説明

機能性腸障害を処置する方法

【課題】過敏性腸症候群の治療方法の提供。
【解決手段】式Iの化合物による過敏性腸症候群の治療方法。


(式中、R1及びR2は、水素、ハロゲン等、R3及びR4は、水素又はアルキル基、R5は水素、アルキル基等、Arは、フェニル基、チエニル基等、nは2又は3である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性腸障害を処置する方法に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、2003年8月4日に出願された米国仮出願第60/492,480号および2003年1月13日に提出された米国仮出願第60/440,077号の利益を主張する。上記の出願の全体的な教示は参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
背景技術
機能性腸障害(FBD)は中間または下部の胃腸管に起因し得る症状を有する機能性の胃腸障害である。FBDとしては、過敏性腸症候群(IBS)、機能性腹部鼓脹、機能性便秘および機能性下痢を挙げることができる(例えば、非特許文献1を参照のこと)。これらの障害のうち、IBSのみで、1年間に最大で約3百五十万の通院を占め、胃腸科専門医によって行なわれる最も一般的な診断であり、全ての患者のうち約25%を占めている(非特許文献2)。全体として、IBSは世界中の成人集団のうち最大20%に影響しており、IBSに罹患している患者のうちのわずか10〜50%しか現在医学的処置を受けていないと見積もられる。女性は男性よりも高頻度に影響を受けるようである。さらに、心理的要因、例えば、情緒的ストレスまたは明らかな心理的疾患が、IBSにおいて作動する生理的機構を調節および増悪させる。
【0004】
IBSにおいて容易に特定可能な構造的または生化学的な異常がないことに起因して、医学領域では、IBSの診断を補助するために、Rome II基準として公知のコンセンサスな規定および基準が開発されている。従って、IBSの診断は、除外の診断であり、そして任意の所定の場合に観察された症状に基づく。IBSのRome II基準は、以下の3つの特徴のうちの2つを有する腹部疼痛または不快感を、連続している必要はないが、先行する12ヶ月の少なくとも12週間に含む:
(1)排便による軽快;および/または
(2)便通の頻度の変化を伴う発現;および/または
(3)便の形態(外観)における変化を伴う発現。
【0005】
他の症状、例えば、異常な便通の頻度、異常な便の形態、異常な便の排泄、粘液の排泄、および/または、膨満感もしくは異常な膨張の感覚が、IBSの診断を累積的に裏付ける。
【0006】
さらに、IBSを有する被験体は、内臓の過敏症を示し、その存在は行動研究によってIBSにおける最も一貫した異常であることが示されている。例えば、患者および対照を、バルーンによって誘導されるS状結腸の進行性膨張に応答する疼痛閾値について評価した。同じ容積の膨張で、患者では対照に比較してさらに高い疼痛スコアが報告された。この知見は多くの研究において再現されており、コンピューター制御膨張デバイスである圧調節器の導入によって、膨張手順は標準化されている。内臓の過敏症の2つの概念である、痛覚過敏および異痛症が導入されている。さらに詳細には、痛覚過敏とは、さらに少ない腔内容積でも正常な内臓感覚が経験される状態をいう。一方、異痛症の知見については、正常な内部感覚を通常生じる容積でも疼痛または不快感が経験される(例えば、非特許文献3を参照のこと)。
【0007】
従って、IBSは、異常な疼痛または不快感が排便または用便習慣の変化と関連する機能性腸障害である。従って、IBSは、腸運動の障害、内臓感覚障害および中枢神経障害の要素である。IBSの症状は生理学的な根拠を有するが、IBSに特有の生理学的機構は同定されていない。ある場合には、健常な個体において時折異常な不快感を生じるのと同じ機構が、IBSの症状を生じるように働く。従って、IBSの症状は、腸管の運動反応性における定量的差異、および刺激または自然な収縮に対する感度の増大の結果である。
【0008】
IBSの従来の処置は、患者が被っている症状の重篤度および性質、ならびに任意の心理学的要因が関与するか否かに基づく。IBSの処置は以下の1つ以上を包含してもよい:生活習慣の変化、薬理学的処置および心理学的処置。しかし、IBSの全ての場合に適用可能である一般的な処置はない。
【0009】
特定の場合には、IBS症状を悪化させる食物の排除が推奨される。しかし、このタイプの処置は、IBSの基礎となりIBSに寄与する原因が食餌に関連する場合にしか有用ではない。心理学的な処置は、IBSの処置において有用であり得る。しかし、やはり、この処置でもIBSの症状のための普遍的な治療は得られない。なぜならIBSの全ての例が心理学的な要因に起因するのではないからである。
【0010】
薬理学的に活性な因子がしばしば、IBSを処置するために用いられる。下痢優勢IBSのための、下痢止め、例えば、ロペラミド、ジフェノキシレートおよびリン酸コデイン;ならびに下痢優勢IBSおよび腹部疼痛のための、鎮痙薬、例えば、抗コリン作用薬および平滑筋弛緩薬、例えば、臭化シメトロピウム、臭化ピナベリウム、臭化オクリチウム、トリメブチンおよびメベベリン。ここでも、抗コリン薬および平滑筋弛緩薬によってある程度の疼痛の軽減が得られるが、IBSに関連する他の症状に対する効果は不明確である。
【0011】
三環系抗うつ薬、例えば、アミトリプチリン、イミプラミンおよびドキセピンは、IBSを処置するために頻繁に用いられる。三環系抗うつ薬は、その向精神性効果とは独立している、それが有する抗コリン作用性および鎮痛特性に基づいて、IBSにおける使用のために選択されている。胃腸管上の三環系抗うつ薬の抗コリン効果および鎮痛効果は、24〜48時間内に生じること、および三環系抗うつ薬は、疼痛優勢のIBSおよび便通頻度の増大を有する患者に有益であり得ることが報告されている(非特許文献4を参照のこと)。
【0012】
しかし、IBSを処置する三環系抗うつ薬の使用に関連した所望されない副作用は、この治療の重大な欠点である。例えば、三環系抗うつ薬の抗コリン作用性の特性は、口渇、便秘、視力障害、尿貯留、体重増加、高血圧および心臓の副作用、例えば動悸および不整脈を生じ得る。
【0013】
さらに、多くの患者が抑うつの処置のために代表的に投与される薬物を用いてIBSについての処置を受けるのは気が進まない。すなわち、三環系抗うつ薬は、それの抗コリン作用性および鎮痛の特性のために、IBSにおける使用には処方されるが、この特徴は一般的集団(例えば、医療分野以外の集団)には理解されておらず、三環系抗うつ薬の使用には不名誉がつきまとう。
【0014】
さらに、新規な抗うつ薬、詳細には選択性セロトニン再取り込み阻害剤、例えば、フルオキセチン、セルトラリンおよびパロキセチンは、三環系抗うつ薬よりも有効であることは示されていないが、いくつかの証拠によればこれらの化合物は副作用が少ない。
【0015】
中枢神経系(Central Nervous System)(CNS)と、腸の神経系(Enteric Nervous System)を形成する腸壁中の神経網目状構造との間の関係のおかげで、CNS処置は見込みのあるIBS治療として注目されている(例えば、非特許文献5を参照のこと)。5-HT3レセプターアンタゴニストの使用は、IBSの見込みのある処置として提唱されている。5-HT3レセプターは、神経伝達物質の放出を促進するセロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン、5-HT)の脱分極作用を誘発する、リガンド依存性イオンチャネルである。胃腸管では、5-HT3レセプターは、シナプス後腸管ニューロンに、および求心性知覚線維に位置する。5-HT3レセプターはまた、遠位の胃腸管から脊髄に対して感覚情報を伝える後根神経節ニューロンにも見出されている。これらのレセプターの拮抗作用は、内蔵痛を低下させ、結腸の通過を遅延させ、そして小腸の吸収を増強することが見出されている。
【0016】
実際に、臨床薬理学的研究によって、5-HT3レセプターアンタゴニストは、健常なボランティアにおいて全腸通過時間を遅らせ、IBSを有する患者において結腸の伸展性を増強し、容積に基づく膨張の感覚を減じ、そして下痢の症状を有する患者において結腸を通る移動を遅らせることが示されている。しかし、結腸の手術において生じる便秘および後遺症、ならびに急性虚血性結腸炎は、IBSの処置のための5-HT3レセプターアンタゴニストアロセトロンの使用による重大な有害事象であった。例えば、ある程度致命的なこのタイプの合併症によって、IBSの処置のための5-HT3レセプターアンタゴニストであるアロセトロンは米国市場から一時的に回収された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Thompsonら、Gut,45(補遺II):II43〜II47(1999)
【非特許文献2】CamilleriおよびChoi,Aliment.Pharm.Ther.,11:3〜15(1997)
【非特許文献3】Mayer E.A.およびGebhart,G.F.,Basic and Clinical Aspects of Chronic Abdominal Pain,第9巻、第一版、Amsterdam:Elsevier,1993:3〜28
【非特許文献4】Clouse,R.R.Dig.Dis.Sci.,39:2352〜2363(1994)
【非特許文献5】Woodら、Gut,45(補遺II):II6〜II16(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記の観点から、機能性腸障害の処置、詳細にはIBSの処置のための改良方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕異常な便通頻度、異常な便の形態、異常な便の通過、粘液通過、および腹部膨満感からなる群から選択される過敏性腸症候群の少なくとも1つの症状の治療のための医薬の製造における、式Iの化合物:
【化1−1】


式中、R1およびR2は独立して、水素、ハロゲンもしくはC1-C6アルキル基であるか;またはR1およびR2はそれらが結合している炭素原子と一緒になって、5〜6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基を形成し;
R3およびR4は独立して水素またはC1〜C6アルキル基であり;
R5は水素、C1〜C6アルキル、
【化1−2】


または-C(O)-NH-R6であり、
ここで、mは1〜3の整数であり、Xはハロゲンであり、R6はC1〜C6アルキル基であり;
Arは、置換または非置換のフェニル、2-チエニルまたは3-チエニル基であり;
nは2または3である;
あるいはその薬学的に許容され得る塩の使用であって、治療は、5−HTレセプターの拮抗およびノルアドレナリン再取り込みの阻害により生じる、使用
に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、機能性腸障害の処置、詳細にはIBSの処置のための改良方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、未処置(ビヒクルも薬物も投与せず)の感作されたおよび非感作の雄性ラットについて、ならびにMCI-225で処置された感作された雄性ラットについての、10分間の間の結腸直腸膨張対、膨張圧力を記録した内臓運動応答(腹筋の収縮の回数)のグラフである。
【図2】図2は、未処置(ビヒクルも薬物も投与せず)の感作されたおよび非感作の雄性ラットについて、ならびにビヒクル単独で処置された感作された雄性ラットについての、10分間の間の結腸直腸膨張対、膨張圧力を記録した内臓運動応答(腹筋の収縮の回数)のグラフである。
【図3】図3は、1mg/kg、5mg/kgまたは10mg/kgのオンダンセトロンi.p.(腹腔内)またはビヒクル単独で処置した感作された雄性ラットについての、10分間の間の結腸直腸膨張対、膨張圧力を記録した内臓運動応答(腹筋の収縮の回数)のグラフである。
【図4】図4は、3mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgのニソキセチンi.p.(腹腔内)またはビヒクル単独で処置した感作された雄性ラットについての、10分間の間の結腸直腸膨張対、膨張圧力を記録した内臓運動応答(腹筋の収縮の回数)のグラフである。
【図5】図5は、3mg/kg、10mg/kgまたは30mg/kgのMCI-225i.p.(腹腔内)またはビヒクル単独で処置した感作された雄性ラットについての、10分間の間の結腸直腸膨張対、膨張圧力を記録した内臓運動応答(腹筋の収縮の回数)のグラフである。
【図6】図6は、水回避ストレス(Water Avoidance Stress)(WAS)モデルの、示した対照群における雄性ラットについて1時間あたりの糞石排泄の棒グラフである。
【図7】図7は、WASモデルに供して、3mg/kg、10mg/kgもしくは30mg/kgのMCI-225またはビヒクル単独で処置した雄性ラットについての1時間あたりの糞石排泄の棒グラフである。
【図8】図8は、WASモデルに供して、3mg/kg、10mg/kgもしくは30mg/kgのニソキセチンまたはビヒクル単独で処置した雄性ラットについての1時間あたりの糞石排泄の棒グラフである。
【図9】図9は、WASモデルに供して、1mg/kg、5mg/kgもしくは10mg/kgのオンダンセトロンまたはビヒクル単独で処置した雄性ラットについての1時間あたりの糞石排泄の棒グラフである。
【図10】図10は、WASモデルに供して、オンダンセトロン(10mg/kg)およびニソキセチン(30mg/kg)の併用で処置した雄性ラットについての1時間あたりの糞石排泄の棒グラフである。
【図11】図11は、小腸通過(Small Intestinal Transit)(SIT)げっ歯類モデル(Rodent Model)の、示した対照群(未処置;ビヒクル(プロピレングリコール))における雄性ラットについての小腸通過パーセントの棒グラフである。
【図12】図12は、SITげっ歯類モデルに供し、そして3mg/kg、10mg/kgもしくは30mg/kgのMCI-225、i.p.(腹腔内)またはビヒクル単独で処置した雄性ラットについての小腸通過パーセントの棒グラフである。
【図13】図13は、SITげっ歯類モデルに供し、そして3mg/kg、10mg/kgもしくは30mg/kgのニソキセチン、i.p.(腹腔内)またはビヒクル単独で処置した雄性ラットについての小腸通過パーセントの棒グラフである。
【図14】図14は、SITげっ歯類モデルに供し、そして1mg/kg、5mg/kgもしくは10mg/kgのオンダンセトロン、i.p.(腹腔内)またはビヒクル単独で処置した雄性ラットについての小腸通過パーセントの棒グラフである。
【図15】図15は、SITげっ歯類モデルに供し、そしてニソキセチン(10mg/kg)およびオンダンセトロン(5mg/kg)の併用またはビヒクル単独で処置した雄性ラットについての小腸通過パーセントの棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の要旨
本発明は、処置の必要な被験体において機能性腸障害を処置する方法に関する。本発明は、処置の必要な被験体に対して、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびノルアドレナリン再取り込みインヒビター(NARI)活性を有する治療有効量の化合物を投与する工程を包含する。機能性腸障害は、IBS、機能性腹部膨満感、機能性便秘および機能性下痢から選択され得る。
【0023】
特定の態様では、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性を有する化合物は、チエノ[2,3-d]ピリミジン誘導体、例えば、その内容全体が参考として本明細書に援用される、米国特許第4,695,568号に記載される化合物である。
【0024】
特定の態様では、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性を有する化合物は、構造式I:
【化1−3】

式中、R1およびR2は独立して、水素、ハロゲンもしくはC1〜C6アルキル基であるか;またはR1およびR2はそれが結合されている炭素原子と一緒になって、5〜6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基を形成する;R3およびR4は独立して水素またはC1〜C6アルキル基であり;R5は水素、C1〜C6アルキル、
【化2】

または-C(O)-NH-R6
式中、mは約1〜約3の整数であり、Xはハロゲンであり、そしてR6はC1〜C6アルキル基であり;
Arは置換または非置換フェニル、2-チエニルまたは3-チエニル基であり;そしてnは2もしくは3である、
によって示されるもの、またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0025】
特定の態様では、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性を有する化合物は、式:
【化3】

によって示されるもの、またはその薬学的に受容可能な塩である。この化合物は一般には、MCI-225またはDDP-225と呼ばれる。この式に示される構造の化学名は:4-(2-フルオロフェニル)-6-メチル-2-(1-ピペラジニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン、である。
【0026】
特定の態様では、機能性腸障害はIBSである。特定の態様では、このIBSは、下痢優勢IBSである。別の態様では、このIBSは便秘/下痢交替型IBSである。さらなる態様では、このIBSは非便秘のIBSである。
【0027】
本発明はさらに、機能性腸障害の処置の必要な被験体においてそれを処置する方法に関するが、この方法は、この被験体に対して治療有効量の5-HT3レセプターアンタゴニストおよび治療有効量のNARIを同時投与する工程を包含する。この機能性腸障害は、IBS、機能性腹部膨満感、機能性便秘および機能性下痢から選択され得る。
【0028】
本発明はさらに、機能性腸障害の処置の必要な被験体においてそれを処置する方法に関するが、この方法は、この被験体に対して第一の量の5-HT3レセプターアンタゴニストおよび第二の量のNARIを同時投与する工程含み、ここでこの第一および第二の量は一緒になって、治療有効量を構成する。この機能性腸障害は、IBS、機能性腹部膨満感、機能性便秘および機能性下痢から選択され得る。
【0029】
特定の態様では、この同時投与方法を用いて、IBSを処置することができる。特定の態様では、IBSは下痢優勢IBSである。別の態様では、IBSは、便秘/下痢交替型IBSである。さらなる態様では、IBSは非便秘のIBSである。
【0030】
さらに、本発明は、機能性腸障害の処置の必要な被験体においてそれを処置する方法に関するが、この方法は、治療有効量のNARIを投与する工程を包含する。この態様では、NARIは、抗コリン作用性効果が実質的にないことによって特徴付けられる。この機能性腸障害は、IBS、機能性腹部膨満感、機能性便秘および機能性下痢から選択され得る。
【0031】
特定の態様では、NARIの投与を用いて、IBSを処置することができる。詳細な態様では、IBSは下痢優勢IBSである。別の態様では、IBSは、便秘/下痢交替型IBSである。さらなる態様では、IBSは非便秘のIBSである。
【0032】
本発明はさらに、機能性腸障害の処置に有用な医薬組成物に関する。この医薬組成物は、第一の量の5-HT3レセプターアンタゴニスト化合物および第二の量のNARI化合物を含む。本発明の医薬組成物は必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアを含んでもよい。5-HT3レセプターアンタゴニストおよびNARIは各々、治療有効量で医薬組成物に存在し得る。別の態様では、この第一および第二の量は一緒になって、治療有効量を構成してもよい。
【0033】
この医薬組成物を用いて、機能性腸障害、例えば、IBS、機能性腹部膨満感、機能性便秘および機能性下痢からなる群より選択される機能性腸障害を処置することができる。特定の態様では、この機能性腸障害はIBSである。特定の態様では、このIBSは、下痢型IBSである。別の態様では、このIBSは、便秘/下痢交代型IBSである。さらなる態様では、IBSは非便秘型IBSである。
【0034】
本発明はさらに、機能性腸障害の処置のための医薬の製造のための5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性を有する化合物の使用に関する。さらに、本発明はまた、機能性腸障害の処置のための医薬の製造のための第一の量の5-HT3レセプターアンタゴニスト化合物および第二の量のNARI化合物を含む医薬組成物の使用に関する。機能性腸障害の処置のための医薬の製造のために用いられるこの医薬組成物は必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアを含んでもよい。5-HT3レセプターアンタゴニストおよびNARIは各々が、この医薬組成物中に、治療有効量で存在してもよいし、またはこの第一および第二の量は一緒になって、治療有効量を含んでもよい。さらに、本発明は機能性腸障害の処置のための医薬の製造のためのNARIの使用に関する。
【0035】
本発明の前述および他の目的、特徴および利点は、本発明の好ましい態様の以下のさらに詳細な説明から明らかである。
【0036】
発明の詳細な説明
本発明は、処置の必要な被験体において機能性腸障害を処置する方法に関する。詳細には、本発明は、処置の必要な被験体においてIBSを処置する方法に関する。
【0037】
モノアミン神経伝達物質:
モノアミン神経伝達物質、例えば、ノルアドレナリン(ノルエピネフリンとも呼ばれる)、セロトニン(5-ヒドロキシトリプトアミン、5-HT)およびドーパミンは公知であり、これらの神経伝達物質における妨害は、抑うつのような多くのタイプの障害において示されている。これらの神経伝達物質は、ニューロンの末端から、シナプス間隙と呼ばれる小さい隙間を横切って移動し、第二のニューロンの表面上のレセプター分子に結合する。この結合は、細胞内変化を誘発し、これがシナプス後ニューロンにおける応答または変化を開始または活性化する。不活性化は、再取り込みと呼ばれる、シナプス前ニューロンへの神経伝達物質を戻すという輸送によって主に生じる。これらのニューロンは、中枢神経系(CNS)および腸内神経系(Enteric Nervous System)(ENS)の両方において見ることができる。
【0038】
ノルアドレナリンおよびノルアドレナリン再取り込みインヒビター:
本明細書において用いる場合、ノルアドレナリン再取り込みインヒビター(NorAdrenaline Reuptake Inhibitor)(NARI)という用語は、ノルアドレナリン輸送機能を阻害し得る因子(例えば、分子、化合物)を指す。例えば、NARIは、この輸送体に対するノルアドレナリン輸送体のリガンドの結合を阻害し、そして/または輸送(例えば、ノルアドレナリンの取り込みまたは再取り込み)を阻害し得る。従って、被験体におけるノルアドレナリン輸送体機能の阻害は、生理学的に活性なノルアドレナリンの濃度の増大を生じ得る。ノルアドレナリン作動性再取り込みインヒビター(NorAdrenergic Reuptake Inhibitor)およびノルエピネフリン再取り込みインヒビター(NorEpinephrine Reuptake Inhibitor)(NERI)は、ノルアドレナリン再取り込みインヒビター(NARI)と同義であることが理解される。
【0039】
本明細書において用いる場合、ノルアドレナリン輸送体とは、天然に存在するノルアドレナリン輸送体(例えば、哺乳動物ノルアドレナリン輸送体(例えば、ヒト(Homo sapiens)ノルアドレナリン輸送体、マウス(例えば、ラット、マウス)ノルアドレナリン輸送体))を指し、そして対応する天然に存在するノルアドレナリン輸送体のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有するタンパク質(例えば、組み換えタンパク質)を指す。この用語は、天然に存在する改変体、例えば、多形性または対立遺伝子改変体およびスプライスバリアントを包含する。
【0040】
特定の実施形態では、NARIは、ノルアドレナリン輸送体に対するリガンド(例えば、ノルアドレナリンのような天然のリガンド、またはニソキセチンのような他のリガンド)の結合を阻害し得る。他の実施形態では、NARIは、ノルアドレナリン輸送体に結合し得る。例えば、好ましい実施形態では、NARIはノルアドレナリン輸送体に結合し得、それによってこの輸送体に対するリガンドの結合を阻害し、このリガンドの輸送を阻害する。別の好ましい実施形態では、NARIは、ノルアドレナリン輸送体に結合し、それによって輸送を阻害し得る。
【0041】
化合物のNARI活性は、適切なアッセイを使用して決定できる。さらに詳細には、ノルアドレナリン再取り込みについての阻害定数(Ki)を決定するために、ノルアドレナリン(NA)取り込みの阻害をモニターするアッセイを用いることができる。例えば、放射標識ノルアドレナリン、例えば、[3H]NAおよび目的の試験化合物は、取り込みに適切な条件下で脳組織またはその適切な画分、例えば、ラット脳組織由来のシナプトソーム画分(一般に受容される技術に従って回収および単離される)とともにインキュベートされ得、そしてこの組織または画分における[3H]NAの再取り込みの量が(例えば、液体シンチレーション分光測定によって)決定され得る。IC50値は、非線形回帰分析によって算出され得る。次いで、この阻害定数であるKi値はCheng-Prusoff式:
【数1】

を用いてIC50値から算出可能であり、
ここで[L]=このアッセイで用いられる遊離の放射性リガンドの濃度、そしてKd=放射性リガンドの平衡解離定数である。非特異的取り込みを決定するために、同じアッセイに従って、ただし試験化合物の非存在下では4℃で(すなわち、取り込みに適切でない条件下)インキュベーションを行なってもよい。
【0042】
好ましい実施形態では、NARI活性は、Eguchiら、Arzneim.-Forschung/Drug Res.,47(12):1337〜47(1997)に詳細に記載される手順に従って、上記の放射性リガンド取り込みアッセイを用いて決定される。
【0043】
詳細には、ラットを断頭して、皮質組織、視床下部組織、海馬組織および線条体組織を迅速に切り出す。10容積の氷冷0.32mol/Lスクロース中で、組織をホモジナイズする(Teflon乳棒を備えるPotterホモジナイザー)。P2画分は、10分間の1000×gおよび20分間の11500×gの遠心分離によって得て、クレブス-リンゲルリン酸緩衝液、pH7.4(124mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、20mmol/L Na2HPO4、1.2mmol/L KH2PO4、1.3mmol/L MgSO4、0.75mmol/L CaCl2、10mmol/Lグルコース)に懸濁する。皮質および視床下部のシナプトソームにおいて[3H]NA取り込みアッセイを行なう。
【0044】
このアッセイチューブは、放射標識ノルアドレナリン[3H]NAを、0.2mLの容積で、化合物を5以上の濃度で0.1mLの容積で、そして上記の酸化緩衝液を0.5mLの容積で含む。37℃で5分間のプレインキュベーション後、シナプトソーム画分を0.2mLの容積で添加することによって、取り込みを開始する。インキュベーション混合物における[3H]NAの最終濃度は0.25μmol/Lである。この反応は、セル・ハーベスターを用い減圧下でWhatman GF/Bガラスファイバーフィルターを通した濾過によって5分後に停止させる。このフィルターを4mLの生理食塩水を用いて3回リンスして、10mLのAtomlight(Du Pont/NEN Research Products)を含むシンチレーションバイアルに入れる。放射能は、液体シンチレーション分光測定によって測定する。非特異的取り込みの決定のために、試験化合物の添加なしに4℃でインキュベーションを行なう。IC50値は、非線形回帰分析によって算出する。インヒビター定数Ki値は、Cheng-Prusoff式を用いてIC50値から算出する。
【0045】
本発明における使用に適切なNARI化合物は、約500nmol/L以下、例えば、約250nmol/L以下、例えば約100nmol/L以下というNARI活性についてのKi値を有する。NARI活性についてのKi値は約100nmol/L以下であることが好ましい。特定の化合物についてのKiの正確な値は、決定のために使用されるアッセイ条件(例えば、放射性リガンドおよび組織供給源)に依存して変化し得ることが理解される。従って、NARI活性は、Eguchiら、Arzneim.-Forschung/Drug Res.,47(12):1337〜47(1997)に記載され、そして上記に詳細に考察される放射性リガンド結合アッセイに従って、本質的に評価されることが好ましい。
【0046】
さらに、十分なNARI活性を有するためには、NARI化合物は:
a)抗コリン作用性効果が実質的にない;
b)セロトニン再取り込みの阻害に比較したノルアドレナリン再取り込みの選択的な阻害;および
c)ドーパミン再取り込みの阻害に比較したノルアドレナリン再取り込みの選択的な阻害、
からなる群より選択される1つ以上の特徴を保有することが好ましい。
【0047】
セロトニンの阻害またはドーパミン再取り込みに比較して、ノルアドレナリン再取り込みの選択的阻害は、それぞれの再取り込み阻害についてのKi値を比較することによって決定できる。セロトニンおよびドーパミン再取り込みの阻害定数は、ノルアドレナリンについて上記のように決定され得るが、これには、評価している活性について適切な放射性リガンドおよび組織を使用する(例えば、視床下部または皮質の組織を用い、例えば、セロトニンについては[3H]5-HT、そして例えば、線条体組織を用い、ドーパミン(DA)については[3H]DA)。
【0048】
セロトニン再取り込み阻害およびドーパミン作動性再取り込み阻害を決定する好ましい方法は、Eguchiら、Arzneim.-Forschung/Drug Res.,47(12):1337〜47(1997)に記載される。詳細には、ラットを断頭して、皮質組織、視床下部組織、海馬組織および線条体組織を迅速に切り出す。10容積の氷冷0.32mol/Lスクロース中で、組織をホモジナイズする(Teflon乳棒を備えるPotterホモジナイザー)。10分間の1000×gおよび20分間の11500×gの遠心分離によってP2画分を得て、クレブス-リンゲルリン酸緩衝液、pH7.4(124mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、20mmol/L Na2HPO4、1.2mmol/L KH2PO4、1.3mmol/L MgSO4、0.75mmol/L CaCl2、10mmol/Lグルコース)に懸濁する。皮質、視床下部および海馬のシナプトソームにおいて[3H]5-HT取り込みアッセイを行ない、そして[3H]DA取り込みアッセイを線条体シナプトソームで行なう。
【0049】
このアッセイチューブは、適切な放射標識リガンド(すなわち、[3H]5-HTまたは[3H]DA)を0.2mLの容積で、化合物を5以上の濃度で0.1mLの容積で、そして上記の酸化緩衝液を0.5mLの容積で含む。37℃で5分間のプレインキュベーション後、シナプトソーム画分を0.2mLの容積で添加することによって、取り込みを開始する。線条体インキュベーション混合物における[3H]NAの最終濃度は0.4μmol/Lである。皮質、視床下部および海馬のシナプトソームインキュベーション混合物における[3H]5-HTの最終濃度は0.02μmol/L、0.04μmol/Lおよび0.08μmol/Lである。この反応は、セル・ハーベスターを用い減圧下でWhatman GF/Bガラスファイバーフィルターを通した濾過によって5分後([3H]5-HT)または3分後([3H]DA)に停止される。このフィルターを4mLの生理食塩水を用いて3回リンスして、10mLのAtomlight(Du Pont/NEN Research Products)を含むシンチレーションバイアルに入れる。放射能は、液体シンチレーション分光測定によって測定する。非特異的取り込みの決定のために、試験化合物の添加なしに4℃でインキュベーションを行なう。IC50値は、非線形回帰分析によって算出する。阻害定数Ki値は、Cheng-Prusoff式を用いてIC50値から算出する。
【0050】
ノルアドレナリン、セロトニンおよび/またはドーパミン取り込みの阻害についてのKi値の決定後に、活性の比を決定してもよい。セロトニン再取り込みおよび/またはドーパミン作動性再取り込みの阻害に比較した、ノルアドレナリン再取り込みの選択的阻害とは、ノルアドレナリン(再)取り込みの阻害についてのKiの約10倍であるセロトニン(再)取り込みおよび/またはドーパミン(再)取り込みの阻害についてのKi値を有する化合物をいう。すなわち、セロトニン(再)取り込みの阻害Ki/ノルアドレナリン(再)取り込みの阻害Kiの比は、約10以上、例えば、約15以上、約20以上、例えば、約30、40または50以上である。同様に、ドーパミン(再)取り込みの阻害Ki/ノルアドレナリン(再)取り込みの阻害Kiの比は、約10以上、例えば、約15以上、約20以上、例えば、約30、40または50以上である。
【0051】
比較のためのKi値は、上記に詳細に考察されるEguchiらの方法に従って決定されることが好ましい。選択性阻害を決定するために比較される、NARI活性およびセロトニン再取り込み活性の阻害についてのKi値は、ラット視床下部組織由来のシナプトソーム調製物を用いてEguchiらの方法に従って決定される。さらに、選択性阻害を決定するために比較される、NARI活性およびドーパミン再取り込み活性の阻害についてのKi値は、ノルアドレナリン取り込みの阻害については、ラット視床下部組織由来、そしてドーパミン取り込みの阻害についてはラット線条体組織由来のシナプトソーム調製物を用いてEguchiらの方法に従って決定することが最も好ましい。
【0052】
別の実施形態では、NARIは、抗コリン作用性効果が実質的に存在しないことによって特徴付けられる。本明細書において用いる場合、抗コリン作用性効果が実質的に存在しないとは、ムスカリン性レセプターに対する結合について約1μmol/L以上のIC50値を有する化合物をいう。ムスカリン性レセプターに対する結合についてのIC50値は、適切なアッセイ、例えば、ムスカリン性レセプターに対する適切な放射性リガンドの結合を化合物が阻害する能力を決定するアッセイを用いて決定できる。ムスカリン性レセプターに対する化合物の結合についてのIC50値の決定のために好ましいアッセイは、Eguchiら、Arzneim.-Forschung/Drug Res.,47(12):1337〜47(1997)に記載される。
【0053】
詳細には、ムスカリン性レセプターに対する結合を決定するための結合アッセイは、ラット大脳皮質から単離された組織で行なうことができる。この緩衝液は、任意の適切な緩衝液、例えば、50mmol/L Tris-HCl、pH7.4である。好ましい放射標識リガンドは、[3H]QNB(3-キヌクリジニルベンジレート)であり、0.2nmol/Lの最終濃度で存在する。試験化合物を、種々の濃度で添加し、得られた混合物を37℃で60分間インキュベートする。この反応は、ガラスファイバーフィルター上への急速減圧濾過によって終了される。フィルター上にトラップされた放射能はシンチレーション分光測定によって測定される。100μmol/Lのアトロピンを用いて非特異的結合を決定する。IC50値は、非線形回帰分析によって算出できる。
【0054】
特定の実施形態では、NARI化合物は、ベンラファクシン、デュロキセチン、ブプロプリオン(buproprion)、ミルナシプラン、レボキセチン、レフェプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トモキセチン、マプロチリン、オキサプロチリン、レボプロチリン、ビロキサジンおよびアトモキセチンから選択され得る。
【0055】
好ましい実施形態では、NARI化合物は、レボキセチン、レフェプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トモキセチン、マプロチリン、オキサプロチリン、レボプロチリン、ビロキサジンおよびアトモキセチンから選択され得る。
【0056】
セロトニン(SETOTONIN)および5-HT3レセプターアンタゴニスト:
神経伝達物質セロトニンは、1948年に最初に発見され、かなりの科学的研究の題材であり続けている。セロトニンはまた、5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)とも呼ばれ、別個の5-HTレセプター上の中央および抹消の両方で作用する。現在、セロトニンレセプターの14個のサブタイプが認識されており、7つのファミリー、5-HT1から5-HT7として描写される。これらのサブタイプは、配列相同性を共有して、特定のリガンドについてその特異性にある程度の類似性を示す。5-HTレセプターの命名法および分類の概説は、Neuropharm.,33:261〜273(1994)およびPharm.Rev.,46:157〜203(1994)に見出すことができる。
【0057】
5-HT3レセプターは、ヒト胃腸管の腸内ニューロンならびに他の末梢および中央の位置に広範に分布する、リガンド依存性イオンチャネルである。これらのチャネルの活性化および得られたニューロン脱分極は、内臓疼痛、結腸通過および胃腸分泌の調節に影響することが見出されている。5-HT3レセプターの拮抗作用は、腸の感覚および運動の機能に影響する可能性を有する。
【0058】
本明細書において用いる場合、5-HT3レセプターとは、天然に存在する5-HT3レセプター(例えば、哺乳動物5-HT3レセプター(例えば、ヒト(Homo sapiens)5-HT3レセプター、マウス(例えば、ラット、マウス)5-HT3レセプター))を指し、そして対応する天然に存在する5-HT3レセプターのアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を有するタンパク質(例えば、組み換えタンパク質)を指す。この用語は、天然に存在する改変体、例えば、多形性または対立遺伝子改変体およびスプライスバリアントを包含する。
【0059】
本明細書において用いる場合、5-HT3レセプターアンタゴニストという用語は、5-HT3レセプター機能を阻害し得る因子(例えば、分子、化合物)を指す。例えば、5-HT3レセプターアンタゴニストは、このレセプターに対する5-HT3レセプターのリガンドの結合を阻害し得、そして/または5-HT3レセプター媒介性応答を阻害し得る(例えば、5-HT3がvon Bezold-Jarisch反射を誘発する能力を低下し得る)。
【0060】
特定の実施形態では、5-HT3レセプターアンタゴニストは、5-HT3レセプターに対するリガンド(例えば、セロトニン(5-HT3)のような天然のリガンド、またはGR65630のような他のリガンド)の結合を阻害し得る。特定の実施形態では、この5-HT3レセプターアンタゴニストは、5-HT3レセプターに結合し得る。例えば、好ましい実施形態では、5-HT3レセプターアンタゴニストは、5-HT3レセプターに対して結合し得、それによってこのレセプターに対するリガンドの結合、およびリガンド結合に対する5-HT3レセプター媒介性の応答を阻害する。別の好ましい実施形態では、5-HT3レセプターアンタゴニストは、5-HT3レセプターに結合し得、それによって5-HT3レセプター媒介性応答を阻害し得る。
【0061】
5-HT3レセプターアンタゴニストは、同定することが可能であり、そして活性は、任意の適切な方法によって、例えば、5-HT3レセプターに対する放射性リガンドの結合をある化合物が阻害する能力を評価する方法によって(例えば、Eguchiら、Arzneim.-Forschung/Drug Res.,47(12):1337〜47(1997)およびG.Kilpatrickら、Nature,330:746〜748(1987)を参照のこと)、および/またはネコもしくはラットにおける5-HT3誘導性von Bezold-Jarisch(B-J)反射に対するそれらの効果によって(それぞれ、Butlerら、Br.J.Pharmacol.,94:397〜412(1988)およびItoら、J.Pharmacol.Exp.Ther.280(1):67〜72(1997)に記載の一般的方法に従う)、評価できる。
【0062】
好ましい実施形態では、化合物の5-HT3レセプターアンタゴニスト活性は、Eguchiら、Arzneim.-Forschung/Drug Res.,47(12):1337〜47(1997)に記載の方法に従って決定できる。詳細には、5-HT3レセプターに対する結合の決定のための結合アッセイは、150mmol/LのNaCl、0.35mmol/Lの放射標識リガンド([3H]GR65630)および試験化合物を6以上の濃度で含有する20mmol/L HEPES緩衝液(pH7.4)において、N1E-1 15マウス神経芽細胞腫細胞(American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号CRL-2263)で、25℃で60分間、行なうことができる。この反応は、ガラスファイバーフィルター上への急速減圧濾過によって終了される。フィルター上にトラップされた放射能はシンチレーション分光測定によって測定される。1μmol/LのMDL-7222(エンド-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イル-3,5-ジクロロ安息香酸塩を用いて非特異的結合を決定する。IC50値は、非線形回帰分析によって算出する。Cheng-Prusoff式を用いてIC50値から親和性定数Ki値を算出する。
【0063】
本発明における使用に適切な5-HT3レセプターアンタゴニスト活性を有する化合物は、5-HT3レセプターについてのオンダンセトロンのKiの約250倍以下という5-HT3レセプターについての親和性(Ki)を有する。オンダンセトロンに対するこの相対的活性(5-HT3レセプターについての試験因子のKi/5-HT3レセプターについてのオンダンセトロンのKi)は、適切なアッセイを制御された条件、例えば、試験されている因子において主に異なる条件下で用いて目的の化合物およびオンダンセトロンを評価することによって決定できる。5-HT3レセプターアンタゴニスト活性の相対的活性は、オンダンセトロンの活性の約200倍以下、例えばオンダンセトロンの活性の約150倍以下、例えば、オンダンセトロンの活性の約100倍以下、例えば、オンダンセトロンの活性の約50倍以下であることが好ましい。特に好ましい実施形態では、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性を有する化合物は、オンダンセトロンに対して約10以下という相対活性を有する。
【0064】
特定の実施形態では、5-HT3レセプターアンタゴニストは、インジセトロン、YM-114((R)-2,3-ジヒドロ-1-[(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンゾイミダゾール-5-イル-)カルボニル]-1H-インドール)、グラニセトロン、タリペキソール、アザセトロン、ベメセトロン、トロピセトロン、ラモセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、レリセトロン、アロセトロン、N-3389、ザコプリド、シランセトロン、E-3620([3(S)-エンド]-4-アミノ-5-クロロ-N-(8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1-]オクト-3-イル-2[(1−メチル−2−ブチニル)オキシ]ベンズアミド)、リントプリド、KAE-393、イタセトロン、ザトセトロン、ドラセトロン、(±)-ザコプリド、(±)-レンザプリド、(-)-YM-060、DAU-6236、BIMU-8、およびGK-128[2-[2-メチルイミダゾール-1-イル)メチル]-ベンゾ[f]チオクロメン-1-オン1塩酸塩半水化物]から選択され得る。
【0065】
好ましい実施形態では、5-HT3レセプターアンタゴニストは、インジセトロン、グラニセトロン、アザセトロン、ベメセトロン、トロピセトロン、ラモセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、レリセトロン、アロセトロン、シランセトロン、イタセトロン、ザトセトロンおよびドラセトロンから選択され得る。
【0066】
本発明は、処置の必要な被験体における機能性消化管障害を処置する方法に関する。この方法は、処置の必要な被験体に対して治療有効量の5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性を有する化合物を投与する工程を包含する。この機能性消化管障害は、IBS、機能性腹部膨満感、機能性便秘および機能性下痢からなる群より選択され得る。
【0067】
特定の実施形態では、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性を有する化合物は、チエノ[2,3-d]ピリミジン誘導体、例えば、その全体が参考として本明細書に援用される、米国特許第4,695,568号に記載のようなものである。
【0068】
特定の実施形態では、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性を有する化合物は、式I:
【化4】

によって示され、
ここでR1およびR2は独立して、水素、ハロゲンもしくはC1-C6アルキル基であるか;またはR1およびR2はそれが結合されている炭素原子と一緒になって、5〜6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基を形成する;R3およびR4は独立して水素またはC1〜C6アルキル基であり;R5は水素、C1〜C6アルキル、
【化5】

または-C(O)-NH-R6であり、
ここでmは約1〜約3の整数であり、Xはハロゲンであり、そしてR6はC1〜C6アルキル基である;
【0069】
Arは置換または非置換フェニル、2-チエニルまたは3-チエニル基であり;そしてnは2もしくは3であるか;またはその薬学的に受容可能な塩である。
【0070】
置換フェニル、2-チエニルまたは3-チエニル基とは、フェニル、2-チエニルまたは3-チエニル基を指し、そこで置換に利用可能な水素原子の少なくとも1つが水素以外の基(すなわち、置換基)で置換されている。複数の置換基がフェニル、2-チエニルまたは3-チエニル環上に存在し得る。複数の置換基が存在する場合、この置換基は同じであっても異なってもよく、そして置換はこの環のいずれの置換部位であってもよい。置換基は例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素またはイオジン);アルキル基、例えば、C1-C6アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル基;アルコキシ基、例えば、C1-C6アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ;ヒドロキシ基;ニトロ基;アミノ基;シアノ基;またはアルキル置換アミノ基、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノまたはジエチルアミノ基であってもよい。
【0071】
C1-C6アルキル基とは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基をいう。例えば、C1-C6アルキル基は、メチル、エチル、プロピルなどのような直鎖アルキルであってもよい。あるいは、アルキル基は、分枝した、例えば、イソプロピル基またはt-ブチル基であってもよい。
【0072】
ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素をいう。
【0073】
特定の実施形態では、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性を有する化合物は、式Iによって示され、ここでR1はC1-C6アルキル基であり、そしてArは、置換フェニルである。この実施形態では、フェニル基はハロゲンで置換されることが好ましい。
【0074】
特に好ましい態様では、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性を有する化合物は、式Iによって示され、ここでnは2であり、R1は、C1〜C6アルキル基であり、そしてArは、置換フェニルである。好ましくは、このフェニル基は、ハロゲンで置換され、そしてR1のアルキル基はメチル基である。
【0075】
さらに別の態様では、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性を有する化合物は、式Iによって示され、ここでR1は、C1〜C6アルキル基またはハロゲンであり、そしてArは、非置換フェニルである。さらに、R1がアルキル基であり、そしてArが非置換フェニルである場合、R2はまた水素もしくはC1〜C6アルキル基であってもよい。
【0076】
特に好ましい態様では、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性を有する化合物は、式Iによって示され、ここでnは2であり、R1は、C1〜C6アルキル基であり、そしてArは、非置換フェニルである。特定の態様では、nが2であり、R1はC1〜C6アルキル基であり、そしてArは非置換フェニルであり、R2は、水素またはC1〜C6アルキル基であってもよい。
【0077】
特に好ましい態様では、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性を有する化合物は、構造式II:
【0078】
【化6】

【0079】
またはその薬学的に許容され得る塩によって示される。この化合物は通常、当該分野ではMCI-225と呼ばれ、DDP-225とも呼ばれる。この式に記されるこの構造の化学名は:4-(2-フルオロフェニル)-6-メチル-2-(1-ピペラジニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン、である。
【0080】
特定の態様では、機能性腸障害はIBSである。特定の態様では、IBSは下痢優勢IBSである。別の態様では、IBSは便秘/下痢交替型IBSである。さらなる態様では、IBSは非便秘性のIBSである。
【0081】
別の態様では、この方法はさらに、治療有効量の1つの(すなわち、1つ以上の)さらなる治療剤を投与する工程を含む。
【0082】
5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性を有する化合物、例えば、構造式IおよびIIによって示される化合物は、それらが示し得る二重の治療形態の作用のおかげでIBSのような機能性腸障害を処置するのに有用である。すなわち、5-HT3レセプターおよびノルアドレナリン再取り込み機構の両方の機能を調節する能力は、処置を受けている被験体に強化された処置レジメンを提供し得る。
【0083】
好ましい態様では、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性を有する化合物、例えば、式IおよびIIの化合物は、
a)抗コリン作用性効果が実質的にない;
b)セロトニン再取り込みの阻害に比較したノルアドレナリン再取り込みの選択的な阻害;および
c)ドーパミン再取り込みの阻害に比較したノルアドレナリン再取り込みの選択的な阻害、
からなる群より選択される1つ以上の特徴を保有する。
【0084】
例えば、特定の化合物MCI-225は、実質的に抗コリン作用性活性を有さない、選択的NARIおよび5-HT3レセプターアンタゴニストであることが示されている。Eguchiら、Arzneim-Forschung/Drug Res.,47(12):1337〜47(1997)は、種々のラット脳組織における[3H]モノアミン神経伝達物質ノルアドレナリン、セロトニンおよびドーパミン取り込みについてのMCI-225の阻害定数を報告した。さらに詳細には、MCI-225は、ラット海馬組織由来のシナプトソームによる[3H]NAおよび[3H]5-HTの取り込みを阻害し、それぞれの阻害定数はKi=35.0nmol/LおよびKi=491nmol/Lであった。さらに、MCI-225は、ラット皮質組織組織由来のシナプトソームによる[3H]NAおよび[3H]5-HTの取り込みを阻害し、それぞれの阻害定数はKi=0.696nmol/LおよびKi=1070nmol/Lであった。MCI-225はまた、ラット海馬組織由来のシナプトソームによるセロトニンの取り込みを阻害定数Ki=244nmol/Lで阻害することが報告された。さらに、ラット線条体組織由来のシナプトソームによる[3H]DAの取り込みについてのMCI-225阻害定数は、Ki=14,800と報告された。MCI-225は、モノアミンオキシダーゼ-A(MAO-A)およびモノアミンオキシダーゼ-B(MAO-B)の活性は阻害しなかった。
【0085】
5-HT3レセプターアンタゴニスト活性に関して、Eguchiらは、試験された他のレセプターに比較してMCI-225が5-TH3レセプターに高い親和性(100nmol/L未満のKi)を示すことを報告した。さらにMCI-225は、同じ放射性リガンド結合アッセイにおいてオンダンセトロンについて報告されたのと同様の5-HT3レセプターについての親和性を示した。要するに、MCI-225による放射性標識リガンド結合の阻害は、適切な放射性リガンドおよび目的のレセプターについての組織組み合わせを用いて決定された。試験したレセプターとしては、α1、α2、β1、β2、5-HT1、5-HT1A、5-HT1C、5-HT2、5-HT3、5-HT4、5-HT6、5-HT7、D1、D2、ムスカリン性、M1、M2、M3、ニコチン性、H1、H2、GABA-A、GABA-B、BZP、オピエート非選択性、オピエートκ、オピエートμ、オピエートδ、CRF(コルチコトロピン放出因子)およびグルココルチコイドが挙げられた。MCI-225について決定したIC50値は、これらのさらなるレセプターについて全て1μmol/Lより大きかった。
【0086】
本発明はさらに、機能性腸障害の処置の必要な被験体においてその障害を処置する方法に関しており、この方法は、治療有効量の5-HT3レセプターアンタゴニストおよび治療有効量のNARIをこの被験体に同時投与する工程を含む。機能性腸障害は、IBS、機能性腹部鼓脹、機能性便秘および機能性下痢から選択され得る。
【0087】
本発明はさらに、機能性腸障害の処置の必要な被験体においてその障害を処置する方法に関しており、この方法は、第一の量の5-HT3レセプターアンタゴニストおよび第二の量のNARIをこの被験体に同時投与する工程を含み、ここでこの第一および第二の量の合計が治療有効量を構成する。この機能性腸障害は、IBS、機能性腹部膨満、機能性便秘および機能性下痢から選択され得る。
【0088】
特定の態様では、この同時投与方法を用いてIBSを処置することができる。特定の態様では、IBSは下痢優勢IBSである。別の態様では、IBSは便秘/下痢交替型IBSである。さらなる態様では、IBSは非便秘性のIBSである。
【0089】
別の態様では、この同時投与方法はさらに、治療有効量の1つの(すなわち、1つ以上の)さらなる治療剤を投与する工程を含む。
【0090】
同時投与方法の特定の態様では、5-HT3レセプターアンタゴニストは、インジセトロン、YM-114((R)-2,3-ジヒドロ-1-[(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンジミダゾール-5-イル)カルボニル]-1H-インドール)、グラニセトロン、タリペキソール、アザセトロン、ベメセトロン、トロピセトロン、ラモセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、レリセトロン、アロセトロン、N-3389、ザコプリド、シランセトロン、E-3620([3(S)-エンド]-4-アミノ-5-クロロ-N-(8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1-]オクト-3-イル-2[(1-メチル-2-ブチニル)オキシ]ベンザミド)、リントプリド、KAE-393、イタセトロン、ザトセトロン、ドラセトロン、(±)-ザコプリド、(±)-レンザプリド、(-)-YM-060、DAU-6236、BIMU-8およびGK-128[2-[2-メチルイミダゾール-1-イル)メチル]-ベンゾ[f]チオクロメン-1-オン一塩酸塩半水和物]から選択され得る。
【0091】
好ましい態様では、5-HT3レセプターアンタゴニストは、インジセトロン、グラニセトロン、アザセトロン、ベメセトロン、トロピセトロン、ラモセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、レリセトロン、アロセトロン、シランセトロン、イタセトロン、ザトセトロンおよびドラセトロンから選択され得る。
【0092】
特定の態様では、NARI化合物は、ベンラファクシン、ドロキセチン、ブプロプリオン(buproprion)、ミルナシプラン、レボキセチン、レフェプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トモキセチン、マプロチリン、オキサプロチリン、レボプロチリン、ビロキサジンおよびアトモキセチンから選択され得る。
【0093】
好ましい態様では、NARI化合物は、レボキセチン、レフェプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トモキセチン、マプロチリン、オキサプロチリン、レボプロチリン、ビロキサジンおよびアトモキセチンから選択され得る。
【0094】
好ましい態様では、NARI化合物は:
a)抗コリン作用性効果が実質的にない;
b)セロトニン再取り込みの阻害に比較したノルアドレナリン再取り込みの選択的な阻害;および
c)ドーパミン再取り込みの阻害に比較したノルアドレナリン再取り込みの選択的な阻害、
からなる群より選択される1つ以上の特徴を保有する。
【0095】
さらに、本発明は、機能性腸障害の処置の必要な被験体においてその障害を処置する方法に関しており、この方法は、治療有効量のa-NARIをこの被験体に投与する工程を含む。この態様では、NARIは、抗コリン性効果が実質的にないことによって特徴付けられる。
【0096】
さらなる態様では、NARIは、セロトニン再取り込みの阻害に比較したノルアドレナリン再取り込みの選択的な阻害、および/またはドーパミン再取り込みの阻害に比較したノルアドレナリン再取り込みの選択的な阻害を保有する。この機能性腸障害は、IBS、機能性腹部鼓脹、機能性便秘および機能性下痢から選択され得る。
【0097】
特定の態様では、NARIの投与を用いて、IBSを処置することができる。特定の態様では、IBSは、下痢優勢IBSである。別の態様では、IBSは便秘/下痢交替型IBSである。さらなる態様では、IBSは非便秘性のIBSである。
【0098】
別の態様では、この方法はさらに、治療有効量の1つの(すなわち、1つ以上の)さらなる治療剤を投与する工程を含む。
【0099】
本発明はさらに、機能性腸障害の処置のために有用な医薬組成物に関する。この医薬組成物は、第一の量の5-HT3レセプターアンタゴニスト化合物および第二の量のNARI化合物を含む。本発明の医薬組成物は必要に応じて、薬学的に許容され得るキャリアを含んでもよい。5-HT3レセプターアンタゴニストおよびNARIは各々、治療有効量で医薬組成物に存在し得る。別の局面では、この第一および第二の量は一緒になって、治療有効量を構成し得る。
【0100】
さらなる態様では、この医薬組成物はさらに、1つの(すなわち、1つ以上の)さらなる治療剤を含む。
【0101】
医薬組成物は、機能性腸障害の処置の必要な被験体においてその障害を処置するのにおいて用いることができる。従って、本発明は、治療有効量の本明細書に記載のような医薬組成物を被験体に投与する工程を含む、機能性腸障害の処置の必要な被験体においてその障害を処置する方法に関する。この機能性腸障害は、IBS、機能性腹部鼓脹、機能性便秘および機能性下痢から選択され得る。特定の態様では、この機能性腸障害はIBSである。特定の態様では、IBSは下痢優勢IBSである。別の態様では、IBSは便秘/下痢交替型IBSである。さらなる態様では、IBSは非便秘性のIBSである。
【0102】
本明細書に記載される方法および医薬組成物において用いるために適切なさらなる治療剤としては、限定はしないが、例えば:鎮痙薬、例えば、抗コリン性薬物(例えば、ジサイクロミン、ヒヨスチアミン、およびシメトロピウム);平滑筋弛緩薬(例えば、メベベリン);カルシウム拮抗薬(例えば、ベラパミル、ニフェジピン、臭化オクチロニウム、ペパーミント油および臭化ピナベリウム);下痢止め薬(例えば、ロペラミドおよびジフェノキシレート);排泄物膨張性薬剤(例えば、サイリウム(オオバコ)、ポリカルボフィル);抗求心性薬(antiafferent agent)(例えば、オクトレオチドおよびフェドトジン);腸管運動促進剤(prokinetic agent)、例えば、ドーパミンアンタゴニスト(例えば、ドムペリドンおよびメトクロプラミド)または5-HT4アンタゴニスト(例えば、シサプリド);向精神薬、例えば、三環系抗うつ薬;またはそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0103】
機能性腸障害
機能性腸障害(Functional Bowel Disorders)(FBD)は、中間または下部の胃腸管に起因し得る症状を有する機能性の胃腸の障害である。FBDとしては、過敏性腸症候群(IBS)、機能性腹部鼓脹、機能性便秘および機能性下痢を挙げることができる(例えば、Thompsonら、Gut,45(補遺 II):II43〜II47(1999)を参照のこと)。
【0104】
IBS
IBSは、機能性腸障害の群であって、腹部不快感または疼痛が、排便または用便習慣の変化に、そして排便障害の特徴に関連する群を含む。IBSについての診断基準は、連続している必要はないが、先行する12ヶ月の少なくとも12週間に、以下の3つの特徴のうちの2つを有する腹部疼痛または不快感である:
a)排便による軽快;および/または
b)便通の頻度の変化を伴う発現;および/または
c)便の形態(外観)における変化を伴う発現。
【0105】
IBSの診断は以下の症状によって累積的に支持される:
- 異常な便通頻度(研究目的のためには「異常(abnormal)」は>3/日および<3/週と規定できる;
- 異常な便の形態(ゴツゴツした(lumpy)/硬い、またはゆるい(loose/水っぽい(watery)便);
- 異常な便の通過(いきみ感、切迫感、または不完全な排便感);
- 粘液通過;
- 鼓脹または腹部膨張の感覚。
【0106】
さらにIBSを有する被験体は、内臓の過敏症を示し、その存在は心理学的研究によってIBSにおける最も一貫した異常であることが示されている。
【0107】
IBSに関連する疼痛は主に、内臓求心性神経系のこの過敏症の結果であると考えられる。例えば、患者および対照を、バルーンによって誘導されたS状結腸の進行性の膨満に応答する疼痛閾値について評価した。同じ膨張の容積では、患者は対照に比較して高い疼痛スコアを報告した。この知見は、多くの研究で、コンピューター化された膨張装置であるバロスタット(圧調節器)の導入を用いて再現されており、膨張手順は標準化されている。内臓性過敏症の2つの概念である、痛覚過敏および異痛症が誘導されている。さらに詳細には、痛覚過敏とは、正常な内臓感覚が、より少ない管腔内容積でも経験される状況をいう。一方、異痛、疼痛または不快感の知見については、正常な内臓感覚を生じる容積で経験される(例えば、Mayer E.A.およびGebhart,G.F.,Basic and Clinical Aspects of Chronic Abdominal Pain,第9巻、第1版、Amsterdam:Elsevier,1993:3〜28を参照のこと)。
【0108】
従って、IBSは、腹部疼痛または不快感が、排便または用便習慣の変化に関連する機能性腸障害である。従って、IBSは、腸の運動性障害、内臓感覚障害および中枢神経障害の要素を有する。IBSの症状は生理学的基礎を有するが、IBSに固有の生理学的機構が同定されていない。ある場合には、健常な個体において時折腹部不快感を生じる同じ機構が働いて、IBSの症状を生じる。従って、IBSの症状は、内臓管の運動反応における定量的相違の結果、そして刺激または自然な収縮に対する感受性の増大である。
【0109】
機能性の腹部鼓脹
機能的な腹部鼓脹とは、腹部の充満または膨満の感覚によって支配され、別の機能性胃腸障害の十分な基準のない、ある群の機能性腸障害を含む。
【0110】
機能的な胃腸膨満についての診断基準は、連続している必要はないが、先行する12ヶ月の少なくとも12週間に:
(1)腹部の充満の感覚、膨満または視認できる膨張;および
(2)機能性消化不良、IBSまたは他の機能性障害の診断の基準が十分でない、
である。
【0111】
機能性便秘:
機能性の便秘は、排便の持続的な困難性、頻度低下または表面上不完全な排便として存在する、ある群の機能性障害を含む。
【0112】
機能性便秘の診断基準は、連続している必要はないが、先行する12ヶ月の少なくとも12週間に:
(1)排便の1/4より多くでいきみ
(2)排便の1/4より多くでゴツゴツ感の便または/硬い便;
(3)排便の1/4より多い不完全な排泄感;
(4)排便の1/4より多くで肛門直腸の閉鎖/閉塞感;
(5)排便の1/4より多くで排便促進のための手による施術(例えば、指での排出、骨盤底の支持);および/または
(6)週3回未満の排便、
のうちの2つ以上である。
ゆるい便は存在せず、IBSについての基準は十分でない。
【0113】
機能性下痢
機能性下痢は、腹部疼痛のない、ゆるい(柔らかい(mushy))または水っぽい便の連続的または反復性の通過である。機能性の下痢についての診断基準は、連続している必要はないが、先行する12ヶ月の少なくとも12週間に:
(1)液状(柔らかい)または水っぽい便;
(2)時間のうち3/4を超えて存在する;
(3)腹部疼痛なし、
である。
【0114】
本明細書において用いる場合、被験体とは、動物、例えば、限定はしないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスまたは他のウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、げっ歯類もしくはマウスの種を含む哺乳動物をいう。
【0115】
本明細書において用いる場合、治療有効量とは、所望の生物学的応答を惹起するのに十分な量をいう。本発明においては、所望の生物学的応答は、処置されている機能性腸障害に関連する少なくとも1つの症状の減少(完全または部分的)である。例えば、機能性腸障害がIBSである場合、IBSに関連する疼痛または不快感の減少は、所望の生物学的応答とみなされる。任意の処置、詳細には、複数の症状の障害、例えばIBSの処置と同様に、この被験体が経験する多くの障害関連症状として処置することが有利である。従って、この被験体が、IBSについて処置されている場合、IBSに関連する疼痛または不快感の軽減、ならびに異常な便頻度、異常な便形態、異常な便通過、粘液の通過および膨満または腹部膨張の感覚から選択されるIBSの少なくとも1つの他の症状の軽減が好ましい。
【0116】
投与の形態
本発明の方法における使用のための化合物は、経口、経皮、舌下、口腔、非経口的、直腸、鼻腔内、気管支内または肺内の投与のために製剤化され得る。経口投与のためには、化合物は、薬学的に許容され得る賦形剤、例えば、結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、コーンスターチ、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて従来の手段によって調製された錠剤またはカプセルの形態であってもよい。所望の場合、錠剤は、適切な方法およびコーティング物質、例えば、Colorcon,West Point,PA(例えば、OPADRY(登録商標)OY Type,OY-C Type,Organic Enteric OY-P Type,Aqueous Enteric OY-A Type,OY-PM TypeおよびOPADRY(登録商標)White,32K18400)から入手可能なOPADRY(登録商標)フィルムコーティングシステムを用いてコーティングすることができる。経口投与のための液体調製物は、溶液、シロップまたは懸濁液の形態であってもよい。液体調製物は、薬学的に許容され得る添加物、例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロースまたは硬化食用油脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア(アラビアゴム));非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油状エステルまたはエチルアルコール);および防腐剤(例えば、メチルまたはプロピルp-ヒドロキシ安息香酸塩またはソルビン酸)を用いて従来の方法によって調製することができる。
【0117】
口腔内(buccal)投与のためには、本発明の方法における使用のための化合物は、従来の方式で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形態であってもよい。
【0118】
非経口投与のためには、本発明の方法における使用のための化合物は、注射もしくは注入、例えば、静脈内、筋肉内または皮下の注射もしくは注入のために、またはボーラス用量および/もしくは持続注入での投与のために製剤化されてもよい。懸濁液、溶液またはエマルジョンを含む油状または水性のビヒクルであって、必要に応じて他の製剤用(formulatory)剤、例えば、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤を含む油状または水性のビヒクルを用いてもよい。
【0119】
直腸投与のためには、本発明の方法における使用のための化合物を坐剤の形態で用いてもよい。
【0120】
舌下投与のために、錠剤を従来の方式で製剤化してもよい。
【0121】
鼻腔内、気管支内または肺内の投与のために、従来の製剤を使用することができる。
【0122】
さらに、本発明の方法における使用のための化合物は、徐放性調製物中に製剤化されてもよい。例えば、この化合物は、活性剤化合物に対して徐放性および/または制御放出性の特性を与える適切なポリマーまたは疎水性物質を用いて製剤化され得る。従って、本発明の方法の使用のための化合物は、例えば、注射によって微小粒子の形態で、または埋込みによってウェーハもしくはディスクの形態で投与され得る。
【0123】
本発明のさらなる投薬形態としては、米国特許第6,340,475号、米国特許第6,488,962号、米国特許第6,451,808号、米国特許第6,340,475号、米国特許第5,972,389号、米国特許第5,582,837号および米国特許第5,007,790号に記載されるような投薬形態が挙げられる。本発明のさらなる投薬形態としてはまた、米国特許出願第20030147952号、米国特許出願第20030104062号、米国特許出願第20030104053号、米国特許出願第20030044466号、米国特許出願第20030039688号、および米国特許出願第20020051820号に記載されるような投薬形態が挙げられる。本発明のさらなる投薬形態としてはまた、PCT特許出願WO 03/35041号、PCT特許出願WO 03/35040号、PCT特許出願WO 03/35029号、PCT特許出願WO 03/35177号、PCT特許出願WO 03/35039号、PCT特許出願WO 02/96404号、PCT特許出願WO 02/32416号、PCT特許出願WO 01/97783号、PCT特許出願WO 01/56544号、PCT特許出願WO 01/32217号、PCT特許出願WO 98/55107号、PCT特許出願WO 98/11879号、PCT特許出願WO 97/47285号、PCT特許出願WO 93/18755号、およびPCT特許出願WO 90/11757号に記載されるような投薬形態が挙げられる。
【0124】
一態様では、本発明の投薬形態としては、米国特許出願第20030104053号に記載のような経口投与のための薬学的錠剤が挙げられる。例えば、本発明の適切な投薬形態は、薬物送達の即時放出および持続性放出の両方の方式を組み合わせてもよい。本発明の投薬形態としては、同じ薬物を即時放出および持続性放出の両方の部分で用いる投薬形態、ならびに1つの薬物を即時放出用に製剤化して、この最初の薬物とは異なる別の薬物を持続性放出用に製剤化する投薬形態が挙げられる。本発明は、即時放出薬物が水中にそれほどよく溶解しない、すなわち水にやや溶けにくいかまたは不溶性であるが、持続性放出薬物が任意のレベルの溶解度であり得る投薬形態を包含する。
【0125】
さらに詳細には、さらなる態様では、投薬形態の持続性放出部分は、少なくとも1時間、そして好ましくは数時間の期間にわたって継続して消化系にその薬物を送達し、この薬物が米国特許出願第20030104053号に記載されるように製剤化されている投薬形態であってもよい。この態様では、投薬形態の即時放出部分は、単位の持続性放出コアの表面全体にわたって塗布もしくは堆積されたコーティングであってもよいし、または2つ以上の層に構築された錠剤の単一層であってもよく、この層のうち他の層の一方は持続性放出部分であり、米国特許出願第2003104053号に記載されているように製剤化される。
【0126】
本発明の別の態様では、制御放出性錠剤または錠剤の制御放出性部分の支持基剤は、胃液との接触の際に、その被験体が食後または「摂食(fed)」モードとも呼ばれる消化状態であっても、胃での滞留を容易にするのに十分なサイズまで膨張する物質である。これは胃十二指腸運動活動の固有のパターンによって異なる胃の活性の2つの様態のうちの1つである。「摂食」モードは、食物摂取によって誘導され、上部胃腸(GI)管の運動パターンの急速かつ顕著な変化を開始する。この変化は、胃が被っている収縮の振幅の低下、および幽門開口部の部分的閉鎖状態への低減から構成される。この結果は、液体および小粒子が部分的に開口した幽門を通過することを可能にするふるい分けプロセスであり、幽門より大きい消化できない粒子は差し戻されて胃に留まる。このプロセスによって胃は、約1cmより大きいサイズの粒子を約4〜6時間保持する。従って、本発明のこれらの態様における制御放出性の基剤は、差し戻され(retropelled)それによって胃に保持されるのに十分大きいサイズまで膨潤するものとして選択され、これによって薬物の徐放性は腸ではなく胃で生じる。胃での残留時間を長くするサイズまで膨潤する経口投薬形態の開示は、米国特許第6,448,962号、米国特許第6,340,475号、米国特許第5,007,790号、米国特許第5,582,837号、米国特許第5,972,389号、PCT特許出願WO 98/55107、米国特許出願第20010018707号、米国特許出願第20020051820号、米国特許出願第20030029688号、米国特許出願第20030044466号、米国特許出願第20030104062号、米国特許出願第20030147952号、米国特許出願第20030104053号、およびPCT特許出願WO 96/26718にみられる。詳細には、特定の薬物のための胃内滞留投薬製剤も記載されており、例えば、ガバペンチンの胃滞留投薬製剤は、PCT特許出願WO 03/035040に開示されている。
【0127】
同時投与
本発明の方法の実施において、同時投与とは、機能性腸障害、例えばIBSを処置するための第一の量の5-HT3レセプターアンタゴニスト化合物および第二の量のNARI化合物の投与をいう。同時投与は、単独の医薬組成物中でのような、この同時投与の化合物の第一および第二の量の本質的に同時の方式での投与、例えば、第一および第二の量の固定比を有するカプセルまたは錠剤での投与、または各々について複数の別個のカプセルまたは錠剤での投与を包含する。さらに、このような同時投与はまた、各々の化合物のいずれかの順序での連続的な方式の使用も包含する。同時投与がNARIおよび5-HT3レセプターアンタゴニストの別個の投与を包含する場合、この化合物は所望の治療効果を有するのに十分接近した時間で投与される。
【0128】
用量
治療有効量または用量の(a)二重の治療様式の作用(すなわち、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性)を有する化合物;
(b)5-HT3レセプターアンタゴニストおよびNARIの組み合わせ;または(c)NARI単独は、患者の年齢、性別および体重、患者の現在の医学的状態、ならびに処置されている機能性消化管障害の性質に依存する。当業者は、これらの要因および他の要因に依存して適切な投薬量を決定することができる。
【0129】
本明細書において用いる場合、持続的な投薬とは選択された活性因子の慢性投与をいう。
【0130】
本明細書において用いる場合、必要に応じた投薬とは、「pro re nata(必要に応じて)」「prn」投薬、および「オンデマンド(on demand)」投薬としても公知であり、または投与とは、機能性消化管障害の抑制が所望される、活性の開始の前のいずれかの時点での、この化合物(単数または複数)の治療上有効な用量の投与を意味する。投与は、処方物次第で、このような活性の直前であってもよく、直前としては、このような活性の約0分、約10分、約20分、約30分、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、または約10時間前が挙げられる。特定の実施形態では、薬物投与または投薬は、必要に応じてが基本であり、慢性の薬物投与は含まない。即時放出投薬形態では、必要に応じた投与とは、機能性消化管障害の症状の抑制が所望される、活性の開始の直前の薬物投与を包含し得るが、一般にはこのような活性の前、約0分〜約10時間の範囲、好ましくはこのような活性の前約0分〜約5時間の範囲、最も好ましくは、このような活性の前、約0分〜約3時間の範囲である。
【0131】
例えば、5-HT3レセプターアンタゴニストの適切な用量は、1日あたり約0.001mg〜約500mg、例えば、1日あたり約0.01mg〜約100mg、例えば、約0.05mg〜約50mg、例えば、約0.5mg〜約25mgの範囲であってもよい。この用量は、単独投薬でまたは複数の投薬で、例えば、1日あたり1〜4回以上投与されてもよい。複数の投薬を用いる場合、各々の投薬の量は、同じであっても異なってもよい。
【0132】
例えば、NARI化合物の適切な用量は、1日あたり約0.001mg〜約1000mgの範囲、例えば、1日あたり、約0.05mg〜約500mg、例えば、約0.03mg〜約300mg、例えば、約0.02mg〜約200mgであってよい。この用量は、単回投薬で、または複数回の投薬で、例えば、1日あたり1〜4回以上で投与されてもよい。複数の投薬を用いる場合、各々の投薬の量は、同じであっても異なってもよい。
【0133】
例えば、5-HT3レセプターアンタゴニストおよびNARI活性の両方を有する化合物の適切な用量は、1日あたり約0.001mg〜約1000mgの範囲、例えば、1日あたり約0.05mg〜約500mg、例えば、約0.03mg〜約300mg、例えば、約0.02mg〜約200mgの範囲であってもよい。特定の実施形態では、5-HT3レセプターアンタゴニストおよびNARI活性の両方を有する化合物の適切な用量は、1日あたり約0.1mg〜約50mgの範囲、例えば、1日あたり約0.5mg〜約10mg、例えば、1日あたり約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10mgの範囲であってもよい。1日あたりの用量は、単回投薬で、または複数回の投薬で、例えば1日あたり1〜4回以上で投与されてもよい。複数回の投薬を用いる場合、各々の投薬の量は同じであっても異なってもよい。例えば、1日あたり1mgの用量は、用量の間に約12時間の間隔をとって、2回の0.5mg用量として投与してもよい。
【0134】
1日に投与される化合物の量は、毎日、1日おき、2日おき、3日おき、4日おき、5日おきなどで投与されてもよいことが理解される。例えば、1日おきの投与では、1日あたり5mgの用量を月曜日に開始して、引き続き1回目は、水曜日に1日あたり5mg投与し、引き続き2回目は金曜日に1日あたり5mg投与するなどしてもよい。
【0135】
本発明の方法における使用のための化合物は、単位投薬形態に処方されてもよい。「単位投薬形態(unit dosage form)」という用語は、処置されている被験体のための単位投薬として適切な物理的に別個の単位であって、ここで各々の単位が所望の治療効果を生じるように計算された活性物質の所定の量を、必要に応じて適切な薬学的キャリアと会合して含む単位をいう。単位投薬形態は、単回の1日用量または複数回の1日用量(例えば、1日あたり約1〜4回以上)のうちの1つのためであってもよい。複数回の1日用量を用いる場合、単位投薬形態は、各々の用量について同じであっても異なってもよい。
【0136】
NARI活性および5-HT3レセプターアンタゴニスト活性の両方を有する化合物については、各々の投薬量は代表的には、約0.001mg〜約1000mg、例えば、約0.05mg〜約500mg、例えば、約0.03mg〜約300mg、例えば、約0.02mg〜約200mgの活性成分を含んでもよい。
【0137】
処置の方法がNARIおよび5-HT3レセプターアンタゴニストの同時投与を含む場合、各々の用量は代表的には約0.001mg〜約1000m、例えば約0.05mg〜約500mg、例えば約0.03mg〜約300mg、例えば約0.02mg〜約200mgのNARIを含んでもよく、そして代表的には約0.001mg〜約500m、例えば、0.01mg〜約100mg、例えば約0.05mg〜約50mg、例えば約0.5mg〜約25mgの5-HT3レセプターアンタゴニストを含んでもよい。
【0138】
処置の方法がNARI単独の投与を含む場合、各々の用量は代表的には約0.001mg〜約1000m、例えば、約0.05mg〜約500mg、例えば約0.03mg〜約300mg、例えば約0.02mg〜約200mgの活性成分を含んでもよい。
【0139】
本発明はさらに、機能性消化管障害を処置するためのキットを包含する。このキットは、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびNARI活性の両方を有する少なくとも1つの化合物(例えば、単独の化合物)、ならびに本発明の方法に従うこの化合物の投与のための説明書を備える。さらに、このキットは、5-HT3レセプターアンタゴニストである第一の化合物、およびNARIである第二の化合物、および本発明の方法によるこの化合物の投与のための説明書を備えてもよい。この第一および第二の化合物は、別々に投薬形態であっても、または単独投薬形態で組み合わされてもよい。
【0140】
本明細書において用いる場合、薬学的に受容可能な塩という用語は、無機酸、有機酸、溶媒和化合物、水和物を含む、薬学的に受容可能な非毒性の酸から調製された投与された化合物の塩、またはその包接化合物をいう。このような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸およびリン酸である。適切な有機酸は、例えば、脂肪族系酸、芳香族系酸、カルボン酸およびスルホン酸クラスの有機酸から選択可能であり、その例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、イセチオン酸、乳酸、リンゴ酸、粘液酸、酒石酸、パラ-トルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボニック(パモイック)(embonic(pamoic))酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシレート)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸などである。
【0141】
5-HT3レセプターアンタゴニスト、NARI、ならびにNARIおよび5-HT3アンタゴニスト活性の両方を有する単独の化合物は、例えば、適切な方法を用いて分子のライブラリーまたはコレクションをスクリーニングすることによって、同定できる。目的の化合物についての別の供給源は、多くの構造上異なる分子種を含み得るコンビナトリアルライブラリーである。コンビナトリアルライブラリーを用いて、リード化合物を特定すること、または前に特定したリード化合物を最適化することが可能である。このようなライブラリーは、コンビナトリアル化学の周知の方法によって作製可能であり、適切な方法によってスクリーニング可能である。
【0142】
本発明はまた、本明細書に記載のような機能性消化管障害の処置に関連した費用についての償還を求める請求者によって提出された請求を、ある健康保険政策のもとで処理する方法に関する。
【0143】
一実施形態では、機能性消化管障害の処置に関連した費用についての償還を求める請求者によって提出された請求を、ある健康保険政策のもとで処理する方法であって、ここでこの処置は、被験体に第一の量の5-HTレセプターアンタゴニストおよび第二の量のノルアドレナリン再取り込みインヒビターを同時投与する工程を包含し、この第一および第二の量が一緒になって治療有効量を含み、この方法は:この請求を検討する工程と;この処置がこの保険政策のもとで償還されるか否かを決定する工程と;この請求を処理してこの費用の部分的または完全な償還を得る工程と、を包含する。
【0144】
一実施形態では、処置されている機能性消化管障害は、過敏性腸症候群である。
【0145】
特定の実施形態では、この過敏性腸症候群は、下痢優勢の過敏性腸症候群である。
【0146】
さらなる実施形態では、この過敏性腸症候群は、交代型便秘/下痢過敏性腸症候群である。
【0147】
本発明はまた、機能性消化管障害の処置に関連した費用についての償還を求める請求者によって提出された請求を、ある健康保険政策のもとで処理する方法に関するが、ここでこの処置は被験体に治療有効量の5-HT3レセプターアンタゴニストおよび治療有効量のノルアドレナリン再取り込みインヒビターを同時投与する工程を包含し、この方法は:この請求を検討する工程と;この処置がこの保険政策のもとで償還されるか否かを決定する工程と;この請求を処理してこの費用の部分的または完全な償還を得る工程と、を包含する。
【0148】
一実施形態では、処置されている機能性消化管障害は、過敏性腸症候群である。
【0149】
特定の実施形態では、この過敏性腸症候群は、下痢優勢の過敏性腸症候群である。
【0150】
さらなる実施形態では、この過敏性腸症候群は、便秘/下痢交替型過敏性腸症候群である。
【0151】
本発明はまた、機能性消化管障害の処置に関連した費用についての償還を求める請求者によって提出された請求を、ある健康保険政策のもとで処理する方法に関するが、ここでこの処置は被験体に5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびノルアドレナリン再取り込みインヒビター活性を有する治療有効量の化合物を投与する工程を包含し、この方法は:この請求を検討する工程と;この処置がこの保険政策のもとで償還されるか否かを決定する工程と;この請求を処理してこの費用の部分的または完全な償還を得る工程と、を包含する。
【0152】
特定の実施形態では、5-HT3レセプターアンタゴニスト活性およびノルアドレナリン再取り込みインヒビター活性を有する化合物はMCI-225である。
【0153】
一実施形態では、処置される機能性消化管障害は、過敏性腸症候群である。
【0154】
特定の実施形態では、この過敏性腸症候群は、下痢優勢の過敏性腸症候群である。
【0155】
さらなる実施形態では、この過敏性腸症候群は、便秘/下痢交替型過敏性腸症候群である。
【0156】
本発明はさらに、機能性消化管障害の処置に関連した費用についての償還を求める請求者によって提出された請求を、ある健康保険政策のもとで処理する方法に関するが、ここでこの処置は被験体に治療有効量のノルアドレナリン再取り込みインヒビターを投与する工程を包含し、このノルアドレナリン再取り込みインヒビターは、実質的に抗コリン作用性効果がないことによって特徴付けられ、この方法は:この請求を検討する工程と;この処置がこの保険政策のもとで償還されるか否かを決定する工程と;この請求を処理してこの費用の部分的または完全な償還を得る工程と、を包含する。
【0157】
一実施形態では、処置されている機能性消化管障害は、過敏性腸症候群である。
【0158】
特定の実施形態では、この過敏性腸症候群は、下痢優勢の過敏性腸症候群である。
【0159】
さらなる実施形態では、この過敏性腸症候群は、便秘/下痢交替型過敏性腸症候群である。
【0160】
薬理学的方法
膨張モデル
種々のアッセイを用いて、直腸の膨張に応答する内臓運動および疼痛を評価することができる。例えば、その内容全体が参考として各々本明細書に援用される、Gunterら、Physiol.Behav.,69(3):379〜82(2000),Depoortereら、J.Pharmacol.and Exp.Ther.,294(3):983〜990(2000)、Morteauら、Fund.Clin.Pharmacol.,8(6):553〜62(1994),Gibsonら、Gastroenterology(補遺1)、120(5):A19〜A20(2001)およびGschossmannら、Eur.J.Gastro.Hepat.,14(10):1067〜72(2002)を参照のこと。
【0161】
内臓痛
内臓痛は、例えば、腹筋の収縮のようなそれ自体が明らかになり得る内臓反応をもたらし得る。従って、大腸を膨張させることによって生じる機械的な疼痛刺激の後に生じる腹筋の収縮回数は、疼痛に対する内臓の感受性を決定するための測定値であり得る。
【0162】
膨張誘導性収縮に対する試験因子の阻害作用は、ラットで試験できる。導入されたバルーンでの大腸の膨張は、刺激として用いることができる;腹筋の収縮は、応答として測定できる。
【0163】
例えば、弱い酢酸溶液の滴下による大腸の感作の1時間後、ラテックスバルーンを導入して、約50〜100mbarまで約5〜10分間、段階的に連続して膨張させる。圧力値はまた、4℃におけるH2Oのcmとして表すことができる(mbar×1.01973=cm H2O(4℃))。この間に、腹筋の収縮をカウントする。試験因子の皮下投与の約20分後、この測定を繰り返す。試験因子の作用は、コントロール(すなわち、非感作ラット)に比較した収縮のカウントの低下の割合として算出される。
【0164】
胃腸(GI)運動モデル
胃腸運動の検討は、動物全体における機械的もしくは電気的な事象に関連する腸筋肉収縮のインビボ記録、または臓器槽(organ bath)においてインビトロで記録した単離された胃腸の腸筋肉調製物の活性のいずれに基づいてもよい(例えば、Yaunら、Br.J.Pharmacol.,112(4):1095〜1100(1994),Jinら、J.Pharm.Exp.Ther.,288(1):93〜97(1999)およびVenkovaら、J.Pharm.Exp.Ther.,300(3):1046〜1052(2002)を参照のこと)。このインビボ記録は、特に意識下の自由に動く動物では、GI管の運動機能に直接関連する運動パターンおよび推進性の活性を特徴付けるという利点を有する。相対的に、インビトロ研究では、収縮活性に直接影響する因子の作用機序および作用部位についてのデータが得られ、そしてこれは、環状および/または縦型の腸の平滑筋層に対する影響の間を識別する古典的なツールである。
【0165】
インビボ
結腸収縮性
携帯型遠隔測定運動記録によって、長期間にわたって意識下の動物において腸運動を検討する適切な方法が得られる。結腸運動の遠隔測定記録を導入して、意識下の自由に動く動物の未調製の結腸における収縮活性の伝達が研究されている。ユカタン・ミニブタは、ヒトとミニブタの胃腸管の間の解剖学的および機能的な類似性に基づき、運動性検討のための優れた動物モデルである。結腸運動性の研究用に調製するために、若齢のミニブタは永続性の慢性盲腸瘻管を確立するような外科的手順を受ける。
【0166】
実験的トライアルの間、動物を動物施設中で、管理条件下で飼育して、標準的な食餌を与えて水は自由にとらせた。ミニブタの近位結腸部分における結腸運動の遠隔測定記録を約1週間行なう(McRorieら、Dig.Dis.Sci.43:957〜963(1998);Kugeら、Dig.Dis.Sci.47:2651〜6(2002))。各々の記録セッションで得たデータを用いて、平均振幅および伝播する収縮の総数、高低の速度の伝播する収縮の数、長短の期間の伝播する収縮の数を規定することが可能であり、そして各々のタイプの収縮の相対的占有率を総収縮活性の%として評価することが可能である。慢性収縮活性を特徴付ける要約された運動指数(motility index)(MI)は、以下の式を用いて算出できる:
【数2】

【0167】
結腸運動
雌性ラットの結腸内にTNBSを含むエタノールまたは生理食塩水(コントロール)を投与する。肛門の縁から2〜6cmにカテーテルチップを入れる(n=6匹/群)。TNBS投与の3日後、その動物を一晩食事制限して、翌朝ウレタンで麻酔して、生理学的/薬理学的実験のために計装する。
【0168】
首の腹側表面に腹側切開を作製して、頸静脈カテーテルを挿入して、結紮糸で固定し、その皮膚創傷を抱合糸で閉鎖する。コンドームの貯留部先端部および配管から形成された結腸内バルーン先端部カテーテルを肛門に挿入して、肛門の縁から約4cmにこのバルーンを置く。シリンジポンプおよび圧トランスデューサへの三方活栓を介した接続によって、同時のバルーン容積調節および圧記録が可能になる。細いワイア電極を外肛門括約筋(EAS)に挿入して、腹壁筋肉を筋電図(EMG)記録させる。この調製物を用いて、結腸内圧力、結腸運動、腹部EMG発火を介した結腸感覚閾値、ならびにEAS発火頻度および振幅を、コントロールおよび炎症を起こした動物の両方において定量する。
【0169】
ベースラインの結腸運動および関連する非侵害性の内臓身体反射測定を確立するための約0.025mlのバルーン容積で約1時間のコントロール期間の後に、3つの連続する段階的な傾斜または連続的なバルーン膨張を行なう。各々の容積の傾斜の完了後、回復およびさらなる結腸運動測定値の収集のためにバルーンを30分間脱気する。結腸直腸膨張(CRD)に対する感受性として、バルーン膨張に対するEMGおよび結腸圧力応答を測定して、分析する。漸増する用量応答プロトコールで、最後のコントロールのCRDバルーンの脱気後に開始して、薬理学的因子の投与を行なう。
【0170】
インビトロ
単離された平滑筋調製物の収縮活性の記録を用いて、「外部(external)」要因(循環するホルモンなど)の影響が除かれているが筋自体はそのインビボ能力を保持している条件下で筋の機能の選択された局面を研究することができる。
【0171】
臓器槽に垂直に装着され、一端が固定され他端が等尺性圧力トランスデューサに付着された平滑筋小片(または腸部分全体)を用いて研究を行なう。筋肉を継続して改変クレブス重炭酸塩緩衝液に浸し、37℃で維持して、95%O2および5%CO2で曝気する。組織を最初の長さ(Liは緊張が0である)で約5分間平衡にさせ、次いで少しずつ力を増して最適の長さまで徐々に伸ばす(Loは、アゴニストに応答して最大活性緊張が生じる長さ)。実験はLoで行なって、標準化された自然な活性および薬理学的応答を得なければならない。最も一般的に用いられる記録手順は、適切な記録デバイスに装着された等尺性トランスデューサを含む。腸神経末端の刺激に応答する機構は、生理学的電気刺激装置に接続された白金電極の対を設けた臓器槽で研究できる。単離された平滑筋調製物は、長さ-緊張の関係を研究するために用いることが可能であり、これによって平滑筋の能動的および受動的特性の特徴が得られる。
【0172】
臨床評価
第II相の治験デザイン
第II相試験は用量設定研究であって、成人(18歳以上)の男性および女性における無作為な二重盲検プラシーボコントロール平行群、多施設研究である。いくつかの研究では、患者の集団は女性に限定してもよい。
【0173】
これは研究において2週間行い、ここでは4または12週間の能動的処置段階、続いて2週間の最小追跡段階を行い、IBSを有する患者における薬物の処置を評価する。被験体は、症状の少なくとも6ヶ月においてIBSについてのRome II型基準を満たす必要がある。被験体は歩行可能な外来患者であり、最近、大腸の検査をした証拠があり、炎症性腸疾患を含む他の重篤な医学的状態の証拠はない。
【0174】
研究には3つの段階がある。症候学を確認して用便習慣の変化を記録するために2週間のスクリーニング期間がある。その2週間の期間後、ある群に対して、適格であり続ける全ての被験体の無作為化を行なう。被験体を処置群(活性群またはプラシーボのいずれか1群)に対して割り当て、4または12週間の間、連続的に試験薬物を与える。被験体は、スクリーニング期間を行なっている間に、腹部の疼痛/不快感、および他の下部GI症状を4または12週の期間を通じて記録し続ける。処置期間の完了後、被験体はモニタリングを継続しながら2週の最短追跡期間の間症状の記録を継続する。
【0175】
エンドポイントとしては、腹部疼痛/不快感の十分な緩和の測定、処置期間の間の疼痛/不快感のない日数の割合の比較、便の硬さの変化、便の頻度の変化および胃腸系の通過の変化が挙げられる。
【0176】
例証
本発明は、ここで以下の実施例によって例示されるが、この実施例は決して限定することは意図していない。
【実施例】
【0177】
実施例1:結腸直腸の膨張に対する内臓運動応答のモデルにおけるMCI-225の評価
MCI-225を用いるIBSの処置
過敏性腸症候群のげっ歯類モデルにおいて、MCI-225が酢酸誘導性の結腸の過敏症を回復させる能力を評価した。詳細には、本明細書に記載の実験によって、ストレスなしのラットの遠位結腸における酢酸誘導性結腸過敏症のラットモデルにおいて、内臓運動応答に対するMCI-225の効果を検討した。
【0178】
方法
動物
成体雄性Fisherラットを、動物施設において標準的な条件で飼育した(1ケージあたり2匹)。動物施設への順応の1週間後、ラットを実験室に持ってきて、環境および実験を行なう助手に慣れるまでもう1週間、毎日取り扱った。
【0179】
結腸直腸膨張(CRD)に対する内臓運動応答
覚醒している非拘束の動物において、Gunterら、Physiol.Behav.,69(3):379〜82(2000)に記載されるように腹部筋肉系に対して縫合された歪みゲージによって記録した腹部収縮の回数をカウントすることによって、結腸直腸膨張に対する内臓運動挙動応答を測定した。結腸に対して肛門管を介して挿入した5cmのラテックスバルーンカテーテルを結腸直腸拡張に用いた。段階的に(15、30、または60mmHg)定圧の持続性膨張を行ない、そして10分間維持して、腹筋収縮の回数を記録して結腸の感覚のレベルを測定した。膨張の間には10分の回復をさせた。
【0180】
酢酸誘導性結腸過敏症
ラットにおける酢酸誘導性結腸過敏症は、Langloisら、Eur.J.Pharmacol.,318:141〜144(1996)およびPlourdeら、Am.J.Physiol.273:G191〜G196(1997)に記載されている。本研究では、低濃度の酢酸(1.5ml,0.6%)を結腸内に投与して、前の研究(Gunterら、前出)に記載されるように、結腸粘膜に対する組織学的損傷を生じることなく結腸を感作した。
【0181】
試験
MCI-225(30mg/kg;n=6)またはビヒクル単独(n=4)を、結腸直腸膨張のプロトコールの開始の30分前にラットに腹腔内(i.p.)投与した。ビヒクルとして100%のポリエチレングリコールを用い、注射容積は0.2mLであった。10分間の間隔で加えた、15、30または60mmHgの3つの連続的な結腸直腸膨張を記録した。内臓運動応答は、結腸直腸膨張の10分間の間に記録した腹筋収縮の回数として評価した。感作されていない未注射のコントロール動物および感作された未注射のコントロール動物は、それぞれ応答の下限および上限を示すように機能した(n=2/群)。
【0182】
結果
酢酸はCRDに対するラット内臓運動応答を確実に感作した(図1)。ビヒクル単独では、酢酸感作動物におけるCRDに対する応答に影響はなかった(図2)。MCI-225は30mg/kgで、動物のうち50%においてCRDに対する内臓運動応答を排除した(図1;応答者、n=3)。
【0183】
結論
MCI-225は、ヒトのIBSを処置するのにおける薬物有効性の指標であり得るラットモデルにおいて有効であることが示された。詳細には、図1から分かるように、MCI-225は、試験された動物の50%において、結腸直腸膨張に対する内臓運動応答における結腸直腸感作誘導性の増大を有意に低下した。従って、MCI-225は、IBSの適切な治療として用いることができる。
【0184】
実施例2:結腸直腸の膨張に対する内臓運動応答のモデルにおけるMCI-225、オンダンセトロンおよびニソキセチンの比較
実施例1に記載の結腸直腸の膨張に対する内臓運動挙動応答の動物モデルにおける、MCI-225、オンダンセトロンおよびニソキセチンの効果を比較するためのさらなる研究を行なった。
【0185】
方法
この研究では成体雄性ラットを用いた。実施例1と同様に、急性の結腸過敏症は、酢酸の結腸内投与によって誘導して、結腸直腸の膨張によって誘導された反射腹筋収縮の回数の増大として評価した。詳細には、ラットはイソフルラン(2%)で麻酔して、腹筋収縮の記録のための歪みゲージ圧力トランスデューサを計装した。ラテックスバルーンおよびカテーテルを結腸に11cm挿入した。動物を麻酔から30分間完全に回復させ、次いで酢酸(1.5mL、0.6%)の結腸内注入に供した。さらに30分間、結腸の感作をさせた。この期間の終わりに、MCI-225または参照薬物の1つまたはビヒクルのいずれかの単回用量を、腹腔内注射を介して動物に投与した。結腸直腸膨張のプロトコールは、薬物投与の30分後に開始した。バルーンを挿入したが膨張させないで腹部収縮の回数のベースラインの読み取り後、3つ連続する15、30および60mmHgでの10分間の結腸直腸膨張を10分の間隔で与えた。各々の膨張期間内に観察された反射腹部収縮(すなわち、内臓運動応答)の回数をカウントすることによって結腸直腸の感度を評価した。
【0186】
動物を3つの試験群に無作為に割り当てて、用量依存性対照実験を表1に例示するように行なった。同じ手順を受けている動物の対照群をビヒクル単独で処置した。各々の用量についてデータをまとめた。
【0187】
【表1】

【0188】
材料
試験および対照物
本研究についての対照薬物は、オンダンセトロンおよびニソキセチンであった。オンダンセトロンはAPIN Chemicals LTD.から供給された。ニソキセチンはTocrisから供給された。MCI-225は、Mitsubishi Pharma Corp.から入手した。10分間超音波処理することによって、全ての薬物を100%プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)のビヒクルに溶解させた。プロピレングリコールはSigma Chemical Co.から入手した。
【0189】
試験
動物
本研究では成体雄性Fisherラットを用いた。この動物は、1ケージあたり2匹、標準的な条件(12時間、明/暗サイクル、食物および水に自由にアクセス)で飼育した。動物施設への1週間の順応後、2週目に動物を実験室に持ってきて、実験を行なう助手によって取り扱わせた。これによって、実験環境および実験を行なう実験助手の両方に対して動物を順応させた。この研究で用いた全ての試験手順は事前に承認された。
【0190】
酢酸誘導性結腸過敏症
ラットにおける酢酸誘導性結腸過敏症は、上記で引用されるLangloisら、およびPlourdeらに記載されている。本研究では、低濃度の酢酸(1.5mL,0.6%)を結腸内に投与して、実施例1に記載されるように、結腸粘膜に対する組織学的損傷を生じることなく結腸を感作した。
【0191】
結腸直腸膨張に対する内臓運動応答
上記に引用されたGunterら、に前に記載されたとおり、腹部筋肉系に対して縫合された歪みゲージによって記録した腹部収縮の回数をカウントすることによって、結腸直腸膨張に対する内臓運動挙動応答を測定した。結腸に対して肛門管を介して挿入した5cmのラテックスバルーンカテーテルを利用して結腸直腸膨張を行なった。段階的に定圧の持続性膨張を行ない、すなわち15、30、または60mmHgの所望のレベルまで圧力を増大し、次いで10分間維持して、その間、腹筋収縮の回数を記録して結腸の感覚のレベルを測定した。各々の膨張の後には10分の回復期間を与えた。
【0192】
結果および考察
ナイーブなラットにおいて、段階的な管腔内圧力(0、15、30および60mmHg)での結腸直腸膨張を10分間加え、このとき膨張の間に10分間の間隔をおいて、圧力依存性内臓運動応答を誘発させた。酢酸誘導性結腸過敏症は、非感作対照に比較した腹部収縮の回数の圧力依存性の線形の増大によって特徴付けられた。本研究では、結腸直腸感作後に試験化合物または参照化合物を用いてラットを処置し、これによって得られた薬物効果反射は、結腸直腸過敏症の進行に対する影響を防止することなく、結腸刺激に対する応答性亢進を変更する機構と相互作用する。
【0193】
参照化合物の効果
1、5または10mg/kgの用量で投与した選択性の5-HT3レセプターアンタゴニストであるオンダンセトロンは、腹部収縮の回数の用量依存性の低下を誘導した。図3に示されるまとめたデータによってビヒクルの効果に比較して全ての膨張圧力で内臓運動応答の有意な用量依存性の阻害が示される。しかし、最高用量の10mg/kgのオンダンセトロンでさえ、中度(30mmHg)および高度(60mmHg)の管腔内圧力に対する応答をなくすることはなく、むしろナイーブな非感作ラットについて特徴的なレベルまでこれらの応答を低下させた。オンダンセトロン処置後、ラットの行動活性には有意な変化は観察されなかった。
【0194】
ノルアドレナリン再取り込みのインヒビターとして作用するニソキセチンは、3、10または30mg/kgの用量で投与された場合、結腸直腸の膨張に対する内臓運動応答に有意な影響を有さなかった(図4)。しかし、30mg/kgという高用量のニソキセチンでは、この実験の間のホームケージにおける探索行動の増大を伴っていた。
【0195】
MCI-225の効果
3、10または30mg/kgの用量で投与した試験化合物MCI-225およびビヒクルのまとめた効果を図5に図示する。ビヒクルに比較して、10mg/kgの用量で投与したMCI-225では、15、30および60mmHgでの結腸直腸膨張に対する応答において記録された腹部収縮の回数の有意な減少が生じた。しかし、MCI-225の効果は正常な用量依存性の関係は示さなかった。なぜなら、高用量の30mg/kg MCI-225は有効性が低いようであったからである。参照化合物に比較して、10mg/kg MCI-225で誘導された内臓運動応答の最大阻害は、5mg/kgのオンダンセトロンで生じた阻害と同様であった(図3を参照のこと)。
【0196】
統計的分析
1元ANOVAを用い、続いてチューキー事後検定を用いて処置群の統計的有意差を評価した。ビヒクル処置ラットと薬物処置ラットにおいて観察される応答の間の相違は、p<0.05、()p<0.05、(**)p<0.01、(***)p<0.001で有意であるとみなした。
【0197】
結論
MCI-225は、ヒトのIBSを処置するのにおける薬物有効性の指標であり得るラットモデルにおいて有効であることが示された。詳細には、図5から分かるように、MCI-225は、種々の圧力において結腸直腸膨張に応答して記録された腹部収縮の回数を有意に低下させた。
【0198】
実施例3:結腸通過の増大のモデルにおけるMCI-225の評価
方法
本実施例で用いたモデルによって、水回避ストレス(water avoidance stress)(WAS)によって誘導される加速された結腸通過をMCI-225が正規化する能力を決定する方法を得た。オンダンセトロン(5-HT3レセプターアンタゴニスト)、ニソキセチン(NARI)ならびにオンダンセトロンとニトキセチンとの組み合わせを、比較化合物として用いた。このモデルによって、ストレス誘導性結腸運動が有意な寄与因子とみなされるIBS罹患者の特定の患者群における化合物の有効性を評価する方法が得られる。
【0199】
水回避ストレスモデルにおける予備的な試験によって、ストレスと変更された結腸運動との間に関係が存在することを確認した。1時間のWASの間に得た糞石(fecal pellet)の総数をカウントすることによって糞石排泄を測定した。WASモデルを用いて、MCI-225の効果を、糞石排泄に影響するオンダンセトロン(5-HT3アンタゴニスト)またはニソキセチン(ノルアドレナリン再取り込みインヒビター-NARI)の効果と比較した。この結果によって、MCI-225はストレスに誘導されて加速される結腸通過を阻害し、従ってIBS、特にストレス誘導性結腸運動が有意な寄与因子とみなされるIBSの処置において有効であり得ることが示された。
【0200】
試験
動物
Charles River Laboratoriesから入手した270〜350gの成体雄性F-344ラットを用いてこの研究を完了した。このラットは標準的な条件下で1ケージあたり2匹飼育した。動物施設への順応の1〜2週間後、ラットを実験室に持ってきて、実験室の条件に、そしてこの研究を行なう助手に慣れるまでもう1週間、毎日取り扱った。この研究で用いた全ての手順は施設基準に従って承認された。
【0201】
実験前の順応
全てのラットに、WASを行なう前に2〜4日連続して偽のストレス(sham stress)(水なしのストレスチャンバに1時間)を与えた(2日連続して1時間あたり0〜1の糞石をラットが生じるまで偽を与えた)。1時間のストレス期間の終わりに、糞石をカウントして記録した。
【0202】
手順
WASは、結腸通過の加速を生じ、これは、ストレス手順の間に生じた糞石の数をカウントすることによって定量できる。ラットを、8cmの深さに室温の水を満たしたストレスチャンバの中央の隆起したプラットフォーム7.5cm×7.5cm×9cm(L×W×H)上のストレスチャンバに1時間入れた。このストレスチャンバは、長方形のプラスチックの槽(40.2×60.2×31.2cm)から構築されていた。処置群および対照群のまとめを表2に示す。
【0203】
【表2−1】

【表2−2】

【0204】
材料
試験および対照物
本研究についての対照薬物は、オンダンセトロンおよびニソキセチンであった。オンダンセトロンはAPIN Chemicals LTD.から供給された。ニソキセチンはTocrisから供給された。MCI-225は、Mitsubishi Pharma Corp.から提供された。10分間、超音波処理することによって、全ての薬物を100%プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)のビヒクルに溶解した。プロピレングリコールはSigma Chemical Co.から入手した。MCI-225およびニソキセチンは、3、10および30mg/kgの用量で試験して、オンダンセトロンは1、5および10mg/kgの用量で試験した。全ての薬物およびビヒクルは0.2mLの容積でi.p.注射として投与した。
【0205】
結果および考察
対照
図6に示すとおり、ホームケージの動物または偽のストレス対照群の間で1時間に生じた糞石の数に有意な相違はなかった。予想どおり、1時間のWASに対する暴露の際(WASのベースライン)に、ホームケージまたは偽のストレス対照群におけるラットの糞石排泄に比べて、糞石排泄の極めて有意な(P<0.001)増大があった。2〜4日間のストレスチャンバに対する順応の後、WASビヒクル処置群の糞石排泄は、非処置WAS群の糞石排泄と有意に異なることはなかった。
【0206】
処置群-MCI-225
MCI-225(3、10または30mg/kg、i.p.の用量)で事前に処置し、次いでWASに入れたラットでは、1時間に生じた糞石の数は、ビヒクル処置群でWASの間に生じた数よりも有意に少なかった。図7に例示するとおり、MCI-225は、全ての用量でWAS誘導性糞石排泄の有意な用量依存性の阻害を生じた。
【0207】
ニソキセチン
図8に示すとおり、ニソキセチンの全ての用量(3、10および30mg/kg、i.p.の用量)では、1時間のWASの間に生じた糞石の数は減少した。しかし、ビヒクル処置群に比べた場合、10mg/kgおよび30mg/kgの用量のニソキセチンでは、WASの間に生じた糞石は有意に少なかった。
【0208】
オンダンセトロン
オンダンセトロンは、ストレス誘導性の糞石排泄の用量依存性の阻害を生じた。図9に示すとおり、全てのオンダンセトロン処置群(1、5および10mg/kg、i.p.)で、1時間のWASの間に生じた糞石の数は、ビヒクル処置群においてWASの間に生じた数よりも有意に少なかった。
【0209】
ニソキセチンおよびオンダンセトロンの組み合わせ
組み合わせ処置群については、単独で投与した場合に最も有効性を示すニソキセチンおよびオンダンセトロンの用量を用いた。ニソキセチン(30mg/kg)をオンダンセトロン(10mg/kg)と組み合わせて投与した場合、1時間のWASの間に生じた糞石の数は、ビヒクル対照群においてWASの間に生じた数よりも有意に少なかった(p<0.01)。その結果を図10にグラフとして示す。
【0210】
統計的分析
1元ANOVAを用い、続いてチューキー事後検定を用いて統計的有意差を評価した。WAS群と偽ストレス群との間で統計学的有意差を比較して、p<0.05、()p<0.05、(**)p<0.01、(***)p<0.001の場合に有意であるとみなした。
【0211】
結論
これらの実験によって、ストレス、この場合、水回避ストレス因子が、糞石排泄における増大によって実証されるような結腸通過の有意な増大を生じたことが実証された。全体的結論は、MCI-225が、ニトキセチンまたはオンダンセトロンのいずれかで観察される程度に近い程度まで糞石の生成のストレス誘導性の増大を有意に阻害したということである。従って、MCI-225は、非便秘のIBSの処置のために適切な治療として用いることができる。
【0212】
実施例4:小腸通過に対するMCI-225の効果
以下に記載する小腸通過げっ歯類モデル(Small Intestinal Transit Rodent Model)を用いて、小腸通過の阻害に対するMCI-225の効果を評価して、オンダンセトロン、ニソキセチン、ならびにオンダンセトロンとニソキセチンの併用を用いて得られた結果と比較した。
【0213】
方法
詳細には、小腸通過に対するMCI-225、参照化合物(オンダンセトロンおよびニソキセチン)およびビヒクルの効果を、対照条件下でラットにおいて検討した。一晩の絶食後、ラットを研究室のホームケージにもってきて、以下のうちの1つのi.p.注射を与えた:MCI-225、100%プロピレングリコール(ビヒクル)、オンダンセトロン、ニソキセチン、ならびにオンダンセトロンとニソキセチンの併用。対照ラットには処置を行わなかった。処置したラットをホームケージに戻して、30分後に胃管チューブを介して2mLのチャコールの食餌を給餌した。15分の試験期間後に小腸通過を測定した。各々のラットを麻酔用のIsoFloを入れたガラスチャンバに短時間入れて屠殺した。胃および小腸を取り出して、小腸の全長を測定した。次いで、チャコールの食餌が小腸にそって通過した距離として通過を測定して、全長の%として表した。表3に示すように動物を実験群に無作為に割り当てて、実験を行なった。
【0214】
【表3】

【0215】
材料
試験および対照物
オンダンセトロンはAPIN Chemicals LTD.から供給された。ニソキセチンはTocrisから供給された。MCI-225は、Mitsubishi Pharma Corp.から提供された。10分間、超音波処理することによって、全ての薬物を100%プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)のビヒクルに溶解した。プロピレングリコールはSigma Chemical Co.から入手した。5-HT3レセプターアンタゴニストであるオンダンセトロンは、1、5および10mg/kgでi.p.投与した。ニソキセチンは、3、10および30mg/kgでi.p.投与した。全ての用量は、最終容積200μLで与えた。ビヒクル対照群の動物には、200μLの100%プロピレングリコールを投与して、正常な対照群の動物は処置しなかった。
【0216】
試験
動物
成体雄性F-344ラット(230〜330g)をこの研究に用いた。このラットは標準的な条件下で1ケージあたり2匹飼育した。この動物には標準的なげっ歯類の食餌を給餌して、食物と水は「自由に(ad libitum)」与えた。通過実験の前に1週間、ラットを動物施設に順応させた。この研究で用いた全ての手順は事前に承認された。
【0217】
ラットにおける小腸通過は、所定の時間(15分)の間、小腸にそったチャコール食餌の通過によって検討した。実験の前12〜16時間、動物に食物を与えなかった。ラットには2mLの胃管チューブとしてチャコールの食餌(チャコール、アラビアゴムおよび蒸留水の混合物)を与えて、15分の試験期間後に屠殺した。チャコール食餌の移動した距離を、以下の式を用いて、小腸の長さの割合として定量した:
通過(%)=食餌の移動(cm)/小腸の全長(cm)×100
【0218】
データおよび統計的分析
種々の薬物処置を受けている以下の群において小腸の全長の相対的単位(%)で小腸通過を評価した:ナイーブ(未処置)、ビヒクル(プロピレングリコール、200μL、i.p.)、MCI-225(3、10および30mg/kg、i.p.)、ニソキセチン(3、10および30mg/kg、i.p.)、オンダンセトロン(1、5および10mg/kg、i.p.)、ならびにニソキセチン(10mg/kg、i.p.)とオンダンセトロン(5mg/kg、i.p.)との併用。合計61の実験を行なった(1群あたり4〜6匹のラット)。
【0219】
統計的分析を行なって、各々の群についての平均、平均に対する標準誤差および標準偏差を決定した(表3を参照のこと)。図11〜15は、データに基づく。対応のないt検定を用いて処置における個々の用量群の間の相違、および薬物処置群とビヒクル処置群との間の比較を決定し、ここでは相対単位として%を用いる場合、t統計値が相関とみなした。全ての場合に、p<0.05を統計的に有意とみなした。図11〜15において統計的有意差はp<0.05、()p<0.05、(**)p<0.01、(***)p<0.001として示す。
【0220】
結果および考察
ナイーブな未処置のラットでは、チャコール食餌は15分の試験期間の間に全長の75±12%の距離に達した。対照的に、チャコール食餌を受ける30分前にラットにビヒクルのi.p.注射をした場合、同じ条件下で測定した小腸の通過は、小腸の全長の56±8%に低下した。この研究からのデータを図11にまとめる。しかし、ビヒクル処置動物は、小腸輸送の均一かつ再現性の値を示し、これは薬物処置の効果を評価するための対照として機能した。
【0221】
MCI-225の効果
一連の実験を行なって、小腸輸送に対する3、10または30mg/kgというMCI-225の漸増する用量の効果を確証した。この研究からのデータを図12にまとめる。ビヒクルに比較して、MCI-225は、小腸通過の用量依存性の阻害を誘導し、ここで、10mg/kgの用量では小腸の全長の4.2±2.6%までチャコール食餌による移動距離の最大低下があった。
【0222】
参照化合物の効果
別の研究では、動物を漸増する用量の1、10または30mg/kgのニソキセチンで処置して、ノルアドレナリン再取り込みをブロックする。3または10mg/kgの用量でニソキセチンを投与した場合、小腸通過の低下傾向が示されたが、30mg/kgの用量では通過をほぼ完全に阻害した(図13)。1、5または10mg/kgの用量で投与されたオンダンセトロンの効果も検討した。図14に示すように、オンダンセトロンは、正常な用量依存性の関係を示すことなく、小腸通過の有意な低下を生じた。
【0223】
ニソキセチンによって生じる阻害は、胃が空になるのが遅れた結果とみなされた。なぜなら、チャコール食餌は、30mg/kgの用量のニソキセチンの後には5匹の動物中4匹で胃に完全に保持されていたからである。この効果は、オンダンセトロンまたはMCI-225で見出された効果とは異なり、チャコール食餌の一部は、胃から小腸へ進行することが常に見出された。5mg/kgのオンダンセトロンおよび10mg/kgのニソキセチンを同時に注射した場合、この薬物は、小腸の全長の14%の食餌移動距離の減少を示した(図15)(すなわち、併用の最大効果は、5mg/kgオンダンセトロンまたは10mg/kgニソキセチンの個々の用量の効果に比べて大きかった(%値が低かった))。これらの知見によって、MCI-225によって誘導された小腸通過の減少は、5-HT3レセプターおよびノルアドレナリン再取り込み機構に対する併用効果から生じ得ることが確証される。
【0224】
本発明はその好ましい実施形態を参照して詳細に示しかつ記載してきたが、形態および詳細における種々の変更が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく本明細書において行なわれ得るということが当業者には理解される。
【0225】
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]式Iの化合物:
【化7−1】

式中、R1およびR2は独立して、水素、ハロゲンもしくはC1-C6アルキル基であるか;またはR1およびR2はそれが結合されている炭素原子と一緒になって、5〜6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基を形成する;R3およびR4は独立して水素またはC1〜C6アルキル基であり;R5は水素、C1〜C6アルキル、
【化7−2】

または-C(O)-NH-R6であり、
ここで、mは約1〜約3の整数であり、Xは水素であり、そしてR6はC1〜C6アルキル基であり;
Arは、置換または非置換のフェニル、2-チエニルまたは3-チエニル基であり;nは2または3である;
またはその薬学的に受容可能な塩の治療有効量を、治療を必要とする被験体に投与することを含む、治療を必要とする被験体における機能性腸障害の治療方法。
[2]機能性腸障害が過敏性腸症候群である[1]記載の方法。
[3]過敏性腸症候群が下痢優勢過敏性腸症候群である[2]記載の方法。
[4]過敏性腸症候群が交互性便秘/下痢過敏性腸症候群である[2]記載の方法。
[5]過敏性腸症候群が非便秘過敏性腸症候群である[2]記載の方法。
[6]被験体がヒトである[1]記載の方法。
[7]式Iの化合物に関して、R1がC1〜C6アルキル基であり、Arが置換フェニルである[1]記載の方法。
[8]置換フェニル基がハロゲンで置換されている[7]記載の方法。
[9]式Iの化合物に関して、nが2であり、R1がC1〜C6アルキル基であり、Arが置換フェニルである[1]記載の方法。
[10]置換フェニル基がハロゲンで置換されており、R1がメチル基である[9]記載の方法。
[11]式Iの化合物に関して、R1がC1〜C6アルキル基またはハロゲンであり、Arが非置換フェニルである[1]記載の方法。
[12]R2がハロゲンまたはC1〜C6アルキル基である[11]記載の方法。
[13]式Iの化合物に関して、nが2であり、R1がC1〜C6アルキル基であり、Arが非置換フェニルである[1]記載の方法。
[14]R2がハロゲンまたはC1〜C6アルキル基である[13]記載の方法。
[15]式II:
【化7−3】

により表される化合物またはその薬学的に許容されうる塩を、治療を必要とする被験体に投与することを含む、治療を必要とする被験体における機能性腸障害の治療方法。
[16]機能性腸障害が過敏性腸症候群である[15]記載の方法。
[17]過敏性腸症候群が下痢優勢過敏性腸症候群、交互性便秘/下痢過敏性腸症候群または非便秘過敏性腸症候群である[16]記載の方法。
[18]被験体がヒトである[15]記載の方法。
[19]式II:
【化7−4】

により表される化合物またはその薬学的に許容されうる塩の治療有効量を、治療を必要とする被験体に投与することを含む、治療を必要とする被験体における下痢優勢過敏性腸症候群の治療方法。
[20]被験体がヒトである[19]記載の方法。
[21]a)第1の量の5-HT3レセプターアンタゴニスト;および
b)第2の量のノルアドレナリン再取り込みインヒビター
を治療を必要とする被験体に投与することを含み、ここで第1および第2の量の合計が治療有効量を含む、治療を必要とする被験体における機能性腸障害の治療方法。
[22]機能性腸障害が過敏性腸症候群である[21]記載の方法。
[23]過敏性腸症候群が下痢優勢過敏性腸症候群である[22]記載の方法。
[24]過敏性腸症候群が交互性便秘/下痢過敏性腸症候群である[22]記載の方法。
[25]過敏性腸症候群が非便秘過敏性腸症候群である[22]記載の方法。
[26]被験体がヒトである[21]記載の方法。
[27]5-HT3レセプターアンタゴニストが、インジセトロン、YM-114((R)-2,3-ジヒドロ-1-[(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンジミダゾール-5-イル-)カルボニル]-1H-インドール)、グラニセトロン、タリペキソール、アザセトロン、ベメセトロン、トロピセトロン、ラモセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、レリセトロン、アロセトロン、N-3389、ザコプリド、シラノセトロン、E-3620([3(S)-エンド]-4-アミノ-5-クロロ-N-(8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1-]オクト-3-イル-2[1-メチル-2-ブチニル]オキシ)ベンザミド)、リントプリド、KAE-393、イタセトロン、ザトセトロン、ドラセトロン、(±)-ザコピリド、(±)-レンザプリド、(-)-YM-060、DAU-6236、BIMU-8、およびGK-128[2-[2-メチルイミダゾール-1-イル)メチル]-ベンゾ[f]チオクロメン-1-オン一塩酸塩半水化物]からなる群より選ばれる[21]記載の方法。
[28]5-HT3レセプターアンタゴニストが、インジセトロン、グラニセトロン、アザセトロン、ベメセトロン、トロピセトロン、ラモセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、レリセトロン、アロセトロン、シランセトロン、イタセトロン、ザトセトロンおよびドラセトロンからなる群より選ばれる[27]記載の方法。
[29]ノルアドレナリン再取り込みインヒビターが、ベンラファクシン、ドロキセチン、ブプロプリオン、ミルナシプラン、レボキセチン、レフェプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トモキセチン、マプロチリン、オキサプロチリン、レボプロチリン、ビロキサジンおよびアトモキセチンからなる群より選ばれる[27]記載の方法。
[30]ノルアドレナリン再取り込みインヒビターが、レボキセチン、レフェプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トモキセチン、マプロチリン、オキサプロチリン、レボプロチリン、ビロキサジンおよびアトモキセチンからなる群より選ばれる[29]記載の方法。
[31]a)5-HT3レセプターアンタゴニストの治療有効量;および
b)ノルアドレナリン再取り込みインヒビターの治療有効量
を、治療を必要とする被験体に投与することを含む、治療を必要とする機能性腸障害の治療方法。
[32]機能性腸障害が過敏性腸症候群である[31]記載の方法。
[33]過敏性腸症候群が下痢優勢過敏性腸症候群である[32]記載の方法。
[34]過敏性腸症候群が交互性便秘/下痢過敏性腸症候群である[32]記載の方法。
[35]過敏性腸症候群が非便秘過敏性腸症候群である[32]記載の方法。
[36]被験体がヒトである[31]記載の方法。
[37]5-HT3レセプターアンタゴニストが、インジセトロン、YM-114((R)-2,3-ジヒドロ-1-[(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−ベンジミダゾール−5−イル−)カルボニル]−1H−インドール)、グラニセトロン、タリペキソール、アザセトロン、ベメセトロン、トロピセトロン、ラモセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、レリセトロン、アロセトロン、N-3389、ザコプリド、シラノセトロン、E−3620([3(S)−エンド]−4−アミノ−5−クロロ−N−(8−メチル−8−アザビシクロ[3.2.1−]オクト−3−イル−2[1−メチル−2−ブチニル]オキシ)ベンザミド)、リントプリド、KAE−393、イタセトロン、ザトセトロン、ドラセトロン、(±)−ザコピリド、(±)−レンザプリド、(−)−YM−060、DAU−6236、BIMU−8、およびGK−128[2−[2−メチルイミダゾール−1−イル)メチル]−ベンゾ[f]チオクロメン−1−オン一塩酸塩半水化物]からなる群より選ばれる[31]記載の方法。
[38]5-HT3レセプターアンタゴニストが、インジセトロン、グラニセトロン、アザセトロン、ベメセトロン、トロピセトロン、ラモセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、レリセトロン、アロセトロン、シランセトロン、イタセトロン、ザトセトロンおよびドラセトロンからなる群より選ばれる[37]記載の方法。
[39]ノルアドレナリン再取り込みインヒビターが、ベンラファクシン、ドロキセチン、ブプロプリオン、ミルナシプラン、レボキセチン、レフェプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トモキセチン、マプロチリン、オキサプロチリン、レボプロチリン、ビロキサジンおよびアトモキセチンからなる群より選ばれる[31]記載の方法。
[40]ノルアドレナリン再取り込みインヒビターが、レボキセチン、レフェプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トモキセチン、マプロチリン、オキサプロチリン、レボプロチリン、ビロキサジンおよびアトモキセチンからなる群より選ばれる[39]記載の方法。
[41]ノルアドレナリン再取り込みインヒビターの治療有効量を、治療を必要とする被験体に投与することを含み、ノルアドレナリン再取り込みインヒビターが、抗コリン作用性効果を実質的に有しないことにより特徴付けられる、治療を必要とする被験体における機能性腸障害の治療方法。
[42]機能性腸障害が過敏性腸症候群である[41]記載の方法。
[43]過敏性症候群が下痢優勢過敏性腸症候群である[42]記載の方法。
[44]過敏性腸症候群が交互性便秘/下痢過敏性腸症候群である[42]記載の方法。
[45]過敏性腸症候群が非便秘過敏性腸症候群である[42]記載の方法。
[46]被験体がヒトである[41]記載の方法。
[47]ノルアドレナリン取り込みインヒビターが、ベンラファクシン、ドロキセチン、ブプロプリオン、ミルナシプラン、レボキセチン、レフェプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トモキセチン、マプロチリン、オキサプロチリン、レボプロチリン、ビロキサジンおよびアトモキセチンからなる群より選ばれる[41]記載の方法。
[48]ノルアドレナリン再取り込みインヒビターが、レボキセチン、レフェプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トモキセチン、マプロチリン、オキサプロチリン、レボプロチリン、ビロキサジンおよびアトモキセチンからなる群より選ばれる[47]記載の方法。
[49]a)第1の量の5-HT3レセプターアンタゴニスト;および
b) 第2の量のノルアドレナリン再取り込みインヒビター
を含有してなる医薬組成物。
[50]薬学的に許容されうる担体をさらに含有してなる[49]記載の医薬組成物。
[51]5-HT3レセプターアンタゴニストが、インジセトロン、YM-114((R)-2,3-ジヒドロ-1-[(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンジミダゾール-5-イル-)カルボニル]-1H-インドール)、グラニセトロン、タリペキソール、アザセトロン、ベメセトロン、トロピセトロン、ラモセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、レリセトロン、アロセトロン、N-3389、ザコプリド、シラノセトロン、E-3620([3(S)-エンド]-4-アミノ-5-クロロ-N-(8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1-]オクト-3-イル-2[1-メチル-2-ブチニル]オキシ)ベンザミド)、リントプリド、KAE-393、イタセトロン、ザトセトロン、ドラセトロン、(±)-ザコピリド、(±)-レンザプリド、(-)-YM-060、DAU-6236、BIMU-8、およびGK-128[2-[2-メチルイミダゾール-1-イル)メチル]-ベンゾ[f]チオクロメン-1-オン一塩酸塩半水化物]からなる群より選ばれる[49]記載の医薬組成物。
[52]5-HT3レセプターアンタゴニストが、インジセトロン、グラニセトロン、アザセトロン、ベメセトロン、トロピセトロン、ラモセトロン、オンダンセトロン、パロノセトロン、レリセトロン、アロセトロン、シランセトロン、イタセトロン、ザトセトロンおよびドラセトロンからなる群より選ばれる[51]記載の医薬組成物。
[53]ノルアドレナリン再取り込みインヒビターが、ベンラファクシン、ドロキセチン、ブプロプリオン、ミルナシプラン、レボキセチン、レフェプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トモキセチン、マプロチリン、オキサプロチリン、レボプロチリン、ビロキサジンおよびアトモキセチンからなる群より選ばれる[49]記載の医薬組成物。
[54]ノルアドレナリン再取り込みインヒビターが、レボキセチン、レフェプラミン、デシプラミン、ノルトリプチリン、トモキセチン、マプロチリン、オキサプロチリン、レボプロチリン、ビロキサジンおよびアトモキセチンからなる群より選ばれる[53]記載の医薬組成物。
[55]機能性消化管障害の治療に関連した費用について償還を求める請求者によって提出された請求を、健康保険政策のもとで処理する方法であって、
該治療は第1の量の5-HT3レセプターアンタゴニストおよび第2の量のノルアドレナリン再取り込みインヒビターを被験体に同時投与することを含み、第1および第2の量の合計が治療有効量を含み、
a)該請求を検討する工程;
b)該治療が該保険政策のもとで償還されるか否かを決定する工程;
c)該請求を処理して該費用の部分的または完全な償還を提供する工程
を含む、方法。
[56]機能性腸障害が過敏性腸症候群である[55]記載の方法。
[57]過敏性腸症候群が下痢優勢過敏性腸症候群である[56]記載の方法。
[58]過敏性腸症候群が交互性便秘/下痢過敏性腸症候群である[56]記載の方法。
[59]機能性消化管障害の治療に関連した費用について償還を求める請求者によって提出された請求を、健康保険政策のもとで処理する方法であって、
該治療は5-HT3レセプターアンタゴニストの治療有効量およびノルアドレナリン再取り込みインヒビターの治療有効量を同時投与することを含み、
a)該請求を検討する工程;
b)該治療が該保険政策のもとで償還されるか否かを決定する工程;
c)該請求を処理して該費用の部分的または完全な償還を提供する工程
を含む、方法。
[60]機能性腸障害が過敏性腸症候群である[59]記載の方法。
[61]過敏性腸症候群が下痢優勢過敏性腸症候群である[60]記載の方法。
[62]過敏性腸症候群が交互性便秘/下痢過敏性腸症候群である[60]記載の方法。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常な便通頻度、異常な便の形態、異常な便の通過、粘液通過、および腹部膨満感からなる群から選択される過敏性腸症候群の少なくとも1つの症状の治療のための医薬の製造における、式Iの化合物:
【化1】


式中、R1およびR2は独立して、水素、ハロゲンもしくはC1-C6アルキル基であるか;またはR1およびR2はそれらが結合している炭素原子と一緒になって、5〜6個の炭素原子を有するシクロアルキレン基を形成し;
R3およびR4は独立して水素またはC1〜C6アルキル基であり;
R5は水素、C1〜C6アルキル、
【化2】


または-C(O)-NH-R6であり、
ここで、mは1〜3の整数であり、Xはハロゲンであり、R6はC1〜C6アルキル基であり;
Arは、置換または非置換のフェニル、2-チエニルまたは3-チエニル基であり;
nは2または3である;
あるいはその薬学的に許容され得る塩の使用であって、治療は、5−HTレセプターの拮抗およびノルアドレナリン再取り込みの阻害により生じる、使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−157372(P2011−157372A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61194(P2011−61194)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【分割の表示】特願2006−500936(P2006−500936)の分割
【原出願日】平成16年1月13日(2004.1.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(505261379)ダイノゲン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】