説明

樹脂開口方法

【課題】開口部を有する基材に、開口部の部分のみ開口させた樹脂層を簡便に精度良く形成することのできる樹脂開口方法を課題とする。
【解決手段】開口部を有する基材に感光性樹脂層をラミネートするラミネート工程、開口部内に感光性樹脂層の感光性に影響を与えるコントラスト形成物質が存在する状況で感光性樹脂層を全面露光する全面露光工程、湿式処理により開口部の感光性樹脂層の除去を行う感光性樹脂層除去工程をこの順で含む樹脂開口方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を有する基材に、基材の開口部の部分のみ開口させた樹脂層を簡便に精度良く形成することのできる樹脂開口方法に関する。
【背景技術】
【0002】
開口部を有する基材に、基材の開口部の部分のみ開口させた樹脂層を形成する技術としては、フォトリソグラフィー法による樹脂開口方法が広く用いられている。フォトリソグラフィー法による樹脂開口方法は、図6に示すように、開口部2を有する基材1(図6(a))の樹脂層を形成したい側全面に感光性樹脂層3を形成した後(図6(b))、基材1の開口部パターンと同一のパターンを有するフォトマスク20を重ね合わせて露光30を行うことにより(図6(c))、開口部領域31と開口部以外の領域32で性状を変化させ(図6(d))、感光性樹脂層除去液に対する溶出性の差を生じさせて、引き続き、開口部領域31の感光性樹脂層3を除去する方法である(図6(e))。
【0003】
このフォトリソグラフィー法による樹脂開口方法において、図7(c)のように、露光時に、フォトマスク20と基材1の開口部パターンとの間に位置ずれが生じた場合、感光性樹脂層3の感光性樹脂層除去液に対する溶解性を有する部分が基材の開口部2と一致しなくなり(図7(d))、その結果、図7(e)に示すように、感光性樹脂層開口部のエッジ29が基材開口部のエッジ19とずれてしまうという問題が発生していた。
【0004】
この問題を解決するものとして、フォトマスクと位置合わせ作業とが不要なセルフアライメント技術を利用した樹脂開口方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。この方法では、開口部2を有する基材1(図8(a))の樹脂層を形成したい側全面に樹脂層13及びマスキング層22を形成した後(図8(b))、樹脂層を形成していない側から樹脂層除去液を供給する湿式処理によって、開口部領域の樹脂層13の除去を行うものである(図8(c))。マスキング層22を除去すると、基材1の開口部2の位置に位置ずれなく開口された樹脂層13を精度良く得ることができる(図8(d))。
【0005】
図8(e)は、図8(d)における開口部2の樹脂層13の拡大図であり、基材開口部のエッジ19と樹脂層の開口部の基材と接するエッジ39との距離をオフセット幅Woと呼ぶ。湿式処理の条件(樹脂層除去液の供給条件。例えば、時間、圧力等)を調整することにより、このオフセット幅Woをコントロールすることが可能である。しかしながら、複数の開口部2を有する基材1の全面に渡ってオフセット幅Woをゼロにしたい場合、樹脂層除去液の供給時間や圧力が多少ばらついただけで、開口部2以外の領域の樹脂層13が除去されてしまい、基材全面に渡ってオフセット幅Woをゼロにすることは難しかった。
【0006】
また、この樹脂開口方法では、樹脂層を形成していない側から樹脂層除去液を供給することで、開口部領域の樹脂層を除去するため、基材の両面に樹脂層を形成する必要がある場合には、両面同時処理ができず、片面ずつ逐次で処理を行う必要があり、工程が長くなってしまうという問題があった。
【0007】
さらに、電子基板用途にあるように、開口部が非貫通孔である場合には、樹脂層を形成していない側から樹脂層除去液を供給することができないため、この樹脂開口方法は適用することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−173597号公報
【特許文献2】特開2008−121060号公報
【特許文献3】特開2008−176934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、開口部を有する基材に、基材の開口部の部分のみ開口させた樹脂層を形成するためのセルフアライメント技術を利用した樹脂開口方法において、基材全面に渡ってオフセット幅ゼロの樹脂開口ができる方法を提供することである。また、両面同時処理が可能で、貫通孔だけでなく非貫通孔にも対応できる樹脂開口方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、開口部を有する基材に感光性樹脂層をラミネートするラミネート工程、感光性樹脂層の開口部領域にのみ感光性に影響を与えるコントラスト形成物質(以下、「コントラスト形成物質」という)が接触した状況で感光性樹脂層を全面露光する全面露光工程、湿式処理により開口部の感光性樹脂層の除去を行う感光性樹脂層除去工程をこの順で含むことを特徴とする樹脂開口方法を見出した。
【0011】
また、感光性樹脂層が光架橋性樹脂層であり、コントラスト形成物質が酸素である樹脂開口方法を見出した。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、開口部を有する基材に感光性樹脂層をラミネートするラミネート工程、感光性樹脂層の開口部領域にのみコントラスト形成物質が接触した状況で感光性樹脂層を全面露光する全面露光工程、湿式処理により開口部の感光性樹脂層の除去を行う感光性樹脂層除去工程をこの順で含む。感光性樹脂層とは、露光によって、架橋/分解・官能基発生等の感光反応が起こり、感光性樹脂層除去工程で使用される感光性樹脂層除去液に対して不溶化/可溶化する樹脂層である。コントラスト形成物質とは、この感光反応を阻害/促進する物質である。露光で不溶化する感光性樹脂層と感光反応を阻害するコントラスト形成物質との組合せ、又は、露光で可溶化する感光性樹脂層と感光反応を促進するコントラスト形成物質との組合せを用い、全面露光工程を行うと、コントラスト形成物質と接触している感光性樹脂層の感光反応が阻害/促進され、開口部領域の感光性樹脂層除去液に対する溶解性が開口部以外の領域のそれよりも高くなる。その結果、感光性樹脂層除去工程における湿式処理の条件が多少ずれても、開口部以外の領域の感光性樹脂層のみを除去することができ、オフセット幅ゼロの樹脂開口が基材全面に渡って安定に形成できる。
【0013】
また、従来の樹脂開口方法では、樹脂層を形成していない側から樹脂層除去液を供給する必要があったが、本発明の方法によれば、全面露光工程によって、開口部領域と開口部以外の領域とで、感光性樹脂層の溶解性に差が生じているため、感光性樹脂層側から感光性樹脂層除去液を供給しても、開口部領域の感光性樹脂層のみ除去することができる。よって、貫通孔を有する基材への両面同時処理や非貫通孔に対する樹脂開口が可能となる。
【0014】
感光性樹脂層の開口部領域にのみコントラスト形成物質が接触した状況は、例えば、感光性樹脂層のラミネート工程後に、基材の開口部にコントラスト形成物質を供給する方法によって、作ることができる。しかし、感光性樹脂層として、露光で不溶可化する光架橋性樹脂層を用いた場合、ラミネート工程が終了した時点で、光架橋反応を阻害する酸素がコントラスト形成物質として開口部内に存在する状況が得られる。ラミネート工程後に開口部以外の領域に存在する酸素を除去したり、感光性樹脂層を酸素を通しにくいカバーフィルムで被覆することで、感光性樹脂層の開口部領域にのみ酸素が接触した状況を簡単に作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の樹脂開口方法(片面処理)を表す断面図。
【図2】本発明の樹脂開口方法(両面同時処理)を表す断面図。
【図3】本発明の樹脂開口方法(非貫通孔対応)を表す断面図。
【図4】本発明において、感光性樹脂層の開口部領域にのみコントラスト形成物質が接触した状況の作製方法を表す断面図。
【図5】本発明の樹脂開口方法(カバーフィルム使用)を表す断面図。
【図6】従来のフォトリソグラフィー法による樹脂開口方法を表す断面図。
【図7】従来のフォトリソグラフィー法による樹脂開口方法を表す断面図。
【図8】従来のセルフアライメント技術を利用した樹脂開口方法を表す断面図。
【図9】位置ずれの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を用いて、本発明の樹脂開口方法(片面処理)を説明する。開口部2を有する基材1(図1(a))に感光性樹脂層3をラミネートする(図1(b))。続いて、感光性樹脂層3の開口部領域31にのみコントラスト形成物質10が接触した状況で、感光性樹脂層3に対して感光光線50による全面露光を行う(図1(c))。この際、コントラスト形成物質10と接触している開口部領域31の感光性樹脂層3aは、コントラスト形成物質10の作用により、開口部以外の領域32とは異なった感光度合いを示し(図1(d))、続く感光性樹脂層除去工程により、開口部領域31の感光性樹脂層3aのみ除去され、基材1の開口部2に精度良く、感光性樹脂層3の開口を形成できる(図1(e))。
【0017】
図2を用いて、本発明の樹脂開口方法(両面同時処理)を説明する。開口部2を有する基材1(図2(a))の両面に対して、感光性樹脂層3をラミネートする(図2(b1))。感光性樹脂層3の開口部領域31にのみコントラスト形成物質10が接触した状況で(図2(b2))、感光光線50により感光性樹脂層3に対して全面露光を行う(図2(c))。この際、コントラスト形成物質10と接触している開口部領域31の感光性樹脂層3aは、開口部以外の領域32とは異なった感光度合いを示し(図2(d))、続く感光性樹脂層除去工程により、開口部領域31の感光性樹脂層3aのみ除去され、基材1の開口部2に精度良く、感光性樹脂層3の開口を両面同時に形成できる(図2(e))。
【0018】
図3を用いて、本発明の樹脂開口方法(非貫通孔対応)を説明する。非貫通孔である開口部2を有する基材1(図3(a))に対して、感光性樹脂層3をラミネートする(図3(b1))。感光性樹脂層3の開口部領域31にのみコントラスト形成物質10が接触した状況で(図3(b2))、感光光線50により感光性樹脂層3に対して全面露光を行う(図3(c))。この際、コントラスト形成物質10と接触している開口部領域31の感光性樹脂層3aは、開口部以外の領域32とは異なった感光度合いを示し(図3(d))、続く感光性樹脂層除去工程により、開口部領域31の感光性樹脂層3aのみ除去され、基材1の開口部2に精度良く感光性樹脂層3の開口を形成できる(図3(e))。
【0019】
開口部を有する基材は、略平板状の基材で、開口部を有していれば、いかなる基材も適用可能である。例えば、樹脂フィルムや、樹脂板、金属箔、金属板等、また、それらの複合材である金属張積層板、金属張樹脂フィルム等が使用可能である。基材の厚みは、処理に使用する装置が対応していれば、いずれの厚みも可能であるが、好ましくは、10μmから100mm程度までが可能である。10μmより薄いとハンドリングが難しくなり、100mmを超えると装置対応が難しくなる。また、感光性樹脂層のラミネートができさえすれば、凹凸があってもかまわない。
【0020】
感光性樹脂層とは、露光によって、架橋/分解・官能基発生等の感光反応が起こり、感光性樹脂層除去工程で使用される樹脂層除去液に対して不溶化/可溶化する樹脂層である。ラミネート工程は、シート状に形成されている感光性樹脂層を基材に対して熱圧着させる工程である。密着性が確保され、かつ、熱や圧力によって基材に歪みが発生することがなく、均一な厚みでのラミネートができればいずれの方法でも使用可能である。好ましくは、熱ロールを用いてラミネートを行う。温度は40℃から150℃、より好ましくは60℃から120℃である。圧力は、熱ロールでのラミネートの場合には、線圧力で1N/cmから100N/cmの範囲、より好ましくは5N/cmから50N/cmの範囲である。このラミネート工程により、開口部を有する基材の片面もしくは両面に厚みの均一な感光性樹脂層を良好に形成することが可能となる。
【0021】
コントラスト形成物質とは、感光反応を阻害/促進する物質であり、感光性樹脂層に異なった感光度合いをもたらすものである。感光性樹脂層とコントラスト形成物質との組合せとしては、酸発生タイプのポジ型感光性樹脂層と酸物質との組合せ、ラジカル重合タイプの光架橋性樹脂層と重合禁止剤との組合せ等を挙げることができる。
【0022】
光架橋性樹脂としては、カルボキシル基を含有するバインダーポリマー、分子内に少なくとも1個の重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物、及び、光重合開始剤を含むことが好ましい。カルボキシル基を含有するバインダーポリマーとしては、光重合性化合物と共に光架橋可能な重合体であれば良く、特に制限されないが、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂の有機高分子が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組合せて用いても良い。
【0023】
感光性樹脂層の開口部領域にのみコントラスト形成物質が接触した状況は、例えば、次のような方法で作ることができる。
(i)感光性樹脂層3のラミネート後(図4(a))に、開口部2内にコントラスト形成物質10を供給する方法(図4(b))。例えば、注射針71等を使用する。片面処理の場合、基材の感光性樹脂層を形成していない側をフィルム等で塞いだ後にコントラスト形成物質を注射針等で供給する。
(ii)コントラスト形成物質10が存在する環境下において、感光性樹脂層3のラミネート工程を行う方法(図4(c))。ただし、片面処理の場合、基材の感光性樹脂層を形成していない側をフィルム等で塞ぐ。ラミネート工程後に、開口部以外の領域に存在するコントラスト形成物質10は、真空引きや洗浄によって除去する(図4(d))。
(iii)コントラスト形成物質10が存在する環境下で、感光性樹脂層3のラミネート工程を行い、感光性樹脂層3上をコントラスト形成物質10を通しにくいカバーフィルム21で被覆する方法(図4(e))。開口部以外の領域32の感光性樹脂層3とコントラスト形成物質10との接触をカバーフィルム21によって避けることができ、上記(ii)のように、開口部以外の領域に存在するコントラスト形成物質10を除去しなくても良い。
(iv)感光性樹脂層3のラミネート後に、開口部を通してコントラスト形成物質を供給し、開口部内の感光性樹脂層表面にコントラスト形成物質を接触させる方法(図4(f))。
【0024】
図5を用いて、上記(iii)を用いた樹脂開口方法を説明する。開口部2を有する基材1(図5(a))に感光性樹脂層3をラミネートし、その上をカバーフィルム21で被覆する(図5(b))。あらかじめカバーフィルム21を感光性樹脂層3上に形成して、一括でラミネートする方法が、簡便で好ましい。感光性樹脂層3の開口部領域31にのみ感光性に影響を与えるコントラスト形成物質10が接触した状況で、感光光線50により感光性樹脂層3に対して全面露光を行う(図5(c))。この際、コントラスト形成物質10と接触している感光性樹脂層3の開口部領域31は、開口部以外の領域32とは異なった感光度合いを示し(図5(d))、続く感光性樹脂層除去工程により、開口部領域31の感光性樹脂層3aのみ除去され、基材1の開口部2に精度良く感光性樹脂層3の開口を形成できる(図5(e))。片面処理の場合、カバーフィルム21は、感光性樹脂層除去工程前に剥離しても良いし、感光性樹脂層除去工程後に剥離しても良い。両面同時処理及び非貫通孔対応の場合には、感光性樹脂層除去工程前にカバーフィルム21を剥離する。
【0025】
感光性樹脂層をラジカル重合タイプの光架橋性樹脂層とし、コントラスト形成物質を酸素とした場合、空気中に含まれる酸素を利用することができ、上記(ii)及び(iii)によって、簡便に開口部領域のみ酸素が接触した状況を作り出すことができる。
【0026】
カバーフィルムは、コントラスト形成物質を通さず、全面露光工程時に、有効波長の光を充分に透過する必要がある。それらの条件を満たせば、いずれのものも使用可能である。例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルブチラールの様なビニルアセタール樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びその塩化物、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンイソフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル変性アルキッド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエステル誘導体等の樹脂が利用できる。汎用性の点から、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等を好適に使用することができる。
【0027】
全面露光工程では、感光性樹脂層全面に対して露光処理を行う。露光条件に関しては、あらかじめ感光性樹脂層に照射実験を行い、最適な照度及び照射時間を設定しておく必要がある。すなわち、感光性樹脂層除去工程まで行った際に、コントラスト形成物質が接触している開口部の感光性樹脂層が除去され、コントラスト形成物質が接触していない開口部以外の領域の感光性樹脂層が除去されない状態となる最適な照度及び照射時間の設定を行う。
【0028】
この最適照射条件を決めるためには、低照度条件で行うことが望ましい。感光性樹脂層をラジカル重合タイプの光架橋性樹脂層とし、コントラスト形成物質を重合禁止剤とした場合、開口部領域では、感光性樹脂層と接触しているコントラスト形成物質が露光によって発生した活性種であるラジカルと反応し、活性種が失活することで、感光性樹脂層のみが樹脂層除去液で除去されるようになる。高照度条件では、単位時間当たりに発生する活性種の発生数が多いため、コントラスト形成物質による失活作用が不足し、開口部以外の領域との除去性の差が発生しにくくなる場合がある。また、感光性樹脂層を酸発生タイプのポジ型感光性樹脂層と酸物質とした場合、開口部領域では、感光性樹脂層と接触しているコントラスト形成物質と露光によって発生した酸とがポジ型感光性樹脂層の感光性樹脂層除去液への溶解性を発現させる。しかし、高照度条件では、露光によって大量の酸が発生するため、開口部以外の領域でも感光性樹脂層除去液への溶解性が高くなり、開口部領域と開口部以外の領域との除去性の差が発生しにくくなる場合がある。露光には、照度調整ができる露光装置を用いても良いし、照度調整ができない露光装置であれば、露光光源と基材との間の距離を広げる、露光光源と基材との間にハーフトーンマスクや光学フィルターを介して照射を行う等の手段により照度を調整できる。
【0029】
感光性樹脂層除去工程における湿式処理では、感光性樹脂層除去液を供給し、開口部領域の感光性樹脂層を除去する。湿式処理に使用する樹脂層除去液は、開口部以外の領域の感光性樹脂層が不溶であり、開口部領域の感光性樹脂層が可溶となる液であればいずれの液も使用可能である。感光性樹脂層として、上述のようなカルボキシル基を含有するバインダーポリマーを有する光架橋性樹脂層や酸発生タイプのポジ型感光性樹脂層を用いた場合は、アルカリ性の樹脂層除去液が好適に用いられる。
【0030】
片面処理の場合、感光性樹脂層除去液は、感光性樹脂層3を形成した側から供給しても良いし、形成していない側から供給しても良いし、両方から供給しても良い。ただし、開口部以外の領域32の感光性樹脂層3の表面が感光性樹脂層除去液に触れることで粗面化する場合がある。この粗面化が好ましくない場合は、あらかじめ、感光性樹脂層3の表面にカバーフィルム21を設け、感光性樹脂層3を形成していない側から、感光性樹脂層除去液を供給することが好ましい。両面同時処理及び非貫通孔対応の場合には、感光性樹脂層除去液は、感光性樹脂層3を形成した側から供給する。
【0031】
湿式処理方法としては、ディップ方式、スプレー方式等種々の方式が利用可能である。感光性樹脂層除去液により開口部の感光性樹脂層の除去を行った後にカバーフィルムの除去を行う場合には、カバーフィルムがある面とは反対の面から感光性樹脂層除去液をシャワースプレー等の手段により開口部に供給するようにして湿式処理を行うことが好ましい。
【0032】
本発明の樹脂開口方法で得られた基材の開口部の部分のみ開口させた樹脂層を有する基材は、例えば、電子基板の回路パターン作製に利用することができる。一例として、多層積層基板を用いた利用例を説明する。両面に開口部として非貫通孔を有する多層積層基板(非貫通孔内は無電解銅メッキ済み)を基材として用い、本発明の樹脂開口方法により感光性樹脂層を開口部以外の領域に形成させる。その後、電解銅メッキ処理を行い開口部の内部のみに、内層銅層との間の層間接続用の電解銅メッキ層を形成させる。電解銅メッキ処理後、感光性樹脂層を剥離用液で除去したのち、感光性ドライフィルムや液状レジストを使用して、従来のサブトラクティブ法の手法により、回路パターンを形成する。
【0033】
従来の方法では、オフセット幅がゼロでない部分があるため、開口部内部の電解銅メッキ処理の際に、多孔積層基板表面の開口部エッジにも電解銅メッキ層が形成されて、表面に凹凸ができてしまい、回路パターン形成の際に、感光性ドライフィルムのラミネートもしくは液状レジストの塗工が良好にできないという問題が生じ、良好な回路形成ができなくなってしまう。本発明の樹脂開口方法では、感光性樹脂層が基材の開口部領域に精度良くオフセット幅ゼロで形成されているため、開口部の内部のみに電解銅メッキが形成され、層間接続の信頼性が確保できる。そして、表面に凹凸が形成されることがないため、回路パターンの形成も良好に実施することが可能となる。なお、貫通孔を有する銅張積層基板を基材として用いた場合にも、本発明の樹脂開口方法で、開口部以外の領域に感光性樹脂層をオフセット幅ゼロで形成することによって、同様に開口部の内部にのみ電解銅メッキ層を形成することができる。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
表1に示す成分よりなる感光性樹脂層用の塗工液をカバーフィルム(膜厚25μmのポリエステルフィルム)上にワイヤーバーを用いて乾燥膜厚20μmとなるように塗布した後、乾燥を行い、感光性樹脂層及びカバーフィルムからなる樹脂フィルムを得た。ドライフィルム用ラミネーターを用いて、開口部として0.1mmの径の貫通孔を複数形成してある銅張積層板(銅箔12μm、板厚0.1mm)の片面にこの樹脂フィルムをラミネートした。
【0035】
【表1】

【0036】
次に、カバーフィルムの側から感光性樹脂層全面に紫外線露光を行った。露光条件は、照度0.2mW/cm、露光時間2分間とした。露光工程の間、開口部には酸素を含む空気が存在するようにした。
【0037】
続いて、スプレー方式で、カバーフィルムと反対の側から1質量%炭酸ナトリウム水溶液からなる感光性樹脂層除去液を供給し、開口部の感光性樹脂層の除去を行った。
【0038】
カバーフィルムを除去した後、感光性樹脂層の開口部の観察を行ったところ、銅張積層板の開口部にのみ感光性樹脂層の開口が形成されていた。また、オフセット幅Woはゼロであった。
【0039】
(比較例1)
実施例1において、カバーフィルムの側からの感光性樹脂層全面への紫外線露光を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、開口部の感光性樹脂層の除去を行った。すなわち、樹脂フィルムのラミネート後、引き続き、カバーフィルムと反対の側から感光性樹脂層除去液を供給し、開口部の感光性樹脂層の除去を行った。
【0040】
感光性樹脂層の開口部の観察を行ったところ、銅張積層板の開口部にのみ感光性樹脂層の開口が形成されていたが、オフセット幅Woは25μmであり、オフセット幅Woゼロの樹脂開口を得ることはできなかった。
【0041】
(実施例2)
実施例1と同様にして全面露光までの処理を行った後、カバーフィルムの除去を行った。次に、1質量%炭酸ナトリウム水溶液からなる感光性樹脂層除去液を感光性樹脂層側からスプレー方式で供給し、開口部の感光性樹脂層の除去を行った。
【0042】
感光性樹脂層の開口部の観察を行ったところ、銅張積層板の開口部にのみ感光性樹脂層の開口が形成されていた。また、オフセット幅Woはゼロであった。
【0043】
(実施例3)
表1に示す成分よりなる感光性樹脂層用の塗工液をカバーフィルム(膜厚25μmのポリエステルフィルム)上にワイヤーバーを用いて乾燥膜厚10μmとなるように塗布した後、乾燥を行い、感光性樹脂層及びカバーフィルムからなる樹脂フィルムを得た。ドライフィルム用ラミネーターを用いて、開口部として0.06mmの径の非貫通孔を複数形成してある多層基板(銅箔12μm、非貫通孔の深さ0.06mm、板厚0.3mm)の非貫通孔が形成してある面に、この樹脂フィルムをラミネートした。
【0044】
次に、カバーフィルムの側から感光性樹脂層全面に紫外線露光を行った。露光条件は、照度0.1mW/cm、露光時間3分間に設定した。露光工程の間、開口部には酸素を含む空気が存在するようにした。
【0045】
続いて、カバーフィルムを剥がした後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液からなる感光性樹脂層除去液を感光性樹脂層にスプレー方式で供給し、開口部の感光性樹脂層の除去を行った。
【0046】
感光性樹脂層の開口部の観察を行ったところ、多層基板の開口部にのみ感光性樹脂層の開口が形成されていた。また、オフセット幅Woはゼロであった。
【0047】
(実施例4)
表2に示す成分よりなる感光性樹脂層用の塗工液をカバーフィルム(膜厚25μmのポリエステルフィルム)上にワイヤーバーを用いて乾燥膜厚20μmとなるように塗布した後、乾燥を行い、感光性樹脂層及びカバーフィルムからなる樹脂フィルムを得た。ドライフィルム用ラミネーターを用いて、直径0.2mmの円形の開口部を有するステンレス板(板厚0.1mm)の片面にこの樹脂フィルムをラミネートした。
【0048】
【表2】

【0049】
次に、カバーフィルムの側から感光性樹脂層全面に全面露光を行った。露光条件は、照度10mW/cm、露光時間1分間に設定した。露光工程の間、開口部には酸素を含む空気が存在するようにした。
【0050】
続いて、カバーフィルムと反対の側から、スプレー方式で、10質量%炭酸ナトリウム水溶液からなる感光性樹脂層除去液を供給し、開口部の感光性樹脂層の除去を行った。カバーフィルムを除去した後、感光性樹脂層の開口部の観察を行ったところ、ステンレス板の開口部にのみ感光性樹脂層の開口が形成されていた。また、オフセット幅Woはゼロであった。
【0051】
(比較例2)
実施例4において、カバーフィルムの側からの感光性樹脂層全面への紫外線露光を行わなかった以外は、実施例4と同様にして、開口部の感光性樹脂層の除去を行った。すなわち、樹脂フィルムのラミネートの後、引き続き、カバーフィルムと反対の側から感光性樹脂層除去液を供給し、開口部の感光性樹脂層の除去を行った。
【0052】
感光性樹脂層の開口部の観察を行ったところ、ステンレス板の開口部にのみ感光性樹脂層の開口が形成されていたが、オフセット幅Woは15μmであった。
【0053】
(比較例3)
実施例4において、カバーフィルムの側からの感光性樹脂層全面への紫外線露光を行う際に、開口部に酸素を含む空気が存在しないように、真空密着露光機を用いて真空に脱気してから、露光条件100mW/cm、6秒間の露光を行った以外は、実施例4と同様にして、開口部の感光性樹脂層の除去を行った。
【0054】
感光性樹脂層の開口部の観察を行ったところ、開口部の感光性樹脂層の除去が行われておらず、良好な樹脂の樹脂開口ができなかった。
【0055】
(比較例4)
実施例4と同様にして、表2に示す成分よりなる感光性樹脂層用の塗工液をカバーフィルム(膜厚25μmのポリエステルフィルム)上にワイヤーバーを用いて乾燥膜厚20μmとなるように塗布した後、乾燥を行い、感光性樹脂層及びカバーフィルムからなる樹脂フィルムを得た。ドライフィルム用ラミネーターを用いて、この樹脂フィルムを、直径0.2mmの円形の開口部を有するステンレス板(厚み0.1mm)の片面にラミネートした。
【0056】
次に、開口部パターンと同様のパターンを有するフォトマスクを作製し、そのフォトマスクをカバーフィルムの上から重ね合わせて、真空密着露光(100mW/cm、6秒間)を行うことにより、開口部以外の感光性樹脂層に対して紫外線の照射を行った。
【0057】
続いて、カバーフィルムの除去を行った後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液からなる感光性樹脂層除去液スプレー方式で供給し、開口部の感光性樹脂層の除去を行った。
【0058】
感光性樹脂層の開口部の観察を行ったところ、ステンレス板(基材1)の開口部2の中心位置Aと感光性樹脂層3bの開口部2の中心位置Bとの距離Xは50μmであり(図9)、ステンレス板の開口部と感光性樹脂層との間には位置ずれが生じていた。
【0059】
(実施例5)
表2に示す成分よりなる感光性樹脂層用の塗工液をカバーフィルム(膜厚25μmのポリエステルフィルム)上にワイヤーバーを用いて乾燥膜厚20μmとなるように塗布した後、乾燥を行い、感光性樹脂層及びカバーフィルムからなる樹脂フィルムを得た。ドライフィルム用ラミネーターを用いて、開口部として0.1mmの径の貫通孔を複数形成してある銅張積層板(銅箔12μm、板厚0.1mm)の片面にこの樹脂フィルムをラミネートした。
【0060】
次に、樹脂フィルムをラミネートした側と反対の側から、コントラスト形成物質として重合禁止剤である4−メトキシフェノールの4質量%水溶液を貫通孔内へ供給した。この際、貫通孔内に泡が残っている場合には、振動を加えながら4−メトキシフェノールの水溶液を再度供給し、泡を取り除いた。続いて、このコントラスト形成物質である4−メトキシフェノールが貫通孔内に充填されている状態で、樹脂フィルムをラミネートした側から感光性樹脂層全面に紫外線露光を行った。露光条件は、照度6mW/cm、露光時間50秒間とした。
【0061】
続いて、カバーフィルムを剥がした後、スプレー方式で、銅張積層板の両面から1質量%炭酸ナトリウム水溶液からなる感光性樹脂層除去液を供給し、開口部の感光性樹脂層の除去を行った。
【0062】
感光性樹脂層の開口部の観察を行ったところ、銅張積層板の開口部にのみ感光性樹脂層の開口が形成されていた。また、オフセット幅Woはゼロであった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば、貫通孔や非貫通孔を有する電子基板へのレジスト樹脂層の付与、金属加工製品への絶縁被膜付与などに利用可能である。また、これらに限定されず、開口部を有する加工基材の開口部以外の部分に樹脂を付与する必要のある様々な用途に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 基材
2 開口部
3 感光性樹脂層(未感光)
3a 感光性樹脂層(感光後:感光性樹脂層除去液溶解性)
3b 感光性樹脂層(感光後:感光性樹脂層除去液不溶性)
10 コントラスト形成物質
13 樹脂層
19 基材開口部のエッジ
20 フォトマスク
21 カバーフィルム
22 マスキング層
29 感光性樹脂層開口部のエッジ
30 露光
31 開口部領域
32 開口部以外の領域
39 樹脂層の開口部の基材と接するエッジ
50 感光光線
71 注射針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する基材に感光性樹脂層をラミネートするラミネート工程、感光性樹脂層の開口部領域にのみ感光性に影響を与えるコントラスト形成物質が接する状況で感光性樹脂層を全面露光する全面露光工程、湿式処理により開口部の感光性樹脂層の除去を行う感光性樹脂層除去工程をこの順で含むことを特徴とする樹脂開口方法。
【請求項2】
感光性樹脂層が光架橋性樹脂層であり、感光性に影響を与えるコントラスト形成物質が酸素であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂開口方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−274240(P2010−274240A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131998(P2009−131998)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】