説明

機械製麺用米麺粉

【課題】米粉麺の製造において、小麦粉と同様な製造装置で製造可能とする機械製麺用米麺粉を提供する。
【解決手段】米粒の細胞膜を加水分解したり又は軟化せしめるヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ等の酵素含有水溶液に適宜時間米粒を浸漬した後、乾燥並びに微細粉化して製出し、更に所定の殺菌処理した微細米粉70〜80重量%に対して、30〜20重量%の添加物(麺のコシを与えるグルテン、繋ぎの役割を担わせる加工デンプン、粉水混合攪拌に際して、米粉の吸水を邪魔してグルテンの吸水形成を可能とする吸水調整材)を添加混合してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粉を主材料とした機械製麺用米麺粉(プレミックス粉)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
米粉を使用した所謂米麺の製造に関しては、米粉は小麦粉のようにグルテンを含有していないので、そのままでは麺線に形成することが出来ない。このため従前より種々の麺形成手段が提案されている。
【0003】
最も簡易な例としては、特開2004−208560号公報に開示されているように、米粉に強力粉(小麦粉)10%以上混合する手段、つなぎとしてデンプンを使用して生麺とする手段(特公昭60−41579号)が知られている。更にデンプンを添加すると共に、デンプンを加熱して一部α化(糊化)してつなぎの機能を高めるようにする手法も提案されている(特開2000−83611号、特開2002−315526号)。
【0004】
またその製造工程での工夫によって製麺する手段も提案されている。例えば特開2007−174911号公報には、米粉を湯練りして生地を調製し、生地を麺や麺皮状に押出して成形し、更に押し出された麺を高温蒸気雰囲気中に所定時間通して表層側デンプンを優先的にα化する米粉麺類を製造する手法が開示されている。
【0005】
特開2007−135574号には、米粉にぬるま湯を加えて加湿して攪拌し、順次温度を上げて攪拌し、最後に熱湯をそそぎながら撹拌して米デンプンのα化を成し、しかる後増粘機で練り上げて米麺の麺生地を製造する手法が開示されている。
【0006】
また米粉に種々の混合物を添加し、製麺工程の改良や麺質の改良も提案されている。例えば特開2008−22790号公報(特許文献1)には、米粉にデンプン類を混合すると共に、湯戻り性を改善するために、グルコース、ソルビトール等の湯戻り改善物質を添加することが開示されている。
【0007】
更に特開2006−122000号公報(特許文献2)には、米粉にα化デンプンと、増粘多糖類を加えることも提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開2008−22790号公報。
【特許文献2】特開2006−122000号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
米粉を主材料として米麺を製出する場合には、通常の小麦粉を使用する製麺機による連続製麺は困難であり、前記したとおり米粉麺独自の手段が必要であり、既存設備である小麦粉麺の製麺装置での麺製造が困難であった。
【0010】
前記特許文献2において、小麦グルテンを特に加えることのない米粉麺において、既存装置での製麺を可能とするために、米粉にα化デンプン及び増粘多糖類を所定量混合することで麺帯状の生地を得て、それによって所望形状の麺・パスタに機械製麺できることを提案しているが、必ずしも麺帯前生地の機械製造(加水しての粉水混合)は、下記の小麦粉混合米粉同様に、困難であり、手作業による微妙な加水混練が必要である。また米麺の風味を備えるが、麺のコシの点では、グルテンの網目構造を備える小麦麺には到底及ばない。
【0011】
従前において、米扮と小麦粉の混合粉の採用を提案されているが、米粉と小麦粉の水回り機能(米粉が先に水を吸収してしまう)が相違するので、この混合粉を小麦粉のように従前の粉水混和攪拌装置によって麺帯前生地を製出することが困難である。
【0012】
そこで本発明は、小麦粉麺の製麺装置(既存装置)をそのまま使用しても製麺可能な、機械製麺用米麺粉(プレミックス粉)を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る機械製麺用米麺粉(プレミックス粉)は、米粒の細胞膜を加水分解したり又は軟化せしめるヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ等の酵素含有水溶液に適宜時間米粒を浸漬した後、乾燥並びに微細粉化して製出し、更に所定の殺菌処理した微細米粉70〜80重量%に対して、グルテン、及び加工デンプン、及びデキストリン、糖類、増粘多糖類等の吸水調整材が配合された添加物を、20〜30重量%を添加混合してなることを特徴とするものである。
【0014】
米麺材料としての米麺粉は、種々の手段で製出されるが、酵素液浸漬後に粉砕(一般には気流粉砕機による)して微粉化したものは、水浸後にロール粉砕して製出する米粉(上新粉)や、単に米粒をハンマー粉砕機等で粉砕した米粉に比較して、小麦グルテンを添加して麺生地に製出した際の麺千切れが少ないことが確認できた。これは損傷デンプンが少なく、小麦グルテンとの混和性に優れていると推測される。
【0015】
前記の酵素液浸漬処理米粉は、粉砕前に水漬するものであり、水漬時に雑菌が浸透付着するので、乾燥後に殺菌処理する必要がある。一旦微粉化した後、オゾン殺菌やその他の殺菌手段(例えば紫外線殺菌、塩素殺菌等)で殺菌する。
【0016】
添加物は、麺にコシを与えるための小麦グルテン、繋ぎとなる加工デンプン、粉水混合時に生地製出に作用する給水調整材の混合物で、給水調整材を含んでいない場合には、米粉が給水して小麦グルテン(グリジアンとグルテニンの混在物)への吸水が阻害され、グルテン形成がなされ難いし、加水量を多くするとベタついた生地しか製出できない。
【0017】
吸水調整材(デキストリン又はトレハロース、ブドウ糖、増粘多糖類)を加えると、粉水混合攪拌において、吸水調整材が速やかに吸水してゲル状態や泥状となって、米粉の吸水を邪魔し、混合攪拌の進行に伴って、吸水調整材の吸水した水分でグルテンに加水されて、網目状グルテンが形成されることになる。
【0018】
従って前記の本発明の機械製麺用米麺粉(プレミックス粉)は、既存の小麦粉麺用の粉水混合装置で麺帯前生地(ホロホロ状態)を製出でき、更に麺帯前生地を、ローラ圧延による麺帯生地とし、適宜熟成後、麺線加工を施すことで、米粉生麺とするもので、全て既存の小麦粉麺用製麺装置で加工できるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は以上のとおり、所定の米粉に、所定量のグルテン及び加工デンプン及び吸水調整材を配合したもので、既存の小麦粉麺の製麺装置をそのまま適用でき、米粉生麺の製造を容易にしたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に使用した米粉は、市販品であるが、所謂酵素処理し、オゾン殺菌処理を施した微細米粉である。勿論酵素処理手段、微細粉化手段(粉砕手段)を、殺菌手段は任意である。
【0021】
添加物は、活性グルテン(レギュラーグルテン:協和発酵フーズ製)30重量%、加工デンプン(α化タピオカデンプン:マツノリンM−22:松谷化学工業製)19重量%、デキストリン(H−PDX:松谷化学工業製:トレハロースに代替え可能)18重量%、ぶどう糖(昭和産業製)18重量%、増粘多糖類(グアーガム・キサンタンガム:三栄源エフエフアイ製)15重量%を均一に混合して得た。
【0022】
前記の微細米粉80重量%に添加物20重量%を混合してプレミックス粉を得て、このプレミックス粉を、小麦粉と同様に使用して生麺を製造するものである。
【0023】
製麺過程は、従前の小麦粉麺と同様で、最初に前記プレミックス粉をミキサー(粉水混合攪拌装置)に入れて粉体混合を行い、粉を均一に混合し、この混合物に45〜47重量%の水に2重量%の食塩を溶解せしめたものを、ゆっくり加えながら、20分間攪拌混捏する。
【0024】
前記の攪拌混捏時には、最初に水分の吸水分布の相違が認められたとしても、所定時間攪拌混捏を継続すると、小麦粉同様のホロホロ状態の混捏物(麺帯前生地)を得た。
【0025】
前記の混捏物(麺帯前生地)を、ローラ圧延機(製麺機)によって麺帯に形成し、室温で30分放置して熟成させ、その後、更にローラ圧延機にて最終麺帯厚を2mmとし、前記麺帯を麺線機で♯10の切刃ロールを使用して、生麺線に形成した。
【0026】
前記生麺線は、沸騰した熱水で7分間茹でた後、水冷し水切りし、適当なスープとともに食した結果、米粉特有のつるつるした食感で喉ごしが滑らかであり、且つコシを有し、噛みごたえ(食感)も十分で、米の風味も生かさせた米粉麺ができたものである。
【0027】
また前記の混合粉において、ミキサーに入れ均一に混合後、加水と同時にかん水を加え、同様に混捏し、所定厚の麺帯生地とし、更に♯20の切り歯ロールで、ラーメンの生麺線を得た。このラーメンの生麺線は、蒸し器にて6分間蒸して、ラーメンの蒸し麺を得ることができた。
【0028】
更に米粉と添加物の混合比率を70:30として同様に既存装置で製麺したところ、製麺途中で麺帯の乱れ(加水ムラ)麺線が千切れる等のことはないが、米粉の利用範囲が小さくなり、米粉麺の風味が低下した。
【0029】
また米粉の混合比率を高めると、小麦グルテンが少ないことが原因と推測されるが、麺線が千切れ易くなってしまい、製麺の一連の機械加工が困難であることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粒の細胞膜を加水分解したり又は軟化せしめるヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、ペクチンエステラーゼ等の酵素含有水溶液に適宜時間米粒を浸漬した後、乾燥並びに微細粉化して製出し、更に所定の殺菌処理した微細米粉70〜80重量%に対して、グルテン、及び加工デンプン、及びデキストリン、糖類、増粘多糖類等の吸水調整材が配合された添加物を、20〜30重量%を添加混合してなることを特徴とする機械製麺用米麺粉。
【請求項2】
添加物が、グルテン約30重量%、加工デンプン約20重量%、吸水調整材約50重量%で構成され、前記吸水調整材としてデキストリン又はトレハロース、ブドウ糖、増粘多糖類が約等分で混合されてなる請求項1記載の機械製麺用米麺粉。
【請求項3】
微細米粉の殺菌処理が、オゾン濃度15ppm以下のオゾン雰囲気中での気中攪拌である請求項1又は2記載の機械製麺用米麺粉。

【公開番号】特開2010−148472(P2010−148472A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331947(P2008−331947)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000194295)
【Fターム(参考)】