説明

樹脂組成物及び積層体

【課題】 エチレン・ビニルアルコール共重合体に対し、優れた接着強度特性を示し、特に延伸フィルムに適した接着性ポリオレフィン組成物を提供する。また、接着性ポリオレフィン組成物とエチレン・ビニルアルコール共重合体とからなる層を有する積層体を提供する。
【解決手段】 成分(1):ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性した変性ポリオレフィン樹脂の100重量部に対し、成分(2):脂肪酸金属塩を0.005〜1.0重量部、成分(3):ハイドロタルサイト系化合物を0.005〜1.0重量部含有することを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の樹脂との接着性が良好な樹脂組成物および該樹脂組成物を用いた積層体に関する。さらに詳しくは、エチレン・ビニルアルコール共重合体等の極性を有する樹脂との接着性が良好な樹脂組成物および該樹脂組成物を用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒートシール性とガスバリア性とを兼ね備えた積層体として、エチレン系ポリマーとエチレン・ビニルアルコール共重合体との積層体が知られており、またその積層体の製造の際に用いられる接着層用の素材も種々提案されている。
例えば、特許文献1には、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物を反応させた変性ポリオレフィンと、エチレン・ビニルアルコール共重合体とを積層するにあたり、少なくとも1層に脂肪酸金属塩等の金属化合物を配合することが開示されている。
また、特許文献2によれば、不飽和カルボン酸又はその酸無水物で変性された変性ポリオレフィン樹脂と、アルカリ性化合物、及び有機酸又はその酸無水物とを含有する樹脂組成物が開示されている。
【0003】
しかしながら、このような従来提案されている積層体における層間接着強度は未だ不十分であり、特に、延伸工程を経た積層体における層間接着強度は未だ改善されていないのが現状である。例えば、シュリンクフィルムを製造する際には、延伸温度80℃、延伸倍率約10倍(面倍率)の条件下において同時二軸延伸加工を行うが、延伸することによって積層体における層間接着力は大きく低下するため、十分に満足できる接着力を示す積層フィルムは得られていない。このため、ポリオレフィンとエチレン・ビニルアルコール共重合体との層間接着強度の更なる向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54−87783号公報
【特許文献2】特開2003−268332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、エチレン・ビニルアルコール共重合体等の極性を有する樹脂に対し、優れた接着強度特性を示し、特に延伸フィルムの接着層に適した樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、該樹脂組成物からなる層とエチレン・ビニルアルコール共重合体等の極性を有する樹脂からなる層とを有する、層間接着強度が高い積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し、不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィンに対し、脂肪酸金属塩とハイドロタルサイト系化合物とを特定の組成範囲で併用した樹脂組成物とすることにより、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、以下の[1]〜[9]を要旨とする。
[1] 以下の成分(1)100重量部に対し、成分(2)を0.005〜1.0重量部、成分(3)を0.005〜1.0重量部含有することを特徴とする樹脂組成物。
成分(1):ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィン樹脂
成分(2):脂肪酸金属塩
成分(3):ハイドロタルサイト系化合物
【0008】
[2] [1]において、更に成分(4):ポリオレフィン樹脂を含有し、かつ、成分(1)100重量部に対し、成分(4)の配合割合が0.01〜10000重量部である樹脂組成物。
[3] [1]または[2]において、成分(1)と成分(2)の配合割合が、下記式(A)の値として0.001〜100である樹脂組成物。
[〔成分(2)の配合量(重量部)〕/〔{成分(1)の配合量(重量部)}×{成分(1)のグラフト率(重量%)}〕]×100 ・・・ (A)
[4] [1]〜[3]の何れかにおいて、成分(2)に対する成分(3)の配合割合が0.005〜200重量%である樹脂組成物。
【0009】
[5] [1]〜[4]の何れかに記載の樹脂組成物からなる層を含む積層体。
[6] エチレン・ビニルアルコール共重合体からなる層を有する[5]の積層体。
[7] 該樹脂組成物からなる層とエチレン・ビニルアルコール共重合体からなる層とが接している[6]の積層体。
[8] [5]〜[7]の何れかの積層体を延伸して得られる延伸フィルム。
[9] [5]〜[7]の何れかの積層体を延伸して得られるシュリンクフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エチレン・ビニルアルコール共重合体等の極性を有する樹脂に対し優れた接着強度を示す樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、前記樹脂組成物からなる層とエチレン・ビニルアルコール共重合体等の極性を有する樹脂層とを有し、優れた層間接着強度を有する積層体及び延伸フィルムが提供される。従って、本発明に係る積層体及び延伸フィルムは、ガソリンタンクや一般食品包装用である食用油のボトルやハム等の畜肉包装フィルムに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0012】
<樹脂組成物>
まず、本発明の樹脂組成物について説明する。本発明の樹脂組成物は、成分(1):ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィン樹脂、成分(2):脂肪酸金属塩、及び成分(3):ハイドロタルサイト系化合物を含有する。
【0013】
<成分(1):変性ポリオレフィン樹脂>
本発明における変性ポリオレフィン樹脂とは、ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性した樹脂を意味する。ここで「グラフト変性」とは、不飽和カルボン酸又はその誘導体をポリオレフィン樹脂の共重合成分として用いるのではなく、既に製造されているポリオレフィン樹脂に対し、反応によって不飽和カルボン酸又はその誘導体を結合させるものである。すなわち、本発明において「グラフト変性」とは、不飽和カルボン酸又はその誘導体がポリオレフィン樹脂の骨格に対して鎖長が長い側鎖として導入される場合のみならず、ポリオレフィン樹脂に化学結合していれば包含される。
【0014】
グラフト変性する原料として用いるポリオレフィン樹脂(以下、ベース樹脂という場合
がある)は限定されないが、例えば、エチレンの単独重合体、プロピレンの単独重合体、エチレンと他のモノマーとの共重合体、プロピレンと他のモノマーとの共重合体等が挙げられ、他のモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン等の炭素数3〜20程度のα―オレフィンや、酢酸ビニル、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/またはメタクリル酸を意味する(以下、同様とする)。
【0015】
ポリオレフィン樹脂として具体的には、例えば、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・オクテン共重合体、エチレン・ブテン・ヘキセン共重合体、エチレン・ブテン・オクテン共重合体、エチレン・ヘキセン・オクテン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体、及び、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系重合体;プロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ヘキセン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体等のプロピレン系重合体;ブテン系重合体等が挙げられる。
【0016】
ここで、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体とは、それぞれ、エチレン、プロピレン、またはブテンをモノマー単位の50モル%以上の組成で含有する樹脂を言う。
これらのポリオレフィン樹脂は、1種類を用いても2種類以上を併用することもできる。
【0017】
これらの中では、エチレン系重合体であるエチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体や、プロピレン系重合体であるプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体が安価で容易に入手することができ、経済性に優れるため好ましい。更には機械的特性の観点から、エチレン単独重合体、エチレン・α―オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体が好ましい。
【0018】
グラフト変性する原料として用いるポリオレフィン樹脂の密度は限定されないが、通常0.85g/cm以上、好ましくは0.87g/cm以上であり、一方、通常0.96g/cm以下、好ましくは0.95g/cm以下である。
また、ポリオレフィン樹脂のメルトフローレイト(MFR)は特に限定されないが、成形性の点から通常0.01〜50g/10分さらには0.1〜10g/10分のものが好ましい。ここで、ポリオレフィン樹脂のMFRは、ポリオレフィン樹脂がエチレン系重合体またはブテン系重合体の場合は190℃、荷重2.16kgでの値を意味し、ポリオレフィン樹脂がプロピレン系重合体の場合は230℃、荷重2.16kgでの値を意味する。
【0019】
本発明における変性ポリオレフィン樹脂は、前記のポリオレフィン樹脂が不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性されている。
ここでいう不飽和カルボン酸は限定されないが、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。また不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等が挙げられる。
【0020】
不飽和カルボン酸の誘導体の具体例としては、無水マレイン酸、無水ハイミック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸−N−モノエチルアミド、マレイン酸−N,N−ジエチルアミド、マレイン酸−N,N−モノブチルアミド、マレイン酸−N,N−ジブチルアミド、フマル酸モノアミド、フマル酸ジアミド、フマル酸−N−モノブチルアミド、フマル酸−N,N−ジブチルアミド、マレイミド、Nブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム等が挙げられる。
不飽和カルボン酸又はその誘導体は2種以上が併用されていても良い。
これらのうち、特にマレイン酸またはその無水物が、電子密度が低く反応性が高いことから好適である。
【0021】
ポリオレフィン樹脂のグラフト変性は、従来公知の種々の方法で行うことができる。変性方法は限定されないが、溶融させたポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸又はその誘導体を添加してグラフト共重合させる溶融変性法、溶媒に溶解させたポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸又はその誘導体を添加してグラフト共重合させる溶液変性法等が挙げられる。これらのうち、衛生性の観点から、溶媒を使用しなくてもよい溶融変性法が好ましく、押出機を用いてグラフト変性することがより好ましい。なお、効率よくグラフト変性するためには、ラジカル開始剤の存在下に変性することが好ましい。
【0022】
ラジカル開始剤は限定されないが、有機過酸化物又はアゾ化合物が好ましく、特に有機過酸化物が好ましい。具体的には、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレエート、2,2−ビス(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(トルイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル類、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等が挙げられ、これらは2
種以上が併用されてもよい。
【0023】
これらの中でも、半減期が1分となる分解温度が100℃以上であるものがグラフト変性効率の観点から好ましく、具体的には、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類、又は、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類が好ましい。
ラジカル開始剤の使用量は限定されないが、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、通常0.001〜1重量部の割合で用いられる。
【0024】
変性ポリオレフィン樹脂中における不飽和カルボン酸またはその誘導体による変性割合(以下、「グラフト率」と呼ぶ場合がある)は限定されないが、変性ポリオレフィン樹脂に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、一方、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。グラフト率が前記下限値未満では極性を有する樹脂との接着性が劣る傾向にあり、一方、前記上限値超過では、グラフト化の際にポリオレフィン樹脂自体が一部架橋化を起こして成形性が低下すると同時に、フィッシュアイ、異物発生等により製品外観が悪化する傾向にある。
ここで、グラフト率の測定は、変性ポリオレフィン樹脂をそのまま厚さ100μmのシートにプレス成形して試験サンプルとし、赤外線吸収スペクトル法を用い、樹脂中のカルボン酸またはその誘導体特有の吸収から求めることができる。具体的には、1900〜1600cm-1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル特性吸収を測定することにより求めることができる。
【0025】
なお、不飽和カルボン酸又はその誘導体によるポリオレフィン樹脂の変性は、100%がグラフト反応に供されるものではなく、ポリオレフィン樹脂と反応していない不飽和カルボン酸又はその誘導体も残留しているが、本発明におけるグラフト率とは、上記の通り、変性ポリオレフィン樹脂を上記の方法で測定した際の値を意味するものとする。
通常、グラフト反応に供されずに残留した不飽和カルボン酸又はその誘導体が多量に存在すると、本来の目的である他の樹脂との接着性向上効果を阻害する場合がある。しかしながら、本発明においては、成分(2):脂肪酸金属塩、及び成分(3):ハイドロタルサイト系化合物を含有することにより、残留した不飽和カルボン酸又はその誘導体による悪影響を消失させることが出来る。
【0026】
変性ポリオレフィン樹脂の密度は限定されないが、通常0.85g/cm以上、好ましくは0.87g/cm以上であり、一方、通常0.96g/cm以下、好ましくは0.95g/cm以下である。
また、変性ポリオレフィン樹脂のメルトフローレイト(MFR)は特に限定されないが、通常0.01〜3000g/10分、さらには0.1〜2500g/10分のものが好ましい。ここで、変性ポリオレフィン樹脂のMFRは、ポリオレフィン樹脂がエチレン系重合体またはブテン系重合体の場合は190℃、荷重2.16kgでの値を意味し、ポリオレフィン樹脂がプロピレン系重合体の場合は230℃、荷重2.16kgでの値を意味する。
【0027】
<成分(2):脂肪酸金属塩>
本発明に用いる脂肪酸金属塩は限定されないが、例えば、炭素数8以上、さらに好ましくは炭素数12〜30、特に好ましくは炭素数12〜20の有機酸の、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩、亜鉛、銅、コバルト、鉄、マンガン等の遷移金属塩などの金属塩を挙げるこ
とができる。中でも、成形安定性やコストの点で、炭素数12〜20のアルカリ土類金属塩および遷移金属塩が好ましく、特に、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸から選択される有機酸のマグネシウム、カルシウム、亜鉛塩が好ましい。これらの脂肪酸金属塩は、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
<成分(3):ハイドロタルサイト系化合物>
本発明に用いるハイドロタルサイト系化合物としては、天然鉱物であるハイドロタルサイトと工業的に合成したハイドロタルサイト類化合物を含み、何れであってもよく、これらの混合物であってもよい。
ハイドロタルサイト系化合物としては、代表的には下記一般式(I)で表されるハイドロタルサイト類が挙げられる。
2+1―XAl(OH)(An−X/n・mHO ・・・ (I)
【0029】
一般式(I)中、M2+は、アルカリ土類金属、または亜鉛族(Zn、Cd、Hg)の
二価金属イオンであるが、中でもMg、Ca、Znが望ましい。An−はn価アニオンで
あり、xは、0<x<0.5の条件を満足する数値であり、mは、0≦m≦4の条件を満足する数値である。
【0030】
一般式(I)中のAとしては、たとえばCl、Br、I、NO、ClO、SO2−、CO2−、SiO2−、Si2−、HPO2−、HBO2−、PO3−、Fe(CN)3−、Fe(CN)4−、CHCOO、C(OH)COO、(OCOCOO)、(OCOCCOO)、などの1種又は2種以上を例示することができる。Aとしては、とくにCO2−、SiO2−、Si2−などが好ましい。
合成ハイドロタルサイト系化合物としては市販品も入手可能であり、MgAl(OH)16CO・4HO が、協和化学工業社製、製品名DHT−4Aとして入手可能
である。
【0031】
<成分(4):ポリオレフィン樹脂>
本発明の樹脂組成物は、成分(1)としての変性ポリオレフィン樹脂の他に、成分(4)としてポリオレフィン樹脂を用いることができる。ここで、成分(4)としてのポリオレフィン樹脂とは、不飽和カルボン酸またはその誘導体でグラフト変性されていないポリオレフィン樹脂を意味する。
本発明の樹脂組成物に成分(4)を含有することにより、積層体とした際の接着性や耐熱性が向上する場合がある。
【0032】
成分(4)としてのポリオレフィン樹脂は限定されないが、前記した、変性ポリオレフィン樹脂の原料として用いるポリオレフィン樹脂そのものを用いることができる。ポリオレフィン樹脂は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
また、成分(4)としてのポリオレフィン樹脂は、変性ポリオレフィン樹脂の原料として用いるポリオレフィン樹脂と同一であっても異なっていてもよく、その組合わせは任意であるが、これらを同一樹脂とした場合に、積層体としての接着性が向上する場合がある。
【0033】
成分(4)の密度は限定されないが、通常0.85g/cm以上、好ましくは0.87g/cm以上であり、一方、通常0.96g/cm以下、好ましくは0.95g/cm以下である。
また、成分(4)のメルトフローレイト(MFR)は特に限定されないが、成形性の点から通常0.01〜50g/10分、さらには0.1〜10g/10分のものが好ましい
。なお、成分(4)のMFRは、ポリオレフィン樹脂がエチレン系重合体またはブテン系重合体の場合は190℃、荷重2.16kgでの値を意味し、ポリオレフィン樹脂がプロピレン系重合体の場合は230℃、荷重2.16kgでの値を意味する。
【0034】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物の組成割合は、成分(1):変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対して成分(2):脂肪酸金属塩を、0.005重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.02重量部以上含有し、また、1.0重量部以下、好ましくは0.8重量部以下、より好ましくは0.6重量部以下で含有する。成分(2)の配合量が上記範囲内にある場合、本発明の樹脂組成物はエチレン・ビニルアルコール共重合体等の極性基含有重合体に対する接着性に優れる。
【0035】
また、本発明の樹脂組成物の組成割合は、成分(1):変性ポリオレフィン樹脂100重量部に対して成分(3):ハイドロタルサイト系化合物を、0.005重量部以上、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.02重量部以上含有し、また、1.0重量部以下、好ましくは0.8重量部以下、より好ましくは0.6重量部以下で含有する。成分(3)の配合量が上記範囲内にある場合、本発明の樹脂組成物はエチレン・ビニルアルコール共重合体等の極性基含有重合体に対する接着性に優れる。
【0036】
ハイドロタルサイト系化合物の添加量が前記下限値未満では、脂肪酸金属塩と変性ポリオレフィンの塩交換により生成する遊離酸をハイドロタルサイト系化合物がトラップできず、接着層とエチレン・ビニルアルコール共重合体等の被着体との界面に遊離酸が析出するため接着を阻害することとなる。一方、ハイドロタルサイト系化合物の添加量が前記上限値超過では、遊離酸のトラップに加えハイドロタルサイト系化合物が成分(1)の変性ポリオレフィンと反応してしまい、該変性ポリオレフィンと被着体との反応効率を落としてしまう。また、ハイドロタルサイト系化合物の2次凝集によるブツ、フィッシュアイ等が生成し、製品の外観不良を引き起こす原因となり好ましくない。
【0037】
また、本発明の樹脂組成物は、成分(1)と成分(2)の配合割合が、下記式(A)の値として通常0.001以上、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.02以上であり、また、通常100以下、好ましくは10以下、より好ましくは1以下であることが望ましい。下記式(A)の値が前期下限値未満であると、ハイドロタルサイト系化合物が成分(1)の変性ポリオレフィンと反応してしまい、該変性ポリオレフィンと被着体との反応効率を落としてしまう場合がある。一方、下記式(A)の値が前期上限値超過であると、脂肪酸金属塩と変性ポリオレフィンの塩交換により生成する遊離酸をハイドロタルサイト系化合物がトラップできず、接着層とエチレン・ビニルアルコール共重合体等の被着体との界面に遊離酸が析出するため接着を阻害する場合がある。
[〔成分(2)の配合量(重量部)〕/〔{成分(1)の配合量(重量部)}×{成分(1)のグラフト率(重量%)}〕]×100 ・・・ (A)
【0038】
また、本発明の樹脂組成物は、成分(2):脂肪酸金属塩に対する成分(3):ハイドロタルサイト系化合物の配合割合が、通常0.005重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、また、通常200重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは15重量%以下であることが望ましい。成分(2)に対する成分(3)の配合割合が前記下限値未満であると、脂肪酸金属塩と変性ポリオレフィンの塩交換により生成する遊離酸をハイドロタルサイト系化合物がトラップできず、接着層とエチレン・ビニルアルコール共重合体等の被着体との界面に遊離酸が析出するため接着を阻害する場合がある。一方、成分(2)に対する成分(3)の配合割合が前記上限値超過であると、ハイドロタルサイト系化合物が成分(1
)の変性ポリオレフィンと反応してしまい、該変性ポリオレフィンと被着体との反応効率を落としてしまう場合がある。
【0039】
以上の通り、本発明においては、成分(1)、成分(2)および成分(3)の相互の配合比率を最適化することによって、積層体とした際の接着強度を最大限に発揮することができるので好ましい。
【0040】
成分(4)を用いる場合のその使用量は特に限定されないが、成分(1)100重量部に対し、成分(4)の配合割合が、通常0.01重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは10重量部以上、更に好ましくは100重量部以上であり、通常10000重量部以下、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは500重量部以下である。
また、成分(4)を用いる場合のその含有量は、本発明の樹脂組成物中に、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは3重量%以上であり、また、好ましくは90重量%以下、より好ましくは70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下であることが望ましい。
【0041】
成分(4)を上記の含有量で含有することにより、本発明の樹脂組成物を用いて積層体とした際の接着性や耐熱性が向上する場合がある。更には、成分(1)、成分(2)および成分(3)を含有する樹脂組成物を予めマスターバッチとして製造しておき、これを成分(4)で適宜希釈することによって種々の配合比率の樹脂組成物とすれば、様々な用途に対してそれぞれ最適化した樹脂組成物を簡便に製造することが出来るという大きな効果がある。
【0042】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を著しく妨げない範囲で、上述の成分(1)〜(4)以外に添加剤や樹脂等(以下、その他の成分という場合がある)を配合することができる。その他の成分は、1種類のみを用いても、2種類以上を任意の組合せと比率で併用してもよい。
【0043】
添加剤としては、具体的には、プロセス油、加工助剤、可塑剤、結晶核剤、衝撃改良剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、滑剤、充填剤、相溶化剤、耐熱安定剤、耐候安定剤(酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤など)、カーボンブラック、着色剤(顔料、染料など)等が挙げられる。これら添加剤を用いる場合のその含有量は限定されないが、樹脂組成物に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.2重量%以上であり、また、通常5重量%以下、好ましくは2重量%以下であることが望ましい。なおこれらの添加剤は、本発明の樹脂組成物をマスターバッチとして用いる場合には、前記した含有量の2〜50倍、好ましくは3〜30倍の濃度で含有させることもできる。
【0044】
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤と非ハロゲン系難燃剤に大別されるが、非ハロゲン系難燃剤が好ましく、具体的には、金属水酸化物、リン系難燃剤、窒素含有化合物(メラミン系、グアニジン系)難燃剤及び無機系化合物(硼酸塩、モリブデン化合物)難燃剤等が挙げられる。
熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物等が挙げられる。
充填剤は、有機充填剤と無機充填剤に大別される。有機充填剤としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリ
ウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
【0045】
その他の成分として用いる樹脂としては、具体的には、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、及びポリメチルメタクリレート系樹脂等のアクリル/メタクリル系樹脂等を挙げることができる。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を従来公知の方法、たとえば、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合する方法、あるいは、このような方法で混合して得られた混合物を、さらに一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練した後、造粒あるいは得られた樹脂塊を粉砕することによって得ることができる。また、ニーダーや、ロールを用いて混合することもできる。これらの方法で樹脂組成物を製造する際の製造条件は限定されず、周知の条件で適宜設定することができる。
【0047】
本発明の樹脂組成物の密度は限定されないが、成形性の点から、通常0.85g/cm以上、好ましくは0.87g/cm以上であり、一方、通常0.96g/cm以下、好ましくは0.95g/cm以下である。
また、本発明の樹脂組成物のメルトフローレイト(MFR)は特に限定されないが、成形性の点から、通常0.01〜50g/10分、さらには0.1〜10g/10分のものが好ましい。なお、樹脂組成物のMFRについても前記と同様、樹脂組成物が成分(1)と成分(4)との総量としてエチレンまたはブテンを主成分とする場合は190℃、荷重2.16kgでの値を意味し、プロピレンを主成分とする場合は230℃、荷重2.16kgでの値を意味する。
【0048】
上記のような各成分からなる本発明の樹脂組成物は種々の樹脂との接着性が良好であるが、特に、極性基を有するオレフィン系ポリマー、ポリアミド樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体等、極性基を含有する樹脂に対して高い接着性能を発揮する。
【0049】
<積層体>
次に、本発明の積層体について説明する。
本発明の積層体は、上述した本発明の樹脂組成物からなる接着層(以下、樹脂組成物層という場合がある)を含む2層または3層以上に積層された積層シート、積層フィルム、積層ボトル等の積層体である。
本発明の積層体を製造する方法としては、従来公知の種々の手法を採用することが出来る。例えば、押出機で溶融させた、個々の溶融樹脂を多層ダイスに供給し、ダイスの中で積層するインフレーションフィルム、T−ダイフィルム、シート、パイプなどを成形する共押出手法や、溶融した個々の樹脂を同一金型内にタイムラグを付けインジェクションする、共インジェクション成形などがある。
また、各層を構成する樹脂フィルム同士に熱をかけてラミネートすることで積層することも可能である。
【0050】
本発明の積層体は、上述の樹脂組成物からなる層と他の層とからなる積層体である。他の層を構成する材料は限定されないが、極性を有する樹脂層であることが好ましく、具体的には、極性基を有するオレフィン系ポリマー層や、ポリアミド樹脂層、エチレン・ビニルアルコール共重合体層などが好適に用いられる。ここで、極性を有する樹脂とは、樹脂
の分子構造中に極性基や極性をもつ結合を有する樹脂を意味し、具体的には、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エステル基、イソシアネート基、グリシジル基等の官能基や、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合等の結合をもつ樹脂を意味する。
【0051】
上記の極性基を有するオレフィン系ポリマーとしては、具体的には、本発明の成分(1)に相当する樹脂のほか、シラン変性ポリオレフィン等が挙げられる。
上記ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロン6/11、MXDナイロン、アモルファスナイロン、テレフタル酸/アジピン酸/ヘキサメチレンジアミン共重合体などが好ましく用いられる。中でも融点、剛性などが優れるナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66が好ましい。
【0052】
また、上記エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、好ましくはエチレン含有量が15〜65モル%、さらに好ましくは25〜48モル%である共重合体が望ましい。このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体は、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体を鹸化することにより調製することができる。その鹸化度が好ましくは50%以上、さらに好ましくは90%以上になるように鹸化したものが用いられる。なお、鹸化度の上限は100%である。エチレン含有量が少な過ぎると熱分解し易く、溶融成形が困難で、また延伸性にも劣り、かつ吸水し膨潤し易く耐水性が劣る。一方エチレン含有量が多過ぎると、耐ガス透過性が低下する傾向がある。また、鹸化度が低過ぎる場合には、耐ガス透過性が低下する傾向がある。
【0053】
また、本発明の積層体は、該樹脂組成物層、極性を有する樹脂層に加え、さらにエチレン系ポリマー、プロピレン系ポリマー等から選択される無極性のオレフィン系ポリマー層があってもよい。そのような場合の層構成は任意であるが、特に、無極性のオレフィン系ポリマー層、該樹脂組成物層、エチレン・ビニルアルコール共重合体層の順に積層された積層体が好ましい。
【0054】
上記エチレン系ポリマーは、エチレン含有量が50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80〜100モル%の範囲にある。このようなエチレン系ポリマーとしては、具体的には、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂などを挙げることができる。中でも、低密度ポリエチレンまたはEVAが好ましく、特に密度が0.930g/cm以下である直鎖状低密度ポリエチレンまたはEVAが好ましく用いられる。
【0055】
上記プロピレン系ポリマーは、プロピレン含有量が50モル%以上の範囲にある。具体的には、プロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ヘキセン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体等のプロピレン系重合体を挙げることができ、中でもプロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・オクテンランダム共重合体、特にプロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体が好ましく用いられる。
【0056】
本発明の積層体は、特に延伸した場合に、接着性が良好であるという特性を顕著に奏することができる。
本発明の積層体を延伸して得る場合の製造方法としては、従来より公知の種々の方法を採用することができる。延伸方向は、一軸延伸であっても二軸延伸であってもよく、また逐次延伸で製造しても、同時延伸で製造してもよい。
【0057】
例えば、前記方法で得られた未延伸の積層体を冷却固化後、各成形品をインライン、またはアウトラインで60〜160℃の延伸温度まで再加熱し、テンター、プラグおよび圧縮空気等を用い一軸方向、あるいは二軸方向に少なくとも面積比で1.5倍以上延伸を行い、一軸または二軸延伸成形したフィルム、カップ、ボトル等の成形体を得る方法が挙げられる。インフレーションフィルムの場合、インフレーション同時二軸延伸法、ロールおよびテンターによる逐次二軸延伸法等、カップの場合、金型内で圧縮空気等のみによる圧空成形、プラグと圧縮空気を併用するSPPF成形等が一般的に用いられる。
【0058】
本発明の積層体を延伸して得る場合、上記の通り延伸した後には、熱固定を行ってもよいし、熱固定をせずに製品としてもよい。熱固定を行わない場合は、その後に積層体を加熱することによって応力が開放され、収縮する性質をもつためシュリンクフィルムとして用いることができる。
【0059】
本発明の積層体の各層の厚みは限定されず、層構成、用途、最終製品の形状、要求される物性等により任意に設定することができる。
食品包装用や工業製品包装用のフィルムの場合、無延伸の積層体の総厚みは、通常30〜400μmであり、さらには40〜300μmであることが好ましく、特には50〜200μmであることが好ましい。また、無延伸の積層体を構成する接着性樹脂層の厚みは、通常1〜100μmであり、さらには2〜80μmであることが好ましく、特には3〜50μmであることが好ましい。
また、該用途に用いる延伸積層体(延伸フィルム)の総厚みは、通常5〜400μmであり、さらには10〜300μmであることが好ましく、特には20〜200μmであることが好ましい。また、延伸フィルムを構成する接着性樹脂層の厚みは、通常0.1〜50μmであり、さらには0.3〜30μmであることが好ましく、特には0.5〜20μmであることが好ましい。
【0060】
食品用や衛生品用、一般工業製品用のボトル形状の場合、無延伸または延伸された積層体の総厚みは、通常0.1〜7mmであり、さらには0.15〜6mmであることが好ましく、特には0.2〜5mmであることが好ましい。また、無延伸または延伸された積層体を構成する接着性樹脂層の厚みは、通常3〜300μmであり、さらには4〜200μmであることが好ましく、特には5〜100μmであることが好ましい。
【0061】
ガソリンタンク等の大型成型品の場合、無延伸または延伸された積層体の総厚みは、通常1〜20mmであり、さらには2〜10mmであることが好ましく、特には3〜5mmであることが好ましい。また、無延伸または延伸された積層体を構成する接着性樹脂層の厚みは、通常30〜400μmであり、さらには40〜300μmであることが好ましく、特には52.5〜200μmであることが好ましい。
【0062】
通常、積層体の層間接着力は、接着層にステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩を含有することにより低下する場合が有り、また接着層の厚みが厚いほど脂肪酸金属塩を含有する絶対量が多くなる為、脂肪酸金属塩とマレイン酸等の変性ポリオレフィン樹脂を構成するカルボン酸との反応により、遊離酸が生成し易く、その遊離酸が接着層と被着体の界面に移行することにより接着の低下が大きくなる場合がある。これに対し、本発明の積層
体は、接着層の厚みが厚い場合においても良好な接着性を発揮する事ができる。この為、接着層の厚みが無延伸状態で5mm以上、更には10mm以上であっても良好な層間接着力を維持することができる。
【0063】
本発明に係る樹脂組成物は、極性を有する樹脂、特に、ポリアミド樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体に対して優れた接着強度特性を示す。このため、本発明に係る積層体は優れた接着強度特性を示し、更に強度、耐熱性およびガスバリアー性に優れる。従って、本発明に係る積層体は、ガソリンタンク、食用油のボトルやハム等の畜肉包装フィルムなどの一般食品包装用材料、意匠包装やラベル等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で使用した原料は次のとおりである。なお、成分(1)におけるグラフト率は、赤外線吸収スペクトル法を用い、樹脂中のカルボン酸またはその誘導体特有の吸収として、1900〜1600cm-1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル特性吸収を測定することによって確認した。
【0065】
<成分(1)>
・成分(1)a: 無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(グラフト率:0.8重量%、MFR(230℃、2.16kg)60g/10分)
・成分(1)b: 無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(グラフト率:0.7重量%、MFR(190℃、2.16kg)3g/10分)
・成分(1)c: 無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(グラフト率:1.0重量%、MFR(190℃、2.16kg)8g/10分)
<成分(2)>
・成分(2)a: ステアリン酸カルシウム(キシダ化学社製)
・成分(2)b: ステアリン酸亜鉛
【0066】
<成分(3)>
・成分(3)a: 合成ハイドロタルサイト(協和化学工業社製、DHT−4A)
・成分(3)b: タルク(日本タルク社製、ミクロエースC31(商標))比較例用
・成分(3)c: シリカ(株式会社マイクロン社製、HS−301)比較例用
【0067】
<成分(4)>
・成分(4)a: ポリプロピレン(プロピレン単独重合体、MFR(230℃、2.16kg)0.9g/10分)
・成分(4)b: ポリエチレン(エチレン・オクテン共重合体、MFR(190℃、2.16kg)3g/10分)
・成分(4)c: ポリエチレン(エチレン・オクテン共重合体、MFR(190℃、2.16kg)1g/10分)
・成分(4)d: エチレン系エラストマー(エチレン・プロピレン共重合体、MFR(190℃、2.16kg)0.1g/10分)
<その他成分>
・安定剤a: イルガノックス1010(商標、チバスペシャリティケミカルズ社製、フェノール系安定剤)
・安定剤b: イルガフォス168(商標、チバスペシャリティケミカルズ社製、リン系安定剤)
・粘着付与剤: アルコン(商標)P115(荒川化学社製)
【0068】
(実施例1)
成分(1)aを100重量部、成分(2)aを0.17重量部、成分(3)aを0.50重量部、成分(4)aを233重量部、安定剤aを0.17重量部として事前にドライブレンドにより配合し、単軸押出機PMS50−32(1V)(D=50mmφ、L/D=32、IKG(株)製)を用い、温度230℃、スクリュー回転数60rpm、押出量20kg/hで溶融混練し、紐状に押し出し、冷却後カッティングし、樹脂組成物のペレットを得た。
【0069】
(実施例2〜4、比較例1〜3)
成分(1)〜成分(4)及び安定剤として用いた原料及び配合比率を表−1の通りとした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物の各ペレットを得た。
【0070】
<フィルム成形>
上記実施例1〜4および比較例1〜3で得られたペレットをそれぞれ接着材層として用い、株式会社プラコー社製、3種3層共押出Tダイ成形機にて多層フィルム(積層体)を得た。
層構成は、冷却ロール面に接する側(内層)から外側に向かって、ポリプロピレンFY4(日本ポリプロ社製、プロピレン単独重合体、MFR(230℃、2.16kg)5.0g/10分)/接着材/エバール(商標)F101A(クラレ社製、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン共重合含量32モル%)とし、各層の厚みは、それぞれ100μm/50μm/100μmとした。成形温度は220℃、成形速度は5m/分に設定した。
【0071】
<層間接着力Aの測定>
上記で得られた積層体を幅10mmの短冊状に切り出して試験片とし、23℃雰囲気下、速度100mm/minにて180°剥離試験を行った。結果を表−1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
(実施例5)
成分(1)bを25重量部、成分(1)cを75重量部、成分(2)bを0.02重量部、成分(3)aを0.25重量部、成分(4)bを50重量部、成分(4)cを37.5重量部、成分(4)dを37.5重量部、粘着付与剤を25重量部、安定剤aを0.2
5重量部、安定剤bを0.25重量部として事前にドライブレンドにより混合し、二軸押出機PCM45II/3−34−3V(D=45mmφ、L/D=34、株式会社池貝製)を用い、温度180℃、スクリュー回転数400rpm、押出量20kg/hで溶融混練し、紐状に押し出し、冷却後カッティングし、樹脂組成物のペレットを得た。
【0074】
(比較例4)
成分(3)aを用いなかった以外は実施例5と同様にドライブレンドにより混合し、実施例5と同様に二軸押出機で溶融混練し、紐状に押し出し、冷却後カッティングし、ペレットを得た。
【0075】
<延伸フィルム成形>
上記実施例5および比較例4で得られたペレットをそれぞれ接着材層として用い、株式会社プラコー社製、3種3層共押出Tダイ成形機にて多層フィルム(積層体)を得た。
層構成は、冷却ロール面に接する側から外側に向かって、接着材/接着材/エバール(商標)F101A(クラレ社製、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン共重合含量32モル%)とすることによって2層構成とした。各層の厚みは、それぞれ300μm/360μmとし、成形温度は220℃、成形速度は1m/分に設定し、延伸原反シートを得た。得られたシートをパンタグラフ式二軸延伸機(東洋精機社製)にて、延伸倍率10倍(面積倍率)、延伸温度80℃、延伸速度3.5m/minの条件で同時二軸延伸処理を行い、熱固定は行わなかった。得られた延伸シートの総厚みは、約70μmであった。
【0076】
<層間接着力Bの測定>
上記で得られた延伸シートを幅10mmの短冊状に切り出して試験片とし、23℃雰囲気下、速度50mm/minにてTピール剥離試験を行った。
層間接着力Aおよび層間接着力Bの測定結果を表−2に示す。
【0077】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(1)100重量部に対し、成分(2)を0.005〜1.0重量部、成分(3)を0.005〜1.0重量部含有することを特徴とする樹脂組成物。
成分(1):ポリオレフィン樹脂を不飽和カルボン酸又はその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィン樹脂
成分(2):脂肪酸金属塩
成分(3):ハイドロタルサイト系化合物
【請求項2】
更に成分(4):ポリオレフィン樹脂を含有し、かつ、成分(1)100重量部に対し、成分(4)の配合割合が0.01〜10000重量部であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
成分(1)と成分(2)の配合割合が、下記式(A)の値として0.001〜100であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
[〔成分(2)の配合量(重量部)〕/〔{成分(1)の配合量(重量部)}×{成分(1)のグラフト率(重量%)}〕]×100 ・・・ (A)
【請求項4】
成分(2)に対する成分(3)の配合割合が0.005〜200重量%であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の樹脂組成物からなる層を含む積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体がエチレン・ビニルアルコール共重合体からなる層を有することを特徴とする積層体。
【請求項7】
該樹脂組成物からなる層とエチレン・ビニルアルコール共重合体からなる層とが接していることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
請求項5〜7の何れかに記載の積層体を延伸して得られることを特徴とする延伸フィルム。
【請求項9】
請求項5〜7の何れかに記載の積層体を延伸して得られることを特徴とするシュリンクフィルム。


【公開番号】特開2012−172047(P2012−172047A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34967(P2011−34967)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】