説明

樹脂被覆金属板及びその製造方法

【課題】火炎処理やコロナ放電処理を施さなくても、中間樹脂層と上塗り塗膜との密着性を高くして上塗り塗膜の剥離を防止することができると共に上塗り塗料の焼き付け時に中間樹脂層の膨れを抑えることができ、温水試験において脆性破壊の発生を抑えることができる樹脂被覆金属板を提供する。
【解決手段】金属原板1の表面に化成処理層10を設けると共に化成処理層10の表面にプライマー層11を設ける。プライマー層11の表面をナイロン系熱可塑性樹脂層2で被覆する。ナイロン系熱可塑性樹脂層2の表面に溶剤系合成樹脂塗膜3を形成する。塗料の塗装性に優れ、融点が高いナイロン系熱可塑性樹脂層2を中間樹脂層として形成しているために、溶剤系合成樹脂塗料で形成される上塗り塗膜と中間樹脂層との密着性を高くすることができる。溶剤系合成樹脂塗料の焼き付け時における中間樹脂層の膨れの発生や温水試験における脆性破壊の発生を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食性、耐候性、加工性に優れた樹脂被覆金属板及びその製造方法に関するものであり、特に、建材、家電製品、車両等に好適に使用することができる樹脂被覆金属板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属原板の表面を中間樹脂層及び上塗り塗膜で被覆した樹脂被覆金属板が提供されている(例えば、特許文献1〜8参照)。
【0003】
これら樹脂被覆金属板は、大きく分けて、ポリオレフィン系樹脂で形成した中間樹脂層の表面に塗装するものと、ポリエステルフィルムで形成した中間樹脂層の表面に塗装するものとがある。そして、中間樹脂層により、樹脂被覆金属板に成形加工を施した際に生じる上塗り塗膜のクラックから金属原板の露出を防ぎ(伸びの良い中間樹脂層の樹脂によりクラック部分において金属原板をカバーする)、耐食性を向上させるようにしている。
【0004】
このような樹脂被覆金属板において、上塗り塗膜としては、中間樹脂層が紫外線に対して劣化等する恐れがあるために、耐紫外線性能に優れる熱硬化性合成樹脂塗料で形成するようにしている。また、上塗り塗膜の色調を替えることで意匠性を容易に変更することができ、多品種小ロットの要求に対して容易に対応が可能なものである。さらに、樹脂被覆金属板を建材用途に使用する場合は不燃性が要求されるが、耐候性の良い上塗り塗料を使用することで、中間樹脂層の薄膜化を図ることができ、不燃性への対応も容易に可能なものである。
【0005】
ところで、ポリオレフィン系樹脂で形成した中間樹脂層を有する樹脂被覆金属板では、上塗り塗膜との密着性を高めるために、火炎処理やコロナ放電処理を施し、中間樹脂層の表面の極性を高めた後、上塗り塗料を塗装するようにしている。また、ポリエステルフィルムで形成した中間樹脂層を有する樹脂被覆金属板では、上塗り塗膜との密着性を高めるために、プライマーを介して中間樹脂層の表面に上塗り塗料を塗装するようにしている。
【0006】
しかし、ポリオレフィン系樹脂で形成した中間樹脂層の場合、火炎処理等を行って層表面の極性を高めたとしても、上塗り塗膜との密着性を充分に得られず、上塗り塗膜の剥離が生じる場合があり、また、上塗り塗料の焼き付け時に、塗料中の溶剤により中間樹脂層中に膨れ(フクレ)が発生し、意匠性や加工性を低下させる恐れがあった。また、ポリエステルフィルムで形成した中間樹脂層の場合、温水試験にて中間樹脂層の加水分解による脆性破壊が生じるという問題があった。
【特許文献1】特許第1901641号公報
【特許文献2】特許第1896291号公報
【特許文献3】特許第2922019号公報
【特許文献4】特許第2640703号公報
【特許文献5】特許第2671718号公報
【特許文献6】特開平7−227933号公報
【特許文献7】特許第3228022号公報
【特許文献8】特許第3075963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、火炎処理やコロナ放電処理を施さなくても、中間樹脂層と上塗り塗膜との密着性を高くして上塗り塗膜の剥離を抑えることができると共に上塗り塗料の焼き付け時に中間樹脂層の膨れを抑えることができ、しかも温水試験において脆性破壊の発生を抑えることができる樹脂被覆金属板及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る樹脂被覆金属板は、金属原板1の表面に化成処理層10を設けると共に化成処理層10の表面にプライマー層11を設け、プライマー層11の表面をナイロン系熱可塑性樹脂層2で被覆し、ナイロン系熱可塑性樹脂層2の表面に溶剤系合成樹脂塗膜3を形成して成ることを特徴とするものである。
【0009】
本発明にあっては、溶剤系合成樹脂塗膜3が熱硬化性合成樹脂塗膜であることが好ましい。
【0010】
また、本発明にあっては、熱硬化性合成樹脂塗膜がイソシアネート架橋熱硬化性合成樹脂塗膜であることが好ましい。
【0011】
また、本発明にあっては、プライマー層11とナイロン系熱可塑性樹脂層2の間に変性ポリオレフィン系樹脂の接着層13を設けることができる。
【0012】
本発明に係る樹脂被覆金属板の製造方法は、金属原板1の表面に化成処理層10を設けると共に化成処理層10の表面にプライマー層11を設け、プライマー層11の表面をナイロン系熱可塑性樹脂層2で被覆した後、ナイロン系熱可塑性樹脂層2の表面に溶剤系合成樹脂塗料を塗布して焼き付けることを特徴とするものである。
【0013】
本発明にあっては、上記ナイロン系熱可塑性樹脂層2は変性ポリオレフィン系樹脂の接着樹脂層13と複合されており、この接着樹脂層13を介してプライマー層11の表面にナイロン系熱可塑性樹脂層2を接着することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、塗料の塗装性に優れ、融点が高いナイロン系熱可塑性樹脂層2を中間樹脂層として形成しているために、溶剤系合成樹脂塗料で形成される上塗り塗膜と中間樹脂層との密着性を高くすることができ、上塗り塗膜の剥離を少なくすることができるものであり、しかも、溶剤系合成樹脂塗料の焼き付け時における中間樹脂層の膨れの発生や温水試験における脆性破壊の発生を抑えることができるものである。
【0015】
また、本発明にあって、溶剤系合成樹脂塗膜3が熱硬化性合成樹脂塗膜であると、中間樹脂層であるナイロン系熱可塑性樹脂層2と上塗り塗膜である溶剤系合成樹脂塗膜3との密着性を向上させることができ、上塗り塗膜をより剥離しにくくすることができるものである。この効果は、熱硬化性合成樹脂塗膜がイソシアネート架橋熱硬化性合成樹脂塗膜である場合に、特に発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0017】
図1に本発明の樹脂被覆金属板の一例としてその断面図を示す。
【0018】
金属原板1としては、従来から建築材として使用されている各種の金属板を用いることができ、例えば、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、アルミニウム板、ステンレス鋼板などを用いることができる。また、金属原板1には、クロム酸を用いた化成処理(クロメート処理)が施されており、この場合、金属原板1は表裏両層に化成処理層10を有することになる。化成処理を施した金属原板1を用いると、防錆性や塗膜(後述のプライマー層11)との密着性を向上させることができる。このような金属原板1としては、厚み0.3〜2.0mmのものを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0019】
金属原板1の表面側の化成処理層10の表面にはプライマー層11が形成されている。このプライマー層11は防錆性(防食性)や後述の中間樹脂層12と金属原板1との密着性を向上させるために形成するものであり、その効果を発揮させるために、プライマー層11の厚み1〜10μmにするのが好ましい。プライマー層11は公知の材料で形成することができるが、例えば、イソシアネート架橋エポキシ樹脂塗料を塗布して乾燥硬化させた塗膜で形成することができる。イソシアネート架橋エポキシ樹脂塗料とは、架橋剤(硬化剤)としてイソシアネート基を有する化合物を用い、この架橋剤でエポキシ樹脂を硬化して塗膜となる塗料であって、例えば、日本ファインコーティングス(株)製の品番「SC667P」などを用いることができる。尚、金属原板1の裏面側の化成処理層10の表面には必要に応じて、裏面塗膜14を設けることができる。
【0020】
上記プライマー層11の表面には中間樹脂層12が形成されている。中間樹脂層12は接着樹脂層13とナイロン系熱可塑性樹脂層2とを積層して複合することにより形成したものであって、接着樹脂層13がプライマー層11と接着し、接着樹脂層13の表面にナイロン系熱可塑性樹脂層2が積層された状態となっている。
【0021】
接着樹脂層13はナイロン系熱可塑性樹脂層2をプライマー層11と接着するためのものであって、例えば、変性ポリオレフィン樹脂で形成することができ、具体的には、ポリプロピレンポリマーなどのポリオレフィン樹脂に酸変性モノマーをブレンドするなどして変性したものを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
ナイロン系熱可塑性樹脂層2は、ポリオレフィン樹脂などに比べて塗装性が良く、樹脂融点の高いために、火炎処理等を行わなくても、中間樹脂層12と上塗り塗膜との密着性に優れ、中間樹脂層12の膨れの発生を少なくすることができるものであり、温水試験においても中間樹脂層12の加水分解による脆性破壊が見られなくなるものである。特に、上塗り塗料として溶剤系合成樹脂塗料であるイソシアネート架橋エポキシ樹脂塗料を用いることで、上塗り塗膜との密着性がさらに優れたものとなる。ナイロン系熱可塑性樹脂層2は6ナイロンを用いて形成することができるが、これに限らず、他のナイロン樹脂を用いて形成しても良い。また、ナイロン系熱可塑性樹脂層2には加工時や施工時に傷などにより上塗り塗膜が破壊された場合を想定して、公知の酸化防止剤及び光安定剤(HALS)などの耐候剤を配合するのが好ましい。
【0023】
本発明の効果を得るために、中間樹脂層12の厚みは25〜100μmに形成することができるが、接着樹脂層13とナイロン系熱可塑性樹脂層2との厚みの比率は、接着樹脂層13の厚み:ナイロン系熱可塑性樹脂層2の厚み=2:8〜5:5の範囲が好ましく、これにより、中間樹脂層12の剥離や破損を少なくすることができるものである。
【0024】
上記の中間樹脂層12の表面には溶剤系合成樹脂塗膜3が形成されている。溶剤系合成樹脂塗膜3は中間樹脂層12との密着性を向上させる上で、熱硬化性合成樹脂塗膜であることが好ましく、さらにイソシアネート架橋熱硬化性合成樹脂塗膜やイソシアネート架橋・メラミン架橋併用熱硬化性合成樹脂塗膜であることがより好ましい。イソシアネート架橋熱硬化性合成樹脂塗膜は、イソシアネート化合物で架橋された熱硬化性合成樹脂で形成された塗膜であるが、この場合、架橋剤であるイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどを例示することができ、また、熱硬化性合成樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、溶剤系合成樹脂塗膜3の厚みは5〜25μmとするのが好ましく、これにより、中間樹脂層12からの剥離や溶剤系合成樹脂塗膜3の破損を少なくすることができるものである。
【0025】
上記のような層構成を有する本発明の樹脂被覆金属板は、樹脂自体の伸び率がかなり大きい中間樹脂層12によって金属原板1の表面がカバーされるために、中間樹脂層12の割れなどの破損を防止することができ、金属原板1の表面の露出を防いで錆びたりするようなことが無く、加工性を充分に確保することができるものである。また、最上層の溶剤系合成樹脂塗膜3として耐候性の良いものを設けることによって、太陽光線(紫外線)から中間樹脂層12の劣化を防止することができるものである。さらに、溶剤系合成樹脂塗膜3の色を替えるだけで色替えが済み、少量多品種の生産にも充分に対応することができ、意匠性も向上することができる。
【0026】
そして、本発明においては、溶剤系合成樹脂塗膜3の塗料中のイソシアネート基などとナイロン系熱可塑性樹脂層2のナイロン樹脂中のアミド基が電気的に引かれ合うために、溶剤系合成樹脂塗膜3とナイロン系熱可塑性樹脂層2の密着性が向上するものと考えられる。
【0027】
また、ポリオレフィン系樹脂で形成した中間樹脂層の表面に溶剤系合成樹脂塗膜3を形成した場合は、上塗り塗装としての溶剤系合成樹脂塗料を塗装した後、230℃程度で焼付けて乾燥させるために、融点を遥かに超えるポリプロピレン(融点153℃程度)などのポリオレフィン系樹脂で形成した中間樹脂層が溶融状態で硬化前の溶剤系合成樹脂塗料と接触し、この塗料中の溶剤に侵されて膨れが発生するものと考えられる。一方、本発明では、ナイロン系熱可塑性樹脂層2の表面に溶剤系合成樹脂塗膜3を形成するために、ナイロン系熱可塑性樹脂の融点が220℃程度であるために、上塗り塗装としての溶剤系合成樹脂塗料を塗装した後、230℃程度で焼付けて乾燥させても、ナイロン系熱可塑性樹脂層2が溶融状態となりにくく、従って、溶剤系合成樹脂塗膜3を形成するための溶剤系合成樹脂塗料の溶剤に侵されにくくなって、膨れが発生しにくくなるものと考えられる。
【0028】
また、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムを中間樹脂層として用いた場合であっても、ナイロン系熱可塑性樹脂層2であっても、吸水する性質を持っているが、ポリエチレンテレフタレートフィルムは吸水によって加水分解を起すが、ナイロン系熱可塑性樹脂層2は吸水によって軟質化するだけであり、このために、本発明では脆性破壊が起こりにくくなるものである。
【0029】
図2に本発明の樹脂被覆金属板の製造工程を示す。この製造工程では帯状に形成される金属原板1を連続的に搬送しながら図1に示す各種の層を形成していくものである。すなわち、まず、金属原板1をコイルから払い出した後に化成処理し、これを塗装装置であるプライムコーター20に送って、金属原板1の化成処理層10の表面にプライマーを塗布する。次に、プライマーを塗布した金属原板1を乾燥炉21に送って、プライマーを焼付け乾燥してプライマー層11を形成する。ここでの焼付け乾燥の時間及び温度はプライマーの種類などに応じて適宜設定する。
【0030】
次に、Tダイ押出装置などの押出装置22からナイロン系熱可塑性樹脂と変性ポリオレフィン樹脂とを上記プライマー層11の表面にフィルム状に共押出する。次に、ラミネータ23により共押出のフィルム22aの変性ポリオレフィン樹脂の方をプライマー層11の表面に押し付けて金属原板1にラミネートする。これにより、ナイロン系熱可塑性樹脂からなるナイロン系熱可塑性樹脂層2と変性ポリオレフィン樹脂からなる接着樹脂層13とが複合された中間樹脂層12を形成することができ、また、ナイロン系熱可塑性樹脂層2は接着樹脂層13を介してプライマー層11の表面に接着される。ここでのラミネートの時間及び温度は中間樹脂層12の種類などに応じて適宜設定する。次に、ラミネートした金属原板1を水冷帯24に通して中間樹脂層12の硬化温度まで冷却した後、塗装装置であるフィニッシュコーター25により中間樹脂層12の表面に溶剤系合成樹脂塗料を上塗り塗料として塗装する。次に、溶剤系合成樹脂塗料を塗布した金属原板1を乾燥炉26に送って、溶剤系合成樹脂塗料を焼付け乾燥して溶剤系合成樹脂塗膜3を形成する。ここでの焼付け乾燥の時間及び温度は溶剤系合成樹脂塗料の種類などに応じて適宜設定する。そして、この後、溶剤系合成樹脂塗膜3を形成した金属原板1をジェットクーラー(空冷帯)27、水冷帯28に通して充分冷却した後、テンションロール29に巻き取られる。このようにして本発明の樹脂被覆金属板を製造することができる。
【0031】
尚、本発明において、化成処理層10、プライマー層11、中間樹脂層12における接着樹脂層13及び裏面塗膜14は必須ではなく、必要に応じて形成することができる。
【実施例】
【0032】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0033】
(実施例1)
55%Al−Zn合金めっき(AZ150)を施した厚さ0.35mmの鋼板(日鉄鋼板(株)製のガルバリウム鋼板(登録商標))にクロム酸で化成処理を施すことによって、クロム量50mg/mの化成処理層(クロメート被膜)を形成し、金属原板1とした。
【0034】
次に、プライムコーター20を用いてイソシアネート架橋エポキシ樹脂塗料(日本ファインコーティングス(株)製の品番「SC667P」)を塗布し、乾燥炉21で200℃に焼き付け乾燥し、厚さ3μmのプライマー層11を上記化成処理層10の表面に形成した。
【0035】
次に、押出装置22によって二層からなる樹脂層を積層したフィルム状態で共押出成形し、この樹脂層をラミネータ23で上記プライマー層11の表面に圧締(ラミネート)した後、冷却装置(水冷帯24)で樹脂層の硬化温度(150℃)まで冷却し、中間樹脂層12を形成した。中間樹脂層12のうちの一方の樹脂層はプライマー層11に接着するための接着樹脂層13であって、厚み20μmの変性ポリオレフィン樹脂(変性ポリプロピレン、三井化学(株)製、品番QF551)で形成した。また、他方の樹脂層はナイロン系熱可塑性樹脂層2であって、厚み30μmのナイロン系樹脂(ユニチカ(株)製の6ナイロン、品番A1030BRF)で形成した。
【0036】
次に、塗装装置により、上記ナイロン系樹脂層の表面に溶剤系合成樹脂塗料としてイソシアネート架橋熱硬化性樹脂塗料(日本ファインコーティングス(株)製の品番フレキコート440、樹脂成分はポリエステル樹脂、溶剤は高沸点芳香族ナフサ、芳香族炭化水素、脂肪族アルコール等)を塗布し、乾燥炉26にて230℃で焼き付け乾燥し、厚み15μmの溶剤系合成樹脂塗膜3を形成した。このようにして樹脂被覆金属板を形成した。
【0037】
(実施例2)
ナイロン系熱可塑性樹脂層2を厚み30μmのナイロン系樹脂(東洋紡績(株)製の品番T−814、6ナイロン)で形成した以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆金属板を形成した。
【0038】
(実施例3)
接着樹脂層13を厚み20μmの反応性ポリオレフィン樹脂(住友化学(株)製の試作品(低密度ポリエチレン))で形成した以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆金属板を形成した。
【0039】
(実施例4)
イソシアネート架橋熱硬化性樹脂塗料の代わりに、溶剤系合成樹脂塗料としてメラミン架橋熱硬化性樹脂塗料(日本ファインコーティングス(株)製の品番スーパーコート330HQ、樹脂成分はポリエステル樹脂、溶剤は高沸点芳香族ナフサ、芳香族炭化水素等)を塗布して溶剤系合成樹脂塗膜3を形成するようにした以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆金属板を形成した。
【0040】
(実施例5)
イソシアネート架橋熱硬化性樹脂塗料の代わりに、溶剤系合成樹脂塗料としてイソシアネート架橋・メラミン架橋併用熱硬化性樹脂塗料(日本ファインコーティングス(株)製の品番スーパーコート3800、樹脂成分はポリエステル樹脂、溶剤は芳香族炭化水素等)を塗布して溶剤系合成樹脂塗膜3を形成するようにした以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆金属板を形成した。
【0041】
(実施例6)
イソシアネート架橋熱硬化性樹脂塗料の代わりに、溶剤系合成樹脂塗料として熱可塑性樹脂塗料(日本ファインコーティングス(株)製の品番ディックフローC、樹脂成分はアクリル変性フッ素樹脂、溶剤は脂肪族ケトン、芳香族炭化水素等)を塗布するようにした以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆金属板を形成した。
【0042】
(実施例7)
イソシアネート架橋エポキシ樹脂塗料の代わりに、メラミン架橋エポキシ樹脂塗料(日本ファインコーティングス(株)製の品番B18T)でプライマー層11を形成した以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆金属板を形成した。
【0043】
(実施例8)
イソシアネート架橋熱硬化性樹脂塗料の代わりに、溶剤系合成樹脂塗料としてイソシアネート架橋・メラミン架橋併用熱硬化性樹脂塗料(日本ファインコーティングス(株)製の品番KRF50、樹脂成分はポリエステル樹脂、溶剤は脂肪族ケトン、芳香族炭化水素等)を塗布するようにした以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆金属板を形成した。
【0044】
(比較例1)
ナイロン系熱可塑性樹脂層2のナイロン系樹脂の代わりに、ポリオレフィン系樹脂(サンアロマー(株)製の品番PS522M、樹脂成分はポリプロピレン樹脂)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆金属板を形成した。尚、この場合、ポリオレフィン系樹脂で形成された樹脂層の表面は火炎処理を施した。
【0045】
(比較例2)
ナイロン系熱可塑性樹脂層2のナイロン系樹脂の代わりに、ポリエステルフィルム(三井・デュポンポリケミカル(株)製の品番4274、樹脂成分はポリエチレンテレフタレート樹脂)を用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂被覆金属板を形成した。
【0046】
上記実施例1〜6及び比較例1、2について、以下の評価試験を行った。
【0047】
(溶剤系合成樹脂塗膜3の密着性試験)
試験片(実施例及び比較例の樹脂被覆金属板)を万力0T折曲げ加工(※加工性試験と同様な方法)し、その加工部頂点をセロハン粘着テープで完全に密着させた後、瞬間的にテープを引き離し、残った塗膜の状態で密着性を評価した。尚、「一次密着性試験」は初期状態の樹脂被覆金属板についての試験であり、「二次密着性試験」は樹脂被覆金属板を沸騰水中5時間放置した後についての試験である。評価は以下の通りであり、3点以上を合格とした。
4点 塗膜の剥離無し。
3点 塗膜に極僅かな剥離が認められる。
2点 塗膜に軽微な剥離が認められる。
1点 塗膜が折曲げ部全面に剥離する。
【0048】
(中間樹脂層12の密着性試験)
6cm角の試験片(実施例及び比較例の樹脂被覆金属板)にカッターナイフにより幅5mmの金属原板1に達する井桁の切り込みを入れ、その後、エリクセン試験機により6mmの押し出しを行い、井桁部を強制剥離することにより密着性を評価した。結果を表1に示す。尚、「一次密着性試験」は初期状態の樹脂被覆金属板についての試験であり、「二次密着性試験」は樹脂被覆金属板を沸騰水中5時間放置した後についての試験である。また、評価は、以下のように剥離の長さに応じて点数をつけ、5が最も良好で、0が不良であり、3点以上を合格とした。
5点 剥離長さ1mm未満
4点 剥離長さ1mm以上3mm未満
3点 剥離長さ3mm以上5mm未満
2点 剥離長さ5mm以上8mm未満
1点 剥離長さ8mm以上12mm未満
0点 剥離長さ12mm以上
(加工性試験)
試験片(実施例及び比較例の樹脂被覆金属板)を万力0T折曲げ加工し、加工部のクラック発生有無を確認した。結果を表1に示す。
【0049】
評価は以下の通りである。
【0050】
○:異常なし
△:僅かにクラックが発生する
×:クラックが発生する
(膨れ発生試験)
試験片(実施例及び比較例の樹脂被覆金属板)上に溶剤を約0.2ml(3滴)滴下して、所定の焼付条件で焼付た後、外観を評価した。
【0051】
評価は以下の通りである。
【0052】
○:異常なし
△:僅かにフクレが発生する
×:膨れが発生する
(温水試験)
試験片(実施例及び比較例の樹脂被覆金属板)を90℃の温水中に100時間放置後、取り出して万力1T折曲げ加工を実施し、中間樹脂層12の状態を確認する。
【0053】
評価は以下の通りである。
【0054】
○:異常なし
△:僅かにクラックが発生する
×:クラックが発生する
(めっき層クラック試験)
試験片(実施例及び比較例の樹脂被覆金属板)に万力0T折曲げ加工部の塩水噴霧試験を実施し、その後、500時間後の白錆び発生有無を評価する。
【0055】
評価は以下の通りである。
【0056】
○:良好(0T加工部からの白錆び発生無し)
×:不良(0T加工部からの白錆び発生有り)
上記評価試験の結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例1〜4と比較例1、2とを対比すると、実施例1〜4ではナイロン系熱可塑性樹脂層2により膨れ発生試験や温水試験で良好な結果が得られるが、比較例1、2ではナイロン系熱可塑性樹脂を使用しないで中間樹脂層12を形成しているために、膨れ発生試験や温水試験で良好な結果が得られなかった。
【0059】
また、実施例3のように、接着樹脂層13として反応性ポリオレフィン樹脂を用いると、中間樹脂層12の密着性が低下する恐れがあるので、変性ポリオレフィン樹脂を用いて接着樹脂層13を形成するのが好ましい。
【0060】
また、実施例4、6のように、ナイロン系熱可塑性樹脂層2を用いた場合では、アクリル変性フッ素樹脂塗料やメラミン架橋熱硬化性樹脂塗料で上塗り塗膜(溶剤系合成樹脂塗膜3)を形成すると密着性が低下することがあるので、イソシアネート架橋熱硬化性樹脂塗料を用いるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の樹脂被覆金属板の層構成を示す断面図である。
【図2】本発明の樹脂被覆金属板の製造方法を示す概略図である。
【符号の説明】
【0062】
1 金属原板
2 ナイロン系熱可塑性樹脂層
3 溶剤系合成樹脂塗膜
10 化成処理層
11 プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属原板の表面に化成処理層を設けると共に化成処理層の表面にプライマー層を設け、プライマー層の表面をナイロン系熱可塑性樹脂層で被覆し、ナイロン系熱可塑性樹脂層の表面に溶剤系合成樹脂塗膜を形成して成ることを特徴とする樹脂被覆金属板。
【請求項2】
溶剤系合成樹脂塗膜が熱硬化性合成樹脂塗膜であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆金属板。
【請求項3】
熱硬化性合成樹脂塗膜がイソシアネート架橋熱硬化性合成樹脂塗膜であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂被覆金属板。
【請求項4】
プライマー層とナイロン系熱可塑性樹脂層の間に変性ポリオレフィン系樹脂の接着樹脂層を設けて成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の樹脂被覆金属板。
【請求項5】
金属原板の表面に化成処理層を設けると共に化成処理層の表面にプライマー層を設け、プライマー層の表面をナイロン系熱可塑性樹脂層で被覆した後、ナイロン系熱可塑性樹脂層の表面に溶剤系合成樹脂塗料を塗布して焼き付けることを特徴とする樹脂被覆金属板の製造方法。
【請求項6】
上記ナイロン系熱可塑性樹脂層は変性ポリオレフィン系樹脂の接着樹脂層と複合されており、この接着樹脂層を介してプライマー層の表面にナイロン系熱可塑性樹脂層を接着することを特徴とする請求項5に記載の樹脂被覆金属板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−190821(P2007−190821A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11485(P2006−11485)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】