説明

櫛形ポリマー

本発明は、a)(i)モノマーを(w+z)モル当量;(ii)式(IX)の開始剤化合物を1モル当量、その中のBはハロゲンを表し、BはHまたはハロゲンを表し、Yは抗体またはその断片の残基を付着できるか、そのような基に転換できる基を表し、Lはリンカー基を表し、yは1,2か3、wは少なくとも1でzは0以上;(iii)複数のモノマーの重合を触媒作用して櫛形ポリマーにすることができる触媒を供与し;そしてb)当該触媒につき当該開始剤との組合せで複数のモノマー(i)の重合を触媒させ櫛形ポリマーを製造する工程を含んでいる、櫛形ポリマーを製造するための製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景および概要)
本発明は抗体にエフェクター分子を結合させる際に使用する化合物に関する。より詳しくは、本発明はエフェクター分子および可溶化部分を付着させた抗体−櫛形ポリマー複合体を含む分子に関する。それに当該分子を製造する方法およびそれらを含む医薬組成物も提供される。
【背景技術】
【0002】
抗体の結合選択性は薬物のようなエフェクター分子をガン細胞のような特定の治療目標に送達するのに使用できる。エフェクター分子は、例えば直接付着(例えば米国特許第5,677,425号;欧州特許第0948544号を参照)またはリンカーを介しての付着(例えば米国特許第6,214,345号を参照)を含む種々な方法を用いて抗体に付着させてもよい。
【0003】
ポリエチレングリコール(PEG)はタンパク質またはポリペプチドに付着させて免疫原性を低下させ、生体内の循環半減期を増加させそして当該タンパク質の溶解性を向上させてもよい。PEGは櫛形ポリマーとして当該タンパク質に付着させてもよい(例えばWO2004/113394を参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はエフェクター分子および可溶化部分の両方が付着する新規抗体−櫛形ポリマー複合体を提供する。
【0005】
本発明はこうして本質的に1つ以上の櫛形ポリマーに結合した1つ以上の抗体からなる化合物を提供し、その中では当該櫛形ポリマーは1つ以上のエフェクター分子および場合により1つ以上の可溶化基を含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は式(Ia)または(Ib)の化合物を提供するが:
【0007】
【化1】


式中:yは1,2または3
mは1,2,3,4,5,6,7,8,9または10
はハロゲンを表し
はHまたはハロゲンを表し
Aは抗体の残基またはその断片の残基を表し
Yはスペーサー基を表し
Lはリンカー基を表し
Xは1つ以上のエフェクター分子をw当量および1つ以上の可溶化部分をz当量含んでいる櫛形ポリマー部分を表し、そこではwは少なくとも1およびzは0以上である。
【0008】
好ましくは、式(Ia)は式(IIa)を有する化合物である。
【0009】
【化2】

【0010】
好ましくは式(Ib)は式(IIb)を有する化合物である。
【0011】
【化3】


適切にはmは1または2である。
1つの実施形態ではyは1である。
好ましくは、本発明で使用されるハロゲンは臭素または塩素である。好ましくは塩素である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書で使用される場合、用語“残基”は当技術分野の当事者であれば良く知っている専門用語のように、抗体の一部または置換反応をしたときに残存するその断片を意味すると理解される。
【0013】
当該残基Aには抗体全体の残基およびその機能的に活性断片またはその誘導体が含まれ、それはポリクローナル、モノクローナル、ヒト化またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、Fab’断片およびF(ab’)断片と前記のいずれかのエピトープ結合断片でありうるがそれだけに限らない。
【0014】
当該残基Aには架橋抗体の残基が含まれることは理解されるであろう。当該架橋抗体は当技術分野では良く知られている(例えば米国特許第5,262,524号を参照)。本明細書で使用される用語“架橋抗体”は接続構造で結合した2,3または4個の抗体またはその断片を称する。当該接続構造は、当該抗体またはその断片を互いに結合することができる分子構造のいずれであってもよいが、例えば接続構造で互いに結合したFab’断片を含んでいる三および四価単一特異性抗原結合タンパク質につき記述しているWO92/22583を参照。1つの実施形態では、当該架橋抗体は3個の抗体断片、好ましくは2005年12月1日に開示されたWO2005113605に記述されているようにFab’断片を含む。他の実施形態では、当該架橋抗体はWO2005/061005に記述されているように接続された2つの抗体断片を含む。
【0015】
抗体には免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫活性部分、即ち特異的に抗原を結合する抗原結合部位を含む分子が含まれる。本発明の免疫グロブリン分子はいずれかのクラス(例えばIgG、IgE、IgM、IgDまたはIgA)または免疫グロブリン分子のサブクラスでありうる。
【0016】
モノクローナル抗体はハイブリドーマ手法(Kohler & Milstein,Nature,1975,256,495〜497)、トリオーマ手法、ヒトB細胞ハイブリドーマ手法(Kozbor等、Immunology Today,1983,4,72)およびEBVハイブリドーマ手法(Cole等,“Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, pp.77〜96、Alan R.Liss,Inc.,1985)”のような技術で知られている方法のいずれかで調製してもよい。
【0017】
本発明で使用する抗体は、例えばBabcook,J等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1996,93(15)7843〜7848、WO92/02551、WO2004/051268およびWO2004/106377が記述した方法による特異抗体の製造用に選ばれた単一リンパ球から生じた免疫グロブリン可変領域cDNAsのクローニングおよび発現による単一リンパ球抗体法を用いて作り出してもよい。
【0018】
ヒト化抗体は非ヒト種からの1つ以上の相補性決定領域(CDRs)およびヒト免疫グロブリン分子(例えば米国特許第5,585,089号)からのフレームワーク領域を含んでいる抗体分子である。
【0019】
キメラ抗体は、当該軽鎖と重鎖遺伝子が異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子区域から構成されるように遺伝子操作された免疫グロブリン遺伝子でコード化されている抗体である。
【0020】
本発明で使用する抗体は当技術分野で知られている種々なファージ提示法を用いて生成させることもでき、Brinkman等,J.Immunol.Methods,1995,182,41〜50;Ames等,J.Immunol.Methods,1995,184,177〜186;Kettelborough等,Eur.J.Immunol.,1994,24,952〜958;Persic等,Gene,1997,187,9〜18およびBurton等,Advances in Immunology,1994,57,191〜280;WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982およびWO95/20401;そして米国特許第5,698,426号;第5,223,409号;第5,403,484号;第5,580,717号;第5,427,908号;第5,750,753号;第5,821,047号;第5,571,698号;第5,427,908号;第5,516,637号;第5,780,225号;第5,658,727号;第5,733,743号および第5,969,108号で開示されたものを含む。単一鎖抗体の製造に関する手法、米国特許第4,946,778号に記載されているようなものは単一鎖抗体を製造するのに適用することもできる。同じようにトランスジェニックマウスまたは他の哺乳類を含む他の生物はヒト化抗体を発現するのに使用してもよい。
【0021】
1つの例では、当該抗体断片はFab’断片で、これは野生型または修飾されたヒンジ領域を保有する。多くの修飾ヒンジ領域は既に例えば米国特許第5,677,425号、WO9915549およびWO9825971に記述されており、それらは参考で本明細書に組み込まれている。
【0022】
他の抗体断片にはWO2005003169、WO2005003170およびWO2005003171に記述されたものが含まれる。
【0023】
適当であれば、本発明で使用する当該抗体断片は単一遊離チオールを、好ましくはヒンジ領域に含有する。
【0024】
本発明の抗体またはその断片は一般的に抗原へ選択的結合ができる。当該抗原は、細菌細胞、酵母細胞、T細胞、内皮細胞または腫瘍細胞のような細胞上の細胞表面抗原のような細胞随伴性抗原のいずれでもよく、可溶性抗原でもよい。抗原は、病気または感染の間に上昇制御される抗原のような医学関連抗原のいずれかでもよく、例えば受容体および/またはそれらの相当する配位子のようなものが挙げられる。細胞表面抗原の特定の例には、例えばβ1インテグリンのような接着分子が含まれ、それは例えばVLA−4、E−セレクチン、P−セレクチンまたはL−セレクチン、CD2,CD3,CD4,CD5、CD7、CD8、CD11a、CD11b、CD18、CD19、CD20、CD23、CD25、CD33、CD38、CD40、CD45、CDW52、CD69、CD70、CD134、癌胎児性抗原(CEA)、MUC−1、MHCクラスIおよびMHCクラスII抗原およびVEGFおよび適切であればその受容体である。可溶性抗原にはIL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−8、IL−12、IL−16かIL−17のようなインターロイキン、例えば呼吸器合胞体ウイルスまたはサイトメガロウイルス抗原のようなウイルス抗原、IgEのような免疫グロブリン、インターフェロンα、インターフェロンβまたはインターフェロンγのようなインターフェロン、腫瘍壊死因子α、腫瘍壊死因子β、G−CSFまたはGM−CSFのようなコロニー刺激因子、およびPDGF−αとPDGF−βのような血小板由来成長因子並びに適したその受容体が含まれる。
【0025】
本発明で使用するスペーサー基は、当該リンカーと当該抗体またはその断片の間に橋を形成することができる当技術分野の当事者では良く知られた任意の部分(moiety)を適切に含む。特に当該スペーサー基Yは当該リンカーLと残基Aの間に橋を形成することができる当技術分野の当事者に良く知られた任意の部分を適切に含む。1つの例ではAがシステイン残基を含む抗体またはその断片の残基であれば、相当するスペーサー基Yはスクシンイミドが適切である(即ちマレイミド残基のチオール結合を介してのシステイン含有ポリペプチド残基Aおよびマレイミド窒素原子を通しての当該リンカーとの反応生成物)。
【0026】
当該リンカー基Lは、当該スペーサ基Yおよびアミド基のN原子の間に橋を形成することができる当技術分野の当事者には知られた任意の部分を適切に含む。Lは直鎖または分岐でもよい。典型的なLの例には:
−(CH−で、nは1,2,3,4,5または6である;
【0027】
【化4】


従って1つの実施形態では、Lは−(CH−である。好ましくは、nは2である。他の実施形態では、Lは
【0028】
【化5】


を表す。
【0029】
本発明では、Xは1つ以上のエフェクター分子のw当量および水可溶化部分のz当量を含んでいる櫛形ポリマーを表す。
【0030】
すなわち、Xは式IIIおよびIVの成分を任意の順番で適切に含む。
【0031】
【化6】


式中:
wは少なくとも1である。
zは0以上である。
Tは不在或いはリンカー基である。
Wはエフェクター分子である。
Zは水可溶化部分である。
MはNHまたはOである。
はメチルまたはHである。
適しているMはNHである。
【0032】
通常ではwは1と300の間である。適切であるのはwが1と200の間である。1つの実施形態ではwは1と100の間である。1つの実施形態ではwは1と50の間である。1つの実施形態ではwは1と20の間である。
【0033】
通常ではzは0と300の間である。適切であるのはzが0と200の間である。適切であるのはzが少なくとも1である。1つの実施形態ではzは1と200の間である。1つの実施形態ではzは1と100の間である。1つの実施形態ではzは1と50の間である。1つの実施形態ではzは1と20の間である。
【0034】
X中に存在する化合物IIIとIV(即ちw+z)の全数量は少なくとも1つである。通常ではw+zは1と300の間である。1つの実施形態ではw+zは15である。1つの実施形態ではw+zは13である。1つの実施形態ではw+zは41である。1つの実施形態ではw+zは96である。1つの実施形態ではw+zは165である。1つの実施形態ではw+zは262である。w+zが41のとき好ましくはwは6であり、好ましくはzは35である。
【0035】
適切なリンカーT(存在する場合)は当技術分野では良く知られている。特に好ましいリンカーは自壊的リンカーである。自壊的リンカーの例は米国特許第6,214,345号に記載されている。特に好ましいのは以下の式(V)を有するリンカーである:
【0036】
【化7】


式中Tは[CHまたはCHCH[OCHCHを表し、tは1と10の間で、nは5と100の間である。1つの実施形態では、Tは[CHを表す。1つの実施形態では、tは5である。1つの実施形態では、TはCHCH[OCHCHを表す。1つの実施形態では、nは5と30の間で、好ましくは12または24である。他の実施形態では、nは40と100の間で、好ましくは40と80の間である。
【0037】
当該エフェクター分子Wは単一エフェクター分子または単一部分を形成するように結合した2個以上の当該分子を含むのが良いことは理解されるであろう。当該部分の例には分岐接続構造で結合したエフェクター分子が含まれる。
【0038】
Wが1より大きい場合、各Wは同じであるかまたは異なる場合がありうるのも理解されるであろう。
【0039】
本発明で使用されるエフェクター分子にはヒトを含む動物の治療において薬効のある、または診断に使用するのに適した生物活性化合物が含まれる。当該分子には核酸(例えばDNAやRNA)、炭化水素、脂質、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣薬、小分子および米国特許第6,214,345号、欄8、列49から欄9列13中に一覧表とされたような他の薬物が含まれる。
【0040】
エフェクター分子の例には細胞に害(例えば殺す)となる薬剤のいずれかを含む細胞毒または細胞毒性薬剤が含まれてもよい。例としては、副溝結合剤(例えばTherapeutic Patents,2004,14,1693〜1724における専門家の意見で与えられた化合物を参照)、コンブレスタチン、ドラスタチン、アウリスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、メイタンシノイド、スポンジスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアステルリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルチシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシンおよびその類似体または同族体が含まれる。1つの実施形態では、当該細胞毒物はWO03097635に記載されている3−置換1−(クロロメチル)−1,2−ジヒドロ−3H−[縮環インドール−5−イル(アミン誘導)]化合物またはその類似体の残基である。1つの実施形態では、当該細胞毒物は1−(クロロメチル)−3−[(2E)−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]−1,2−ジヒドロ−3H−ベンゾ[e]インドール−5−アミンの残基である。
【0041】
エフェクター分子には、これだけに限らないが代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロトスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアミシンまたはデュオカルマイシン)および抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)も含まれる。
【0042】
他のエフェクター分子には、111Inと90Y、Lu177、ビスマス213、カリフォルニウム252、イリジウム192およびタングステン188/レニウム188のようなキレート化放射性核種;またはこれに限らないがアルキルホスフォコリン、トポアイソメラーゼI阻害剤、タキソイドおよびスラミンのような薬物が含まれてもよい。
【0043】
他のエフェクター分子にはタンパク質、ペプチドおよび酵素が含まれる。関心のある酵素には、これだけに限らないがタンパク質分解酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが含まれる。関心があるタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドには、これだけに限らないが免疫グロブリン、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素またはジフテリア毒素のような毒素、インスリンのようなタンパク質、腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子または組織プラスミノーゲン活性化因子、例えばアンジオスタチンまたはエンドスタチンのような血栓性溶解剤または血管新生阻害剤、またはリンホカイン、インターロイキン−1(IL−1)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−6(IL−6)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、神経成長因子(NGF)または他の成長因子および免疫グロブリンのような生物反応修飾因子が含まれる。
【0044】
他のエフェクター分子には例えば診断に有用な検出可能な物質が含まれても良い。検出可能な物質の例には種々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射活性核種、陽電子放出金属(陽電子放出断層撮影法にて使用)および非放射性常磁性金属イオンが含まれる。診断法として使用する抗体に複合することができる金属イオンについては一般的に米国特許第4,741,900号を参照。適した酵素には西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが含まれる;適した補欠分子族にはストレプトアビジン、アビジンおよびビオチンが含まれる;適した蛍光物質にはウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルおよびフィコエリスリンが含まれる;適した発光物質にはルミノールが含まれる;適した生物発光物質にはルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが含まれる;そして適した放射活性核種には125I、131I、111Inおよび99Tcが含まれる。
【0045】
他のエフェクター分子には本発明の化合物の半減期を延長および/または免疫原性を低下させるのに用いることができるタンパク質またはポリマー或いは他の化合物が含まれても良い。適したタンパク質の例にはアルブミンおよびアルブミン結合タンパク質或いはアルブミン結合脂肪酸が含まれる。適しているポリマーの例には以下に記したもので、特に随意に置換された直鎖または分岐鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレンまたはポリ(エチレングリコール)のようなポリオキシアルキレンポリマーが含まれる。
【0046】
本発明で使用する水可溶化部分Zには、酸、アミン、四級アミンのような荷電種(陽および陰)、アミノ酸のような両性イオン種、ポリエチレングリコールのようなポリマー、モノまたはポリヒドロキシアルカン、アルコール類(モノ、ジおよびトリ)および糖類のように当技術分野では既知の適した可溶化部分のいずれもが含まれる。
【0047】
適したポリマーの例には、例えば随意に置換された直鎖または分岐鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレンまたはポリオキシアルキレンポリマー或いは分岐か非分岐多糖類、例えば乳糖、アミロース、デキストランまたはグリコーゲンのようなホモ−またはヘテロ−多糖類、が含まれる合成または天然由来の実質的に水可溶性で、実質的に非抗原性ポリマーが含まれる。上記合成ポリマー上に存在できる特定の随意的置換基には1個以上のヒドロキシ、メチルまたはメトキシ基が含まれる。合成ポリマーの特定の例には随意的置換した直鎖または分岐鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール)またはその誘導体、特にメトキシポリ(エチレングリコール)のような随意的置換ポリ(エチレングリコール)が含まれる。
【0048】
好ましくは、当該ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)のようなポリアルキレンオキシドである。一般的に付着するPEG部分に関しては、“Poly(ethyleneglycol) Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications”,1992,J.Milton Harris(ed),Plenum Press,New York;“Poly(ethyleneglycol) Chemistry and Biological Applications”,1997,J.Milton Harris and S.Zalipsky(eds),American Chemical Society,Washinton DC;and “Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences”,1998,M.Aslam and A.Dent,Grove Publishers,New Yorkで参照できる。
【0049】
当該ポリマーの大きさは望みに従って変化してよいが、一般的には平均分子量は150から100,000Da、好ましくは2,000から50,000Da,より好ましくは10,000から40,000Da、そして更により好ましくは20,000から40,000Daの範囲である。
【0050】
zが1より大きいとき、各Zは同じまたは異なる場合がありうることは理解されるであろう。
【0051】
1つの実施形態では、当該水可溶化部分Zは:
【0052】
【化8】


である。
【0053】
1つの実施形態では、当該水可溶化部分Zは:
【0054】
【化9】


である。
【0055】
1つの実施形態では、当該水可溶化部分Zは:
【0056】
【化10】


である。
【0057】
1つの実施形態では、当該水可溶化部分Zは:
【0058】
【化11】


である。
【0059】
1つの実施形態では、当該水可溶化部分Zは:
【0060】
【化12】


である。
【0061】
同じように本発明で提供されるのは抗体の付着に適した有益な中間体化合物である。前記化合物は本質的に以下の要素からなる:1つ以上のエフェクター分子および随意的に1つ以上の可溶化基および残基Aを付着できるか、そのような基に転換することができる基を含んでいる櫛形ポリマー。
【0062】
従って本発明は式(VI)による化合物を提供する:
【0063】
【化13】


式中:Yは当該残基Aを付着することができるか、当該基に転換できる基を表す。
L、X、B、Bおよびyは本明細書にて前記したようなものである。
はLとAを結合するのに適し、当技術分野で知られている基或いはそのような基に転換するのに適した基である。例えばYは保護された誘導体、即ち当該化合物に存在する他の基とYが反応するのを防ぐもう1つの基、‘保護基’で覆われたものでよい。当該保護された誘導体はAを付着できる基に容易に転換できる。そのような基の例は保護されたチオールで、当該保護基は簡単に除去できて残基Aと反応するように遊離チオールを供する。当該保護基の除去の条件は、櫛形ポリマーの成分の生物的活性が影響されないようなものが好ましい。適切な保護チオールは当技術分野で知られており、チオールエーテル類(例えばトリチル保護)、チエステル類(例えばアセチルまたはプロピニル保護)、チオカーボネート類、チオカルバメート類およびスルフェニル類が含まれる。
【0064】
当該Yは抗体またはその断片中に位置するアミノ酸側鎖または末端アミノ酸官能基、例えば遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシまたはカルボキシル基のいずれかを通じて残基Aに付着してもよい。当該アミノ酸は自然、例えば抗体断片に存在するものでよく、組換えDNA法を用いた操作で抗体またはその断片に入れたものでもよい(例えば米国特許第5,219,996号および米国特許第5,677,425号を参照)。本発明の好ましい態様では、2つの基は抗体またはその断片中、好ましくはヒンジに位置するシステイン残基のチオール基を通じて共有結合する。当該共有結合は一般的にジスルフィド結合または硫黄−炭素結合、好ましくは後者であろう。1つの例では、付着点としてチオール基を利用する場合、適当に活性化された基、たとえばマレイミドのようなチオール選択性誘導体を使用するのがよい。
【0065】
はWO2004/113394のページ9から11に一覧表とされたもののいずれかを含んだ適切な基であってもよい。
【0066】
は−S−S−Rでよく、Rは直鎖か側鎖C1〜6アルキルまたは置換芳香族のいずれかである。
【0067】
【化14】

【0068】
本明細書で使用する用語“C1〜6アルキル”は1から6個の炭素原子を含む直鎖および分岐アルキル基を称する。当該基はメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルである。好ましくはRはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、二級ブチルおよび三級ブチルから選ばれる。好ましいRは三級ブチルである。
【0069】
好ましい特徴は、Y
【化15】


を示す。
【0070】
従って、上記式(VI)の例示的化合物は式(VII)の化合物で示される:
【0071】
【化16】

【0072】
好ましい特徴は、Yはマレイミドの窒素原子を介して当該分子の残部に付着したマレイミド誘導体を示す。従って、上記式(VI)の1つの例示的化合物は式(VIII)の化合物で表される。
【0073】
【化17】

【0074】
本発明の更なる態様によれば、1つ以上の薬学的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤との組合せた式(Ia)または(Ib)の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0075】
本発明による医薬組成物は経口、口腔、非経口、鼻腔、局所、点眼または直腸投与に適した形状或いは吸入または吹入による投与に適した形状をとる。
【0076】
経口投与に関して、当該医薬組成物は、例えば結合剤(例えば前ゼラチン化トウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば乳糖、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えばジャガイモ澱粉またはグリコール酸ナトリウム)または湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容できる賦形剤とともに従来手段で調製される錠剤、トローチまたはカプセルの形状をとるのがよい。当該錠剤は当技術分野では良く知られている方法で被覆するのがよい。経口投与用の液状製剤は、例えば溶液、シロップまたは懸濁液の形状をとってもよく、または使用前に水か他の適当な媒体で構成するための乾燥製品として供される。当該液状製剤は懸濁剤、乳化剤、非水系媒体または保存剤のような薬学的に許容できる添加剤とともに従来手段で調製するのがよい。当該調製物は緩衝塩、香味剤、着色剤または甘味剤を適宜、含有してもよい。
【0077】
経口投与の調製は当該活性化合物の放出を制御するために適切に調合してよい。
【0078】
口腔投与に関しては、当該組成物は従来のやり方で調合した錠剤またはトローチの形状をとるのがよい。
【0079】
式(Ia)または(Ib)の化合物は注射による非経口投与用、即ち急速静注または点滴用に処方されるであろう。注射用の処方は単位容量形、即ちガラスアンプルまたはマルチドーズ用容器、即ちガラスバイヤルで提供される。注射用の組成物は油状か水溶性媒体中で懸濁液、溶液または乳化物のような形状をとるか、懸濁剤、安定化剤、保存剤および/または分散剤のような製剤化剤を含むのがよい。或いは当該活性成分は使用前に適した媒体、例えば発熱物質のない滅菌水と組成物を作る粉体形状であってもよい。
【0080】
上記処方に加えて、式(Ia)または(Ib)の化合物は持続性製剤としても処方化される。当該長期作用型処方は埋め込みまたは筋肉内注射で投与してもよい。
【0081】
鼻腔投与または吸入投与用に関しては、本発明による化合物は、例えばジクロロジフルオロメタン、フルオロトリクロロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適したガス或いはガス混合物のような適した推進剤を使用して、加圧したパックまたは噴霧器によるエアロゾル噴霧の形状で容易に送達することができる。
【0082】
当該組成物は、希望により、当該活性成分を含有する1単位以上の単位服用量を含むパックまたはディスペンサー装置で提供されてもよい。当該パックまたはディスペンサー装置には投与に関する使用説明書をつけるのがよい。
【0083】
局所投与に関しては、本発明による化合物は1種類以上の薬学的に許容できる担体中に懸濁または溶解した当該活性成分を含有する適切な軟膏に使いやすいように処方するのがよい。特定な担体には、例えば鉱油、液状石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、乳化蝋および水が含まれる。或いは本発明による化合物は1種類以上の薬学的に許容できる担体中に懸濁または溶解した活性化合物を含有する適切なローション中に処方されるのがよい。特定な担体には、例えば鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、ベンジルアルコール、2−オクチルドデカノールおよび水が含まれる。
【0084】
眼投与用では、本発明による化合物は、例えば硝酸フェニル水銀、塩化ベンジルアルコニウムまたは酢酸クロルヘキシジンとして挙げられる殺菌剤または殺真菌剤のような防腐剤の添加または無添加のどちらかにおいて、等張性で、pH調整した滅菌食塩水中でミクロイオン化した懸濁液として使いやすく処方されているのがよい。或いは点眼投与用では化合物はワセリンのような軟膏に処方されていてもよい。
【0085】
直腸投与用では、本発明の化合物は座薬として処方されるのが都合よいであろう。これらは当該活性化合物を室温では固体であるが直腸温度では液体である適切な非刺激性賦形剤と混合して調製でき、それ故直腸内では溶融して当該活性成分を放出することになる。当該物質には、例えばココアバター、ミツロウおよびポリエチレングリコールが含まれる。
【0086】
特定の疾患の予防または治療で要求される本発明の化合物の量は選んだ化合物および治療する患者の病状によって変動するであろう。しかしながら一般的に、1日投与量は薬10ng/kgから1000mg/kg、典型的には100ng/kgから100mg/kg、例えば経口または口腔投与では約0.01mg/kgから40mg/kg体重であり、約非経口投与では約10ng/kgから50mg/kg体重であり、そして鼻腔投与または吸引か吸入での投与では約0.05mgから約1000mg、例えば約0.5mgから約1000mgの範囲がよい。
【0087】
本発明の化合物は本明細書で供した実施例におけるものと類似した方法を用いて調製できる。
【0088】
典型的には式(Ia)および(Ib)の化合物は、式(VI)の化合物に当技術分野の当事者であれば良く知っている手順を用いる残基Aの付着を含む製法で調製されるであろう。式(VI)の化合物を用いて式(Ib)の化合物を製造する場合、y=1であることは理解されよう。
【0089】
当該櫛形ポリマー部分Xは当技術分野で知られた適切な重合方法のいずれかを用いて調製されるであろう。適切な方法にはリビングフリーラジカル重合系が含まれ、例えばWO96/30421およびWO97/18247を参照。好ましくは使用される重合方法は、WO2004/113394、WO97/47661およびWO99/28362に記載されているようなリビングラジカル重合である。場合により、当該重合には、例えばジスルフィドのような非重合性スカベンジャー剤も含まれてもよい。
【0090】
従って本発明は:
a)以下を供し:
(i)モノマーの(w+z)モル当量
(ii)式(IX)の開始剤化合物の1モル当量
【0091】
【化18】


式中、Bはハロゲンで、Y、L、B、yおよび(w+z)は前に定義したようなもの;
(iii)複数のモノマーの重合を触媒することができ櫛形ポリマーを製造する触媒;そして
b)当該開始剤との組合せで当該触媒で複数の当該モノマー(i)の重合を触媒して当該櫛形ポリマーを製造する工程を含んだ櫛形ポリマーを製造する製造方法も提供する。
【0092】
式(IX)の化合物は新規化合物で、それゆえ本発明の更なる特徴を構成する。
【0093】
式(IX)の化合物は式(X)の化合物と式(XI)の化合物を反応させることを含む製造方法で調製されるであろう:
【0094】
【化19】


式中、Qは適している脱離基である。当該脱離基は典型的にはハロゲン原子で、例えばクロロである。
【0095】
当該製造方法の工程(i)で使用するモノマーは当該櫛の‘骨格’の製造に使用するいずれのモノマーでよく、それにエフェクターおよび可溶化部分をその後に付着させるのがよい。当該モノマーの例は:
【0096】
【化20】

【0097】
本発明はエフェクター分子および場合により可溶化部分を含んでいる櫛形ポリマーを製造する製造方法も提供するが、前記方法は更に工程(b)で製造された櫛形ポリマーが1種類以上のエフェクター分子のw当量と1種類以上の可溶化部分のz当量を反応させる工程(c)を含んでおり、wとzは前に説明したものである。上記方法の工程(b)と工程(c)で製造される櫛形ポリマーは新規化合物で、本発明の更なる特徴を構成している。
【0098】
本発明は少なくとも1つの抗体またはその断片を付着した櫛形ポリマーを製造する製造方法も提供するが、前記製造方法は工程(b)または工程(c)にて製造された櫛形ポリマーを少なくとも1つの抗体またはその断片に付着することを含んでいる。本製造方法で製造された抗体−櫛形ポリマー複合体は新規化合物で、本発明の更なる特徴を構成している。
【0099】
好ましくは工程(c)にて使用するエフェクター部分は式HN−T−Wを有するが、そこでのTおよびWは前に定義したようなものである。ここで提示したTは好ましくは上で表現したような式(V)を有する。
【0100】
好ましくは、工程(c)で使用する可溶化部分は式HN−Zを有し、Zは上で定義したようなものである。
【0101】
好ましくは工程(c)で使用する可溶化部分は以下の式を有する:
【0102】
【化21】

【0103】
或いは、本発明の製造方法では工程(i)で使用されるモノマーはエフェクターおよび/または可溶化部分を既に含んでいてもよい。適切であるモノマーは当技術分野では良く知られていて、前に定義したZ、TおよびW部分を含むであろう。当該モノマーが当該エフェクター部分を含む1つの例では、当該モノマーは以下の式を有する:
【0104】
【化22】

【0105】
当該モノマーが当該可溶化部分を含む1つの例では、当該モノマーは以下の式を有する:
【0106】
【化23】


式中R、M、T、WおよびZは全て前に定義したようなものである。
【0107】
当該製造方法の工程(a)で使用する触媒は当技術分野で知られた適切な触媒のいずれかである。当該触媒の例はWO96/30421、WO97/18247、WO2004/113394、WO97/47661およびWO99/28362に供せられている。典型的には当該触媒は遷移金属塩で、その遷移金属は1式量の酸化状態と有機ジイミンにより酸化させられることができる酸化状態を有する。当該触媒は混合物でありうることは理解されるであろう。適切には触媒はCu(I)ClおよびN−(n−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン(NMPI)の混合である。適切には当該触媒は式(IX)の開始剤化合物:Cu(I)Cl:NMPIが1:1:2の比率で使用される。
【0108】
当該製造方法の工程(i)で必要なモノマーの量は当該ポリマーで必要とされる単位の数に依存する。例えば、15単位ポリマーが必要とされる場合、モノマーの開始剤との比は15:1を使用してもよい。ポリマーの典型的な長さは1〜300単位範囲にある。1つの好ましい実施形態では当該単位長さは41である。
【0109】
本発明による化合物の調製用に前に説明した製造方法のいずれから得られる混合生成物の場合、望ましい生成物は沈殿、透析、分子量ろ過、ゲル浸透クロマトグラフィー;カチオンまたはアニオン交換;分取用HPLC、または適切な溶媒系と組合せたシリカかアルミナを用いるカラムクロマトグラフィーのような従来法により、適切な段階にてそれらから分離できる。
【0110】
上記合成順序のいずれかにおいて、関与する分子のいずれかにある感受性または反応性基を保護するのが必要および/または望ましいであろう。これはProtective Groups in Organic Chemistry、ed.J.F.W.McOmie、Plenum Press、1973およびT.W.Greene & P.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、3rd edition、1999に記載されているような従来の保護基により達成されるであろう。当該保護基は当技術分野で知られている方法を用いていずれか都合の良い後続段階で除去されるであろう。
【0111】
本発明は本質的に以下の要素からなる化合物も提供する:エフェクターおよび場合により可溶化部分と抗体の付着に適した櫛形ポリマー。そこで他の態様では、本発明はエフェクター分子、可溶化部分およびAが残基である抗体またはその断片の付着のための有益な中間体である新規化合物を提供する。そこで、本発明は式(XII)の化合物も提供する:
【0112】
【化24】

【0113】
適切には式(XII)の化合物は式(XIII)を有している。
【0114】
【化25】

【0115】
適切には式(XIII)の化合物は式(XIV)を有している。
【0116】
【化26】

【0117】
式XII、XIIIおよびXIVの化合物は上記方法の工程(b)の生成物の例である。
【0118】
以下の非限定的実施例が本発明を表している。
【実施例】
【0119】
開始剤の合成
【0120】
【化27】

【0121】
塩酸2−(t−ブチルジチオ)−エチルアミン(JACS、(1961)、83、4414〜17に記載された合成法)(5.101g、0.025モル)およびジイソプロピルエチルアミン(8.16g、0.063モル)のジクロロメタン(100ml)の溶液に0℃で10分間かけて塩化3−(ジクロロメチル)ベンゾイル(5.929g、0.027モル)のジクロロメタン(20ml)溶液を添加した。当該溶液を0℃で半時間攪拌し、そののち室温まで温めた。当該反応物を0.1M HCl(100ml)および水(100ml)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、当該溶媒を真空下で除去した。得られた残留物は酢酸エチル20%とヘキサン80%で溶出するシリカクロマトグラフィーで精製すると、無色固体8.52g、96%で生成物を生じた。
【0122】
【化28】

【0123】
重合の手順
【0124】
【化29】

【0125】
ポリマーCについて典型的な合成を説明する。
反応はゴム製隔膜で封鎖したシュレンク管中で行った。Cu(I)Cl(0.16g、0.00164モル)を当該反応管に加え、次に3回の連続的な真空、窒素吹き込み循環で脱酸素を行った。二番目のシュレンク管に開始剤(0.58g、0.00164モル)、N−ヒドロキシスクシンイミドメタクリレート(NHSMA)(15.0g、0.0819モル)、メシチレン(3.0mL)およびジメチルスルホキシド(30mL)を加え、当該混合物を窒素吹き込み30分間で脱酸素を行った。メシチレン(1ml)はHNMRから転換を計算する際の標準標識として入れる。当該溶液を1回完全に脱ガスし、N−(n−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン(0.51mL、0.00328モル)を事前に乾燥した気密性注射器で塩化銅を含有するシュレンク管に添加した。二番目のシュレンク中の溶液をそののち窒素パージしたステンレス鋼製カニューレを介して当該触媒含有シュレンクに加え、当該反応混合物を直ちに前もって加熱して100℃に設定した油浴に設置した。試料は脱酸素した気密注射器を用いて取出し、直ちに液体窒素中にて冷凍して冷やした。当該反応は急速な冷却で停止し、次いで空気に曝した。ポリマーは大量のアセトンを用いるアセトンからの数多い沈殿によりジメチルスルホキシドを洗い流して精製した。
【0126】
ポリマーA
Cu(I)Cl 0.54g、0.00546モル、開始剤1.92g、0.00546モル、NHSMA 15.0g、0.0819モル、DMSO 30mL、メシチレン 3mL、N−(n−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン 1.70mL、0.0109モル。
ポリマーB
Cu(I)Cl 0.20g、0.00204モル、開始剤 0.72g、0.00204モル、NHSMA 15.0g、0.0819モル、DMSO 30mL、メシチレンン 3mL、N−(n−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン 0.64mL、0.00409モル。
ポリマーC
Cu(I)Cl 0.16g、0.00164モル、開始剤 0.58g、0.00164モル、NHSMA 15.0g、0.0819モル、DMSO 30mL、メシチレン 1mL、N−(n−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン 0.51mL、0.00328モル。
ポリマーD
Cu(I)Cl 0.08g、0.00082モル、開始剤 0.29g、0.00082モル、NHSMA 15.0g、0.0819モル、DMSO 30mL、メシチレン 1mL、N−(n−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン 0.26mL、0.00164モル。
ポリマーE
Cu(I)Cl 0.07g、0.00073モル、開始剤 0.26g、0.00073モル、NHSMA 20.0g、0.1092モル、DMSO 40mL、メシチレン 1mL、N−(n−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン 0.23mL、0.00146モル。
ポリマーF
Cu(I)Cl 0.036g、0.00036モル、開始剤 0.13g、0.00036モル、NHSMA 20.0g、0.1092モル、DMSO 40mL、メシチレン 1mL、N−(n−プロピル)−2−ピリジルメタンイミン 0.11mL、0.00073モル。
【0127】
【表1】

【0128】
【化30】

【0129】
N,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.8mL、10.35ミリモル)をDCM(30mL)中で攪拌しているN−Fmoc−6−アミノカプロン酸(2g、5.67ミリモル)(Bachem社より)、N−ヒドロキシスクシンイミド(0.78g、6.78ミリモル)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(1.4g、6.8ミリモル)の混合物に加え、2時間攪拌した。当該反応混合物はセライトを通過させてろ過し、ロータリーエバポレーターで濃縮した。当該生成物はエーテルから結晶化し、ろ過し、エーテルで数回洗浄して乾燥すると2.5g(98%)が生じた。
【0130】
【化31】

【0131】
【化32】

【0132】
DCM−MeOH、2:1(150mL)中にあるFmoc−Val−Cit(5.32g、10.70ミリモル)(Bioconjugate Chem,2002,13,855〜869に記載されているように調製),EEDQ(5.32g,21.54ミリモル)およびp−アミノベンジルアルコール(2.65g、21.50ミリモル)の混合物を終夜攪拌した。当該反応混合物を酢酸エチルで希釈し、当該固体生成物を粉末化、ろ過し、酢酸エチルで数回の後DCMで洗浄し、乾燥すると5.05(78%)を生じた。
【0133】
【化33】

【0134】
【化34】

【0135】
20%のピペリジン−DMF(3mL)溶液を攪拌している中間体1b(1g、1.66ミリモル)のDMF(10mL)溶液に加え、当該混合物を2時間攪拌した。当該溶媒を除去し、当該残留物を水とDCM間で分配した。当該水相はDCMで3回洗浄したのち濃縮し、凍結乾燥すると0.62g(98%)を生じた。
【0136】
【化35】

【0137】
【化36】

【0138】
中間体1c(0.5g、1.316ミリモル)をDMF(5mL)中に溶解し、室温で攪拌し、そして中間体1a(0.592g、1.316ミリモル)およびDIPEAを連続的に加えた。当該反応混合物を3時間攪拌し、当該混合物を氷水中に攪拌しながら投入し、そして沈殿生成物をろ過分離し、水で数回洗浄し、乾燥すると0.73g(78%)生じた。
【0139】
【化37】

【0140】
【化38】

【0141】
中間体1d(0.5g、0.70ミリモル)をDMF(5mL)中で、当該懸濁物を加温して溶解した。当該透明溶液をそののちN下で攪拌し、7−イソシアナト−4−メチル−クロメン−2−オン(0.22g、1.09ミリモル)(Anal.Biochem,1992,200,400〜404に記載されているように調製)を加え、そして当該反応混合物をN下暗中で一夜攪拌した。当該固化した反応混合物をDCM中で完全にダイジェストし、ろ過し、DCMそののちエーテルで数回洗浄し、そして乾燥すると0.57g(90%)を生じた。
【0142】
【化39】

【0143】
【化40】

【0144】
中間体1e(0.57g、0.62ミリモル)をDMF(10mL)中に懸濁し、DMF中20%ピペリジン溶液(3mL)を加え、当該混合物を室温で2.5時間攪拌した。その間、当該出発原料は次第に溶解して透明な溶液を形成する。当該混合物を減圧下ロータリーエバポレーターにかけ、当該粗残留物をEtOAc−MeOH、9:1で粉末化し、ろ過し、同じ溶媒で洗浄して乾燥すると0.42g(97%)を生じた。
【0145】
【化41】

【0146】
【化42】

【0147】
アセトニトリル中の1−(クロロメチル)−3−[(2E)−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]−1,2−ジヒドロ−3H−ベンゾ[e]インドール−5−アミン(55mg、0.14ミリモル)(WO03097635に記載されたように調製)をトルエン中20%ホスゲン(1.5mL)で1.5時間処理した。当該得られた透明溶液を減圧下蒸発させて乾燥物とし、2回無水DCMで共沸させ、真空系に1時間放置した。当該粗生成物をアセトニトリル(4mL)中に再溶解し、1d(100mg、0.14ミリモル)のDMF(1.5mL)溶液に滴下で加えたあと、水酸化ナトリウム上真空で乾燥しておいたDMAP(170mg、1.39ミリモル)を加え、当該反応混合物を2.5時間攪拌した。Tlc(DCM−MeOH、9:1)は当該生成物の形成および幾つかの未反応出発原料ペプチドを示した。当該半固体を氷水中に投入し、当該黄色固体をろ過して集め、氷水で数回洗浄し、そして空気吸引で乾燥した。当該粗生成物のLC/MCは生成物と未反応ペプチドの比が2:1であることを示した。これをDMFに溶解し、目的生成物は分取用TLC(シリカゲル厚さ1mm)を用いDCM−MeOH、9:1で分離すると、黄色固体の生成物を生じた(60mg、38%)。
【0148】
【化43】

【0149】
【化44】

【0150】
DMF(1.5mL)中20%ピペリジンを2a(60mg、52.98ミリモル)のDMF(3mL)溶液に加え、当該反応混合物を2時間攪拌するとTlc(DCM−MeOH、9:1)が当該出発原料は全て消費されたことを示した。全ての揮発分をロータリーエバポレーションで除去し、当該残留物をDCM−エーテル、1:1でダイジェストし、ろ過し、同じ溶媒で数回洗浄して乾燥すると45mg(93%)が生じた。
【0151】
【化45】

【0152】
【化46】

【0153】
Quanta Biodesignから得たN−Fmoc−アミド−dPEG(登録商標)12Acid(1.0g、1.19ミリモル)のDCM(10mL)溶液にN−ヒドロキシスクシンイミド(150mg、1.3ミリモル)、DCC(270mg、1.31ミリモル)およびDIPEA(517μL、2.97mml)を加え、当該反応混合物を終夜攪拌した。LC/MSは50%のみ反応で、より多くの試薬の添加および攪拌の延長では改善しなかった。そこで、当該固体をろ過して分離し、濾液を重炭酸塩溶液で洗浄し、乾燥(MgSO)して濃縮した。DCM−MeOHの20:1を用いたカラムクロマトグラフィーが純粋な生成物(0.355g、32%および回収した出発原料に基づくと60%)を与えた。そののち当該カラムをMeOHで溶出すると未反応出発原料(0.47g)が回収された。
【0154】
【化47】

【0155】
【化48】

【0156】
3a(0.355g、0.379ミリモル)のDMF溶液に1c(0.144g、0.379ミリモル)、次にDIPEA(165μL、0.95ミリモル)を加え、当該反応混合物を一夜攪拌した。LC/MSは塩基性媒質が当該生成物の幾らかについてFmoc保護基の加水分解を起こし、目的の生成物とともに幾らかの無保護化アミンの混合物を与えたことを示した。氷水を加え少量の白色固体をろ過して分離し、当該濾液を凍結乾燥した。当該半固体物を水−アセトニトリル、1:1(10mL)に溶かし、重炭酸ナトリウム(50mg、0.6ミリモル)およびFmoc−O−Su(150mg、0.45ミリモル)とともに20分間攪拌した。LC/MSは反応の終了を示し、1種類の主なる生成物を示した。全ての非溶解性物質をろ過で除去し、当該濾液は濃縮し、C18カラムに載せ、最初に水その後20%、40%、60%および80%のMeOHで溶出した。目的の生成物は80%MeOH画分に溶出し、これらを濃縮して凍結乾燥すると220mg(48%)を生じた。
【0157】
【化49】

【0158】
【化50】

【0159】
3b(164mg、0.136ミリモル)のDMF(2mL)溶液をN下で攪拌し、7−イソシアナト−4−メチル−クロメン−2−オン(55mg、0.273ミリモル)(Anal.Biochem,1992,200,400〜404に記載のように調製)を加え、45℃にて3時間攪拌した。LC/MSは約60%反応を示したので、更なる7−イソシアノ−4−メチル−クロメン−2−オン(30mg、0.149ミリモル)を加え、当該反応混合物を同じ温度で更に2時間攪拌した。LC/MSは未反応3bの痕跡のみを示し、溶媒はロータリーエバポレーターで除去し、当該残留物はEtOAc−MeOH,4:1中で粉末化し、ろ過して同じ溶媒で数回洗浄して乾燥すると180mg(94%)を与えた。
【0160】
【化51】

【0161】
【化52】

【0162】
3c(60mg、42.8ミリモル)をDMF(1mL)中に懸濁し、20%ピペリジンのDMF(1mL)溶液を加えて透明な溶液を形成させ、1.5時間攪拌した。当該反応混合物を乾燥するまで蒸発させ、当該残留物をEtOAc中で粉末化して当該固体をろ過し、EtOAcで数回洗浄し、真空下で乾燥すると40mg(79%)を与えた。
【0163】
【化53】

【0164】
【化54】

【0165】
アセトニトリル中の1−(クロロメチル)−3−[(2E)−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]−1,2−ジヒドロ−3H−ベンゾ[e]インドール−5−アミン(36mg、91.72μモル)(WO03097635に記載されたように調製)を20%ホスゲンのトルエン(600μL)溶液で4時間処理し、そののち蒸発させて乾燥物とし、アセトニトリルで2回共沸させ、真空系に0.5時間放置した。得られた粗生成物をアセトニトリル(3mL)に溶解し、他の3b(112mg、93.2μモル)のアセトニトリル(3mL)溶液へ窒素下で添加し、次いでDMAP(360mg、2.95ミリモル、32当量)を添加した。DMF(200μL)を加えて透明な溶液とし、そののちそれを暗中窒素下で0.5時間攪拌した。LC/MSは目的の生成物が形成されたことを示したが、それはFmoc保護基を失い遊離末端アミン(R=2.925分)を生じたが、それに対して保護化アミン生成物はR=3.377分であった。当該反応混合物は先ず過剰なアセトニトリルを除去することにより濃縮し、そののち水で希釈してC18カラムに載せ、最初に水、次いでMeOH−水の1:1で溶出すると全てのDMAPは除去され、そのあと目的の生成物は2:1比を用いると溶出した。これらの画分を濃縮し、凍結乾燥すると75mg(58%)を与えた。
【0166】
【化55】

【0167】
【化56】

【0168】
Quanta Biodesign社から購入したN−Fmoc−amido−dPEG(登録商標)24acid(100mg、73.1ミリモル)、N−ヒドロキシスクシンイミド(18mg、0.156ミリモル)、DCC(33.1mg、0.16ミリモル)およびDIPEA(65μL)の混合物をDCM(2mL)中で一夜攪拌した。LC/MSは出発原料の酸(R=2.962分)と比較して新規生成物(R=3.042分)を示した。当該固体をろ過して分離し、当該濾液を濃縮し、そしてエーテルで数回粉末化して乾燥すると210mg(93%)を生じた。
【0169】
【化57】

【0170】
【化58】

【0171】
1c(27.2mg、71.58μモル)のDMF(1.5mL)溶液を5a(105mg、71.67μモル)に加え、次いでDIPEA(50μL、287.6μモル)を加えて一夜攪拌した。LC/MSは生成物(R2.881分)の形成および幾らかの未反応出発原料を示した。当該反応混合物を濃縮し、当該生成物を3bに関して説明したような逆相クロマトグラフィーで単離すると68mg(55%)を与えた。
【0172】
【化59】

【0173】
【化60】

【0174】
アセトニトリル(1.5mL)中の1−(クロロメチル)−3−[(2E)−3−(4−メトキシフェニル)−2−プロペノイル]−1,2−ジヒドロ−3H−ベンゾ[e]インドール−5−アミン(20mg、50.96μモル)(WO03097635に記載されたようにして調製)を20%ホスゲンのトルエン(100μL)溶液で4時間処理し、そののちロータリーエバポレーターで濃縮して真空系に0.5時間放置した。当該粗生成物をアセトニトリル(1mL)に再溶解し、窒素下で5b(60mg、34.7μモル)の他のアセトニトリル(1.5mL)溶液に加え、次いでDMAP(212mg、1.738ミリモル)を加えた。当該反応混合物を暗中で攪拌し、LC/MSで測定すると当該生成物が形成し、それに次いでFmoc保護基が失われFmoc保護物と非保護アミンの混合物を生じたことを示した。そこで当該反応混合物を濃縮し、DMF中20%ピペリジンで3時間処理した。これをそののち再び濃縮し、当該粗生成物を水−MeOHで溶出する逆相カラムクロマトグラフィーで処理すると当該生成物(12mg、18%)を与えた。
【0175】
【化61】

【0176】
【化62】

【0177】
1b(250mg、0.415ミリモル)のDMF(2.5mL)溶液に7−イソシアナト−4−メチル−クロメン−2−オン(167mg、0.83ミリモル)(Anal.Biochem.,1992,200,400〜404に記載されているように調製)を加え、LC/MSが当該反応の終了(2時間)を示すまで当該反応混合物を50℃で攪拌した。溶媒を真空下で除去し、当該粗生成物をDCM−MeOH、9:1を使用するカラムクロマトグラフィーで処理すると当該生成物(109mg、33%)を生じた。
【0178】
【化63】

【0179】
【化64】

【0180】
6a(105mg、0.131ミリモル)をDMF(2mL)に懸濁し、20%ピペリジンのDMF(1mL)溶液を加えて1時間攪拌した。当該透明な溶液をロータリーエバポレーターで乾燥させ、当該残留粗生成物をDCM中で粉末化し、ろ過し、DCMで繰返し洗浄して乾燥すると69mg(91%)を生じた。
【0181】
【化65】

【0182】
【化66】

【0183】
5a(100mg、68.26ミリモル)、6b(39.7mg、68.3μモル)およびDIPEA(30μL、172.6μモル)をDMF(1.5mL)中で一夜攪拌すると、LC/MSが当該反応完結を示した。全ての揮発分をロータリーエバポレーターで除去し、残留物をエーテル−DCM、9:1で数回粉末化し、ろ過し、同じ溶媒で洗浄して乾燥すると80mg(54%)を与えた。
【0184】
【化67】

【0185】
【化68】

【0186】
DMF(2mL)中の6C(74mg、34.24μモル)を20%ピペリジンのDMF(2mL)溶液で2時間処理した。当該溶液を蒸発させて乾燥物とし、エーテル−DCM,4:1中で繰返し粉末化し、同じ溶媒で洗浄して乾燥すると38mg(57%)を与えた。
【0187】
【化69】

【0188】
【化70】

【0189】
Nekar社から購入したBoc−PEG−NHS MW3400Da(100mg、29.4μモル)を2%のトリイソプロピルシランを含有する50%TFAのDCM中で40分間攪拌し、そののち当該溶液を蒸発させて乾燥させ、DCMで3回共沸させて真空系中に2時間放置した。当該粗生成物のNMR(CDCl3)はBoc基の除去を明らかに示した。アセトニトリル−水、1:1(2mL)に溶解し、Fmoc−OSu(12mg、35.61μモル)およびDIPEA(50μL、0.29ミリモル)で1時間処理した。LC/MS(イオン化モードを受けて)は出発原料がR2.186分(イオン化モード)であるのに対して新規生成物R2.186分に全て転換したことを示した。当該反応混合物を濃縮して有機物を取り除き、そののち水で希釈して凍結乾燥した。当該固体をエーテルで数回粉末化し、ろ過し、エーテルで繰返し洗浄すると104mgを与えた。これを直ちにDCM(2.5mg)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(4mg、34.78マイクロモル)に溶解し、DCC(7mg、34μモル)とDIPEA(15μL、86.3μモル)を連続して加え、当該反応混合物を3.5時間攪拌した。セライトの小さな栓を通過させてろ過し、ロータリーエバポレーターで乾燥させ、当該固体をエーテルから結晶化、ろ過し、エーテルで繰返し洗浄して真空中で乾燥させると105mg(全体で92%)を生じた。当該結晶物質のNMR(CDCl3)は正確な解釈が困難であった。
【0190】
【化71】

【0191】
7a(100mg、28.393μモル)、6b(16.5mg、28.4μモル)およびDIPEA(15μL、86.28μモル)の混合物をDMF(1mL)中でLC/MSがIIの消費を示すまで(48時間)攪拌した。これをそののち蒸発させて乾燥し、エーテル−DCM,4:1でダイジェストし、ろ過して、同じ溶媒及びその後エーテルで洗浄して乾燥すると96mg(85%)を生じた。
【0192】
【化72】

【0193】
【化73】

【0194】
DMF(2mL)中の7b(86mg、21.56μモル)を20%ピペリジンのDMF(1mL)溶液で2時間処理した。得られた溶液はロータリーエバポレーターで蒸発して乾燥させ、当該残留物をエーテル−DCM、4:1中でダイジェストし、ろ過し、同じ溶媒で洗浄して乾燥した(32mg、39%)。
【0195】
【化74】

【0196】
可溶化種
(i)3−アミノ−1,2−プロパンジオール
(ii)Quanta Biodesign社から購入したアミノ−dPEG(登録商標)アルコール
(iii)Quanta Biodesign社から購入したm−dPEG(登録商標)12アミン
(iv)Quanta Biodesign社から購入したm−dPEG(登録商標)アミン
(v)Quanta Biodesign社から購入したm−dPEG(登録商標)24アミン
(vi)文献に記載されているように調製したエタナミニウム、2−[[(2−アミノエトキシ)ヒドロキシホスフィニル]オキシ]−N,N,N−トリメチル−、分子内塩
【0197】
ポリマー負荷用の一般的手順
目的のポリマー(A〜Fの1つ)(通常10〜25mg)を無水DMF(2〜2.5mL)に加温して溶解し、当該透明溶液をそののち室温にまで冷却する。当該エフェクター種((I)〜(VII)の1つ)を負荷するのに望ましいモル当量を加え、次いでDIPEAのその2倍当量を加え、当該混合物を45℃で攪拌する。当該反応の進行について当該反応混合物中のエフェクター種の消費をLC/MSで観測することで追跡する。当該反応の終了(通常24〜48時間)時に可溶化種((i)〜(vi)の1つ)の過剰量を加え、当該反応物を更に16〜24時間、再び45℃で攪拌する。全ての揮発分を減圧下、ロータリーエバポレーターで除去し、当該残留物を水に溶解してセライトまたは0.2μメーターのフィルターのどちらかを通過させてろ過する。当該濾液をそののち5000または10000 NMCO膜を備えた遠心分離管(当該負荷したポリマーの分子量に依存する)に移して遠心ろ過を4000rpmで行う。当該管を再び新鮮な水で満たして当該操作を4回繰返す。当該フィルターを通過できない全ての物質を集め、凍結乾燥させると目的の負荷したポリマーを生じる。
【0198】
【化75】

【0199】
【化76】

【0200】
当該エフェクターおよび可溶化部分は当該櫛形ポリマー骨格ヘ不規則に付着することは理解されるであろう。
【0201】
当該負荷したポリマーのジスルフィド還元用の一般的手順
当該負荷したポリマー(通常5〜20mg)をリン酸緩衝液pH7.8〜8.0(0.5〜1mL)中に溶解し、窒素下で攪拌する。当該還元剤の溶液、同じ緩衝液中トリヒドロキシプロピルホスフィン(通常5モル当量)をそののちに加え、当該反応混合物を室温で4時間攪拌する。そののち、当該反応混合物を炭酸水(約pH5)で希釈し、セライトまたは0.2μメートルのフィルターを通してろ過する。当該溶液はそののち炭酸水を用いて上記のように遠心ろ過を行い、凍結乾燥すると80〜95%の収率でチオール末端負荷したポリマーを生じる。
【0202】
【化77】

【0203】
当該エフェクターおよび可溶化部分が当該櫛形ポリマー骨格に不規則に付着することは理解されるであろう。
【0204】
当該負荷したポリマーのマレイミド誘導化に関する一般的手順
還元したポリマー(約5mg)のエタノール−水、1:1(200μL)溶液に1,11−ビス−マレイミドテトラエチレングリコールのようなビスマレイミドの同じエタノール−水、1:1(200μL)の10モル当量溶液を添加する。1.5時間攪拌後に当該反応物は水で希釈し、前に説明したような遠心ろ過にかける。
【0205】
【化78】


【化79】

【0206】
当該エフェクターおよび可溶化部分が当該櫛形ポリマー骨格に不規則に付着することは理解されるであろう。
【0207】
【表2】

【0208】
ポリマー複合体1
方法1
DMF中のマレイミドポリマー例1を0.1Mのリン酸ナトリウム、2mMのEDTA、pH6.0緩衝液中で還元Fab’(5mMの2−メルカプトエチルアミンにて37℃で30分間還元し、過剰の還元剤をPD−10カラムで除去して調製)と温置した。2、5、10、15、20および25:1のマレイミドポリマー例1:Fab’のモル比を使用した。当該最終Fab’濃度は2mg/mlで、DMFは最終20%で存在した。当該反応混合物を室温で1時間、4℃で一夜保持し、そののち当該反応の程度は非還元および還元の両条件でのSDS PAGE分析および0.2Mリン酸塩、pH7.0/10%EtOHでのGPC HPLCで測定した。
【0209】
方法2
還元Fab’(前記のように調製)を5倍過剰量の1,11−ビスマレイミドテトラエチレングリコールとともに室温で1時間および4℃で一夜反応した。過剰な1,11−ビスマレイミドテトラエチレングリコールをPD−10カラムで除去し、得られたFab’−(1,11−−ビスマレイミドテトラエチレングリコール)複合体を還元ポリマー例1と、0.1Mのリン酸ナトリウム、2mMEDTA、pH6.0緩衝液中で中間体6:Fab’複合体のモル比2,5,10,15,20および25:1で温置した。当該最終Fab’複合体濃度は2mg/mlでDMFは最終20%で存在した。
【0210】
ポリマー複合体1の精製
上記2つの方法のいずれかからの反応混合物を集めたものを50mM酢酸ナトリウム、pH4.50緩衝液でのSP−Sepharose HPカラムに適用した。生成物は0〜250mMの塩勾配を用いて20カラム容量にわたり溶出した。当該生成物が単離されたことは、SDS PAGEおよびMALDI−TOFによる画分の分析により証明され、それは正しい分子量イオンでその種が調製されており、単離されていることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
櫛形ポリマーを作り出す製造方法であって、
a)以下を供与する工程:
(i)(w+z)モル当量のモノマー;
(ii)式(IX)の開始剤化合物の1モル当量、
【化1】


式中Bはハロゲンを表し、BはHまたはハロゲンを表し、Yは抗体若しくはその断片の残基を付着できる基又はそのような基に転換されうる基を表し、Lはリンカー基を表し、yは1,2または3で、wは少なくとも1そしてzは0以上であり;
(iii)複数のモノマーの重合を触媒して櫛形ポリマーを作り出すことができる触媒;そして、
b)当該触媒につき当該開始剤との組合せで複数のモノマー(i)の重合を触媒させ櫛形ポリマーを製造する工程を含んでいる上記製造方法。
【請求項2】
請求項1の製造方法で得ることができる櫛形ポリマー。
【請求項3】
、B、Y、Lおよびyが請求項1で定義したものである、式(IX)
【化2】


の開始剤化合物。
【請求項4】
工程(b)で製造された櫛形ポリマーを1つ以上のエフェクター分子のw当量および1つ以上の可溶化部分のz当量と反応させる工程(c)を更に含み、wとzは請求項1で定義した通りである、請求項3による製造方法。
【請求項5】
請求項4の製造方法で得ることができる櫛形ポリマー。
【請求項6】
少なくとも1つの抗体またはその断片に請求項2または請求項5の櫛形ポリマーを付着させることを含む、少なくとも1つの抗体またはその断片に櫛形ポリマーを付着させるための方法。
【請求項7】
請求項6の方法により得ることができる抗体−櫛形ポリマー複合体。
【請求項8】
式(Ia)または(Ib)
【化3】


を有し、式中y、BおよびLは請求項1で定義した通りであり;
mは1,2,3,4,5,6,7,8,9または10であり、
はハロゲンを示し、
Aは抗体またはその断片の残基を示し、
Yはスペーサー基を示し、
Xは1つ以上のエフェクター分子をw当量と1つ以上の可溶化部分のz当量を含んだ櫛形ポリマー部分を表し、wとzは請求項1で定義した通りである、請求項7による抗体−櫛形複合体。
【請求項9】
Xは式IIIおよびIVの成分を順不同で含み、
【化4】


式中:wとzは請求項1で定義した通りであり;
Tは不在またはリンカー基であり、
Wはエフェクター分子であり、
Zは水可溶化部分であり、
MはNHまたはOであり、
はメチルまたはHである、
請求項8による抗体−櫛形ポリマー複合体。
【請求項10】
1種類以上の薬学的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤を伴った請求項7〜9のいずれか一項による抗体−櫛形ポリマー複合体を含んでいる医薬組成物。

【公表番号】特表2009−507980(P2009−507980A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530605(P2008−530605)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/GB2006/003376
【国際公開番号】WO2007/031734
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(507073918)ユセベ ファルマ ソシエテ アノニム (70)
【Fターム(参考)】