説明

機能膜の形成方法、電極の製造方法および二次電池の製造方法

【課題】基体上に、パターンの境界ににじみが出ず、意図したパターン通りに機能膜を形成できる機能膜の形成方法、この機能膜の形成方法を適用する電極の製造方法、及びこの電極の製造方法により電極を形成する二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】基体上に、2種以上の機能性材料を液滴吐出装置により吐出して、2種以上の機能性材料からなる機能膜を形成する機能膜の形成方法であって、予め設計された塗布パターンに従い、基板上に、前記2種以上の機能性材料のうち、相対的に塗布面積の最も小さい材料を最先に塗布し、その後、相対的に塗布面積の大きい材料を塗布することにより、所定のパターンを有する機能膜を形成することを特徴とする機能膜の形成方法、この方法を2種以上の電極層形成材料からなる電極層を有する電極の製造に適用する電極の製造方法、及び二次電池の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置を用いて、基体上に2種以上の機能性材料をそれぞれ吐出して、所定のパターンを有する機能膜を形成する機能膜の形成方法、この方法を用いる電極の製造方法、およびこの電極の製造方法を用いる二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、燃料電池自動車(FCV)が実用化されるに至り、これらの自動車の動力源となる電池の開発が急ピッチで行われている。このような電池には、繰り返し充放電ができることや、高出力、高エネルギー密度が実現できることなどの非常に厳しい条件が要求される。これらの要求を満足させるため、外装容器内に板状の正極と負極とを収容し、液状の電解質を封入した薄型ラミネート電池を作製し、これを多数直並列に接続して使用することが提案されている(特許文献1等)。
【0003】
しかしながら、このような電池を高出力が求められる車両などの電源として使用する場合には、多数の電池を直列に接続する必要があるため、電極の厚さをさらに薄くする必要がある。
【0004】
厚みの薄い電極を形成する方法としては、例えば、特許文献2乃至4等には、基材に対し、電極層形成用組成物を液滴として噴出させて、当該液滴を基材に付着させるインクジェット方式(液滴吐出装置を用いる方式)を用いて、膜厚の極薄い電極層を形成する方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献4には、電気的特性の異なる種類の活物質や導電性材料をそれぞれ含有する複数の電極層形成用組成物を、液滴吐出装置を用いて、予め設計したパターンに応じて基材上にそれぞれ塗布することにより、二次電池の電極に所望の充放電特性を付与する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−151526号公報
【特許文献2】特開2005−11656号公報
【特許文献3】特開2005−11657号公報
【特許文献4】特開2005−135599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の二次電池の小型化・薄型化に伴い、電極層にも微細なパターン形成が要求されている。
しかしながら、従来の液滴吐出装置を用いる方法においては、異なる種類の組成物の液滴が近接して塗布されるとその境界ににじみが生じ、パターンがくずれ、意図した通りのパターン形成ができない場合があり、問題となっていた。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、基体上に、2種以上の機能性材料を液滴吐出装置により吐出して、2種以上の機能性材料からなる機能膜を形成する機能膜の形成方法において、パターンの境界のにじみを減じ、意図したパターンにより近いパターンで機能膜を形成できる機能膜の形成方法、この機能膜の形成方法を適用する電極の製造方法、およびこの電極の製造方法により電極を形成する二次電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、上記課題を解決すべく、集電体上に、2種以上の電極層形成材料を液滴吐出装置により吐出して、2種以上の電極層形成材料からなる電極層を形成する電極の製造方法について鋭意研究した。その結果、予め設計された塗布パターンに従い、集電体上に、前記2種以上の電極層形成材料のうち、相対的に塗布面積の最も小さい材料を最先に塗布し、その後、相対的に塗布面積の大きい材料を塗布することにより、所定のパターンを有する電極層を形成すると、パターンの境界ににじみが出ず、意図したパターン通りに電極層を形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明の第1によれば、基体上に、2種以上の機能性材料を液滴吐出装置により吐出して、2種以上の機能性材料からなる機能膜を形成する機能膜の形成方法であって、予め設計された塗布パターンに従い、基板上に、前記2種以上の機能性材料のうち、相対的に塗布面積の最も小さい材料を最先に塗布し、その後、相対的に塗布面積の大きい材料を塗布することにより、所定のパターンを有する機能膜を形成することを特徴とする機能膜の形成方法が提供される。
【0011】
本発明の機能膜の形成方法によれば、所定のパターンに従い、液滴吐出装置により、近接して(隣り合って)異なる機能性材料が塗布された場合に、その境界ににじみが生じることがなく、設計されたパターンにくずれが生じず、意図したパターン通りの機能膜を形成することができる。
【0012】
本発明の第2によれば、集電体上に、2種以上の電極層形成材料を液滴吐出装置により吐出して、2種以上の電極層形成材料からなる電極層を形成する電極の製造方法であって、予め設計された塗布パターンに従い、集電体上に、前記2種以上の電極層形成材料のうち、相対的に塗布面積の最も小さい材料を最先に塗布し、その後、相対的に塗布面積の大きい材料を塗布することにより、所定のパターンを有する電極層を形成する工程を有することを特徴とする電極の製造方法が提供される。
本発明の電極の製造方法においては、前記2種以上の電極層形成材料として、正極活物質の少なくとも一種と、炭素系導電性材料の少なくとも一種からなる材料を使用し、二次電池の正極電極を形成するものであることが好ましい。
【0013】
本発明の電極の製造方法によれば、パターンの境界ににじみのない、意図したパターン通りの均一な膜厚の電極層を有する電極を製造することができる。
【0014】
本発明の第3によれば、負極電極、電解質および2種以上の正極電極材料からなる正極電極層を有する正極電極を有する二次電池の製造方法であって、予め設計された塗布パターンに従い、集電体上に前記2種以上の正極電極材料のうち、相対的に塗布面積の最も小さい材料を最先に塗布し、その後、相対的に塗布面積の大きい材料を塗布することにより、所定のパターンを有する正極電極層を形成して正極電極を形成する工程を有することを特徴とする二次電池の製造方法が提供される。
【0015】
本発明の二次電池の製造方法によれば、パターンのくずれのない電極層を有する電極を製造できるため、所望の充放電特性を有する大容量の二次電池を得ることができる。
【0016】
本発明の第4によれば、基体の上に、互いに異なる機能性材料で構成される第1および第2の機能膜パッチを含む機能膜であって、当該第1および第2の機能膜パッチが互いに境界の少なくとも一部を接するように構成される機能膜を形成するための機能膜の形成方法であって、第1の機能膜パッチに対応する第1の領域および第2の機能膜パッチに対応する第2の領域を決定する決定ステップと、第1の領域と第2の領域のうち相対的に面積の小さい方の領域に、対応する機能性材料を含む液状材料を塗布する第1塗布ステップと、第1塗布ステップの後に、第1の領域と第2の領域のうち相対的に面積の大きい方の領域に、対応する機能性材料を含む液状材料を塗布する第2塗布ステップと、を有することを特徴とする機能膜の形成方法が提供される。
本発明の機能膜の形成方法においては、第1および第2塗布ステップは、液滴吐出装置を用いて液状材料を基体に向けて吐出することで実行することが好ましい。
【0017】
塗布された液状材料は、塗布された位置から濡れ広がる。先に塗布された液状材料が、当該液状材料によって機能膜パッチが形成されるべく設定された範囲を越えて濡れ広がることにより、後に塗布された液状材料の塗布可能な範囲が減じられ、後に塗布された液状材料から成る機能膜パッチの面積が減じられる可能性がある。減じられた面積が同じ場合、設定された面積が小さいほどその影響は大きくなる。本発明の機能膜の形成方法によれば、先により小さい面積の領域に塗布することで、小さい面積の領域に、少なくとも最初に塗布した面積の機能膜を形成することができる。従って、機能膜の面積に誤差が生じた場合の影響を抑制することができる。
また、一般的に、塗布する面積が大きいほど塗布される液状材料の量が多くなるため、濡れ広がる範囲の誤差も大きくなる可能性が高い。先に、より小さい面積の領域に塗布することで、濡れ広がる範囲の誤差を小さくすることにより、設定されたパターンに対する機能膜パッチの形状誤差を小さくすることが可能となり、意図したパターンにより近い機能膜を形成することができる。さらに、液体を精度良く任意の位置に配置することができる液滴吐出装置を用いて、液状材料を基体に向けて吐出することにより、設定されたパターンに対する液状材料の塗布位置および塗布形状の誤差を小さくすることが可能となる。
【0018】
本発明の第5によれば、集電体の上に、互いに異なる電極層材料で構成される第1および第2の電極層パッチを含む電極層であって、当該第1および第2の電極層パッチが互いに境界の少なくとも一部を接するように構成される電極層を形成して成る電極の製造方法であって、第1の電極層パッチに対応する第1の領域および第2の電極層パッチに対応する第2の領域を決定する決定ステップと、第1の領域と第2の領域のうち相対的に面積の小さい方の領域に、対応する電極層材料を含む液状材料を塗布する第1塗布ステップと、第1塗布ステップの後に、第1の領域と第2の領域のうち相対的に面積の大きい方の領域に、対応する電極層材料を含む液状材料を塗布する第2塗布ステップと、を有することを特徴とする電極の製造方法が提供される。
本発明の電極の製造方法においては、電極層材料を含む液状材料は、少なくとも、正極活物質を含有する液状材料と、炭素系導電性材料を含有する液状材料とを含み、電極層を有する電極が、二次電池の正極電極であることが好ましい。
また、本発明の電極の製造方法においては、第1および第2塗布ステップは、液滴吐出装置を用いて液状電極層材料を集電体に向けて吐出することで実行することが好ましい。
【0019】
本発明の電極の製造方法によれば、先により小さい面積の領域に塗布することで、小さい面積の領域に、少なくとも最初に塗布した面積の機能膜を形成することができる。また、先により小さい面積の領域に塗布することで、濡れ広がる範囲の誤差を小さくすることができる。液滴吐出装置を用いることにより、液状材料の塗布位置および塗布形状の誤差を小さくすることが可能となる。従って、設定されたパターンに対する電極層パッチの形状誤差を小さくすることが可能となり、意図したパターンにより近い電極層を有する、二次電池の正極電極などの電極を形成することができる。
【0020】
本発明の第6によれば、負極電極と、電解質と、集電体の上に、互いに異なる正極電極層材料で構成される第1および第2の正極電極層パッチを含む正極電極層であって、当該第1および第2の正極電極層パッチが互いに境界の少なくとも一部を接するように構成される正極電極層を形成して成る正極電極と、を備える二次電池の製造方法であって、第1の正極電極層パッチに対応する第1の領域および第2の正極電極層パッチに対応する第2の領域を決定する決定ステップと、第1の領域と第2の領域のうち相対的に面積の小さい方の領域に、対応する正極電極層材料を含む液状材料を塗布する第1塗布ステップと、第1塗布ステップの後に、第1の領域と第2の領域のうち相対的に面積の大きい方の領域に、対応する正極電極層材料を含む液状材料を塗布する第2塗布ステップと、を有することを特徴とする二次電池の製造方法が提供される。
【0021】
本発明の二次電池の製造方法によれば、先により小さい面積の領域に塗布することで、小さい面積の領域に、少なくとも最初に塗布した面積の機能膜を形成することができる。また、先に、より小さい面積の領域に塗布することで、濡れ広がる範囲の誤差を小さくすることができる。従って、設定されたパターンに対する電極層パッチの形状誤差を小さくすることが可能となり、意図したパターンにより近い電極層を有する正極電極を形成することで、意図した性能により近い性能の二次電池を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明について、図面を参照して詳細に説明する。
<機能膜の形成方法>
本発明の機能膜の形成方法は、基体上に、2種以上の機能性材料を液滴吐出装置により吐出して、2種以上の機能性材料からなる機能膜を形成する機能膜の形成方法であって、予め設計された塗布パターンに従い、基板上に、前記2種以上の機能性材料のうち、相対的に塗布面積の最も小さい機能性材料を最先に塗布し、その後、相対的に塗布面積の大きい機能性材料を塗布することにより、所定のパターンを有する機能膜を形成することを特徴とする。
【0023】
ここで、「パターン」とは、機能の異なる2種類以上の機能性材料のそれぞれを、基体上のどの領域に付着するかを設計したものである。パターンは、目的とする機能特性を有する機能膜が得られるよう半経験的に設計される。
「機能特性」とは、例えば、機能膜が二次電池の正極電極の正極電極層である場合、この正極電極層を有する二次電池の充放電特性等のことである。
【0024】
また、相対的に塗布面積の最も小さい機能性材料は、設計されたパターンにおける塗布面積の最も小さい材料である。液滴吐出装置を用いて吐出される粒子の体積は略同一であるため、塗布面積の最も小さい機能性材料は、塗布を行う材料のうち、最も使用容量(使用重量)の少ない材料である。
【0025】
本発明の機能膜の形成方法は、基体上に、2種以上の機能性材料を液滴吐出装置により吐出して、2種以上の機能性材料からなる機能膜を形成する方法である。
本発明の機能膜の形成方法は、基体上に、2種以上の機能性材料からなる機能層の積層体である機能膜を形成する方法であっても、基体の同一平面上に、同一平面上に所定のパターンを有する、2種以上の機能性材料からなる機能膜を形成する方法であってもよい。
【0026】
本発明においては、機能性材料を塗布する手段として、例えば、インクジェット方式の液滴吐出装置を用いる。インクジェット方式における吐出の方式としては、特に制限されず、例えば、加熱発泡により気泡を発生し、液滴の吐出を行うサーマル方式、ピエゾ素子を利用する圧縮により、液滴の吐出を行うピエゾ方式等が挙げられる。
【0027】
液滴吐出装置において吐出される液滴の体積は、好ましくは、1ピコリットから100ピコリットルの範囲である。
インクジェット方式では、形成される膜厚の均一性が非常に高いため、何回も同一のパターンで積層させた場合であっても、高い均一性を有する膜厚が維持される。また、各層の形成において、塗布面積も最も小さい機能性材料を最先に塗布する方法を採用することにより、パターンのくずれのない機能膜を形成することができる。
【0028】
本発明に用いる液滴吐出装置の一例の概略図を図1に示す。図1に示す液滴吐出装置10は、コンピュータ100、コンピュータ100にそれぞれ接続される入力端末102、ディスプレイ104、記憶装置103、および吐出ノズル106を備えている。
【0029】
コンピュータ100は、描画部101を備える。描画部101では入力端末102から入力された情報に基づいてパターンを描画する。
ディスプレイ104は、コンピュータ100によって描画されたパターンを表示する。
記憶装置103は、コンピュータ100が最終的に生成したパターンを記憶する。
【0030】
吐出ノズル106は、記憶装置103に記憶されているパターンに応じ、組成物を基体107上に吐出する。
吐出ノズル106の動作はコンピュータ100が制御する。
【0031】
吐出ノズル106には、相対的に塗布面積の小さい機能性材料を含む組成物(以下「組成物A」という)、又は相対的に塗布面積の大きい機能性材料を含む組成物(以下「組成物B」という)を収容する容器105が取り付けられている。
【0032】
一台の液滴吐出装置により組成物Aと組成物Bを吐出する場合には、容器105は組成物ごとに分離され、それぞれの組成物に割り当てられている専用の吐出ノズル106に接続されている。また容器105は、必要に応じて攪拌機およびヒータを備えていてもよい。
【0033】
本発明による機能膜の形成方法の手順を示すフローチャートを図2に示す。
先ず、入力端末102からコンピュータ100にパターンの描画に必要な情報を入力する。この情報には、パターン形状の指定、各パターンの大きさの指定、各パターンの配置場所の指定、各パターンの色の指定などが含まれる。
【0034】
コンピュータ100の描画部101は入力された情報に基づいてパターンを描画し(S1)、そのパターンをディスプレイ104上に表示する。表示されたパターンの情報(パターン情報)は、記憶装置103に記憶される(S2)。
【0035】
コンピュータ100は、記憶装置103にアクセスして、記憶させておいたパターン情報を取り出す(S3)。
取り出したパターン情報に従って、用意した所望の基体上に、相対的に塗布面積の小さい組成物Aを、吐出ノズルから液滴として噴出させて塗布する(S4)。
【0036】
組成物Aの吐出終了後、その組成物が吐出された基体上に、組成物Bの吐出を、パターンに従って同様にして行う(S5)。
【0037】
以下に、上記(S4)および(S5)の工程を、図3に示すパターンに従って機能膜108を形成する場合を例にとって説明する。図3(a)は、機能膜のパターン例を模式的に表した平面図であり、図3(b)は、機能膜のパターン例の断面を模式的に表した図である。図3に示すパターンは、同図で黒く塗りつぶした(以降「黒色」と表記する。)領域Aに組成物Aを、同図で網掛けを施した(以降「灰色」と表記する。)領域Bに組成物Bを塗布するように設計されたものである。黒色領域Aと灰色領域Bの面積の大きさを比較すると、黒色領域Aの面積の方が相対的に小さい。さらに、灰色領域Bは連なった一体の領域であり、黒色領域Aは、複数の領域に分かれており、一つの領域の面積としては、黒色領域Aの面積の方が灰色領域Bより非常に小さい。従って、先ず、上述した液滴吐出装置10により、基体107上の黒色領域Aに組成物Aを吐出し、組成物Aの吐出終了後、灰色領域Bに組成物Bを吐出する。
なお、黒色領域Aを構成する複数の領域のそれぞれは、同じ大きさに設定されており、複数の領域の中での吐出順番は、どのような順番であってもよい。
【0038】
組成物Aは、乾燥して、組成物Aから成る機能膜が黒色領域Aに形成される。先に塗布された組成物Aは、組成物Bが後から塗布されるまでの間にも乾燥が進行するため、組成物Bが後から塗布される時点では、組成物Aから成る機能膜が黒色領域Aに略形成されている。このため、塗布された組成物Aと組成物Bとが隣り合う境界において、互いに混じり合う可能性は、極めて小さい。
【0039】
また、塗布された組成物は、塗布された位置から濡れ広がる。先に塗布された組成物が、当該組成物が配置されるべく設定された範囲を越えて濡れ広がることにより、後に塗布された組成物の塗布可能な範囲が減じられ、後に塗布された組成物から成る機能膜の面積が減じられる可能性がある。減じられた面積が同じ場合、設定された面積が小さいほどその影響は大きくなる。特に、塗布するべき面積が液滴吐出装置の吐出精度に比べて小さい場合には、当該小さい面積の領域に塗布する前に周囲に塗布することにより、当該小さい面積の領域が周囲に塗布した組成物によって塗りつぶされて殆ど無くなってしまう可能性がある。しかし、先に当該小さい面積の領域に塗布することで、少なくとも最初に塗布した面積の機能膜を形成することができる。組成物Aを最初に塗布することで、後から塗布される組成物Bによる影響を受けることなく、組成物Aを、設定された黒色領域Aに塗布することができる。
【0040】
さらに、塗布される組成物の量は、塗布される領域の面積が小さい方が、より少ない。設定された範囲を越えて濡れ広がり得る面積は、塗布される組成物の量が多い方が広くなる。このため、設定された範囲を越えて濡れ広がることが生じたとしても、領域の面積が小さい方から先に塗布することで、領域の面積が大きい方から先に塗布する場合に比べて、設定された範囲を越えて濡れ広がることによって形成される機能膜間の境界と設定された境界とのずれ量が、小さくなる。組成物Aを最初に塗布することで、組成物Bを最初に塗布することによって、一体の灰色領域B全体に塗布された組成物Bの濡れ広がり具合によって組成物Aと組成物Bとの境界が定まる場合に比べて、組成物A又は組成物Bから成る膜の形状をより精度よく形成することができる。
【0041】
このように、組成物Aを先に塗布した後に組成物Bを塗布することにより、組成物Aと組成物Bを略同時に塗布した場合や、組成物Bを先に塗布した後に組成物Aを塗布した場合に比べ、塗布された組成物Aの液滴と組成物Bの液滴とが、隣り合う境界において、にじみが生じることが少ない。従って、パターンがくずれることがなく、意図したとおりのパターンを形成することができる。
【0042】
本発明の機能膜の形成方法により形成される機能膜としては、基体上の所定の領域に、液滴吐出装置により2種類以上の機能性材料を吐出することにより形成される、所定のパターンを有する薄膜であれば、特に制限されない。例えば、基体として回路基板を用い、該回路基板上に所定のパターンを有する導電体層と絶縁層からなる機能膜や、後述するように、集電体上に、所定のパターンを有する正極活物質と導電性材料からなる正極電極層等が挙げられる。
【0043】
<電極の製造方法>
本発明の電極の製造方法は、本発明の機能膜の形成方法を電極の製造に適用したものである。即ち、本発明の電極の製造方法は、集電体上に、2種以上の電極層形成材料を液滴吐出装置により吐出して、2種以上の電極層形成材料からなる電極層を形成する電極の製造方法であって、予め設計された塗布パターンに従い、集電体上に、前記2種以上の電極層形成材料のうち、相対的に塗布面積の最も小さい材料を最先に塗布し、その後、相対的に塗布面積の大きい材料を塗布することにより、所定のパターンを有する電極層を形成する工程を有することを特徴とする。
【0044】
本発明の電極の製造方法は、2種以上の電極層形成材料からなる電極層を形成する電極を製造する方法であれば、特に制限されないが、二次電池の正極電極を製造する方法であるのが好ましく、リチウムイオン二次電池の正極電極を製造する方法であるのがより好ましい。
【0045】
本発明の電極の製造方法は、集電体上に、2種以上の電極層形成材料を液滴吐出装置により吐出して、電極層を形成するものである。
本発明に用いる集電体としては、導電性を有する素材からなるシート状物であれば特に制限されない。例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼材等を、金属箔、電解箔、圧延箔、エンボス加工品、発泡シート等に加工したものを用いることができる。
集電体の厚みは、特に制約はないが、通常5μmから30μmである。
【0046】
本発明に用いる2種以上の電極層形成材料としては、正極活物質と導電性材料の組み合わせが挙げられる。
正極活物質としては、特に制限はなく、公知のものが使用できる。例えば、リチウム電池用の正極を形成する場合には、LiMn24等のLi−Mn系複合酸化物、LiCoO2等のLi−Co系複合酸化物、LiNiO2等のLi−Ni系複合酸化物が挙げられる。これらの正極活物質は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
導電性材料としては、導電性の材料であれば特に制限されないが、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブなどの炭素系導電性材料が挙げられる。これらの導電性材料は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
本発明においては、前記2種以上の電極層形成材料を適当な有機溶媒に分散させた分散液(電極層形成用組成物)をそれぞれ調製し、相対的に塗布面積の最も小さい電極層形成材料を含む組成物を最先に液滴吐出装置により塗布し、その後、相対的に塗布面積の大きい他の電極層形成材料を含む組成物を塗布する。
【0049】
用いる有機溶媒としては、特に限定されないが、作業効率の観点から、常圧における沸点が50℃から200℃のものが好ましい。かかる有機溶媒としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド等のアミド系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、乳酸メチル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;およびこれらの溶媒の2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。
【0050】
また、本発明においては、前記電極層形成材料を含む組成物には、所望により、他の成分をさらに含有させていてもよい。他の成分としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン等の結着剤等が挙げられる。これらの他の成分は、正極活物質を含有する組成物に含有させることもできるし、導電性材料を含有する組成物に含有させることもできる。
【0051】
正極活物質を含有する組成物は、正極活物質、および所望により他の成分を有機溶媒中で混合・撹拌することにより調製することができる。混合・撹拌する方法は特に制限されず、従来公知の混合・撹拌装置を使用して行うことができる。
【0052】
正極活物質、他の成分および有機溶媒の配合割合は、特に限定されない。正極活物質の配合量は、組成物全体に対して、通常、10重量%から60重量%、他の成分の配合量は、組成物全体に対して、通常、0重量%から20重量%、有機溶媒の配合量は、組成物全体に対して、通常、20重量%から90重量%である。
【0053】
導電性材料を含有する組成物は、導電性材料、および所望により他の成分を有機溶媒中で混合・撹拌することにより調製することができる。混合・撹拌する方法は特に制限されず、従来公知の混合・撹拌装置を使用して行うことができる。
【0054】
導電性材料、他の成分および有機溶媒の配合割合は、特に限定されない。導電性材料の配合量は、組成物全体に対して、通常、10重量%から60重量%、他の成分の配合量は、組成物全体に対して、通常、0重量%から20重量%、有機溶媒の配合量は、組成物全体に対して、通常、20重量%から90重量%である。
【0055】
前記電極層形成用組成物(正極活物質を含有する組成物、および導電性材料を含有する組成物)の粘度は、特に限定されないが、液滴吐出を行える程度に低いことが好ましい。前記組成物の粘度は、好ましくは1cPから100cP程度である。組成物の粘度をこの範囲に調整する方法としては、有機溶媒の配合割合を変化させる(増加させる等)方法、組成物の温度を上昇させる方法、粘度が低くなるような、高分子電解質原料等のその他の化合物を組成物に添加する方法等が挙げられる。
【0056】
本発明の電極の製造方法により製造することができる二次電池の正極電極の層構成の例(部分拡大図)を図4に示す。
図4に示す正極電極は、集電体1と、該集電体1上に、正極活物質と導電性材料とが所定のパターンで形成されてなる正極電極層2とを有する。図4(a)は、正極電極を横から見た断面図であり、図4(b)は、正極電極を上部から見た平面図である。
【0057】
図4に示す正極電極層2では、集電体1上に、相対的に塗布面積が大きい正極活物質のパターン部分2bと、相対的に塗布面積の小さい導電性材料のパターン部分2aとが、パターン部分2aが正方形の4つの頂点部分に位置するように配置されてなる。
【0058】
本発明においては、任意のパターン部分2aとパターン部分2bの配置は、図4に示すパターンに限定されず、図5に示したように、任意のパターン配置とすることができる。例えば、図5(a)に示すように、パターン部分2aが、正方形の4つの頂点部分とその中心部分に位置するように配置されても、図5(b)に示すように、上下3点ずつ(計6点)に位置するように配置されていてもよい。また、個別のパターン部分2aの大きさとパターン部分2bの大きさは、図5(c)および図5(d)に示したように、略同じ大きさであってもよい。図5(d)に示したように、複数のパターン部分2aが互いに隣接している配置であってもよい。
【0059】
本発明においては、正極電極層2を構成するパターン部分2aの総面積とパターン部分2bの総面積との割合は特に限定されないが、リチウムイオン二次電池の正極電極においては、パターン部分2aの総面積が、パターン部分2aとパターン部分2bとの総面積の5%から40%であることが好ましい。
【0060】
次に、図4に示す正極電極の製造方法について説明する。
図4に示す正極電極は、例えば、図6に示す二次電池の製造ライン200における点線内の正極電極製造ライン202を用いて製造することができる。
【0061】
正極電極製造ライン202は、集電体上に、導電性材料を含有する組成物(以下、「組成物a」という)を吐出する液滴吐出装置10a((以下、「吐出装置10a」という)、正極活物質を含有する組成物(以下、「組成物b」という)を吐出する液滴吐出装置10b(以下「吐出装置10b」という)、加熱乾燥装置11a、これらの装置を接続するベルトコンベアBC1により構成されている。これらの装置は、ベルトコンベアBC1等を駆動させる駆動装置13、および装置全体の制御を行う制御装置12と連結されている。
【0062】
吐出装置10a、吐出装置10bとしては、図1に示した液滴吐出装置10と同様の構成を有するものが使用できる。なお、図6に示す正極電極製造ライン202においては、組成物aと組成物bとを、別々の吐出装置(吐出装置10aおよび吐出装置10b)を用いて行っているが、一台の吐出装置により、組成物aおよび組成物bの吐出を行うようにすることもできる。
【0063】
先ず、所望の大きさのアルミ箔等の集電体を用意する。集電体はベルトコンベアBC1上を搬送され、吐出装置10aに取りこまれ、吐出装置10aにより、集電体上の所定領域に組成物aが吐出される。同一の箇所に同一のパターン(同一の組成物)を重ね画きし、所望の膜厚の組成物aの塗膜を形成することができる。
【0064】
次に、組成物aの塗膜が形成された集電体は、吐出装置10aから取り出され、ベルトコンベアBC1上を搬送され、吐出装置10bに取りこまれる。そして、吐出装置10bにより、集電体上の所定領域に組成物bが吐出される。同一の箇所に同一のパターン(同一の組成物)を重ね画きし、所望の膜厚の組成物bの塗膜を形成することができる。
【0065】
次いで、組成物aおよび組成物bの塗膜が形成された集電体は、吐出装置10bから取り出され、ベルトコンベアBC1上を搬送されて加熱乾燥装置11aに取りこまれる。そして、加熱乾燥装置11aにより、組成物aおよび組成物bの塗膜が加熱乾燥されて、図4に示す正極電極層が形成される。加熱乾燥装置11aでの加熱温度は、組成物aおよび組成物bに含まれる溶媒が完全に乾燥除去できる温度であればよい。通常、50℃から200℃である。
【0066】
また、本発明においては、吐出装置10aにおいて、集電体上に組成物aの塗膜が形成された後、図7に示すように、減圧乾燥装置16を設置して、組成物aの塗膜が形成された集電体を減圧乾燥装置16内に搬入して、組成物aの塗膜を乾燥した後、吐出装置10bにおいて、組成物bの塗布を行ってもよい。
【0067】
以上のようにして形成される正極電極層の平均膜厚は、特に限定されないが、5μmから50μmであるのが好ましい。また、集電体の一方に電極層が形成された電極の平均厚さは10μmから70μmであるのが好ましい。なお、電極および電池の厚みは、公知のマイクロメータを用いて測定することができる。
【0068】
また、電極面の面積は特に限定されないが、一般には、電極面の面積が広くなるほど、電極面の均一性を保つことが困難となる。この観点からは、電極面の面積が50cm2以上である場合に、本発明は特に有用である。
【0069】
以上のようにして得られる正極電極層は、組成物aが導電性材料を含有し、組成物bが正極活物質を含有する。所望のパターンで正極電極層が形成されると、正極活物質の微粒子の一部が、集電体に電気的に接続している導電性材料の微粒子に接した状態となる。すなわち、正極活物質の一部が導電性材料に密着するように配置されるので、導電パスが確保されて内部抵抗を下げることができ、良好な電子伝導性が確保される。本発明によれば、この意図したパターンがくずれることがないので、設計通りに、大電流での充放電を行う場合にも必要なエネルギーを簡便に取り出すこと(高出力化)ができる。
【0070】
なお、異なる電極形成材料を含有する組成物を3種類以上塗布するパターンにおいても、相対的に塗布面積の最も小さい組成物を最先に塗布すれば、その他の複数の組成物を吐出する順序は、特に制限されない。但し、意図したパターンをくずすことなく、設計通りのパターンを有する電極層を形成する上では、相対的に塗布面積の小さい組成物の順に塗布するのが好ましい。
【0071】
<二次電池の製造方法>
本発明の二次電池の製造方法は、負極電極、電解質および2種以上の正極電極材料からなる正極電極層を有する正極電極を有する二次電池の製造方法であって、予め設計された塗布パターンに従い、集電体上に前記2種以上の正極電極材料のうち、相対的に塗布面積の最も小さい材料を最先に塗布し、その後、相対的に塗布面積の大きい材料を塗布することにより、所定のパターンを有する正極電極層を形成して正極電極を形成する工程を有することを特徴とする。
【0072】
本発明の二次電池の製造方法においては、正極電極を本発明の電極の製造方法と同様にして製造するので、電極が意図した充放電特性を有する二次電池を得ることができる。
【0073】
二次電池は、正極電極、電解質、負極電極がこの順序に配置され、これらが外装材中に封止されてなる。具体的には、正極および負極をそれぞれ製造し、得られた正極および負極中に電解質を介在させ、それらを外装材内に封止することにより二次電池を組み立てることができる。
【0074】
本発明の二次電池の製造方法は、具体的には、図6に示す二次電池の製造ライン200により実施することができる。
すなわち、製造ライン200において、前述した点線内に示す正極電極製造ライン202により正極電極を製造し、これと並行して、液滴吐出装置(吐出装置)10c、加熱乾燥装置11b、ベルトコンベアBC2から構成される負極電極を形成する製造ラインにより、前記正極電極の製造方法と同様にして負極電極を形成し、得られた正極電極と負極電極を組立装置15において外装材内に収容し、電解質供給装置14より電解質を供給・封入して二次電池を製造することができる。
【0075】
本発明の製造方法により得られるリチウム二次電池の一例を図8に示す。図8に示すリチウム二次電池20は、正極電極30と負極電極40とがセパレータ50により区切られてなる積層型のリチウム二次電池である。
【0076】
図8中、正極電極30は、集電体30aと正極電極層30bが直列に積層された構造を有し、負極電極40は、集電体40aと負極電極層40bが直列に積層された構造を有する。また、正極および負極の内部には、図示を省略する電解質が充填されている。
【0077】
電解質としては、例えば、LiCIO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC49SO3、LiCF3CO2、Li224(SO32、LiN(CF3SO22、LiCn2n+1SO3(n≧2)、LiN(RfOSO22(ここで、Rfはフルオロアルキル基を表す)、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiN(C25SO2)(C49SO2)、LiN(CF3SO2)(C25SO2);エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのマクロマー;各種ポリマーからなるゲルポリマー電解質、真性ポリマー電解質、LiPON等の無機固体電解質;Liイオン含有常温溶解塩;等が挙げられる。
【0078】
前記電解質が溶媒を含む場合、その溶媒としては、例えば、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ν−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチカルカーボネート等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは複数を組み合わせて使用することができる。
【0079】
セパレータとしては、二次電池の使用範囲に耐えうるものであれば、特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;ポリプロピレンとポリエチレン等とのコポリマー;等の微多孔フィルムを、単一あるいは複合して形成されたものが挙げられる。セパレータの厚みは特に限定されないが、通常10μmから50μmである。
【0080】
外装材としては、特に限定されず、例えば、少なくとも金属箔膜および樹脂フィルムが積層された高分子金属複合フィルム等が挙げられる。
【0081】
なお、二次電池の工業的な生産過程においては、生産性を向上させるために、最終的な電池のサイズよりも大きい電極を作製し、これを所定の大きさにカットする工程を採用してもよい。
【0082】
二次電池の形状としては、ラミネート型、円筒型、平板型等が挙げられる。
例えば、ラミネート型の二次電池は、前記のようにして製造した正極電極、負極電極を適当な大きさに切り出し、端子を取り付け、乾燥アルゴン雰囲気下で、両者で電解質膜を狭持し、端子が外部に引き出された状態でアルミラミネートパック内に真空シールして製造することができる。
【0083】
例えば、円筒型の二次電池は、前記のようにして製造した正極電極、負極電極を用いて、正極電極、セパレータ、負極電極、セパレータの順に積層、捲回構成し、所定の長さに切断し、鉄製の円筒缶内に挿入し、電解質を添加して封口することにより、製造することができる。
【0084】
図8に示すリチウム二次電池20では、例えば、正極活物質としてLiCoO2を、また、負極活物質として炭素(C)を使用しており、下記に示すように、充放電を繰り返すことができる。
【0085】
【化1】

【0086】
(式中、xは1未満の正数である。)
【0087】
本発明により製造される電池は、高出力、高エネルギー密度が必要で、非常に厳しい条件が要求される車両用として用いると特に有益である。得られる電池は、振動に対する耐久性が高く、自動車のような振動が絶えず加えられる環境において使用されても、共振による電池の劣化が生じにくい。
【0088】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、前記実施形態に限らない。本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0089】
前記実施形態においては、2種以上の機能性材料からなる機能膜の具体例として、2種以上の電極層形成材料からなる電極層について説明したが、前記実施形態において触れたように、機能膜は、電極層に限らない。機能膜は、導電膜から成る配線パターンと、導電膜間を埋める絶縁膜とを有する回路膜であってもよい。また、回路膜を積層して回路などを構成する際に、積層される回路膜の間に積層して形成する中間膜であって、中間膜を挟むそれぞれの回路膜の回路パターン間を絶縁する絶縁膜と、回路パターン間を適宜導通させる導通層と、から成る中間膜であってもよい。
【0090】
前記実施形態においては、組成物の塗布パターンのパターンデータは、入力端末102からコンピュータ100にパターンの描画に必要な情報を入力し、コンピュータ100の描画部101が入力された情報に基づいてパターンを描画し、描画したパターンデータを記憶装置103に記憶していた。しかし、コンピュータによって描画パターンデータを形成することは、必須ではない。別途、設計段階などにおいて塗布パターンのデータを作成し、塗布装置に入力してもよい。
【0091】
前記実施形態においては、吐出装置として、インクジェット方式の液滴吐出装置を用いる例を挙げて説明したが、吐出装置は、インクジェット方式の液滴吐出装置に限らない。ディスペンサから液状材料を吐出する装置など、任意の量の液状材料を、吐出対象物の任意の位置に配置できる装置であれば、どのような装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に用いる液滴吐出装置の一例の概略を示す図。
【図2】本発明の機能膜の形成方法の手順を示すフローチャート。
【図3】本発明により得られる機能膜のパターン例を模式的に表した図。
【図4】本発明により製造される正極電極層のパターン例を模式的に表した図。
【図5】本発明により製造される正極電極層のパターン例を模式的に表した図。
【図6】本発明の二次電池の製造に用いる製造ラインの一例を模式的に表した図。
【図7】本発明の電極の製造に用いる製造ラインの一例を模式的に表した図。
【図8】本発明により得られたリチウム二次電池の一例を模式的に表した図。
【符号の説明】
【0093】
1…集電体、2…正極電極層、2a,2b…パターン部分、10,10a,10b,10c…液滴吐出装置、11a,11b…加熱乾燥装置、12…制御装置、13…駆動装置、14…電解質供給装置、15…組立装置、16…減圧乾燥装置、20…リチウム二次電池、30…正極電極、30a,40a…集電体、30b…正極電極層、40…負極電極、40b…負極電極層、50…セパレータ、100…コンピュータ、101…描画部、102…入力端末、103…記憶装置、104…ディスプレイ、105…容器、106…吐出ノズル、107…基体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に、2種以上の機能性材料を液滴吐出装置により吐出して、前記2種以上の機能性材料からなる機能膜を形成する機能膜の形成方法であって、
予め設計された塗布パターンに従い、基板上に、前記2種以上の機能性材料のうち、相対的に塗布面積の最も小さい材料を最先に塗布し、その後、相対的に塗布面積の大きい材料を塗布することにより、所定のパターンを有する機能膜を形成することを特徴とする機能膜の形成方法。
【請求項2】
集電体上に、2種以上の電極層形成材料を液滴吐出装置により吐出して、前記2種以上の電極層形成材料からなる電極層を形成する電極の製造方法であって、
予め設計された塗布パターンに従い、前記集電体上に、前記2種以上の電極層形成材料のうち、相対的に塗布面積の最も小さい材料を最先に塗布し、その後、相対的に塗布面積の大きい材料を塗布することにより、所定のパターンを有する電極層を形成する工程を有することを特徴とする電極の製造方法。
【請求項3】
前記2種以上の電極層形成材料として、正極活物質の少なくとも一種と、炭素系導電性材料の少なくとも一種からなる材料を使用し、二次電池の正極電極を形成するものであることを特徴とする請求項2に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
負極電極、電解質および2種以上の正極電極材料からなる正極電極層を有する正極電極を有する二次電池の製造方法であって、
予め設計された塗布パターンに従い、集電体上に前記2種以上の正極電極材料のうち、相対的に塗布面積の最も小さい材料を最先に塗布し、その後、相対的に塗布面積の大きい材料を塗布することにより、所定のパターンを有する前記正極電極層を形成して正極電極を形成する工程を有することを特徴とする二次電池の製造方法。
【請求項5】
基体の上に、互いに異なる機能性材料で構成される第1および第2の機能膜パッチを含む機能膜であって、当該第1および第2の機能膜パッチが互いに境界の少なくとも一部を接するように構成される機能膜を形成するための機能膜の形成方法であって、
前記第1の機能膜パッチに対応する第1の領域および前記第2の機能膜パッチに対応する第2の領域を決定する決定ステップと、
前記第1の領域と前記第2の領域のうち相対的に面積の小さい方の領域に、対応する前記機能性材料を含む液状材料を塗布する第1塗布ステップと、
前記第1塗布ステップの後に、前記第1の領域と前記第2の領域のうち相対的に面積の大きい方の領域に、対応する前記機能性材料を含む液状材料を塗布する第2塗布ステップと、を有することを特徴とする機能膜の形成方法。
【請求項6】
前記第1および第2塗布ステップは、液滴吐出装置を用いて前記液状材料を前記基体に向けて吐出することで実行することを特徴とする請求項5に記載の機能膜の形成方法。
【請求項7】
集電体の上に、互いに異なる電極層材料で構成される第1および第2の電極層パッチを含む電極層であって、当該第1および第2の電極層パッチが互いに境界の少なくとも一部を接するように構成される電極層を形成して成る電極の製造方法であって、
前記第1の電極層パッチに対応する第1の領域および前記第2の電極層パッチに対応する第2の領域を決定する決定ステップと、
前記第1の領域と前記第2の領域のうち相対的に面積の小さい方の領域に、対応する前記電極層材料を含む液状材料を塗布する第1塗布ステップと、
前記第1塗布ステップの後に、前記第1の領域と前記第2の領域のうち相対的に面積の大きい方の領域に、対応する前記電極層材料を含む液状材料を塗布する第2塗布ステップと、を有することを特徴とする電極の製造方法。
【請求項8】
前記電極層材料を含む液状材料は、少なくとも、正極活物質を含有する液状材料と、炭素系導電性材料を含有する液状材料とを含み、
前記電極層を有する前記電極が、二次電池の正極電極であることを特徴とする、請求項7に記載の電極の製造方法。
【請求項9】
前記第1および第2塗布ステップは、液滴吐出装置を用いて前記電極層材料を含む液状材料を前記集電体に向けて吐出することで実行することを特徴とする、請求項7又は8に記載の電極の製造方法。
【請求項10】
負極電極と、電解質と、集電体の上に、互いに異なる正極電極層材料で構成される第1および第2の正極電極層パッチを含む正極電極層であって、当該第1および第2の正極電極層パッチが互いに境界の少なくとも一部を接するように構成される正極電極層を形成して成る正極電極と、を備える二次電池の製造方法であって、
前記第1の正極電極層パッチに対応する第1の領域および前記第2の正極電極層パッチに対応する第2の領域を決定する決定ステップと、
前記第1の領域と前記第2の領域のうち相対的に面積の小さい方の領域に、対応する前記正極電極層材料を含む液状材料を塗布する第1塗布ステップと、
前記第1塗布ステップの後に、前記第1の領域と前記第2の領域のうち相対的に面積の大きい方の領域に、対応する前記正極電極層材料を含む液状材料を塗布する第2塗布ステップと、を有することを特徴とする二次電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−307547(P2007−307547A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6670(P2007−6670)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】