説明

樹脂製容器

【課題】水と接触する樹脂製容器において、水分バリア性、力学的物性、寸法精度、耐熱性の全てをバランスよく満たした樹脂製容器を提供する。
【解決手段】(a)ポリプロピレン系樹脂、(b)ポリフェニレンエーテル系樹脂、(c)水添ブロック共重合体および(d)無機フィラーから構成され、水蒸気透過係数が40℃90%RH環境下で0.40g・mm/m・day以下である熱可塑性樹脂からなる樹脂製容器。無機フィラーとしては板状無機フィラーと繊維状無機フィラーとを用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、水分バリア性、成形加工性、耐油性、耐酸アルカリ性を有するものの、耐銅害性、溶着性に劣るという欠点を有している。ポリプロピレン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂をアロイ化した樹脂組成物は、耐溶剤性、耐衝撃性、耐薬品性、剛性の点で改良効果があるものの、耐銅害性や溶着性の改良については十分ではない。
近年一層高い水分バリア性が求められる場合があり、例えば飲料、食品、食油用の樹脂製容器として、主にオレフィン系樹脂のブロー成形容器が知られている(例えば、特許文献1〜4)。
【0003】
一方、特許文献5においては、粘着付与剤、層状珪酸塩化合物とプロピレン系樹脂の他に例えばポリフェニレンエーテル樹脂を組み合わせて使用し、優れたガスバリヤ性を有するフィルムやシートあるいは容器等の成形体が得られるとの記載がある。
しかしながら、これら先行技術文献に開示された内容は、フィルムやシートあるいはブロー成形により形状を決定するものであり、簡便なデザインのものしか成形することができないという制約がある。また内容物を変質、重量減少なしに長期間保存するという点ではある程度の効果を奏するものの、機構部品として用いられる場合には、要求される力学的特性、寸法精度を満足するものではない。
【0004】
他方、耐熱性の高い樹脂製容器にはフィラー含有PPS樹脂が使用されている場合が多いが、比重が大きく、寸法精度に問題があり、さらに成形加工性、後加工が必要な際にはその溶着性にも問題があった。
以上のように、水分バリア性、力学的物性、寸法精度をバランスよく満たした樹脂製容器は、知られておらず、新しい材料を用いた容器の開発が待ち望まれている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−8255号公報
【特許文献2】特開2002−255231号公報
【特許文献3】特開2002−103428号公報
【特許文献4】特開2000−255579号公報
【特許文献5】特開2003−335959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、水、水分もしくは水溶液と接触する樹脂製容器において、水分バリア性、力学的物性、寸法精度に優れた樹脂製容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような現状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂および水添ブロック共重合体からなる樹脂組成物に、無機フィラーを配合した樹脂組成物からなる樹脂製容器は、水分バリア性、力学的物性、寸法精度に優れていることを見いだし本発明に至った。
すなわち本発明は、
(1)前記熱可塑性樹脂が、(a)ポリプロピレン系樹脂55〜95重量部、(b)ポリフェニレンエーテル系樹脂45〜5重量部、(a)成分及び(b)成分の合計100重量部に対して(c)ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物の1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が45〜90%である共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体5〜30重量部、及び(d)無機フィラー60〜100重量部を含有し、水蒸気透過係数が40℃90%RH環境下で0.40g・mm/m・day以下である熱可塑性樹脂からなる樹脂製容器
(2)(a)ポリプロピレン系樹脂は、α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体と反応してなる変性ポリプロピレン系樹脂である前記項1又は2に記載の樹脂製容器
(3)(c)水添ブロック共重合体を構成する重合体ブロックAがスチレン重合体ブロックであり、重合体ブロックBがブタジエン重合体ブロックであって、ブタジエン重合体ブロックの1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が65〜90%であることを特徴とすることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂製容器
(4)(d)無機フィラーが、(a)成分(b)成分の合計100重量部に対して、(e)平均フレーク径が10〜400μmである板状無機フィラー30〜60重量部と、(f)平均直径が3〜20μmである繊維状無機フィラー30〜60重量部とからなり、(e)成分と(f)成分の合計量が60〜100重量部である前記項1から4のいずれかに記載の樹脂製容器
(5)(e)板状無機フィラーが、マイカ、ガラスフレーク、タルク及びグラファイトの中から選ばれる少なくとも1種の無機フィラーであり、(f)繊維状無機フィラーがガラス繊維である前記項5に記載の樹脂製容器
(6)熱可塑性樹脂の射出成形品、ガラス部品、金属部品からなる群より選択された少なくとも1つである蓋体が接合されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂製容器
(7) 前記蓋体が熱可塑性樹脂の射出成形品であり、該蓋体が、前記熱可塑性樹脂の蓋体が、超音波溶着、スピン溶着、熱板溶着、のうち少なくとも1つによって接合されることを特徴とする請求項6に記載の樹脂製容器、である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂製容器は、優れた水分バリア性、寸法精度、力学特性を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の樹脂製容器は、(a)ポリプロピレン系樹脂、(b)ポリフェニレンエーテル系樹脂、(c)水添ブロック共重合体および(d)無機フィラーから構成される。好ましくは、(a)ポリプロピレン系樹脂55〜95重量部、(b)ポリフェニレンエーテル系樹脂45〜5重量部と、その両成分の合計100重量部に対して、(c)ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物の1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が45〜90%である共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体5〜30重量部、かつ(d)無機フィラーを5〜80重量部含有する。
樹脂製容器は、ポリプロピレン樹脂マトリックス中にポリフェニレンエーテル樹脂がミクロ分散した構造を有するのが好ましい。このような構造にすることは通常の方法では困難であるが、特定構造の水添ブロック共重合体を用いることによって可能となる。
【0010】
(a)成分のポリプロピレン系樹脂としては、結晶性プロピレンホモポリマー、及び重合の第一工程で得られる結晶性プロピレンホモポリマー部分と重合の第二工程以降でプロピレン、エチレンおよび/または少なくとも1つの他のα−オレフィン(例えば、ブテン−1、ヘキセン−1等)を共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を有する結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体が挙げられ、さらに上記結晶性プロピレンホモポリマーと結晶性プロピレン−エチレンブロック共重合体の混合物であってもよい。
【0011】
かかるポリプロピレン系樹脂は、通常、三塩化チタン触媒または塩化マグネシウム等の担体に担持したハロゲン化チタン触媒等とアルキルアルミニウム化合物との存在下に、重合温度0〜100℃の範囲で、重合圧力3〜100気圧の範囲で重合を行うことにより得られる。このとき、重合体の分子量を調節するために水素等の連鎖移動剤を添加することもできる。また、重合方法としてバッチ式または連続式のいずれも用いることができる。ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の溶媒下での溶液重合、スラリー重合、無溶媒下モノマー中での塊状重合およびガス状モノマー中での気相重合方法などが適用できる。
【0012】
また、上記した重合触媒の他に、得られるポリプロピレンのアイソタクティシティおよび重合活性を高めるため、第三成分として電子供与性化合物を内部ドナー成分または外部ドナー成分として用いることができる。これら電子供与性化合物としては公知のものを使用することができ、例えば、ε−カプロラクトン、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、トルイル酸メチルなどのエステル化合物、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリブチルなどの亜リン酸エステル、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのリン酸誘導体等や、アルコキシエステル化合物、芳香族モノカルボン酸エステルおよび/または芳香族アルキルアルコキシシラン、脂肪族炭化水素アルコキシシラン、各種エーテル化合物、各種アルコール類および/または各種フェノール類が挙げられる。
【0013】
ポリプロピレン樹脂は上述のものもあれば、いかなる結晶性や融点を有するものであっても単独で用いることができるが、得られる樹脂組成物が耐熱材料として熱履歴を受け、耐熱性を発揮することが要求される場合は、異なる性質を有する2種のポリプロピレン樹脂を特定範囲で配合したポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。
【0014】
プロピレンホモポリマー部分結晶相の融点は、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC−2型)にて昇温速度20℃/minおよび降温速度20℃/minで測定した融点の値である。
この融点が155℃未満のポリプロピレンから得られる樹脂組成物は、熱履歴後の靭性(伸び)には優れているが、剛性、耐熱性(DTUL)が低くなる傾向にある。また、融点が163℃以上のポリプロピレンから得られる樹脂組成物は、熱履歴後の剛性および耐熱性(DTUL)に優れているが、熱履歴後の靭性(伸び)が小さくなる傾向にある。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂は、通常、メルトフローレート(ASTM D1238に準拠し、230℃、2.16kgの荷重下で測定)が0.1〜300g/10分であり、好ましくは0.1〜100g/10分、より好ましくは0.1〜30g/10分の範囲である。また、これらの範囲のメルトフローレートであれば、単独でも、併用しても用いることができる。
【0016】
(b)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、単にPPEと略記する)は、本発明の樹脂組成物に耐熱性、寸法精度、耐銅害性、後加工時の溶着性を付与する上で必須の成分である。
PPEは下記式で示される繰返し単位構造を含む単独重合体及び/または共重合体である。そしてその還元粘度(0.5g/dl、クロロホルム溶液、測定温度30℃)がは、0.15〜0.70の範囲にあることが好ましく、0.20〜0.60の範囲にあることがより好ましい。
【0017】
【化1】

【0018】
(ここで、R1、R2、R3およびR4は各々同一でも異なっていてもよく、水素、ハロゲン、炭素数1〜7の低級アルキル基、フェニル基、ハロゲンアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基または少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原始と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択されるものである。)
【0019】
PPEの具体的な例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)が挙げられ、さらに2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体のようなポリフェニレンエーテル共重合体も挙げられる。特にポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)がより好ましい。
【0020】
PPEの製造方法は特に限定されない。例えば、PPEは米国特許第3,306,874号明細書に記載のHayによる第一銅塩とアミンとの錯体を触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合することにより容易に製造することができ、そのほかにも米国特許第3,306,875号、同第3,257,357号、同第3,257,358号、特公昭52−17880号、特開昭50−51197号公報、特開昭63−152628公報等に記載された方法で容易に製造することができる。
【0021】
PPEは、また、上述のPPEの他に、該PPEとスチレン系モノマーおよび/またはα,β−不飽和カルボン酸若しくはその誘導体(例えば、エステル化合物、酸無水物化合物)をラジカル発生剤の存在下または非存在下で溶融状態、溶液状態またはスラリー状態で80〜350℃の温度で反応させることによって得られる公知の変性PPEであってもよい。この場合、該スチレン系モノマーおよび/またはα,β−カルボン酸若しくはその誘導体が0.01〜10重量%の割合でPPEにグラフトまたは付加していることが好ましい。さらに上述のPPEと該変性PPEとの任意の割合の混合物であってもよい。
また、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレンをPPE100重量部に対し、0.2〜5重量部添加し溶融混練したリン化合物処理PPEも、色調および流動性に優れたPPEとして用いることができる。
【0022】
PPEは上述のPPEの他に、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレンおよび/またはゴム補強したシンジオタクチックポリスチレンをPPE100重量部に対して500重量部を超えない範囲、好ましくは200重量部以下で加えたものも好適に用いることができる。
【0023】
(c)成分として用いることができる水添ブロック共重合体は、上述のポリプロピレン樹脂のマトリックス中にポリフェニレンエーテル樹脂を分散粒子化させるための分散剤として作用し、さらには樹脂組成物に耐衝撃性を付与するものである。
この水添ブロック共重合体は、ビニル結合量(すなわち、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量)が30〜95%、好ましくは45〜90%である共役ジエン化合物から主としてなる少なくとも1個の重合体ブロックBと、ビニル芳香族化合物から主としてなる少なくとも1個の重合体ブロックAとからなるブロック共重合体を50%以上水素添加してなる。
【0024】
この水添ブロック共重合体は、例えばA−B型、A−B−A型、B−A−B−A型、(A−B−)n−X型(ここでnは1以上の整数、Xは四塩化ケイ素、四塩化スズなどの多官能カップリング剤の反応残基または多官能性有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す)、A−B−A−B−A型等のブロック単位が結合した構造を有するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物であり、ブロック共重合体中に結合したビニル芳香族化合物を20〜95重量%、好ましくは30〜80重量%含む。
【0025】
このブロック共重合体Bを構成する共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等のうちから1種または2種以上が選ばれ、中でもブタジエン、イソプレンおよびこれらの組み合わせが好ましい。そして共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBは、そのブロックにおけるミクロ構造(共役ジエン化合物の結合形態)が、例えばブタジエンを主体とする重合体ブロックBにおいては1,2−ビニル結合が30〜95%であり、また、イソプレンを主体とする重合体ブロックBにおいては3,4−ビニル構造が30〜95%である。また、ブタジエンとイソプレンとを共重合させて得られる重合体ブロックBのビニル結合量については、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が30〜95%である。これらの共役ジエン化合物の結合形態は通常、赤外分光スペクトルやNMRスペクトル等で知ることができる。
【0026】
また、重合体ブロックAを構成するビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン、ジフェニルエチレン等のうちから、1種または2種以上は選択でき、中でもスチレンが好ましい。
【0027】
上記の構造を有するブロック共重合体の数平均分子量は5,000〜1,000,000の範囲であるのが好ましく、より好ましくは10,000〜800,000、さらに好ましくは30,000〜500,000の範囲であり、分子量分布(ゲルパーミテーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比)は、10以下である。さらに、このブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれら任意の組み合わせのいずれであってもよい。
【0028】
このような構造をもつブロック共重合体は、それに含まれる重合体ブロックBの脂肪族系二重結合を水素添加することにより、水添ブロック共重合体、すなわち、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物として用いられる。かかる脂肪族系二重結合の水素添加率は50%以上、好ましくは80%以上である。そして、この水素添加率は通常、赤外分光スペクトルやNMRスペクトル等によって知ることができる。
【0029】
(c)成分の水添ブロック共重合体は、上述した水添ブロック共重合体の構造を有するものであるが、樹脂組成物を製造する上で、水添前のビニル結合量が30〜55%である共役ジエン化合物から主としてなる少なくとも1個の重合体ブロックBとビニル芳香族化合物から主としてなる少なくとも1個の重合体ブロックAよりなるブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体であってもよく、あるいはまた、水添前のビニル結合量が55%を超え95%以下、好ましくは55%を超え80%以下である共役ジエン化合物から主としてなる少なくとも1個の重合体ブロックBとビニル芳香族化合物から主としてなる少なくとも1個の重合体ブロックAよりなるブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体であってもよい。この水添前の共役ジエン化合物の異なるビニル結合量により二種に分類される水添ブロック共重合体の中には、各々、さらに水添前のビニル結合量が5%以上〜30%未満である共役ジエン化合物から主としてなる1個の重合体ブロックB’を併せ持ち、かつ、これらの重合体ブロックの比率が、B/B’=99/1〜50/50(重量比)であり、さらにビニル芳香族化合物から主としてなる少なくとも1個の重合体ブロックAよりなるブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体も含まれる。
【0030】
これらの構造は、例えば、B’−B−A型、B’−A−B−A型、B’−A−B−A−B型、(B’−A−B−)n−X型(ここでnは1以上の整数、Xは四塩化ケイ素、四塩化スズなどの多官能カップリング剤の反応残基または多官能性有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す)等のブロック単位が結合した構造を有するビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物であり、これらの構造を持つ水添ブロック共重合体の分類は、主たる重合体ブロックBの共役ジエン化合物のビニル結合量で二種に分類されたいずれかに帰属する。
水添ブロック共重合体における重合体ブロックBまたはB’の数平均分子量は1000以上が好ましく、より好ましくは5000以上である。
【0031】
(d)成分として用いる無機フィラーは、上述した(a)〜(c)よりなる樹脂組成物が低水分透過性を示すための必須成分である。すなわち、(a)成分にPPE樹脂を添加することによって、寸法精度、耐熱性、耐銅害性、後加工時の溶着性を著しく向上することが可能になるが、一方、ポリプロピレン樹脂単体の優れた低水分透過性を損なう反面を持っている。これを補うために、(d)無機フィラーを添加する必要があり、(d)成分の無機フィラーとしては(e)板状の無機フィラーを添加するのが好ましい。板状無機フィラーは遮蔽性が高く、樹脂製容器に必要な低水分透過性をポリプロピレン樹脂単体並に保持、あるいはそれ以上に向上させることができる。
【0032】
(e)成分の板状無機フィラーの平均フレーク径は10〜400μmであり、50〜300μmであるのが好ましい。板状無機フィラーの例としてガラスフレーク、マイカが挙げられるが、その他にもグラファイト、導電性金属フレーク、タルク、セリサイトも使用可能である。これらのうち、コスト、成形性、機械的強度および寸法精度のバランスからガラスフレーク、マイカを使用することが好ましい。ガラスフレークの形状としては鱗片状のもので、樹脂配合後および成形品中における長径が1000μm以下、好ましくは1〜500μmの範囲であり、且つアスペクト比(長径と厚みとの比)が5以上、好ましくは10以上、更に好ましくは30以上のものが好適である。ガラスフレークの長径は、配合時の分級による樹脂成分との均一混合の困難さおよび成形品の物性ばらつきを考慮すると、1000μm以下が好ましい。一方アスペクト比は、成形品の耐熱性、剛性および耐衝撃性を考慮すると5以上のものが好ましい。
【0033】
ガラスフレークは、市販されているものをそのまま用いることができるが、樹脂に配合する際に適宜粉砕して用いても良い。上記ガラスフレークは、樹脂との親和性を改良する目的で、例えばシラン系やチタネート系等の種々のカップリング剤で処理したガラスフレークを使用できる。また、マイカについては、板状のもので、スゾライト・マイカ(登録商標)が好適に使用できる。樹脂配合後および成形品中における長径が1000μm以下、好ましくは500μm以下のものが好適で、重量平均アスペクト比(マイカの平均直径/平均厚み)が10以上、好ましくは30以上のものが剛性付与の点でもよい。樹脂との親和性を改良するため、カップリング剤で表面処理したマイカが特に良好に使用できる。
【0034】
(f)成分としての無機フィラーは、上述した(a)〜(e)成分よりなる樹脂組成物に対して、力学的特性、特に強度、剛性の向上、および使用される樹脂製容器の要求特性に応じて帯電防止性能を付与するのが好ましい。(f)成分の無機フィラーとしては、無機塩、ガラス繊維(ガラス長繊維、チョップドストランドガラス繊維)、ガラスビーズ、炭素繊維、ウィスカ、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、ワラストナイト、熱伝導性物質(グラファイト、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、アルミナ、酸化ベリリウム、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、硝酸アルミニウム、硫酸バリウムなど)、導電性金属繊維、導電性を示すカーボンブラック、導電性を示す炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0035】
繊維状無機フィラーの平均直径は3〜20μmであるのが好ましく、5〜15μmであるのがより好ましい。
繊維状無機フィラーを配合する場合は、ガラス繊維を用いることがコスト、成形性および機械的性質のバランスから好ましい。樹脂との混合し易さの観点で、配合前のガラス繊維の繊維長が0.5〜10mmであるのが好ましく、1〜8mmであるのがより好ましく、2〜7mmであるのが特に好ましい。この範囲の繊維長を有する繊維状無機フィラーを用い、樹脂配合後、および成形品中における平均繊維長を20〜1000μmにするのが好ましく、100〜500μmとするのがより好ましく、200〜400μmにするのが特に好ましい。また繊維状無機フィラーは公知のカップリング剤、収束剤で処理されていることが特に好ましい。
【0036】
(e)板状無機フィラー及び(f)繊維状無機フィラーを併用する場合、(e)成分と(f)成分の合計量が(a)成分及び(b)成分の合計100重量部に対して60〜100重量部であるのが好ましく、70〜90重量部であるのがより好ましい。(e)成分の含有量は、(a)成分及び(b)成分の合計100重量部に対して30〜60重量部であるのが好ましく、35〜55重量部であるのがより好ましい。また(f)成分の含有量も、(a)成分及び(b)成分の合計100重量部に対して30〜60重量部であるのが好ましく、35〜55重量部であるのがより好ましい。(e)成分と(f)成分の重量比は、70/30〜30/70が好ましい。
【0037】
上記の成分の他に、本発明の特徴および効果を損なわない範囲で、必要に応じて他の付加的成分、例えば、酸化防止剤、金属不活性化剤、難燃剤(有機リン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニウム系難燃剤、芳香族ハロゲン系難燃剤、シリコーン系難燃剤など)、フッ素系ポリマー、耐衝撃性を付与するためのエラストマー、(水添ブロック共重合体も含む)、可塑剤(低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル等)、三酸化アンチモン等の難燃剤、耐候性(耐光性)改良剤、ポリオレフィン用増核剤、スリップ剤、各種着色剤、離型剤を添加してもよい。
【0038】
本発明の樹脂製容器は、水分バリア性、力学的物性、寸法精度を要求されるあらゆる用途に適用可能であるが、好ましい用途の一例として(i)発熱体の冷却が必要とされる機器、具体的にはOA機器(例えばパソコン)の冷却媒介の保存容器が挙げられる。OA機器は、−40℃から100℃の最大使用温度範囲が想定されており、冷却媒介の保存容器もこの温度範囲において、各々の用途における容器としての力学的物性、寸法精度を満足していることが前提であるが、水分バリア性においては、0℃以下の温度領域は問題とされず、使用機会が多く、かつ製品寿命の大半を過ごす0℃から60℃の温度領域が重要である。
環境温度は常時変動するが、この温度領域での水分バリア性を樹脂製容器としての要求特性として定量化する指標として、40℃環境下における水分バリア性の数値を適用できる。JIS−Z0208カップ法試験規格に準拠した方法を用い、40℃90%RH環境下で0.40g・mm/m・day以下の熱可塑性樹脂であれば、最終製品の機能につき製品寿命の間、支障をきたさないと推定される。
【0039】
本発明の樹脂製容器の好ましい用途の別の例として、(ii)水道メーターの水量計測機構部品の収納容器が挙げられる。この容器の底には軸受、スナップフィット部などが設けられる他、内部にはメーターが収容されるので、メーターが見えるように透明な蓋体が嵌められる。水道水は樹脂製容器の外側を流れて水量計測機構に作用するが、樹脂製容器が水分を透過すると、透明な蓋体が曇ってメーターを読めなくなってしまう。本発明の樹脂製容器は低水分透過性であるから、水道メーターの用途で支障無く使用し得る。
【0040】
蓋体は、射出成形によって得られる本発明の熱可塑性樹脂である場合が多いが、O−リングを液漏れ防止に使用してもよく、同様の漏れ防止機能をもったあらゆる部品、素材が利用可能である。また、ガラスと組み合わせて容器内部に計器等を設置することも可能であり、金属部品との接合も可能である。また、セラミックス、熱硬化性樹脂等を別部品として使用することも可能である。
【0041】
樹脂製容器と蓋体との接合方法は、本発明の熱可塑性樹脂同士である場合、超音波溶着、スピン溶着、熱板溶着が最適であるが、スナップフィットによる締結も可能であり、その他公知の溶着方法でも可能である。O−リング、ガラス部品、金属部品との接合の場合は、ネジ/ボルト締結、クランプ締結、スクリュー締結が好適であるが、その他公知の種々の接合方法も使用可能である。
本発明の樹脂製容器を作製する方法としては、射出成形が最適であるが、公知の種々の方法、例えば、圧縮成形、押出成形、多層押出成形、異型押出成形、中空成形により得ることも可能である。
【0042】
本発明の好ましい態様においては、ポリフェニレンエーテル樹脂が特定の分散状態を持ち、また板状フィラーを含有するため、他の部品と接合しても金属製容器に匹敵する優れた水分バリア性、高い寸法精度、優れた力学的特性を示す。樹脂製容器をコンピューターの水冷ポンプと接合した場合には、一定量の水流をコンピューターの期間、ほとんど減少することなしに循環させることができる。この際、想定される使用環境下において水分蒸発がほとんどないため、周囲に電子部品等が存在していても悪影響を与えない。また、水道メーターの収納容器とした場合には、計器指示計のガラスに曇りをほとんど与えない。この他、優れた寸法安定性と優れた水分バリア性のため、−40℃から100℃の最大使用温度範囲が想定される家屋用冷水/温水貯臓器等の部品として使用可能である。この際、容器内部に例えば遷移金属(例えば銅)製パイプを収容した場合でも劣化はほぼ見られない。
<実施例>
【0043】
本発明を実施例によって、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
(1)原料
【0044】
(a)ポリプロピレン系樹脂
(a−1)成分のポリプロピレン
プロピレンホモポリマー 融点=167℃、MFR=6
(a−2)成分のポリプロピレン
無水マレイン酸変性ポリプロピレン 融点=163℃、MFR=100
(b)成分のPPE
2,6−キシレノールを酸化重合して得た還元粘度0.43のPPE
【0045】
(c)成分の水添ブロック共重合体
ポリスチレン(1)−水素添加されたポリブタジエン−ポリスチレン(2)の構造を有し、結合スチレン量43%、数平均分子量95,000、水素添加前のポリブタジエンの1,2−ビニル結合量と3,4−ビニル結合量の合計量80%、ポリスチレン(1)の数平均分子量30,000、ポリスチレン(2)の数平均分子量10,000、ポリブタジエン部水素添加率99.9%のスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物
【0046】
(e)板状無機フィラー
(e−1)平均フレーク径280μmのマイカ
(e−2)平均フレーク径130μmのグラファイト
(e−3)平均フレーク径130μmのガラスフレーク
(e−4)平均フレーク径5μmのグラファイト
(f)繊維状無機フィラー
平均直径13μm、チョップ長3.5mmのガラス繊維
【0047】
(2)ペレット成形
二軸押出機ZSK−25(WERNER&PFLEIDERER社製)を用い、原料の流れ方向に対し上流側に第一原料供給口、これより下流に第二原料供給口を設け、さらにその下流に真空ベントを設けた。また、第二供給口への原料供給方法は、押出機サイド解放口から強制サイドフィーダーを用いて供給する。上記のように設定した押出機を用い、(a)ポリプロピレン、(b)ポリフェニレンエーテル、(c)混和剤としての水添ブロック共重合体、(e)板状無機フィラー、(f)繊維状無機フィラーを表1に示した組成で配合し、押出温度270〜320℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量12kg/時間の条件にて溶融混練し、ペレットとして得た。
【0048】
(3)テストピース
上記で得た樹脂ペレットを用いて240〜280℃に設定したインラインスクリュー型射出成形機に供給し、金型温度60℃の条件で曲げ弾性率測定用テストピース及び荷重たわみ温度測定用テストピースを射出成形し、ギアオーブンを用い80℃環境下に24時間放置し、熱履歴処理を行った。
【0049】
(3−1)曲げ弾性率(ASTM D−790)及び荷重たわみ温度(ASTM D−648)
次にこれらのテストピースを用いて、曲げ弾性率(ASTM D−790)及び荷重たわみ温度(ASTM D−648)を測定した。
【0050】
(3−2)水分透過係数(単位:g・mm/m・day)
40℃の水分透過係数(単位:g・mm/m・day)は、JIS Z0208(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))に準拠して測定した。水分透過係数測定には、上述のペレットの射出成形によって得られた1mm厚みの平板を適正形状に切削したものを用いた。
【0051】
(3−3)寸法精度
射出成形性評価に用いた150mm角2mm厚みの平板金型を用いて、成形された平板の流動方向と流動直角方向の比率を求めることによって寸法精度を得た。この比率は1である場合が最も異方性が小さいと判断され、1に近いほど異方性が小さく寸法精度良好と判断できる。
【0052】
(3−4)溶着性
次に示すように試験片を溶着し、樹脂間の溶着性を定量的に測定した。溶着性は、超音波溶着と熱板溶着の2種類を用いて行った。
超音波溶着性はブランソン製の溶着機を用い、ASTMダンベル試験片を中央部から2つに切削し、溶着面積2.66cmになるように2枚を重ね合わせ、直径30mmのホーンを用いて、溶着加圧200MPa、発振時間0.37secの条件で溶着を行った。溶着後のサンプルは、23℃50%RH環境下に24時間放置後、5mm/minの速度で引張試験を行った。得られた結果を通常のASTMダンベルを用いた引張試験(ASTM D−638)によって得られた強度で割り返し、保持率として各材料の比較を行った。
熱板溶着性はタカギセイコー製の熱板溶着機を用い、ASTMダンベル試験片を中央部から2つに切削し、中央部を突きあわせる形で、押し込み量1.0mm、圧着量2.0mm、溶着時間30秒、圧着時間30秒の条件で溶着を行った。溶着後のサンプルは、23℃50%RH環境下に24時間放置後、5mm/minの速度で引張試験を行った。得られた結果を通常のASTMダンベルを用いた引張試験(ASTM D−638)によって得られた強度で割り返し、保持率として各材料の比較を行った。
【0053】
(3−5)耐銅害性
耐銅害性は、銅箔を密着させたテストピース、銅箔を密着させないテストピースを、ギアオーブンを用いて熱履歴下(100℃x2000時間)で金属劣化を促進させ、この熱履歴処理後のテストピースを雰囲気温度65℃、応力150kgf/cm相当の荷重をかけ、耐熱クリープテストを行い破断までの時間を測定することによって評価を行った。耐銅害性の効果を定量化するために、銅箔を密着させなかったテストピースの破断に至るまでの時間に対する、銅箔を密着させたテストピースの破断に至るまでの時間の比率を保持率(%)として求めた。
【実施例1】
【0054】
<樹脂製容器の作製>
上記で得た樹脂ペレットを用い、テストピースと同一の成形温度条件で、外径60mm、内径56mm、高さ50mm、肉厚2mmの円筒形で、一方に厚さ2mmの底部を有する樹脂製容器を成形した。底部には直径1mmの孔を設けた。
<蓋体の接合>
樹脂製容器の開放端には、図2に示すように、O−リングを介して板ガラスをクランプで止めた。
【0055】
<樹脂製容器の水分透過係数>
60℃での水分透過係数は以下のように測定した。クランプ止めした板ガラスが下側になるようにして樹脂製容器を置き、底部に設けた1mm径の孔からシリンジを用いて水を投入した。その後、孔は、金属製のピンで塞ぎ、さらに突起部を溶着によって封じた。水の投入量は、約20ccとした。この水封入カップ成形品の重量を測定し、60℃環境下に放置し、JIS Z0208(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))の水分透過係数を決定する方法を用いて出た数値を水分透過係数とした。
【0056】
<樹脂製容器と板ガラス接触部位の隙間>
次に樹脂製容器と板ガラスとの接触部位の隙間を測定し、容器とガラスの密着精度を以下のように評価した。すなわち、樹脂製容器のガラス接触部位全周に移着可能なインクを塗布し、ガラスを静かに載せ、ガラス表面に移着したインキ部位、移着が発生しない部位を確認した。次に、3次元測定機を用いて、ガラスに移着が発生した容器部位を4〜5点測定し、基準面とした。次にガラスに移着が発生していない容器部位を10点均等に測定し、その10点の測定のうち、Z軸方向の最大値をガラス接触部位隙間とした。
【実施例2】
【0057】
<樹脂製容器の作製>
開放端に、図1の部分拡大図に示すように、超音波溶着時のエネルギーダイレクターの役割をもつ突起形状を円周に設けた以外、実施例1の樹脂製容器と同じ形状で、同じ材質の樹脂製容器を作製した。
【0058】
<蓋体の接合>
樹脂製容器と同じ樹脂ペレットを用い、外径70mm、肉厚2mmの円盤状蓋体を作製した。この円盤状蓋体を実施例2の樹脂製容器開放端に勘合し、ブランソン社製の超音波溶着機を用いて適正条件で溶着を行った(図1参照)。
【0059】
<樹脂製容器の水分透過係数>
実施例1と同様に水を封入し、孔を塞いだ後、水封入容器の重量を測定し、60℃環境下に放置し、JIS Z0208(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))の水分透過係数を決定する方法を用いて出た数値を水分透過係数とした。
【0060】
<超音波溶着部の強度>
樹脂製容器と円盤状蓋体の超音波溶着を行い、水を封入した容器組立品を1.5mの高さからコンクリート床に種々の方向を下に向けて自由落下させ、溶着部の亀裂、封入してある水の漏れを確認した。10サンプルにつき、各1回の落下試験を行い、そのうちひとつでも亀裂が生じた場合は、亀裂あり、とした。
<溶着強度保持率>
前記の溶着性試験方法に基づいて超音波溶着強度及び熱板溶着強度についての試験を行って溶着強度保持率を求めた。
以上の結果を併せて表1に載せた。
【実施例3】
【0061】
樹脂製容器と蓋体との接合をブランソン社製のスピンウエルダを用いて行った以外、実施例2と同様の樹脂組成を用いて同様の評価を行った。
結果を併せて表1に載せた。
【実施例4】
【0062】
<樹脂製容器の作製>
開放端に、図3の部分拡大図に示すように、熱板接触部分の役割をもつ突起形状を円周に設けた以外、実施例1の樹脂製容器と同じ形状で、同じ材質の樹脂製容器を作製した。
<蓋体の接合>
樹脂製容器と同じ樹脂ペレットを用い、外径70mm、肉厚2mmの円盤状蓋体を作製した。この円盤状蓋体を実施例4の樹脂製容器開放端に勘合し、新神戸プラテックス社製熱板溶着機を用いて適正条件で溶着を行った(図3参照)。
実施例2,3と同様の樹脂組成を用いて同様の評価を行った。
結果を併せて表1に載せた。
【実施例5】
【0063】
原料の組成を表1に示すとおりとした以外、前記(1)原料〜(3)テストピースと同様にして、テストピースを作製し、各種の特性を測定した。また実施例2と同様にして樹脂製容器及び円盤状蓋体を作製し、容器に水を封入し、樹脂製容器の水分透過係数及び超音波溶着部の強度を測定した。
また実施例2と同様にして溶着強度保持率を求めた。
以上の結果を併せて表1に載せた。
【実施例6】
【0064】
原料の組成を表1に示すとおりとした以外、前記(1)原料〜(3)テストピースと同様にして、テストピースを作製し、各種の特性を測定した。また実施例2と同様にして樹脂製容器及び円盤状蓋体を作製し、容器に水を封入し、樹脂製容器の水分透過係数及び超音波溶着部の強度を測定した。
また実施例2と同様にして溶着強度保持率を求めた。
以上の結果を併せて表1に載せた。
【実施例7】
【0065】
原料の組成を表1に示すとおりとした以外、前記(1)原料〜(3)テストピースと同様にして、テストピースを作製し、各種の特性を測定した。また実施例2と同様にして樹脂製容器及び円盤状蓋体を作製し、容器に水を封入し、樹脂製容器の水分透過係数及び超音波溶着部の強度を測定した。
また実施例2と同様にして溶着強度保持率を求めた。
以上の結果を併せて表1に載せた。
【0066】
[比較例1〜3]
原料の組成を表1に示すとおりとした以外、前記(1)原料〜(3)テストピースと同様にして、テストピースを作製し、各種の特性を測定した。また実施例2と同様にして樹脂製容器及び円盤状蓋体を作製し、容器に水を封入し、樹脂製容器の水分透過係数及び超音波溶着部の強度を測定した。
また実施例2と同様にして溶着強度保持率を求めた。
以上の結果を併せて表1に載せた。
【0067】
[比較例4]
容器用途で使用されている以下の樹脂を入手し、成形を行い、実施例と同様の方法を用いて評価を行った。結果を表1に併せて示す。
G703H;旭化成ケミカルズPPE−HIPSアロイ/GF30%
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
水、水分もしくは水溶液と接触する容器用途において、水分バリア性、力学的物性、寸法精度、耐銅害性の要求特性を満たし、各特性においてバランスのとれた樹脂製容器を提供することができ、発熱体冷却システムの冷媒保存容器、建築物水道メーター廻りの乾式容器、家屋用冷水/温水貯蔵容器等に対して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施例で試験に供した樹脂製容器の形状・構造を示す図である。
【図2】実施例で試験に供した樹脂製容器及び蓋の形状・構造を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリプロピレン系樹脂55〜95重量部、(b)ポリフェニレンエーテル系樹脂45〜5重量部、(a)成分及び(b)成分の合計100重量部に対して、(c)ビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックAと、共役ジエン化合物の1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が45〜90%である共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックBとからなるブロック共重合体を水素添加してなる水添ブロック共重合体5〜30重量部、及び(d)無機フィラー60〜100重量部を含有し、水蒸気透過係数が40℃90%RH環境下で0.40g・mm/m・day以下である熱可塑性樹脂からなることを特徴とする樹脂製容器。
【請求項2】
(a)ポリプロピレン系樹脂は、α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体と反応してなる変性ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製容器。
【請求項3】
(c)水添ブロック共重合体を構成する重合体ブロックAがスチレン重合体ブロックであり、重合体ブロックBがブタジエン重合体ブロックであって、ブタジエン重合体ブロックの1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量が65〜90%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂製容器。
【請求項4】
(d)無機フィラーが、(a)成分及び(b)成分の合計100重量部に対して、(e)平均フレーク径が10〜400μmである板状無機フィラー30〜60重量部と、(f)平均直径が3〜20μmである繊維状無機フィラー30〜60重量部とからなり、(e)成分と(f)成分の合計量が60〜100重量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂製容器。
【請求項5】
(e)板状無機フィラーが、マイカ、ガラスフレーク、タルク及びグラファイトの中から選ばれる少なくとも1種の無機フィラーであり、(f)繊維状無機フィラーがガラス繊維であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂製容器。
【請求項6】
熱可塑性樹脂の射出成形品、ガラス部品、金属部品からなる群より選択された少なくとも1つである蓋体が接合されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂製容器。
【請求項7】
前記蓋体が熱可塑性樹脂の射出成形品であり、該蓋体が、前記熱可塑性樹脂の蓋体が、超音波溶着、スピン溶着、熱板溶着、のうち少なくとも1つによって接合されることを特徴とする請求項6に記載の樹脂製容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−297476(P2008−297476A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−146476(P2007−146476)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】