説明

樹脂複合物の溶解処理装置、及び、樹脂複合物の溶解処理方法

【課題】少なくともポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とで形成された樹脂複合物を、ポリウレタン樹脂を溶解させ、ポリウレタン樹脂を分離しポリプロピレン樹脂を回収することにより、低コストで効率よく連続的に処理することのできる樹脂複合物の溶解処理装置、及び、樹脂複合物の溶解処理方法の提供を目的とする。
【解決手段】溶解処理装置1は、投入手段2、溶解槽3a、3b、3c、回収排出手段5、及び、処理液再利用手段6を備えた構成としてあり、複合物10のポリウレタン樹脂を溶解し、ポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とを分離し、ポリプロピレン樹脂11を排出(回収)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂複合物の溶解処理装置、及び、樹脂複合物の溶解処理方法に関し、特に、少なくともポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とで形成された樹脂複合物を、ポリウレタン樹脂を溶解させ、ポリウレタン樹脂を分離しポリプロピレン樹脂を回収することにより、低コストで効率よく連続的に処理することのできる樹脂複合物の溶解処理装置、及び、樹脂複合物の溶解処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球資源の有効活用などを促進する上で、樹脂製の廃材などを再生利用することは極めて重要である。
また、電気製品等の樹脂製の廃材が複数の樹脂(たとえば、下地としてのポリプロピレン樹脂と表面に塗膜としてのポリウレタン樹脂)を含んでいる場合、複数の樹脂を含む樹脂複合物から再利用する樹脂(たとえば、ポリプロピレン樹脂)を回収することが要望されており、様々な技術が研究開発されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、塗膜付合成樹脂廃材を粉砕して粉砕材とする粉砕工程と、この粉砕材を連続的、定量的に送り出す第1の定量送り出し工程と、送り出された粉砕材上の塗装塗膜を、スクリュー羽根を具備する加水分解槽中で所定の温度および圧力の蒸気によって連続的に加水分解する加水分解工程と、加水分解された塗膜の付着した粉砕材を乾燥する乾燥工程と、乾燥された加水分解材を連続的、定量的に送り出す第2の定量送り出し工程と、送り出された塗膜の付着した粉砕材を溶融混練して混練材とする溶融混練工程と、溶融混練工程から排出される混練材を冷却後所定の長さに切断してペレットとするペレット材製造工程と、からなる塗膜付合成樹脂廃材の連続再生方法の技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、押出機中で、溶融したウレタン塗膜付樹脂と、高温・高圧のベンジルアルコールおよび/またはベンジルアルコール蒸気とを接触させ、ウレタン塗膜を溶融樹脂中に微細分散させて、ウレタン塗膜付樹脂を再生するに際し、ベンジルアルコールが0.1〜2.0重量%のアルカリ触媒を含有すること、および、ウレタン塗膜付樹脂と、高温・高圧のベンジルアルコールおよび/またはベンジルアルコール蒸気との接触ゾーンに、圧力調整機構を設け、ウレタン塗膜を一定の温度・圧力条件で分解し、溶融樹脂中に微細分散させることを特徴とするウレタン塗膜付樹脂の連続再生処理法の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−55539号公報
【特許文献2】特開平7−290456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1、2の技術は、ウレタン樹脂を微粒化し、あるいは、分解・微細化しているものの、下地となるポリプロピレン樹脂などに練り込んでいるため、たとえば、ポリプロピレン樹脂だけを回収したいといった要望に全く応えることができなかった。すなわち、下地としてのポリプロピレン樹脂と塗膜としてのポリウレタン樹脂を含んでいる樹脂複合物から、ポリプロピレン樹脂とポリウレタン樹脂とを分離し、ポリプロピレン樹脂を回収する技術を確立することが要望されていた。
また、上記の樹脂複合物を処理する際、低コストで効率よく連続的に処理することが要望されていた。すなわち、地球資源の有効活用などを積極的に促進するためには、経済性や生産性などに優れた実用的な技術を確立し、その実用的な技術を広く普及させる必要があるからである。
【0007】
本発明は、以上のような要望に応えるために提案されたものであり、ポリウレタン樹脂部とポリプロピレン樹脂部とを有する樹脂複合物から、ポリウレタン樹脂を溶解させ、ポリプロピレン樹脂を回収することにより、低コストで効率よく連続的に処理することのできる樹脂複合物の溶解処理装置、及び、樹脂複合物の溶解処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の樹脂複合物の溶解処理装置は、少なくともポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とで形成された樹脂複合物の溶解処理装置において、前記樹脂複合物を投入する投入手段と、投入された前記樹脂複合物の前記ポリウレタン樹脂を溶解する処理液が貯留され、多段構成を有する溶解槽手段と、前記溶解槽手段から排出される溶解された前記ポリウレタン樹脂を含む前記処理液と溶解されない前記ポリプロピレン樹脂とを分離し、前記処理液を回収し、前記ポリプロピレン樹脂を排出する回収排出手段と、回収した前記処理液から残渣を分離する残渣分離手段を有し、前記処理液を再利用する処理液再利用手段とを備えた構成としてある。
【0009】
また、本発明の樹脂複合物の溶解処理方法は、少なくともポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とで形成された樹脂複合物の溶解処理方法において、前記樹脂複合物を投入する投入工程と、多段構成を有する溶解槽手段に貯留された処理液を用いて、投入された前記樹脂複合物の前記ポリウレタン樹脂を溶解する溶解工程と、前記溶解槽手段から排出される溶解された前記ポリウレタン樹脂を含む前記処理液と溶解されない前記ポリプロピレン樹脂とを分離し、前記処理液を回収し、前記ポリプロピレン樹脂を排出する回収排出工程と、回収した前記処理液から残渣を分離し、前記処理液を再利用する処理液再利用工程等を有する方法としてある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂複合物の溶解処理装置、及び、樹脂複合物の溶解処理方法によれば、少なくともポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とで形成された樹脂複合物を、ポリウレタン樹脂を溶解させ、ポリウレタン樹脂を分離しポリプロピレン樹脂を回収することにより、低コストで効率よく連続的に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態にかかる溶解処理装置を説明するための要部の概略図を示している。
【図2】図2は、本発明の一実施形態にかかる溶解処理方法を説明するための概略フローチャート図を示している。
【図3】図3は、本発明の第二実施形態にかかる溶解処理装置の溶解槽手段を説明するための要部の概略図であり、(a)は正面方向の断面図を示しており、(b)はA−A矢視図を示している。
【図4】図4は、本発明の第三実施形態にかかる溶解処理装置の溶解槽手段を説明するための要部の概略断面図を示している。
【図5】図5は、本発明の第三実施形態の応用例にかかる連続溶解処理装置の溶解槽手段を説明するための要部の概略断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[樹脂複合物の溶解処理装置の第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態にかかる溶解処理装置を説明するための要部の概略図を示している。
図1において、本実施形態の溶解処理装置1は、投入手段2、溶解槽3a、3b、3c、回収排出手段5、及び、処理液再利用手段6を備えた構成としてある。
この溶解処理装置1は、少なくともポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とで形成された樹脂複合物10(適宜、複合物10と略称する。)のポリウレタン樹脂(図示せず)を溶解して、ポリウレタン樹脂を分離し、ポリプロピレン樹脂11を排出(回収)する。
【0013】
(複合物)
本実施形態では、複合物10は、通常、下地としてのポリプロピレン樹脂(PP)、及び、表面に塗膜としてのポリウレタン樹脂などを含んでいる。なお、本発明の樹脂複合物は、少なくともポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とで形成されたものを総称している。
また、複合物10は、粉砕手段(図示せず)により、最大長が約数mm(好ましくは、約2mm〜10mm、より好ましくは、約2mm〜6mm)となるよう粒子状にあらかじめ粉砕してある(ペレット化してある)。さらに、上記サイズにペレット化したものを処理すると、溶解処理後に得られるポリプロピレン樹脂11を再利用する際に再度ペレット化する必要がないので、低コスト化を図ることができる。
【0014】
(投入手段)
投入手段2は、ネットコンベア21、洗浄装置22、及び、ホッパー23などを有している。この投入手段2は、ペレット状の複合物10を溶解槽3aに投入する。
ネットコンベア21は、ペレット状の複合物10のサイズより細かいメッシュのワイヤーネットを有しており、載置された複合物10をホッパー23まで搬送する。このようにすると、複合物10を連続的に投入することができ、バッチ方式と比べると、効率よく複合物10を処理することができる。
【0015】
洗浄装置22は、洗浄槽、ポンプ、フィルタ、シャワーノズル、圧力計、及び、バルブなどを有している。この洗浄装置22は、ネットコンベア21のほぼ中央に設けられており、ネットコンベア21によって搬送される複合物10に洗浄液を吹き付け、複合物10を洗浄する。この洗浄液は、後述する処理液12とほぼ同じ成分の液体であり、ほぼ常温で使用される。このようにすると、溶解槽手段としての溶解槽3aに異物が混入するといった不具合を防止することができる。さらに、粉砕された複合物10が、洗浄液で濡れた状態(液封された状態)となるので、溶解槽3aに投入される際、処理液12に迅速に没することができる。また、洗浄装置22の洗浄液が、処理液12(通常、触媒成分を含まない処理液)とほぼ同じ成分としてあるので、溶解槽3a内の処理液12に悪影響を与えるといった不具合を防止することができる。
また、ホッパー23は、下端が溶解槽3aと連通しており、ネットコンベア21から落下する複合物10は、ホッパー23を介して、溶解槽3aに投入される。
【0016】
(溶解槽手段)
本実施形態の溶解槽手段は、三つの単一槽、すなわち、溶解槽3a、3b、3cを有する多段連続装置としてある。また、溶解槽3a、3b、3cは、投入された複合物10のポリウレタン樹脂を溶解する処理液12が貯留されている。このように、多段構成を有することにより、各溶解槽3a、3b、3c内における処理液12及び複合物10などの滞留時間分布を均一にすることができる。すなわち、連続的に投入される複合物10が、投入されてから極めて短時間で多段連続装置から出てしまうといった不具合を防止し、トータル的に所定の処理時間を維持することができる。したがって、回収後再利用されるポリプロピレン樹脂11の品質(ポリプロピレン樹脂11にポリウレタン樹脂が残っているといった不具合が発生しないこと。)を向上させることができる。
なお、溶解槽手段は、上記の構成に限定されるものではなく、たとえば、後述する横型多段槽41や縦型多段槽42、43などのように、多段構成を有していればよい。また、単一槽の数量は、三つに限定されるものではなく、滞留時間分布の要求などに応じて設定される。
【0017】
また、溶解槽3a、3b、3cは、設置高さが順に低くなっており、溶解槽3aと溶解槽3bは、弁34及び配管35を介して連通されている。弁34は、溶解槽3aの上部(あるいは、中段部)と接続し、配管35の下流側の端部は、溶解槽3bの上部と接続してある。これにより、弁34が開かれると、位置エネルギーにより、溶解槽3aの処理液12、複合物10及びポリプロピレン樹脂11などが溶解槽3bに流れる。
また、溶解槽3bと溶解槽3cも、上記と同様に連通している。
さらに、溶解槽3cと回収排出手段5は、弁34及び配管36を介して連通されている。弁34は、溶解槽3cの上部(あるいは、中段部)と接続し、配管36の下流側の端部は、回収排出手段5のネットコンベア53上に位置している。これにより、弁34が開かれると、位置エネルギーにより、溶解槽3cの処理液12(溶解されたポリウレタン樹脂を含む。)及びポリプロピレン樹脂11などが回収槽51内のネットコンベア53上に放出される。
【0018】
なお、本実施形態では、弁34及び配管35を用いる構成としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、図示してないが、オーバーフローさせる流路を設ける構成としてもよい。
また、本実施形態の弁34は、図示してないが、溶解槽3a、3b、3cの下部と接続していてもよく、これにより、液面に投入される複合物10が、極めて短時間で弁34から出てしまうといった不具合を防止することができる。
【0019】
また、溶解槽3a、3b、3cは、撹拌手段31、加温手段32及び冷却手段33を有している。
撹拌手段31は、羽根車、シャフト及びモータなどを有しており、槽内の処理液12を撹拌する。ここで、羽根車の形状は、複合物10を処理液12中により均一に分散させるため、上下循環運動をもたらす形状が好ましい。この理由は、通常、ポリプロピレン樹脂は処理液12に浮き、フィラー等は沈むが、上下循環運動をもたらすように撹拌することにより、これらをほぼ均一に分散させることができるからである。
【0020】
また、加温手段32は、自動制御弁、温度センサ、温度コントローラ、流路を有する加温部材を有しており、加温部材が槽の中段部及び下部に設けられ、熱媒油を循環させることにより、処理液12を加温する。
さらに、冷却手段33は、槽内の上部の気体(この気体は、ほぼ処理液12の蒸気である。)を冷却する熱交換器などを有しており、熱交換器に冷却水を循環させることにより、処理液12の蒸気を冷却して槽内の処理液12に戻し、処理液12を再利用することができる。
【0021】
本実施形態では、各溶解槽3a、3b、3cの条件をほぼ同じにしてある。
すなわち、本実施形態では、処理液12の液温は、約145℃ (ポリプロピレン樹脂の軟化温度より10℃程度低い温度)としてある。
また、槽内の圧力は、常圧としてある。これにより、耐圧構造とする必要がなくなり、設備費用のコストダウンを図ることができる。
また、各溶解槽3a、3b、3cの合計の溶解処理時間は、溶解速度や必要な溶解度などに応じて設定されるが、通常、10数分〜10時間程度である。
また、投入される複合物10に対して、通常、2倍〜20倍程度、好ましくは3倍〜6倍(容積比)の処理液12が供給される。
【0022】
(処理液)
本実施形態の処理液12は、溶剤としてのベンジルアルコールと、触媒としてのリン酸三カリウムとを含んでいる。
また、処理液12は、上記に限定されるものではなく、アルコール類、ケトン類又はエーテル類を含んでいればよい。このようにすると、大気圧下であっても、短時間でポリウレタン樹脂を溶解することができる。したがって、耐圧構造などを必要としないので、設備費用のコストダウンを図ることができ、また、溶解するまでの時間が短縮でき、ランニング費用のコストダウンを図ることができる。
【0023】
また、アルコール類、ケトン類又はエーテル類として、たとえば、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等があげられる。
なお、処理液12によるポリウレタン樹脂の溶解には、処理液12によるポリウレタン樹脂の膨潤、ポリウレタン樹脂の分解、ポリウレタン樹脂の複合物10からの剥離、処理液12への溶解などが含まれる。
【0024】
(回収排出手段)
回収排出手段5は、回収槽51、洗浄装置52、及び、ネットコンベア53などを有している。また、回収槽51と洗浄装置52は、並べて設置され、ネットコンベア53は、上流側の部分が回収槽51内に収められ、中央側の部分が洗浄装置52内に収められる状態で、設置される。この回収排出手段5は、溶解槽3cから排出される溶解されたポリウレタン樹脂を含む処理液12と溶解されないポリプロピレン樹脂11とを分離し、処理液12を回収し、ポリプロピレン樹脂11を排出する。
【0025】
回収槽51は、上述したように、ネットコンベア53の上流側の部分が収められており、かつ、ネットコンベア53上に配管36の下流側の端部が位置している。これにより、溶解槽3cの弁34が開かれると、位置エネルギーにより、溶解槽3cの処理液12及びポリプロピレン樹脂11などが、回収槽51内のネットコンベア53上に放出される。そして、放出された処理液12及びポリプロピレン樹脂11などは、処理液12などが、ネットコンベア53のワイヤーネットを通り抜け、回収槽51に貯留され、かつ、ポリプロピレン樹脂11は、ワイヤーネット上に載置され、ネットコンベア53によって搬送される。すなわち、回収排出手段5は、ポリプロピレン樹脂11を処理液12から分離し、処理液12を容易に回収でき、また、分離したポリプロピレン樹脂11を連続的に排出することができる。すなわち、バッチ方式と比べると、効率よく複合物10を処理することができる。
【0026】
洗浄装置52は、洗浄槽、ポンプ、フィルタ、シャワーノズル、圧力計、及び、バルブなどを有している。この洗浄装置52は、ネットコンベア53によって搬送されるポリプロピレン樹脂11に洗浄液を吹き付け、ポリプロピレン樹脂11を洗浄する。この洗浄液は、処理液12とほぼ同じ成分の液体であり、ほぼ常温で使用される。このようにすると、ポリプロピレン樹脂11に付着している微小な異物(フィラーや塗膜固形物などの残渣)を洗い流すことができるので、再利用されるポリプロピレン樹脂11の純度(品質)を向上させることができる。
また、洗浄装置52の洗浄液が、処理液12(通常、触媒成分を含まない処理液)とほぼ同じ成分としてあるので、ポリプロピレン樹脂11に悪影響を与えるといった不具合を防止することができる。また、たとえば、蒸発器61によって得られる処理液12を利用することもでき、洗浄液の管理などが容易となり、使い勝手などを向上させることができる。
【0027】
ネットコンベア53は、回収するポリプロピレン樹脂11のサイズより細かいメッシュのワイヤーネットを有しており、載置されたポリプロピレン樹脂11を搬送し排出する。このようにすると、ポリプロピレン樹脂11を連続的に排出することができ、バッチ方式と比べると、効率よく複合物10を処理することができる。
なお、ネットコンベア53から排出されたポリプロピレン樹脂11は、後の別工程で乾燥され、ポリプロピレン樹脂11として再利用される。
【0028】
(処理液再利用手段)
処理液再利用手段6は、残渣分離手段としての蒸発器61、温度制御手段62、及び、触媒槽65などを有している。この処理液再利用手段6は、蒸発器61が、回収槽51に回収された処理液12から残渣を分離し、残渣を分離した処理液12を再利用する。
なお、本実施形態の処理液再利用手段6は、触媒槽65を有しているが、これに限定されるものではなく、たとえば、触媒槽65を備えない構成としてもよい。
【0029】
蒸発器61は、フィルタやポンプなどを介して、回収槽51と連通しており、回収槽51に回収された処理液12の一部(通常、一部であるが、全部であってもよい。)を抜き出して、蒸発工程を経て溶剤と、フィラーや塗膜固形物などの残渣とを分離する。なお、通常、溶解槽3a、3b、3c内の塗膜などの複合物からの溶解物の濃度が、20wt%以下となるように管理される。
そして、蒸発器61によって分離された溶剤は、処理液12として溶解槽3aに供給され再利用される。これにより、ランニング費用のコストダウンを図ることができる。
また、分離された残渣は、系外に排出され、補助燃料等として(たとえば、C重油相当として)再利用される。このように、溶解処理装置1は、複合物10を、ほぼ完全に再利用することができ、処理装置としての付加価値を向上させることができる。
【0030】
温度制御手段62は、冷却用熱交換器63a、加温用熱交換器63b及び自動制御弁64などを有している。
冷却用熱交換器63aは、バルブなどを介して回収槽51と連通しており、冷却水を循環させることにより、回収槽51に回収された処理液12の一部を冷却する。そして、冷却した処理液12は、必要に応じて触媒槽65を経由して、溶解槽3aに供給される。
また、加温用熱交換器63bは、バルブなどを介して回収槽51と連通しており、温度センサや温度コントローラにより制御される自動制御弁64が、熱媒油を循環させると、回収槽51に回収された処理液12の一部を加温する。そして、加温した処理液12は、必要に応じて触媒槽65を経由して、溶解槽3aに供給される。
したがって、装置の立上時や通常運転時は、加温用熱交換器63aで、溶解槽3aに所定の温度の処理液12を供給することができ、溶解槽3a内の処理液12の温度を安定させることができる。
また、装置の立ち下げ時や緊急時は、冷却用熱交換器63bで、系内処理液の温度を所定温度まで下げて安全に装置を止めることができる。
【0031】
ポリウレタン樹脂の溶解を効率的に行うために処理液12を触媒槽65に通して用いることが好ましい。触媒槽65中で用いられる触媒は、アルカリ金属のリン酸塩又は炭酸塩などであり、たとえば、リン酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
触媒槽65は、ステンレス製のカートリッジフィルターとほぼ同じ構成としてあり、上述した触媒(固体)が、ステンレス製の金網で作ったカートリッジの中に収納されている。また、触媒槽65は、三方弁66などを介して冷却用熱交換器63a及び加温用熱交換器63bと連通しており、三方弁66が開かれると、処理液12が供給される。この触媒槽65は、温度制御手段62からの処理液12が槽内を循環すると、触媒中の有効成分が処理液12中に移動する。すなわち、触媒槽65を用いることにより、効率よく触媒中の有効成分を処理液12中に移動させることができる。
【0032】
次に、上記構成の溶解処理装置1の動作などについて、図面を参照して説明する。
図2は、本発明の一実施形態にかかる溶解処理方法を説明するための概略フローチャート図を示している。
図2に示すように、溶解処理装置1は、まず、投入手段2のネットコンベア21が、載置されたペレット状の複合物10を搬送する。このようにすると、複合物10を連続的に投入することができ、バッチ方式と比べると、効率よく複合物10を処理することができる。
【0033】
次に、洗浄装置22が、搬送される複合物10に洗浄液を吹き付け、複合物10を洗浄する。これにより、溶解槽手段としての溶解槽3aに異物が混入するといった不具合を防止することができる。さらに、粉砕された複合物10が、洗浄液で濡れた状態(液封された状態)となるので、溶解槽3aに投入される際、処理液12に迅速に没することができる。
続いて、ネットコンベア21が、洗浄された複合物10をホッパー23まで搬送し、ネットコンベア21から落下した複合物10が、ホッパー23を介して、溶解槽3aに投入される(ステップS1)。
【0034】
次に、多段連続装置の溶解槽3a、3b、3cは、撹拌手段31が、投入された複合物10を処理液12中において撹拌し、複合物10に含まれるポリウレタン樹脂が溶解する(ステップS2)。また、処理液12は、加温手段32や冷却手段33によって、約145℃に制御されている。このように、多段構成を有することにより、各溶解槽3a、3b、3c内における処理液12及び複合物10などの滞留時間分布を均一にすることができる。すなわち、連続的に投入される複合物10が、投入されてから極めて短時間で多段連続装置から出てしまうといった不具合を防止し、トータル的に所定の処理時間を維持することができる。したがって、回収されるポリプロピレン樹脂11の品質(ポリプロピレン樹脂11にポリウレタン樹脂が残っているといった不具合が発生しないこと。)を向上させることができる。
【0035】
また、溶解槽3a、3b、3cは、通常、各弁34が開かれた状態であり、溶解槽3aに処理液12が供給されると、位置エネルギーにより、溶解槽3aの処理液12、複合物10及びポリプロピレン樹脂11などが溶解槽3bに流れ、溶解槽3bの処理液12、複合物10及びポリプロピレン樹脂11などが溶解槽3cに流れ、溶解槽3cの処理液12(溶解されたポリウレタン樹脂を含む。)及びポリプロピレン樹脂11などが回収槽51内のネットコンベア53上に放出される。
【0036】
次に、回収排出手段5は、溶解槽3cから排出される溶解されたポリウレタン樹脂を含む処理液12と溶解されないポリプロピレン樹脂11とを分離し、処理液12を回収槽51に回収し、かつ、ポリプロピレン樹脂11をネットコンベア53が排出する。
なお、回収槽51に回収した処理液12には、フィラー(サイズは、微小(最大長が約1mm未満)である。)、塗膜固形物(ポリプロピレン樹脂から剥離したが、完全に溶解していない微小な(最大長が約1mm未満の)塗膜片)などの残渣が含まれている。
【0037】
ここで、回収排出手段5は、まず、回収槽51内のネットコンベア53上に放出され、放出された処理液12及びポリプロピレン樹脂11などは、処理液12などが、ネットコンベア53のワイヤーネットを通り抜け、回収槽51に貯留され、かつ、ポリプロピレン樹脂11は、ワイヤーネット上に載置され、ネットコンベア53によって搬送される。すなわち、回収排出手段5は、ポリプロピレン樹脂11を処理液12から分離し、処理液12を容易に回収槽51に回収でき、また、分離したポリプロピレン樹脂11を連続的に回収する(ステップS31)。
【0038】
次に、洗浄装置52は、ネットコンベア53によって搬送されるポリプロピレン樹脂11に洗浄液を吹き付け、ポリプロピレン樹脂11を洗浄する(ステップS32)。この洗浄液は、処理液12とほぼ同じ成分の液体であり、ほぼ常温で使用される。このようにすると、ポリプロピレン樹脂11に付着している微小な異物(フィラーや塗膜固形物などの残渣)を洗い流すことができるので、回収後再利用されるポリプロピレン樹脂11の純度(品質)を向上させることができる。
また、洗浄装置52の洗浄液が、処理液12(通常、触媒成分を含まない処理液)とほぼ同じ成分としてあるので、ポリプロピレン樹脂11に悪影響を与えるといった不具合を防止することができる。また、たとえば、蒸発器61によって得られる処理液12を利用することもでき、洗浄液の管理などが容易となり、使い勝手などを向上させることができる。
【0039】
続いて、ネットコンベア53は、載置されたポリプロピレン樹脂11を搬送し排出する(ステップS33)。このようにすると、ポリプロピレン樹脂11を連続的に排出することができ、バッチ方式と比べると、効率よく複合物10を処理することができる。
なお、ネットコンベア53から回収容器などに排出されたポリプロピレン樹脂11は、後の別工程で乾燥され、ポリプロピレン樹脂11として再利用される。
【0040】
次に、溶解処理装置1は、処理液再利用手段6が、回収槽51に回収された処理液12の残渣を除去し、残渣の除去された処理液12を再利用する(ステップS4)。
ここで、処理液再利用手段6は、蒸発器61が、回収槽51に回収された処理液12の一部(通常、一部であるが、全部であってもよい。)を抜き出して、蒸発工程(ステップS41)を経て溶剤と、フィラーや塗膜固形物などの残渣とを分離する。
そして、蒸発器61によって分離された溶剤は、処理液12として溶解槽3aに供給され再利用される。これにより、ランニング費用のコストダウンを図ることができる。
また、分離された残渣は、図示してないが、系外に排出され、補助燃料等として(たとえば、C重油相当として)再利用される。このように、溶解処理装置1は、複合物10を、ほぼ完全に再利用することができ、処理装置としての付加価値を向上させることができる。
【0041】
また、処理液再利用手段6は、温度制御手段62が、回収槽51に回収された処理液12の一部を所定の温度に制御する(ステップS42)。このようにすると、溶解槽3aに所定の温度の処理液12を供給することができ、溶解槽3a内の処理液12の温度を安定させることができる。
【0042】
さらに、処理液再利用手段6は、必要に応じて三方弁66が開かれると、触媒槽65によって、触媒中の有効成分を温度制御手段62からの処理液12中に移動させ、処理液12に触媒を添加する(ステップS43)。すなわち、触媒槽65を用いることにより、効率よく触媒中の有効成分を処理液12中に移動させることができる。
【0043】
このように、溶解処理装置1は、少なくともポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とで形成された複合物10が連続的に投入された場合であっても、溶解槽手段(溶解槽3a、3b、3c)における溶解の達成率を向上させることができる。さらに、処理液再利用手段6が、ポリプロピレン樹脂11を連続的に回収し、洗浄を行うことにより、回収されるポリプロピレン樹脂11の品質を向上させることができる。
また、バッチ方式と比べると、複合物10を連続的に投入することにより、効率よく処理することができる。さらに、処理液12を再利用することができるので、ランニング費用のコストダウンを図ることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の溶解処理装置1によれば、少なくともポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とで形成された複合物10から、ポリウレタン樹脂を溶解させ、ポリプロピレン樹脂11を回収することにより、低コストで効率よく連続的に処理することができる。
次に、溶解処理装置1の他の実施形態などについて、図面を参照して説明する。
【0045】
[樹脂複合物の溶解処理装置の第二実施形態]
図3は、本発明の第二実施形態にかかる溶解処理装置の溶解槽手段を説明するための要部の概略図であり、(a)は正面方向の断面図を示しており、(b)はA−A矢視図を示している。
図3において、本実施形態の溶解処理装置は、上述した第一実施形態の溶解処理装置1と比べると、溶解槽3a、3b、3cの代わりに横型多段槽41を備えた点などが相違する。なお、本実施形態の他の構成は、溶解処理装置1とほぼ同様としてある。
したがって、図3において、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0046】
横型多段槽41は、水平方向に隣接する三つの溶解槽を有するほぼ直方体状であり、仕切板411、昇降板413、じゃま板414、及び、撹拌手段31などを有している。
仕切板411は、横型多段槽41をほぼ三等分するように、二箇所に設けられており、隣接する溶解槽を仕切っている。また、仕切板411は、下部の中央に、ほぼ矩形状の連通孔412が形成されている。なお、仕切板411の位置や形状などは、上記に限定されるものではなく、たとえば、処理液12や複合物10の撹拌状態、及び、処理液12に対する複合物10の比重などに応じて設定される。
【0047】
また、昇降板413は、ほぼ矩形状としてあり、連通孔412を塞ぐことができるように、昇降可能に設けられている。この昇降板413は、エアシリンダ(図示せず)などによって昇降され、仕切板411を開閉する。
さらに、仕切板411の下流側には、仕切板411と対向するように、ほぼ矩形状のじゃま板414が立設されている。また、じゃま板414の位置や形状などは、たとえば、処理液12や複合物10の流れ状態などに応じて設定される。
なお、横型多段槽41は、図示してないが、加温手段32や冷却手段33を有している。
【0048】
上記構成の横型多段槽41は、通常、一対の昇降板413が上昇し、かつ、弁34が開かれた状態にあり、第一の溶解槽(左側の溶解槽)に処理液12が供給されると、位置エネルギーにより、第一の溶解槽の処理液12、複合物10及びポリプロピレン樹脂11などが第二の溶解槽(中央の溶解槽)に流れ、第二の溶解槽の処理液12、複合物10及びポリプロピレン樹脂11などが第三の溶解槽(右側の溶解槽)に流れ、第三の溶解槽の処理液12(溶解されたポリウレタン樹脂を含む。)及びポリプロピレン樹脂11などが回収槽51内のネットコンベア53上に放出される。
この際、じゃま板414によって、処理液12などは、上方向や左右方向などに流れるので、第一の連通孔412から第二の連通孔412へほぼ直線的に流れるといった不具合を効果的に防止することができる。
なお、その他の構成などは、溶解処理装置1とほぼ同様としてある。
本実施形態では槽の数を3としているが、上記に限定されるものではなく、例えば、処理液12や複合物10などに応じて設定される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の溶解処理装置1aによれば、第一実施形態の溶解処理装置1とほぼ同様の効果を奏するとともに、溶解槽手段(横型多段槽41)の小型化などを図ることができる。
【0050】
[樹脂複合物の溶解処理装置の第三実施形態]
図4は、本発明の第三実施形態にかかる溶解処理装置の溶解槽手段を説明するための要部の概略断面図を示している。
図4において、本実施形態の溶解処理装置は、上述した第一実施形態の溶解処理装置1と比べると、溶解槽3a、3b、3cの代わりに縦型多段槽42を備えた点などが相違する。なお、本実施形態の他の構成は、溶解処理装置1とほぼ同様としてある。
したがって、図4において、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0051】
縦型多段槽42は、垂直方向に隣接する三つの溶解槽を有するほぼ円筒状であり、仕切板421、昇降板423、撹拌手段424、弁425、ポンプ426、及び、混合層427などを有している。また、上部に、配管36が接続されており、処理液12などがオーバーフローする。
仕切板421は、縦型多段槽42をほぼ三等分するように、二箇所に設けられており、隣接する溶解槽を仕切っている。また、仕切板421は、縁部にほぼ円形状の連通孔422が形成されている。なお、槽の数や仕切板421の位置や形状などは、上記に限定されるものではなく、たとえば、処理液12や複合物10の撹拌状態などに応じて設定される。
【0052】
また、一対の昇降板423は、ほぼ円形状としてあり、連通孔422を塞ぐことができるように、昇降可能に設けられている。これらの昇降板423は、一本の連結棒に取り付けられており、エアシリンダ(図示せず)などによって昇降され、仕切板421を開閉する。すなわち、連通孔422及び昇降板423などは、溶解槽を開閉可能に連通させる連通手段として機能する。
また、撹拌手段424は、三つの羽根車、シャフト及びモータなどを有しており、各溶解槽内の処理液12を撹拌する。
なお、本実施形態では、第一の連通孔422の上方に第二の連通孔422を設けてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、第一の連通孔422に対して周方向に異なる位置に、第二の連通孔422を設けてもよい。このようにすると、第一の連通孔422から第二の連通孔422へほぼ直線的に流れるといった不具合を効果的に防止することができる。
【0053】
縦型多段槽42は、下部の中央に、弁425が接続され、弁425などを介してポンプ426と連通している。
また、ポンプ426は、通常、容積型のポンプであり、吸い込み口が混合層427と連通している。
また、混合層427は、複合物10及び処理液12が供給される。
なお、縦型多段槽42は、図示してないが、加温手段32や冷却手段33を有している。
【0054】
上記構成の縦型多段槽42は、混合層427に複合物10及び処理液12が供給されており、ポンプ426が作動し、弁425が開いた状態にある。また、昇降板423が上昇し、各連通孔422が開かれた状態にある。
これにより、縦型多段槽42は、ポンプ426によって第一の溶解槽(下側の溶解槽)に複合物10及び処理液12が供給され、第一の溶解槽から第二の溶解槽(中段の溶解槽)に、処理液12、複合物10及びポリプロピレン樹脂11などが流れ、第二の溶解槽から第三の溶解槽(上側の溶解槽)に、処理液12、複合物10及びポリプロピレン樹脂11などが流れ、第三の溶解槽から配管36に、処理液12(溶解されたポリウレタン樹脂を含む。)及びポリプロピレン樹脂11などが流れる。
この際、昇降板423がじゃま板として機能し、処理液12などは、上方向や左右方向などに流れるので、第一の連通孔422から第二の連通孔422へほぼ直線的に流れるといった不具合を効果的に防止することができる。
【0055】
なお、その他の構成などは、溶解処理装置1とほぼ同様としてある。
また、本実施形態では、ポンプ426を用いて、処理液12などを第一の溶解槽に供給しているが、これに限定されるものではなく、たとえば、混合層427を第一の溶解槽の上方に設け、位置エネルギーを利用して、処理液12などを第一の溶解槽に供給してもよい。
さらに、昇降板423の代わりに、じゃま板(図示せず)を設ける構成としてもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の溶解処理装置によれば、第一実施形態の溶解処理装置1とほぼ同様の効果を奏するとともに、溶解槽手段(縦型多段槽42)の小型化や省スペース化などを図ることができる。
また、本実施形態は、様々な応用例を有している。
次に、本実施形態の応用例について、図面を参照して説明する。
【0057】
<樹脂複合物の溶解処理装置の応用例>
図5は、本発明の第三実施形態の応用例にかかる連続溶解処理装置の溶解槽手段を説明するための要部の概略断面図を示している。
図5において、本応用例の溶解処理装置は、上述した第三実施形態の溶解処理装置と比べると、昇降板423などの代わりに、バイパス用の弁432や配管433などを備えた点などが相違する。なお、本実施形態の他の構成は、第三実施形態の溶解処理装置とほぼ同様としてある。
したがって、図5において、図4と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0058】
縦型多段槽43は、縦型多段槽42とほぼ同様な構成としてあり、仕切板431が、縦型多段槽43をほぼ三等分するように、二箇所に設けられており、隣接する溶解槽を仕切っている。
また、隣接する各溶解槽は、バイパス用の弁432や配管433などによって連通されている。
なお、その他の構成や動作は、第三実施形態の溶解処理装置とほぼ同様としてある。
また、本応用例では槽の数を3としているが、上記に限定されるものではなく、例えば、処理液12や複合物10などに応じて設定される。
【0059】
このように、本応用例の溶解処理装置は、第三実施形態の溶解処理装置とほぼ同様の効果を奏するとともに、構造を単純化できるので、設備費用のコストダウンを図ることができ、また、メンテナンス性などを向上させることができる。
【0060】
[樹脂複合物の溶解処理方法の一実施形態]
また、本発明は、樹脂複合物の溶解処理方法の発明としても有効である。
本実施形態の樹脂複合物の溶解処理方法は、上述した溶解処理装置1を用いて、少なくともポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とで形成された複合物10を処理する方法としてある。
すなわち、本実施形態の樹脂複合物の溶解処理方法は、図2に示すように、まず、投入手段2のネットコンベア21によって、載置されたペレット状の複合物10が搬送される。このようにすると、複合物10を連続的に投入することができ、バッチ方式と比べると、効率よく複合物10を処理することができる。
【0061】
次に、洗浄装置22によって、搬送される複合物10に洗浄液を吹き付け、複合物10を洗浄する。これにより、溶解槽手段としての溶解槽3aに異物が混入するといった不具合を防止することができる。さらに、粉砕された複合物10が、洗浄液で濡れた状態(液封された状態)となるので、溶解槽3aに投入される際、処理液12に迅速に没することができる。
続いて、ネットコンベア21によって、洗浄された複合物10をホッパー23まで搬送し、ネットコンベア21から落下した複合物10が、ホッパー23を介して、溶解槽3aに投入される(ステップS1)。
【0062】
次に、多段連続装置の溶解槽3a、3b、3cによって、複合物10に含まれるポリウレタン樹脂を溶解する(ステップS2)。このようにすると、各溶解槽3a、3b、3c内における処理液12及び複合物10などの滞留時間分布を均一にすることができ、回収されるポリプロピレン樹脂11の品質(ポリプロピレン樹脂11にポリウレタン樹脂が残っているといった不具合が発生しないこと。)を向上させることができる。
【0063】
次に、回収排出手段5によって、溶解槽3cから回収される溶解されたポリウレタン樹脂を含む処理液12と溶解されないポリプロピレン樹脂11とを分離し、処理液12を回収槽51に回収し、かつ、ポリプロピレン樹脂11を排出する(ステップS3)。
【0064】
ここで、まず、回収槽51内のネットコンベア53上に放出され処理液12及びポリプロピレン樹脂11などは、処理液12などが、ネットコンベア53のワイヤーネットを通り抜け、回収槽51に貯留され、かつ、ポリプロピレン樹脂11は、ワイヤーネット上に載置され、ネットコンベア53によって搬送される。すなわち、回収排出手段5によって、ポリプロピレン樹脂11を処理液12から分離し、処理液12を容易に回収槽51に回収でき、また、分離したポリプロピレン樹脂11を連続的に回収する(ステップS31)。
【0065】
次に、洗浄装置52によって、搬送されるポリプロピレン樹脂11に洗浄液を吹き付け、ポリプロピレン樹脂11を洗浄する(ステップS32)。このようにすると、ポリプロピレン樹脂11に付着している微小な異物(フィラーや塗膜固形物などの残渣)を洗い流すことができるので、回収後再利用されるポリプロピレン樹脂11の純度(品質)を向上させることができる。
【0066】
続いて、ネットコンベア53によって、載置されたポリプロピレン樹脂11を搬送し排出する(ステップS33)。このようにすると、ポリプロピレン樹脂11を連続的に排出することができ、バッチ方式と比べると、効率よく複合物10を処理することができる。
【0067】
次に、処理液再利用手段6によって、回収槽51に回収された処理液12の残渣を分離し、分離された処理液12を再利用する(ステップS4)。
ここで、蒸発器61によって、回収槽51に回収された処理液12の一部(通常、一部であるが、全部であってもよい。)を抜き出して、蒸発工程(ステップS41)を経て溶剤と、フィラーや塗膜固形物などの残渣とを分離する。
そして、蒸発器61によって分離された溶剤は、処理液12として溶解槽3aに供給され再利用される。これにより、ランニング費用のコストダウンを図ることができる。
また、分離された残渣は、図示してないが、系外に排出され、補助燃料等として(たとえば、C重油相当として)再利用される。このように、溶解処理装置1は、複合物10を、ほぼ完全に再利用することができ、処理方法としての付加価値を向上させることができる。
【0068】
また、温度制御手段62によって、回収槽51に回収された処理液12の一部を所定の温度に制御する(ステップS42)。このようにすると、溶解槽3aに所定の温度の処理液12を供給することができ、溶解槽3a内の処理液12の温度を安定させることができる。
【0069】
さらに、必要に応じて触媒槽65によって、触媒中の有効成分を温度制御手段62からの処理液12中に移動させ、処理液12に触媒を添加する(ステップS43)。すなわち、触媒槽65を用いることにより、効率よく触媒中の有効成分を処理液12中に移動させることができる。
【0070】
このように、本実施形態の溶解処理方法は、少なくともポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とで形成された複合物10が連続的に投入された場合であっても、溶解槽手段(溶解槽3a、3b、3c)における溶解の達成率を向上させることができる。さらに、処理液再利用手段6が、ポリプロピレン樹脂11を連続的に回収し、洗浄を行うことにより、回収後再生されるポリプロピレン樹脂11の品質を向上させることができる。
また、バッチ方式と比べると、複合物10を連続的に投入することにより、効率よく処理することができる。さらに、処理液12処理液を再利用することができるので、ランニング費用のコストダウンを図ることができる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の溶解処理方法によれば、少なくともポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とで形成された複合物10から、ポリウレタン樹脂を溶解させ、ポリプロピレン樹脂11を回収することにより、低コストで効率よく連続的に処理することができる。
【0072】
以上、本発明の樹脂複合物の溶解処理装置、及び、樹脂複合物の溶解処理方法について、好ましい実施形態などを示して説明したが、本発明に係る樹脂複合物の溶解処理装置、及び、樹脂複合物の溶解処理方法は、上述した実施形態などにのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、溶解処理装置1は、粉砕された複合物10が供給される構成としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、投入手段2が粉砕手段(図示せず)を有する構成としてもよい。このようにすると、溶解処理装置1の付加価値を向上させることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 溶解処理装置
2 投入手段
3a、3b、3c 溶解槽
5 回収排出手段
6 処理液再利用手段
10 複合物
11 ポリプロピレン樹脂
12 処理液
21 ネットコンベア
22 洗浄装置
23 ホッパー
31 撹拌手段
32 加温手段
33 冷却手段
34 弁
35 配管
36 配管
41 横型多段槽
42 縦型多段槽
43 縦型多段槽
51 回収槽
52 洗浄装置
53 ネットコンベア
61 蒸発器
62 温度制御手段
63a 冷却用熱交換器
63b 加温用熱交換器
64 自動制御弁
65 触媒槽
66 三方弁
411 仕切板
412 連通孔
413 昇降板
414 じゃま板
421 仕切板
422 連通孔
423 昇降板
424 撹拌手段
425 弁
426 ポンプ
427 混合層
431 仕切板
432 弁
433 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とで形成された樹脂複合物の溶解処理装置において、
前記樹脂複合物を投入する投入手段と、
投入された前記樹脂複合物の前記ポリウレタン樹脂を溶解する処理液が貯留され、多段構成を有する溶解槽手段と、
前記溶解槽手段から排出される溶解された前記ポリウレタン樹脂を含む前記処理液と溶解されない前記ポリプロピレン樹脂とを分離し、前記処理液を回収し、前記ポリプロピレン樹脂を排出する回収排出手段と、
回収した前記処理液から残渣を分離する残渣分離手段を有し、前記処理液を再利用する処理液再利用手段と
を備えたことを特徴とする樹脂複合物の溶解処理装置。
【請求項2】
前記処理液が、アルコール類、ケトン類又はエーテル類を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の樹脂複合物の溶解処理装置。
【請求項3】
前記投入手段が、ネットコンベア及び洗浄装置を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂複合物の溶解処理装置。
【請求項4】
前記溶解槽手段が多槽連続装置であり、前記多槽連続装置の複数の溶解槽が、撹拌手段、加温手段及び冷却手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂複合物の溶解処理装置。
【請求項5】
前記溶解槽手段が横型多段槽であり、隣接する溶解槽を仕切る連通孔の形成された仕切板、前記連通孔を開閉する昇降板、前記連通孔の下流側に設けられたじゃま板、撹拌手段、加温手段及び冷却手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂複合物の溶解処理装置。
【請求項6】
前記溶解槽手段が縦型多段槽であり、隣接する溶解槽を仕切る仕切板、隣接する前記溶解槽を開閉可能に連通させる連通手段、撹拌手段、加温手段及び冷却手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂複合物の溶解処理装置。
【請求項7】
前記回収排出手段が、回収槽、ネットコンベア及び洗浄装置を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂複合物の溶解処理装置。
【請求項8】
前記処理液再利用手段が、温度制御手段を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂複合物の溶解処理装置。
【請求項9】
前記処理液再利用手段が、触媒槽を有し、前記触媒槽で用いられる触媒が、アルカリ金属のリン酸塩又は炭酸塩であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂複合物の溶解処理装置。
【請求項10】
前記処理液再利用手段の残渣分離手段が、蒸発器であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の樹脂複合物の溶解処理装置。
【請求項11】
少なくともポリウレタン樹脂とポリプロピレン樹脂とで形成された樹脂複合物の溶解処理方法において、
前記樹脂複合物を投入する投入工程と、
多段構成を有する溶解槽手段に貯留された処理液を用いて、投入された前記樹脂複合物の前記ポリウレタン樹脂を溶解する溶解工程と、
前記溶解槽手段から排出される溶解された前記ポリウレタン樹脂を含む前記処理液と溶解されない前記ポリプロピレン樹脂とを分離し、前記処理液を回収し、前記ポリプロピレン樹脂を排出する回収排出工程と、
回収した前記処理液から残渣を分離し、前記処理液を再利用する処理液再利用工程と
を有することを特徴とする樹脂複合物の溶解処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−231277(P2011−231277A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105072(P2010−105072)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】