機能性分子、機能性分子合成用アミダイド、及び標的物質解析方法
【課題】異なる置換基を有する複数種の修飾ヌクレオチド単位を含んでいても、PCR等による増幅を容易に行うことのできる機能性分子、及び前記機能性分子の合成に使用される機能性分子合成用アミダイド、並びにそれらを用いた標的物質解析方法を提供すること。
【解決手段】置換基が塩基から脱離可能であるように導入された修飾ヌクレオチド単位を含む機能性分子;置換基が塩基から脱離可能であるように導入されてなる、前記機能性分子の製造に用いられる機能性分子合成用アミダイド;機能性分子のランダムプールを作製するランダムプール作製工程と、所望の機能性分子を選別する選別工程と、選別された機能性分子を増幅する増幅工程とを含む標的物質解析方法であって、前記増幅工程前に、前記選別された機能性分子から置換基を脱離する脱離工程を含む標的物質解析方法;である。
【解決手段】置換基が塩基から脱離可能であるように導入された修飾ヌクレオチド単位を含む機能性分子;置換基が塩基から脱離可能であるように導入されてなる、前記機能性分子の製造に用いられる機能性分子合成用アミダイド;機能性分子のランダムプールを作製するランダムプール作製工程と、所望の機能性分子を選別する選別工程と、選別された機能性分子を増幅する増幅工程とを含む標的物質解析方法であって、前記増幅工程前に、前記選別された機能性分子から置換基を脱離する脱離工程を含む標的物質解析方法;である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的物質に対して親和性を示し、薬品、ドラッグデリバリー、バイオセンサー、遺伝子の発現量の制御、遺伝子異常による疾病の克服、遺伝子により翻訳される蛋白質の機能解明、反応触媒の開発などの広い分野で好適であり、特に蛋白質の解析に好適な機能性分子、及び前記機能性分子の合成に使用される機能性分子合成用アミダイド、並びにそれらを用いた標的物質解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の全遺伝子情報が既に明らかになった。その結果、研究者や科学者の興味の中心は遺伝子産物である蛋白質の解析に移行している。蛋白質の解析においては、対象となる個々の蛋白質に対してアフィニティーを有する分子を得ることによって、初めて実質的な解析が可能になるといっても過言ではない。しかしながら、細胞中には非常に多種類の蛋白質が存在し、そのアミノ酸配列や構造が未知であるものも多い。
ある特定の蛋白質に対してアフィニティーを有する分子を得る最も一般的な手法は、動物の免疫系を用い、アフィニティー抗体を作製する方法である。しかし、この方法では動物を用いるため、多量の蛋白質や多大な工程、費用が必要となり、しかもある特定の物質に対するアフィニティー抗体は生成されないという欠点があった。
【0003】
このような問題を解決するために、生物に依存しないアプタマー法(別名:SELEX法)も提案されているが、この方法で得られる分子は、特定の蛋白質に対しては強い相互作用を示すものの、必ずしも全ての蛋白質に応用可能なものではなかった。そこで本発明者らは、前記アプタマー法を改良し、修飾核酸類似体を用いた修飾アプタマー法を提案している(特許文献1参照)。しかしながら、この修飾アプタマー法においては、異なる置換基を有する複数種の修飾ヌクレオチド単位を含む修飾核酸類似体を用いるため、標的物質とアフィニティーを有する修飾核酸類似体を増幅しようとした際には、個々の置換基の特性を考慮しなくてはならず、良好なPCR増幅条件を選定することが困難であった。また、標的物質に強く結合する修飾核酸類似体ほどPCRで増幅しにくいという欠点もあり、更なる改良が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】国際公開第2003/078623号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、蛋白質の解析等の広い分野で好適であり、異なる置換基を有する複数種の修飾ヌクレオチド単位を含む場合であっても、PCR等による増幅を容易に行うことのできる機能性分子、及び前記機能性分子の合成に使用される機能性分子合成用アミダイド、並びにそれらを用いた標的物質解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としては、後述の付記に記載の通りである。即ち、
本発明の機能性分子は、塩基に置換基が導入された修飾ヌクレオチド単位を含み、前記置換基が前記塩基から脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする。前記機能性分子では、標的物質との結合に関与する前記置換基を、例えば標的物質との結合の後に、アンモニア処理等を行うことにより前記塩基から脱離することができる。そのため、前記機能性分子は、例えば異なる置換基を有する複数種の修飾ヌクレオチド単位を含む場合であっても、アンモニア処理等を行うことによりそれらの置換基を前記塩基から脱離することができ(前記機能性分子が天然の核酸と同様な構造となる)、各々の置換基の影響を考慮することなく、PCR増幅を容易に行うことが可能となる。
【0007】
本発明の機能性分子合成用アミダイドは、本発明の前記機能性分子を製造するためのアミダイドであり、置換基が塩基から脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする。前記機能性分子合成用アミダイドでは、標的物質との結合に関与する前記置換基が、例えば標的物質との結合の後に、アンモニア処理等を行うことにより前記塩基から脱離可能であるように前記塩基に導入されてなる。そのため、前記機能性分子合成用アミダイドを用いることによれば、アンモニア処理等を行うことにより前記置換基を脱離することができ、そのためPCR増幅を容易に行うことが可能な本発明の前記機能性分子を製造することが可能となる。
また、前記機能性分子合成用アミダイドは、前記置換基が更に保護基で保護されていてもよい。この場合、前記保護基は、前記置換基を脱離しない程度の緩やかな条件下で(例えばアセトニトリル中でのDBU処理等により)脱保護可能であることが好ましい。前記機能性分子合成用アミダイドを用いて前記機能性分子を製造する際に、前記置換基が脱離しない程度の緩やかな条件下で前記保護基の脱保護を行うことにより、標的物質との結合に関与する前記置換基が安定して残存した、本発明の前記機能性分子を製造することが可能となる。
【0008】
本発明の標的物質解析方法は、本発明の前記機能性分子合成用アミダイドを用いて機能性分子(本発明の前記機能性分子)を合成し、前記機能性分子のランダムプールを作製するランダムプール作製工程と、前記ランダムプールから標的物質と親和性を有する機能性分子を選別する選別工程と、前記標的物質と親和性を有する機能性分子を増幅する増幅工程とを含み、前記増幅工程前に、前記標的物質と親和性を有する機能性分子から置換基を脱離する脱離工程を含むことを特徴とする。前記標的物質解析方法では、前記選別工程後、前記増幅工程前に、アンモニア処理等を行うことにより前記機能性分子から前記置換基を脱離する。これにより、前記機能性分子は、天然の核酸と同様な構造となり、置換基の影響を考慮することなく、PCR増幅を容易に行うことが可能となる。
また、前記標的物質解析方法では、前記機能性分子の合成の際に、前記機能性分子合成用アミダイドの置換基が脱離しない程度の緩やかな条件下で(例えばアセトニトリル中でのDBU処理等により)保護基の脱保護を行うことが好ましい。前記脱保護は、前記置換基が脱離しない程度の緩やかな条件下で行われることから、標的物質との結合に関与する前記置換基はこの段階では安定して残存する。このため、続く、標的物質と親和性を有する機能性分子を選別する選別工程を、安定に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、蛋白質の解析等の広い分野で好適であり、異なる置換基を有する複数種の修飾ヌクレオチド単位を含む場合であっても、PCR等による増幅を容易に行うことのできる機能性分子、及び前記機能性分子の合成に使用される機能性分子合成用アミダイド、並びにそれらを用いた標的物質解析方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(機能性分子)
本発明の機能性分子は、塩基に置換基が導入された修飾ヌクレオチド単位を含む機能性分子であって、前記置換基が前記塩基から脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする。
【0011】
<置換基>
前記置換基は、その末端に脱離され易い構造を有してなり、前記脱離され易い構造を介して前記塩基に導入されている。前記脱離され易い構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、芳香族カルボン酸構造、脂肪族カルボン酸構造などが好ましい。また、前記塩基がアデニン(A)又はシトシン(C)である場合には、前記脱離され易い構造としては芳香族カルボン酸構造が好ましく、前記塩基がグアニン(G)である場合には、前記脱離され易い構造としては脂肪族カルボン酸構造が好ましい。
前記芳香族カルボン酸構造の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4−(アルキルカルボキシルアミノメチル)安息香酸、4−((2−アルキルカルボキシルアミノ)エトキシ)安息香酸などが挙げられる。前記脂肪族カルボン酸構造の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、N−アルキルカルボキシルβ−アラニン、N−アルキルカルボキシルピペリジンカルボン酸などが挙げられる。
【0012】
前記置換基は、前記したような脱離され易い構造を介して前記塩基に導入されていれば、その他の構造については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然又は非天然のアミノ酸、金属錯体、蛍光色素、酸化還元色素、スピンラベル体、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、下記式(1)〜(10)で表される基などの構造を含むことができる。
【0013】
【化3】
【0014】
前記天然又は非天然のアミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、グリシン、セリンなどが挙げられる。
前記金属錯体としては、金属イオンに配位子が配位した化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Ruビピリジル錯体、フェロセン錯体、ニッケルイミダゾール錯体などが挙げられる。
前記蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フルオレセイン系列、ローダミン系列、エオシン系列、NBD系列等の蛍光色素などが挙げられる。
前記酸化還元色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロイコアニリン、ロイコアントシアニン等のロイコ色素などが挙げられる。
前記スピンラベル体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄N−(ジチオカルボキシ)サルコシン(sarcosine)、TEMPO(テトラメチルピペリジン)誘導体などが挙げられる。
前記炭素数1〜10のアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
これらは、置換基で更に置換されていてもよい。
【0015】
<塩基>
前記塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)などが挙げられる。また、前記塩基に前記置換基が導入される位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アデニン塩基の6位、シトシン塩基の6位、グアニン塩基の2位などが好ましい。
【0016】
<脱離>
前記置換基は、前記塩基から脱離可能であるように導入されていれば、その脱離方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アンモニア処理による方法、NaOH等によるアルカリ処理による方法、ふっ酸及びフッ化物塩処理による方法、ヒドラジン処理による方法、光照射による方法などが挙げられる。これらの中でも、アンモニア処理による方法が、特に好ましい。
前記アンモニア処理時のアンモニア濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1〜30%が好ましく、10〜30%がより好ましく、20〜30%が特に好ましい。前記アンモニア処理時の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば0〜80℃が好ましく、25〜60℃がより好ましく、50〜55℃が特に好ましい。前記アンモニア処理の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば15分間〜24時間が好ましく、1〜16時間がより好ましく、4〜8時間が特に好ましい。
【0017】
更に、前記置換基は、前記したような脱離方法では脱離可能であるが、一方で、後述するような脱保護方法(例えば、非プロトン性溶媒中で嵩高い塩基により脱保護を行う方法、より具体的には、アセトニトリル中でDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)により処理を行う方法)では脱離されないことが好ましい。前記したような脱保護方法により前記置換基が脱離されてしまうと、前記機能性分子を所望の標的物質と結合させる前に(前記機能性分子の製造時に)、前記標的物質との結合に必要な置換基が失われてしまい、前記標的物質との結合を行うことができなくなることがある。
【0018】
<製造>
前記機能性分子は、例えば、後述する本発明の機能性分子合成用アミダイドを用いることにより好適に製造することができる。前記機能性分子の製造方法については、後述する本発明の機能性分子合成用アミダイドの項目に詳述するものとする。
【0019】
<構成>
前記機能性分子は、複数のヌクレオチド単位から構成されてなり、その少なくとも一部に、前記したような、塩基に脱離可能に導入された置換基を有する修飾ヌクレオチド単位を含む。
前記機能性分子を構成するヌクレオチド単位の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、10〜200個が好ましく、20〜100個がより好ましく、30〜80個が特に好ましい。なお、前記機能性分子を構成するヌクレオチド単位のうち、前記したような置換基を有する修飾ヌクレオチド単位の割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記機能性分子は、類似DNA配列及び類似RNA配列のいずれであってもよく、また、前記類似DNA配列及び類似RNA配列は一本鎖であってもよいし二本鎖であってもよい。
【0020】
<効果>
前記機能性分子は、標的物質との結合に関与する置換基が、塩基に脱離可能に導入されているため、標的物質との結合後、アンモニア処理等によって前記置換基を前記塩基から脱離することによって、天然核酸と同様な構造とすることができ、その結果、前記機能性分子をPCR等により容易に増幅することが可能となる。なお、本発明においては、前記機能性分子について、置換基を有する状態のもの、及び、置換基が脱離された後の状態のもの(天然核酸と同様な状態のもの)のいずれをも「機能性分子」と称し、文脈に応じて適宜使い分けるものとする。
従来の機能性分子では、その構造に異なる置換基を有する二種以上の修飾ヌクレオチド単位を含む場合、各々の置換基の特性を考慮してPCR増幅条件の選定を行う必要があり、そのため、至適PCR増幅条件の選定が非常に困難であった。これに対して、本発明の前記機能性分子によれば、その構造に異なる置換基を有する二種以上の修飾ヌクレオチド単位を含む場合であっても、それらの置換基をアンモニア処理等によって一度に脱離し、天然核酸と同様な構造とすることができるために、容易に至適PCR増幅条件を選定することが可能となる。
【0021】
(機能性分子合成用アミダイド)
本発明の機能性分子合成用アミダイドは、本発明の前記機能性分子の製造に用いられるアミダイドであって、下記一般式(I)で表され、置換基Yが塩基Xから脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする。
【0022】
【化4】
ただし、前記一般式(I)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Qは水素原子又は水酸基を表す。
【0023】
ここで、前記「置換基」、前記「塩基」、前記「脱離」としては、前記した本発明の機能性分子の項目に記載した通りである。
【0024】
また、前記機能性分子合成用アミダイドは、機能性分子合成時における置換基Yの不要な反応を防ぐ目的から、前記置換基Yが更に保護基Zで保護されてなる、下記一般式(II)で表される機能性分子合成用アミダイドであってもよい。
【0025】
【化5】
ただし、前記一般式(II)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Zは保護基を表し、Qは水素原子又は水酸基を表す。
【0026】
<保護基>
前記機能性分子合成用アミダイドが前記保護基Zを有する場合、前記保護基Zは、前記置換基Yを脱離しない条件下で脱保護可能であることが好ましく、前記保護基としては、例えば、フルオレニルメチルカルボニル基、β−シアノエチルカルボニル基などが挙げられる。前記置換基Yを脱離しない条件下で前記保護基Zが脱保護可能であれば、標的物質との結合に必要な置換基が、前記標的物質との結合前に(前記機能性分子の製造における脱保護時に)失われてしまうことがなく、安定して前記標的物質と結合可能な前記機能性分子を製造することが可能となる。
【0027】
<脱保護>
前記置換基Yを脱離せず、前記保護基Zを脱保護する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非プロトン性溶媒中で嵩高い塩基により処理を行う方法、テトラブチルアンモニウムフルオライド処理による方法などが挙げられる。これらの中でも、非プロトン性溶媒中で嵩高い塩基により処理を行う方法が、特に好ましい。前記非プロトン性溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。また、前記嵩高い塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)、テトラメチルグアニジンなどが挙げられる。これらの中でも、前記保護基は、前記アセトニトリル中、前記DBUにより脱保護可能であることが好ましい。また、この場合、前記保護基の脱保護に要するDBU濃度としては、0.5M以下が好ましく、0.1M以下がより好ましく、0.01M以下が特に好ましい。前記脱保護に要する時間としては、8時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましく、15分間以内が特に好ましい。
【0028】
<具体例>
前記機能性分子合成用アミダイドの具体例としては、例えば、下記構造式(1)〜(5)のいずれかで表されるものなどが挙げられるが、前記機能性分子合成用アミダイドとしては、これらに限定されるものではない。
【0029】
【化6】
【0030】
【化7】
【0031】
【化8】
【0032】
【化9】
【0033】
【化10】
【0034】
<機能性分子合成用アミダイドの製造>
前記機能性分子合成用アミダイドの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する実施例に記載の合成方法等により製造することができる。
【0035】
<機能性分子の製造>
前記機能性分子合成用アミダイドは、本発明の前記機能性分子の製造に好適に利用可能である。
前記機能性分子合成用アミダイドを用いて前記機能性分子を製造する方法としては、特に制限はなく、例えば、公知の核酸合成方法を適宜利用することができる。具体的には、例えば、前記機能性分子合成用アミダイドの単量体を用い、ジエステル法、トリエステル法、ホスファイト法、ホスホロアミダイト法、H−ホスホネート法、チオホスファイト法などにより、前記機能性分子合成用アミダイドの二量体や三量体等のオリゴマーを合成し、これらを重合する方法などが挙げられる。前記オリゴマーを重合する方法としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNAシンセサイザー(DNA自動合成装置)を用いる方法などが好適に挙げられる。
【0036】
なお、前記機能性分子合成用アミダイドのオリゴマーの具体例として、例えば、下記構造式(6)〜(10)のいずれかで表されるもの(いずれも二量体)などが挙げられるが、前記オリゴマーとしては、これらに限定されるものではない。
【0037】
【化11】
【0038】
【化12】
【0039】
【化13】
【0040】
【化14】
【0041】
【化15】
【0042】
前記機能性分子の製造においては、前記重合により前記機能性分子を合成した後、前記機能性分子合成用アミダイドに付されていた前記保護基の脱保護を行うことが好ましい。この場合には、前記したように、前記脱保護は、前記置換基を脱離しない程度の緩やかな条件下で行われることが好ましい。前記置換基を脱離しない程度の緩やかな条件下で前記保護基が脱保護されることにより、標的物質との結合に必要な置換基が、前記標的物質との結合前に(前記機能性分子の製造時に)失われてしまうことがなく、安定して前記標的物質と結合可能な前記機能性分子を製造することが可能となる。
【0043】
前記機能性分子の製造には、前記機能性分子合成用アミダイドが少なくとも一部に用いられていれば、特に制限はなく、目的に応じて更にその他のアミダイドが用いられていてもよい。前記その他のアミダイドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、前記したような、前記機能性分子合成用アミダイドの置換基が脱離されない程度の緩やかな条件下で、保護基の脱保護が可能なアミダイドを使用することが好ましい。このようなアミダイドとしては、例えば、特願2007−000576号明細書に記載の核酸類似体合成用アミダイド(例えば、後述する実施例に示すIIIa、IIIg、IIIc)などを用いることができる。
【0044】
<効果>
前記機能性分子合成用アミダイドは、置換基がアンモニア処理等によって塩基から容易に脱離する構造を有しているため、これを用いて機能性分子を合成することにより、例えば標的物質との結合後に、前記置換基を脱離することができ、そのためPCR増幅を容易に行うことが可能な、本発明の前記機能性分子を提供することができる。
また、好ましくは、前記機能性分子合成用アミダイドは、前記置換基が更に保護基で保護されてなり、かつ前記保護基が前記置換基を脱離しない程度の緩やかな条件下で脱保護可能であるために、標的物質との結合に必要な置換基が、前記標的物質との結合前に(前記機能性分子の製造における脱保護時に)失われてしまうことがなく、安定して前記標的物質と結合可能な前記機能性分子を製造することができる。
【0045】
(標的物質解析方法)
本発明の標的物質解析方法は、本発明の前記機能性分子合成用アミダイドを用いて機能性分子(本発明の前記機能性分子)を合成し、前記機能性分子のランダムプールを作製するランダムプール作製工程と、前記ランダムプールから標的物質と親和性を有する機能性分子を選別する選別工程と、前記標的物質と親和性を有する機能性分子を増幅する増幅工程と、必要に応じてその他の工程とを含み、前記増幅工程前に、前記標的物質と親和性を有する機能性分子から置換基を脱離する脱離工程を含むことを特徴とする。
前記標的物質解析方法における、前記「ランダムプール作製工程」、前記「選別工程」、前記「増幅工程」、及び前記「その他の工程」の各工程は、例えば、国際公開第2003/078623号パンフレットの内容を参照して好適に行うことができる。具体的には、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0046】
<ランダムプール作製工程>
前記ランダムプール作製工程は、前記機能性分子合成用アミダイドから機能性分子を合成し、前記機能性分子のランダムプールを作製する工程である。
ここで、前記「機能性分子合成用アミダイド」、前記「機能性分子」、及び前記「機能性分子合成用アミダイドから機能性分子を合成する方法(機能性分子の製造方法)」としては、前記した本発明の機能性分子の項目、及び本発明の機能性分子合成用アミダイドの項目にそれぞれ記載した通りである。前記のようにして機能性分子を合成した結果、得られた機能性分子を含む反応物は、精製・分離等することなくそのまま、機能性分子のランダムプールとして使用可能である。
【0047】
なお、前記ランダムプール作製工程においては、前記機能性分子を合成した後に、前記機能性分子合成用アミダイドにおける保護基の脱保護が行われることが好ましい。この場合には、前記したように、前記脱保護は、前記機能性分子合成用アミダイドにおける置換基を脱離しない程度の緩やかな条件下で行われることが好ましい。前記置換基を脱離しない程度の緩やかな条件下で前記保護基が脱保護されることにより、標的物質との結合に必要な置換基が、前記標的物質との結合前に(前記機能性分子の製造時に)失われてしまうことがなく、安定して前記標的物質と結合可能な前記機能性分子を製造することが可能となる。
前記保護基の脱保護の方法としては、前記置換基が脱離しない条件で行うことのできる方法であれば特に制限はなく、前記保護基及び前記置換基の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、非プロトン性溶媒中で嵩高い塩基により処理を行う方法、テトラブチルアンモニウムフルオライド処理による方法などが挙げられる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2種以上を行ってもよい。これらの中でも、前記脱保護の方法としては、非プロトン性溶媒中で嵩高い塩基により処理を行う方法が、特に好ましい。
前記「非プロトン性溶媒」、前記「嵩高い塩基」、及び前記「非プロトン性溶媒中での前記嵩高い塩基による処理の方法」の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記した本発明の機能性分子合成用アミダイドの項目に記載した通りである。
【0048】
<選別工程>
前記選別工程は、前記ランダムプール作製工程において作製された前記機能性分子のランダムプールの中から、所望の標的物質と親和性のある機能性分子を選別する工程である。前記選別の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法から適宜選択することができ、例えば、アフィニティークロマトグラフィー、フィルター結合、液−液分割、ろ過、ゲルシフト、密度勾配遠心分離などの各種方法が挙げられる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2種以上を行ってもよい。これらの中でも、前記選別の方法としては、アフィニティークロマトグラフィーが、特に好ましい。
【0049】
なお、前記標的物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、タンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質、ポリペプチド、脂質、多糖類、リポ多糖類、核酸、ホルモン、環境ホルモン、細胞、ウィルス、薬物、これらの複合体などが好適に挙げられる。
【0050】
<脱離工程>
前記脱離工程は、本発明の標的物質解析方法において特徴的な工程であり、後述する増幅工程前に行われる。前記脱離工程では、例えば前記選別工程で選別された機能性分子から、置換基を脱離する。増幅工程前に前記置換基の脱離が行われることにより、前記機能性分子は天然核酸と同様な構造となり、PCR等による増幅が容易となる。
【0051】
前記置換基の脱離の方法としては、特に制限はなく、前記置換基の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、アンモニア処理による方法、NaOH等によるアルカリ処理による方法、ふっ酸及びフッ化物塩処理による方法、ヒドラジン処理による方法、光照射による方法などが挙げられる。これらの中でも、アンモニア処理による方法が、特に好ましい。これらは1種単独で行ってもよいし、2種以上を行ってもよい。
前記「アンモニア処理」の具体的な方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記機能性分子の項目に記載した通りである。
また、前記置換基を脱離した結果、その脱離箇所において、別の種類の基への置換が生じる場合もあるが、PCR等の進行を妨げず、前記機能性分子が増幅可能であれば、このような別の種類の基が生じていても構わない。
【0052】
―保護基の脱保護方法と置換基の脱離方法との組合せ―
なお、前記ランダムプール作製工程における前記脱保護方法と、前記脱離工程における前記脱離方法との組み合わせとしては、前記置換基を脱離すること無しに脱保護を行うことが可能な脱保護方法と、その後、残存した前記置換基を脱離することが可能な脱離方法との組み合わせであれば、特に制限はなく、使用する機能性分子合成用アミダイドの構造等に応じて適宜選択することができる。例えば、前記組み合わせとしては、脱保護方法が非プロトン性溶媒中での嵩高い塩基による処理(例えば、アセトニトリル中でのDBU処理)であり、脱離方法がアンモニア処理である組み合わせ;脱保護方法がテトラブチルアンモニウムフルオライド処理であり、脱離方法が光照射である組み合わせ;などが好ましい。
また、例えば温度や時間等の反応条件を調整することにより、前記脱保護を、前記置換基が脱離されない程度の緩やかな条件で行うことができる場合には、前記脱保護方法と前記脱離方法とを、同じ種類の方法を用いて行うこともできる。
【0053】
<増幅工程>
前記増幅工程は、前記選別工程により選別した前記機能性分子の塩基配列を決定すること等を目的に、前記機能性分子を増幅する工程である。前記増幅工程において、前記機能性分子は、前もって行われた前記脱離工程により、前記置換基が脱離され、天然核酸と同様な状態となっているために、PCR等の増幅条件の選定が非常に容易である。
そのため、前記増幅の方法としては、対象となる前記機能性分子のオリゴヌクレオチド配列の数を増やすことができれば、特に制限はなく、当該技術分野において公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、LCR(Ligase chain Reaction)法、3SR(Self−sustained Sequence Replication)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法、RT−PCR法、ICAN法、LAMP法などが挙げられる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2種以上を行ってもよい。
また、前記機能性分子の塩基配列の決定方法としても、特に制限はなく、当該技術分野において公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、遺伝子クローニングによる方法、チェーンターミネーター法、サンガー法、ジデオキシ法等によるDNAシーケンサー(DNA塩基配列自動決定装置)などを利用することができる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2種以上を行ってもよい。
【0054】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、翻訳工程などが挙げられる。
前記翻訳工程は、例えば、前記増幅工程で決定した前記機能性分子の塩基配列を翻訳し、前記標的物質との親和性を有した機能性分子の構造を確認する工程である。前記翻訳は、例えば、国際公開第2003/078623号パンフレットの記載を参照して行うことができる。
例えば、予め前記機能性分子合成用アミダイドの二量体や三量体等のオリゴマーに導入させた置換基の種類を、対応表(オリゴマーの塩基配列と、置換基の種類との対応表)等で定めておく。次いで、前記オリゴマーを重合させることにより得られた前記機能性分子を、標的物質と結合させ、前記標的物質と親和性を有する機能性分子を選別した後に、前記機能性分子から置換基を脱離し、PCR増幅、シーケンシング(塩基配列決定)を行う。前記塩基配列の結果から、前記機能性分子に導入されていた置換基の種類を、前記対応表等に基づいて確認(翻訳)することができ、これに基づき、前記標的物質と親和性を有する機能性分子を複製等することが可能となる。
【0055】
<効果>
本発明の標的物質解析方法では、前記増幅工程の前に、前記機能性分子の置換基を脱離する前記脱離工程を含むため、前記増幅工程の際には、前記機能性分子は、天然核酸と同様な状態となっており、したがって、PCR等により容易に前記機能性分子を増幅し、その塩基配列を確認、分析等することができる。
更に、本発明の標的物質解析方法では、好ましくは、前記ランダムプール作製工程において、前記機能性分子合成用アミダイドの前記保護基を前記置換基が脱離しない条件下で脱保護する。そのため、前記選別工程の際には、前記標的物質との結合に関与する置換基は、前記機能性分子の表面に露出した状態で安定に残存しており、そのため、前記機能性分子と前記標的物質との結合を安定に行うことができる。
このように、本発明の標的物質解析方法では、好ましくは、前記保護基及び前記置換基が二段階で外され、そのため、全体を通して標的物質の解析を安定かつ効率的に行うことができる(一段階目:ランダムプール作製工程における保護基の脱保護、二段階目:脱離工程における置換基の脱離)。
【0056】
[用途]
本発明の機能性分子、機能性分子合成用アミダイド、及び標的物質解析方法は、薬品、ドラッグデリバリー、バイオセンサー、遺伝子の発現量の制御、遺伝子異常による疾病の克服、遺伝子により翻訳される蛋白質の機能解明、反応触媒の開発などの様々な分野で好適であると考えられる。例えば、特定の代謝系に関与する蛋白質に親和性のある分子を同定することにより、多機能薬品、高精度ドラッグデリバリーを行う物質を提供することができると考えられる。また、特定のDNA配列に親和性のある分子を同定することにより、一連の遺伝子の発現量を制御することができるようになり、遺伝子産物の相互作用を解き明かすことができると期待される。更に、反応中間体をミミックした分子に親和性のある分子を同定することにより、不安定な反応中間体を経由する多段階反応を、効率よく進めることができるようになると考えられる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0058】
(実施例1:機能性分子合成用アミダイドの合成)
本発明の機能性分子合成用アミダイド(IXLys(前記構造式(1))、IXLeu(前記構造式(2))、IXPhe(前記構造式(3))、IXGlu(前記構造式(4))、XVI(前記構造式(5)))、及び前記機能性分子合成用アミダイドを用いたアミダイド二量体(XIILeu(前記構造式(6))、XIIPhe(前記構造式(7))、XIIGlu(前記構造式(8))、XIILys(前記構造式(9))、XIX(前記構造式(10)))を、それぞれ以下のようにして合成した。
【0059】
【化16】
【0060】
【化17】
【0061】
<Ia、Ig、Icの合成>
Nメチルアミノ酪酸塩酸塩7.68g(50mmol)を50mLの水に溶かし、NaHCO34.20g(50mmol)を加え、10分間攪拌した。この溶液に炭酸9−フルオレニルメチルスクシンイミジル13.49g(40mmol)、アセトニトリル100mL、及び硫酸水素テトラブチルアンモニウム0.14g(0.4mmol)を加え、室温で2日間攪拌した。溶液を減圧濃縮した後、塩化メチレンで希釈し、水で洗浄した。塩化メチレン溶液を減圧濃縮し、脱水アセトニトリルで2回共沸した後、脱水塩化メチレンで共沸した。残渣を200mLの脱水塩化メチレンに溶かし、0℃でN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド4.13g(20mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。不溶物をろ過した後、減圧濃縮し、残渣Aを得た。
デオキシヌクレオシド(dA、dG、又はdC、20mmol)を脱水ピリジンで懸濁し、減圧濃縮する操作を3回行った。残渣を100mLの脱水ピリジンで懸濁し、0℃でトリメチルクロロシラン8.45mL(66mmol)を加え、室温で1時間攪拌した後、再び0℃に冷却し、本溶液を残渣Aに導入した。反応混合物を、室温で2時間攪拌した。氷冷下、20mLの水を加え、室温で一晩攪拌した。本溶液を塩化メチレンで希釈し、水で洗浄した。塩化メチレン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→4:1)にて精製し、目的物Ia 6.91g(60%)、Ig 9.43g(80%)、Ic 8.80g(80%)を得た。
【0062】
【化18】
【0063】
<IIa、IIg、IIcの合成>
Ia、Ig、又はIc、10mmolを脱水ピリジンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を50mLの脱水ピリジンに溶解し、氷冷下、4,4’−ジメトキシトリチルクロリド3.36g(10.5mmol)を加え、室温にて4時間攪拌した。続いてメタノール10mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、塩化メチレンで希釈し、水で洗浄した。塩化メチレン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール98:2→9:1)にて精製し、目的物IIa 7.92g(91%)、IIg 8.35g(94%)、IIc 7.64g(90%)を得た。
【0064】
【化19】
【0065】
<IIIa、IIIg、IIIcの合成>
IIa、IIg又はIIc、5mmolを脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタン混合溶液に溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン30.5mg(0.25mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.05mL(6.0mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト1.23mL(5.5mmol)の5mL塩化メチレン溶液を15分間以上かけ滴下した。混合溶液を0℃(IIa、IIc)又は室温(IIg)で2時間攪拌した。続いてメタノール5mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮し、残渣を25mLの酢酸エチルに溶解し、−30℃で500mLのヘキサンに15分間以上かけ滴下した。不溶物をろ過し、冷ヘキサンで洗浄し、濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物IIIa 5.22g(97%)、IIIg 5.22g(96%)、IIIc 4.70g(94%)を得た。
【0066】
【化20】
【0067】
<IVa、IVg、IVcの合成>
IIa、IIg、又はIIc、5mmolを脱水ジオキサンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を25mLの脱水ジオキサンに溶解し、10℃でジメチルアミノピリジン48.9mg(0.4mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド2.06g(10mmol)、及びレブリン酸1.02mL(10mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。反応溶液に2mLのメタノールを加え、30分間攪拌した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を5mLのジクロロメタンで懸濁し、不溶物をろ過した。濾液を減圧濃縮し、残渣を100mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、2mLのトリフロロ酢酸を加え、0℃で2時間攪拌した後、10mLの脱水メタノール及び5mLの脱水ピリジンを加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール98:2→4:1)にて精製し、目的物IVa 3.00g(89%)、IVg 2.96g(86%)、IVc 2.95g(91%)を得た。
【0068】
【化21】
【0069】
<Vの合成>
4−(FMOC−アミノメチル)安息香酸28.0g(75mmol)を375mLの脱水ジクロロメタンに懸濁し、アルゴン雰囲気下、オキサリルクロリド12.9mL(150mmol)、及びジメチルフォルムアミド0.12mL(1.5mmol)を加え、室温で7時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、残渣に脱水トルエンを加えた後、減圧濃縮し、残渣Aを得た。
デオキシアデノシン1水和物24.2g(90mmol)を脱水ピリジンで懸濁し、減圧濃縮する操作を3回行った。残渣を375mLの脱水ピリジンで懸濁し、0℃でトリメチルクロロシラン38.0mL(297mmol)を加え、室温で1時間攪拌した後、再び0℃に冷却し、本溶液を残渣Aに導入した。反応混合物を4時間以上かけ室温に昇温し、室温で一晩攪拌した。氷冷下、75mLの水を加え、室温で8時間攪拌した。本溶液を減圧濃縮した。残渣を塩化メチレンで希釈し、水で洗浄した。塩化メチレン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール9:1→4:1)にて精製し、目的物V 15.5g(34%)、少量のV’と思われる不純物を含むV 18.2g、粗収率74%を得た。
【0070】
<VIの合成>
V 15.5g(25.5mmol)を脱水ピリジンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を130mLの脱水ピリジンに溶解し、氷冷下、4,4’−ジメトキシトリチルクロリド9.09g(26.8mmol)を加え、室温にて4時間攪拌した。続いてメタノール25mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル−エタノール39:1→19:1)にて精製し、目的物VI 21.3g(92%)を得た。
同様の手法で,少量のV’を含むV 18.2gからはVI 22.4gを得た。よって2段階収率64%でVIを得た。
【0071】
<VIIの合成>
VI 1.82g(2.0mmol)を脱水ジオキサンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を15mLの脱水ジオキサンに溶解し、10℃でジメチルアミノピリジン19.5mg(0.16mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド825mg(4.0mmol)、及びレブリン酸0.41mL(4.1mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。反応溶液に2mLのメタノールを加え、30分間攪拌した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を2mLのジクロロメタンで懸濁し、不溶物をろ過した。濾液を減圧濃縮し、残渣を40mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、0.8mLのトリフロロ酢酸を加え、0℃で2時間攪拌した後、4mLの脱水メタノール、及び2mLの脱水ピリジンを加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール98:2→9:1)にて精製し、目的物VII 1.15g(82%)を得た。
【0072】
<IXLysの合成>
VI 4.54g(5mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン30.5mg(0.25mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.13mL(6.5mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト1.34mL(6.0mmol)の5mL塩化メチレン溶液を15分間以上かけ滴下した。混合溶液を0℃で2時間、攪拌した。続いてメタノール5mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を60mLの酢酸エチルに溶解し、−30℃で500mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄した。濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物IXLys 5.23g(94%)を得た。
【0073】
【化22】
【0074】
<VIIILeuの合成>
VI 8.20g(9.12mmol)を46mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジアザビシクロウンデセン1.63mL(10.9mmol)を加え、室温にて3時間攪拌し、反応混合物Aを得た。
4−メチル吉草酸1.38mL(10.9mmol)を33mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、N−ヒドロキシこはく酸イミド1.39g(12.0mmol)を加え、氷冷下、ジシクロヘキシルカルボジイミド2.37g(11.5mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。不溶物を濾別し、濾液を反応混合物Aに加えた。反応混合物を室温にて4時間攪拌した。続いてメタノール5mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール49:1→17:3)にて精製し、目的物VIIILeu 5.03g(70%)を得た。
【0075】
<IXLeuの合成>
VIIILeu 3.92g(5mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン30.5mg(0.25mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.13mL(6.5mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト1.34mL(6.0mmol)の5mL塩化メチレン溶液を15分間以上かけ滴下した。混合溶液を0℃で2時間、攪拌した。続いてメタノール5mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を60mLの酢酸エチルに溶解し、−30℃で、500mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄した。濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物IXLeu 4.74g(97%)を得た。
【0076】
<XLeuの合成>
IXLeu 4.19g(4.25mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を21mLの脱水アセトニトリルに溶解し、溶液Aを得た。IVa 2.86g(4.25mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を21mLの脱水アセトニトリルに溶解し、溶液Aに加えた。反応混合物にテトラゾール1.49g(21.3mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。続いてメタノール2.1mLを加え、30分間攪拌した。溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン89mL、ピリジン26mL及び水13mLに溶解し、ヨウ素3.77g(14.9mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合物に380mLのジクロロメタンを加え、亜硫酸ナトリウム9.37g(74.3mmol)を加え、室温で15分間攪拌した。反応混合物に約25gの硫酸ナトリウムを加え、よく攪拌した後、不溶物を濾過した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール49:1→9:1)にて精製し、目的物XLeu 4.38g(66%)を得た。
【0077】
<XILeuの合成>
XLeu 4.18g(2.66mmol)を27mLのピリジンに溶解し、氷冷下、ヒドラジン1水和物1.29mL(26.7mmol)の希釈溶液27mL(ピリジン:酢酸=3:2)を加え、室温で20分間攪拌した。氷冷下、アセトン26mLを加え、0℃で10分間攪拌した後、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→17:3)にて精製し、目的物XILeu 3.05g(79%)を得た。
【0078】
<XIILeuの合成>
XILeu 870mg(0.59mmol)を脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタン混合溶液に溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を6.0mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン3.6mg(0.029mmol)、ジイソプロピルエチルアミン139μL(0.80mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト158mL(0.629mmol)を加えた。混合溶液を、0℃で3時間攪拌した。続いてメタノール0.6mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮し、残渣を9mLの酢酸エチルに溶解し、−30℃で、59mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄し、濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物XIILeu 885mg(89%)を得た。
【0079】
【化23】
【0080】
<VIIIPheの合成>
VI 8.06g(8.87mmol)を45mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジアザビシクロウンデセン1.59mL(10.6mmol)を加え、室温にて3時間攪拌し、反応混合物Aを得た。
N−ヒドロキシこはく酸イミド1.38g(11.7mmol)の32mL脱水ジクロロメタン溶液に、トリエチルアミン1.72mL(12.4mmol)を加え、氷冷下、フェニルアセチルクロリド1.41mL(10.6mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。本溶液を反応混合物Aに加えた。反応混合物を室温にて4時間攪拌した。続いてメタノール5mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール49:1→9:1)にて精製し、目的物VIIIPhe 6.79g(86%)を得た。
【0081】
<IXPheの合成>
VIIIPhe 4.83g(6mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を48mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン37mg(0.30mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.36mL(7.8mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト1.61mL(7.2mmol)の12mL塩化メチレン溶液を15分間以上かけ滴下した。混合溶液を0℃で2時間攪拌した。続いてメタノール6mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を60mLの酢酸エチルに溶解し、−30℃で、600mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄した。濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物IXPhe 5.51g(quant)を得た。
【0082】
<XPheの合成>
IXPhe 4.90g(4.87mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を25mLの脱水アセトニトリルに溶解し、溶液Aを得た。IVc 3.14g(4.87mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を25mLの脱水アセトニトリルに溶解し、溶液Aに加えた。反応混合物にテトラゾール1.71g(24.3mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。続いてメタノール2.5mLを加え、30分間攪拌した。溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン102mL、ピリジン30mL、及び水15mLに溶解し、ヨウ素4.33g(17.0mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合物に440mLのジクロロメタンを加え、亜硫酸ナトリウム10.7g(85.2mmol)を加え、室温で15分間攪拌した。反応混合物に約30gの硫酸ナトリウムを加え、よく攪拌した後、不溶物を濾過した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール49:1→17:3)にて精製し、目的物XPhe 5.10g(67%)を得た。
【0083】
<XIPheの合成>
XPhe 4.85g(3.10mmol)を31mLのピリジンに溶解し、氷冷下、ヒドラジン1水和物1.50mL(26.7mmol)の希釈溶液31mL(ピリジン:酢酸=3:2)を加え、室温で20分間攪拌した。氷冷下、アセトン30mLを加え、0℃で10分間攪拌した後、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→4:1)にて精製し、目的物XIPhe 4.05g(89%)を得た。
【0084】
<XIIPheの合成>
XIPhe 1.00g(0.68mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を7.0mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン5.6mg(0.034mmol)、ジイソプロピルエチルアミン154μL(0.88mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト182μL(0.82mmol)を加えた。混合溶液を、0℃で3時間攪拌した。続いてメタノール0.7mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮し、残渣を10mLの酢酸エチル:ジクロロメタン=4:1に溶解し、−30℃で、68mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄し、濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物XIIPhe 890mg(78%)を得た。
【0085】
【化24】
【0086】
<VIIIGluの合成>
VI 2.49g(2.74mmol)を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジアザビシクロウンデセン0.41mL(2.74mmol)を加え、室温にて3時間攪拌した。反応混合物に、トリフロロ酢酸245μL及びトリエチルアミン230μLのジクロロメタン10mL希釈溶液を加え、反応混合物Aを得た。
モノフルオレニルメチルクルタレート1.02g(3.29mmol)及びN−ヒドロキシこはく酸イミド417mg(3.62mmol)の10mL脱水ジクロロメタン溶液に、氷冷下、ジシクロヘキシルカルボジイミド712mg(3.45mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。不溶物を濾別し、濾液を反応混合物Aに加えた。反応混合物を室温にて2時間攪拌した。続いてメタノール5mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール49:1→9:1)にて精製し、目的物VIIIGlu 1.86g(69%)を得た。
【0087】
<IXGluの合成>
VIIIGlu 490mg(0.5mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を10mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン3.1mg(25μmol)、ジイソプロピルエチルアミン128μL(0.75mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト134μL(0.6mmol)を加えた。混合溶液を、室温で2時間攪拌した。続いてメタノール2mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を4mLのトルエンに溶解し、−30℃で50mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄した。濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物IXGlu 548mg(93%)を得た。
【0088】
<XGluの合成>
VIIIGlu 2.91g(2.97mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を10mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、溶液Aを得た。5’−(2−シアノエチルジイソプロピルホスホロアミジル)−3’レブロイルチミジン1.93g(3.56mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を15mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、溶液Aに加えた。反応混合物にテトラゾール1.04g(14.9mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。続いてメタノール1.0mLを加え、30分間攪拌した。溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン56mL、ピリジン16mL、及び水8mLに溶解し、ヨウ素2.64g(10.4mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合物に250mLのジクロロメタンを加え、亜硫酸ナトリウム6.54gを加え、室温で15分間攪拌した。反応混合物に約15gの硫酸ナトリウムを加え、よく攪拌した後、不溶物を濾過した。濾液を減圧濃縮し、得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール97:3→9:1)にて精製し、目的物XGlu 3.67g(86%)を得た。
【0089】
<XIGluの合成>
XGlu 3.67g(2.56mmol)を20mLのピリジンに溶解し、氷冷下、ヒドラジン1水和物1.2mLの希釈溶液30mL(ピリジン:酢酸=3:2)を加え、室温で10分間攪拌した。氷冷下、アセトン20mLを加え、0℃で10分間攪拌した後、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→4:1)にて精製し、目的物XIGlu 2.81g(82%)を得た。
【0090】
<XIIGluの合成>
XIGlu 600mg(0.45mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を10mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン2.7mg(0.023mmol)、ジイソプロピルエチルアミン115μL(0.67mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト120μL(0.54mmol)を加えた。混合溶液を、室温で3時間攪拌した。続いてメタノール0.9mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を5.5mLのジクロロメタンに溶解し、−30℃で、50mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄し、濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物XIIGlu 655mg(95%)を得た。
【0091】
【化25】
【0092】
<XLysの合成>
VII 1.00g(1.42mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を15mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、5’−(2−シアノエチルジイソプロピルホスホロアミジル)−チミジン1.25g(1.68mmol)を加えた。反応混合物にテトラゾール497mg(7.10mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。続いてメタノール0.5mLを加え、30分間攪拌した。溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン42mL、ピリジン12mL、及び水6mLに溶解し、ヨウ素1.26g(4.97mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合物に120mLのジクロロメタンを加え、亜硫酸ナトリウム3.12gを加え、室温で15分間攪拌した。反応混合物に約11gの硫酸ナトリウムを加え、よく攪拌した後、不溶物を濾過した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール97:3→9:1)にて精製し、目的物XLys 1.73g(89%)を得た。
【0093】
<XILysの合成>
XLys 1.72g(1.26mmol)を10mLのピリジンに溶解し、氷冷下、ヒドラジン1水和物580μLの希釈溶液15mL(ピリジン:酢酸=3:2)を加え、室温で10分間攪拌した。氷冷下、アセトン10mLを加え、0℃で10分間攪拌した後、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→9:3)にて精製し、目的物XILys 1.33g(83%)を得た。
【0094】
<XIILysの合成>
XILys 1.32g(1.04mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン6.4mg(0.052mmol)、ジイソプロピルエチルアミン115μL(0.67mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト270μL(1.57mmol)を加えた。混合溶液を、室温で4時間攪拌した。続いてメタノール2.0mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を8.0mLの酢酸エチルに溶解し、−30℃で、104mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄し、濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物XIILys 1.16g(76%)を得た。
【0095】
【化26】
【0096】
<XIIIの合成>
FMOC−β−アラニン12.5g(40mmol)を200mLの脱水塩化メチレンに溶かし、0℃でN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド4.13g(20mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。不溶物をろ過した後、減圧濃縮し、残渣Aを得た。
デオキシグアノシン1水和物5.71g(20mmol)を脱水ピリジンで懸濁し、減圧濃縮する操作を3回行った。残渣を100mLの脱水ピリジンで懸濁し、0℃でトリメチルクロロシラン8.45mL(66mmol)を加え、室温で1時間攪拌した後、再び0℃に冷却し、本溶液を残渣Aに導入した。反応混合物を室温で2時間攪拌した。氷冷下、20mLの水を加え、室温で一晩攪拌した。本溶液を塩化メチレンで希釈し、水で洗浄した。塩化メチレン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→4:1)にて精製し、目的物XIII 8.90g(79%)を得た。
【0097】
<XIVの合成>
XIII 8.41g(15mmol)を脱水ピリジンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を75mLの脱水ピリジンに溶解し、氷冷下、4,4’−ジメトキシトリチルクロリド5.34g(15.8mmol)を加え、室温にて4時間攪拌した。続いてメタノール15mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→9:1)にて精製し、目的物XIV 11.5g(89%)を得た。
【0098】
<XVの合成>
XIV 7.13g(8.27mmol)を17mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、トリエチルシラン1.58mL、及びジアザビシクロウンデセン1.24mL(8.27mmol)を加え、室温にて3時間攪拌した。反応混合物にトリフロロ酢酸762μL及びピリジン401μLの脱水ジクロロメタン5mL希釈溶液を加え、反応混合物Aを得た。
4−(FMOC−アミノメチル)安息香酸3.35g(9.92mmol)を40mLの脱水ジクロロメタンに懸濁し、アルゴン雰囲気下、オキサリルクロリド1.70mL(18.8mmol)、及びジメチルフォルムアミド15μL(0.19mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、残渣に脱水トルエンを加えた後、減圧濃縮した。残渣を50mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール1.61g(11.9mmol)を加えた後、氷冷し、ピリジン1.20mLを加えた。室温で1時間攪拌後、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、12mL脱水ジクロロメタンを用いて反応混合物Aに加え、室温で3時間攪拌した。続いてメタノール10mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール49:1→9:1)にて精製し、目的物XV 5.20g(63%)を得た。
【0099】
<XVIの合成>
XV 5.10g(5.12mmol)を脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタン混合溶液に溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を40mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン31mg(0.26mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.3mL(7.6mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト1.3mL(5.8mmol)を加えた。混合溶液を、室温で2時間攪拌した。続いてメタノール15mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を55mLの酢酸エチルに溶解し、−30℃で、515mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄した。濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物XVI 5.78g(94%)を得た。
【0100】
<XVIIの合成>
XVI 2.13g(1.78mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、溶液Aを得た。IVc 1.15g(1.78mmol)を脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を、8mLの脱水ジクロロメタンを用いて溶液Aに加えた。反応混合物にテトラゾール623mg(8.9mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。続いてメタノール1.0mLを加え、30分間攪拌した。溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン28mL、ピリジン8mL、及び水4mLに溶解し、ヨウ素1.6g(6.3mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合物に100mLのジクロロメタンを加え、亜硫酸ナトリウム4.0gを加え、室温で15分間攪拌した。反応混合物に約10gの硫酸ナトリウムを加え、よく攪拌した後、不溶物を濾過した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→9:1)にて精製し、目的物XVII 2.09g(67%)を得た。
【0101】
<XVIIIの合成>
XVII 1.92g(1.10mmol)を12mLのピリジンに溶解し、氷冷下、ヒドラジン1水和物0.51mLの希釈溶液14mL(ピリジン:酢酸=3:2)を加え、室温で10分間攪拌した。氷冷下、アセトン10mLを加え、0℃で10分間攪拌した後、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール93:7→17:3)にて精製し、目的物XVIII 1.54g(85%)を得た。
【0102】
<XIXの合成>
XVIII 830mg(0.50mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を10mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン3.1mg(0.025mmol)、ジイソプロピルエチルアミン103μL(0.60mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト123μL(0.55mmol)を加えた。混合溶液を、室温で3時間攪拌した。続いてメタノール1.0mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を5mLのジクロロメタンに溶解し、−30℃で、50mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄し、濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物XIX 882mg(95%)を得た。
【0103】
<各化合物の構造確認>
前記各化合物の構造確認を、以下のようにして行った。結果を図1〜41に示す。なお、前記I〜IIIの各化合物の構造確認結果は、特願2007−000576号明細書に記載の通りである。
[MALDI−TOF]
脂溶性化合物については、Dithranol 10mg/mL アセトン溶液8μLと、サンプル希釈液(20pmol/Lが目安)2μLを混合し、Massive Targetに1μLを展開し、測定した。検量線用内部標準としてはDithranolマトリックスを用いた。
水溶性のオリゴヌクレオチドについては、まずサンプルの希釈液を水素イオン型イオン交換樹脂にて処理した。別にクエン酸一水素二アンモニウム(DAC)と3−ヒドロキシピコリン酸(HPA)の1:1混合水溶液1μLを、あらかじめTOF−MSターゲットAnchorChipに展開し、更にサンプル液1μLを混合し、ゆっくりと風乾した後に測定した。検量線用標準物質としては規定の検量線用ペプチド混合サンプルを用いた。
[1H−NMR]
各サンプル約5mgを重溶媒に溶解し、測定した。内部標準は重溶媒ピークを基準とした。
[31P−NMR]
外部標準としてPPh3を用い、−6.2ppmを基準として測定した。BCMにて測定を行った。
【0104】
(実施例2:アセトニトリル中でのDBU処理による脱保護の確認)
本発明の機能性分子合成用アミダイドを用いて核酸類似体を合成した後、アセトニトリル中でのDBU処理を行うことにより、保護基(一段階目の基)が外れ、所望の置換基を有する核酸類似体(機能性分子)が合成できていることを以下のようにして確認した。
【0105】
【化27】
【0106】
まず、前記実施例1で得られる化合物V(HPLC Chart1、図42)1.7mM、及び10mM DBU(10%DMF、90%アセトニトリル)溶液を室温で15分間静置し、反応混合物を得た(HPLC Chart2、図43)。更に、HPLC Chart2のメインピークを分取した後、0.1M HCl条件で、90℃、5分間静置し、反応混合物を得た(HPLC Chart3、図44)。
【0107】
次に、市販のC3SS−CPGに、通常のDNA自動合成サイクルにより、前記実施例1で得られたIXLysアミダイドを用いて1残基合成し、CPGに0.01M DBUアセトニトリル溶液5mLを1時間かけて流した後、アセトニトリル、続けて水で洗浄し、0.1M トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩−トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン緩衝溶液pH=7.0(TCEP−Tris pH=7.0)0.25mLを1時間かけて流し、溶液を回収した(HPLC Chart4、図45)。前記溶液(HPLC Chart4)を10倍希釈した後、0.1M HCl条件で、90℃、5分間静置し、反応混合物を得た(HPLC Chart5、図46)。
【0108】
HPLC Chart3の反応混合物とHPLC Chart5の反応混合物とではほぼ同様なHPLC Chartが得られたが、確認のため、HPLC Chart3の反応混合物とHPLC Chart5の反応混合物を混合した溶液について、HPLC Chartを確認した(HPLC Chart6、図47)。
結果、HPLC Chart3の反応混合物とHPLC Chart5の反応混合物は一致した。したがって、本発明の機能性分子合成用アミダイドを用いて核酸類似体を合成した後、アセトニトリル中でのDBU処理を行うことにより保護基(一段階目の基)が外れ、所望の置換基を含有する核酸類似体(機能性分子)が合成できることが確認できた。
【0109】
(実施例3:アンモニア処理による脱離の確認)
本発明の機能性分子合成用アミダイドを用いて合成された本発明の機能性分子の置換基(二段階目の基)が、アンモニア処理によって脱離可能であり、これにより、前記機能性分子が容易にPCRで増幅可能となることを以下のようにして確認した。
【0110】
DNA合成機を用い、以下の配列:GAAGGTGAAGGTCGGCTGAA88V88V88V88VGCT88V88V88V88VACCATCATCACCATCTT(80量体、配列番号:1(配列表中には、A、C、G、T部位のみを表示))を合成した。「V」としては、IIIg、IIIcの等量混合アミダイドを、「8」としては、XIILeu、XIIPhe、XIIGlu、XIILys、XIXの等量混合アミダイドを用いた。
合成した類似DNAランダムミックスは、アセトニトリル中、0.01Mジアザビシクロウンデセン(DBU)溶液を流すことにより脱保護を行い、0.1 TCEP−tris pH−7.0 250μL水溶液により固相担体から切り出し、得られたSH末端類似DNA溶液に0.5Mマレインイミド水溶液を加えた。CTTCACCTTC(配列番号:2)オリゴマー修飾レジンを用いることにより、修飾類似DNA(機能性分子)を粗精製し、DNA濃度をλ=260で概算した。
【0111】
上記で得られた修飾類似DNA(機能性分子)に、2倍量(V/V)の28%アンモニア水を加え、55℃で8時間加熱してアンモニア処理を行い、置換基の脱離を行った。得られた溶液を減圧濃縮した。
【0112】
上記で得られた各々の修飾類似DNA溶液(アンモニア処理、アンモニア未処理)を、図48に記載の各段階に希釈し、PCR(60サイクル)により増幅した。
【0113】
図48の結果から、アンモニア処理を行った修飾類似DNA(機能性分子)でのみ、正常な80量体付近のバンドが確認できた(レーン3〜6)。このことから、本発明の機能性分子合成用アミダイドを用いて合成された本発明の機能性分子では、アンモニア処理により置換基の脱離を行うことができ、そのため、PCRで容易に増幅することができるようになることが示された。
【0114】
また、前記機能性分子のPCR等の過程で、各アミダイドのダイマーコードが変化しないことを、以下のようにして確認した。
上記と同様にして、以下の配列:GAAGGTGAAGGTCGGAGTCAACG88V88V88V88V88V88V88VGCT88V88V88V88V88V88V88VGGAAATCCCATCACCATCTTC(配列番号:3(配列表中には、A、C、G、T部位のみを表示))を合成し、固相単体から修飾類似DNA(機能性分子)を回収した。粗精製し、アンモニア水処理し、PCR増幅した後に、PCR産物を用いて、クローニング及びシーケンシングをした結果の一部を図49に示す。図49から分かるように、XIILeu(AA)、XIIPhe(AC)、XIIGlu(AT)、XIILys(TA)、XIX(GC)の混合アミダイドを使用した前記「8」に相当する残基では、各アミダイドに対応するAA、AC、AT、TA、GCのみが出現しており、このことから、各アミダイドのダイマーコードはPCR、クローニング及びシーケンシングの過程によって変化しないことが確認できた。
即ち、本発明によれば、例えば、予め各ダイマーアミダイドに導入させた置換基の種類をダイマーコード対応表(ダイマーアミダイドの塩基配列と、置換基の種類との対応表)等で定めておき、前記ダイマーアミダイドから合成された前記機能性分子を標的物質と結合させ、前記標的物質と親和性を有する機能性分子を選別した後に、前記機能性分子から置換基を脱離し、PCR増幅、シーケンシング(塩基配列決定)を行うことで、前記機能性分子に導入されていた置換基の種類を前記ダイマーコード対応表等から確認することができ、これに基づき、前記機能性分子を複製等することが可能となる。
【0115】
(実施例4:標的物質解析方法)
本発明の機能性分子合成用アミダイドを用いて合成された本発明の機能性分子が、標的物質の解析に好適であることを以下のようにして確認した。
【0116】
下記表1で示す5種類のダイマーアミダイド(実施例1で合成されたもの)を用い、以下の修飾類似DNAランダム配列を合成した。前記ダイマーアミダイドで合成させる部位をNpNpで示す。
[修飾類似DNAランダム配列]
ttatcaacaaaatactccaattgact(NpNpG/Cp)7gct(NpNpG/Cp)7ttcgaaagatcccaacgaaaagp(CH2)3SH(配列番号:4(配列表中には、a、c、g、t部位のみを表示))
【0117】
【表1】
【0118】
前記修飾類似DNAランダム配列は、DNA自動合成機(アプライド391A)で合成した。なお、前記修飾類似DNAランダム配列中、「a」、「g」、「c」、「t」部分には下記に示すa、g、c、tアミダイドをそれぞれ用い、「G/C」部分には下記で示したgアミダイド、cアミダイドの何れかを用い、「NpNp」部分には前記表1に示す5種の混合ダイマーアミダイドを用いた。
【0119】
【化28】
【0120】
合成した修飾類似DNAランダム配列ミックス(機能性分子のランダムプール)は、アセトニトリル中、0.01Mジアザビシクロウンデセン(DBU)溶液を流すことにより脱保護を行い、0.1M DTT水溶液により固相担体から切り出した。
【0121】
末端ビオチン化修飾及びエンテロキナーゼ切断部位を持つGFPタンパク質溶液をアビジンレジンに湿潤させ、洗浄することによりGFP結合レジンを作成した。次に、上記修飾類似DNAランダム配列ミックス(機能性分子のランダムプール) 50nmol 200μLを室温で一晩反応させることにより、修飾類似DNA(機能性分子)−GFP−ストレプトアビジン−ビオチン修飾レジンを作成し、50℃で、1mL 50mM NaCl、1mM MgCl2、0.05% Tween−20 Tris−HCl 10mM pH=8.5で10回以上洗浄し、洗浄液に修飾類似DNA(機能性分子)が存在しないことを、定量PCRを用いて確認した。
次に、本レジンにエンテロキナーデを作用させて、GFP流出を蛍光により確認した。GFPを含有する溶液を用い、アンモニア水を加え、加熱して、アンモニア処理を行った。その後、アンモニアを減圧除去した。
【0122】
TTATCAACAAAATACTCCAATTG(配列番号:5)、及びCTTTTCGTTGGGATCTTTC(配列番号:6)をプライマーとしてPCRを行い、DNAを増幅した。ゲル電気泳動を掛け、精製した後、更にPCR増幅した。生成物を、定法に従いクローニングし、100クローンについて配列を決定した。従来の手法では、飛び飛びに入れた固定配列、及びダイマーコーディングルールを満たす配列は約1%であり、その配列について詳細を検討していた。しかしながら、本実施例の手法(本発明の標的物質解析方法)を用いることで、90%以上のクローンについて飛び飛びに入れた固定配列、及びダイマーコーディングルールを満たすことが判った。即ち、90%以上のクローンがデコード(翻訳、解読)出来ることがわかった。予め定めたダイマーコード対応表(表1)によりデコード(翻訳、解読)した後、DNA自動合成装置により修飾類似DNAを合成(複製)し、各々GFPとの結合解離定数を求めた。その結果、20配列がKd=10−7以下であることが確認できた。
【0123】
以上の結果から、本発明の機能性分子を用いた標的物質解析方法(本発明の標的物質解析方法)によれば、標的物質と親和性を有する機能性分子を選別した後に、アンモニア処理を行い前記機能性分子の置換基を脱離することによって、前記機能性分子を容易にPCRで増幅することが可能となり、全体として標的物質の解析を効率的に行うことができるようになることが示された。
【0124】
本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 塩基に置換基が導入された修飾ヌクレオチド単位を含む機能性分子であって、前記置換基が前記塩基から脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする機能性分子。
(付記2) 置換基が、前記置換基中の芳香族カルボン酸構造及び脂肪族カルボン酸構造のいずれかを介して塩基に導入されてなる付記1に記載の機能性分子。
(付記3) 置換基が、前記置換基中の芳香族カルボン酸構造を介して塩基に導入されてなり、かつ前記塩基がアデニン及びシトシンのいずれかである付記1から2のいずれかに記載の機能性分子。
(付記4) 置換基が、前記置換基中の脂肪族カルボン酸構造を介して塩基に導入されてなり、かつ前記塩基がグアニンである付記1から2のいずれかに記載の機能性分子。
(付記5) 置換基が、アンモニア処理により脱離可能である付記1から4のいずれかに記載の機能性分子。
(付記6) 置換基が、アンモニア処理により脱離可能であり、かつアセトニトリル中でのDBU処理では脱離されない付記1から5のいずれかに記載の機能性分子。
(付記7) 異なる置換基を有する二種以上の修飾ヌクレオチド単位を含む付記1から6のいずれかに記載の機能性分子。
(付記8) 付記1から7のいずれかに記載の機能性分子の製造に用いられる下記一般式(I)で表される機能性分子合成用アミダイドであって、置換基Yが塩基Xから脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする機能性分子合成用アミダイド。
【0125】
【化29】
ただし、前記一般式(I)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Qは水素原子又は水酸基を表す。
(付記9) 置換基Yが、前記置換基Y中の芳香族カルボン酸構造及び脂肪族カルボン酸構造のいずれかを介して塩基Xに導入されてなる付記8に記載の機能性分子合成用アミダイド。
(付記10) 置換基Yが、前記置換基Y中の芳香族カルボン酸構造を介して塩基Xに導入されてなり、かつ前記塩基Xがアデニン及びシトシンのいずれかである付記8から9のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイド。
(付記11) 置換基Yが、前記置換基Y中の脂肪族カルボン酸構造を介して塩基Xに導入されてなり、かつ前記塩基Xがグアニンである付記8から9のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイド。
(付記12) 置換基Yが、アンモニア処理により脱離可能である付記8から11のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイド。
(付記13) 置換基Yが、アンモニア処理により脱離可能であり、かつアセトニトリル中でのDBU処理では脱離されない付記8から12のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイド。
(付記14) 置換基Yが更に保護基Zで保護されてなる、下記一般式(II)で表される付記8から13のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイド。
【0126】
【化30】
ただし、前記一般式(II)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Zは保護基を表し、Qは水素原子又は水酸基を表す。
(付記15) 置換基Yを脱離しない条件下で保護基Zを脱保護可能である付記14に記載の機能性分子合成用アミダイド。
(付記16) 保護基Zが、アセトニトリル中でのDBU処理により脱保護可能である付記14から15のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイド。
(付記17) 付記8から16のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイドを用いて機能性分子を合成し、前記機能性分子のランダムプールを作製するランダムプール作製工程と、前記ランダムプールから標的物質と親和性を有する機能性分子を選別する選別工程と、前記標的物質と親和性を有する機能性分子を増幅する増幅工程とを含む標的物質解析方法であって、
前記増幅工程前に、前記標的物質と親和性を有する機能性分子から置換基を脱離する脱離工程を含むことを特徴とする標的物質解析方法。
(付記18) 機能性分子合成用アミダイドを用いて機能性分子を合成する際に、機能性分子合成用アミダイドの置換基を脱離しない条件下で保護基の脱保護を行う付記17に記載の標的物質解析方法。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の機能性分子、機能性分子合成用アミダイド、及び標的物質解析方法は、薬品、ドラッグデリバリー、バイオセンサー、遺伝子の発現量の制御、遺伝子異常による疾病の克服、遺伝子により翻訳される蛋白質の機能解明、反応触媒の開発などの広い分野で好適であり、特に蛋白質の解析に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、実施例1における化合物IVaの1H−NMRスペクトルである。
【図2】図2は、実施例1における化合物IVgの1H−NMRスペクトルである。
【図3】図3は、実施例1における化合物IVcの1H−NMRスペクトルである。
【図4】図4は、実施例1における化合物Vの1H−NMRスペクトルである。
【図5】図5は、実施例1における化合物VIの1H−NMRスペクトルである。
【図6】図6は、実施例1における化合物VIIの1H−NMRスペクトルである。
【図7】図7は、実施例1における化合物VIIILeuの1H−NMRスペクトルである。
【図8】図8は、実施例1における化合物VIIIPheの1H−NMRスペクトルである。
【図9】図9は、実施例1における化合物VIIIGluの1H−NMRスペクトルである。
【図10】図10は、実施例1における化合物IXLysの1H−NMRスペクトルである。
【図11】図11は、実施例1における化合物IXLysの31P−NMRスペクトルである。
【図12】図12は、実施例1における化合物IXLeuの1H−NMRスペクトルである。
【図13】図13は、実施例1における化合物IXLeuの31P−NMRスペクトルである。
【図14】図14は、実施例1における化合物IXPheの1H−NMRスペクトルである。
【図15】図15は、実施例1における化合物IXPheの31P−NMRスペクトルである。
【図16】図16は、実施例1における化合物IXGluの1H−NMRスペクトルである。
【図17】図17は、実施例1における化合物IXGluの31P−NMRスペクトルである。
【図18】図18は、実施例1における化合物XLysの1H−NMRスペクトルである。
【図19】図19は、実施例1における化合物XLeuの1H−NMRスペクトルである。
【図20】図20は、実施例1における化合物XPheの1H−NMRスペクトルである。
【図21】図21は、実施例1における化合物XGluの1H−NMRスペクトルである。
【図22】図22は、実施例1における化合物XILysの1H−NMRスペクトルである。
【図23】図23は、実施例1における化合物XILeuの1H−NMRスペクトルである。
【図24】図24は、実施例1における化合物XIPheの1H−NMRスペクトルである。
【図25】図25は、実施例1における化合物XIGluの1H−NMRスペクトルである。
【図26】図26は、実施例1における化合物XIILysの1H−NMRスペクトルである。
【図27】図27は、実施例1における化合物XIILysの31P−NMRスペクトルである。
【図28】図28は、実施例1における化合物XIILeuの1H−NMRスペクトルである。
【図29】図29は、実施例1における化合物XIILeuの31P−NMRスペクトルである。
【図30】図30は、実施例1における化合物XIIPheの1H−NMRスペクトルである。
【図31】図31は、実施例1における化合物XIIPheの31P−NMRスペクトルである。
【図32】図32は、実施例1における化合物XIIGluの1H−NMRスペクトルである。
【図33】図33は、実施例1における化合物XIIGluの31P−NMRスペクトルである。
【図34】図34は、実施例1における化合物XIIIの1H−NMRスペクトルである。
【図35】図35は、実施例1における化合物XIVの1H−NMRスペクトルである。
【図36】図36は、実施例1における化合物XVの1H−NMRスペクトルである。
【図37】図37は、実施例1における化合物XVIの1H−NMRスペクトルである。
【図38】図38は、実施例1における化合物XVIの31P−NMRスペクトルである。
【図39】図39は、実施例1における化合物XVIIIの1H−NMRスペクトルである。
【図40】図40は、実施例1における化合物XIXの1H−NMRスペクトルである。
【図41】図41は、実施例1における化合物XIXの31P−NMRスペクトルである。
【図42】図42は、実施例2におけるHPLC Chart1である。
【図43】図43は、実施例2におけるHPLC Chart2である。
【図44】図44は、実施例2におけるHPLC Chart3である。
【図45】図45は、実施例2におけるHPLC Chart4である。
【図46】図46は、実施例2におけるHPLC Chart5である。
【図47】図47は、実施例2におけるHPLC Chart6である。
【図48】図48は、実施例3における各群の修飾類似DNA(アンモニア処理及びアンモニア未処理)サンプルのPCR結果を示す電気泳動像である。
【図49】図49は、実施例3においてシーケンシングを行った結果の一部を示す配列図である(配列番号:7〜配列番号:16)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的物質に対して親和性を示し、薬品、ドラッグデリバリー、バイオセンサー、遺伝子の発現量の制御、遺伝子異常による疾病の克服、遺伝子により翻訳される蛋白質の機能解明、反応触媒の開発などの広い分野で好適であり、特に蛋白質の解析に好適な機能性分子、及び前記機能性分子の合成に使用される機能性分子合成用アミダイド、並びにそれらを用いた標的物質解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の全遺伝子情報が既に明らかになった。その結果、研究者や科学者の興味の中心は遺伝子産物である蛋白質の解析に移行している。蛋白質の解析においては、対象となる個々の蛋白質に対してアフィニティーを有する分子を得ることによって、初めて実質的な解析が可能になるといっても過言ではない。しかしながら、細胞中には非常に多種類の蛋白質が存在し、そのアミノ酸配列や構造が未知であるものも多い。
ある特定の蛋白質に対してアフィニティーを有する分子を得る最も一般的な手法は、動物の免疫系を用い、アフィニティー抗体を作製する方法である。しかし、この方法では動物を用いるため、多量の蛋白質や多大な工程、費用が必要となり、しかもある特定の物質に対するアフィニティー抗体は生成されないという欠点があった。
【0003】
このような問題を解決するために、生物に依存しないアプタマー法(別名:SELEX法)も提案されているが、この方法で得られる分子は、特定の蛋白質に対しては強い相互作用を示すものの、必ずしも全ての蛋白質に応用可能なものではなかった。そこで本発明者らは、前記アプタマー法を改良し、修飾核酸類似体を用いた修飾アプタマー法を提案している(特許文献1参照)。しかしながら、この修飾アプタマー法においては、異なる置換基を有する複数種の修飾ヌクレオチド単位を含む修飾核酸類似体を用いるため、標的物質とアフィニティーを有する修飾核酸類似体を増幅しようとした際には、個々の置換基の特性を考慮しなくてはならず、良好なPCR増幅条件を選定することが困難であった。また、標的物質に強く結合する修飾核酸類似体ほどPCRで増幅しにくいという欠点もあり、更なる改良が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】国際公開第2003/078623号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、蛋白質の解析等の広い分野で好適であり、異なる置換基を有する複数種の修飾ヌクレオチド単位を含む場合であっても、PCR等による増幅を容易に行うことのできる機能性分子、及び前記機能性分子の合成に使用される機能性分子合成用アミダイド、並びにそれらを用いた標的物質解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としては、後述の付記に記載の通りである。即ち、
本発明の機能性分子は、塩基に置換基が導入された修飾ヌクレオチド単位を含み、前記置換基が前記塩基から脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする。前記機能性分子では、標的物質との結合に関与する前記置換基を、例えば標的物質との結合の後に、アンモニア処理等を行うことにより前記塩基から脱離することができる。そのため、前記機能性分子は、例えば異なる置換基を有する複数種の修飾ヌクレオチド単位を含む場合であっても、アンモニア処理等を行うことによりそれらの置換基を前記塩基から脱離することができ(前記機能性分子が天然の核酸と同様な構造となる)、各々の置換基の影響を考慮することなく、PCR増幅を容易に行うことが可能となる。
【0007】
本発明の機能性分子合成用アミダイドは、本発明の前記機能性分子を製造するためのアミダイドであり、置換基が塩基から脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする。前記機能性分子合成用アミダイドでは、標的物質との結合に関与する前記置換基が、例えば標的物質との結合の後に、アンモニア処理等を行うことにより前記塩基から脱離可能であるように前記塩基に導入されてなる。そのため、前記機能性分子合成用アミダイドを用いることによれば、アンモニア処理等を行うことにより前記置換基を脱離することができ、そのためPCR増幅を容易に行うことが可能な本発明の前記機能性分子を製造することが可能となる。
また、前記機能性分子合成用アミダイドは、前記置換基が更に保護基で保護されていてもよい。この場合、前記保護基は、前記置換基を脱離しない程度の緩やかな条件下で(例えばアセトニトリル中でのDBU処理等により)脱保護可能であることが好ましい。前記機能性分子合成用アミダイドを用いて前記機能性分子を製造する際に、前記置換基が脱離しない程度の緩やかな条件下で前記保護基の脱保護を行うことにより、標的物質との結合に関与する前記置換基が安定して残存した、本発明の前記機能性分子を製造することが可能となる。
【0008】
本発明の標的物質解析方法は、本発明の前記機能性分子合成用アミダイドを用いて機能性分子(本発明の前記機能性分子)を合成し、前記機能性分子のランダムプールを作製するランダムプール作製工程と、前記ランダムプールから標的物質と親和性を有する機能性分子を選別する選別工程と、前記標的物質と親和性を有する機能性分子を増幅する増幅工程とを含み、前記増幅工程前に、前記標的物質と親和性を有する機能性分子から置換基を脱離する脱離工程を含むことを特徴とする。前記標的物質解析方法では、前記選別工程後、前記増幅工程前に、アンモニア処理等を行うことにより前記機能性分子から前記置換基を脱離する。これにより、前記機能性分子は、天然の核酸と同様な構造となり、置換基の影響を考慮することなく、PCR増幅を容易に行うことが可能となる。
また、前記標的物質解析方法では、前記機能性分子の合成の際に、前記機能性分子合成用アミダイドの置換基が脱離しない程度の緩やかな条件下で(例えばアセトニトリル中でのDBU処理等により)保護基の脱保護を行うことが好ましい。前記脱保護は、前記置換基が脱離しない程度の緩やかな条件下で行われることから、標的物質との結合に関与する前記置換基はこの段階では安定して残存する。このため、続く、標的物質と親和性を有する機能性分子を選別する選別工程を、安定に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、蛋白質の解析等の広い分野で好適であり、異なる置換基を有する複数種の修飾ヌクレオチド単位を含む場合であっても、PCR等による増幅を容易に行うことのできる機能性分子、及び前記機能性分子の合成に使用される機能性分子合成用アミダイド、並びにそれらを用いた標的物質解析方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(機能性分子)
本発明の機能性分子は、塩基に置換基が導入された修飾ヌクレオチド単位を含む機能性分子であって、前記置換基が前記塩基から脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする。
【0011】
<置換基>
前記置換基は、その末端に脱離され易い構造を有してなり、前記脱離され易い構造を介して前記塩基に導入されている。前記脱離され易い構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、芳香族カルボン酸構造、脂肪族カルボン酸構造などが好ましい。また、前記塩基がアデニン(A)又はシトシン(C)である場合には、前記脱離され易い構造としては芳香族カルボン酸構造が好ましく、前記塩基がグアニン(G)である場合には、前記脱離され易い構造としては脂肪族カルボン酸構造が好ましい。
前記芳香族カルボン酸構造の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4−(アルキルカルボキシルアミノメチル)安息香酸、4−((2−アルキルカルボキシルアミノ)エトキシ)安息香酸などが挙げられる。前記脂肪族カルボン酸構造の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、N−アルキルカルボキシルβ−アラニン、N−アルキルカルボキシルピペリジンカルボン酸などが挙げられる。
【0012】
前記置換基は、前記したような脱離され易い構造を介して前記塩基に導入されていれば、その他の構造については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然又は非天然のアミノ酸、金属錯体、蛍光色素、酸化還元色素、スピンラベル体、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、下記式(1)〜(10)で表される基などの構造を含むことができる。
【0013】
【化3】
【0014】
前記天然又は非天然のアミノ酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、スレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、グリシン、セリンなどが挙げられる。
前記金属錯体としては、金属イオンに配位子が配位した化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Ruビピリジル錯体、フェロセン錯体、ニッケルイミダゾール錯体などが挙げられる。
前記蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フルオレセイン系列、ローダミン系列、エオシン系列、NBD系列等の蛍光色素などが挙げられる。
前記酸化還元色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ロイコアニリン、ロイコアントシアニン等のロイコ色素などが挙げられる。
前記スピンラベル体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄N−(ジチオカルボキシ)サルコシン(sarcosine)、TEMPO(テトラメチルピペリジン)誘導体などが挙げられる。
前記炭素数1〜10のアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
これらは、置換基で更に置換されていてもよい。
【0015】
<塩基>
前記塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)などが挙げられる。また、前記塩基に前記置換基が導入される位置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アデニン塩基の6位、シトシン塩基の6位、グアニン塩基の2位などが好ましい。
【0016】
<脱離>
前記置換基は、前記塩基から脱離可能であるように導入されていれば、その脱離方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アンモニア処理による方法、NaOH等によるアルカリ処理による方法、ふっ酸及びフッ化物塩処理による方法、ヒドラジン処理による方法、光照射による方法などが挙げられる。これらの中でも、アンモニア処理による方法が、特に好ましい。
前記アンモニア処理時のアンモニア濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1〜30%が好ましく、10〜30%がより好ましく、20〜30%が特に好ましい。前記アンモニア処理時の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば0〜80℃が好ましく、25〜60℃がより好ましく、50〜55℃が特に好ましい。前記アンモニア処理の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば15分間〜24時間が好ましく、1〜16時間がより好ましく、4〜8時間が特に好ましい。
【0017】
更に、前記置換基は、前記したような脱離方法では脱離可能であるが、一方で、後述するような脱保護方法(例えば、非プロトン性溶媒中で嵩高い塩基により脱保護を行う方法、より具体的には、アセトニトリル中でDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)により処理を行う方法)では脱離されないことが好ましい。前記したような脱保護方法により前記置換基が脱離されてしまうと、前記機能性分子を所望の標的物質と結合させる前に(前記機能性分子の製造時に)、前記標的物質との結合に必要な置換基が失われてしまい、前記標的物質との結合を行うことができなくなることがある。
【0018】
<製造>
前記機能性分子は、例えば、後述する本発明の機能性分子合成用アミダイドを用いることにより好適に製造することができる。前記機能性分子の製造方法については、後述する本発明の機能性分子合成用アミダイドの項目に詳述するものとする。
【0019】
<構成>
前記機能性分子は、複数のヌクレオチド単位から構成されてなり、その少なくとも一部に、前記したような、塩基に脱離可能に導入された置換基を有する修飾ヌクレオチド単位を含む。
前記機能性分子を構成するヌクレオチド単位の個数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、10〜200個が好ましく、20〜100個がより好ましく、30〜80個が特に好ましい。なお、前記機能性分子を構成するヌクレオチド単位のうち、前記したような置換基を有する修飾ヌクレオチド単位の割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記機能性分子は、類似DNA配列及び類似RNA配列のいずれであってもよく、また、前記類似DNA配列及び類似RNA配列は一本鎖であってもよいし二本鎖であってもよい。
【0020】
<効果>
前記機能性分子は、標的物質との結合に関与する置換基が、塩基に脱離可能に導入されているため、標的物質との結合後、アンモニア処理等によって前記置換基を前記塩基から脱離することによって、天然核酸と同様な構造とすることができ、その結果、前記機能性分子をPCR等により容易に増幅することが可能となる。なお、本発明においては、前記機能性分子について、置換基を有する状態のもの、及び、置換基が脱離された後の状態のもの(天然核酸と同様な状態のもの)のいずれをも「機能性分子」と称し、文脈に応じて適宜使い分けるものとする。
従来の機能性分子では、その構造に異なる置換基を有する二種以上の修飾ヌクレオチド単位を含む場合、各々の置換基の特性を考慮してPCR増幅条件の選定を行う必要があり、そのため、至適PCR増幅条件の選定が非常に困難であった。これに対して、本発明の前記機能性分子によれば、その構造に異なる置換基を有する二種以上の修飾ヌクレオチド単位を含む場合であっても、それらの置換基をアンモニア処理等によって一度に脱離し、天然核酸と同様な構造とすることができるために、容易に至適PCR増幅条件を選定することが可能となる。
【0021】
(機能性分子合成用アミダイド)
本発明の機能性分子合成用アミダイドは、本発明の前記機能性分子の製造に用いられるアミダイドであって、下記一般式(I)で表され、置換基Yが塩基Xから脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする。
【0022】
【化4】
ただし、前記一般式(I)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Qは水素原子又は水酸基を表す。
【0023】
ここで、前記「置換基」、前記「塩基」、前記「脱離」としては、前記した本発明の機能性分子の項目に記載した通りである。
【0024】
また、前記機能性分子合成用アミダイドは、機能性分子合成時における置換基Yの不要な反応を防ぐ目的から、前記置換基Yが更に保護基Zで保護されてなる、下記一般式(II)で表される機能性分子合成用アミダイドであってもよい。
【0025】
【化5】
ただし、前記一般式(II)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Zは保護基を表し、Qは水素原子又は水酸基を表す。
【0026】
<保護基>
前記機能性分子合成用アミダイドが前記保護基Zを有する場合、前記保護基Zは、前記置換基Yを脱離しない条件下で脱保護可能であることが好ましく、前記保護基としては、例えば、フルオレニルメチルカルボニル基、β−シアノエチルカルボニル基などが挙げられる。前記置換基Yを脱離しない条件下で前記保護基Zが脱保護可能であれば、標的物質との結合に必要な置換基が、前記標的物質との結合前に(前記機能性分子の製造における脱保護時に)失われてしまうことがなく、安定して前記標的物質と結合可能な前記機能性分子を製造することが可能となる。
【0027】
<脱保護>
前記置換基Yを脱離せず、前記保護基Zを脱保護する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非プロトン性溶媒中で嵩高い塩基により処理を行う方法、テトラブチルアンモニウムフルオライド処理による方法などが挙げられる。これらの中でも、非プロトン性溶媒中で嵩高い塩基により処理を行う方法が、特に好ましい。前記非プロトン性溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。また、前記嵩高い塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)、テトラメチルグアニジンなどが挙げられる。これらの中でも、前記保護基は、前記アセトニトリル中、前記DBUにより脱保護可能であることが好ましい。また、この場合、前記保護基の脱保護に要するDBU濃度としては、0.5M以下が好ましく、0.1M以下がより好ましく、0.01M以下が特に好ましい。前記脱保護に要する時間としては、8時間以内が好ましく、1時間以内がより好ましく、15分間以内が特に好ましい。
【0028】
<具体例>
前記機能性分子合成用アミダイドの具体例としては、例えば、下記構造式(1)〜(5)のいずれかで表されるものなどが挙げられるが、前記機能性分子合成用アミダイドとしては、これらに限定されるものではない。
【0029】
【化6】
【0030】
【化7】
【0031】
【化8】
【0032】
【化9】
【0033】
【化10】
【0034】
<機能性分子合成用アミダイドの製造>
前記機能性分子合成用アミダイドの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、後述する実施例に記載の合成方法等により製造することができる。
【0035】
<機能性分子の製造>
前記機能性分子合成用アミダイドは、本発明の前記機能性分子の製造に好適に利用可能である。
前記機能性分子合成用アミダイドを用いて前記機能性分子を製造する方法としては、特に制限はなく、例えば、公知の核酸合成方法を適宜利用することができる。具体的には、例えば、前記機能性分子合成用アミダイドの単量体を用い、ジエステル法、トリエステル法、ホスファイト法、ホスホロアミダイト法、H−ホスホネート法、チオホスファイト法などにより、前記機能性分子合成用アミダイドの二量体や三量体等のオリゴマーを合成し、これらを重合する方法などが挙げられる。前記オリゴマーを重合する方法としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNAシンセサイザー(DNA自動合成装置)を用いる方法などが好適に挙げられる。
【0036】
なお、前記機能性分子合成用アミダイドのオリゴマーの具体例として、例えば、下記構造式(6)〜(10)のいずれかで表されるもの(いずれも二量体)などが挙げられるが、前記オリゴマーとしては、これらに限定されるものではない。
【0037】
【化11】
【0038】
【化12】
【0039】
【化13】
【0040】
【化14】
【0041】
【化15】
【0042】
前記機能性分子の製造においては、前記重合により前記機能性分子を合成した後、前記機能性分子合成用アミダイドに付されていた前記保護基の脱保護を行うことが好ましい。この場合には、前記したように、前記脱保護は、前記置換基を脱離しない程度の緩やかな条件下で行われることが好ましい。前記置換基を脱離しない程度の緩やかな条件下で前記保護基が脱保護されることにより、標的物質との結合に必要な置換基が、前記標的物質との結合前に(前記機能性分子の製造時に)失われてしまうことがなく、安定して前記標的物質と結合可能な前記機能性分子を製造することが可能となる。
【0043】
前記機能性分子の製造には、前記機能性分子合成用アミダイドが少なくとも一部に用いられていれば、特に制限はなく、目的に応じて更にその他のアミダイドが用いられていてもよい。前記その他のアミダイドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、中でも、前記したような、前記機能性分子合成用アミダイドの置換基が脱離されない程度の緩やかな条件下で、保護基の脱保護が可能なアミダイドを使用することが好ましい。このようなアミダイドとしては、例えば、特願2007−000576号明細書に記載の核酸類似体合成用アミダイド(例えば、後述する実施例に示すIIIa、IIIg、IIIc)などを用いることができる。
【0044】
<効果>
前記機能性分子合成用アミダイドは、置換基がアンモニア処理等によって塩基から容易に脱離する構造を有しているため、これを用いて機能性分子を合成することにより、例えば標的物質との結合後に、前記置換基を脱離することができ、そのためPCR増幅を容易に行うことが可能な、本発明の前記機能性分子を提供することができる。
また、好ましくは、前記機能性分子合成用アミダイドは、前記置換基が更に保護基で保護されてなり、かつ前記保護基が前記置換基を脱離しない程度の緩やかな条件下で脱保護可能であるために、標的物質との結合に必要な置換基が、前記標的物質との結合前に(前記機能性分子の製造における脱保護時に)失われてしまうことがなく、安定して前記標的物質と結合可能な前記機能性分子を製造することができる。
【0045】
(標的物質解析方法)
本発明の標的物質解析方法は、本発明の前記機能性分子合成用アミダイドを用いて機能性分子(本発明の前記機能性分子)を合成し、前記機能性分子のランダムプールを作製するランダムプール作製工程と、前記ランダムプールから標的物質と親和性を有する機能性分子を選別する選別工程と、前記標的物質と親和性を有する機能性分子を増幅する増幅工程と、必要に応じてその他の工程とを含み、前記増幅工程前に、前記標的物質と親和性を有する機能性分子から置換基を脱離する脱離工程を含むことを特徴とする。
前記標的物質解析方法における、前記「ランダムプール作製工程」、前記「選別工程」、前記「増幅工程」、及び前記「その他の工程」の各工程は、例えば、国際公開第2003/078623号パンフレットの内容を参照して好適に行うことができる。具体的には、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0046】
<ランダムプール作製工程>
前記ランダムプール作製工程は、前記機能性分子合成用アミダイドから機能性分子を合成し、前記機能性分子のランダムプールを作製する工程である。
ここで、前記「機能性分子合成用アミダイド」、前記「機能性分子」、及び前記「機能性分子合成用アミダイドから機能性分子を合成する方法(機能性分子の製造方法)」としては、前記した本発明の機能性分子の項目、及び本発明の機能性分子合成用アミダイドの項目にそれぞれ記載した通りである。前記のようにして機能性分子を合成した結果、得られた機能性分子を含む反応物は、精製・分離等することなくそのまま、機能性分子のランダムプールとして使用可能である。
【0047】
なお、前記ランダムプール作製工程においては、前記機能性分子を合成した後に、前記機能性分子合成用アミダイドにおける保護基の脱保護が行われることが好ましい。この場合には、前記したように、前記脱保護は、前記機能性分子合成用アミダイドにおける置換基を脱離しない程度の緩やかな条件下で行われることが好ましい。前記置換基を脱離しない程度の緩やかな条件下で前記保護基が脱保護されることにより、標的物質との結合に必要な置換基が、前記標的物質との結合前に(前記機能性分子の製造時に)失われてしまうことがなく、安定して前記標的物質と結合可能な前記機能性分子を製造することが可能となる。
前記保護基の脱保護の方法としては、前記置換基が脱離しない条件で行うことのできる方法であれば特に制限はなく、前記保護基及び前記置換基の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、非プロトン性溶媒中で嵩高い塩基により処理を行う方法、テトラブチルアンモニウムフルオライド処理による方法などが挙げられる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2種以上を行ってもよい。これらの中でも、前記脱保護の方法としては、非プロトン性溶媒中で嵩高い塩基により処理を行う方法が、特に好ましい。
前記「非プロトン性溶媒」、前記「嵩高い塩基」、及び前記「非プロトン性溶媒中での前記嵩高い塩基による処理の方法」の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記した本発明の機能性分子合成用アミダイドの項目に記載した通りである。
【0048】
<選別工程>
前記選別工程は、前記ランダムプール作製工程において作製された前記機能性分子のランダムプールの中から、所望の標的物質と親和性のある機能性分子を選別する工程である。前記選別の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法から適宜選択することができ、例えば、アフィニティークロマトグラフィー、フィルター結合、液−液分割、ろ過、ゲルシフト、密度勾配遠心分離などの各種方法が挙げられる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2種以上を行ってもよい。これらの中でも、前記選別の方法としては、アフィニティークロマトグラフィーが、特に好ましい。
【0049】
なお、前記標的物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、タンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質、ポリペプチド、脂質、多糖類、リポ多糖類、核酸、ホルモン、環境ホルモン、細胞、ウィルス、薬物、これらの複合体などが好適に挙げられる。
【0050】
<脱離工程>
前記脱離工程は、本発明の標的物質解析方法において特徴的な工程であり、後述する増幅工程前に行われる。前記脱離工程では、例えば前記選別工程で選別された機能性分子から、置換基を脱離する。増幅工程前に前記置換基の脱離が行われることにより、前記機能性分子は天然核酸と同様な構造となり、PCR等による増幅が容易となる。
【0051】
前記置換基の脱離の方法としては、特に制限はなく、前記置換基の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば、アンモニア処理による方法、NaOH等によるアルカリ処理による方法、ふっ酸及びフッ化物塩処理による方法、ヒドラジン処理による方法、光照射による方法などが挙げられる。これらの中でも、アンモニア処理による方法が、特に好ましい。これらは1種単独で行ってもよいし、2種以上を行ってもよい。
前記「アンモニア処理」の具体的な方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の前記機能性分子の項目に記載した通りである。
また、前記置換基を脱離した結果、その脱離箇所において、別の種類の基への置換が生じる場合もあるが、PCR等の進行を妨げず、前記機能性分子が増幅可能であれば、このような別の種類の基が生じていても構わない。
【0052】
―保護基の脱保護方法と置換基の脱離方法との組合せ―
なお、前記ランダムプール作製工程における前記脱保護方法と、前記脱離工程における前記脱離方法との組み合わせとしては、前記置換基を脱離すること無しに脱保護を行うことが可能な脱保護方法と、その後、残存した前記置換基を脱離することが可能な脱離方法との組み合わせであれば、特に制限はなく、使用する機能性分子合成用アミダイドの構造等に応じて適宜選択することができる。例えば、前記組み合わせとしては、脱保護方法が非プロトン性溶媒中での嵩高い塩基による処理(例えば、アセトニトリル中でのDBU処理)であり、脱離方法がアンモニア処理である組み合わせ;脱保護方法がテトラブチルアンモニウムフルオライド処理であり、脱離方法が光照射である組み合わせ;などが好ましい。
また、例えば温度や時間等の反応条件を調整することにより、前記脱保護を、前記置換基が脱離されない程度の緩やかな条件で行うことができる場合には、前記脱保護方法と前記脱離方法とを、同じ種類の方法を用いて行うこともできる。
【0053】
<増幅工程>
前記増幅工程は、前記選別工程により選別した前記機能性分子の塩基配列を決定すること等を目的に、前記機能性分子を増幅する工程である。前記増幅工程において、前記機能性分子は、前もって行われた前記脱離工程により、前記置換基が脱離され、天然核酸と同様な状態となっているために、PCR等の増幅条件の選定が非常に容易である。
そのため、前記増幅の方法としては、対象となる前記機能性分子のオリゴヌクレオチド配列の数を増やすことができれば、特に制限はなく、当該技術分野において公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、LCR(Ligase chain Reaction)法、3SR(Self−sustained Sequence Replication)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法、RT−PCR法、ICAN法、LAMP法などが挙げられる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2種以上を行ってもよい。
また、前記機能性分子の塩基配列の決定方法としても、特に制限はなく、当該技術分野において公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、遺伝子クローニングによる方法、チェーンターミネーター法、サンガー法、ジデオキシ法等によるDNAシーケンサー(DNA塩基配列自動決定装置)などを利用することができる。これらは、1種単独で行ってもよいし、2種以上を行ってもよい。
【0054】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、翻訳工程などが挙げられる。
前記翻訳工程は、例えば、前記増幅工程で決定した前記機能性分子の塩基配列を翻訳し、前記標的物質との親和性を有した機能性分子の構造を確認する工程である。前記翻訳は、例えば、国際公開第2003/078623号パンフレットの記載を参照して行うことができる。
例えば、予め前記機能性分子合成用アミダイドの二量体や三量体等のオリゴマーに導入させた置換基の種類を、対応表(オリゴマーの塩基配列と、置換基の種類との対応表)等で定めておく。次いで、前記オリゴマーを重合させることにより得られた前記機能性分子を、標的物質と結合させ、前記標的物質と親和性を有する機能性分子を選別した後に、前記機能性分子から置換基を脱離し、PCR増幅、シーケンシング(塩基配列決定)を行う。前記塩基配列の結果から、前記機能性分子に導入されていた置換基の種類を、前記対応表等に基づいて確認(翻訳)することができ、これに基づき、前記標的物質と親和性を有する機能性分子を複製等することが可能となる。
【0055】
<効果>
本発明の標的物質解析方法では、前記増幅工程の前に、前記機能性分子の置換基を脱離する前記脱離工程を含むため、前記増幅工程の際には、前記機能性分子は、天然核酸と同様な状態となっており、したがって、PCR等により容易に前記機能性分子を増幅し、その塩基配列を確認、分析等することができる。
更に、本発明の標的物質解析方法では、好ましくは、前記ランダムプール作製工程において、前記機能性分子合成用アミダイドの前記保護基を前記置換基が脱離しない条件下で脱保護する。そのため、前記選別工程の際には、前記標的物質との結合に関与する置換基は、前記機能性分子の表面に露出した状態で安定に残存しており、そのため、前記機能性分子と前記標的物質との結合を安定に行うことができる。
このように、本発明の標的物質解析方法では、好ましくは、前記保護基及び前記置換基が二段階で外され、そのため、全体を通して標的物質の解析を安定かつ効率的に行うことができる(一段階目:ランダムプール作製工程における保護基の脱保護、二段階目:脱離工程における置換基の脱離)。
【0056】
[用途]
本発明の機能性分子、機能性分子合成用アミダイド、及び標的物質解析方法は、薬品、ドラッグデリバリー、バイオセンサー、遺伝子の発現量の制御、遺伝子異常による疾病の克服、遺伝子により翻訳される蛋白質の機能解明、反応触媒の開発などの様々な分野で好適であると考えられる。例えば、特定の代謝系に関与する蛋白質に親和性のある分子を同定することにより、多機能薬品、高精度ドラッグデリバリーを行う物質を提供することができると考えられる。また、特定のDNA配列に親和性のある分子を同定することにより、一連の遺伝子の発現量を制御することができるようになり、遺伝子産物の相互作用を解き明かすことができると期待される。更に、反応中間体をミミックした分子に親和性のある分子を同定することにより、不安定な反応中間体を経由する多段階反応を、効率よく進めることができるようになると考えられる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0058】
(実施例1:機能性分子合成用アミダイドの合成)
本発明の機能性分子合成用アミダイド(IXLys(前記構造式(1))、IXLeu(前記構造式(2))、IXPhe(前記構造式(3))、IXGlu(前記構造式(4))、XVI(前記構造式(5)))、及び前記機能性分子合成用アミダイドを用いたアミダイド二量体(XIILeu(前記構造式(6))、XIIPhe(前記構造式(7))、XIIGlu(前記構造式(8))、XIILys(前記構造式(9))、XIX(前記構造式(10)))を、それぞれ以下のようにして合成した。
【0059】
【化16】
【0060】
【化17】
【0061】
<Ia、Ig、Icの合成>
Nメチルアミノ酪酸塩酸塩7.68g(50mmol)を50mLの水に溶かし、NaHCO34.20g(50mmol)を加え、10分間攪拌した。この溶液に炭酸9−フルオレニルメチルスクシンイミジル13.49g(40mmol)、アセトニトリル100mL、及び硫酸水素テトラブチルアンモニウム0.14g(0.4mmol)を加え、室温で2日間攪拌した。溶液を減圧濃縮した後、塩化メチレンで希釈し、水で洗浄した。塩化メチレン溶液を減圧濃縮し、脱水アセトニトリルで2回共沸した後、脱水塩化メチレンで共沸した。残渣を200mLの脱水塩化メチレンに溶かし、0℃でN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド4.13g(20mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。不溶物をろ過した後、減圧濃縮し、残渣Aを得た。
デオキシヌクレオシド(dA、dG、又はdC、20mmol)を脱水ピリジンで懸濁し、減圧濃縮する操作を3回行った。残渣を100mLの脱水ピリジンで懸濁し、0℃でトリメチルクロロシラン8.45mL(66mmol)を加え、室温で1時間攪拌した後、再び0℃に冷却し、本溶液を残渣Aに導入した。反応混合物を、室温で2時間攪拌した。氷冷下、20mLの水を加え、室温で一晩攪拌した。本溶液を塩化メチレンで希釈し、水で洗浄した。塩化メチレン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→4:1)にて精製し、目的物Ia 6.91g(60%)、Ig 9.43g(80%)、Ic 8.80g(80%)を得た。
【0062】
【化18】
【0063】
<IIa、IIg、IIcの合成>
Ia、Ig、又はIc、10mmolを脱水ピリジンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を50mLの脱水ピリジンに溶解し、氷冷下、4,4’−ジメトキシトリチルクロリド3.36g(10.5mmol)を加え、室温にて4時間攪拌した。続いてメタノール10mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、塩化メチレンで希釈し、水で洗浄した。塩化メチレン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール98:2→9:1)にて精製し、目的物IIa 7.92g(91%)、IIg 8.35g(94%)、IIc 7.64g(90%)を得た。
【0064】
【化19】
【0065】
<IIIa、IIIg、IIIcの合成>
IIa、IIg又はIIc、5mmolを脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタン混合溶液に溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン30.5mg(0.25mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.05mL(6.0mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト1.23mL(5.5mmol)の5mL塩化メチレン溶液を15分間以上かけ滴下した。混合溶液を0℃(IIa、IIc)又は室温(IIg)で2時間攪拌した。続いてメタノール5mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮し、残渣を25mLの酢酸エチルに溶解し、−30℃で500mLのヘキサンに15分間以上かけ滴下した。不溶物をろ過し、冷ヘキサンで洗浄し、濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物IIIa 5.22g(97%)、IIIg 5.22g(96%)、IIIc 4.70g(94%)を得た。
【0066】
【化20】
【0067】
<IVa、IVg、IVcの合成>
IIa、IIg、又はIIc、5mmolを脱水ジオキサンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を25mLの脱水ジオキサンに溶解し、10℃でジメチルアミノピリジン48.9mg(0.4mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド2.06g(10mmol)、及びレブリン酸1.02mL(10mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。反応溶液に2mLのメタノールを加え、30分間攪拌した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を5mLのジクロロメタンで懸濁し、不溶物をろ過した。濾液を減圧濃縮し、残渣を100mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、2mLのトリフロロ酢酸を加え、0℃で2時間攪拌した後、10mLの脱水メタノール及び5mLの脱水ピリジンを加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール98:2→4:1)にて精製し、目的物IVa 3.00g(89%)、IVg 2.96g(86%)、IVc 2.95g(91%)を得た。
【0068】
【化21】
【0069】
<Vの合成>
4−(FMOC−アミノメチル)安息香酸28.0g(75mmol)を375mLの脱水ジクロロメタンに懸濁し、アルゴン雰囲気下、オキサリルクロリド12.9mL(150mmol)、及びジメチルフォルムアミド0.12mL(1.5mmol)を加え、室温で7時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、残渣に脱水トルエンを加えた後、減圧濃縮し、残渣Aを得た。
デオキシアデノシン1水和物24.2g(90mmol)を脱水ピリジンで懸濁し、減圧濃縮する操作を3回行った。残渣を375mLの脱水ピリジンで懸濁し、0℃でトリメチルクロロシラン38.0mL(297mmol)を加え、室温で1時間攪拌した後、再び0℃に冷却し、本溶液を残渣Aに導入した。反応混合物を4時間以上かけ室温に昇温し、室温で一晩攪拌した。氷冷下、75mLの水を加え、室温で8時間攪拌した。本溶液を減圧濃縮した。残渣を塩化メチレンで希釈し、水で洗浄した。塩化メチレン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール9:1→4:1)にて精製し、目的物V 15.5g(34%)、少量のV’と思われる不純物を含むV 18.2g、粗収率74%を得た。
【0070】
<VIの合成>
V 15.5g(25.5mmol)を脱水ピリジンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を130mLの脱水ピリジンに溶解し、氷冷下、4,4’−ジメトキシトリチルクロリド9.09g(26.8mmol)を加え、室温にて4時間攪拌した。続いてメタノール25mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(酢酸エチル−エタノール39:1→19:1)にて精製し、目的物VI 21.3g(92%)を得た。
同様の手法で,少量のV’を含むV 18.2gからはVI 22.4gを得た。よって2段階収率64%でVIを得た。
【0071】
<VIIの合成>
VI 1.82g(2.0mmol)を脱水ジオキサンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を15mLの脱水ジオキサンに溶解し、10℃でジメチルアミノピリジン19.5mg(0.16mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド825mg(4.0mmol)、及びレブリン酸0.41mL(4.1mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。反応溶液に2mLのメタノールを加え、30分間攪拌した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を2mLのジクロロメタンで懸濁し、不溶物をろ過した。濾液を減圧濃縮し、残渣を40mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、0.8mLのトリフロロ酢酸を加え、0℃で2時間攪拌した後、4mLの脱水メタノール、及び2mLの脱水ピリジンを加えた。反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を水で洗浄し、ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール98:2→9:1)にて精製し、目的物VII 1.15g(82%)を得た。
【0072】
<IXLysの合成>
VI 4.54g(5mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン30.5mg(0.25mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.13mL(6.5mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト1.34mL(6.0mmol)の5mL塩化メチレン溶液を15分間以上かけ滴下した。混合溶液を0℃で2時間、攪拌した。続いてメタノール5mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を60mLの酢酸エチルに溶解し、−30℃で500mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄した。濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物IXLys 5.23g(94%)を得た。
【0073】
【化22】
【0074】
<VIIILeuの合成>
VI 8.20g(9.12mmol)を46mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジアザビシクロウンデセン1.63mL(10.9mmol)を加え、室温にて3時間攪拌し、反応混合物Aを得た。
4−メチル吉草酸1.38mL(10.9mmol)を33mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、N−ヒドロキシこはく酸イミド1.39g(12.0mmol)を加え、氷冷下、ジシクロヘキシルカルボジイミド2.37g(11.5mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。不溶物を濾別し、濾液を反応混合物Aに加えた。反応混合物を室温にて4時間攪拌した。続いてメタノール5mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール49:1→17:3)にて精製し、目的物VIIILeu 5.03g(70%)を得た。
【0075】
<IXLeuの合成>
VIIILeu 3.92g(5mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン30.5mg(0.25mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.13mL(6.5mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト1.34mL(6.0mmol)の5mL塩化メチレン溶液を15分間以上かけ滴下した。混合溶液を0℃で2時間、攪拌した。続いてメタノール5mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を60mLの酢酸エチルに溶解し、−30℃で、500mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄した。濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物IXLeu 4.74g(97%)を得た。
【0076】
<XLeuの合成>
IXLeu 4.19g(4.25mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を21mLの脱水アセトニトリルに溶解し、溶液Aを得た。IVa 2.86g(4.25mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を21mLの脱水アセトニトリルに溶解し、溶液Aに加えた。反応混合物にテトラゾール1.49g(21.3mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。続いてメタノール2.1mLを加え、30分間攪拌した。溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン89mL、ピリジン26mL及び水13mLに溶解し、ヨウ素3.77g(14.9mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合物に380mLのジクロロメタンを加え、亜硫酸ナトリウム9.37g(74.3mmol)を加え、室温で15分間攪拌した。反応混合物に約25gの硫酸ナトリウムを加え、よく攪拌した後、不溶物を濾過した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール49:1→9:1)にて精製し、目的物XLeu 4.38g(66%)を得た。
【0077】
<XILeuの合成>
XLeu 4.18g(2.66mmol)を27mLのピリジンに溶解し、氷冷下、ヒドラジン1水和物1.29mL(26.7mmol)の希釈溶液27mL(ピリジン:酢酸=3:2)を加え、室温で20分間攪拌した。氷冷下、アセトン26mLを加え、0℃で10分間攪拌した後、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→17:3)にて精製し、目的物XILeu 3.05g(79%)を得た。
【0078】
<XIILeuの合成>
XILeu 870mg(0.59mmol)を脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタン混合溶液に溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を6.0mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン3.6mg(0.029mmol)、ジイソプロピルエチルアミン139μL(0.80mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト158mL(0.629mmol)を加えた。混合溶液を、0℃で3時間攪拌した。続いてメタノール0.6mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮し、残渣を9mLの酢酸エチルに溶解し、−30℃で、59mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄し、濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物XIILeu 885mg(89%)を得た。
【0079】
【化23】
【0080】
<VIIIPheの合成>
VI 8.06g(8.87mmol)を45mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジアザビシクロウンデセン1.59mL(10.6mmol)を加え、室温にて3時間攪拌し、反応混合物Aを得た。
N−ヒドロキシこはく酸イミド1.38g(11.7mmol)の32mL脱水ジクロロメタン溶液に、トリエチルアミン1.72mL(12.4mmol)を加え、氷冷下、フェニルアセチルクロリド1.41mL(10.6mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。本溶液を反応混合物Aに加えた。反応混合物を室温にて4時間攪拌した。続いてメタノール5mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール49:1→9:1)にて精製し、目的物VIIIPhe 6.79g(86%)を得た。
【0081】
<IXPheの合成>
VIIIPhe 4.83g(6mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を48mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン37mg(0.30mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.36mL(7.8mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト1.61mL(7.2mmol)の12mL塩化メチレン溶液を15分間以上かけ滴下した。混合溶液を0℃で2時間攪拌した。続いてメタノール6mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を60mLの酢酸エチルに溶解し、−30℃で、600mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄した。濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物IXPhe 5.51g(quant)を得た。
【0082】
<XPheの合成>
IXPhe 4.90g(4.87mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を25mLの脱水アセトニトリルに溶解し、溶液Aを得た。IVc 3.14g(4.87mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を25mLの脱水アセトニトリルに溶解し、溶液Aに加えた。反応混合物にテトラゾール1.71g(24.3mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。続いてメタノール2.5mLを加え、30分間攪拌した。溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン102mL、ピリジン30mL、及び水15mLに溶解し、ヨウ素4.33g(17.0mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合物に440mLのジクロロメタンを加え、亜硫酸ナトリウム10.7g(85.2mmol)を加え、室温で15分間攪拌した。反応混合物に約30gの硫酸ナトリウムを加え、よく攪拌した後、不溶物を濾過した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール49:1→17:3)にて精製し、目的物XPhe 5.10g(67%)を得た。
【0083】
<XIPheの合成>
XPhe 4.85g(3.10mmol)を31mLのピリジンに溶解し、氷冷下、ヒドラジン1水和物1.50mL(26.7mmol)の希釈溶液31mL(ピリジン:酢酸=3:2)を加え、室温で20分間攪拌した。氷冷下、アセトン30mLを加え、0℃で10分間攪拌した後、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→4:1)にて精製し、目的物XIPhe 4.05g(89%)を得た。
【0084】
<XIIPheの合成>
XIPhe 1.00g(0.68mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を7.0mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン5.6mg(0.034mmol)、ジイソプロピルエチルアミン154μL(0.88mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト182μL(0.82mmol)を加えた。混合溶液を、0℃で3時間攪拌した。続いてメタノール0.7mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し、水で洗浄した。酢酸エチル溶液を減圧濃縮し、残渣を10mLの酢酸エチル:ジクロロメタン=4:1に溶解し、−30℃で、68mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄し、濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物XIIPhe 890mg(78%)を得た。
【0085】
【化24】
【0086】
<VIIIGluの合成>
VI 2.49g(2.74mmol)を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジアザビシクロウンデセン0.41mL(2.74mmol)を加え、室温にて3時間攪拌した。反応混合物に、トリフロロ酢酸245μL及びトリエチルアミン230μLのジクロロメタン10mL希釈溶液を加え、反応混合物Aを得た。
モノフルオレニルメチルクルタレート1.02g(3.29mmol)及びN−ヒドロキシこはく酸イミド417mg(3.62mmol)の10mL脱水ジクロロメタン溶液に、氷冷下、ジシクロヘキシルカルボジイミド712mg(3.45mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。不溶物を濾別し、濾液を反応混合物Aに加えた。反応混合物を室温にて2時間攪拌した。続いてメタノール5mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール49:1→9:1)にて精製し、目的物VIIIGlu 1.86g(69%)を得た。
【0087】
<IXGluの合成>
VIIIGlu 490mg(0.5mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を10mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン3.1mg(25μmol)、ジイソプロピルエチルアミン128μL(0.75mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト134μL(0.6mmol)を加えた。混合溶液を、室温で2時間攪拌した。続いてメタノール2mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を4mLのトルエンに溶解し、−30℃で50mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄した。濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物IXGlu 548mg(93%)を得た。
【0088】
<XGluの合成>
VIIIGlu 2.91g(2.97mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を10mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、溶液Aを得た。5’−(2−シアノエチルジイソプロピルホスホロアミジル)−3’レブロイルチミジン1.93g(3.56mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を15mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、溶液Aに加えた。反応混合物にテトラゾール1.04g(14.9mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。続いてメタノール1.0mLを加え、30分間攪拌した。溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン56mL、ピリジン16mL、及び水8mLに溶解し、ヨウ素2.64g(10.4mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合物に250mLのジクロロメタンを加え、亜硫酸ナトリウム6.54gを加え、室温で15分間攪拌した。反応混合物に約15gの硫酸ナトリウムを加え、よく攪拌した後、不溶物を濾過した。濾液を減圧濃縮し、得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール97:3→9:1)にて精製し、目的物XGlu 3.67g(86%)を得た。
【0089】
<XIGluの合成>
XGlu 3.67g(2.56mmol)を20mLのピリジンに溶解し、氷冷下、ヒドラジン1水和物1.2mLの希釈溶液30mL(ピリジン:酢酸=3:2)を加え、室温で10分間攪拌した。氷冷下、アセトン20mLを加え、0℃で10分間攪拌した後、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→4:1)にて精製し、目的物XIGlu 2.81g(82%)を得た。
【0090】
<XIIGluの合成>
XIGlu 600mg(0.45mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を10mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン2.7mg(0.023mmol)、ジイソプロピルエチルアミン115μL(0.67mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト120μL(0.54mmol)を加えた。混合溶液を、室温で3時間攪拌した。続いてメタノール0.9mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を5.5mLのジクロロメタンに溶解し、−30℃で、50mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄し、濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物XIIGlu 655mg(95%)を得た。
【0091】
【化25】
【0092】
<XLysの合成>
VII 1.00g(1.42mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を15mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、5’−(2−シアノエチルジイソプロピルホスホロアミジル)−チミジン1.25g(1.68mmol)を加えた。反応混合物にテトラゾール497mg(7.10mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。続いてメタノール0.5mLを加え、30分間攪拌した。溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン42mL、ピリジン12mL、及び水6mLに溶解し、ヨウ素1.26g(4.97mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合物に120mLのジクロロメタンを加え、亜硫酸ナトリウム3.12gを加え、室温で15分間攪拌した。反応混合物に約11gの硫酸ナトリウムを加え、よく攪拌した後、不溶物を濾過した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール97:3→9:1)にて精製し、目的物XLys 1.73g(89%)を得た。
【0093】
<XILysの合成>
XLys 1.72g(1.26mmol)を10mLのピリジンに溶解し、氷冷下、ヒドラジン1水和物580μLの希釈溶液15mL(ピリジン:酢酸=3:2)を加え、室温で10分間攪拌した。氷冷下、アセトン10mLを加え、0℃で10分間攪拌した後、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→9:3)にて精製し、目的物XILys 1.33g(83%)を得た。
【0094】
<XIILysの合成>
XILys 1.32g(1.04mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン6.4mg(0.052mmol)、ジイソプロピルエチルアミン115μL(0.67mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト270μL(1.57mmol)を加えた。混合溶液を、室温で4時間攪拌した。続いてメタノール2.0mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を8.0mLの酢酸エチルに溶解し、−30℃で、104mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄し、濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物XIILys 1.16g(76%)を得た。
【0095】
【化26】
【0096】
<XIIIの合成>
FMOC−β−アラニン12.5g(40mmol)を200mLの脱水塩化メチレンに溶かし、0℃でN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド4.13g(20mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。不溶物をろ過した後、減圧濃縮し、残渣Aを得た。
デオキシグアノシン1水和物5.71g(20mmol)を脱水ピリジンで懸濁し、減圧濃縮する操作を3回行った。残渣を100mLの脱水ピリジンで懸濁し、0℃でトリメチルクロロシラン8.45mL(66mmol)を加え、室温で1時間攪拌した後、再び0℃に冷却し、本溶液を残渣Aに導入した。反応混合物を室温で2時間攪拌した。氷冷下、20mLの水を加え、室温で一晩攪拌した。本溶液を塩化メチレンで希釈し、水で洗浄した。塩化メチレン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→4:1)にて精製し、目的物XIII 8.90g(79%)を得た。
【0097】
<XIVの合成>
XIII 8.41g(15mmol)を脱水ピリジンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を75mLの脱水ピリジンに溶解し、氷冷下、4,4’−ジメトキシトリチルクロリド5.34g(15.8mmol)を加え、室温にて4時間攪拌した。続いてメタノール15mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→9:1)にて精製し、目的物XIV 11.5g(89%)を得た。
【0098】
<XVの合成>
XIV 7.13g(8.27mmol)を17mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、トリエチルシラン1.58mL、及びジアザビシクロウンデセン1.24mL(8.27mmol)を加え、室温にて3時間攪拌した。反応混合物にトリフロロ酢酸762μL及びピリジン401μLの脱水ジクロロメタン5mL希釈溶液を加え、反応混合物Aを得た。
4−(FMOC−アミノメチル)安息香酸3.35g(9.92mmol)を40mLの脱水ジクロロメタンに懸濁し、アルゴン雰囲気下、オキサリルクロリド1.70mL(18.8mmol)、及びジメチルフォルムアミド15μL(0.19mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、残渣に脱水トルエンを加えた後、減圧濃縮した。残渣を50mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール1.61g(11.9mmol)を加えた後、氷冷し、ピリジン1.20mLを加えた。室温で1時間攪拌後、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、12mL脱水ジクロロメタンを用いて反応混合物Aに加え、室温で3時間攪拌した。続いてメタノール10mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール49:1→9:1)にて精製し、目的物XV 5.20g(63%)を得た。
【0099】
<XVIの合成>
XV 5.10g(5.12mmol)を脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタン混合溶液に溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を40mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン31mg(0.26mmol)、ジイソプロピルエチルアミン1.3mL(7.6mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト1.3mL(5.8mmol)を加えた。混合溶液を、室温で2時間攪拌した。続いてメタノール15mLを加え、30分間攪拌した。溶液を減圧濃縮し、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を55mLの酢酸エチルに溶解し、−30℃で、515mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄した。濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物XVI 5.78g(94%)を得た。
【0100】
<XVIIの合成>
XVI 2.13g(1.78mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を20mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、溶液Aを得た。IVc 1.15g(1.78mmol)を脱水アセトニトリル、脱水ジクロロメタンに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を、8mLの脱水ジクロロメタンを用いて溶液Aに加えた。反応混合物にテトラゾール623mg(8.9mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。続いてメタノール1.0mLを加え、30分間攪拌した。溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。残渣をテトラヒドロフラン28mL、ピリジン8mL、及び水4mLに溶解し、ヨウ素1.6g(6.3mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応混合物に100mLのジクロロメタンを加え、亜硫酸ナトリウム4.0gを加え、室温で15分間攪拌した。反応混合物に約10gの硫酸ナトリウムを加え、よく攪拌した後、不溶物を濾過した。不溶物をろ過し、濾液を減圧濃縮し、得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール19:1→9:1)にて精製し、目的物XVII 2.09g(67%)を得た。
【0101】
<XVIIIの合成>
XVII 1.92g(1.10mmol)を12mLのピリジンに溶解し、氷冷下、ヒドラジン1水和物0.51mLの希釈溶液14mL(ピリジン:酢酸=3:2)を加え、室温で10分間攪拌した。氷冷下、アセトン10mLを加え、0℃で10分間攪拌した後、ジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮した。得られた残渣を中圧クロマトグラフィー(ジクロロメタン−エタノール93:7→17:3)にて精製し、目的物XVIII 1.54g(85%)を得た。
【0102】
<XIXの合成>
XVIII 830mg(0.50mmol)を脱水アセトニトリルに溶解し、減圧濃縮を3回行った。残渣を10mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、氷冷下、ジメチルアミノピリジン3.1mg(0.025mmol)、ジイソプロピルエチルアミン103μL(0.60mmol)を加え、2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミジト123μL(0.55mmol)を加えた。混合溶液を、室温で3時間攪拌した。続いてメタノール1.0mLを加え、30分間攪拌した。反応溶液をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄した。ジクロロメタン溶液を減圧濃縮し、残渣を5mLのジクロロメタンに溶解し、−30℃で、50mLのヘキサンに滴下した。不溶物をろ過し、coldヘキサンで洗浄し、濾物から減圧下、溶媒を除くことにより、目的物XIX 882mg(95%)を得た。
【0103】
<各化合物の構造確認>
前記各化合物の構造確認を、以下のようにして行った。結果を図1〜41に示す。なお、前記I〜IIIの各化合物の構造確認結果は、特願2007−000576号明細書に記載の通りである。
[MALDI−TOF]
脂溶性化合物については、Dithranol 10mg/mL アセトン溶液8μLと、サンプル希釈液(20pmol/Lが目安)2μLを混合し、Massive Targetに1μLを展開し、測定した。検量線用内部標準としてはDithranolマトリックスを用いた。
水溶性のオリゴヌクレオチドについては、まずサンプルの希釈液を水素イオン型イオン交換樹脂にて処理した。別にクエン酸一水素二アンモニウム(DAC)と3−ヒドロキシピコリン酸(HPA)の1:1混合水溶液1μLを、あらかじめTOF−MSターゲットAnchorChipに展開し、更にサンプル液1μLを混合し、ゆっくりと風乾した後に測定した。検量線用標準物質としては規定の検量線用ペプチド混合サンプルを用いた。
[1H−NMR]
各サンプル約5mgを重溶媒に溶解し、測定した。内部標準は重溶媒ピークを基準とした。
[31P−NMR]
外部標準としてPPh3を用い、−6.2ppmを基準として測定した。BCMにて測定を行った。
【0104】
(実施例2:アセトニトリル中でのDBU処理による脱保護の確認)
本発明の機能性分子合成用アミダイドを用いて核酸類似体を合成した後、アセトニトリル中でのDBU処理を行うことにより、保護基(一段階目の基)が外れ、所望の置換基を有する核酸類似体(機能性分子)が合成できていることを以下のようにして確認した。
【0105】
【化27】
【0106】
まず、前記実施例1で得られる化合物V(HPLC Chart1、図42)1.7mM、及び10mM DBU(10%DMF、90%アセトニトリル)溶液を室温で15分間静置し、反応混合物を得た(HPLC Chart2、図43)。更に、HPLC Chart2のメインピークを分取した後、0.1M HCl条件で、90℃、5分間静置し、反応混合物を得た(HPLC Chart3、図44)。
【0107】
次に、市販のC3SS−CPGに、通常のDNA自動合成サイクルにより、前記実施例1で得られたIXLysアミダイドを用いて1残基合成し、CPGに0.01M DBUアセトニトリル溶液5mLを1時間かけて流した後、アセトニトリル、続けて水で洗浄し、0.1M トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩−トリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン緩衝溶液pH=7.0(TCEP−Tris pH=7.0)0.25mLを1時間かけて流し、溶液を回収した(HPLC Chart4、図45)。前記溶液(HPLC Chart4)を10倍希釈した後、0.1M HCl条件で、90℃、5分間静置し、反応混合物を得た(HPLC Chart5、図46)。
【0108】
HPLC Chart3の反応混合物とHPLC Chart5の反応混合物とではほぼ同様なHPLC Chartが得られたが、確認のため、HPLC Chart3の反応混合物とHPLC Chart5の反応混合物を混合した溶液について、HPLC Chartを確認した(HPLC Chart6、図47)。
結果、HPLC Chart3の反応混合物とHPLC Chart5の反応混合物は一致した。したがって、本発明の機能性分子合成用アミダイドを用いて核酸類似体を合成した後、アセトニトリル中でのDBU処理を行うことにより保護基(一段階目の基)が外れ、所望の置換基を含有する核酸類似体(機能性分子)が合成できることが確認できた。
【0109】
(実施例3:アンモニア処理による脱離の確認)
本発明の機能性分子合成用アミダイドを用いて合成された本発明の機能性分子の置換基(二段階目の基)が、アンモニア処理によって脱離可能であり、これにより、前記機能性分子が容易にPCRで増幅可能となることを以下のようにして確認した。
【0110】
DNA合成機を用い、以下の配列:GAAGGTGAAGGTCGGCTGAA88V88V88V88VGCT88V88V88V88VACCATCATCACCATCTT(80量体、配列番号:1(配列表中には、A、C、G、T部位のみを表示))を合成した。「V」としては、IIIg、IIIcの等量混合アミダイドを、「8」としては、XIILeu、XIIPhe、XIIGlu、XIILys、XIXの等量混合アミダイドを用いた。
合成した類似DNAランダムミックスは、アセトニトリル中、0.01Mジアザビシクロウンデセン(DBU)溶液を流すことにより脱保護を行い、0.1 TCEP−tris pH−7.0 250μL水溶液により固相担体から切り出し、得られたSH末端類似DNA溶液に0.5Mマレインイミド水溶液を加えた。CTTCACCTTC(配列番号:2)オリゴマー修飾レジンを用いることにより、修飾類似DNA(機能性分子)を粗精製し、DNA濃度をλ=260で概算した。
【0111】
上記で得られた修飾類似DNA(機能性分子)に、2倍量(V/V)の28%アンモニア水を加え、55℃で8時間加熱してアンモニア処理を行い、置換基の脱離を行った。得られた溶液を減圧濃縮した。
【0112】
上記で得られた各々の修飾類似DNA溶液(アンモニア処理、アンモニア未処理)を、図48に記載の各段階に希釈し、PCR(60サイクル)により増幅した。
【0113】
図48の結果から、アンモニア処理を行った修飾類似DNA(機能性分子)でのみ、正常な80量体付近のバンドが確認できた(レーン3〜6)。このことから、本発明の機能性分子合成用アミダイドを用いて合成された本発明の機能性分子では、アンモニア処理により置換基の脱離を行うことができ、そのため、PCRで容易に増幅することができるようになることが示された。
【0114】
また、前記機能性分子のPCR等の過程で、各アミダイドのダイマーコードが変化しないことを、以下のようにして確認した。
上記と同様にして、以下の配列:GAAGGTGAAGGTCGGAGTCAACG88V88V88V88V88V88V88VGCT88V88V88V88V88V88V88VGGAAATCCCATCACCATCTTC(配列番号:3(配列表中には、A、C、G、T部位のみを表示))を合成し、固相単体から修飾類似DNA(機能性分子)を回収した。粗精製し、アンモニア水処理し、PCR増幅した後に、PCR産物を用いて、クローニング及びシーケンシングをした結果の一部を図49に示す。図49から分かるように、XIILeu(AA)、XIIPhe(AC)、XIIGlu(AT)、XIILys(TA)、XIX(GC)の混合アミダイドを使用した前記「8」に相当する残基では、各アミダイドに対応するAA、AC、AT、TA、GCのみが出現しており、このことから、各アミダイドのダイマーコードはPCR、クローニング及びシーケンシングの過程によって変化しないことが確認できた。
即ち、本発明によれば、例えば、予め各ダイマーアミダイドに導入させた置換基の種類をダイマーコード対応表(ダイマーアミダイドの塩基配列と、置換基の種類との対応表)等で定めておき、前記ダイマーアミダイドから合成された前記機能性分子を標的物質と結合させ、前記標的物質と親和性を有する機能性分子を選別した後に、前記機能性分子から置換基を脱離し、PCR増幅、シーケンシング(塩基配列決定)を行うことで、前記機能性分子に導入されていた置換基の種類を前記ダイマーコード対応表等から確認することができ、これに基づき、前記機能性分子を複製等することが可能となる。
【0115】
(実施例4:標的物質解析方法)
本発明の機能性分子合成用アミダイドを用いて合成された本発明の機能性分子が、標的物質の解析に好適であることを以下のようにして確認した。
【0116】
下記表1で示す5種類のダイマーアミダイド(実施例1で合成されたもの)を用い、以下の修飾類似DNAランダム配列を合成した。前記ダイマーアミダイドで合成させる部位をNpNpで示す。
[修飾類似DNAランダム配列]
ttatcaacaaaatactccaattgact(NpNpG/Cp)7gct(NpNpG/Cp)7ttcgaaagatcccaacgaaaagp(CH2)3SH(配列番号:4(配列表中には、a、c、g、t部位のみを表示))
【0117】
【表1】
【0118】
前記修飾類似DNAランダム配列は、DNA自動合成機(アプライド391A)で合成した。なお、前記修飾類似DNAランダム配列中、「a」、「g」、「c」、「t」部分には下記に示すa、g、c、tアミダイドをそれぞれ用い、「G/C」部分には下記で示したgアミダイド、cアミダイドの何れかを用い、「NpNp」部分には前記表1に示す5種の混合ダイマーアミダイドを用いた。
【0119】
【化28】
【0120】
合成した修飾類似DNAランダム配列ミックス(機能性分子のランダムプール)は、アセトニトリル中、0.01Mジアザビシクロウンデセン(DBU)溶液を流すことにより脱保護を行い、0.1M DTT水溶液により固相担体から切り出した。
【0121】
末端ビオチン化修飾及びエンテロキナーゼ切断部位を持つGFPタンパク質溶液をアビジンレジンに湿潤させ、洗浄することによりGFP結合レジンを作成した。次に、上記修飾類似DNAランダム配列ミックス(機能性分子のランダムプール) 50nmol 200μLを室温で一晩反応させることにより、修飾類似DNA(機能性分子)−GFP−ストレプトアビジン−ビオチン修飾レジンを作成し、50℃で、1mL 50mM NaCl、1mM MgCl2、0.05% Tween−20 Tris−HCl 10mM pH=8.5で10回以上洗浄し、洗浄液に修飾類似DNA(機能性分子)が存在しないことを、定量PCRを用いて確認した。
次に、本レジンにエンテロキナーデを作用させて、GFP流出を蛍光により確認した。GFPを含有する溶液を用い、アンモニア水を加え、加熱して、アンモニア処理を行った。その後、アンモニアを減圧除去した。
【0122】
TTATCAACAAAATACTCCAATTG(配列番号:5)、及びCTTTTCGTTGGGATCTTTC(配列番号:6)をプライマーとしてPCRを行い、DNAを増幅した。ゲル電気泳動を掛け、精製した後、更にPCR増幅した。生成物を、定法に従いクローニングし、100クローンについて配列を決定した。従来の手法では、飛び飛びに入れた固定配列、及びダイマーコーディングルールを満たす配列は約1%であり、その配列について詳細を検討していた。しかしながら、本実施例の手法(本発明の標的物質解析方法)を用いることで、90%以上のクローンについて飛び飛びに入れた固定配列、及びダイマーコーディングルールを満たすことが判った。即ち、90%以上のクローンがデコード(翻訳、解読)出来ることがわかった。予め定めたダイマーコード対応表(表1)によりデコード(翻訳、解読)した後、DNA自動合成装置により修飾類似DNAを合成(複製)し、各々GFPとの結合解離定数を求めた。その結果、20配列がKd=10−7以下であることが確認できた。
【0123】
以上の結果から、本発明の機能性分子を用いた標的物質解析方法(本発明の標的物質解析方法)によれば、標的物質と親和性を有する機能性分子を選別した後に、アンモニア処理を行い前記機能性分子の置換基を脱離することによって、前記機能性分子を容易にPCRで増幅することが可能となり、全体として標的物質の解析を効率的に行うことができるようになることが示された。
【0124】
本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 塩基に置換基が導入された修飾ヌクレオチド単位を含む機能性分子であって、前記置換基が前記塩基から脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする機能性分子。
(付記2) 置換基が、前記置換基中の芳香族カルボン酸構造及び脂肪族カルボン酸構造のいずれかを介して塩基に導入されてなる付記1に記載の機能性分子。
(付記3) 置換基が、前記置換基中の芳香族カルボン酸構造を介して塩基に導入されてなり、かつ前記塩基がアデニン及びシトシンのいずれかである付記1から2のいずれかに記載の機能性分子。
(付記4) 置換基が、前記置換基中の脂肪族カルボン酸構造を介して塩基に導入されてなり、かつ前記塩基がグアニンである付記1から2のいずれかに記載の機能性分子。
(付記5) 置換基が、アンモニア処理により脱離可能である付記1から4のいずれかに記載の機能性分子。
(付記6) 置換基が、アンモニア処理により脱離可能であり、かつアセトニトリル中でのDBU処理では脱離されない付記1から5のいずれかに記載の機能性分子。
(付記7) 異なる置換基を有する二種以上の修飾ヌクレオチド単位を含む付記1から6のいずれかに記載の機能性分子。
(付記8) 付記1から7のいずれかに記載の機能性分子の製造に用いられる下記一般式(I)で表される機能性分子合成用アミダイドであって、置換基Yが塩基Xから脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする機能性分子合成用アミダイド。
【0125】
【化29】
ただし、前記一般式(I)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Qは水素原子又は水酸基を表す。
(付記9) 置換基Yが、前記置換基Y中の芳香族カルボン酸構造及び脂肪族カルボン酸構造のいずれかを介して塩基Xに導入されてなる付記8に記載の機能性分子合成用アミダイド。
(付記10) 置換基Yが、前記置換基Y中の芳香族カルボン酸構造を介して塩基Xに導入されてなり、かつ前記塩基Xがアデニン及びシトシンのいずれかである付記8から9のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイド。
(付記11) 置換基Yが、前記置換基Y中の脂肪族カルボン酸構造を介して塩基Xに導入されてなり、かつ前記塩基Xがグアニンである付記8から9のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイド。
(付記12) 置換基Yが、アンモニア処理により脱離可能である付記8から11のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイド。
(付記13) 置換基Yが、アンモニア処理により脱離可能であり、かつアセトニトリル中でのDBU処理では脱離されない付記8から12のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイド。
(付記14) 置換基Yが更に保護基Zで保護されてなる、下記一般式(II)で表される付記8から13のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイド。
【0126】
【化30】
ただし、前記一般式(II)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Zは保護基を表し、Qは水素原子又は水酸基を表す。
(付記15) 置換基Yを脱離しない条件下で保護基Zを脱保護可能である付記14に記載の機能性分子合成用アミダイド。
(付記16) 保護基Zが、アセトニトリル中でのDBU処理により脱保護可能である付記14から15のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイド。
(付記17) 付記8から16のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイドを用いて機能性分子を合成し、前記機能性分子のランダムプールを作製するランダムプール作製工程と、前記ランダムプールから標的物質と親和性を有する機能性分子を選別する選別工程と、前記標的物質と親和性を有する機能性分子を増幅する増幅工程とを含む標的物質解析方法であって、
前記増幅工程前に、前記標的物質と親和性を有する機能性分子から置換基を脱離する脱離工程を含むことを特徴とする標的物質解析方法。
(付記18) 機能性分子合成用アミダイドを用いて機能性分子を合成する際に、機能性分子合成用アミダイドの置換基を脱離しない条件下で保護基の脱保護を行う付記17に記載の標的物質解析方法。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の機能性分子、機能性分子合成用アミダイド、及び標的物質解析方法は、薬品、ドラッグデリバリー、バイオセンサー、遺伝子の発現量の制御、遺伝子異常による疾病の克服、遺伝子により翻訳される蛋白質の機能解明、反応触媒の開発などの広い分野で好適であり、特に蛋白質の解析に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、実施例1における化合物IVaの1H−NMRスペクトルである。
【図2】図2は、実施例1における化合物IVgの1H−NMRスペクトルである。
【図3】図3は、実施例1における化合物IVcの1H−NMRスペクトルである。
【図4】図4は、実施例1における化合物Vの1H−NMRスペクトルである。
【図5】図5は、実施例1における化合物VIの1H−NMRスペクトルである。
【図6】図6は、実施例1における化合物VIIの1H−NMRスペクトルである。
【図7】図7は、実施例1における化合物VIIILeuの1H−NMRスペクトルである。
【図8】図8は、実施例1における化合物VIIIPheの1H−NMRスペクトルである。
【図9】図9は、実施例1における化合物VIIIGluの1H−NMRスペクトルである。
【図10】図10は、実施例1における化合物IXLysの1H−NMRスペクトルである。
【図11】図11は、実施例1における化合物IXLysの31P−NMRスペクトルである。
【図12】図12は、実施例1における化合物IXLeuの1H−NMRスペクトルである。
【図13】図13は、実施例1における化合物IXLeuの31P−NMRスペクトルである。
【図14】図14は、実施例1における化合物IXPheの1H−NMRスペクトルである。
【図15】図15は、実施例1における化合物IXPheの31P−NMRスペクトルである。
【図16】図16は、実施例1における化合物IXGluの1H−NMRスペクトルである。
【図17】図17は、実施例1における化合物IXGluの31P−NMRスペクトルである。
【図18】図18は、実施例1における化合物XLysの1H−NMRスペクトルである。
【図19】図19は、実施例1における化合物XLeuの1H−NMRスペクトルである。
【図20】図20は、実施例1における化合物XPheの1H−NMRスペクトルである。
【図21】図21は、実施例1における化合物XGluの1H−NMRスペクトルである。
【図22】図22は、実施例1における化合物XILysの1H−NMRスペクトルである。
【図23】図23は、実施例1における化合物XILeuの1H−NMRスペクトルである。
【図24】図24は、実施例1における化合物XIPheの1H−NMRスペクトルである。
【図25】図25は、実施例1における化合物XIGluの1H−NMRスペクトルである。
【図26】図26は、実施例1における化合物XIILysの1H−NMRスペクトルである。
【図27】図27は、実施例1における化合物XIILysの31P−NMRスペクトルである。
【図28】図28は、実施例1における化合物XIILeuの1H−NMRスペクトルである。
【図29】図29は、実施例1における化合物XIILeuの31P−NMRスペクトルである。
【図30】図30は、実施例1における化合物XIIPheの1H−NMRスペクトルである。
【図31】図31は、実施例1における化合物XIIPheの31P−NMRスペクトルである。
【図32】図32は、実施例1における化合物XIIGluの1H−NMRスペクトルである。
【図33】図33は、実施例1における化合物XIIGluの31P−NMRスペクトルである。
【図34】図34は、実施例1における化合物XIIIの1H−NMRスペクトルである。
【図35】図35は、実施例1における化合物XIVの1H−NMRスペクトルである。
【図36】図36は、実施例1における化合物XVの1H−NMRスペクトルである。
【図37】図37は、実施例1における化合物XVIの1H−NMRスペクトルである。
【図38】図38は、実施例1における化合物XVIの31P−NMRスペクトルである。
【図39】図39は、実施例1における化合物XVIIIの1H−NMRスペクトルである。
【図40】図40は、実施例1における化合物XIXの1H−NMRスペクトルである。
【図41】図41は、実施例1における化合物XIXの31P−NMRスペクトルである。
【図42】図42は、実施例2におけるHPLC Chart1である。
【図43】図43は、実施例2におけるHPLC Chart2である。
【図44】図44は、実施例2におけるHPLC Chart3である。
【図45】図45は、実施例2におけるHPLC Chart4である。
【図46】図46は、実施例2におけるHPLC Chart5である。
【図47】図47は、実施例2におけるHPLC Chart6である。
【図48】図48は、実施例3における各群の修飾類似DNA(アンモニア処理及びアンモニア未処理)サンプルのPCR結果を示す電気泳動像である。
【図49】図49は、実施例3においてシーケンシングを行った結果の一部を示す配列図である(配列番号:7〜配列番号:16)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基に置換基が導入された修飾ヌクレオチド単位を含む機能性分子であって、前記置換基が前記塩基から脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする機能性分子。
【請求項2】
置換基が、前記置換基中の芳香族カルボン酸構造及び脂肪族カルボン酸構造のいずれかを介して塩基に導入されてなる請求項1に記載の機能性分子。
【請求項3】
置換基が、アンモニア処理により脱離可能である請求項1から2のいずれかに記載の機能性分子。
【請求項4】
異なる置換基を有する二種以上の修飾ヌクレオチド単位を含む請求項1から3のいずれかに記載の機能性分子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の機能性分子の製造に用いられる下記一般式(I)で表される機能性分子合成用アミダイドであって、置換基Yが塩基Xから脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする機能性分子合成用アミダイド。
【化1】
ただし、前記一般式(I)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Qは水素原子又は水酸基を表す。
【請求項6】
置換基Yが、前記置換基Y中の芳香族カルボン酸構造及び脂肪族カルボン酸構造のいずれかを介して塩基Xに導入されてなる請求項5に記載の機能性分子合成用アミダイド。
【請求項7】
置換基Yが更に保護基Zで保護されてなり、下記一般式(II)で表される請求項5から6のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイド。
【化2】
ただし、前記一般式(II)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Zは保護基を表し、Qは水素原子又は水酸基を表す。
【請求項8】
置換基Yを脱離しない条件下で保護基Zを脱保護可能である請求項7に記載の機能性分子合成用アミダイド。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイドを用いて機能性分子を合成し、前記機能性分子のランダムプールを作製するランダムプール作製工程と、前記ランダムプールから標的物質と親和性を有する機能性分子を選別する選別工程と、前記標的物質と親和性を有する機能性分子を増幅する増幅工程とを含む標的物質解析方法であって、
前記増幅工程前に、前記標的物質と親和性を有する機能性分子から置換基を脱離する脱離工程を含むことを特徴とする標的物質解析方法。
【請求項10】
機能性分子合成用アミダイドを用いて機能性分子を合成する際に、置換基を脱離しない条件下で保護基の脱保護を行う請求項9に記載の標的物質解析方法。
【請求項1】
塩基に置換基が導入された修飾ヌクレオチド単位を含む機能性分子であって、前記置換基が前記塩基から脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする機能性分子。
【請求項2】
置換基が、前記置換基中の芳香族カルボン酸構造及び脂肪族カルボン酸構造のいずれかを介して塩基に導入されてなる請求項1に記載の機能性分子。
【請求項3】
置換基が、アンモニア処理により脱離可能である請求項1から2のいずれかに記載の機能性分子。
【請求項4】
異なる置換基を有する二種以上の修飾ヌクレオチド単位を含む請求項1から3のいずれかに記載の機能性分子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の機能性分子の製造に用いられる下記一般式(I)で表される機能性分子合成用アミダイドであって、置換基Yが塩基Xから脱離可能であるように導入されてなることを特徴とする機能性分子合成用アミダイド。
【化1】
ただし、前記一般式(I)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Qは水素原子又は水酸基を表す。
【請求項6】
置換基Yが、前記置換基Y中の芳香族カルボン酸構造及び脂肪族カルボン酸構造のいずれかを介して塩基Xに導入されてなる請求項5に記載の機能性分子合成用アミダイド。
【請求項7】
置換基Yが更に保護基Zで保護されてなり、下記一般式(II)で表される請求項5から6のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイド。
【化2】
ただし、前記一般式(II)中、Xは塩基を表し、Yは置換基を表し、Zは保護基を表し、Qは水素原子又は水酸基を表す。
【請求項8】
置換基Yを脱離しない条件下で保護基Zを脱保護可能である請求項7に記載の機能性分子合成用アミダイド。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかに記載の機能性分子合成用アミダイドを用いて機能性分子を合成し、前記機能性分子のランダムプールを作製するランダムプール作製工程と、前記ランダムプールから標的物質と親和性を有する機能性分子を選別する選別工程と、前記標的物質と親和性を有する機能性分子を増幅する増幅工程とを含む標的物質解析方法であって、
前記増幅工程前に、前記標的物質と親和性を有する機能性分子から置換基を脱離する脱離工程を含むことを特徴とする標的物質解析方法。
【請求項10】
機能性分子合成用アミダイドを用いて機能性分子を合成する際に、置換基を脱離しない条件下で保護基の脱保護を行う請求項9に記載の標的物質解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【公開番号】特開2008−230985(P2008−230985A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69378(P2007−69378)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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