説明

樹脂部材の接続方法と接続構造

【課題】2以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂部材をセルフピアスリベットを適用して接続する樹脂部材の接続方法に関し、接続される樹脂部材同士の界面のシール性が保証され、接続強度の高い接続構造を得ることのできる樹脂部材の接続方法と接続構造を提供する。
【解決手段】2以上の樹脂部材5,6をその間に導電性の金属板7を介層させながら重ね合わせ、重ね合わせ箇所の上方からセルフピアスリベット4を打ち込んで最下層の樹脂部材5の内部まで到達させる第1のステップ、金属板7を加熱して金属板7と接する上下の樹脂部材6,5双方の少なくとも金属板7との界面を溶融させて金属板7に溶着し、リベット接続と、溶着と、セルフピアスリベット4が金属板7を貫通した際にできたバリ7aが金属板7の下層の樹脂部材5内に食い込んでいること、によって樹脂部材5,6同士を接続する第2のステップからなる樹脂部材の接続方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂部材の重ね合わせ箇所を接続する樹脂部材の接続方法と接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂に強化用繊維材が混入されてなる繊維強化プラスチック(FRP)は、軽量かつ高強度であることから、自動車産業、建設産業、航空産業など、様々な産業分野で使用されている。
【0003】
そして、FRP部材同士の接続方法に関しては、接着剤を介して接続する方法やボルトによる接続方法、さらにはそれらを組み合わせた接続方法などが一般に用いられている。
【0004】
ところで、部材同士の接続に関し、被接続部材がアルミ板や鋼板等からなる場合に、スポット溶接や摩擦攪拌接続、メカニカルクリンチ、ろう付け、ネジ留めといった様々な接続方法がある中で、セルフピアスリベットによる接続方法が適用されることがある。
【0005】
このセルフピアスリベットによる接続方法は、その載置面に凹溝を具備するリベットダイスの上にたとえば2枚の金属板を積層姿勢で載置し、端面とこの端面から突出するピアスとからなる筒状のリベットを金属板の上方で位置決めし、パンチでこのリベットを金属板に打ち込むことでリベットを上板に貫通させ、この過程でリベットが塑性変形しながらピアスの先端を外側に広げ、さらにリベットを打ち込むことでピアスの先端が下板内でさらに広げられ、ピアスの打ち込み過程で上下の金属板を塑性変形させて双方をピアスを介してインターロック接続するものである。
【0006】
セルフピアスリベットによる接続方法によれば、たとえば金属上板に対して事前に穴あけをおこなう必要がなく、さらに3枚、4枚といった金属板同士の接続も可能であることから、効率的に2以上の金属部材同士を高強度で接続することができる。
【0007】
このように様々なメリットを奏するセルフピアスリベットによる接続方法を上記するFRP部材同士の接続に適用せんとする試みもおこなわれており、さらには公開技術である特許文献1にもその内容が開示されている。ここで開示される接続方法は、接続される2つのFRP部材間に接着剤を塗工し、この接着剤が未硬化の状態でセルフピアスリベットを打ち込んで、リベットを上方のFRP部材を貫通させて下方のFRP部材内にその先端を留まらせるものである。
【0008】
しかし、このように樹脂部材同士の接続にセルフピアスリベットによる接続方法を適用すると、たとえば上下2枚の樹脂部材を接続固定することはできるものの、双方の界面のシール性を保証することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−229980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、2以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂部材の重ね合わせ箇所をセルフピアスリベットによる接続方法を適用して接続する樹脂部材の接続方法に関し、接続される樹脂部材同士の界面のシール性が保証され、さらには接続強度の高い接続構造を得ることのできる樹脂部材の接続方法と接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明による樹脂部材の接続方法は、2以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂部材の重ね合わせ箇所を接続する樹脂部材の接続方法であって、2以上の前記樹脂部材をその間に少なくとも1つの導電性の金属板を介層させながら重ね合わせて重ね合わせ箇所を形成し、該金属板を加熱して該金属板と接する上下の樹脂部材双方の少なくとも金属板との界面を溶融させて該金属板に溶着させる第1のステップ、前記重ね合わせ箇所の上方からセルフピアスリベットを打ち込んで最下層の樹脂部材の内部まで到達させ、溶着と、リベット接続と、セルフピアスリベットが金属板を貫通した際にできたバリが該金属板の下層の樹脂部材内に食い込んでいること、によって樹脂部材同士を接続する第2のステップからなるものである。
【0012】
本発明の部材の接続方法は、2以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂部材をセルフピアスリベットを用いて接続するに当たり、樹脂部材の間に導電性の金属板を介層させてこれに通電等することによって加熱し、金属板と接する双方の樹脂部材の界面やその近傍を溶融させて金属板に溶着させることで金属板を介してその上下の樹脂部材の界面のシール性を保証するものである。さらに、セルフピアスリベットが金属板を貫通した際に確実に形成されるバリが下層の樹脂部材に食い込むことにより、セルフピアスリベットによるアンカー効果のみならず、このバリによるアンカー効果によって接続強度を高めることができるものである。なお、この接続強度に関しては、従来のセルフピアスリベットのみによるアンカー効果に起因する接続強度に対して、セルフピアスリベットと金属板のバリの双方のアンカー効果と、金属板にその上下の樹脂部材が溶着してなる溶着強度の総和からなる接続強度が期待できる。
【0013】
「2以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂部材」ゆえに、接続される繊維強化樹脂材は、2つであっても3以上であってもよいし、それらの形状形態も、平面状のもの同士を接続する形態や、湾曲状の3次元形状のもの同士を接続する形態、2以上の平面が相互に傾斜した3次元形状のもの同士、もしくはこのような3次元形状のものと平面状のものを接続する形態などであってもよい。さらに、接続される繊維強化樹脂材の用途としては、車両のピラーやロッカー、床下フロアなどの車両の骨格構造部材、ドアアウターパネルやフードなどの意匠性が要求される非構造部材などを挙げることができる。なお、3以上の樹脂部材を接続する場合であっても、隣接する樹脂部材のそれぞれの界面に金属板を介層させるため、たとえば3つの樹脂部材を接続する場合はそれぞれの接続箇所において2つの金属板が使用されることになる。
【0014】
金属板は薄板であるのが好ましく、少なくとも導電性を有する金属素材の板であればその素材は特に限定されないが、たとえば、鉄、鋼、アルミニウム、銅、クロム、ニッケルを単独で、もしくはこれらの2種以上の合金を使用することができる。また、金属板に通電してジュール熱を生じさせることのほかにも、高周波加熱によって樹脂部材の金属板との界面を溶融させる方法などもある。
【0015】
また、2以上の樹脂部材は、長繊維や短繊維がマトリックス樹脂内にランダムに、もしくは所定の配向をもって埋設されたプリプレグシートやその積層体、長繊維よりも長い連続繊維がマトリックス樹脂内に一方向に配向された一方向材(UD材)からなるプリプレグシートやその積層体、連続繊維を含有する複数のプリプレグシートのそれぞれの連続繊維の配向が0度、90度、±45度等になるように積層してなる擬似等方材、連続繊維からなる経糸と緯糸からなる織物をマトリックス樹脂内に含有させてなるプリプレグシートやその積層体などを挙げることができる。また、プリプレグシートやその積層体のみならず、別途の成形型内で射出成形やRTM成形、SMC成形等されて製作された部材などであってもよい。
【0016】
また、樹脂部材を形成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ナイロン(PA:ナイロン6、ナイロン66など)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの結晶性プラスチック、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ABS樹脂、熱可塑性エポキシなどの非結晶性プラスチックなどを挙げることができる。
【0017】
さらに、マトリックス樹脂内に含有されている繊維材(短繊維、長繊維、連続繊維)としては、ボロンやアルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニアなどのセラミック繊維や、ガラス繊維や炭素繊維といった無機繊維、銅や鋼、アルミニウム、ステンレス等の金属繊維、ポリアミドやポリエステルなどの有機繊維のいずれか一種もしくは2種以上の混合材を使用することができる。
【0018】
まず、第1のステップでは、金属板を加熱して金属板と接する上下の樹脂部材双方の少なくとも金属板との界面を溶融させて該金属板に溶着させる。
【0019】
この金属板と樹脂部材の界面との溶着によって双方の密着性、シール性が保証され、さらに、この溶着接続は界面の接続強度を向上させることにも繋がる。
【0020】
次いで、第2のステップでは、セルフピアスリベットの打ち込みをおこなって最下層の樹脂部材の内部までセルフピアスリベットを到達させ、その過程でセルフピアスリベットが塑性変形しながら広がって最下層の樹脂部材の内部に留まらせる。
【0021】
そして、このセルフピアスリベットの打ち込みの過程で樹脂部材内に介在する金属板をセルフピアスリベットが貫通し、この貫通の際にできた金属板のバリもその下方の樹脂部材の内部に留まることになる。
【0022】
このようにして2以上の樹脂部材をその間に介在する金属板とともにセルフピアスリベットを適用して接続することにより、セルフピアスリベットと金属板のバリ双方のアンカー効果による機械的な接続強度と、溶着による接続強度からなる極めて高い接続強度を備えた接続構造を形成することができる。
【0023】
また、本発明による樹脂部材の接続方法の他の実施の形態は、2以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂部材の重ね合わせ箇所を接続する樹脂部材の接続方法であって、2以上の前記樹脂部材をその間に少なくとも1つの導電性の金属板を介層させながら重ね合わせて重ね合わせ箇所を形成し、該重ね合わせ箇所の上方からセルフピアスリベットを打ち込んで最下層の樹脂部材の内部まで到達させる第1のステップ、前記金属板を加熱して該金属板と接する上下の樹脂部材双方の少なくとも金属板との界面を溶融させて該金属板に溶着させ、リベット接続と、溶着と、セルフピアスリベットが金属板を貫通した際にできたバリが該金属板の下層の樹脂部材内に食い込んでいること、によって樹脂部材同士を接続する第2のステップからなるものである。
【0024】
本実施の形態の接続方法は、第1のステップでセルフピアスリベットの打ち込みをおこない、次いで、第2のステップで金属板と接する上下の樹脂部材双方の少なくとも金属板との界面を溶融させて金属板に溶着させるものであり、この方法によっても、接続部におけるシール性が保証され、かつ、セルフピアスリベットと金属板のバリ双方のアンカー効果による機械的な接続強度と、溶着による接続強度からなる極めて高い接続強度を備えた接続構造を形成することができる。
【0025】
また、上記2つの接続方法に関する実施の形態以外にも、最初に金属板の通電による樹脂部材の溶着を少しだけおこなって金属板と樹脂部材界面のなじみを良好とした後に、セルフピアスリベットの打ち込みをおこない、最後に金属板の通電による樹脂部材の完全溶着をおこなうなどの方法であってもよい。
【0026】
また、本発明は樹脂部材の接続構造にも及ぶものであり、この接続構造は、2以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂部材の接続構造であって、2以上の前記樹脂部材と、上下の樹脂部材の間に介層する導電性の金属板と、最上層の樹脂部材から最下層の樹脂部材の途中まで到達するとともに、その途中の金属板を貫通しているセルフピアスリベットと、セルフピアスリベットが金属板を貫通した際にできたバリが該金属板の下層の樹脂部材内に食い込んでいることと、金属板の上下の樹脂部材が該金属板と溶着していることからなるものである。
【0027】
既述するように、本発明の接続構造によれば、金属板と樹脂部材の界面との溶着によって双方の密着性、シール性が保証され、かつ、セルフピアスリベットと金属板のバリ双方のアンカー効果による機械的な接続強度と、溶着による接続強度からなる極めて高い接続強度を備えた接続構造となる。
【発明の効果】
【0028】
以上の説明から理解できるように、本発明の樹脂部材の接続方法と接続構造によれば、樹脂部材の間に導電性の金属板を介在させてこれを加熱し、樹脂部材の金属板との界面を溶融させて金属板と溶着することによって樹脂部材同士の界面のシール性を担保することができる。さらに、2以上の樹脂部材と樹脂部材間に介在する金属板をセルフピアスリベットが貫通することによって、本来的なセルフピアスリベットによるアンカー効果に加えて、セルフピアスリベットが金属板を貫通する際にできるバリによるアンカー効果が付加され、さらにこれらに金属板と樹脂部材との溶着強度が付加されて樹脂部材の接続箇所における接続強度が決定されることから、従来のセルフピアスリベットのみによる接続強度に比して格段に高い接続強度を有する接続構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)はセルフピアスリベット接続に供されるシリンダ機構とリベットダイスの縦断面図であり、(b)は(a)のb−b矢視図である。
【図2】2つの樹脂部材の重ね合わせ箇所がリベットダイスの載置台上に載置され、樹脂部材の間に介在する金属板に通電している状態を説明した図である。
【図3】リベットを打ち込んでいる状態を説明した図である。
【図4】リベットが完全に打ち込まれ、接続構造が形成された状態を説明した図である。
【図5】車両ボディーを構成する2つの樹脂部材が本発明の接続方法にて接続された状態を示す模式図である。
【図6】本発明の接続方法で接続された2つの樹脂部材(実施例)とセルフピアスリベット接続のみの従来の接続方法で接続された2つの樹脂部材(比較例)それぞれの接続箇所のせん断引張り破断強度を測定した実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の樹脂部材の接続方法と接続構造の実施の形態を説明する。なお、図示例は2つの樹脂部材を接続する方法とその接続構造を示したものであるが、図示する方法を用いて3以上の樹脂部材を接続してもよいことは勿論のことである。
【0031】
(樹脂部材の接続方法の第1の実施の形態、および樹脂部材の接続構造)
図1〜4は順に、本発明の樹脂部材の接続方法を説明するフロー図となっている。具体的には、図1はセルフピアスリベット接続に供されるシリンダ機構とリベットダイスの縦断面図であり、図2は2つの樹脂部材の重ね合わせ箇所がリベットダイスの載置台上に載置され、樹脂部材の間に介在する金属板に通電している状態を説明した図であり、図3はリベットを打ち込んでいる状態を説明した図であり、図4はリベットが完全に打ち込まれ、接続構造が形成された状態を説明した図である。
【0032】
以下、本発明の樹脂部材の接続方法を適用して上下2つの繊維強化樹脂部材同士を接続する方法を説明する。
【0033】
図1aで示すように、2つの繊維強化樹脂部材の一部を重ね合わせた重ね合わせ箇所が載置されるリベットダイス3と、その上方に位置してシリンダ1内をパンチ2が摺動自在なシリンダ機構とからなる製造システムを用意する。
【0034】
リベットダイス3は、図1bで示すようにその平面視が円形であり、繊維強化樹脂材が載置される載置面3aにはリング状の凹溝3bが形成されている。
【0035】
さらに、リベットダイス3内には不図示のヒータが内蔵されていてもよい。
【0036】
シリンダ1内では、その内部で摺動するパンチ2の下面にリベット4が吸着等で仮固定されるようになっている。
【0037】
使用されるリベット4は、その平面視が円形の端面4bと、この端面4bから突出する筒状のピアス4aとからなる縦断面視が門形を呈したものであり、その素材はアルミニウムやその合金、鋼などから形成される。
【0038】
図2で示すように、用意された製造システムを構成するリベットダイス3の載置面3a上に、繊維強化樹脂部材からなる上方の樹脂部材6と下方の樹脂部材5の重ね合わせ箇所を位置決めし、この重ね合わせ箇所に導電性の金属板7を介在させた状態で、上方の樹脂部材6上にシリンダ1をセットする。
【0039】
ここで、上方の樹脂部材6、下方の樹脂部材5を形成する繊維強化樹脂部材のマトリックス樹脂は熱可塑性樹脂からなり、このマトリックス樹脂の内部に適宜の繊維材が混入されている。
【0040】
樹脂部材5,6のマトリックス樹脂として使用される熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ナイロン(PA:ナイロン6、ナイロン66など)、ポリアセタール(POM)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの結晶性プラスチック、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ABS樹脂、熱可塑性エポキシなどの非結晶性プラスチックなどのうちのいずれか一種もしくはそれらの2種以上を混合した材料を適用することができる。
【0041】
また、マトリックス樹脂内に含有されている繊維材(短繊維、長繊維、連続繊維)としては、ボロンやアルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニアなどのセラミック繊維や、ガラス繊維や炭素繊維といった無機繊維、銅や鋼、アルミニウム、ステンレス等の金属繊維、ポリアミドやポリエステルなどの有機繊維のいずれか一種もしくは2種以上の混合材を適用することができる。
【0042】
また、樹脂部材5,6の重ね合わせ箇所においてそれらの間に介在する金属板7は導電性を有する板材であればよいが、鉄、鋼、アルミニウム、銅、クロム、ニッケルを単独で、もしくはこれらの2種以上の合金からなる板を使用することができる。
【0043】
樹脂部材5,6の重ね合わせ箇所を載置面3a上に位置決めした状態で、それらの間に介在する金属板7に電源回路を設置して通電することにより、金属板7で生じるジュール熱によって金属板7と接する樹脂部材5,6双方の界面を溶融させ、金属板7と溶着させる(第1のステップ)。
【0044】
次に、図3で示すように、シリンダ1内でパンチ2を摺動させ、パンチ2からリベット4を上方の樹脂部材6側に押し込むことにより(押圧力Q)、リベット4のピアス4aが上方の樹脂部材6に打ち込まれてこれを貫通し、金属板7を貫通し、さらに下方の樹脂部材5にピアス4aの先端が入り込むことになる。
【0045】
なお、リベットダイス3内に不図示のヒータが内蔵されている場合は、このリベット4の打ち込みに際してヒータを稼動させて下方の樹脂部材5の重ね合わせ箇所を溶融させてもよい。
【0046】
ピアス4aは上方の樹脂部材6を貫通する過程で内側から圧力qを受けて外側に開き、さらに金属板7を貫通し、下方の樹脂部材5内に打ち込まれる過程でも内側から圧力を受けて外側に開くことになる。このようにリベット4の打ち込み過程で筒状のピアス4aが外側へ変位するのは、ピアス4aの先端内側が先鋭テーパー状に形成されていること、リベットダイス3の載置面3aに設けられたリング状の凹溝3bで囲まれる中央部分が筒状のピアス4aの内側で上方凸をなしていること、筒状のピアス4aの内側で比較的剛性の高い樹脂部材5,6や金属板7が介在していること、などの種々の要素によるものである。
【0047】
そして、リベット4が金属板7を貫通した際に金属板7にはバリ7aが形成され、このバリ7aがリベット4の打ち込みに応じて下方の樹脂部材5内に食い込んでいく。
【0048】
図4で示すように、リベット4の上面が上方の樹脂部材6の上面と面一になるまでリベット4を打ち込むことにより、ピアス4aはリベットダイス3の凹溝3b内にその一部が収容されるように外側に開き、上方の樹脂部材6および下方の樹脂部材5とピアス4aの間の摩擦力によって双方の樹脂部材5,6が強固に接続された接続構造10を形成することができる(第2のステップ)。
【0049】
接続構造10の接続強度は、上記するセルフピアスリベットのアンカー効果による接続強度に加えて、下方の樹脂部材5に食い込んだ金属板7のバリ7aによるアンカー効果が付加されており、さらには、金属板7に対する双方の樹脂部材5,6の溶着強度が付加されて高い接続強度の接続構造10となっている。
【0050】
さらには、金属板7と双方の樹脂部材5,6が溶着していることにより、従来のセルフピアスリベット接続のみの場合には期待し得なかった接続箇所におけるシール性が保証されることになる。
【0051】
このように、樹脂部材の接続方法の第1の実施の形態は、2つの熱可塑性樹脂からなる樹脂部材5,6をその間に導電性の金属板7を介層させながら重ね合わせて重ね合わせ箇所を形成し、金属板7に通電して金属板7と接する上下の樹脂部材6,5双方の少なくとも金属板7との界面を溶融させて金属板7に溶着する第1のステップと、重ね合わせ箇所の上方からセルフピアスリベット4を打ち込んで最下層の樹脂部材5の内部まで到達させ、溶着と、リベット接続と、セルフピアスリベット4が金属板7を貫通した際にできたバリ7aが金属板7の下層の樹脂部材5内に食い込んでいること、によって樹脂部材5,6同士を接続する第2のステップからなる接続方法である。
【0052】
(樹脂部材の接続方法の第2の実施の形態)
第1の実施の形態の接続方法以外にも、第1のステップと第2のステップの構成を入れ替えてなる接続方法であってもよい。具体的には、2つの熱可塑性樹脂からなる樹脂部材5,6をその間に導電性の金属板7を介層させながら重ね合わせて重ね合わせ箇所を形成し、重ね合わせ箇所の上方からセルフピアスリベット4を打ち込んで最下層の樹脂部材5の内部まで到達させる第1のステップと、金属板7に通電して金属板7と接する上下の樹脂部材5,6双方の少なくとも金属板7との界面を溶融させて金属板7に溶着させ、リベット接続と、溶着と、セルフピアスリベット4が金属板7を貫通した際にできたバリ7aが金属板7の下層の樹脂部材5内に食い込んでいること、によって樹脂部材5,6同士を接続する第2のステップからなる接続方法である。
【0053】
(車両ボディーへの適用例)
図5は、上記接続方法を適用した一つの実施例を説明した図であり、車両ボディーを構成する2つの繊維強化樹脂部材が接続された状態を示す模式図である。
【0054】
図示する実施例は、車両ボディーを2枚の繊維強化樹脂部材からなる上方部材6Aおよび下方部材5Aとこれらの間に介在する薄い金属板7A、補強部材8から構成するものであり、上方部材6Aおよび下方部材5A同士、および上方部材6Aと補強部材8同士がそれぞれ金属板7Aを間に介在させて上記する接続方法で接続される。なお、同図において図示されるリベット4の端面箇所が上記接続方法で接続された箇所である。
【0055】
リベット接続条件としては、パンチによる押し込み力を0.6〜0.8MPa程度、金属板の加熱温度に関しては、熱可塑性樹脂にポリプロピレンを使用した場合は85〜120℃、熱可塑性樹脂にポリアミド(PA6)を使用した場合は150〜200℃、ポリアミド(PA66)を使用した場合は190〜250℃程度に調整することができる。なお、金属板7Aは鉄−クロム−アルミ系の平板を使用し、通電することによってジュール熱を生じるものである。
【0056】
図示する車両ボディーは、軽量かつ高強度の2枚の繊維強化樹脂部材が接続されて構成されている。
【0057】
そして、繊維強化樹脂部材同士の接続にセルフピアスリベットが適用されているものの、接続箇所のシール性が保証され、さらに、接続箇所の接続強度は、セルフピアスリベット接続による強度以外にも、金属板のバリが樹脂部材内に食い込んでなる接続強度や金属板に対する樹脂部材の溶着強度が付加された極めて高い接続強度を有していることから、高い接続強度を有し、シール性に優れ、軽量かつ高強度の車両ボディーとなっている。
【0058】
[本発明の接続方法で接続された2つの樹脂部材(実施例)と従来の接続方法で接続された2つの樹脂部材(比較例)それぞれの接続箇所のせん断引張り破断強度を測定した実験とその結果]
本発明者等は、2枚の繊維強化樹脂部材の間に金属板を介在させて既述する実施の形態2の接続方法で接続した試験片(実施例)と、2枚の繊維強化樹脂部材をセルフピアスリベット接続のみで接続した試験片(比較例)を用意し、それぞれを引張試験機にクランプして引張速度5mm/minで引っ張った際のせん断引張り破断強度を測定した。この測定結果を図6に示している。
【0059】
図6より、比較例に比して実施例のせん断引張り強度は2倍程度も向上することが実証されている。これは、実施例の接続強度がセルフピアスリベット接続によるもののほかに、溶着による効果、金属板のバリが一方の繊維強化樹脂材内に食い込んでいることによるアンカー効果によるものである。なお、既述する実施の形態1の方法によっても実施の形態2と同様の効果が得られることが本発明者等によって特定されている。
【0060】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
1…シリンダ、2…パンチ、3…リベットダイス、3a…載置面、3b…凹溝、4…リベット、4a…ピアス、4b…端面、5,5A…下方の樹脂部材(繊維強化樹脂部材)、6,6A…上方の樹脂部材(繊維強化樹脂部材)、7…金属板、8…補強部材、10…接続構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂部材の重ね合わせ箇所を接続する樹脂部材の接続方法であって、
2以上の前記樹脂部材をその間に少なくとも1つの導電性の金属板を介層させながら重ね合わせて重ね合わせ箇所を形成し、該金属板を加熱して該金属板と接する上下の樹脂部材双方の少なくとも金属板との界面を溶融させて該金属板に溶着させる第1のステップ、
前記重ね合わせ箇所の上方からセルフピアスリベットを打ち込んで最下層の樹脂部材の内部まで到達させ、溶着と、リベット接続と、セルフピアスリベットが金属板を貫通した際にできたバリが該金属板の下層の樹脂部材内に食い込んでいること、によって樹脂部材同士を接続する第2のステップからなる樹脂部材の接続方法。
【請求項2】
2以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂部材の重ね合わせ箇所を接続する樹脂部材の接続方法であって、
2以上の前記樹脂部材をその間に少なくとも1つの導電性の金属板を介層させながら重ね合わせて重ね合わせ箇所を形成し、該重ね合わせ箇所の上方からセルフピアスリベットを打ち込んで最下層の樹脂部材の内部まで到達させる第1のステップ、
前記金属板を加熱して該金属板と接する上下の樹脂部材双方の少なくとも金属板との界面を溶融させて該金属板に溶着させ、リベット接続と、溶着と、セルフピアスリベットが金属板を貫通した際にできたバリが該金属板の下層の樹脂部材内に食い込んでいること、によって樹脂部材同士を接続する第2のステップからなる樹脂部材の接続方法。
【請求項3】
前記樹脂部材の全部もしくは一部は、熱可塑性樹脂の内部に繊維材を含む繊維強化樹脂部材である請求項1または2に記載の樹脂部材の接続方法。
【請求項4】
2以上の熱可塑性樹脂からなる樹脂部材の接続構造であって、
2以上の前記樹脂部材と、
上下の樹脂部材の間に介層する導電性の金属板と、
最上層の樹脂部材から最下層の樹脂部材の途中まで到達するとともに、その途中の金属板を貫通しているセルフピアスリベットと、
セルフピアスリベットが金属板を貫通した際にできたバリが該金属板の下層の樹脂部材内に食い込んでいることと、
金属板の上下の樹脂部材が該金属板と溶着していることからなる樹脂部材の接続構造。
【請求項5】
前記樹脂部材の全部もしくは一部は、熱可塑性樹脂の内部に繊維材を含む繊維強化樹脂部材である請求項4に記載の樹脂部材の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−2505(P2013−2505A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132541(P2011−132541)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】