説明

樹脂製歯車、及びそれを備えた現像器、感光体ドラムユニット、画像形成装置又は画像読取装置

【課題】本発明は、補強リブを形成した場合においてその寸法精度を高めることができる樹脂製歯車を提供することを目的とするものである。
【解決手段】歯車1は、中心部に回転軸を装着する取付孔3が形成されており、取付孔3と同心円状に形成された外周縁部2を備えている。外周縁部2の外周面には、複数の歯形4が等間隔で形成されている。取付孔3の周縁部には突縁3aが形成されており、突縁3aの外周面から放射状に延設された複数のリブ部5が外周縁部2の内周面に連結されて一体形成されている。リブ部5の外周縁部2への連結部分は、歯形4の間に対応する位置に設定されており、歯形4からリブ部5にかけて連続して肉厚部が形成されないようにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ装置、プリンタ等の駆動伝達機構に適用可能な樹脂製歯車、及びそれを備えた現像器、感光体ドラムユニット、画像形成装置又は画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ装置、プリンタ等の駆動伝達機構をはじめとして様々な装置の駆動伝達機構では、歯車を用いてモータ等の駆動源からの駆動力を伝達している。こうした駆動伝達用の歯車は、金属材料から加工して製造されていたが、コスト及び軽量化の観点から樹脂製の歯車が用いられるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1では、円盤状に形成したウェッブと一体に、放射状に複数のリブを配置して剛性を確保するために、複数のリブを歯の基部に配置した点が記載されている。また、特許文献2では、環状部の外周側に歯すじのねじれた歯を形成し、環状部の内側に複数の補強リブを放射状に配置形成した点が記載されている。また、特許文献3では、中心部に形成されたボスと、外周方向にボスと同心円状に形成されたリムと、ボスとリムの間に一体連結された薄肉状のウェブとを備え、ウェブに各歯の全てに対応する位置において放射状にリブを一体形成した点が記載されている。
【特許文献1】特開平10−196767号公報
【特許文献2】特開平10−196766号公報
【特許文献3】特開2003−139219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の樹脂製歯車では、上述の先行文献に記載されているように、内部に放射状に形成された複数の補強リブを設けているが、こうした樹脂製歯車では、図3に示すように、歯形Tの歯元に対応する位置に補強リブRを連結して一体形成している(点線の円で囲んだ部分)。こうした形状では歯形Tから補強リブRにかけて連続して樹脂の肉厚の大きい部分が形成されるため、樹脂成形加工を行う場合、樹脂を冷却固化する際に肉厚の大きいほうが収縮率が大きくなって歯車全体が不均一に収縮し設計通りの寸法に仕上げられない、といった問題点がある。
【0005】
特に、複写機、ファクシミリ装置、プリンタ等の駆動伝達機構に用いられる歯車は、寸法精度の高いものを使用しないと用紙搬送動作や画像形成処理に誤差が生じて画質の劣化に直結してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、補強リブを形成した場合においてその寸法精度を高めることができる樹脂製歯車、及びそれを備えた現像器、感光体ドラムユニット、画像形成装置又は画像読取装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る樹脂製歯車は、外周面に複数の歯形が等間隔で形成された外周縁部と、中心部に穿設された取付孔と、取付孔の周縁部から放射状に延設されて外周縁部の内周面に連結された複数のリブ部とを備え、樹脂材料により一体形成された樹脂製歯車であって、前記リブ部は、歯形と歯形との間に対応する位置において前記外周縁部の内周面に連結されていることを特徴とする。さらに、前記リブ部は、前記歯形の歯元の厚さとほぼ同じ厚さに設定されていることを特徴とする
【0008】
本発明に係る現像器は、上記の樹脂製歯車を備えている。
【0009】
本発明に係る感光体ドラムユニットは、上記の樹脂製歯車を備えている。
【0010】
本発明に係る画像形成装置は、上記の樹脂製歯車を備えている。
【0011】
本発明に係る画像読取装置は、上記の樹脂製歯車を備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る樹脂製歯車は、上記のような構成を有することで、歯形と歯形との間に対応する位置においてリブ部が外周縁部の内周面に連結されているので、リブ部及び歯形が連続した肉厚部が形成されることがなくなり、連結部分での樹脂成形時の収縮差の発生を抑えることができ、歯車全体の寸法精度を高めることができる。
【0013】
また、リブ部の厚さを歯形の歯元の厚さとほぼ同じ厚さに設定すれば、歯形の樹脂成形時の収縮率とほぼ同じ収縮率でリブ部も収縮するようになり、リブ部の収縮による歯形の寸法精度への影響を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明に係る実施形態である樹脂製歯車に関する正面図であり、図2は、図1のA−A断面図である。歯車1は、中心部に回転軸を装着する取付孔3が形成されており、取付孔3と同心円状に形成された外周縁部2を備えている。外周縁部2の外周面には、複数の歯形4が等間隔で形成されている。
【0016】
取付孔3の周縁部には突縁3aが形成されており、突縁3aの外周面から放射状に延設された複数のリブ部5が外周縁部2の内周面に連結されて一体形成されている。リブ部5の外周縁部2への連結部分は、歯形4の間に対応する位置に設定されており、歯形4からリブ部5にかけて連続して肉厚部が形成されないようにされている。また、リブ部5の間には、薄肉に形成された肉盗み部6が形成されており、軽量化が図られている。そして、放射状の複数のリブ部5を形成することで、軽量化しつつ歯車1全体の剛性を確保することができる。
【0017】
外周縁部2の外周幅dは、歯形4の歯元の歯厚dと同一となるように設定されており、同様にリブ部5の幅d及び突縁3aの幅dについて歯形4の歯元の歯厚dと同一となるように設定されている。また、肉盗み部6の厚さも歯厚dと同じ厚さに設定することで、歯車1全体の各部位の樹脂の肉厚が揃うようになり、樹脂成形時の歯車全体の収縮差を抑えることができ、歯車全体の寸法精度をより高めることが可能となる。
【0018】
歯車1を樹脂成形加工により製造する場合に、2つの金型を密着させて金型内部に加熱溶融した樹脂を流し込み冷却して流し込んだ樹脂を固化させて成形すると、固化する際に樹脂がある程度収縮するようになるが、歯車1の場合には樹脂の肉厚が各部位でほぼ一定となっているので、全体が均一に収縮するようになり、設計どおりの寸法精度に仕上げることが容易になる。
【0019】
図4は、本発明に係る実施形態である樹脂製歯車を備えた画像形成装置全体の概略図を示している。画像形成装置の上部には原稿を搬送して原稿を読み取る原稿読取部100が配置され、その下部に画像を記録する記録部200、画像を記録する用紙を搬送する用紙搬送部300及び給紙部400が配されている。
【0020】
原稿読取部100は、原稿搬送装置(ADF)を内部に備えたカバー部10と、スキャナ11を備えた読取本体部12からなる。読取本体部12の上面には、搬送される原稿を読み取る部分にプラテンガラス13が配置され、原稿や本等を載置して読み取る部分に透明なガラス材からなる載置ベッド14が配置されている。搬送原稿を読み取る場合にはスキャナ11をプラテンガラス13に対向する位置に静止させて読取動作を行い、載置ベッド14に載置された原稿等を読み取る場合にはスキャナ11で原稿等の読取面に対して走査して読取動作を行うようにする。
【0021】
カバー部10の載置ベッド14に対向する面には原稿押え15が取り付けられており、また、その上部には複数枚の原稿を載置しておく原稿トレイ16が設けられている。原稿トレイ16に載置された原稿は、ピックアップローラ17及びセパレートローラ18によりADF内に搬入されてフィードローラ19によりプラテンガラス13に対向する読取位置に搬送されてスキャン11により読み取られ排出ローラ20により原稿排出トレイ21に排出される。
【0022】
記録部200では、用紙搬送部300により搬送された用紙に記録するために、現像器22、帯電ブラシ23、感光体ドラム24、転写ローラ25、露光ヘッド26、メモリ除去ブラシ27及び定着ローラ28が備えられている。まず、感光体ドラム24の表面を帯電ブラシ23により一様に帯電させ、帯電された感光体ドラム24の表面に露光ヘッド26で画像記録信号に応じて露光することで静電潜像を形成する。次に、現像器22内のトナーを供給ローラ及び現像ローラによって感光体ドラム24に形成された静電潜像に転移させて可視像化し、転写ローラ25により感光体ドラム24表面に形成されたトナー像を用紙に転写する。そして、転写されたトナー像は、定着ローラ28によって加熱・プレスして用紙に定着される。
【0023】
こうして、感光体への帯電、露光、現像、用紙への転写及び定着といった一連のプロセスが行われて、用紙に画像形成がなされる。転写後に感光体ドラム24の表面に残留したトナーは、メモリ除去ブラシ(ERSブラシ)27により付着力が弱められ、感光体ドラム10の表面上に分散させられる。そして、残留トナーは、現像器22の現像ローラに回収される。
【0024】
給紙部400には、給紙カセット5に複数枚の用紙が積載してセットされており、給紙ローラ29により一枚ずつ用紙搬送部300に給紙される。給紙された用紙は、フィードローラ30により搬送されてフィードローラ31及び32に挟持される。そして、フィードローラ31により記録部200に用紙が搬送されて画像形成され、画像形成処理された用紙は定着ローラ28及びプレスローラ33の間に挟持されて定着処理を行った後排紙ローラ34により排紙トレイ35に搬出される。
【0025】
現像器22の現像ローラ及び供給ローラは、ローラ軸が現像器22のフレームに軸支されており、ローラ軸の端部に固定された歯車により図示せぬ駆動モータからの駆動力が伝達されて回転するようになる。現像ローラ及び供給ローラに関して、それぞれのローラ軸の回転駆動に上述の樹脂製歯車が用いられる。本発明に係る樹脂製歯車を用いることで、高い寸法精度で正確な回転制御を行うことができるとともに現像器の軽量化にも貢献することが可能となる。
【0026】
感光体ドラム24、露光ヘッド26、メモリ除去ブラシ27はユニット化されて感光体ドラムユニットとして一体となっている。そして、感光体ドラム24はユニットのフレームにドラム軸が軸支されており、ドラム軸の端部に固定された歯車により図示せぬ駆動モータからの駆動力が伝達されて回転するようになる。感光体ドラム24に関して、その回転駆動に上述の樹脂製歯車が用いられる。本発明に係る樹脂製歯車を用いることで、高い寸法精度で正確な回転制御を行うことができるとともに感光体ドラムユニットの軽量化にも貢献することが可能となる。
【0027】
また、用紙搬送動作を行うフィードローラ30及び31並びに排紙ローラ34は、装置本体のフレームにローラ軸が軸支されており、各ローラ軸の端部に固定された歯車により図示せぬ駆動モータからの駆動力が伝達されて回転するようになる。これらのローラに関して、その回転駆動に上述の樹脂製歯車が用いられる。本発明に係る樹脂製歯車を用いることで、高い寸法精度で正確な回転制御を行うことができるとともに画像形成装置の軽量化にも貢献することが可能となる。
【0028】
図5は、フィードローラ30に本発明に係る樹脂製歯車を適用した例を示す斜視図である。フィードローラ30は、ローラ軸30aに複数のローラ部30bが固着されており、ローラ軸30aの両端部は軸支部材40を介してフレームに取り付けられている。樹脂製歯車1は、その取付孔3をローラ軸30aの一方の端部に嵌合して固定されている。
【0029】
また、原稿読取部100においてADFのフィードローラ19は、原稿読取部100のフレームにローラ軸が軸支されており、ローラ軸の端部に固定された歯車により図示せぬ駆動モータからの駆動力が伝達されて回転するようになる。フィードローラ19に関して、その回転駆動に上述の樹脂製歯車が用いられる。本発明に係る樹脂製歯車を用いることで、高い寸法精度で正確な回転制御を行うことができるとともに原稿読取部の軽量化にも貢献することが可能となる。
【0030】
なお、以上説明した例では、平歯車を例に説明したが、平歯車以外の樹脂製歯車においても本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る実施形態である樹脂製歯車に関する正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】従来の歯車に関する正面図である。
【図4】本発明に係る実施形態である樹脂製歯車を備えた画像形成装置全体の概略図である。
【図5】樹脂製歯車を適用したフィードローラに関する斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 樹脂製歯車
2 外周縁部
3 取付孔
4 歯形
5 リブ部
6 肉盗み部
100 原稿読取部
200 記録部
300 用紙搬送部
400 給紙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に複数の歯形が等間隔で形成された外周縁部と、中心部に穿設された取付孔と、取付孔の周縁部から放射状に延設されて外周縁部の内周面に連結された複数のリブ部とを備え、樹脂材料により一体形成された樹脂製歯車であって、前記リブ部は、歯形と歯形との間に対応する位置において前記外周縁部の内周面に連結されていることを特徴とする樹脂製歯車。
【請求項2】
前記リブ部は、前記歯形の歯元の厚さとほぼ同じ厚さに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製歯車。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂製歯車を備えている現像器。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の樹脂製歯車を備えている感光体ドラムユニット。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の樹脂製歯車を備えている画像形成装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の樹脂製歯車を備えている画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−309436(P2007−309436A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139736(P2006−139736)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】