説明

機能性−活性有機化合物がインターカレートされた組成物

水性媒体中に分散された層状ホスト材料の粒子および機能性-活性有機化合物を含む水性分散体であって、機能性-活性化合物に対する層状ホスト材料の質量比が20未満であり、当該分散体中の機能性-活性有機化合物の少なくとも50%が、層状ホスト材料粒子の層の間にインターカレートされており、そしてさらに、水性媒体が、機能性-活性化合物とは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子もしくはポリマーを含み、そして5 mS/cmを超えイオン強度を有する。このような水性分散体を使用することにより、所望の機能性-活性有機化合物を標的系に送達することができ、水性分散体は、機能性-活性化合物とは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子又はポリマーを含み、付加的な可溶性塩又はイオン化された分子又はポリマーは、機能性-活性化合物が送達される標的系内にも存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性-活性有機化合物がインターカレート(intercalate)された層状ホスト材料、及び、機能性-活性有機化合物を標的系に送達する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学系中の成分の封鎖及び制御放出は、化学系の性能及び効力に対して劇的な影響を及ぼすことができる。例えば写真系中の分子成分の制御放出は、写真フィルムの効力を改善するために長い間利用されている。最近では、健康及び美容の面から重要な分子、例えば香料の封鎖及び制御放出が、消費者製品の性能を改善するために採用されている。封鎖(sequestration)は、系の特定の成分を所望の標的成分、系、又は使用者から先ず封鎖し又はこれを「隠す」複合系の能力を意味する。封鎖された形態において、その成分は標的系又は標的成分と相互作用又は反応することはできない。封鎖された成分は次いで後から、単純な拡散を通してゆっくりと、又は系に加えられる化学的又は物理的スイッチによって放出されることにより、所望の機能を発揮することができる。
【0003】
成分の封鎖及び制御放出の最もよく知られた例は、制御された薬物送達である。制御された薬物送達は、ヒト及び他の動植物種の疾患や病気を治療するのに重要である。特定量の薬物を所定の時間にわたって送達することにより、薬物の効力を改善し、そして患者の副作用のリスクを低減することができる系の設計及び開発に対して多大な試みが為されている。主として、今日までの試みは、ポリマー内部に薬物をカプセル封入すること、及び、薬物が高分子層を通って患者にゆっくりと拡散するのを可能にすることに焦点が当てられている。このことの問題は、このような材料の製造方法が高価であり、また薬物の放出がしばしば制御不能であり、単純な透過プロセス及び拡散プロセスに依存することである。
【0004】
より最近では、Choy他が米国特許第6,329,525号明細書に、安定性及び可逆解離性を有する、生体材料を維持して担持するための生体-無機複合体、及び生体-無機複合体の調製方法を記載している。生体-無機ハイブリッドは、層状複水酸化物(しばしばアニオン性クレイと呼ばれる)として知られる層状ホスト材料内に生体分子をインターカレートすることに基づく。生体分子は、層状ホスト材料によって吸着され、その中に隠されるが、しかし後で、暴露時に放出されて酸性度を変化させるか又は電解質濃度を変化させることができる。生体-無機ハイブリッドはこうして、生体材料、例えば薬物、ヘルスケア試薬及び生体材料の制御送達を生じさせるために、潜在的に効果的な手段として役立つ。
【0005】
国際公開第02/47729号パンフレット(O'Hare)に記載された薬物送達システムは、層状複水酸化物のインターカレートを含む。インターカレートは、インターカレーション(intercalation)前には金属水酸化物層を有し、そしてインターカレートされた、1つ以上のアニオン基を有する薬学活性化合物を有する。インターカレート組成物(intercalated compositions)を採用することにより、「薬物送達システム」を摂取した患者の胃内部に種々の薬物を放出することができる。上記パンフレットには、薬学活性化合物がインターカレートされた層状複水酸化物の調製方法も記載されている。この方法は、薬学活性化合物の水溶液を層状複水酸化物で処理し(薬学活性化合物は、層状複水酸化物に対してモル過剰で存在する)、そして層状複水酸化物のインターカレートを分離することを含む。この分離処置は一般に、生成物インターカレートを濾過して洗浄することを伴う。
【0006】
米国特許出願公開第2003/0129243号明細書(Pitard)に記載された組成物は、少なくとも、核酸と、相互交換可能な葉状構造を有する無機物粒子とを含む。採用される無機物粒子は、アニオン性クレイ(例えばヒドロタルサイト)であり、そしてこの特許明細書は、無機物(ヒドロタルサイト)とDNAとの比が50:1(w/w)以上である場合には、活性化学物質(図5の例ではDNA)の80〜90%がヒドロタルサイトによって溶液から封鎖又は除去されることを実証している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の問題は、記載の組成物の調製が高価であり、また記載の組成物が典型的には、活性材料全てを溶液から効果的に封鎖するために、極めて多量の層状ホスト材料を必要とすることである。更なる問題は、組成物は、化学系又は生体系を含む水性環境に対して暴露されると直ちに活性成分を放出し得るという点である。更に別の問題は、活性成分が時期尚早又は余りにも素早く患者の胃内に放出されるおそれがあること、及び放出速度が余りにも高いおそれがあることである。更なる問題は、粒子サイズが余りにも大きいという事実の結果として、組成物が安定なコロイド水性分散体を容易には形成することができず、従って、薬物送達システムの静脈内注射に適さない場合があることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施態様によれば、本発明は、水性媒体中に分散された層状ホスト材料の粒子および機能性-活性有機化合物を含む水性分散体であって、機能性-活性化合物に対する層状ホスト材料の質量比が20未満であり、当該分散体中の機能性-活性有機化合物の少なくとも50%が層状ホスト材料粒子の層の間にインターカレートされており、そしてさらに、水性媒体が、機能性-活性化合物とは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子もしくはポリマーを含み、かつ、5 mS/cmを超えるイオン強度を有することを特徴とする水性分散体に関する。本発明はさらに、所望の機能性-活性有機化合物を標的系に送達する方法であって、標的系にこのような水性分散体を送達することを含み、水性分散体は、層状ホスト材料中にインターカレートされた所望の機能性-活性有機化合物と、機能性-活性化合物とは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子もしくはポリマーとを含み、付加的な可溶性塩又はイオン化された分子又はポリマーが、機能性-活性化合物が送達される標的系内にも存在する、所望の機能性-活性有機化合物を標的系に送達する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
種々の実施態様の場合、本発明は、層状ホスト材料と、インターカレートされた機能性-活性有機化合物との水性分散体を含む、化学物質送達及び/又は薬物送達システムのための組成物であって、機能性-活性化合物に対する層状ホスト材料の質量比が20未満(好ましくは10未満)であり、当該組成物中の機能性-活性化合物の少なくとも50%(好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%)が、層状ホスト材料の層の間に存在する組成物に関する。水性媒体はまた、機能性-活性化合物とは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子もしくはポリマーを含み、そして5 mS/cmを超える(より好ましくは10 mS/cmを超える)イオン強度を有する。「機能性-活性」という用語は、例えば化学的に活性、薬学的に活性、又は栄養学的に活性のイオン、分子、複合体、又はポリマーを意味するために、本明細書中に使用される。種々の更なる実施態様の場合、本発明は、所望の機能性-活性有機化合物を標的系に送達する方法であって、標的系に水性分散体を送達することを含み、水性分散体は、層状ホスト材料中にインターカレートされた所望の機能性-活性有機化合物と、機能性-活性化合物とは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子もしくはポリマーとを含み、この付加的な可溶性塩又はイオン化された分子もしくはポリマーは、機能性-活性化合物が送達される標的系内にも存在する、所望の機能性-活性有機化合物を標的系に送達する方法に関する。機能性-活性有機化合物の大部分が本発明による組成物中にインターカレートされており、また、組成物が比較的高いイオン強度を有するので、本発明は、特に患者の胃内に機能性-活性化合物を送達するための、機能性-活性成分の放出速度の著しく改善された制御を伴う、そして特定の実施態様では、インターカレートされた機能性-活性成分の静脈内放出の著しく改善された制御を伴う、化学物質送達システム及び/又は薬物送達システムを提供する。
【0010】
本発明の化学封鎖及び放出(送達)の概念は、インターカレーション化学に基づく。インターカレーションは、ホストと呼ばれる層状物質が膨潤又は開放することにより、ゲストと呼ばれるその他の分子又はイオンを収容するプロセスである。
【0011】
【化1】

【0012】
インターカレーションは定義によれば可逆プロセスであり、そしてゲスト分子は、層間スペースから拡散又は脱インターカレート(de-intercalate)することができ、そしてインターカレーションプロセスから不変である。インターカレーションによりイオン及び分子を封鎖することができる層状化合物が、多数の刊行物に記載されている。ホスト材料は、インターカレートされるべき特定の分子に応じて選択される。カチオンだけ、又は逆にアニオンだけ、又は中性分子をインターカレートする層状ホスト材料を選択することができる。この件に関する参考文献は下記のものが含まれる:「Intercalation Chemistry(インターカレーション化学)」、A.J. Jacobson及びS. Whittingham編、Academic Press, NY 1982;「Intercalated Layered Materials(インターカレート層状材料)、F. Levy, D. Riedel Press, Dordrecht, Holland (1979);F. Trifiro及びA. Vaccari、「Hydrotalcite-like anionic clays(Layered double hydroxides)(ヒドロタルサイト様アニオン性層(層状複水酸化物))」、Comprehensive Supramolecular Chemistry(超分子化学総覧)、「Solid State Supramolecular Chemistry: Two- and Tree-dimensional Inorganic Networks(固体超分子化学:2次元及び3次元の無機網状構造)」、Alberti G.; Bein, T編、Elsevier, New York, 第8章(1996);「An Introduction to Clay Colloid Chemistry(クレイコロイド化学概論)」、H. van Olphen、第2編、Krieger Pub. Co., Malabar, Fla.(1991)。
【0013】
本発明において使用される層状ホスト材料は:
1)下記式:
M(HPO4)2:yH2O
の層状リン酸水素金属塩(上記式中Mは、Zr、Ti、Sn、Ge又はHf又はこれらの任意の組み合わせであり;そしてyは0〜10の有利数である);
【0014】
2)下記一般式:
[M2+1-xM3+x(OH)2]x+(x/n)An-・yH2O
もしくは
[M1+M3+2(OH)6]1+(1/n)An-・yH2O
の層状複水酸化物;
又は、下記一般式:
(M12+,M22+)5(OH)8.(An-)2/n・yH2O
のヒドロキシ複塩;
(上記式中、M1+は、例えばLi、Na、K、Rb、およびCs(これらに限定されない)から選択することができる一価金属であり;M2+、M12+又はM22+は、例えばCa、Mg、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、およびCd(これらに限定されない)から選択することができる二価金属であり;そしてM3+は、例えばCr、Fe、Al、Ga、In、およびMo(これらに限定されない)から選択することができる三価金属であり;Aは、電荷の中立性の法則に従うように選ばれたOH-、NO3-、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4-、SO42-、CO32-(これらに限定されない)を含む無機又は有機アニオンであり;nは整数であり;xは、0〜1(典型的には0.01〜0.5、より典型的には0.1〜0.4)の任意の有理数であってよく;そしてyは、0〜10の任意の有理数であってよい。層状複水酸化物の具体例としては、Mg2Al(OH)6・1/2CO3・yH2O(なお、これは、x=0.33の場合[Mg1-xAlx(OH)2]0.165 CO3・yH2Oと等価である);Zn2Al(OH)6・1/2CO3・yH2O;Mg2Al(OH)6・NO3・yH2O;Mg2Al(OH)6・Cl・yH2O;Zn2Al(OH)6・NO3・yH2O;LiAl2(OH)6・Cl・yH2O、及びNaAl2(OH)6・Cl・yH2Oが挙げられる。);
【0015】
3)層状ケイ酸質材料、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、カオリン、マガダイト、ヘクトライト、バーミキュライト、スメクタイト、バイデライト、フルオロヘクトライト、タルク、ムスコバイト、及びサポナイトによって例示される天然又は合成クレイ無機物、又は一般式:
[M1,M2]nZ4O10(OH)2yH2OwM3
によって与えられる材料
(上記式中、M1は、Al、Fe、Mn又はCoから選択された金属であり、そしてM2は、Mg、Fe、Ni、Zn又はLiから選択された金属であり;ZはAl又はSiであり;H2Oは化学吸収水であり、そしてM3は、例えばK、Na、Li又はCa(これらに限定されない)から選択することができるカチオンである。nは0〜4の数であり、yは0〜10の数であり、そしてwは0〜1の数である。)
を含む。
【0016】
層状物質のインターカレーションは、ホストマトリックス内部に捕捉されたゲスト分子又はイオンから成る複合材料を形成する。ホスト固形物、典型的には数オングストローム厚にすぎない層は、ゲスト分子のサイズに正比例して層間剥離して膨潤する。層内部に捕捉されたゲスト分子の数は、分子のサイズ、並びにゲスト及びホストの電荷によって決定される。プロセスは可逆性なので、ゲスト分子又はイオンを複合系から後で回収することができる。
【0017】
上記のように、ホスト材料は、インターカレートされるべき特定の分子に応じて選択される。層状ホスト材料中への所望の機能性-活性化合物のインターカレーションを容易にするために、所望の化合物の誘導体を調製して、化合物が正電荷又は負電荷を得るようにすることが必要な場合がある。カチオンを調製するために、このことは、機能性-活性化合物をオニウムイオン基、例えばアミン、第四アミン、又はホスホニウムイオンで誘導体化することにより達成することができる。アニオンを調製するためには、親機能性-活性化合物に、カルボン酸官能基又はスルホン酸官能基、又は硫酸基を結合することができる。
【0018】
本発明の水性分散体は、インターカレートされた機能性-活性化合物を含み、そして特定の実施態様の場合、薬学的に活性な化合物を含む。薬学的に活性な化合物は、薬物、抗生物質、抗菌剤などの物質、生体材料(例えばアミノ酸、ペプチド、タンパク質、治療薬、ホルモン、酵素、成長因子)、及び遺伝物質(例えばRNA、DNA、又はオリゴヌクレオチド)を含むことができる。
【0019】
インターカレーションが可逆性プロセスであるので、高イオン強度又は水性分散体のものとは有意に異なるpHを有する環境にインターカレート複合体(intercalated complex)が暴露されると直ちに、インターカレートされた機能性-活性化合物が放出され得る。反応の可逆性は、活性化学物質の制御放出のために利用されており、米国特許第6,329,529号明細書、国際公開第02/47729号パンフレット、及び本出願と同時に出願された整理番号88101の明細書に詳細に論じられている。放出プロセスは、2つの一般的なメカニズム、すなわち(i)イオン交換、及び(ii)pH切換えを介して発生する。第1の放出メカニズムは、下記等式(アニオンをインターカレートする層状ホストの場合)に示されているように、薬学的に活性の物質(以後(P-A)と呼ぶ)のイオン交換を介して発生する。
【0020】
【化2】

【0021】
このプロセスは、カチオン(M+)がP-Aと交換されることを除いて、カチオン性(P-A)に関しても事実上同一である。このプロセスは、平衡プロセスであり、そして塩又はイオンの添加が、上記等式の平衡状態をル・シャトリエの原理によって右側に駆動することができる。従って、P-Aの放出は、インターカレート組成物と周囲環境との間のイオン強度の勾配によって駆動される。従って、インターカレート層状材料(intercalated layered material)、又はインターカレート層状材料を含む分散体が標的環境(例えば生理学的環境、例えば血液、胃、粘膜など)と接触させられると、標的環境のイオン強度が初期環境のイオン強度よりも高い場合には、イオン交換を介した放出が直ちに始まる。
【0022】
多くの事例において、P-Aの放出を制御すること、例えば放出を時間遅延すること、又は極めて特異的な標的、例えば細胞又は腫瘍内だけに標的放出することが望ましい。層状ホスト材料の層間スペースからの機能性-活性化合物の放出速度の制御を容易にするために、本発明の水性分散体は、層状ホスト材料及び所望の機能性-活性化合物に加えて、機能性-活性化合物とは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子もしくはポリマーを含有し、そして5 mS/cmを超える(より好ましくは10 mS/cmを超える)イオン強度を有する。付加的なイオンのうちのいくつかは、層状ホスト材料中に共にインターカレートされる。インターカレートされた付加的なイオンは、下記一般式:
ホスト(P-A)x(A-I)y
を有するインターカレート組成物を形成することができ;
上記式中、A-Iは付加的なイオンを表す。付加的なイオンは、これらが、本発明による機能性-活性化合物送達組成物が使用される標的系内に存在するイオンを含むように、選択されるのが好ましい。例えばヒトの血液は、0.9重量パーセントNaClを含有する高塩性である。この場合、付加的なイオンは、塩化物イオン(アニオン性P-Aをインターカレートする層状ホストの場合)及びNa-イオン(カチオン性P-Aをインターカレートする層状ホストの場合)を含むことが好ましい。
【0023】
本発明の組成物の付加的なイオンは、標的系内に置かれたときにインターカレート組成物が受けるイオン強度勾配を低減するために役立ち、そして放出速度(上記等式における平衡状態)が制御される。本発明の水性分散体のイオン強度は、10 mS/cmを超えることが好ましい。本発明の水性分散体のイオン強度は、本発明の組成物が採用される標的系のイオン強度に等しい又はこれを上回ることが、さらに好ましい。この場合、イオン交換を介してP-Aを放出するための駆動力(イオン強度勾配)はなく、従ってPH変化の二次メカニズムを用いて、P-Aを有意な程度に制御可能に放出することができる。Choy他によって指摘されているように(米国特許第6,329,525号明細書)、細胞内部のpHが生理学的pH(pH 7.4)よりも相当に高酸性であるため、pH変化による放出メカニズムを用いることにより、P-Aを細胞(例えば腫瘍細胞)内に直接的に放出することができる。生理学的条件のイオン強度を適合させることにより、本発明のインターカレート組成物は、イオン交換によるP-Aの放出を事実上停止させるか、或いは有意に減小させ、そしてpH放出メカニズムだけが作用するのを可能にする。P-Aの放出をただ1つのメカニズムに限定するこの方法は、このように、細胞及び細胞組織に、そして腫瘍細胞に直接的に標的を定めてP-Aを送達することを容易にする。
【0024】
標的システムのイオン性組成物に基づいて選択されることに加えて、水性分散体中に採用される付加的なイオンは、採用された層状ホスト材料のタイプに基づいて選択されなければならない。層状複水酸化物又はヒドロキシ複塩を含む層状ホスト材料に関しては、機能性-活性化合物イオンとは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子又はポリマーは、好ましくは、Cl-、NO3-、ホスフェート、スルフェート、又は負電荷アミノ酸、例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸を含むことができる。リン酸水素金属塩を含む層状ホスト材料に関しては、機能性-活性化合物イオンとは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子又はポリマーは、好ましくは、Na+、K+、Ca++、Mg++、又は正電荷アミノ酸、例えばリシン、アルギニン、又はヒスチジンを含むことができる。
【0025】
本発明の水性分散体は、層状ホスト材料と機能性-活性有機化合物とを含み、機能性-活性化合物に対する層状ホスト材料の質量比が20未満(好ましくは10未満)であり、組成物中の機能性-活性化合物の少なくとも50%(好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%)が、層状ホスト材料の層の間に存在する。十分に高いインターカレーション(高いローディング)百分率という要件と、層状ホストの比較的低い比率という要件とのこのような組み合わせは、高レベルの層状ホスト材料を必要とすることなしに、分散体が機能性-活性化合物の効率的且つ制御可能な送達を可能にすることを保証する。1つの特定の実施態様によれば、ナノ粒子形態の層状ホスト材料(容積加重平均粒子直径が500 nm未満、好ましくは200 nm未満、そして最も好ましくは100 nm未満である)を使用することにより、比較的低い層状ホスト材料レベルで高いインターカレーション百分率を容易にすることができる。カチオン性クレイが、例えばLaponiteの商品名のナノ粒子として商業的に入手可能であり、そしてこのようなナノ粒子状カチオン性クレイを、カチオン性機能性-活性化合物と組み合わせて、層状ホスト材料として使用することができる。別の具体的な実施態様によれば、同一譲受人による、同時出願された同時係属中の米国特許出願第10/850,489号明細書に従って調製されたナノ粒子状アニオン性クレイを、アニオン性機能性-活性化合物との組み合わせで使用することができる。前記明細書に開示されているように、本発明のこのような実施態様に基づいて使用するためのナノ粒子状アニオン性クレイ粒子組成物及びコロイド分散体は、M2+及びM3+金属、又はM1+及びM3+金属、及び塩基の塩溶液を、粒子沈澱容器内の分散媒質中に高剪断混合ゾーン内で、同時に合体させることを含むプロセスによって、調製することができる。
【0026】
一実施態様に基づく本発明の水性分散体は、インターカレートされた機能性-活性分子又はポリマー、さらには、塩又はイオン化された分子もしくはポリマーを提供する。分散体は、容積加重平均粒子直径が500 nm未満である安定コロイド分散体である。例において言及される安定コロイドは、粒子サイズ測定によって粒子の凝集が認められない、そして、その調製後に長時間(例えば1週間以上)にわたってコロイドの目に見える凝集又は沈降がない粒子懸濁液と定義される。一次粒子が元の直径の4倍を上回る平均粒子サイズ直径に凝集すること及び調製から1週間以内にコロイドが目に見える状態で沈降することによる粒子成長は、不安定コロイドを示唆する。安定コロイドはさらに好ましくは、生理学的条件下で凝集することはなく、ひいては、血流中又は粘膜内で均質に分散することができる。安定コロイドの平均粒子直径は500 nm未満である。このサイズの粒子は静脈内注射、又は粘膜を介した用途に適している。500 nmよりも著しく大きい粒子は、このような用途に適していない。本発明のインターカレートされた粒子の平均粒子直径は200 nm未満、より好ましくは100 nm未満であることが好ましい。このような小さな直径を有する粒子は、血管壁、特に腫瘍に近接した血管壁を、EPR効果によって通過することができる。ナノ粒子キャリヤの利点は、Moghimi他、Pharmacological Reviews, 53, 283(2001)によって論じられている。
【0027】
比較的低い層状ホスト材料レベルで、機能性-活性化合物を高い百分率でインターカレートすることは、2004年4月30日付けで出願された、同一譲受人による同時係属中の米国特許出願第10/837,189号明細書に開示されているように、アニオン性クレイの焼成生成物から層状複水酸化物材料を「再構成合成(reconstruction synthesis)」することを介して、インターカレート化合物分散体を調製することによって容易にすることもできる。「焼成」という用語は、層状複水酸化物又はヒドロタルサイトが通常は300℃を上回る温度で、分解するまで加熱される加熱プロセスを意味する。ヒドロタルサイトの熱処理は、下記反応に従って焼成生成物を生成する。
【0028】
【化3】

【0029】
焼成生成物は、非晶質混合酸化物であり、そして水中に入れると、室温においてでさえ再水和する強い傾向があり、そして好適なアニオンが存在する場合には、層状複水酸化物を再形成することになる。焼成された層状複水酸化物のこの独自の特性はしばしば「再構成合成」と呼ばれる。硝酸アニオンで層状複水酸化物を再構成することは、下記等式で示される。
【0030】
【化4】

【0031】
一般に、層状複水酸化物の再構成は、下記等式に従って達成することができる。
【0032】
【化5】

【0033】
非晶質固形物は、好適な有機又は無機アニオンを含有する水性媒体中に再分散され、そして、新しいアニオンの層状インターカレーション化合物を形成するように「再構成」することができる。「新しい」アニオン種は、これが特定の化学的、薬学的又は生物学的機能を付与するように選ぶことができ、そして本発明の「機能性-活性」化合物を表す。反応は等式(6)に示された化学量論を有し、そして一般には、室温で、又は室温よりも僅かに高い温度で容易に進行する。反応は、多くの場合には完了まで進行し、そして副生成物を有しない点で非常に注目すべきものである。従って、濾過及び洗浄を必要としない水性の化学物質送達システム及び/又は薬物送達システムを提供し、調製がシンプルであり且つ低廉であるという理由から、層状複水酸化物の焼成誘導体が好ましい。
【0034】
このような再構成プロセスにおいて、焼成された層状複水酸化物(以後c-LDHと呼ぶ)は、反応して機能性-活性化合物をインターカレートするのに必要な比(モルイオン交換容量から計算して)を上回る化学量論比で、水性分散体中に提供される。この再構成インターカレーションは、従って、電荷中立性のために、二次アニオン、例えば硝酸アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオン、又は過塩素酸アニオン(ClO4-)の添加を必要とする。本発明の組成物中に提供される、機能性-活性化合物とは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子又はポリマーは、二次アニオンとして好都合に使用することができ、そして、焼成された層状複水酸化物の再構成中に、機能性-活性化合物とともにインターカレートすることができる。この反応は、第1のタイプのアニオン性クレイに関して以下のように説明することができる。
【0035】
【化6】

【0036】
上記式中、(n)(a) + (p)(b) = xであり、(p)(b)/(n)(a)は好ましくは0.75〜5.0である。アニオン2が酸、例えばHNO3、HCl、HBr又はHClO4の形態で提供される。反応混合物のpHが5〜9の間で制御されることがさらに好ましい。このことは、インターカレーション反応がpH依存性であり、そして、脱インターカレーションが、この範囲以外のpH値で発生し得る(相殺手段の不在)という理由で好ましい。
【0037】
本発明の種々の実施態様に基づく組成物は任意には、さらにポリマーを含むこともできる。ポリマーは、例えば層状ホスト材料粒子からの機能性-活性化合物の放出速度をさらに遅くするために採用することができる。ポリマーは、丸剤又はその他の摂取可能な錠剤又はカプセル剤内に組成物をカプセル封入するために使用することができる。ポリマーが生体適合性ポリマーであることが好ましい。本発明の実施に適したポリマーとしては、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、デキストラン、ポリリシン、多糖、ポリペプチド、ゼラチン、アルブミン、キトサン、セルロース、ヒドロゲル、ポリビニルアルコール、水系ポリウレタン、ポリエステル、ナイロン、高ニトリル樹脂、ポリエチレン-ポリビニルアルコールコポリマー、ポリスチレン、エチルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、水性ラテックス、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホネート、ポリアミド、ポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリアクリロニトリルが挙げられる。
【実施例】
【0038】
例1.1〜1.6:LDH及びサリチル酸
下記例では、高いイオン強度で調製されたインターカレート分散体(本発明の例)と、低いイオン強度で調製されたインターカレート分散体(比較例)との封鎖効率を比較する。組成Mg0.7Al0.3(OH)2・0.15CO3・0.6H2Oを有するヒドロタルサイト(層状複水酸化物)を、Sud Chemieから得た。この材料を、使用前に500℃で3時間にわたって焼成し、そして窒素雰囲気中で冷却した。焼成された生成物は以後c-LDHと呼び、これは概算組成Mg0.62Al0.26Oを有する。例に採用された蒸留水は、使用前に沸騰させることにより溶解二酸化炭素を排除した。
【0039】
比較例1.1:0.50 gのサリチル酸と4.0当量(2.16 g)のc-LDHとを、蒸留水50.00 ml中で組み合わせ、そしてpHを7.0〜7.5に調節した。反応混合物のイオン強度は1.4 mS/cmであった。懸濁液を大気から密封し、そして50℃で一晩撹拌しておいた。次いで懸濁液1.00 gを、0.9 %NaCl水溶液9.00 mlに添加した。封鎖効率を見極めるために、結果として生じた希釈分散体を7500 rpmで遠心分離し、上澄みのアリコートを液体クロマトグラフィLCによって試験した。分析は、上澄み中のインターカレートされていないゲストの濃度を提供する。ホストによるゲスト(機能性-活性化合物)の取込み率(パーセント)を下記のように計算した:
%取込み率=(公称ゲスト濃度 - 実測濃度)/(公称ゲスト濃度)
結果を表1で報告する。
【0040】
比較例1.2:0.50 gのサリチル酸と6.0当量(3.24 g)のc-LDHとを、蒸留水50.00 ml中で組み合わせ、そしてpHを7.0に調節した。反応混合物のイオン強度は2.1 mS/cmであった。懸濁液を大気から密封し、そして50℃で一晩撹拌しておいた。次いで懸濁液1.00 gを、0.9 %NaCl水溶液9.00 mlに添加し、そして上述のように分析した。結果を表1に示す。
【0041】
比較例1.3:0.50 gのサリチル酸と8.0当量(4.31 g)のc-LDHとを、蒸留水50.00 ml中で組み合わせ、そしてpHを7.0に調節した。反応混合物のイオン強度は2.4 mS/cmであった。懸濁液を大気から密封し、そして50℃で一晩撹拌しておいた。次いで懸濁液1.00 gを、0.9 %NaCl水溶液9.00 mlに添加し、そして上述のように分析した。結果を表1に示す。
【0042】
例1.4:0.50 gのサリチル酸と4.0当量(2.16 g)のc-LDHとを、0.9 % NaCl水溶液50.00 g中で組み合わせ、そしてpHを7.0〜7.5に調節した。反応混合物のイオン強度は14.3 mS/cmであった。懸濁液を大気から密封し、そして50℃で一晩撹拌しておいた。次いで懸濁液1.00 gを、0.9 %NaCl水溶液9.00 mlに添加し、そして上述のように分析した。結果を表1に示す。
【0043】
例1.5:0.50 gのサリチル酸と6.0当量(3.24 g)のc-LDHとを、0.9 % NaCl水溶液50.00 g中で組み合わせ、そしてpHを7.0〜7.5に調節した。反応混合物のイオン強度は14.6 mS/cmであった。懸濁液を大気から密封し、そして50℃で一晩撹拌しておいた。次いで懸濁液1.00 gを、0.9 %NaCl水溶液9.00 mlに添加し、そして上述のように分析した。結果を表1に示す。
【0044】
例1.6:0.50 gのサリチル酸と8.0当量(4.31 g)のc-LDHとを、0.9 % NaCl水溶液50.00 g中で組み合わせ、そしてpHを7.0〜7.5に調節した。反応混合物のイオン強度は15.6 mS/cmであった。懸濁液を大気から密封し、そして50℃で一晩撹拌しておいた。次いで懸濁液1.00 gを、0.9 %NaCl水溶液9.00 mlに添加し、そして上述のように分析した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1のデータは、本発明の方法によって調製された組成物が、機能性-活性化合物の著しく改善された封鎖効率を有することを示す。ヒドロタルサイトの化学量論比が極めて高い場合でも、全ての比較例の封鎖度は不十分である。
【0047】
例2.1〜2.3:ナノ粒子LDHコロイド及びオリゴヌクレオチド
下記例は、オリゴヌクレオチドに対するLDHの重量比が望ましく低い状態で、手つかずのナノ粒子状LDHコロイドによって、高イオン強度で、効率的なオリゴヌクレオチド封鎖がもたらされることを実証する。
【0048】
LDHアニオン性クレイコロイドの調製:Research Disclosure、第382巻、1996年2月、第38213項に記載されたタイプの、速度2000 rpmで採用された高効率プロペラ様混合装置で撹拌された蒸留水400 mlを含有する3.0 L容器内に、13分間にわたって1分当たり50 mlで2.0 M MgCl2:6H2O溶液を650.0 ml;13分間にわたって1分当たり50 mlで1.0 M AlCl3:6H2O溶液を650.0 ml;及び、反応混合物のpHを8.5〜9.0の間に維持するのに十分な速度で5.0 M NaOH溶液を、同時に添加した。5.0 NaOHの添加速度は約50〜55 ml/分でわずかに変化した。添加が完了した後、次いで、分散体のイオン伝導率が約0.1 mS未満になるまで、分散体を透析濾過によって洗浄して塩を除去した。結果として得られら分散体は、10 nmの標準偏差で23 nmの容積加重平均粒子サイズ直径23 nmを有し、1週間の静置後に沈降しなかった。このことは、分散体が安定コロイドであることを示す。50パーセンタイル平均粒子サイズは23 nmであり(すなわち粒子の50%が23 nm未満のサイズである)、粒子の95%は55 nm未満であった。最終分散体の固形分(百分率)は2.4重量%であった。
【0049】
例2.1〜2.3の場合、分子量6,361 Daのオリゴヌクレオチド(Hp Cプローブ)を、Integrated DNA Technologies, Inc.から得た。オリゴヌクレオチドの溶液を、40.0 μg/mlの濃度のオリゴヌクレオチドと、0.9重量パーセントのNaCl(イオン強度=13.7 mS/cm)とを有するように調製した。260 nmにおけるこの溶液の光学濃度は、1.2であった。
【0050】
例に採用された蒸留水は、使用前に沸騰させることにより溶解二酸化炭素を排除した。
【0051】
例2.1. 3.0 mlのオリゴヌクレオチド溶液(40.0 μg/ml)中に、上述のように調製されたクレイコロイド5.0 μL(0.005 ml)を添加した。懸濁液を18時間にわたって静置しておき、次いで懸濁液を、ベックマン・マイクロ遠心分離装置を使用して、30,000分子量カットオフ・フィルターを通して透析濾過した。次いで濾液を可視分光法によって試験し、そしてインターカレートされたオリゴヌクレオチドの百分率を下記のように測定した:100 % x [1.20 - 測定O.D]/1.20。結果を表2に報告する。
【0052】
例2.2. 3.0 mlのオリゴヌクレオチド溶液(40.0 μg/ml)中に、上述のように調製されたクレイコロイド10.0 μL(0.005 ml)を添加した。懸濁液を18時間にわたって静置しておき、次いで懸濁液を、ベックマン・マイクロ遠心分離装置を使用して、30,000分子量カットオフ・フィルターを通して透析濾過した。次いで濾液を可視分光法によって試験し、そしてインターカレートされたオリゴヌクレオチドの百分率を下記のように測定した:100 % x [1.20 - 測定O.D]/1.20。結果を表2に報告する。
【0053】
例2.3. 3.0 mlのオリゴヌクレオチド溶液(40.0 μg/ml)中に、上述のように調製されたクレイコロイド25.0 μL(0.005 ml)を添加した。懸濁液を18時間にわたって静置しておき、次いで懸濁液を、ベックマン・マイクロ遠心分離装置を使用して、30,000分子量カットオフ・フィルターを通して透析濾過した。次いで濾液を可視分光法によって試験し、そしてインターカレートされたオリゴヌクレオチドの百分率を下記のように測定した:100 % x [1.20 - 測定O.D]/1.20。結果を表2に報告する。
【0054】
【表2】

【0055】
表2のデータは、オリゴヌクレオチドに対するコロイドの重量比が比較的低くても、高イオン強度オリゴヌクレオチド溶液に添加されたナノ粒子状コロイドのオリゴヌクレオチド封鎖効率は有利に極めて高いことを実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に分散された層状ホスト材料の粒子および機能性-活性有機化合物を含む水性分散体であって、機能性-活性化合物に対する層状ホスト材料の質量比が20未満であり、当該分散体中の前記機能性-活性有機化合物の少なくとも50%が層状ホスト材料粒子の層の間にインターカレートされており、そしてさらに、前記水性媒体が、前記機能性-活性化合物とは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子もしくはポリマーを含み、かつ、5 mS/cmを超えるイオン強度を有することを特徴とする水性分散体。
【請求項2】
前記機能性-活性化合物が薬学的に活性な分子又はポリマーを含む、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項3】
前記機能性-活性化合物が、薬物、抗生物質、抗菌剤、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、治療薬、ホルモン、酵素、成長因子、RNA、DNA、又はオリゴヌクレオチド化合物を含む、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項4】
前記分散体が、容積加重平均粒子直径が500 nm未満である安定なコロイド分散した層状ホスト材料粒子を含む、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項5】
前記機能性-活性化合物のインターカレーション前の前記層状ホスト材料が、一般式:
[M2+1-xM3+x(OH)2]x+(x/n)An-・yH2O
又は
[M1+M3+2(OH)6]1+(1/n)An-・yH2O
(上記式中、M1+は一価金属であり;M2+は二価金属であり;そしてM3+は三価金属であり;Aは、電荷の中立性の法則に従うように選ばれた無機又は有機アニオンであり;nは整数であり;xは、0〜1の任意の有理数であり;そしてyは、0〜10の任意の有理数である)により表される層状複水酸化物を含む、請求項4に記載の水性分散体。
【請求項6】
M1+がLi、Na、K、Rb、およびCsから選択された一価金属であり;M2+がCa、Mg、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、およびCdから選択された二価金属であり;そしてM3+がCr、Fe、Al、Ga、In、およびMoから選択された三価金属である、請求項5に記載の水性分散体。
【請求項7】
前記層状複水酸化物が一般式[M2+1-xM3+x(OH)2]x+(x/n)An-・yH2Oにより表され、そして上記式中、M2+はCa、Mg、及びZnから選択され、そしてM3+はAlである、請求項6に記載の水性分散体。
【請求項8】
AがOH-、NO3-、F-、Cl-、Br-、I-、ClO4-、SO42-、およびCO32-から選択された、請求項5に記載の水性分散体。
【請求項9】
AがNO3-又はCl-から選択された、請求項8に記載の水性分散体。
【請求項10】
前記層状複水酸化物が一般式[M2+1-xM3+x(OH)2]x+(x/n)An-・yH2Oにより表され、そして上記式中、xは0.01〜0.5の有理数である、請求項5に記載の水性分散体。
【請求項11】
前記層状複水酸化物粒子が200 nm未満の容積加重平均粒子サイズ直径を有する、請求項5に記載の水性分散体。
【請求項12】
前記層状複水酸化物粒子が100 nm未満の容積加重平均粒子サイズ直径を有する、請求項5に記載の水性分散体。
【請求項13】
前記分散体が、容積加重平均粒子直径が200 nm未満である安定なコロイド分散した層状ホスト材料粒子を含む、請求項4に記載の水性分散体。
【請求項14】
前記分散体が、容積加重平均粒子直径が100 nm未満である安定なコロイド分散した層状ホスト材料粒子を含む、請求項4に記載の水性分散体。
【請求項15】
前記層状ホスト材料が、Mg2Al(OH)6・1/2CO3・yH2O、Zn2Al(OH)6・1/2CO3・yH2O、Mg2Al(OH)6・NO3・yH2O、又はZn2Al(OH)6・NO3・yH2Oの焼成生成物から再構成されたものである、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項16】
前記イオン強度が10 mS/cmを超える、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項17】
前記層状ホスト材料が、層状複水酸化物又はヒドロキシ複塩を含み、前記機能性-活性化合物イオンとは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子もしくはポリマーが、Cl-、NO3-、ホスフェート、スルフェート、又は負電荷アミノ酸、例えばアスパラギン酸又はグルタミン酸を含む、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項18】
前記層状ホスト材料が、リン酸水素金属塩、クレイ又は層状シリケートを含み、前記機能性-活性化合物イオンとは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子もしくはポリマーが、Na+、K+、Ca++、Mg++、又は正電荷アミノ酸、例えばリシン、アルギニン、又はヒスチジンを含む、請求項1に記載の水性分散体。
【請求項19】
所望の機能性-活性有機化合物を標的系に送達する方法であって、前記標的系に請求項1に記載の水性分散体を送達することを含み、前記水性分散体は、層状ホスト材料中にインターカレートされた前記所望の機能性-活性有機化合物と、前記機能性-活性化合物とは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子もしくはポリマーとを含み、前記付加的な可溶性塩又はイオン化された分子もしくはポリマーは、前記機能性-活性化合物が送達される前記標的系内にも存在する、所望の機能性-活性有機化合物を標的系に送達する方法。
【請求項20】
前記標的系が生体系であり、前記機能性-活性化合物とは異なる付加的な可溶性塩又はイオン化された分子もしくはポリマーがナトリウム又は塩化物イオンを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記標的系が動物又はヒトの血液を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記水性分散体が0.9 %のNaClを含む、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2007−538098(P2007−538098A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527473(P2007−527473)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/017726
【国際公開番号】WO2005/112887
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】