説明

機器管理装置、機器設定方法、及び機器設定プログラム

【課題】稼動・運用開始から一定期間経過後の機器稼動状況に応じて、複数の各機器に対しそれぞれ最適なパラメータの設定又は変更を行える機器管理装置等を提供する。
【解決手段】本発明に係る機器管理装置は、ネットワークを介し接続された機器に対して、設定値を設定する機器管理装置であって、設定値の基準となる基準設定値と、稼働状況を示すカウンター値毎に対応付けられた基準設定値に対する変更率が規定されたテーブルとを記憶した記憶手段と、機器から、稼働状況を示すカウンター値を少なくとも含む機器情報を取得する機器情報取得手段と、テーブルを参照し、設定取得手段により取得された稼働状況を示すカウンター値毎に対応付けられた変更率を取得し、該変更率に基準設定値を乗じた変更設定値を算出する設定値算出手段と、機器に対し、変更設定値を設定する設定手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器管理装置、機器設定方法、及び機器設定プログラムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より機器管理システムにおいて、機器管理装置からネットワークを介し、機器一台一台の情報収集及び設定を行う技術が知られている。管理下に多くの機器が存在している場合、パラメータ(設定値)の設定作業に際し、個々にパラメータを設定していくのでは手間がかかるので、機器管理装置を用いるとリモートから同一のパラメータをまとめて複数の機器に対してパラメータの設定作業を行え、大変便利である。
【0003】
管理者はまず1の設定ファイルを作成し、機器管理装置から各機器に対し、次々又は一括してこの設定ファイル適用しさえすればよい。適用後、各機器は設定ファイルによって定められたパラメータに従って動作処理を行うようになるので、管理者は大量の機器が存在する場合でも容易に機器の設置(インストール)を行うことができる。
【0004】
これらに関する技術として、特許文献1には、画像情報の送受信を行う1つ以上の通信機器が有する設定値を、ネットワークを介して設定する通信機器設定方法であって、設定の対象となる前記通信機器を、SNMPを用いて検索する検索段階と、検索された前記通信機器に対し、SOAPを用いて設定を行う設定段階とを有する発明が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術においては全機器に対して一括で同じ値のパラメータを設定するものであるが、パラメータによっては画一的に設定された値が機器にとって必ずしも最適でない場合が存在する。機器の稼動後、その機器の稼働状況、運用状況によって、画一的に設定されたその値がその機器にとって必ずしも最適でない場合がありうるのである。
【0006】
例えばデジタル複合機(機器)の場合、設置された部署によってはその使用頻度が異なり、ある部署では非常に使用頻度が高い一方、ある部署では使用頻度が低い場合がある。このときパラメータによっては、使用頻度が高いなりに設定すべき最適な値があるにもかかわらず、従来の技術においては全機器に対して一括で同じ値のパラメータを設定するため、全ての機器に対し一括で最適なパラメータを設定又は変更することができなかった。
【0007】
勿論、初期設置時の時点から稼働状況、運用状況を想定するのはなかなか困難であるため、この時点では現実的に全機器に対して一括で同じ値のパラメータを設定せざるを得ないものの、稼動・運用開始から一定期間経過後においては、各機器の稼働状況、運用状況に応じ、一括で容易な操作で持って最適なパラメータを各機器に対し設定又は変更することが望ましい。
【0008】
そこで本発明では上記のような問題に鑑みて、稼動・運用開始から一定期間経過後の機器稼動状況に応じて、複数の各機器に対しそれぞれ最適なパラメータの設定又は変更を行える機器管理装置、機器設定方法、及び機器設定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る機器管理装置は、ネットワークを介し接続された機器に対して、設定値を設定する機器管理装置であって、設定値の基準となる基準設定値と、稼働状況を示すカウンター値毎に対応付けられた前記基準設定値に対する変更率が規定されたテーブルとを記憶した記憶手段と、前記機器から、稼働状況を示すカウンター値を少なくとも含む機器情報を取得する機器情報取得手段と、前記テーブルを参照し、前記設定取得手段により取得された稼働状況を示すカウンター値毎に対応付けられた変更率を取得し、該変更率に前記基準設定値を乗じた変更設定値を算出する設定値算出手段と、前記機器に対し、前記変更設定値を設定する設定手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
また上記課題を解決するため、上記機器管理装置においては、前記基準設定値は、1のジョブ実行完了後から次のジョブ実行開始までの時間である「ジョブ間待ちタイム」の基準設定値であり、前記稼働状況を示すカウンター値は、スキャナ、コピー、プリンタ、又はFAXを含むジョブの実行回数を示すカウンター値であることを特徴とする。
【0011】
また上記課題を解決するため、上記機器管理装置においては、前記機器情報は、さらに故障履歴情報を含み、前記テーブルは、稼働状況を示すカウンター値及び故障履歴毎に対応付けられた前記基準設定値に対する変更率が規定され、前記設定値算出手段は、該テーブルを参照し、前記設定取得手段により取得された稼働状況を示すカウンター値及び故障履歴毎に対応付けられた変更率を取得し、該変更率に前記基準設定値を乗じた変更設定値を算出することを特徴とする。
【0012】
なお、本発明の構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、などに適用したものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、稼動・運用開始から一定期間経過後の機器稼動状況に応じて、複数の各機器に対しそれぞれ最適なパラメータの設定又は変更を行える機器管理装置、機器設定方法、及び機器設定プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る機器管理システム100の構成図である。
【図2】機器管理装置1の一実施形態の主要構成を示すハードウェア構成図である。
【図3】機器管理装置1の一実施形態の主要機能を示す機能ブロック図である。
【図4】機器のカウンター情報例を示す。
【図5】機器の故障履歴情報例を示す。
【図6】プリント用の変更率テーブル例を示す。
【図7】基準設定値例を示す。
【図8】機器管理装置1の機器に対する設定処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を各実施形態において図面を用いて説明する。
【0016】
[システム構成]
(全体構成)
はじめに、具体的な発明の内容を説明する前に、本発明を実施するにあたっての全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係る機器管理システム100の構成図である。図に示されるように、本実施形態に係る機器管理システム100は、リモート管理センターAと管理サイトがネットワークを介して相互に接続される。また管理サイトにおいては、機器管理装置1と機器(複数可)が接続される。
【0017】
リモート管理センターAは、保守要員が常駐しており、例えば保守契約先の顧客サイトを管理サイト(複数可)として、管理サイトに対しリモート管理(監視)を行う管理センターである。管理サイトに設置された機器管理装置1から機器管理用の情報を日々取得して蓄積するとともに、各機器のステータスを監視し障害時に備える。
【0018】
機器管理装置1は、管理サイト内の各機器から日々ステータス情報を管理・取得・蓄積し、リモート管理センターAに対しこれを送信する。また本実施形態においては、各機器に対し設定・変更を行う装置である(詳細後述)。
【0019】
機器は、管理サイト内における管理対象の機器である。リモート管理センターAや、管理サイト内の管理者(例えば顧客側の管理者)によって、日々のリモート管理(監視)が行われるとともに、ときに各機器に対し設定・変更を行われると、その設定・変更された設定値(パラメータ)に従って動作する。
【0020】
なお本実施形態に係る管理サイトB内においては、機器11、機器12、機器13、機器21、機器22が管理対象の機器として設置されているものとし、またこのうち機器11、機器12、機器13が同一機種、機器21、機器22が同一機種であるものとする。また後に取上げるパラメータ例との関係上、これら機器は、スキャナ、コピー、プリンタ、及びFAX等を備えるデジタル複合機であるものとして説明していくものとする。
【0021】
(ハードウェア)
ここで、本実施形態に係る機器管理装置1のハードウェア構成について説明する。図2は、機器管理装置1の一実施形態の主要構成を示すハードウェア構成図である。機器管理装置1は、主要な構成として、入力装置101、表示装置102、ドライブ装置103、RAM(Random Access Memory)104、ROM(Read Only Memory)105、CPU(Central Processing Unit)106、インタフェース装置107、及びHDD(Hard Disk Drive)108などを備え、それぞれがバスBで相互に接続されている。
【0022】
入力装置101は、キーボードやマウスなどを含み、機器管理装置100に各操作信号を入力するのに用いられる。表示装置102は、ディスプレイなどを含み、機器管理装置100による処理結果を表示する。インタフェース装置107は、機器管理装置1をネットワークNに接続するインタフェースである。これにより、機器管理装置1は、インタフェース装置107を介して、各機器とデータ通信を行うことができる。
【0023】
HDD108は、プログラムやデータを格納している不揮発性の記憶装置である。格納されるプログラムやデータには、装置全体を制御する情報処理システム(例えば「Windows(商標又は登録商標)」や「UNIX(商標又は登録商標)」などの基本ソフトウェアであるOS(Operating System))、及びシステム上において各種機能(例えば機器管理機能)を提供するアプリケーションなどがある。HDD108は、格納しているプログラムやデータを、所定のファイルシステム及び/又はDB(Data Base)により管理している。
【0024】
ドライブ装置103は、着脱可能な記録媒体103aとのインタフェースである。これにより、機器管理装置1は、ドライブ装置103を介して、記録媒体103aの読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。記録媒体103aには、例えば、フロッピー(商標又は登録商標)ディスク、CD(Compact Disk)、及びDVD(Digital Versatile Disk)、ならびに、SDメモリカード(SD memorycard)やUSBメモリ(Universal Serial Bus memory)などがある。
【0025】
ROM105は、電源を切っても内部データを保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。ROM105には、機器管理装置1の起動時に実行されるBIOS(BasicInput/Output System)、情報処理システム設定、及びネットワーク設定などのプログラムやデータが格納されている。RAM104は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)である。CPU106は、上記記憶装置(例えばHDD108やROM105等)から、プログラムやデータをRAM(メモリ)上に読み出し、処理を実行することで、装置全体の制御や搭載機能を実現する演算装置である。
【0026】
本実施形態に係る機器管理装置1は、以上のハードウェア構成により、機器管理に係る機能・サービスを提供する。
【0027】
なお管理サイトB内の機器は、上述したようにスキャナ、コピー、プリンタ、及びFAXなどの複数の機能を一つの筐体内に収納したデジタル複合機であり、画像形成装置(MFP:Multi-Function Peripheral)として知られる機器であるため、そのハードウェア構成についての図面の提示及び説明は省略する。
【0028】
(機能)
次に、本実施形態に係る機器管理装置1の主要機能構成について説明する。図3は、機器管理装置1の一実施形態の主要機能を示す機能ブロック図である。機器管理装置1は、主要な機能として、記憶部111、機器情報取得部112、設定値算出部113、設定部114を含み構成される。
【0029】
記憶部111は、管理サイト下の各機器の機器管理ファイル、各機器の設定ファイルや、設定値の基準となる基準設定値と、稼働状況を示すカウンター値毎に対応付けられた前記基準設定値に対する変更率が規定された変更率テーブル等を記憶している記憶部である。
【0030】
このうち機器管理ファイルは、機器管理装置として機器管理上備えるものもので、管理サイト下の各機器の機器名、モデル名(型番)、IPアドレス、設置場所等の管理上必要な情報を保持したデータファイルである。また設定ファイルは、各機器に対して設定した設定値(パラメータ群)を保持したデータファイルである。
【0031】
基準設定値は、設定項目に対しその基準値(標準値)として推奨される基準の値である。また変更率テーブルは、稼働状況を示すカウンター値毎に基準設定値に対する変更率が規定されたものであり、機器から取得された稼働状況を示すカウンター値に対する変更率を特定するために用いられる(詳細後述)。
【0032】
なお機器管理装置1は、リモート管理センターAからネットワークを介し、これら基準設定値、変更率テーブルを取得する。リモート管理センターAでは日々、管理サイト下の機器から機器情報を収集、管理(監視)しており、これら運用実績の蓄積に基づき保守要員によって適切な値が決定され、また更新されうる。
【0033】
機器情報取得部112は、機器から機器情報を取得する。機器情報は、例えばIPアドレス、MACアドレス、機器名、モデル名等々のほか、機器の稼働状況やステータスを示すものとして、稼働状況を示すカウンター情報(例えば複合機のプリント枚数)、機器の故障履歴情報を含む。
【0034】
設定値算出部113は、変更率テーブルを参照し、機器情報取得部112により取得された稼働状況を示すカウンター値に対応付けられた変更率を取得し、該変更率に基準設定値を乗じた変更設定値を算出する。
【0035】
設定部114は、設定すべき設定値(パラメータ)を各機器に対し設定を行う機能を有している。本実施形態においては設定値算出部113により算出された変更設定値を機器に設定する。機器に対し設定値が反映されると、以後機器はその変更設定値に従って自機器の動作を行う。なお機器への設定は、一つ一つの設定値を設定できるし、上述の設定ファイルごと機器へ設定すればファイル内の設定値を一度に設定することもできる。
【0036】
以上、機器管理装置1の主要機能構成である。なおこれらの機能は、実際には装置のCPU106が実行するプログラムによりコンピュータに実現させるものである。
【0037】
(機器情報)
機器管理装置1は機器情報として、上述したように例えばIPアドレス、MACアドレス、機器名、モデル等々のほか、機器の稼働状況やステータスを示すものとして、機器のカウンター情報、故障履歴情報などを各機器から取得可能である。以下このうち機器のカウンター情報、故障履歴情報の具体例を示す。
【0038】
図4は、機器のカウンター情報例を示す。図4は本実施形態に係る機器(複合機)11〜13の3台から取得された機器情報のうち、特にコピー、プリント、スキャナ、FAXの使用回数のカウンター情報を示したものである。ここで取得されたカウンター情報によれば、取得時点で例えば、機器11(機器ID:K00011)は、「Copy Total」12229回、「Print Total」8889回、「Scan Total」5462回、「Fax Total」43回、使用されていることになる。
【0039】
図5は、機器の故障履歴情報例を示す。機器管理システム100において、機器は自機器に障害が発生すると、危機管理装置1を介し又はリモート管理センターAに直接、コールタイプを含む障害通知(アラート)を行うようになっている。障害通知を受信すると保守要員は該当機器に対しリモート対応又はオンサイト対応によって障害対応を行う。このとき障害機器は、障害通知をその故障履歴として保持しているため、機器管理装置1はこの故障履歴を機器情報の1つとして取得できる。ここで取得された故障履歴情報によれば、取得時点で例えば、機器11(機器ID:K00011)には、「Scan」、「Print」、「Fax」に関する障害が1回づつ発生しており、リモート管理センターAの対応を受けたことが分かる。また機器12(機器ID:K00012)には障害は発生しておらず、機器13(機器ID:K00013)には「Copy」に関する障害が1回発生しリモート管理センターAの対応を受けたことが分かる。
【0040】
(変更率テーブル)
変更率テーブルは、上述したようにリモート管理センターAから取得されて記憶部111に保存される。機器の運用開始から一定期間が経過すると、運用開始時に機器に設定した設定値が実際に一定期間稼動してみてその稼働状況を考慮すると必ずしも適切でない場合がある。そのため、運用開始一定期間後、設定値をより適切な値に変更(補正)すべく、変更率テーブルによって、基準設定値に対する変更率(補正率ともいえる)を特定する。
【0041】
図6は、プリント用の変更率テーブル例を示す。図に示されるようにプリント用の変更率テーブルでは、「印刷枚数」、「故障回数」毎に「基準値に対する変更率」が対応付けられて規定されている。見方としては、例えば「印刷枚数」が4000、「故障回数」が0回である場合、「基準値に対する変更率」は1となる。
【0042】
ここで、機器情報との関係でいえば「印刷枚数」は「Print Total」のカウンター値に対応しており、また「故障回数」は故障履歴情報に対応している。つまり、例えば「Print Total」のカウンター値が4000、かつ「故障回数」が0であれば、「基準値に対する変更率」は1である。また同様に「Print Total」のカウンター値が4000、かつ「故障回数」が1であれば、「基準値に対する変更率」は1.1である。そしてこの「基準値に対する変更率」が基準設定値に対し乗算されることにより、運用開始一定期間後に設定されるべき設定値(変更設定値)が算出される。
【0043】
(基準設定値)
図7は、基準設定値例を示す。図に示されるように基準設定値は、その「設定項目名」毎に対応する基準値が定められている。基準設定値は、上述したようにリモート管理センターAから取得されて記憶部111に保存される。上述したようにリモート管理センターAでは日々、管理サイト下の機器から機器情報を収集、管理(監視)しており、これら運用実績の蓄積に基づき保守要員によって適切な基準設定値が決定、更新される設定値の基準値(標準値)として推奨される基準の値である。なお設定項目によってその基準設定値の値が異なることはいうまでもない。
【0044】
[情報処理]
次いで、機器管理装置1の行う情報処理について説明していく。図8は、機器管理装置1の機器に対する設定処理を示すシーケンス図である。
【0045】
S1:機器管理装置1は、管理サイト下の各機器から機器情報を取得する。本実施形態では機器に対する設定値の一例として、「印刷ジョブ間待ちタイム」を設定すべく、機器情報として少なくとも機器の稼働状況やステータスを示すものとして、複合機のプリント枚数を示すカウンター情報、機器の故障履歴情報を取得する(機器情報取得部112)。取得方法は、例えばSNMP(Simple Network Management Protocol)やベンダー独自プロトコルを用いて取得できる。
【0046】
S2:機器管理装置1は、一括して設定を行うため、管理サイト下の各機器の中から今回設定を行う機器に対しグループ化を行っておく。グループ化方法は、機器管理ファイル又はS1で取得した機器情報の例えばモデル名、設置場所等に基づき機器管理装置1が自動選択してもよい。またもしくはさらに管理者が機器管理装置1を操作して任意の機器を選択してもよい。ここでは同一機種の機器11、機器12、機器13に対し一括して設定を行うものとし、これら機器に対しグループ化を行う。
【0047】
S3:次いで機器管理装置1は、リモート管理センターAにアクセスし、基準設定値、変更率テーブルを取得する。本実施形態では機器に対する設定値として「印刷ジョブ間待ちタイム」を設定するため、プリント用の変更率テーブル(図6)、印刷ジョブ間待ちタイムの基準設定値(パラメータA):0.5秒(図7)を取得するものとする。
【0048】
S4:機器管理装置1は、S3で取得されたプリント用の変更率テーブルを参照し、S1で取得された複合機のプリント枚数を示すカウンター情報、機器の故障履歴情報に対応付けられた変更率を取得し、変更率にS3で取得された基準設定値を乗じた変更設定値を算出する(設定値算出部113)。以下具体的に説明する。
【0049】
まず機器の運用開始日(例えば2011/1/1)から一定期間(例えば2ヶ月)が経過した時点(2011/2/末日)において、運用開始時に機器に設定した設定値が実際に一定期間稼動してみてその稼働状況を考慮したうえ、その設定値をより適切な値に変更(補正)する。そして設定値の一例として「印刷ジョブ間待ちタイム」を設定するものとする。
【0050】
グループ化されている設定対象機器である機器11、機器12、機器13のそれぞれについて設定値を算出する。
【0051】
まず機器11について、再び図4を参照すると、機器11(機器ID:K00011)は、「Print Total」8889回、使用されている。また図5を参照すると、ここ2ヶ月の間、機器11(機器ID:K00011)は、印刷系の障害として「Print」に関する障害が1回発生している(2011/2/3)。
【0052】
また図6のプリント用の変更テーブルを参照すると、「印刷枚数」8889、「故障回数」1に対応する「基準値に対する変更率」は1.4であることが分かる。一方印刷ジョブ間待ちタイムの基準設定値は0.5であるので、変更率1.4に基準設定値0.5秒を乗じた変更設定値は0.7秒と算出できる。
【0053】
ここで「印刷ジョブ間待ちタイム」とは、複合機が印刷ジョブを連続して実行するにあたり、印刷ジョブの実行間隔時間をいう。1の印刷ジョブ実行完了後から次の印刷ジョブ実行開始までの時間である。とすると印刷ジョブ間待ちタイムが短いほどより多くの印刷ジョブを実行できるため稼働能力は向上し、逆に印刷ジョブ間待ちタイムが長いほど多くの印刷ジョブを実行できなくなるため稼働能力は低下する。従って「印刷ジョブ間待ちタイム」の推奨値(基準設定値)が0.5秒であったとしても、これは図6を考慮するとあくまで2ヶ月間でプリント回数4000枚以下且つ故障0回の稼動レベルの複合機に推奨される値であり、これを超えるプリント回数の稼動レベルの複合機に対しては負荷削減や故障防止の観点から少し稼動レベルを抑制した方がよいので、印刷ジョブ間待ちタイムを長く取るようにすべきである。即ち、機器11の場合、ここ2ヶ月のうち印刷枚数が8889枚もの稼動レベルにあり、故障も1回発生しているため、印刷ジョブ間待ちタイムを長く取るようにする。そしてその結果、この機器11の「印刷ジョブ間待ちタイム」に変更すべき設定値は0.7秒と算出されたことになる。
【0054】
S5:機器管理装置1は、算出された設定値を各機器に対し設定を行う(設定部114)。具体的に、機器11に対して「印刷ジョブ間待ちタイム」0.7秒との設定を行う。また機器12、機器13についてもそれぞれ同様に算出された設定値への設定を行えばよい。
【0055】
S6:機器管理装置1は、保有している設定ファイルの更新を行う。具体的に、機器11の設定ファイルにおいて「印刷ジョブ間待ちタイム」を0.7秒と更新する。機器12、機器13の設定ファイルについても同様に算出された設定値への更新を行う。
【0056】
S7:機器管理装置1は、更新後の機器11、機器12、機器13の設定ファイルをリモート管理センターAに送信する。管理上、センター側でも設定ファイルを保有するためである。
【0057】
[変形例]
上述の実施形態においては、(1)リモート管理センターAから基準設定値を取得し(S3)、この取得された基準設定値を用いて変更設定値を算出するものとした(S4)。これに対し本変形例では、この基準設定値に代え、(2)機器管理装置1が保有している設定ファイル内の設定値(つまり現在適用中の設定値)を用いて変更設定値を算出する。
【0058】
リモート管理センターAから基準設定値は、運用実績の蓄積に基づき保守要員によって逐次決定・更新されている値であるので、この基準設定値を用いて変更設定値を算出することは妥当であり、そのため運用開始時点で設定値はこの基準設定値そのものが使用され設定されることも多い。
【0059】
これに対し本変形例においては、機器管理装置1が保有している設定ファイル内の設定値、つまり現在適用中の設定値をベースに変更率を乗算するので、2度目以降の設定変更時に特に有効である。
【0060】
例えば、運用開始時点での「印刷ジョブ間待ちタイム」の設定値に基準設定値をそのまま利用し0.5であるとし、2ヵ月後のリモート管理センターAからの「印刷ジョブ間待ちタイム」基準設定値も0.5であれば、上述の実施形態のように基準設定値0.5に対し変更率1.4を乗算しても、本変形例のように設定ファイル内の設定値0.5に対し変更率1.4を乗算しても、変更設定値はいずれの場合も0.7秒である。
【0061】
しかし4ヶ月後2度目の「印刷ジョブ間待ちタイム」の設定変更時においては、機器管理装置1が保有している設定ファイル内の「印刷ジョブ間待ちタイム」設定値(つまり現在適用中の「印刷ジョブ間待ちタイム」設定値)は0.7であるのに対し、4ヵ月後のリモート管理センターAからの「印刷ジョブ間待ちタイム」基準設定値も0.5のままであれば、このとき変更率xを乗算した変更設定値は異なってくる。かりに運用開始後2ヶ月〜4ヶ月間の間のプリント回数から特定された変更率が1.4であれば、(2)設定ファイル内の「印刷ジョブ間待ちタイム」設定値0.7秒に変更率1.4を乗じると、0.98秒になる。一方(1)「印刷ジョブ間待ちタイム」基準設定値0.5秒に変更率1.4を乗じると、再び0.7秒になる。
【0062】
(2)の場合、「印刷ジョブ間待ちタイム」設定値は、運用開始時後2ヶ月時点:0.7、4ヶ月時点:0.98となる。この場合、現在適用中の設定値に基づき機器が動作し、その結果としての機器の稼働状況を加味して設定値を変更するという趣旨からすると、2ヶ月〜4ヶ月間の機器の稼働状況が加味され、「印刷ジョブ間待ちタイム」をさらに長く取るようにしたことになる(0.28)。つまり2ヶ月〜4ヶ月間において依然プリント回数は高稼働水準にあり、障害発生も懸念されることから、これを改善すべく0.28秒長く取って、より稼動レベルを抑制させる変更設定値となっている。
【0063】
(1)の場合、「印刷ジョブ間待ちタイム」設定値は、運用開始時後2ヶ月時点:0.7、4ヶ月時点:0.7となる。この場合、運用開始時〜2ヶ月、2ヶ月〜4ヶ月間いずれも同様の稼動水準にあれば、やはり一定の基準設定値に基づく「印刷ジョブ間待ちタイム」変更設定値は0.7が望ましいとの立場である。即ち、上述したように基準設定値は運用実績の蓄積に基づき保守要員によって適切な値が決定されたものであるから、これを信頼する立場であるといえる。
【0064】
[総括]
以上のように本実施形態に係る機器管理装置1は機器情報として、機器の稼働状況(例えば機器のカウンター情報、故障履歴情報等)を各機器から取得し、機器の設定値のうち稼働状況に応じて設定すべき設定値をこの機器の稼働状況を加味して算出し、機器に再設定する。このため本機器管理装置1によれば、従来の技術においては全機器に対して一括で同じ値のパラメータを設定するものであり、値によっては画一的に設定された値が機器にとって必ずしも最適でない場合が存在するところ、機器の稼動後、その機器の稼働状況、運用状況によって、画一的に設定されたその値を設定できるので、その機器にとって稼働状況の点から適した設定値を設定できる。
【0065】
即ち以上の本発明によれば、稼動・運用開始から一定期間経過後の機器稼動状況に応じて、複数の各機器に対しそれぞれ最適なパラメータの設定又は変更を行える機器管理装置等を提供することが可能となる。なお、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0066】
上述の実施形態では、稼働状況を示すカウンター情報としてプリント回数を挙げ、そのプリント回数(及びその基準設定値)に基づき、「印刷ジョブ間待ちタイム」の変更設定値を算出する例を説明した。他の例として例えば、コピー回数(及びその基準設定値)に基づく「コピージョブ間待ちタイム」、スキャン回数(及びその基準設定値)に基づく「スキャンジョブ間待ちタイム」、FAX回数(及びその基準設定値)に基づく「FAXジョブ間待ちタイム」の変更設定値を算出することも可能である。
【符号の説明】
【0067】
A リモート管理センター
B 管理サイト
1 機器管理装置
11―13 機器
21、22 機器
101 入力装置
102 表示装置
103 ドライブ装置
104 RAM
105 ROM
106 CPU
107 インタフェース装置
108 HDD
111 記憶部
112 機器情報取得部
113 設定値算出部
114 設定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2005−094633号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介し接続された機器に対して、設定値を設定する機器管理装置であって、
設定値の基準となる基準設定値と、稼働状況を示すカウンター値毎に対応付けられた前記基準設定値に対する変更率が規定されたテーブルとを記憶した記憶手段と、
前記機器から、稼働状況を示すカウンター値を少なくとも含む機器情報を取得する機器情報取得手段と、
前記テーブルを参照し、前記設定取得手段により取得された稼働状況を示すカウンター値毎に対応付けられた変更率を取得し、該変更率に前記基準設定値を乗じた変更設定値を算出する設定値算出手段と、
前記機器に対し、前記変更設定値を設定する設定手段と、
を有することを特徴とする機器管理装置。
【請求項2】
前記基準設定値は、1のジョブ実行完了後から次のジョブ実行開始までの時間である「ジョブ間待ちタイム」の基準設定値であり、
前記稼働状況を示すカウンター値は、スキャナ、コピー、プリンタ、又はFAXを含むジョブの実行回数を示すカウンター値であること、
を特徴とする請求項1記載の機器管理装置。
【請求項3】
前記機器情報は、さらに故障履歴情報を含み、
前記テーブルは、稼働状況を示すカウンター値及び故障履歴毎に対応付けられた前記基準設定値に対する変更率が規定され、
前記設定値算出手段は、該テーブルを参照し、前記設定取得手段により取得された稼働状況を示すカウンター値及び故障履歴毎に対応付けられた変更率を取得し、該変更率に前記基準設定値を乗じた変更設定値を算出すること、
を特徴とする請求項1又は2記載の機器管理装置。
【請求項4】
ネットワークを介し接続された機器に対して、設定値を設定する機器管理装置における前記機器の機器設定方法であって、
前記機器管理装置が、
設定値の基準となる基準設定値と、稼働状況を示すカウンター値毎に対応付けられた前記基準設定値に対する変更率が規定されたテーブルとを記憶装置から読み出す読出手順と、
前記機器から、稼働状況を示すカウンター値を少なくとも含む機器情報を取得する機器情報取得手順と、
前記テーブルを参照し、前記設定取得手順により取得された稼働状況を示すカウンター値毎に対応付けられた変更率を取得し、該変更率に前記基準設定値を乗じた変更設定値を算出する設定値算出手順と、
前記機器に対し、前記変更設定値を設定する設定手順と、
を有することを特徴とする機器設定方法。
【請求項5】
前記基準設定値は、1のジョブ実行完了後から次のジョブ実行開始までの時間である「ジョブ間待ちタイム」の基準設定値であり、
前記稼働状況を示すカウンター値は、スキャナ、コピー、プリンタ、又はFAXを含むジョブの実行回数を示すカウンター値であること、
を特徴とする請求項4記載の機器設定方法。
【請求項6】
前記機器情報は、さらに故障履歴情報を含み、
前記テーブルは、稼働状況を示すカウンター値及び故障履歴毎に対応付けられた前記基準設定値に対する変更率が規定され、
前記設定値算出手順は、該テーブルを参照し、前記設定取得手順により取得された稼働状況を示すカウンター値及び故障履歴毎に対応付けられた変更率を取得し、該変更率に前記基準設定値を乗じた変更設定値を算出すること、
を特徴とする請求項4又は5記載の機器設定方法。
【請求項7】
請求項4ないし6何れか一項記載の機器設定方法をコンピュータに実行させるための機器設定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−151738(P2012−151738A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9891(P2011−9891)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】