説明

樹脂製フェンダーの取付構造

【課題】隣接する車体部材の取付構造に影響されることなく、取り付け性及び取り外し性の向上を図ることができる樹脂製フェンダーの取付構造を提供する。
【解決手段】車両1の車輪16上方に配置されて樹脂で形成されるフェンダー12を車体本体1に取り付ける樹脂製フェンダーの取付構造であって、フェンダー12の外壁部49に隣接し、車体本体1を構成するサイドアウタパネル11に取り付けられるデルタガラス13を備え、外壁部49におけるデルタガラス13が隣接する上縁部42から外壁部49の車幅方向内側に屈曲してデルタガラス13から遠ざかるように延設する取付フランジ51を形成し、サイドアウタパネル11と取付フランジ51とをスライドクリップ61により車幅方向において取り付け及び取り外し可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前側部及び後側部において車体の外壁をなす樹脂製フェンダーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、前両側部及び後両側部において車体の外壁をなすフェンダーが設けられている。フェンダーは、道路から跳ね上がる水、泥、砂、石等から車体を保護するための部品であり、従来から車体を構成する他の車体部材と同様に、鋼板から板金加工等によって形成されている。また、近年のフェンダーにおいては、軽量化等を目的として樹脂製のものも製造されている。
【0003】
しかしながら、フェンダーを樹脂で形成すると、鋼板製のものと比べて、熱膨張率が大きくなるので、樹脂製フェンダーとこれを支持する車体部材との間における熱変形(熱膨張)量に大きな差が生じてしまう。
【0004】
そこで、従来から、樹脂製フェンダーとこれを支持する車体部材との間における熱変形量を吸収する樹脂フェンダーの取付構造が種々提供されている。このような従来の樹脂フェンダーの取付構造は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】実公平5−14950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、車両の中には様々な車種があり、この車種に応じて車体構造も異なっており、これに伴い、フェンダーの形状や、フェンダーに隣接する車体部材の形状及びその取付構造も異なっている。上記従来の樹脂製フェンダーの取付構造では、フェンダーの上方にはフードパネルのみが配置されており、このフードパネル開時にフェンダーの上端を車体部材の上面に取り付けるようにしている。
【0007】
しかしながら、例えば、フェンダーが後方に張り出して当該フェンダーの後部上方に窓ガラスが配置されるような車両においては、従来のような樹脂製フェンダーの取付構造を採用することは困難である。つまり、従来の取付構造では、フェンダーの上方に窓ガラス等の固定式車体部材が固定される場合、フェンダーを車体部材に取り付けることは困難である。仮に、フェンダーを取り付けてから窓ガラスを取り付けることが可能であっても、窓ガラスを取り外さないとフェンダーを取り外すことができないので、作業性の低下を招いてしまう。
【0008】
従って、本発明は上記課題を解決するものであって、隣接する車体部材の取付構造に影響されることなく、取り付け性及び取り外し性の向上を図ることができる樹脂製フェンダーの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第1の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造は、
車両の車輪上方に配置されて樹脂で形成されるフェンダーを車体部材に取り付ける樹脂製フェンダーの取付構造であって、
前記フェンダーの外壁部に隣接し、前記車体部材に取り付けられる隣接部材を備え、
前記外壁部における前記隣接部材が隣接する縁部から前記外壁部の車幅方向内側に屈曲して前記隣接部材から遠ざかるように延設する取付部を形成し、
前記車体部材と前記取付部とを係合部材により取り付けて前記フェンダーを車幅方向において取り付け及び取り外し可能とする
ことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第2の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造は、
第1の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造において、
前記外壁部と前記取付部とを連結する連結リブを形成する
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第3の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造は、
第1または第2の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造において、
前記係合部材は、前記フェンダーと前記車体部材との車両前後方向の相対移動を許容する前後移動許容手段を備える
ことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第4の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造は、
第3の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造において、
前記前後移動許容手段は、
前記車体部材または前記取付部に設けられ、車幅方向に突出する軸部と、
前記取付部または前記車体部材に設けられ、前記軸部を車両前後方向にガイドするガイド部とを有する
ことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第5の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造は、
第1乃至第4のいずれかの発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造において、
前記取付部は前記フェンダーの中心よりも上方に設けられる
ことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第6の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造は、
請求項1乃至5のいずれかに記載の樹脂製フェンダーの取付構造において、
前記外壁部に隣接する隣接部材はドアであって、
前記外壁部のドア側下部に、略鉛直下方に延設する下部取付部を形成し、
前記車体部材と前記下部取付部とを車幅方向において締結し、且つ、前記フェンダーと前記車体部材との上下方向の相対移動を許容する上下移動許容手段を設ける
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造によれば、車両の車輪上方に配置されて樹脂で形成されるフェンダーを車体部材に取り付ける樹脂製フェンダーの取付構造であって、前記フェンダーの外壁部に隣接し、前記車体部材に取り付けられる隣接部材を備え、前記外壁部における前記隣接部材が隣接する縁部から前記外壁部の車幅方向内側に屈曲して前記隣接部材から遠ざかるように延設する取付部を形成し、前記車体部材と前記取付部とを係合部材により取り付けて前記フェンダーを車幅方向において取り付け及び取り外し可能とすることにより、前記隣接部材の取付構造に影響されることなく、前記フェンダーの取り付け及び取り外しを行うことができるので、取り付け性及び取り外し性の向上を図ることができる。
【0016】
第2の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造によれば、第1の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造において、前記外壁部と前記取付部とを連結する連結リブを形成することにより、前記外壁部及び前記取付部の剛性を向上させることができる。
【0017】
第3の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造によれば、第1または第2の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造において、前記係合部材は、前記フェンダーと前記車体部材との車両前後方向の相対移動を許容する前後移動許容手段を備えることにより、前記フェンダーとこれを支持する前記車体部材との間における熱変形量に大きな差が生じても、前記前後移動許容手段により前記フェンダーの移動(変形)を許容することができるので、前記車体部材との間における熱変形量の差を吸収することができる。
【0018】
第4の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造によれば、第3の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造において、前記前後移動許容手段は、前記車体部材または前記取付部に設けられ、車幅方向に突出する軸部と、前記取付部または前記車体部材に設けられ、前記軸部を車両前後方向にガイドするガイド部とを有することにより、確実に、前記フェンダーの車両前後方向への移動を制御することができる。
【0019】
第5の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造によれば、第1乃至第4のいずれかの発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造において、前記取付部は前記フェンダーの中心よりも上方に設けられることにより、前記フェンダーの上方に配置される固定式の隣接部材にも対応することができる。
【0020】
第6の発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造によれば、請求項1乃至5のいずれかに記載の樹脂製フェンダーの取付構造において、前記外壁部に隣接する隣接部材はドアであって、前記外壁部のドア側下部に、略鉛直下方に延設する下部取付部を形成し、前記車体部材と前記下部取付部とを車幅方向において締結し、且つ、前記フェンダーと前記車体部材との上下方向の相対移動を許容する上下移動許容手段を設けることにより、前記フェンダーとこれを支持する前記車体部材との間における熱変形量に大きな差が生じても、前記外壁部における前記ドアが隣接する縁部を基準として、前記前後移動許容手段により前記フェンダーの車両前後方向への移動を許容するだけでなく、前記上下移動許容手段により前記フェンダーの上下方向への移動も許容することができるので、前記フェンダー及び前記ドアの取付品質を確保しながら、効果的に前記車体部材との間における熱変形量の差を吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造を備えた車体の側面図、図2は本発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造を備えた車体の後方斜視図、図3はフェンダーの内面を示した図、図4はピン部材のサイドアウタパネルへの装着状態を示した図、図5はベース部材のフェンダーへの装着状態を示した図、図6はスライドクリップの嵌合状態を示した図、図7は図6のA−A矢視断面図、図8は図7のB−B矢視断面図である。
【0022】
図1乃至図3に示すように、車体本体1には車輪16が回転可能に支持されるようになっている。車輪16の上方にはサイドアウタパネル11が車体本体1の側面に取り付けられており、このサイドアウタパネル11の外面には樹脂により形成されるフェンダー12が設けられている。車体本体1におけるフェンダー12の後方にはドア開口部1aが形成されており、このドア開口部1aを開閉するようにドア17が車体本体1に取付可能となっている。
【0023】
サイドアウタパネル11の上部には、三角形状に開口するデルタ開口部21と、このデルタ開口部21の前枠をなして後ろ斜め上方に向けて延設するフロントピラー部22とが形成されている。デルタ開口部21の外方には三角形状のデルタガラス13が設けられており、このデルタガラス13の外周にはモール部材14が嵌合されている。モール部材14は接着材15を介してデルタ開口部21の外周部に取り付けられている(図8参照)。
【0024】
なお、車体本体1は、サイドアウタパネル11、フェンダー12、デルタガラス13、ドア17等の複数の車体部材から構成されるものであり、サイドアウタパネル11や他の車体部材は鋼板により形成されている。また、デルタガラス13及びドア17は隣接部材をなすものである。
【0025】
フェンダー12はその外板をなす外壁部49を備えている。外壁部49の上部には、サイドアウタパネル11のフロントピラー部22の下端を覆うように突出する突出部41と、この突出部41の後面から連続的に、且つ、デルタ開口部21の前縁から下縁に沿うよう延設する上縁部42とが形成されている。一方、外壁部49の下部には、車輪16の外周に沿うように円弧状をなすホイールアーチ部43が形成されている。そして、フェンダー12は、上記突出部41、上縁部42、及びホイールアーチ部43の他、前傾斜部44、前部45、前下部46、後下部47、及び後部48を備えており、これらによりその外周部が形成されている。
【0026】
外壁部49におけるデルタガラス13と隣接する上縁部42には、当該上縁部42から外壁部49の車幅方向内側に屈曲してデルタガラス13から遠ざかるように延設する取付フランジ(取付部)51が形成されている。即ち、この取付フランジ51は、外壁部49の上縁部42から内側に折り返されて略鉛直下方に延設している(図8参照)。また、前傾斜部44には、外壁部49の先端から内側に折り返されるように後方に延設する取付フランジ52が形成されている。そして、前部45、前下部46、及び後下部47には、外方へ突出する取付フランジ53,54,55が形成されている。
【0027】
なお、取付フランジ52,53には前後方向に長径を有する長孔52a,53aが形成されており、取付フランジ(下部取付部)55には上下方向に長径を有する長孔(上下移動許容手段)55aが形成されている。
【0028】
そして、フェンダー12の上縁部42、前傾斜部44、前部45、前下部46、及び後下部47においては、取付フランジ51,52,53,54,55がブラケット31,32,33,34,35を介してボルト等によりサイドアウタパネル11や他の車体部材に取り付け可能となっている。また、フェンダー12の後部48においては、ブラケット36,37,38を介してサイドアウタパネル11にボルト等により取り付け可能となっている。
【0029】
サイドアウタパネル11のブラケット31とフェンダー12の取付フランジ51との間には、詳細は後述するが、ブラケット31と取付フランジ51とを車幅方向において係合し、且つ、サイドアウタパネル11とフェンダー12との前後方向への相対移動を許容するスライドクリップ(係合部材、前後移動許容手段)61が設けられている。また、サイドアウタパネル11のブラケット32,33とフェンダー12の取付フランジ52,53との間には、長孔52a,53aを使用して、サイドアウタパネル11とフェンダー12との前後方向への相対移動を許容する図示しないスライド機構が設けられている。更に、サイドアウタパネル11のブラケット35とフェンダー12の取付フランジ55との間には、長孔55を使用して、サイドアウタパネル11とフェンダー12との上下方向への相対移動を許容する図示しないスライド機構が設けられている。
【0030】
次に、フェンダー12の上縁部42におけるスライドクリップ61を用いた樹脂製フェンダーの取付構造について図4乃至図8を用いて詳細に説明する。
【0031】
図4乃至図8に示すように、スライドクリップ61は、サイドアウタパネル11側に装着されるピン部材62と、フェンダー12側に装着されるベース部材63とから構成されている。
【0032】
ピン部材62は、取付フランジ51側に突出する軸部62aと、この軸部62aの基端に形成される2つのフランジ部62bと、このフランジ部62b間に形成される嵌合溝62cと、軸部62aの先端に形成され、当該軸部62aの径よりも大径をなす略球状の係合部62dとを有している。
【0033】
一方、ベース部材63は、長孔が開口される筒部63aと、この筒部63aの基端に形成されるフランジ部63bと、筒部63aの上内周面及び下内周面において前後方向に延設するガイド部63cとを有している。
【0034】
また、サイドアウタパネル11に固定されるブラケット31には、上方を開口するU溝31aが形成されており、このU溝31aにはピン部材62の嵌合溝63aが嵌合されている。
【0035】
一方、取付フランジ51には前後方向に長径を有する取付長孔51aが形成されており、この取付長孔51aにはベース部材63の筒部63aが嵌入されている。更に、取付フランジ51の内面には、外壁部49の上端部42との間を連結する複数の縦リブ51bが形成されており、この縦リブ51bのリブ高さは、下方に向かうに従い漸次低くなるようになっている。
【0036】
なお、ピン部材62の軸部62a、係合部62及びベース部材63のガイド部63c等は、前後移動許容手段を構成するものである。
【0037】
そして、ブラケット31に装着したピン部材62の軸部62aを、取付フランジ51に装着したベース部材63の筒部63aに挿入し、ピン部材62の係合部62dをベース部材63のガイド部63cの外側と係合させることにより、ピン部材62とベース部材63とが嵌合されている。即ち、この嵌合状態がフェンダー12をサイドアウタパネル11に取り付けた状態となる。
【0038】
また、フェンダー12の取り付け及び取り外しは、上述したピン部材62とベース部材63との嵌脱により行うことができる。このとき、取り外しが困難であるデルタガラス13のような固定式の車体部材がフェンダー12の上方に配置されていても、当該フェンダー12の取り付け方向及び取り外し方向は車幅方向となるので、容易にその作業を行うことができる。しかも、取付フランジ51には縦リブ51bが形成されているので、剛性が向上され、作業時におけるフェンダー12の変形を防止することができる。
【0039】
ここで、車両製造ラインの塗装工程においては、塗装炉内の温度が高温になることから、樹脂製のフェンダーを塗装するときには、その熱によりフェンダーが軟化して変形してしまう。このとき、フェンダーとこれを支持する車体本体(車体部材)との間には、大きな熱変形量の差が生じることになる。
【0040】
そこで、本発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造を備えた車体本体1を塗装する場合には、先ず、フェンダー12の後部48をブラケット36,37,38を介してサイドアウタパネル11に固定すると共に、取付フランジ51,52,53,55をスライドクリップ61及びスライド機構を介してサイドアウタパネル11に支持する。これにより、後方のドア17側への熱変形を規制すると共に、前方や下方への熱変形を許容する。
【0041】
従って、フェンダー12の上縁部42、前傾斜部44、及び前部45は、スライドクリップ61及びスライド機構により支持されることにより、サイドアウタパネル11との間における前方への熱変形が吸収される。一方、フェンダー12の後下部47は、スライド機構に支持されることにより、サイドアウタパネル11との間における下方への熱変形が吸収される。
【0042】
つまり、樹脂で形成されるフェンダー12が鋼板で形成されるサイドアウタパネル11に比べて、熱膨張率が大きく、熱変形が大きくなっても、フェンダー12の上縁部42では、フェンダー12側におけるベース部材63のガイド部63cが、サイドアウタパネル11側におけるピン部材62の係合部62dと係合しながら、軸部62aを上下で挟み込むように前方に移動する。この結果、樹脂製のフェンダー12とこれを支持する鋼板製のサイドアウタパネル11との間における熱変形量は吸収されることになる。
【0043】
次いで、塗装後において冷却されると、フェンダー12の上縁部42、前傾斜部44、及び前部45は、スライドクリップ61及びスライド機構により、サイドアウタパネル11との間における前方への熱変形が吸収されながら元の形状に収縮される。一方、フェンダー12の後下部47はスライド機構により、サイドアウタパネル11との間における下方への熱変形が吸収されながら元の形状に収縮される。
【0044】
そして、フェンダー12が収縮した後、上縁部42、前部45、前下部46、及び後下部47の取付フランジ51,52,53,54,55を、ブラケット31,32,33,34,35を介してボルト等によりサイドアウタパネル11や車体部材に取り付けることにより、フェンダー12の車体本体1(サイドアウタパネル11)への組み付けが完了される。
【0045】
従って、本発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造によれば、フェンダー12の外壁部49におけるデルタガラス13が隣接する上縁部42から外壁部49の車幅方向内側に屈曲してデルタガラス13から遠ざかるように延設する取付フランジ51を形成し、サイドアウタパネル11と取付フランジ51とをスライドクリップ61により車幅方向において取り付け及び取り外し可能とすることにより、フェンダー12の取り付け及び取り外しを車幅方向において行うことができるので、フェンダー12に隣接するデルタガラス13等の車体部材の取付構造に影響されることなく、フェンダー12の取り付け及び取り外しを行うことができる。しかも、フェンダー12を樹脂製としたことから、外壁部49の上縁部42から車幅方向内側に屈曲してデルタガラス13から遠ざかるように延設する取付フランジ51を容易に成形することが可能となっている。
【0046】
また、外壁部49と取付フランジ51とを縦リブ51bにより連結することにより、剛性が向上されるので、フェンダー12の取り付け時及び取り外し時における外壁部49及びフランジ51の変形を防止することができる。
【0047】
また、スライドクリップ61は、サイドアウタパネル11とフェンダー12との前後方向の相対移動を許容するように、ベース部材63のガイド部63cをピン部材62の軸部62aと係合させながら移動させることができるので、フェンダー12とこれを支持するサイドアウタパネル11との間における熱変形量に大きな差が生じても、フェンダー12の前後方向への熱変形を許容し、サイドアウタパネル11との間における熱変形量の差を吸収することができる。
【0048】
更に、外壁部49の後下部47に、略鉛直下方に延設する取付フランジ55を形成し、当該取付フランジ55における上下方向に開口する長孔55aを使用して、サイドアウタパネル11とフェンダー12との上下方向への相対移動を許容することにより、フェンダー12とこれを支持するサイドアウタパネル11との間における熱変形量に大きな差が生じても、後部48を基準として、スライドクリップ61によりフェンダー12の前後方向への熱変形を許容するだけでなく、上下方向への熱変形も許容することができるので、フェンダー12及びドア17の取付品質を確保しながら、効果的にサイドアウタパネル11との間における熱変形量の差を吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
部品点数の増加や重量の増大を抑制することができる樹脂製フェンダーの取付構造に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造を備えた車体の側面図である。
【図2】本発明に係る樹脂製フェンダーの取付構造を備えた車体の後方斜視図である。
【図3】フェンダーの内面を示した図である。
【図4】ピン部材のサイドアウタパネルへの装着状態を示した図である。
【図5】ベース部材のフェンダーへの装着状態を示した図である。
【図6】スライドクリップの嵌合状態を示した図である。
【図7】図6のA−A矢視断面図である。
【図8】図7のB−B矢視断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 車体本体
11 サイドアウタパネル
12 フェンダー
13 デルタガラス
31 ブラケット
31a U溝
42 上縁部
49 外壁部
51 取付フランジ
51a 取付長孔
51b 縦リブ
61 スライドクリップ
62 ピン部材
62a 軸部
62b フランジ部
62c 嵌合部
62d 係合部
63 ベース部材
63a 筒部
63b フランジ部
63c ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪上方に配置されて樹脂で形成されるフェンダーを車体部材に取り付ける樹脂製フェンダーの取付構造であって、
前記フェンダーの外壁部に隣接し、前記車体部材に取り付けられる隣接部材を備え、
前記外壁部における前記隣接部材が隣接する縁部から前記外壁部の車幅方向内側に屈曲して前記隣接部材から遠ざかるように延設する取付部を形成し、
前記車体部材と前記取付部とを係合部材により取り付けて前記フェンダーを車幅方向において取り付け及び取り外し可能とする
ことを特徴とする樹脂製フェンダーの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂製フェンダーの取付構造において、
前記外壁部と前記取付部とを連結する連結リブを形成する
ことを特徴とする樹脂製フェンダーの取付構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂製フェンダーの取付構造において、
前記係合部材は、前記フェンダーと前記車体部材との車両前後方向の相対移動を許容する前後移動許容手段を備える
ことを特徴とする樹脂製フェンダーの取付構造。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂製フェンダーの取付構造において、
前記前後移動許容手段は、
前記車体部材または前記取付部に設けられ、車幅方向に突出する軸部と、
前記取付部または前記車体部材に設けられ、前記軸部を車両前後方向にガイドするガイド部とを有する
ことを特徴とする樹脂製フェンダーの取付構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂製フェンダーの取付構造において、
前記取付部は前記フェンダーの中心よりも上方に設けられる
ことを特徴とする樹脂製フェンダーの取付構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の樹脂製フェンダーの取付構造において、
前記外壁部に隣接する隣接部材はドアであって、
前記外壁部のドア側下部に、略鉛直下方に延設する下部取付部を形成し、
前記車体部材と前記下部取付部とを車幅方向において締結し、且つ、前記フェンダーと前記車体部材との上下方向の相対移動を許容する上下移動許容手段を設ける
ことを特徴とする樹脂製フェンダーの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−162411(P2008−162411A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354228(P2006−354228)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】