説明

樹脂組成物及びその製造方法並びに該樹脂組成物からなるフィルム

【課題】力学特性や生分解性に優れた、脂肪族ポリエステル系樹脂を含有する樹脂組成物を提供すること、特に、引裂き強度が強く、生分解性、成形性、熱収縮性、透明性が良好であり、弾性率が高く皺になりにくいフィルムを与える樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)、澱粉(C)及び多価アルコール(D)を含み、質量比で(A)/[(A)+(B)]=0.30〜0.95、(C)/[(A)+(B)]=0.05〜0.50、(D)/[(A)+(B)+(C)]=0.0001〜0.05であることを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物並びに該樹脂組成物からなるフィルムに関する。詳細には、農業用フィルム、ゴミ袋、コンポスト袋、レジ袋、ショッピングバッグ、食品包装材料、食料品容器等の用途に使用可能な生分解性フィルム及びこれを形成するための樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種食品、薬品、雑貨等の液状物、粉粒物、固形物を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材等の幅広い用途において、紙、プラスチックフィルム、アルミ箔等が用いられてきた。この中でも特に、プラスチックフィルムは、強度、耐水性、成形性、透明性、コスト等において優れており、袋や容器として、多くの用途で使用されている。
【0003】
該プラスチックフィルムを構成するプラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等がある。しかしながら、これらプラスチックフィルムは石油由来の原料から生産されるため、化石資源の枯渇問題や、廃棄したときに焼却時に二酸化炭素が発生し地球温暖化につながる問題が付随してくる。また殆どのプラスチックは、環境中での耐久性があるため、廃棄した場合にその形状が保たれ、環境汚染や、埋立地の不足等の廃棄物問題が深刻となっている。
【0004】
近年、上記問題を解決することを目的として、植物由来の原料や植物から製造される樹脂、生分解性樹脂が使用されるようになってきている。植物由来の樹脂原料についての研究が数多くなされており、植物由来樹脂原料の代表例としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート等の脂肪族ポリエステル等が挙げられる。
【0005】
生分解性樹脂としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリカプロラクトン等のやはり脂肪族ポリエステルが挙げられる。しかしこれら脂肪族ポリエステルは生分解性を有するが、フィルムの引き裂き強度等の機械物性が不十分であった(特許文献1)。
【0006】
これらの問題を解決する手法として、脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂と澱粉とを混合して用いることにより物性を制御する試みが行われた(特許文献2)。しかし、生分解性の脂肪族芳香族ポリエステル樹脂と澱粉を混合したとしても、引裂強度は改善されるものの生分解速度が遅かったり、弾性率が低く剛性が不足したりという問題があった。また、一般にフィルムは弾性率を高くすると皺が出やすくフィルムとしての外観が悪くなる傾向がある。
【0007】
【特許文献1】特開平8−239461号公報
【特許文献2】特表平6−502676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、引裂き強度が強く、生分解性、成形性、熱収縮性、透明性が良好であり、弾性率が高く皺になりにくいフィルムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)、澱粉(C)及び多価アルコール(D)を特定の質量比で含むことによって上記課題が解決できることを見出し、また、特定の順番で混合することによって上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)、澱粉(C)及び多価アルコール(D)を含み、質量比で、
(A)/[(A)+(B)]=0.30〜0.95、
(C)/[(A)+(B)]=0.05〜0.50、
(D)/[(A)+(B)+(C)]=0.0001〜0.05
であることを特徴とする樹脂組成物を提供するものである。
【0011】
また本発明は、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)及び澱粉(C)を混合した後に、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を混合することを特徴とする上記樹脂組成物の製造方法、及び、その製造方法を使用して製造された樹脂組成物を提供するものである。
【0012】
また本発明は、上記樹脂組成物を主成分として含有することを特徴とするフィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)等を特定の割合で混合することにより、成形性に優れた樹脂組成物を提供することができる。また、該樹脂組成物を主成分として含有する成形体、特にフィルムを、引裂強度、成形性、熱収縮性、透明性、生分解性等に優れたものにでき、また、弾性率が高く皺になり難くすることができる。このため、該成形体、特にフィルムは、各種食品、薬品、雑貨用等の液状物、粉粒物若しくは固形物を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材等に広く利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の具体的形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲内で任意に変形したものも含まれる。
【0015】
<脂肪族ポリエステル系樹脂(A)>
本発明において、「脂肪族ポリエステル系樹脂(A)」とは、分子中に芳香族環を実質的に有さないポリエステル系樹脂をいう。本発明における「脂肪族ポリエステル系樹脂」は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分とする。ここで、「主成分」とは、脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する単量体単位全体を基準(100モル%)として、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸が50モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上であることをいう。
【0016】
本発明における脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を具体的に示すと、例えば、下記式(1)で表される鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジオ−ル単位、並びに、下記式(2)で表される鎖状脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位を必須とし、それから主になるものである。ただし、後述する脂肪族オキシカルボン酸単位が含有されていてもよい。
【0017】
−O−R−O− (1)
[式(1)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示す。共重合されている場合には、樹脂中に2種以上のRが含まれていてもよい。]
−OC−R−CO− (2)
[式(2)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示す。共重合されている場合には、樹脂中に2種以上のRが含まれていてもよい。]
【0018】
なお、上記式(1)、式(2)において、「2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基」の「及び」とは、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の1分子中に2価の鎖状脂肪族炭化水素基と2価の脂環式炭化水素基の両方を含んでいてもよいという意味である。また、以下、「鎖状脂肪族及び/又は脂環式」を単に「脂肪族」と略記する場合がある。
【0019】
式(1)のジオール単位を与える脂肪族ジオール成分は特に限定されないが、炭素数2〜10個の脂肪族ジオール成分が好ましく、炭素数4〜6個の脂肪族ジオール成分が特に好ましい。具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、中でも1,4−ブタンジオールが特に好ましい。脂肪族ジオール成分は2種類以上を用いることもできる。
【0020】
式(2)のジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸成分は特に限定されないが、炭素数2〜10個の脂肪族ジカルボン酸成分が好ましく、炭素数4〜8個の脂肪族ジカルボン酸成分が特に好ましい。具体的には、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられ、中でもコハク酸又はアジピン酸が特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸成分は2種類以上を用いることもできる。
【0021】
更に、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)には、脂肪族オキシカルボン酸単位が含有されていてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等、又はこれらの低級アルキルエステル若しくは分子内エステルが挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体又はラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体又は水溶液の何れであってもよい。これらの中で特に好ましいものは、乳酸又はグリコール酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
【0022】
上記脂肪族オキシカルボン酸の量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を構成する単量体成分全体を基準(100モル%)として、下限が通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0023】
また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、「3官能以上の脂肪族多価アルコール」、「3官能以上の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物」又は「3官能以上の脂肪族多価オキシカルボン酸」を共重合させたものであると、得られる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の溶融粘度を高めることができるため好ましい。
【0024】
3官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。また、4官能の脂肪族多価アルコールの具体例としては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0025】
3官能の脂肪族多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、プロパントリカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。また、4官能の多価カルボン酸又はその酸無水物の具体例としては、シクロペンタンテトラカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0026】
また、3官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)カルボキシル基が2個とヒドロキシル基が1個を同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基が1個とヒドロキシル基が2個のタイプとに分かれ、何れのタイプも使用可能である。具体的には、リンゴ酸等が好ましく用いられる。また、4官能の脂肪族オキシカルボン酸は、(i)3個のカルボキシル基と1個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(ii)2個のカルボキシル基と2個のヒドロキシル基とを同一分子中に共有するタイプ、(iii)3個のヒドロキシル基と1個のカルボキシル基とを同一分子中に共有するタイプとに分かれ、何れのタイプも使用可能である。具体的には、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0027】
このような3官能以上の化合物の量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を構成する単量体全体を基準(100モル%)として、下限は通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限は通常5モル%以下、好ましくは2.5モル%以下である。
【0028】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)としては、ポリブチレンサクシネートアジペート系樹脂及び/又はポリブチレンサクシネートアジペート系樹脂を用いることが特に好ましい。
【0029】
本発明で使用する脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は、公知の方法で製造することができる。例えば、上記の脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によっても製造することができる。中でも、経済性や製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合で製造する方法が好ましい。
【0030】
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下で行うことが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く1族〜15族金属元素を含む化合物である。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ−ジケトナート錯体等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
これらの中では、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム又はカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、その中でも、特に、チタン化合物又はゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒が重合時に溶融又は溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、触媒は、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物であること好ましい。
【0032】
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒添加量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常30000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなるのに対し、逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。
【0033】
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであり、常圧が好ましい。反応時間は、通常1時間以上であり、上限は通常10時間以下、好ましくは、4時間以下である。
【0034】
その後の重縮合反応は、圧力を、下限が通常0.001×10Pa以上、好ましくは0.01×10Pa以上であり、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度として行う。この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上であり、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。
【0035】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を製造する反応装置としては、公知の縦型あるいは横型撹拌槽型反応器を用いることができる。例えば、溶融重合を同一又は異なる反応装置を用いて、エステル化及び/又はエステル交換の工程と減圧重縮合の工程の2段階で行い、減圧重縮合の反応器としては、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管を具備した撹拌槽型反応器を使用する方法が挙げられる。また、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間には、凝縮器が結合されており、該凝縮器にて縮重合反応中に生成する揮発成分や未反応モノマーが回収される方法が好んで用いられる。
【0036】
本発明において、目的とする重合度の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を得るためのジオール成分とジカルボン酸成分とのモル比は、その目的や原料の種類により好ましい範囲は異なるが、酸成分1モルに対するジオール成分の量が、下限が通常0.8モル以上、好ましくは、0.9モル以上であり、上限が通常1.5モル以下、好ましくは1.3モル以下、特に好ましくは1.2モル以下である。また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)には、生分解性に影響を与えない範囲で、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合等を導入することができる。
【0037】
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)は十分に結晶化速度が高いものであり、示差走査熱量計測定において10℃/分で冷却した際の結晶化に基づく発熱ピークの半値幅が、通常、15℃以下、好ましくは10℃以下、特に好ましくは8℃以下である。示差走査熱量計測定は、例えばパーキンエルマー社製DSC7を用い、10mgのサンプルを、流量50mL/分の窒素気流下で加熱溶融させた後、10℃/分の速度で冷却し、結晶化に伴う発熱ピークを記録することにより実施される。
【0038】
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kgで測定した場合、下限が通常0.1g/10分であり、好ましくは、0.5g/10分、更に好ましくは1.0g/10分、最も好ましくは、2.0g/10分である。またMFRの上限は、通常100g/10分、好ましくは50g/10分、更に好ましくは30g/10分、最も好ましくは10g/10分である。
【0039】
<芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)>
本発明の樹脂組成物は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸、及び脂肪族ジオールを主成分とする芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)を含む。この場合の芳香族ジカルボン酸単位の含量は、脂肪族ジカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位の全量を基準(100モル%)として、5モル%以上60モル%以下であることが好ましい。具体的には、例えば、下記式(3)で表される脂肪族ジオ−ル単位、下記式(4)で表される脂肪族ジカルボン酸単位、及び、下記式(5)で表される芳香族ジカルボン酸単位を必須成分とするものであり、後述するオキシカルボン酸単位を有していてもよい。
【0040】
−O−R−O− (3)
[式(3)中、Rは2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (4)
[式(4)中、Rは直接結合を示すか、2価の鎖状脂肪族炭化水素基及び/又は2価の脂環式炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
−OC−R−CO− (5)
[式(5)中、Rは2価の芳香族炭化水素基を示し、共重合されている場合には1種に限定されない。]
【0041】
式(3)のジオール単位を与えるジオール成分は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。中でも、炭素数2以上4以下のジオールが好ましく、エチレングリコール又は1,4−ブタンジオールがより好ましく、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。
【0042】
式(4)のジカルボン酸単位を与えるジカルボン酸成分は、炭素数が通常2以上10以下のものであり、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。中でも、コハク酸又はアジピン酸が好ましい。
【0043】
式(5)の芳香族ジカルボン酸単位を与える芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、中でも、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。また、芳香環の一部がスルホン酸塩で置換されている芳香族ジカルボン酸が挙げられる。なお、脂肪族ジカルボン酸成分、脂肪族ジオール成分及び芳香族ジカルボン酸成分は、それぞれ2種類以上を用いることもできる。
【0044】
本発明における芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)には、脂肪族オキシカルボン酸単位が含有されていてもよい。脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、又はこれらの混合物等が挙げられる。更に、これらの低級アルキルエステル又は分子内エステルであってもよい。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体又はラセミ体の何れでもよく、形態としては固体、液体又は水溶液の何れであってもよい。これらの中で好ましいものは、乳酸又はグリコール酸である。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、2種以上の混合物としても使用することもできる。
【0045】
この脂肪族オキシカルボン酸の量は、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)を構成する全構成成分中、下限が通常0モル%以上、好ましくは0.01モル%以上であり、上限が通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。
【0046】
芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)は、前記脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と同様の製法により製造することができる。
【0047】
本発明に用いられる芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16kgで測定した場合、下限は通常0.1g/10分以上であり、上限は通常100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下、特に好ましくは30g/10分以下である。
【0048】
<含有量比>
含有量に関しては、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の質量部を(A)で表わし、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の質量部を(B)で表わすと、(A)/[(A)+(B)]=0.30〜0.95である。好ましい範囲は、0.50〜0.90であり、より好ましい範囲は、0.40〜0.90であり、特に好ましい範囲は、0.60〜0.80である。脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の含有量比が小さ過ぎると、生分解性に劣ったり、フィルムの成形性が低下する場合があり、一方、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の含有量比が多過ぎると、引張り伸び率が不足したり、引裂き強度が低下する場合がある。脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)は、それぞれ1種でも2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記した芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の含有量は、樹脂組成物全体を基準(100質量%)として、好ましくは1質量%以上70質量%以下である。含有量の下限は、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。最も好ましくは20質量%以上である。含有量の上限は、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%である。芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の含有量が多すぎると、フィルムのコシが不足し、各種包装材料として使用するためにはフィルムの厚さを厚くする必要がある場合がある。一方、芳香族脂肪族ポリエステル樹脂の含有量が少なすぎると、引張り伸び率、引裂き強度等が不足する場合がある。
【0050】
<澱粉(C)>
本発明における「澱粉(C)」は、分子式(C10の炭水化物(多糖類)で、多数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子とその変性物をいう。「変性」は、化学的、物理的、生物学的等のあらゆる変性方法を含む。化学的変性としては、該炭水化物(多糖類)の構成単位の一部又は全部をエステル化、エーテル化、酸化、還元、カップリング、脱水、加水分解、脱水素、ハロゲン化等の化学反応により変性することを示し、特には、水酸基をエーテル化、エステル化することを示す。また、物理的変性は、結晶化度を変化させること等、物理的性質を変化させることを示す。また、生物学的変性は、生物を用いて化学構造等を変化させることを示す。
【0051】
本発明で使用される澱粉(C)は、具体的にはコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、エンドウ澱粉等が挙げられ、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉等が好ましく、コーンスターチが最も好ましい。
【0052】
樹脂組成物中の澱粉(C)の含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の質量部を(A)で表わし、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の質量部を(B)で表わし、澱粉(C)の質量部を(C)で表わすと、(C)/[(A)+(B)]=0.05〜0.50である。質量比の好ましい範囲は0.10〜0.45である。質量比の下限は、より好ましくは0.20である。また、上限は、より好ましくは0.40、特に好ましくは0.30である。澱粉(C)の含有量が少な過ぎると、澱粉(C)による物性改良効果が十分に発現しない場合があり、澱粉(C)の含有量が多過ぎると、耐水性、耐加水分解性、柔軟性等が損なわれる場合がある。澱粉(C)は、それぞれ1種でも2種以上を併用してもよい。
【0053】
本発明の樹脂組成物をインフレ成形等の方法により、30μmの厚さのフィルムに成形した場合の、樹脂の流れに平行方向の引張り弾性率は200MPa以上であることが好ましい。この場合の引張り弾性率の下限は、より好ましくは230MPa、特に好ましくは250MPa、更に好ましくは280MPa、最も好ましくは300MPaである。また引っ張り弾性率は通常500MPa以下であり、引張り弾性率の上限は好ましくは450MPa、より好ましくは450MPa、更に好ましくは430MPa、最も好ましくは400MPaである。引張り弾性率が200MPaより低いと、レジ袋、ゴミ袋等の包装材料として使用した際に、内容物の重量物が大きいと内容物の重量に耐えられない場合がある。また弾性率が500MPaより大きいとフィルムの柔軟性が損なわれ使い勝手が悪くなる場合がある。
【0054】
本発明の樹脂組成物は、30μmの厚さのフィルムに成形したとき、樹脂の流れ平行方向のエルメンドルフ引裂き強度が5N/mm以上であることが好ましく、より好ましくは10N/mm以上であり、特に好ましくは15N/mm以上、更に好ましくは20N/mmである。エルメンドルフ引裂き強度が5N/mm未満では、レジ袋、コンポスト袋、ゴミ袋等とした場合に実用上問題がある場合がある。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、30μmの厚さのフィルムにしたとき、50℃の環境下で園芸用土壌中の重量減少が8日間で10%以上であることが好ましい。より好ましい重量減少率は15%以上、最も好ましくは20%以上である。重量減少率が8日間で10%未満であると、廃棄した場合に長期間土中にフィルムが残存し環境上好ましくなく、また初期の重量減少率が低いフィルムは完全に生分解しない場合があるため好ましくない。
【0056】
<多価アルコール(D)>
本発明の樹脂組成物には多価アルコール(D)を含む。多価アルコール(D)とは、水酸基を2以上有する有機化合物である。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−へキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ナノンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、グリセリンモノアルキルエステル、グリセリンジアルキルエステル、グリセリンモノアルキルエーテル、グリセリンジアルキルエーテルが挙げられる。好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、グリセリンモノエステル等が挙げられ、特に好ましくはグリセリンである。
【0057】
多価アルコール(D)の樹脂組成物への含有量は、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の質量部を(A)で表わし、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)の質量部を(B)で表わし、多価アルコール(D)の質量部を(D)で表わすと、(D)/[(A)+(B)+(C)]=0.0001〜0.05である。好ましくは0.0005〜0.04であり、より好ましくは0.001〜0.03であり、特に好ましくは0.002〜0.02である。多価アルコール(D)が少な過ぎると、澱粉と樹脂との混ざりが悪くなりフィルムの平滑性が失われる場合があり、一方、多過ぎると、樹脂の粘度が低下し成型困難になったり、フィルムの表面から多価アルコールがブリードアウトしたりする場合がある。
【0058】
<相溶化剤>
本発明の樹脂組成物には、相溶化剤を含有していてもよい。相溶化剤とは、非相溶性の異種樹脂、又は、澱粉と樹脂を混合する際に、相溶性を改良する添加剤である。相溶化剤を添加することにより、相溶性を向上させることができる。
【0059】
相溶化剤は、通常、樹脂組成物全体を基準(100質量%)として、0.01質量%以上10質量%以下添加するのが好ましい。添加量の下限は、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である。添加量の上限は、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
【0060】
相溶化剤の例としては、高分子型相溶化剤、低分子の有機化合物、無機化合物、有機無機複合体等が挙げられるが、高分子型相溶化剤、低分子の有機化合物が成形品の物性の点でこのましく、成形プロセスの観点から、高分子型相溶化剤がより好ましい。また、相溶化剤としては、酸無水物基、グリシジル基、エーテル基の何れかの構造を有するものであることが好ましく、これら何れかの構造を有する高分子型相溶化剤がより好ましい。これらの構造を有する相溶化剤を用いることにより、相溶性を向上させる効果が大きくなる。
【0061】
高分子型相溶化剤としては、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、アクリル系、スチレン系、ウレタン系、ポリアセタール系、オレフィン系エラストマー、不飽和脂肪族系エラストマー、水添不飽和脂肪族系エラストマー等の樹脂及びこれらの2種類以上のブロック、グラフト又はランダム共重合体が挙げられる。これらの共重合体に更に不飽和脂肪酸無水物を付加させる等して極性基を分子中に導入してもよい。付加させる不飽和脂肪酸無水物として無水マレイン酸が好ましく用いられる。
【0062】
この中でも、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエーテル系、アクリル系、スチレン系、オレフィン系エラストマー、不飽和脂肪族系エラストマー、水添不飽和脂肪族系エラストマー及びこれらの2種以上の共重合体等がより好ましく、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエーテル系、アクリル系、スチレン系、水添不飽和脂肪族系エラストマー及びこれらの2種以上の共重合体が更に好ましい。
【0063】
ポリエステル系の相溶化剤としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ−3−ヒドロキシブチレート等の構造を分子構造の一部に含むポリエステルブロック又はランダム又はグラフト共重合体が挙げられる
【0064】
ポリアミド系の相溶化剤としては、6ナイロン、6,6ナイロン、12ナイロン等が挙げられる。ポリエーテル系の相溶化剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0065】
スチレン系としては、ポリスチレン、ポリp−メチルスチレン、ポリα−メチルスチレン等が挙げられる。オレフィン系エラストマーとしては、エチレンプロピレンランダム共重合体、ポリ1−ブテン等が挙げられる。不飽和脂肪族系エラストマーとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、SBS、SIS等が挙げられる。水添不飽和脂肪族系エラストマーとしては、SEBS、SEPS等が挙げられる。ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエーテル系、アクリル系、スチレン系、水添不飽和脂肪族系エラストマー及びこれらの2種以上の共重合体の中でも特に好ましい例としては、ポリオレフィン/グリシジルアクリレート共重合体、ポリオレフィン/グリシジルメタクリレート共重合体、ポリオレフィン/ポリエーテル共重合体、ポリエーテルエステルアミド、SEBS、無水マレイン酸変性SEBS等が挙げられる。
【0066】
<無機充填剤>
本発明の樹脂組成物には、無機充填剤を配合させてもよい。かかる無機充填剤としては、シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、「珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩」、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0067】
本発明の樹脂組成物に含有される無機充填剤の量は特に限定はないが、樹脂組成物100質量部に対して、無機充填剤は1質量部以上30質量部以下が好ましく、3質量部以上20質量部以下がより好ましく、5質量部以上15質量部以下が特に好ましい。無機充填剤が少なすぎる場合は、機械物性改良効果が少なくなる場合があり、一方、多すぎる場合は、成形性及び耐衝撃性が悪化する場合がある。
【0068】
<有機充填剤>
有機充填剤としては、パルプ、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、竹粉末、樹皮粉末、ケナフ、藁等の粉末等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。樹脂組成物中の有機充填剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して、60質量部以下が好ましい。
【0069】
<各種添加剤>
本発明の樹脂組成物には、更に、従来公知の各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、結晶核剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、耐光剤、可塑剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料、滑剤、分散助剤や各種界面活性剤、スリップ剤、加水分解防止剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらの中で特にスリップ剤、アンチブロッキング剤は配合した方が好ましい。
【0070】
防曇剤はあらかじめ樹脂に防曇剤を練りこんでもよいし、成形後、成形品表面に塗布してもよい。使用する防曇剤は具体的には、炭素数4以上20以下の飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸と多価アルコールのエステル系界面活性剤が好ましく用いられる。スリップ剤としては、炭素数6〜30の不飽和脂肪酸からなる不飽和脂肪酸アマイド、不飽和脂肪酸ビスアマイドが挙げられるが、最も好ましくはエルカ酸アマイドが挙げられる。
【0071】
アンチブロッキング剤としては、炭素数6〜30の飽和脂肪酸アマイド、飽和脂肪酸ビスアマイド、メチロールアマイド、エタノールアマイド、天然シリカ、合成シリカ、合成ゼライト、タルク等が挙げられる。
【0072】
耐光剤としては具体的には、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−n−ブチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)マロネート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−〔2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〕ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスド{1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−〔2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン〕ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2−ビス(3−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エタン、1−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ペンタン、ポリ〔1−オキシエチレン(2,2,6,6−テトラメチル−1,4−ピペリジル)オキシスクシニル〕、ポリ〔2−(1,1,4−トリメチルブチルイミノ)−4,6−トリアジンジイル−(2,2,6,6−テトラ及び−4−ピペリジル)イミノヘキサメチレン−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物及びそのN−メチル化合物、コハク酸と1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物等が挙げられる。
【0073】
これらの中で、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)マロネートが特に好ましい。
【0074】
本発明の樹脂組成物に添加してもよい紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤の中で、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましく、具体的には、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α、α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシ−フェノールが挙げられる。
【0075】
本発明の樹脂組成物に添加してもよい酸化防止剤としては、BHT、2,2’−メチレンビス(4-メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−α,α’,α”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、カルシウムジエチルビス[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ホスホネート、ビス(2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチルフェニル)エタン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオンアミド等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’―ジイルビスホスフォナイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系酸化防止剤、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン-2−オンとキシレンの反応性生物等のラクトン系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤及びこれらの2種以上の混合物等が例示できる。この中でもヒンダードフェノール系酸化防止剤が好適に用いられる。
【0076】
好ましいヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、イルガノックス3790、イルガノックス1330、イルガノックス1010、イルガノックス1076、イルガノックス3114、イルガノックス1425WL、イルガノックス1098、イルガノックスHP2225FL、イルガノックスHP2341、イルガフォスXP−30(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、スミライザーBBM−S(住友化学社製)が用いられる。最も好ましい酸化防止剤はイルガノックス3790(1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン)、イルガノックス1330(3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−α,α’,α”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール)が用いられる。
【0077】
これらの添加剤の添加量は、樹脂組成物全体を基準(100質量%)として、通常0.001質量%以上10質量%以下である。添加量の下限は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。添加量の上限は好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。また、本発明の樹脂組成物には、機能性添加剤として、鮮度保持剤、抗菌剤等を配合することもできる。
【0078】
末端封止剤として、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物等が挙げられるが、その中でもカルボジイミド化合物が好適に用いられる。
【0079】
<カルボジイミド化合物>
本発明において、主に大気中の水分等による加水分解を抑制する目的で、カルボジイミド化合物を好適に用いることができる。用いられるカルボジイミド化合物は、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)であり、このようなカルボジイミド化合物は、例えば触媒として有機リン系化合物又は有機金属化合物を用いて、イソシアネート化合物を70℃以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒中で脱炭酸縮合反応させることにより合成することができる。
【0080】
上記のカルボジイミド化合物の内、モノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド等を例示することができる。これらの中では、工業的に入手が容易であるので、ジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好ましい。
またポリカルボジイミド化合物としては、例えば米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.Org.Chem.28巻、p2069−2075(1963)、及びChemical Review 1981、81巻、第4号、p.619〜p.621等に記載された方法により製造したものを用いることができる。
【0081】
本発明においては、ポリカルボジイミド化合物を用いてもよい。その重合度は、下限が2以上、好ましくは4以上であり、上限が通常40以下、好ましくは、20以下である。この重合度が大きすぎると、組成物中における分散性が不十分となり、例えばインフレフィルムにおいて外観不良の原因になる場合がある。
【0082】
カルボジイミド化合物は、後述する樹脂組成物の調製時に添加してもよいし、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)のうちの1種類又は2種類のポリエステルに練り混み、成形時に他の成分とドライブレンドすることによって樹脂組成物の全成分と混合して成形してもよい。あるいは、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)で高濃度のカルボジイミド化合物のマスターバッチを調製し、成形時にカルボジイミド化合物が所定濃度となるように、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)及び/又は芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)、澱粉(C)をドライブレンドして希釈してもよい。
【0083】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で生分解性樹脂及び天然物、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロースエステル等やセルロース、紙、木粉、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、クルミ殻粉末等の動物/植物物質微粉末又はこれらの混合物を配合することができる。
【0084】
<混練方法>
本発明において、従来公知の混合/混練技術は全て適用できる。混合機としては、水平円筒型、V字型、二重円錐型混合機やリボンブレンダー、スーパーミキサーのようなブレンダー、また各種連続式混合機等を使用できる。また、混練機としては、ロールやインターナルミキサーのようなバッチ式混練機、一段型、二段型連続式混練機、二軸スクリュー押し出し機、単軸スクリュー押し出し機等を使用できる。
【0085】
本発明の樹脂組成物の調製方法は、特に限定されないが、ブレンドした原料チップを同一の押出機で溶融混合する方法、各々別々の押出機で溶融させた後に混合する方法等が挙げられる。また、各々の原料チップを直接成形機に供給して樹脂組成物を調整すると同時に、その成形体を得ることも可能である。各成分を混合して加熱溶融させたところに、各種添加剤、無機充填剤、有機充填剤、上記「その他の成分」、他のポリエステル等を添加して配合する方法等が挙げられる。また、この際、前記の各種添加剤を均一に分散させる目的で、ブレンド用オイル等を使用することもできる。
【0086】
本発明の樹脂組成物を調製するための各成分の混合順序は、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)と澱粉(C)を混合した後に、更にそれに脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を混合させることが好ましい。混練方法は前記方法が使用できるが芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)と澱粉(C)を、ロールやインターナルミキサーのようなバッチ式混練機、一段型、二段型連続式混練機、二軸スクリュー押し出し機、単軸スクリュー押し出し機等により溶融混練して得られたペレットに対し、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を混合し、再度、混練してもよい。また、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)と澱粉(C)を混合したペレットと、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を成形する際に接触させて混合してもよい。
【0087】
また、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)及び澱粉(C)を混合した後に、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を混合すればよく、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の混合時には、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)が同時に混合されてもよい。また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)及び澱粉(C)は、それぞれ1種でも2種以上を併用してもよい。
【0088】
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)と澱粉(C)を先に混練した後に、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)を混合して樹脂組成物を調製すると、均一なフィルムになり難い場合がある。また、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)及び澱粉(C)を同時に添加して混合、混練して樹脂組成物を調製すると、本発明の効果を奏しない場合がある。
【0089】
本発明の樹脂組成物を調製する際のそれぞれの段階での混合比は、最終的に前記した樹脂組成物の含有質量比になるように混合すればよいが、本発明の樹脂組成物を調製するために、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)及び澱粉(C)を、質量比で、(B)/(C)=10/90〜95/5で混合した後に、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を、質量比で、(A)/[(A)+(B)+(C)+(D)]=0.05〜0.95で混合することが本発明の効果を十分に得るために好ましい。前段の芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)及び澱粉(C)の混合は、質量比で、(B)/(C)=20/80〜90/10がより好ましく、30/70〜80/20が特に好ましく、35/65〜70/30が更に好ましい。また、後段の脂肪族ポリエステル系樹脂(A)の混合比は、質量比で、(A)/[(A)+(B)+(C)+(D)]=0.10〜0.90がより好ましく、0.15〜0.85が特に好ましく、0.20〜0.80が更に好ましい。
【0090】
前記多価アルコール(D)の混合時期は特に限定はないが、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)及び澱粉(C)を混合する際に混合することが好ましい。前記多価アルコール(D)は、(D)/[(A)+(B)+(C)]=0.0001〜0.05で混合して樹脂組成物が調製されることが好ましい。(D)/[(A)+(B)+(C)]としては、より好ましくは0.0005〜0.04であり、特に好ましくは0.001〜0.03であり、更に好ましくは0.002〜0.02である。
【0091】
<成形方法>
本発明の樹脂組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形法により成形することができる。その成形法としては例えば、圧縮成形(圧縮成形、積層成形、スタンパブル成形)、射出成形、押し出し成形や共押し出し成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、パイプ成形、電線/ケーブル成形、異形材の成形)、中空成形(各種ブロー成形)、カレンダー成形、発泡成形(溶融発泡成形、固相発泡成形)、固体成形(一軸延伸成形、二軸延伸成形、ロール圧延成形、延伸配向不織布成形、熱成形(真空成形、圧空成形)、塑性加工、粉末成形(回転成形)、各種不織布成形(乾式法、接着法、絡合法、スパンボンド法等)等が挙げられる。中でも、押し出し成形、射出成形、発泡成形又は中空成形が好適に適用される。具体的な形状としては、フィルム、容器又は繊維への適用が好ましい。
【0092】
また、これらの成形品には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、各種合目的的二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング等)等が挙げられる。
【0093】
<用途>
本発明の樹脂組成物は成形性に優れ、該樹脂組成物により形成した成形体の表面特性、力学特性が優れたものである。このため、本発明の樹脂組成物からなる成形体は、各種食品、薬品、雑貨等の液状物や粉粒物、固形物を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材等幅広い用途において好適に用いられる。その具体的用途としては、射出成形品(例えば、生鮮食品のトレー、ファーストフードの容器、野外レジャー製品等)、押出成形品(フィルム、例えば、釣り糸、漁網、植生ネット、保水シート等)、中空成形品(ボトル等)等が挙げられる。更に、その他農業用のフィルム、コーティング資材、肥料用コーティング材、ラミネートフィルム、板、延伸シート、モノフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、発泡体、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポスト袋、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、ロープ、結束材、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材フィルム、マルチフィラメント、合成紙、医療用として手術糸、縫合糸、人工骨、人工皮膚、マイクロカプセル等のDDS、創傷被覆材等が挙げられる。
【0094】
更に、トナーバインダー、熱転写用インキバインダー等の情報電子材料、電気製品筐体、インパネ、シート、ピラー等の自動車内装部品、バンパー、フロントグリル、ホイールカバー等の自動車外装構造材料等の自動車部品等に使用できる。中でも、より好ましくは、包装用資材、例えば、包装用フィルム、袋、トレー、ボトル、緩衝用発泡体、魚箱等、及び、農業用資材、例えば、マルチングフィルム、トンネルフィルム、ハウスフィルム、日覆い、防草シート、畦シート、発芽シート、植生マット、育苗床、植木鉢等が挙げられる。本発明の樹脂組成物は、引裂強度、成形性、明性、生分解性等に優れたものにでき、また、弾性率が高く皺になり難くすることができるので、このうちフィルムの用途に用いられることが特に好ましい。
【実施例】
【0095】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例により限定されるものではない。実施例中、「部」とあるのは、「質量部」を示す。
【0096】
<引き裂き強度の測定方法>
JIS K7128に準拠してエレメンドルフ引き裂き強度を測定した。本発明における「引き裂き強度」とは「MD」(成型時樹脂の流れに平行な方向)及び「TD」(成型時樹脂の流れに垂直方向)のエルメンドルフ引き裂き強度を示す。
【0097】
<降伏強度、破断強度、引張り破断伸びの測定方法>
JIS K6781に準拠した引張り試験により測定した。本発明における「引張り破断伸び」は「MD」及び「TD」での引張り破断伸びである。
【0098】
<衝撃強度>
東洋精機社製打ち抜き衝撃試験機を用いて、幅110mm長さ1300mmのフィルムをサンプルとし、先端が直径25mmの半球状の形状をしたアームで直径50mmの穴を12点打ち抜き、パンクチャー衝撃強度を測定した。
【0099】
<引張り弾性率の測定方法>
JIS K7127に準拠して、株式会社島津製作所製精密万能試験機オートグラフAG−2000にて、引張り弾性率を測定した。本発明における「引張り弾性率」は、「MD」での引張り弾性率である。
【0100】
<MFRの測定方法>
メルトフローレート(MFR)は、190℃、2.16Kg荷重で測定した。
【0101】
<生分解性の試験方法>
インフレ成形した厚さ30μmのフィルムを、縦7cm×横3cmの長方形に切り抜き、土を入れたポリエチレン製タッパー容器の土中に埋設し、ふたを閉めて、50℃、湿度90%の恒温恒湿槽の中に一定期間静置した。静置前後の重量変化を測定した。
【0102】
実施例1〜実施例8、比較例2
芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)として、PBAT系樹脂(BASF社製、Ecoflex(登録商標))40部、澱粉(C)として、コーンスターチ(日本コーンスターチ社製、コーンスターチY−3P)60部、多価アルコール(D)として、グリセリン1部を押し出し機により120℃で混練して「PBAT/澱粉混合ペレット」を得た。
【0103】
次に、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)として、PBS系樹脂(三菱化学社製、AZ91TN)及び/又はPBSA系樹脂(三菱化学社製、AD92WN)、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)として、PBAT系樹脂(BASF社製、Ecoflex(登録商標))、及び、上記「PBAT/澱粉混合ペレット」を用いて、表1及び表2に示す割合で押し出し機により180℃で混練した。PBATは「PBAT/澱粉混合ペレット」の含有量では不足する分は追加して表1及び表2に示す割合となるように混練を行った。
【0104】
この混練したペレットを70℃、窒素流通下で10時間乾燥した。このペレットをインフレ成形機(エンプラ産業株式会社製、形式E30SP)により、ブロー比2.5、折り径300mm、成形温度160℃で厚さ30μmのフィルムを成形した。実施例1〜実施例8では、フィルムの表面性は良好で、成形時に皴の発生は見られなかった。得られたフィルムの機械物性及び生分解性試験を行い、結果を表1及び表2に示した。
【0105】
比較例1
脂肪族ポリエステル系樹脂(A)として、PBS系樹脂(三菱化学社製AZ91TN)、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)として、PBAT系樹脂(BASF社製Ecoflex(登録商標))を、表1に示す割合で押し出し機により180℃で混練した。この混練したペレットを、70℃、窒素流通下で10時間乾燥した。このペレットをインフレ成形機により160℃でフィルムを成形した。フィルムの表面は凹凸がなかったが、皺になりやすいフィルムであった。得られたフィルムの機械物性及び生分解性試験を行い、結果を表1に示した。
【0106】
実施例9
表1に示す質量部で、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)として、PBSA系樹脂(三菱化学社製AD92WN)、及び、澱粉(C)として、コーンスターチ(日本コーンスターチ社製コーンスターチY−3P)、多価アルコール(D)として、グリセリン1部を、押し出し機により120℃で混練して「PBSA/澱粉混合ペレット」を得た。
【0107】
次に、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)として、PBAT系樹脂(BASF社製Ecoflex(登録商標))、上記「PBSA/澱粉混合ペレット」を用いて、表2に示す割合で押し出し機により180℃で混練した。この混練したペレットを70℃、窒素流通下で10時間乾燥した。このペレットをインフレ成形機(エンプラ産業株式会社製形式E30SP)により、ブロー比2.5、折り径300mm、成形温度160℃で厚さ30μmのフィルムを成形した。得られたフィルムの機械物性及び生分解性試験を行い、結果を表2に示した。
【0108】
【表1】

【0109】
【表2】

【0110】
表1、2に示されるように本発明の樹脂組成物からなるフィルムは引裂き強度が改善され、引張り弾性率が高く、皴が発生しにくい特性を示す等、機械的物性に優れていた。また、生分解性にも優れていた。
【0111】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う樹脂組成物、該樹脂組成物からなるフィルムもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の樹脂組成物は成形性に優れ、該樹脂組成物により形成したフィルムは、引裂強度、フィルムの剛性、生分解性等に優れているため、各種食品、薬品、雑貨等の液状物、粉粒物、固形物を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材、各種廃棄物処理用材料等として広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル系樹脂(A)、芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)、澱粉(C)及び多価アルコール(D)を含み、質量比で、(A)/[(A)+(B)]=0.30〜0.95、(C)/[(A)+(B)]=0.05〜0.50、(D)/[(A)+(B)+(C)]=0.0001〜0.05であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
該澱粉(C)がコーンスターチである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
該脂肪族ポリエステル系樹脂(A)が、ポリブチレンサクシネート系樹脂及び/又はポリブチレンサクシネートアジペート系樹脂である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)及び澱粉(C)を混合した後に、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を混合することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
芳香族脂肪族ポリエステル系樹脂(B)及び澱粉(C)を、質量比で、(B)/(C)=10/90〜95/5で混合した後に、脂肪族ポリエステル系樹脂(A)を、質量比で、(A)/[(A)+(B)+(C)+(D)]=0.05〜0.95で混合する請求項4に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
更に、多価アルコール(D)を、(D)/[(A)+(B)+(C)]=0.0001〜0.05で混合する請求項4又は請求項5に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6の何れかの請求項に記載の樹脂組成物の製造方法を使用して製造されたものであることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1、2、3又は7の何れかの請求項に記載の樹脂組成物を主成分として含有することを特徴とするフィルム。

【公開番号】特開2009−155531(P2009−155531A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336960(P2007−336960)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】