くなる傾向があり、過剰であると成形品表面にゲルが発生し、成形品の外観が悪化する傾向にある。また、(C)成分が過少であると、耐衝撃強度が低くなることや、成形性が損なわれることにより、フローマークなどの外観不良が生じる傾向にある。
【0050】
本発明では上記の成分のほかに、本発明の特徴及び効果を損わない範囲で他の付加的成分を添加してもよい。例えば、酸化防止剤、耐候性改良剤、造核剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、各種着色剤、フィラー(タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、ワラストナイト、硫酸マグネシウムウィスカ等)等が挙げられる。
【0051】
[混練機を用いた樹脂組成物の製造方法]
本発明に係る樹脂組成物の製造は、混練機を用いて行われる。以下、図を用いて詳細に説明する。なお、図中、同じ番号を有する符号は、同一ないし同様の構成要素を示す。
図1は本発明に係る樹脂組成物を製造する混練機を示す図である。混練機1Aは、シリンダ10aとスクリュ20aから構成されている。シリンダ10aは、上流側から下流側に向かって(図に向かって左側から右側)順に、上流側投入口31a、下流側投入口32a、真空ベント101aを備えており、この真空ベント101aの先の一端には樹脂出口40が設けられている。
一方、スクリュ20aは、第一混練部201a及び第二混練部202aを備えている。この第一混練部201aは上流側投入口31aと下流側投入口32aの間に、第二混連部202aは下流側投入口32aと真空ベント101aの間に位置するように設けられている。また混練部は、順フライト、逆フライト、Rニーディングディスク、Nニーディングディスク、Lニーディングディスク、ロータ等を組み合わせて使用される。なお、シリンダ10aは外部ヒータ(図示せず)により加熱可能であり、スクリュ20aの混練部以外には螺旋状の溝が刻まれた順フライトで主に構成されており外部モータ(図示せず)により駆動可能である。
上流側投入口31a及び/又は下流側投入口32aから投入された各成分は、シリンダ10a内で加熱され溶融する。溶融された各成分は、スクリュ20aに刻まれている螺旋状の溝とスクリュ20aの回転により樹脂出口40へ向かって移送される。真空ベント101aは、例えば水封式真空ポンプなどにより真空ベント内は減圧され、混練時に発生する分解成分や揮発成分を除去する。
【0052】
本発明に係る樹脂組成物の製造方法では、まず、上流側投入口31aに、(A)成分と、(B)成分を投入して混練して樹脂組成物前駆体を得る(第一混練工程)。そして所定条件で混練した後に下流側投入口32aに(C)成分を投入し、第一混練工程で得られた樹脂組成物前駆体と合わせて混練する(第二混練工程)。(C)成分については、機械的強度が低下しない範囲の量で、上流側投入口31aから投入してもよい。
【0053】
第一混練工程のシリンダ温度は50℃〜300℃であることが好ましく、100℃〜250℃がより好ましい。シリンダ温度を50℃以上とすることにより、(A)成分と(B)成分との相容化や反応を十分に行うことが可能となる。これによって、得られる成形体の衝撃強度を向上させることが可能となる。そしてシリンダ温度を300℃以下とすることにより、(A)成分や(B)成分が熱により劣化することを防止することが可能となる。
【0054】
また、第一混練工程の混練時間は、1秒〜1800秒であり、2秒〜600秒であることが好ましく、3秒〜300秒であることがより好ましい。
【0055】
第二混練工程のシリンダ温度は、50℃〜300℃であることが好ましく、100℃〜250℃がより好ましい。このような設定温度とすることにより、(C)成分に分散する(A)成分の分散粒子径をより小さくすることができ、また各成分が熱によって劣化してしまうのを防止することが可能となる。
【0056】
また、第二混練工程の混練時間は、1秒〜1800秒であり、2秒〜600秒であることが好ましく、3秒から300秒であることがより好ましい。
【0057】
第一混練工程では、(D)成分及び、(A)成分の分散粒子径が1μm以上にならないような程度の少量の(C)成分を添加して混練してもよい。(D)エラストマー類の添加方法としては、方法(1)(A)成分と、(B)成分と一緒に上流側投入口31aから投入して混練する方法や、方法(2)(A)成分と、(B)成分を混練して樹脂組成物前駆体を製造した後に上流側投入口31a及び/又は下流側投入口32aから投入して混練する方法等が挙げられる。
【0058】
本発明において、混練機は(D)成分を投入するための投入口を備えていてもよい。図2は、エラストマー類を投入するためのエラストマー用投入口33を備えた混練機1Bを示す図である。この混練機1Bのシリンダ10bは、上流側投入口31bと下流側投入口32bの間にエラストマー用投入口33を備えており、スクリュ20bは第一混練部201b、第二混練部202b、及び第三混練部203bを備えている。この混練機1Bを用いる場合、(D)成分は、第一混練部201bにより混練され、製造された樹脂組成物前駆体と良好に混ざりあうよう、上記の方法(2)のように(A)成分と、(B)成分を投入した後に投入されることが好ましい。
【0059】
また(D)成分を投入するタイミングは、第一混練工程終了直後、又は第一混練工程で(A)成分と、(B)成分との混練を開始してから1秒〜1800秒であり、2秒〜600秒であることが好ましく、3秒〜300秒であることがより好ましい。樹脂組成物前駆体と(D)成分との混練時間は、1秒〜1800秒であり、2秒〜600秒であることが好ましく、3秒〜300秒であることがより好ましい。混練時間が1秒未満であると剪断速度と混練時間の積である混練量が不足し、(A)成分の分散粒子径が大きくなり、機械的強度が低くなる傾向がある。混練時間が1800秒を超えると熱劣化により、機械的強度の低下や成形品外観が悪化す
る傾向にある。
【0060】
また、本発明において、混練機は、前述の上流側投入口と下流側投入口の代わりに単一の投入口を有していてもよい。図3に示す混練機1Cは、単一の投入口31cを有している混練機である。この混練機1Cを用いる場合、まず、(A)成分と、(B)成分、必要に応じて(D)成分を投入して混練し(第一混練工程)、最後に(C)成分を投入して混練する(第二混練工程)、という順番で混練を行うことが好ましい。あるいは、(A)成分と、(B)成分を投入して混練し、樹脂組成物前駆体を製造した後に(D)成分を投入して混練し(第一混練工程)、最後に(C)成分を投入して混練する(第二混練工程)、という順番で混練を行うことが好ましい。
第一混練工程及び第二混練工程のシリンダ設定温度は50℃〜300℃であることが好ましく、100℃〜250℃がより好ましい。混練時間は1秒〜1800秒であり、2秒〜600秒であることが好ましく、3秒〜300秒であることが好ましい。
【0061】
混練機1A〜1Cとしては、ホッパーから混練機内に投入された原料をスクリュで混練機内を搬送させる能力、すなわち溶融混練の処理能力が高く、且つ、混練強度の観点から二軸混練機が好ましく、このような混練機としては、日本製鋼所製TEXシリーズ、東芝機械製TEMシリーズ、池貝製PCMシリーズ、ワーナー社製ZSKシリーズ、新神戸製作所製KTXシリーズなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本発明の樹脂組成物の成形方法としては、熱可塑性樹脂に一般に適用される成形法、例えば、射出成形法、押出成形法、中空成形法等の成形法が挙げられる。本発明の樹脂組成物は、引張破断伸び、耐衝撃性及び光沢に優れることから、自動車、家電、産業分野等で広く用いることができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、物性の評価は、以下の方法により行った。
(1)分子量分布測定
高分子材料の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC)を用い、下記の条件により測定した。
装置:Waters社製 150C ALC/GPC
カラム:昭和電工社製Shodex Packed ColumnA−80M 2本
温度:140℃、溶媒:o−ジクロロベンゼン
溶出溶媒流速:1.0ml/分、試料濃度:1mg/ml
測定注入量:400μl、分子量標準物質:標準ポリスチレン
検出器:示差屈折
【0064】
(2)グリシジルメタアクリレートに由来する単量体単位含有量(単位:質量%)
グリシジルメタアクリレートに由来する単量体単位含有量は、高分子材料のプレスシートの赤外吸収スペクトルを測定し、得られた赤外吸収スペクトルの特性吸収の吸光度を測定に使用したシートの厚さで補正して、得られた補正吸光度に基づいて検量線法によりグリシジルメタアクリレートに由来する単量体単位含有量を決定する方法で求めた。なお、グリシジルメタアクリレート特性吸収としては、910cm-1のピークを用いた。
【0065】
(3)示差走査熱量測定(DSC)
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製DSC220C:入力補償DSC)を用い、以下の条件で融解温度と融解熱量を測定した。なお、測定の標準物質にはインジウムを用いた。
(i)試料約5mgを室温から30℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、昇温完了後、5分間保持した。
(ii)次いで、200℃から10℃/分の降温速度で−50℃まで降温し、降温完了後、5分間、保持した。
(iii)次いで、−50℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した。
【0066】
(4)アイゾット衝撃強度(単位:kJ/m2
JIS K 7110(1984)に規定された方法に従って成形体のアイゾッド衝撃強度を測定した。この測定には射出成形により成形された、厚さ3.2mmで、成形の後にノッチ加工された試験片を用いた。測定は23℃及び−30℃の温度で行った。
【0067】
(5)引張伸び(単位:%)
ASTM D638に規定された方法に従って成形体の引張伸びを測定した。射出成形によって成形された厚さ3.2mmの試験片を用いた。引張速度は50mm/分であり、破断時における標線間距離(初期値=50mm)の伸びを評価した。測定は23℃で行った。
【0068】
(6)粒子径測定(単位:μm)
射出成形で得られた長さ127mm×幅12.7mm×厚さ3.2mmの成形体の中央部を樹脂の流動方向に対して垂直の方向から観察できるように切り出し、ミクロトームで切片を作成、RuO4で染色し、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察しモルフォロジー写真を得た。ポリ乳酸は、RuO4で染色され難いので白くなり、一方他の成分は、ポリ乳酸よりも染色されやすいため、着色により判別が容易にされる。
得られた写真を画像解析装置に取り込み閾値化し、未染色のポリ乳酸の分散粒子径を求めた。
【0069】
実施例に使用した材料は、以下のとおりである。
(A)生分解性樹脂((A)成分)
a1:ユニチカ社製「テラマック(登録商標)TE−4000」(ポリ乳酸樹脂)
a2:ユニチカ社製「テラマック(登録商標)TE−2000C」(ポリ乳酸樹脂)
(B)エポキシ基を有するエチレン系重合体((B)成分)
住友化学社製「ボンドファースト(登録商標)E」(エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体、MFR(190℃)=3g/10分、グリシジルメタアクリレートに由来する単量体単位含有量=12質量%)
(C)ポリオレフィン系樹脂((C)成分)
住友化学株式会社製「ノーブレン(登録商標) WPX5343」(ポリプロピレンブロック共重合体、MFR(230℃)=50g/10分)
(D)エラストマー類((D)成分)
d1:住友化学社製「エクセレン(登録商標)FX CX5505」(エチレン−1−ブテン共重合体、1−ブテンに由来する単量体単位含有量=23質量%、MFR(190℃で測定)=16g/10分、密度(d)=880kg/m3、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比=1.8、融解温度=53℃、融解熱量=51J/g)
d2:ダウケミカル社製「エンゲージ(登録商標)EG8100」(エチレン−オクテン共重合体、MFR(190℃で測定)=1.0g/10分)
(E)添加剤
添加剤として、光安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 サノール(登録商標)770)を樹脂組成物100質量部に対して、0.05質量部、紫外線吸収剤(住友化学社製 スミソーブ(登録商標))0.03質量部、帯電防止剤(花王社製 エレクトロストリッパー(登録商標) TS−5)0.3質量部を用いた。
【0070】
[実施例1〜6及び比較例1〜3]
本発明に係る樹脂組成物を次の方法で製造した。
シリンダ内径50mmの二軸混練押出機(東芝機械社製TEM50A)を用い、表1に示す混合割合、混練方法で混練を行った。シリンダ温度は190℃に設定し、押出量50kg/hr、スクリュ回転数200rpmで、樹脂組成物のペレットを得た。実施例1において、混練機出口における樹脂温度は236℃であった。
【0071】
物性評価用試験片は、次の射出成形条件下で作製した。上記で得られた樹脂組成物のペレットを住友重機械社製サイキャップ110/50型射出成形機を用いて、成形温度200℃、金型冷却温度30℃、射出時間15秒、冷却時間30秒で射出成形を行った。得られた射出成形体のアイゾット衝撃強度、ポリ乳酸の分散粒子径を測定した。その結果を表1に示す。

































【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本発明で好ましく用いられる混練機の第一の例を示す図である。
【図2】図2は、本発明で好ましく用いられる混練機の第ニの例を示す図である。
【図3】図3は、本発明で好ましく用いられる混練機の第三の例を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
1A、1B、1C 混練機
10a、10b、10c シリンダ
101a、101b、101c 真空ベント
20a、20b、20c スクリュ
201a、201b、201c 第一混練部
202a、202b 第二混練部
203b 第三混練部
31a、31b 上流側投入口
31c 投入口
32a、32b 下流側投入口
33 エラストマー用投入口
40 樹脂出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)生分解性樹脂と、(C)ポリオレフィン系樹脂とを含有する樹脂組成物の製造方法であって、
前記(A)生分解性樹脂と、(B)前記(A)生分解性樹脂と反応性を有する化合物とを混練して樹脂組成物前駆体を製造する第一混練工程と、
前記樹脂組成物前駆体と、前記(C)ポリオレフィン系樹脂と、を混練する第二混練工程と、を有する樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記第一混練工程において、(D)エラストマー類を更に添加して混練する請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記第一混練工程と前記第二混練工程の間に、前記樹脂組成物前駆体と、(D)エラストマー類と、を混練する工程を更に有する請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記(A)生分解性樹脂は、植物由来の原料から製造される樹脂を含有する請求項1から3いずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記植物由来の原料から製造される樹脂は、ポリ乳酸系樹脂を含有する請求4に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記(B)化合物は、エポキシ基を含有する化合物の重合体および不飽和カルボン酸を含有する化合物の重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有する請求項1から5いずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記(D)エラストマー類は、エチレン系エラストマーを含有する請求項1から6いずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7いずれかに記載の方法により得られる樹脂組成物を成形して得られる成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−155644(P2009−155644A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310767(P2008−310767)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】