欠陥検出方法およびその方法を用いた視覚検査装置
【課題】周囲とは外観が異なる欠陥を、精度良くかつ高速で検出できるようにする。
【解決手段】検査対象物の画像を1画素ずつ走査しながら、毎時の注目画素20に対し、あらかじめ登録した設定情報に基づき所定数の比較対象画素21〜23を設定し、これらの比較対象画素21〜23を順に注目画素20に組み合わせて、組み合わせ毎に、組み合わせられた画素間の濃度差を求めてその濃度差が許容範囲に入るかどうかを判定する。ここで濃度差が許容範囲に入るという判定結果を得た場合には、注目画素20は欠陥を表す画素ではないとして、次の位置に注目画素20を移す。他方、濃度差が許容範囲に入るという判定結果を得る前に全ての組み合わせに対する処理が終了した場合には、注目画素20を欠陥を表す画素であると判定する。
【解決手段】検査対象物の画像を1画素ずつ走査しながら、毎時の注目画素20に対し、あらかじめ登録した設定情報に基づき所定数の比較対象画素21〜23を設定し、これらの比較対象画素21〜23を順に注目画素20に組み合わせて、組み合わせ毎に、組み合わせられた画素間の濃度差を求めてその濃度差が許容範囲に入るかどうかを判定する。ここで濃度差が許容範囲に入るという判定結果を得た場合には、注目画素20は欠陥を表す画素ではないとして、次の位置に注目画素20を移す。他方、濃度差が許容範囲に入るという判定結果を得る前に全ての組み合わせに対する処理が終了した場合には、注目画素20を欠陥を表す画素であると判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の物体を撮像して生成された画像をコンピュータにより処理することによって、周囲とは異なる明るさや色彩をもって画像中に現れている欠陥を検出する方法、およびこの方法が適用された視覚検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板、印刷物、織物など、種々のパターンが表面に形成された物体(以下、「ワーク」という場合もある。)の外観上の欠陥を検出する方法として、欠陥のないモデルによる濃淡画像(以下、「基準画像」という。)をあらかじめ登録し、検査対象のワークの画像(以下、「検査対象画像」という。)を基準画像と比較する方法が、知られている(たとえば、特許文献1,2を参照。)。
【0003】
また、基準画像を用いずに欠陥を検出する方法として、特許文献3に開示されたものがある。この特許文献3に記載された発明は、向きが限定された線状パターンが形成されたワークを検査対象として、正常な線状パターンと欠陥とを精度良く見分けることを課題として、濃度勾配方向を表す角度データ(エッジコード)を用いた画像処理を実行する。具体的には、検査対象画像に局所領域を走査しつつ、局所領域内の各画素のエッジコードによるヒストグラムを作成し、このヒストグラムの最大の度数に対応するエッジコードが線状パターンの限定された向きに適合するか否かを判断し、適合しないと判断したとき、その時点における局所領域内に欠陥が存在すると判定する。
【0004】
【特許文献1】特開平9−193515号公報
【特許文献2】特開2000−171230号公報
【特許文献3】特開2008−139262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2のように基準画像を用いて欠陥を検出する方法では、ワーク毎に基準画像を登録する必要があるため、多数のワークを検査対象とする場合には、容量の大きなメモリが必要となる。また、正常なパターンの形成位置や大きさにばらつきが生じたり、明るさが変動すると、これらによるノイズが欠陥として誤検出されるおそれがある。また、特許文献2には、欠陥の検出精度を向上するためにフィルタ処理などを行うことが記載されているが、このような処理を行うとアルゴリズムが複雑になり、欠陥を高速で検出するのが困難になる。
【0006】
特許文献3に記載された発明では、基準画像を登録する必要はないが、正常な線状パターンとは濃度が異なっていても、線状パターンと濃度勾配方向が同様の画素が集まる局所領域を検出するのが困難である。このため、線状パターンと同様の方向に延びる線状の欠陥を検出する精度を保証できない、という問題がある。
【0007】
本発明は上記の各問題に着目し、基準画像を登録する必要がなく、また欠陥の形状を問わずに、周囲とは異なる外観の欠陥を検出する処理を、精度良くかつ高速で実行することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による欠陥検出方法は、検査対象物の画像を処理するコンピュータに、画像中の注目画像から1画素以上離れ、かつ注目画素に対して特定の位置関係にある画素を、当該注目画素の比較対象画素として設定するための設定情報を、あらかじめ登録する。そして、この登録が完了したコンピュータにおいて、検査対象の画像を1画素ずつ走査して、毎時の注目画素につき、それぞれ登録された設定情報を適用して少なくとも1つの比較対象画素を設定し、設定された比較対象画素の中に注目画素に対する画像データの差が所定の許容範囲に入る画素があるか否かを判定するとともに、画像データの差が許容範囲に入る比較対象画素はないという判定をしたとき、その時点における注目画素を欠陥を表す画素として特定する。さらに、画像に対する走査が終了したとき、欠陥を表すものとして特定された画素の有無、または欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を出力する。
【0009】
上記の方法において、比較対象画素は、注目画素から見た方位および注目画素からの距離が定まっている画素であり、注目画素が移動すれば、これに伴って比較対象画素も移動する。比較対象画素の設定情報は、たとえば注目画素に対する方位および距離により表してもよいし、注目座標を基準にした比較対象画素の相対座標として表してもよい。
なお、注目画素を動かす範囲(走査範囲)は、検査対象画像の全範囲とするのが望ましいが、これに限らず、あらかじめ定められた範囲に走査の範囲を限定してもよい。
【0010】
また、比較対象画素は複数個設定されるのが望ましいが、検査対象画像の特性や検査目的によっては単独の比較対象画素を設定するのみとしてもよい。また、注目画素の位置によっては、設定情報が定める比較対象画素のすべてを設定できない場合もあるが、このような場合には、設定できる範囲で比較対象画素を設定すればよい。または、注目画素の位置に応じて適用する設定情報を変更してもよい。
【0011】
設定情報を登録する処理では、検出したい欠陥の大きさに応じて注目画素に対する比較対象画素の距離を定めるのが望ましい。たとえば、想定される欠陥の中心部の画素が注目画素となったときに、どの比較対象画素も欠陥以外の部位に対応するように上記の距離を定めておけば、いずれの比較対象画素でも注目画素に対する画像データの差が許容範囲を上回るものになる。よって、上記の設定により、欠陥の中心部を検出することが可能になる。
さらに、検出したい欠陥の幅長さに応じた距離を設定すれば、欠陥の周縁部の画素が注目画素となった場合でも、欠陥に対応しない部位に各比較対象画素を設定することが可能になる。よって、欠陥のほぼ全体を検出することが可能になる。
【0012】
一方で、設定された比較対象画像のうちの1つでも、注目画素に対する画像データの差が許容範囲に入れば、注目画素は欠陥を表すものではないと判断される。したがって、たとえば検査対象画像中に、周囲と異なる濃度で欠陥と同程度の大きさのパターンがあったとしても、このパターンから所定距離離れた場所に同様の濃度のパターンが存在する場合には、前者のパターンに注目画素を設定したときに後者のパターンに比較対象画素が設定されるような設定情報を定めることによって、当該パターンが欠陥として誤検出されるのを回避することができる。よって、回路パターンが形成された基板、印刷物、織物など、同一または類似のパターンの繰り返しが多い構造の物体が検査対象となる場合でも、欠陥を、精度良く検出することが可能になる。
【0013】
また上記の方法では、毎時の注目画素に対し、各比較対象画素との画像データの差を算出して、算出された差の値と許容範囲を表す数値とを照合する、という簡易なアルゴリズムによる処理で、注目画素が欠陥を表す画素か否かを特定することができる。また画像データの差が許容範囲に入る比較対象画素が1つでも見つかれば、その時点で現在の注目画素は欠陥を表さないと判断して、次の画素に注目位置を移すことができるので、欠陥検出にかかる処理を高速で行うことができる。
【0014】
上記の方法において、欠陥を表すものとして特定された画素の有無を出力する場合には、その出力をもって、検査対象物を良品と不良品とに分けることができる。また、欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を出力する場合には、出力された画像を表示することによって、欠陥の位置、大きさ、形状などをユーザが容易に認識することができる。
【0015】
以下、上記の方法に関する好ましい実施態様を説明する。
まず第1の態様では、毎時の注目画素に対する処理において、登録された設定情報により設定された比較対象画素を当該注目画素に順に組み合わせて、組み合わせられた画素間の画像データの差を算出するステップと、算出した差の値が許容範囲に入るか否かを判定するステップとを、差の値が許容範囲に入ると判定するか、全ての組み合わせに対する処理が終了するまで繰り返し実行する。そして、差の値が許容範囲に入るという判定をしたときは、その時点の注目画素は欠陥を表す画素ではないと判定する一方、差の値が許容範囲に入るという判定をする前に全ての組み合わせに対する処理を終了したときは、注目画素を欠陥を表す画素として特定する。
【0016】
上記の態様によれば、複数の比較対象画素を設定する場合でも、欠陥が存在しない箇所に注目画素が設定された場合には、その注目画素に対する画像データの差が許容範囲に入る比較対象画素が組み合わせられて、その組み合わせに対する処理が終了した時点で、当該注目画素が欠陥を表さない画素であると判定して次の画素に注目位置を移すことができる。よって、欠陥検出にかかる処理を高速化することができる。
【0017】
第2の態様では、設定情報として、注目画素から最も近い比較対象画素までの距離Iと、注目画素から最も遠い比較対象画素までの距離Jと、これらの距離I,Jが適用される方位を示す情報とを登録する。また毎時の注目画素に対する比較対象画素を設定する際には、注目画素に設定情報が示す方位および各距離I,Jを適用することにより、少なくとも一方位において、注目画素から距離Iを隔てた位置から注目画素から距離Jを隔てた位置までの範囲に存在する複数の画素を、比較対象画素として設定する。
【0018】
上記の態様によれば、たとえば設定情報が示す方位が複数ある場合には、これらの方位毎に、注目画素から距離Iを隔てた位置から注目画素から注目画素から距離Jを隔てた位置までの範囲に並ぶ複数の画素を、比較対象画素とすることができる。
【0019】
2つの距離I,Jのうち、短い方の距離Iは、検出すべき欠陥の大きさに応じて設定するのが望ましい。言い換えれば、欠陥の少なくとも一部に注目画素が設定されたときに、距離Iに基づき設定した比較対象画素が欠陥の外側に設定されるように、距離Iの値を設定するのが望ましい。また、欠陥以外のパターンが欠陥として誤検出されるのを回避するには、同様の画像データを有するパターン間の距離が距離Iより大きく、距離J以下となるように、距離I,Jの値を設定するのが望ましい。
【0020】
設定情報に含める方位は、検査対象画像の特性に応じて変更することができる。また、縞模様のパターンを含む画像など、画像中のパターンの並び方向が限定される場合や、濃度がほぼ均一な画像を処理する場合には、注目画素に対して右、または注目画素に対して上など、特定の一方位のみを設定情報に含めてもよい。
【0021】
第3の態様では、設定情報として、個々の画素にそれぞれ当該画素が比較対象画素であるか否かを示すフラグデータを対応づけたマスクフィルタとして、少なくとも中央の画素および中央の画素に隣接する画素に比較対象画素でないことを示すフラグデータを対応づけたマスクフィルタを登録する。また、毎時の注目画素に対する比較対象画素を設定する際には、登録されたマスクフィルタを、その中心を注目画素に合わせた状態で設定し、このフィルタ内の各フラグデータとの対応関係に基づき所定数の比較対象画素を設定する。
【0022】
上記の態様によれば、たとえば、欠陥の大きさや通常パターン間の間隔などに応じてマスクフィルタのサイズを決め、このフィルタ内の中心の画素およびこれに隣接する画素を除く範囲で、比較対象画素の位置を自由に設定することができる。よって、比較対象画素の設定の自由度を広げて、種々の検査対象物に対応することができる。
【0023】
つぎに、第4の態様では、設定情報を登録する処理において、設定情報の候補となる情報の入力を受け付けるステップと、欠陥を含むモデルの画像に入力された情報を設定情報として適用して、前記欠陥を表す画素を特定するための一連の処理を実行するステップと、欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を表示するステップとを、画像の表示に対して確定操作が行われるまで繰り返し実行する。そして確定操作が行われたとき、最新の入力情報(最新の表示画像の生成に使用された入力情報)を設定情報として登録する。
【0024】
上記の態様では、ユーザが設定情報の候補となる情報を入力する都度、その入力情報を用いて本処理と同様の処理を実行し、欠陥の検出結果を表す画像を表示する。すなわち、モデルの画像を1画素ずつ走査して、毎時の注目画素につき、入力された情報を適用して少なくとも1つの比較対象画素を設定し、設定された比較対象画素の中に注目画素に対する画像データの差が所定の許容範囲に入る画素が存在するか否かを判定するとともに、画像データの差が許容範囲に入る比較対象画素は存在しないとする判定をしたとき、当該注目画素を欠陥を表す画素として特定する。そして、欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を表示する。
【0025】
上記の態様によれば、ユーザは、自身が入力した情報が設定情報として適切であるか否かを容易に判断することができる。よって、欠陥検出の原理をよく理解できていないユーザでも、適切な設定情報を登録する作業を容易に行うことが可能になる。
【0026】
つぎに、第5の態様では、設定情報とともに、注目画素と比較対象画素との画像データの差に関する許容範囲を示す情報をコンピュータに登録する。このようにすれば、検査対象画像の画像データのばらつきに応じて許容範囲を変更することができるから、欠陥の検出精度を高めることができる。
【0027】
つぎに、本発明による視覚検査装置は、検査対象物を撮像するための撮像手段と、この撮像手段により生成された画像を処理して、検査対象物の外観上の欠陥を検出する検査実行手段と、画像中の注目画素から1画素以上離れ、かつ注目画素に対して特定の位置関係にある画素を、当該注目画素の比較対象画素として設定することを前提として、比較対象画素を設定するための設定情報の入力を受け付ける入力手段と、入力された設定情報を登録する登録手段とを具備する。さらに検査実行手段には、以下の欠陥画素特定手段および出力手段が設けられる。
【0028】
欠陥画素特定手段は、撮像手段により生成された検査対象物の画像を1画素ずつ走査して、毎時の注目画素につき、それぞれ登録手段に登録された設定情報を適用して少なくとも1つの比較対象画素を設定し、設定された比較対象画素の中に注目画素に対する画像データの差が所定の許容範囲に入る画素があるか否かを判定する。さらに、画像データの差が許容範囲に入る比較対象画素はないとする判定をしたとき、その時点における注目画素を欠陥を表す画素として特定する。出力手段は、画像に対する操作が終了したとき、欠陥を表すものとして特定された画素の有無、または欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を出力する。
【0029】
上記構成の視覚検査装置によれば、ユーザが、比較対象画素の設定情報として適切な情報を入力することによって、欠陥を高速かつ精度良く検出することが可能になる。また検査対象物が変更された場合にも、設定情報を変更することにより容易に対応することができる。
【0030】
第1の態様の欠陥検出方法が適用された視覚検査装置では、欠陥画素特定手段は、毎時の注目画素に対し、登録された設定情報により設定された比較対象画素を当該注目画素に順に組み合わせて、組み合わせられた画素間の画像データの差を算出するステップと、算出した差の値が前記許容範囲に入るか否かを判定するステップとを、差の値が許容範囲に入ると判定するか、全ての組み合わせに対する処理が終了するまで繰り返し実行する。そして、差の値が許容範囲に入るという判定をしたときは注目画素は欠陥を表す画素ではないと判定する一方、差の値が許容範囲に入るという判定をする前に全ての組み合わせに対する処理を終了したときは、注目画素を欠陥を表す画素として特定する。
【0031】
第2の態様の欠陥検出方法が適用された視覚検査装置では、入力手段は、注目画素から最も近い比較対象画素までの距離Iと、注目画素から最も遠い比較対象画素までの距離Jと、これらの距離I,Jが適用される方位を示す情報とを、それぞれ入力する。また欠陥画素特定手段は、毎時の注目画素に対し、それぞれ登録手段に登録された方位および各距離I,Jを適用することにより、少なくとも一方位において、注目画素から距離Iを隔てた位置から注目画素から距離Jを隔てた位置までの範囲に存在する複数の画素を、比較対象画素として設定する。
【0032】
上記構成において、距離I,Jを入力するための構成は、I,Jの具体的な数値を入力するものに限らず、欠陥を含むモデルの画像上で欠陥に対応する範囲や通常パターンの間隔に対応する範囲を指定する操作を受け付けて、指定された範囲からI,Jの値を自動抽出するものでもよい。
【0033】
第3の態様の欠陥検出方法が適用された視覚検査装置では、入力手段は、個々の画素にそれぞれ当該画素が比較対象画素であるか否かを示すフラグデータを対応づけたマスクフィルタを設定する操作を、少なくとも中央の画素および中央の画素に隣接する画素に比較対象画素でないことを示すフラグデータを対応づけることを条件として受け付ける手段として構成される。また欠陥画素特定手段は、毎時の注目画素に対し、それぞれ登録手段に登録されたマスクフィルタを、その中心を注目画素に合わせた状態で設定し、このフィルタ内の各フラグデータとの対応関係に基づき所定数の画素を比較対象画素として設定する。
【0034】
上記の入力手段は、たとえば、フィルタサイズを設定する操作や、各画素にフラグデータを設定する操作を受け付ける手段として構成することができる。または、あらかじめ装置に登録された複数種のマスクフィルタの構成を表示して、その中の1つを選択する操作を受け付ける手段として構成してもよい。
【0035】
第4の態様の欠陥検出方法が適用された視覚検査装置では、入力手段は、設定情報の候補となる情報の入力を受け付ける手段と、この手段が入力した情報を確定する操作を受け付ける手段とを具備する。さらにこの装置には、撮像手段により欠陥を含むモデルの画像が生成され、入力手段より設定情報の候補となる情報が入力されたことに応じて、モデルの画像に前記入力された設定情報の候補を適用して判定手段および欠陥画素特定手段による処理を実行し、欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を表示するテスト実行手段と、テスト実行手段による画像表示に対して入力手段が確定操作を受け付けたとき、最新の入力情報を設定情報として登録手段に登録する登録処理手段とが、設けられる。
【0036】
第5の態様の欠陥検出方法が適用された視覚検査装置では、入力手段は、注目画素と比較対象画素との画像データの差に関する許容範囲を示す情報の入力を受け付ける手段を、さらに含む。また登録手段は、比較対象領域の設定情報および画像データの差に関する許容範囲につき入力手段が受け付けた入力情報を登録する手段として、構成される。
【発明の効果】
【0037】
上記の欠陥検出方法および視覚検査装置によれば、検出したい欠陥の大きさや、検査対象画像の特性に応じて比較対象画素の設定情報を調整して登録することにより、欠陥を精度良く検出することが可能になる。また、欠陥検出のアルゴリズムが簡単であるため処理を高速化することができ、多数の検査対象物を検査する場合のタクトタイムを短縮できるなど、ユーザにとっての利便性を高めることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、視覚検査装置の構成例を示す。
この視覚検査装置は、検査対象のワークを撮像し、生成された画像を処理することによって、検査対象物の良否を判定するもので、検査に関する一連の処理を実行する本体部1、撮影用のカメラ2、表示部3、操作部4などにより構成される。表示部3は、たとえば液晶モニタにより構成され、操作部4には、マウスやキーボードが含まれる。
【0039】
本体部1は、CPUを含む制御部10を主体とする汎用のコンピュータ装置(パーソナルコンピュータ)であって、主記憶部11(たとえばハードディスク)や画像メモリ12(たとえばRAMボード)が組み込まれる。本体部1には、さらに、撮像インターフェース13、表示用インターフェース14、入力用インタフェース15、外部インターフェース16、外部ディスク用読取部17などが設けられる。
【0040】
本体部1では、プログラムが格納された記憶媒体18(たとえばCDまたはDVD)を外部ディスク用読取部17にセットし、読み取られたプログラムを主記憶部11にインストールするようにしている。この主記憶部11にインストールされたプログラムによって、制御部10に、一連の画像処理や判定処理を実行する機能が設定される。また制御部10には、後記する設定画面を介して操作部4からの設定入力を受け付けるグラフィカルユーザインターフェースの機能も設定される。
【0041】
撮像インターフェース13は、制御部10からの撮像制御信号をカメラ2に与えて撮像を行わせ、カメラ2から出力された画像信号をディジタル画像データに変換する。変換後の画像データは、画像メモリ12に格納され、制御部10により処理される。
【0042】
表示用インターフェース14は、制御部10からの指令に基づき、表示部3への画像表示を制御し、入力用インターフェース15は、操作部4による操作を受け付けて、その操作内容を示すデータを制御部10に出力する。外部インターフェース16は、図示しない外部機器に、検査結果を出力する場合に使用される。
【0043】
上記構成の視覚検査装置では、主記憶部11にインストールするプログラムによって、検査対象物(ワーク)の種類や検査目的に応じた種々の手法により検査を実行することができる。以下では、これらの検査のうち、ワークの表面に汚れやキズなどの外観上の欠陥が生じていないかどうかを判定する検査に関して、好適な実施例を説明する。
【0044】
図2は、1つのワークに対して実行される検査の概略手順を示すフローチャートである。以下、この図の流れに沿って説明すると、まずステップAでは、検査対象のワークを撮像する。この撮像により生成された画像は、撮像インターフェース13によりディジタル変換され、変換後の画像が検査対象画像として画像メモリ12に格納される。
【0045】
つぎのステップBでは、上記の検査対象画像を対象に欠陥検出処理を実施する。この処理では、後で詳細に説明するように、検査対象画像の各画素に順に注目して注目画素が欠陥を表す画素か否かを判定し、その判定結果を示す情報として、欠陥を表す画素を「1」とし、欠陥でない画素を「0」とする2値画像を生成する。以下、この画像を「欠陥検出画像」という。
【0046】
つぎのステップCでは、上記の欠陥検出画像を用いて欠陥の有無を判定する。具体的には、欠陥検出画像の中で値が「1」になっている画素を計数して、その計数値を所定のしきい値と比較する。そして、計数値がしきい値を上回れば「欠陥あり」と判定し、計数値がしきい値以下であれば「欠陥なし」と判定する。
【0047】
この後は、欠陥検出画像および欠陥の有無判定の結果を表示部3に表示し(ステップD)、さらに、欠陥の有無判定の結果を外部の装置に出力して(ステップE)、ワークに対する検査を終了する。以後も、カメラ2の視野にワークが送り込まれる都度、上記のステップA〜Eを繰り返し実行する。
【0048】
図3および図4は、それぞれ検査対象画像の具体例と、当該検査対象画像に図2のステップBを実行することにより生成された欠陥検出画像とを対応づけて示す。
【0049】
図3の検査対象画像は、回路パターンが形成されたプリント基板を撮像することにより生成されたもので、画像の中央付近に、周囲とは異なる濃度の欠陥F0が現れている。図4の検査対象画像は、縦縞模様のパッケージを撮像することにより生成されたもので、模様部分とは異なる濃度を持つ3つの欠陥F1,F2,F3が現れている。
なお、以下では、欠陥F3のような細長形状の欠陥を「線状欠陥」といい、欠陥F0,F1,F2のように比較的狭い範囲に生じた欠陥を「局所欠陥」という。
【0050】
図3,4に示す欠陥検出画像では、各欠陥F0,F1〜F3が黒画素(値が「1」の画素)により表される一方、原画像に現れていた欠陥以外のパターン(以下、「正常パターン」という。)は、すべて白画素(値が「0」の画素)に変換されている(白、黒の表示は逆であってもよい。)。このように欠陥を周囲の正常パターンから切り分けて検出するための原理について、以下、詳細に説明する。
【0051】
図5は、図2のステップBで具体的に実行される処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートにおいて、(x,y)は注目画素の座標であり、Lxはx座標の最大値、Lyはy座標の最大値である。またG(x,y)は、欠陥検出画像の中の注目画素に対応する画素のデータである。図示例では、座標(0,0)から座標(Lx,Ly)までの範囲で注目画素を1画素ずつ変更することにより(ステップB1,B2およびステップB9〜B12)、画像全体を走査して、毎時の注目画素に対し以下の処理を実行する。
【0052】
まず注目画素に対し、あらかじめ登録された設定情報に基づき所定数の比較対象画素を設定し(ステップB3)、ステップB4〜B6のループに入る。このループでは、設定された比較対象画素を注目画素と順に組み合わせて、組み合わせられた画素間の濃度差Dを算出し、算出された濃度差Dの絶対値(以下、「濃度絶対値」という。)を所定のしきい値dhと比較する。ここで濃度絶対値がdhを下回るという判定が得られた場合には、ループを抜けて、G(x,y)の値を0に設定する(ステップB8)。
【0053】
これに対し、いずれの比較対象画素との組み合わせにおいても、濃度絶対値がdh以上となった場合には、ステップB4〜B6のループを最後まで実行してステップB7に進み、G(x,y)の値を1に設定する。
【0054】
上記のステップB4〜B6は、ステップB3で設定された比較対象画素の中に、注目画素との濃度差がしきい値dhが示す許容範囲に入る画素があるか否かを判定する処理に相当する。設定された比較対象画素をすべて処理するまで(ステップB6が「YES」となるまで)ループが実行されるということは、現在の注目画素に対しては、濃度差が許容範囲に入る比較対象画素はないと判定されたことを意味する。そして、この場合にG(x,y)の値を1に設定する処理は、現在の注目画素が欠陥を表す画素であると判定する処理に相当する。
【0055】
上記の処理に用いられる比較対象画素の設定情報や濃度絶対値を照合するためのしきい値dhは、あらかじめユーザにより定められ、主記憶部11内に登録される。これらの登録情報を適切なものに設定して図5の手順を実行することにより、先の図3,4の例に示したような精度の良い欠陥検出画像を得ることができる。
【0056】
図6は、比較対象画素の設定例を模式的に示す。
図中の20は注目画素であり、21,22は比較対象画素である。図示例では、注目画素20から見て上・下・左・右の4方位、およびこれらの方位を45度回転させた4方位の計8方位において、それぞれ注目画素20から距離I離れた位置にある画素21、および注目画素20から距離J離れた位置にある画素22、ならび画素21,22の間に存在する所定数の画素(図示せず。)を比較対象画素とする。なお、I,Jは画素数により表され、2≦I<Jの関係になることを前提とする。また、注目画素を0番目として一方向に沿って並ぶ画素を順に数えたとき、I番目にある画素を画素21とし、J番目にある画素を画素22とする。
【0057】
この実施例では、あらかじめ比較対象画素を設定する方位と、各方位に適用するI,Jの値とを定めて、これらを図5のステップB3で使用する設定情報として登録する。これにより、毎時の注目画素20に対し、所定数の比較対象画素がそれぞれ特定の位置関係をもって設定され、各比較対象画素が注目画素20に順に組み合わせられて、ステップB4〜B6の処理が実行される。
【0058】
なお、画像の端縁の近傍など、全ての方位に比較対象画素を設定することができない場所に注目画素が設定された場合には、その位置で設定可能な比較対象画素のみを設定して、ステップB4〜B6を実行すればよい。または、図5の例のように画像全体を走査するのではなく、設定情報を適用することが可能な範囲に絞り込んで走査を行ってもよい。
【0059】
つぎに、図7を用いて、上記の設定と図5に示した処理により欠陥と欠陥以外の部位とを識別できる理由を説明する。
まず図7(1)の例では、欠陥Fに注目画素20が設定され、この注目画素20に対し、距離Iに基づき設定した比較対象画素21が、いずれも欠陥Fの外側に位置している。このように、注目画素20に最も近い比較対象画素21がすべて欠陥Fより外側に位置する状態が成立すれば、いずれの比較対象画素でも注目画素20に対する濃度絶対値がしきい値dhを上回るようになり、注目画素20を欠陥として検出することができる。
【0060】
図7(1)では、各画素20,21の欠陥Fに対する相対的な大きさを誇張して示しているが、実際には、注目画素20を1画素ずつ移動させることにより、欠陥F内でも、注目画素20の移動が相当数実施される。この場合に、欠陥Fの最大の幅長さの半分より大きい値がIに設定されていれば、少なくとも欠陥Fの中心位置に注目画素20が設定されたときに、図7(1)に示す状態が成立し、欠陥Fの中心位置を検出することが可能になる。さらに、欠陥Fの最大の幅長さより大きい値をIに設定すれば、欠陥Fの周縁部に注目画素が設定された場合にも、図7(1)に示す状態を成立させることができるから、欠陥のほぼ全体を検出することが可能になる。
【0061】
つぎに図7(2)の例では、欠陥Fの外側に注目画素20が設定され、注目画素20に最も近い比較対象画素21が欠陥F上に設定されている。したがって、この場合の注目画素20と比較対象画素21との濃度絶対値はしきい値dh以上となる。
【0062】
しかし、この例では、注目画素20から最も離れた位置にある比較対象画素22や、画素21,22の間に位置する比較対象画素23など、欠陥Fの外側に相当数の比較対象画素が設定される。よって、欠陥Fの外側の比較対象画素の中に注目画素20との濃度絶対値がしきい値dhより小さくなる画素が1つでもあれば、注目画素20が欠陥として検出されることはない。
【0063】
欠陥Fのない箇所では、仮に細かい模様や正常パターンによる濃度のばらつきがあっても、注目画素20と同様の濃度の箇所が全く存在しないとは考えにくい。したがって、検査対象画素の特性に応じて比較対象画素を設定する方位や設定される画素数を調整すれば、いずれかの比較対象画素を注目画素20との濃度差が許容範囲になる位置に設定することが可能になり、注目画素20が欠陥として検出されるのを回避することができる。
【0064】
つぎに図7(3)の例では、欠陥Fとほぼ同じ大きさの正常パターンP1,P2が所定の距離Lを隔てて位置しており、一方の正常パターンP1に注目画素20が設定され、正常パターンP1より外側に、距離Iに基づく比較対象画素21が設定されている。また、図示していない方位の比較対象画素21も同様に、正常パターンP1の外側に設定されるから、各比較対象画素21と正常パターンP1との関係は、図7(1)に示したものと同様になる。
【0065】
しかしながら、この例では、注目画素20から最も遠い比較対象画素22までの距離Jが正常パターンP1,P2間の距離Lより大きく設定されているため、画素21,22の間の所定位置にある比較対象画素23が正常パターンP2に位置合わせされる(L=Jとなって比較対象画素22が正常パターンP2に位置合わせされる場合もある。)。したがって、この比較対象画素23と注目画素20との濃度絶対値がしきい値dhより小さくなれば、注目画素20が欠陥として検出されることはない。
【0066】
また、正常パターンP2に注目画素20が設定された場合にも、図7の例とは反対の関係を成立させることができるので、同様に、正常パターンP2が欠陥として検出されるのを回避することができる。
【0067】
上記のとおり、この実施例によれば、欠陥の大きさや正常パターン間の距離に応じて、I,Jの値を調整することにより、欠陥と正常パターンとを高い確度で見分けて、欠陥を精度良く検出することができる。ただし、1つの検査対象画像中に複数の欠陥が生じる可能性がある場合には、これらの欠陥の間に図7(3)に示したような関係が生じることがないように、距離Jの設定値や比較対象画素を設定する方位を考慮する必要がある。
【0068】
また、図5のフローチャートによれば、注目画素に対する濃度絶対値がしきい値dh以下となる比較対象画素が1つ見つかった時点で、ステップB4〜B6のループを打ち切ってG(x,y)の値を定め、次の画素に注目位置を移すので、欠陥検出に要する処理時間を短縮して、処理を高速化することができる。
【0069】
なお、図6の例では、各方位につき同様の条件で比較対象画素を設定したが、これに限らず、たとえば、各方位を、上下、左右、斜めの3グループに分けて、グループ毎に、I,Jの値を個別に設定してもよい。
【0070】
また、後記するように、比較対象画素を設定する方位は適宜選択できるようにするのが望ましい。たとえば、図4の例のような縞状の正常パターンを含む画像を処理する場合であれば、正常パターンの長さ方向に対応する方位(図4の例では上と下)を選択すれば、正常パターンの間隔の影響を受けずに、欠陥を精度良く検出することが可能になる。
【0071】
一方で、正常パターンの配置に規則性がない画像を処理するような場合には、比較対象画素がより密に設定されるように、図8に示すようなマスクフィルタ25を、比較対象画素の設定情報として登録してもよい。この例のマスクフィルタ25は、図中の斜線をひいた範囲の画素に、それぞれ当該画素が比較対象画素であることを示すデータ「1」を設定し、中央の画素20Aを含む白抜き部分にある各画素に、それぞれ当該画素が比較対象画素でないことを示すデータ「0」を設定したものである。マスクフィルタ25のサイズや、各画素に対するデータは、図8の例に限らず、ユーザが自由に設定することができる。ただし、注目画素に対応づける中央の画素20Aおよびこの画素20Aに隣接する画素には、「1」の値を設定できないようにしている。
【0072】
上記のマスクフィルタ25を用いて検査を行う場合には、検査対象画素上のマスクフィルタ25の設定位置を1画素ずつ変更して、毎回、マスクフィルタ25の中央の画素20Aに対応する画素を注目画素とし、フィルタ内のデータ「1」の設定位置に対応する画素を比較対象画素とする。よって、多数の比較対象画素を設定する場合でも、簡単に各比較対象画素の設定位置を特定することができる。
【0073】
つぎに、この実施例の視覚検査装置には、比較対象画素の設定情報や濃度絶対値のしきい値dhなどの検査に使用する情報(以下、「検査情報」という。)をユーザが設定しなければならない点に鑑み、適切な検査情報を簡単に設定するためのユーザインターフェースが組み込まれている。以下、この機能について詳細に説明する。
【0074】
図9は、表示部3に表示される検査情報の設定画面の例を示す。
この設定画面には、画像の表示領域100のほか、「サーチモード選択」を行うための領域101、「欠陥検出条件」を設定するための領域102、開始位置自動抽出ボタン103、画像表示切替ボタン104、OKボタン105、キャンセルボタン106などが設けられる。
【0075】
画像表示領域100には、欠陥を有するワークのモデルの濃淡画像(以下、「欠陥モデル画像」という。ここでは、先の図4に示した画像が表示された例を示す。)が表示されている。この表示は、後記する図12,13に示すように、欠陥検出画像の表示に切り替えることができる。画像表示切替ボタン104は、この表示の切替を行うためのボタンである。また、図9には示していないが、画像表示領域100内には、画像の表示倍率を選択するためのコンボボックスが設けられている。
【0076】
「サーチモード選択」の領域101は、ユーザにとっては、欠陥を検索する手法または検索方向を選択するという意味合いを持つが、実際には、比較対象画素の設定方法を選択するためのものである。この実施例では、先の図6に示した8つの方位のうちの上および下を「縦方向」とし、右および左を「横方向」とし、注目画素から見て斜め45度の各方位を「斜め方向」として、それぞれグループ分けし、これらのグループに基づき、「縦方向」「横方向」「縦・横方向」「縦・横・斜め方向」の4つのサーチモードを設定し、各サーチモードの名称をチェックボックス107とともに表示している。
【0077】
さらに、この実施例の領域101には、「マスク使用」というサーチモードが、「マスク作成」ボタン108とともに設けられている。このサーチモードは、マスクフィルタ25を用いて比較対象画素を設定する旨を示すものである。この実施例でユーザが「マスク使用」のチェックボックス107と「マスク作成」ボタン108をクリックすると、別の設定ウィンドウ(図示せず。)が開き、そのウィンドウ内でマスクフィルタ25のサイズやフィルタ内の各画素のデータの設定操作を受け付ける。また、設定に不慣れなユーザのために、別途、複数の標準のマスクフィルタ25を表す模式図を表示して、その中の1つを選択させるようにしたウィンドウを呼び出すこともできる。
【0078】
「欠陥検出条件」の設定領域102には、「開始位置」「終了位置」「濃度差」の各パラメータについて、それぞれ具体的な数値を入力するための入力ボックス109やスライダ110を含む設定部111が設けられる。
【0079】
「開始位置」は、注目画素20から最も近い比較対象画素21までの距離Iに相当し、「終了位置」は、注目画素20から最も遠い比較対象画素22までの距離Jに相当する。また「濃度差」は、濃度絶対値を照合するためのしきい値dhに相当する。これら3種類のパラメータについて、ユーザは、それぞれスライダ110の上下動または入力ボックス109への数値入力により値を設定することができる。
【0080】
なお、領域102が図9に示すように構成されるのは、「マスク使用」以外のサーチモードが選択された場合である。「マスク使用」が選択された場合の領域102には、「濃度差」の設定用の入力ボックス109および設定部111のみが設けられる。
【0081】
つぎに、開始位置自動抽出ボタン103は、画像表示領域100に表示されている欠陥モデル画像を用いて、開始位置、すなわち距離Iを自動設定するためのものである。具体的には、ユーザがこのボタン103を操作すると、画像表示領域100内での範囲指定操作が可能となり、範囲指定操作を行うと、その指定に応じて距離Iの値が自動設定される。また領域102の「開始位置」の入力ボックス109の表示やスライダ110の位置も、この設定値に対応したものとなる。
【0082】
図10は、上記の機能を利用する場合の欠陥モデル画像に対する範囲指定の具体例を示す。これらの例は、いずれも図9の画像表示領域100内の表示の一部を拡大して、欠陥に対応する箇所を指定したものである。
【0083】
図10(1)は、局所欠陥F1を対象にした範囲指定の例であって、欠陥F1の全体が含まれるような矩形領域cが設定されるように、領域cの対角の頂点となる2点a1,a2を指定している。この範囲指定により、指定範囲の幅として、矩形領域cの長い方の辺の長さが計測される。なお、局所欠陥に対しては、円状の領域による範囲指定を行って、指定された円の直径を計測することもできる。
【0084】
図10(2)は線状欠陥F3を対象にした範囲指定の例であって、欠陥F3を横切るように2点b1,b2を指定している。この場合には、指定範囲の幅として、点b1,b2間の距離を計測する。
【0085】
このようにユーザの行った範囲指定操作に応じて指定範囲の幅を計測すると、その計測値にあらかじめ定めた数値を加えた値を距離Iに設定する。よって、ユーザが画像中の検出したい欠陥を含む範囲を適切に指定すれば、その欠陥の検出に必要な「開始位置」を自動設定することが可能になる。
【0086】
さらに、この実施例の視覚検査装置では、上記の設定画面の表示下で図11に示すような手順を実行することにより、ユーザが自身の設定した検査情報が適切であるか否かを、容易に判断できるようにしている。
【0087】
以下、図11に示す処理について説明する。
この実施例では、まず、カメラ2により生成された欠陥モデル画像を入力し、画像表示領域100に表示する(ステップS1)。つぎに、ユーザが「サーチモード」や「欠陥検出条件」を設定して、画像表示切替ボタン104を操作すると、ステップS2が「YES」となり、設定された各種情報に基づき欠陥検出処理を実行する(ステップS3)。なお、このステップS3の詳細は、図5に示した手順と同様である。
【0088】
欠陥検出処理が終了すると、その処理により生成された欠陥検出画像を、それまでの欠陥モデル画像に置き換えて表示する(ステップS4)。さらにこの表示状態下で、ユーザが何らかの設定変更を行うと、ステップS5が「YES」となり、ステップS3,S4が再び実行される。以下、同様に、設定変更操作がある都度、ステップS3,S4を実行することにより、変更された設定に基づく欠陥検出処理が実行され、欠陥検出画像の表示も切り替えられる。
【0089】
前述したように、この実施例の欠陥検出処理は高速で実行可能であるので、上記の処理によれば、設定変更操作の都度、その操作に連動して欠陥検出画像の表示を切り替えることができる。よって、ユーザは、毎時の設定変更に対する欠陥検出画像により設定内容が適切であるか否かを確認し、適切であると判断した時点で確定操作(OKボタン105の操作)を行うことができる。この操作が行われると、ステップS6が「YES」となって、現在設定されている情報を確定して登録し(ステップS7)、処理を終了する。
【0090】
図12は、図9に示した設定内容で画像表示切替ボタンが操作されたときの設定画面の表示例を示す。さらに図13は、図12の設定画面で「開始位置」の値を変更した後の表示例を示す。これらの画面に表示されている欠陥検出画像を図9に示した欠陥モデル画像と比較すると、図12の例では、局所欠陥F2や線状欠陥F3は実際のものに近い状態で検出されているが、大きい方の局所欠陥F1は、実際より小さな状態で検出されている。これに対し、図13の例では、「開始位置」を大きな値に変更したことにより、いずれの欠陥とも、実際のものに近い状態で検出されている。
【0091】
上記したように、ユーザが設定内容を変更する都度、その設定内容を反映した欠陥検出画像が表示されるので、一般ユーザでも容易に欠陥検出に適した検査情報を設定することが可能になる。
【0092】
なお、「サーチモード選択」について、「縦方向」や「横方向」など比較対象画素を設定する方位を絞り込んだ場合には、検査においては、検査対象画像中の正常パターンの並び方向が選択したサーチモードに適合するように、画像を補正してから検査を行うのが望ましい。たとえば、図9の例のように縦縞パターンの画像を処理するために「縦方向」を選択した場合には、検査対象画像中のエッジ画素毎に濃度勾配方向を表す角度データを算出して、これらの角度のヒストグラムを作成し、その中のピークに対応する角度と縦方向(y軸方向)との角度差を導出する。そしてこの角度差に基づき検査対象画像を回転補正することによって、検査対象画像中の正常パターンの長さ方向を縦方向に合わせた後に図5に示した手順を実行する。このような処理により、カメラ2の視野に入るワークの姿勢にばらつきがあっても、検査対象画像を欠陥検出に適した状態に補正して、欠陥を精度良く検出することが可能になる。
【0093】
また、上記では、濃淡画像を検査対象画像とした処理を説明したが、カラー画像を対象に、注目画素と比較対象画素との間の色差を算出するようにして図6と同様の手順を実行することによって、色彩欠陥を検出することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】視覚検査装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】検査の概略手順を示すフローチャートである。
【図3】検査対象画像および欠陥検出画像の具体例を示す図である。
【図4】検査対象画像および欠陥検出画像の具体例を示す図である。
【図5】欠陥検出処理の詳細手順を示すフローチャートである。
【図6】比較対象画素の設定例を示す図である。
【図7】欠陥と欠陥以外の部位とを識別することができる理由を説明する図である。
【図8】マスクフィルタの構成例を示す図である。
【図9】検査情報の設定画面の例を示す図である。
【図10】欠陥の範囲指定の例を示す図である。
【図11】検査情報の設定時の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】ユーザの設定操作に応じて画像表示が切り替えられた例を示す図である。
【図13】ユーザの設定変更操作に応じて欠陥検出画像の表示が変化した例を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1 本体部
2 カメラ
3 表示部
4 操作部
10 制御部
11 主記憶部
20 注目画素
21,22,23 比較対象画素
100 画像表示領域
F,F1〜F2 欠陥
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の物体を撮像して生成された画像をコンピュータにより処理することによって、周囲とは異なる明るさや色彩をもって画像中に現れている欠陥を検出する方法、およびこの方法が適用された視覚検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板、印刷物、織物など、種々のパターンが表面に形成された物体(以下、「ワーク」という場合もある。)の外観上の欠陥を検出する方法として、欠陥のないモデルによる濃淡画像(以下、「基準画像」という。)をあらかじめ登録し、検査対象のワークの画像(以下、「検査対象画像」という。)を基準画像と比較する方法が、知られている(たとえば、特許文献1,2を参照。)。
【0003】
また、基準画像を用いずに欠陥を検出する方法として、特許文献3に開示されたものがある。この特許文献3に記載された発明は、向きが限定された線状パターンが形成されたワークを検査対象として、正常な線状パターンと欠陥とを精度良く見分けることを課題として、濃度勾配方向を表す角度データ(エッジコード)を用いた画像処理を実行する。具体的には、検査対象画像に局所領域を走査しつつ、局所領域内の各画素のエッジコードによるヒストグラムを作成し、このヒストグラムの最大の度数に対応するエッジコードが線状パターンの限定された向きに適合するか否かを判断し、適合しないと判断したとき、その時点における局所領域内に欠陥が存在すると判定する。
【0004】
【特許文献1】特開平9−193515号公報
【特許文献2】特開2000−171230号公報
【特許文献3】特開2008−139262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2のように基準画像を用いて欠陥を検出する方法では、ワーク毎に基準画像を登録する必要があるため、多数のワークを検査対象とする場合には、容量の大きなメモリが必要となる。また、正常なパターンの形成位置や大きさにばらつきが生じたり、明るさが変動すると、これらによるノイズが欠陥として誤検出されるおそれがある。また、特許文献2には、欠陥の検出精度を向上するためにフィルタ処理などを行うことが記載されているが、このような処理を行うとアルゴリズムが複雑になり、欠陥を高速で検出するのが困難になる。
【0006】
特許文献3に記載された発明では、基準画像を登録する必要はないが、正常な線状パターンとは濃度が異なっていても、線状パターンと濃度勾配方向が同様の画素が集まる局所領域を検出するのが困難である。このため、線状パターンと同様の方向に延びる線状の欠陥を検出する精度を保証できない、という問題がある。
【0007】
本発明は上記の各問題に着目し、基準画像を登録する必要がなく、また欠陥の形状を問わずに、周囲とは異なる外観の欠陥を検出する処理を、精度良くかつ高速で実行することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による欠陥検出方法は、検査対象物の画像を処理するコンピュータに、画像中の注目画像から1画素以上離れ、かつ注目画素に対して特定の位置関係にある画素を、当該注目画素の比較対象画素として設定するための設定情報を、あらかじめ登録する。そして、この登録が完了したコンピュータにおいて、検査対象の画像を1画素ずつ走査して、毎時の注目画素につき、それぞれ登録された設定情報を適用して少なくとも1つの比較対象画素を設定し、設定された比較対象画素の中に注目画素に対する画像データの差が所定の許容範囲に入る画素があるか否かを判定するとともに、画像データの差が許容範囲に入る比較対象画素はないという判定をしたとき、その時点における注目画素を欠陥を表す画素として特定する。さらに、画像に対する走査が終了したとき、欠陥を表すものとして特定された画素の有無、または欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を出力する。
【0009】
上記の方法において、比較対象画素は、注目画素から見た方位および注目画素からの距離が定まっている画素であり、注目画素が移動すれば、これに伴って比較対象画素も移動する。比較対象画素の設定情報は、たとえば注目画素に対する方位および距離により表してもよいし、注目座標を基準にした比較対象画素の相対座標として表してもよい。
なお、注目画素を動かす範囲(走査範囲)は、検査対象画像の全範囲とするのが望ましいが、これに限らず、あらかじめ定められた範囲に走査の範囲を限定してもよい。
【0010】
また、比較対象画素は複数個設定されるのが望ましいが、検査対象画像の特性や検査目的によっては単独の比較対象画素を設定するのみとしてもよい。また、注目画素の位置によっては、設定情報が定める比較対象画素のすべてを設定できない場合もあるが、このような場合には、設定できる範囲で比較対象画素を設定すればよい。または、注目画素の位置に応じて適用する設定情報を変更してもよい。
【0011】
設定情報を登録する処理では、検出したい欠陥の大きさに応じて注目画素に対する比較対象画素の距離を定めるのが望ましい。たとえば、想定される欠陥の中心部の画素が注目画素となったときに、どの比較対象画素も欠陥以外の部位に対応するように上記の距離を定めておけば、いずれの比較対象画素でも注目画素に対する画像データの差が許容範囲を上回るものになる。よって、上記の設定により、欠陥の中心部を検出することが可能になる。
さらに、検出したい欠陥の幅長さに応じた距離を設定すれば、欠陥の周縁部の画素が注目画素となった場合でも、欠陥に対応しない部位に各比較対象画素を設定することが可能になる。よって、欠陥のほぼ全体を検出することが可能になる。
【0012】
一方で、設定された比較対象画像のうちの1つでも、注目画素に対する画像データの差が許容範囲に入れば、注目画素は欠陥を表すものではないと判断される。したがって、たとえば検査対象画像中に、周囲と異なる濃度で欠陥と同程度の大きさのパターンがあったとしても、このパターンから所定距離離れた場所に同様の濃度のパターンが存在する場合には、前者のパターンに注目画素を設定したときに後者のパターンに比較対象画素が設定されるような設定情報を定めることによって、当該パターンが欠陥として誤検出されるのを回避することができる。よって、回路パターンが形成された基板、印刷物、織物など、同一または類似のパターンの繰り返しが多い構造の物体が検査対象となる場合でも、欠陥を、精度良く検出することが可能になる。
【0013】
また上記の方法では、毎時の注目画素に対し、各比較対象画素との画像データの差を算出して、算出された差の値と許容範囲を表す数値とを照合する、という簡易なアルゴリズムによる処理で、注目画素が欠陥を表す画素か否かを特定することができる。また画像データの差が許容範囲に入る比較対象画素が1つでも見つかれば、その時点で現在の注目画素は欠陥を表さないと判断して、次の画素に注目位置を移すことができるので、欠陥検出にかかる処理を高速で行うことができる。
【0014】
上記の方法において、欠陥を表すものとして特定された画素の有無を出力する場合には、その出力をもって、検査対象物を良品と不良品とに分けることができる。また、欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を出力する場合には、出力された画像を表示することによって、欠陥の位置、大きさ、形状などをユーザが容易に認識することができる。
【0015】
以下、上記の方法に関する好ましい実施態様を説明する。
まず第1の態様では、毎時の注目画素に対する処理において、登録された設定情報により設定された比較対象画素を当該注目画素に順に組み合わせて、組み合わせられた画素間の画像データの差を算出するステップと、算出した差の値が許容範囲に入るか否かを判定するステップとを、差の値が許容範囲に入ると判定するか、全ての組み合わせに対する処理が終了するまで繰り返し実行する。そして、差の値が許容範囲に入るという判定をしたときは、その時点の注目画素は欠陥を表す画素ではないと判定する一方、差の値が許容範囲に入るという判定をする前に全ての組み合わせに対する処理を終了したときは、注目画素を欠陥を表す画素として特定する。
【0016】
上記の態様によれば、複数の比較対象画素を設定する場合でも、欠陥が存在しない箇所に注目画素が設定された場合には、その注目画素に対する画像データの差が許容範囲に入る比較対象画素が組み合わせられて、その組み合わせに対する処理が終了した時点で、当該注目画素が欠陥を表さない画素であると判定して次の画素に注目位置を移すことができる。よって、欠陥検出にかかる処理を高速化することができる。
【0017】
第2の態様では、設定情報として、注目画素から最も近い比較対象画素までの距離Iと、注目画素から最も遠い比較対象画素までの距離Jと、これらの距離I,Jが適用される方位を示す情報とを登録する。また毎時の注目画素に対する比較対象画素を設定する際には、注目画素に設定情報が示す方位および各距離I,Jを適用することにより、少なくとも一方位において、注目画素から距離Iを隔てた位置から注目画素から距離Jを隔てた位置までの範囲に存在する複数の画素を、比較対象画素として設定する。
【0018】
上記の態様によれば、たとえば設定情報が示す方位が複数ある場合には、これらの方位毎に、注目画素から距離Iを隔てた位置から注目画素から注目画素から距離Jを隔てた位置までの範囲に並ぶ複数の画素を、比較対象画素とすることができる。
【0019】
2つの距離I,Jのうち、短い方の距離Iは、検出すべき欠陥の大きさに応じて設定するのが望ましい。言い換えれば、欠陥の少なくとも一部に注目画素が設定されたときに、距離Iに基づき設定した比較対象画素が欠陥の外側に設定されるように、距離Iの値を設定するのが望ましい。また、欠陥以外のパターンが欠陥として誤検出されるのを回避するには、同様の画像データを有するパターン間の距離が距離Iより大きく、距離J以下となるように、距離I,Jの値を設定するのが望ましい。
【0020】
設定情報に含める方位は、検査対象画像の特性に応じて変更することができる。また、縞模様のパターンを含む画像など、画像中のパターンの並び方向が限定される場合や、濃度がほぼ均一な画像を処理する場合には、注目画素に対して右、または注目画素に対して上など、特定の一方位のみを設定情報に含めてもよい。
【0021】
第3の態様では、設定情報として、個々の画素にそれぞれ当該画素が比較対象画素であるか否かを示すフラグデータを対応づけたマスクフィルタとして、少なくとも中央の画素および中央の画素に隣接する画素に比較対象画素でないことを示すフラグデータを対応づけたマスクフィルタを登録する。また、毎時の注目画素に対する比較対象画素を設定する際には、登録されたマスクフィルタを、その中心を注目画素に合わせた状態で設定し、このフィルタ内の各フラグデータとの対応関係に基づき所定数の比較対象画素を設定する。
【0022】
上記の態様によれば、たとえば、欠陥の大きさや通常パターン間の間隔などに応じてマスクフィルタのサイズを決め、このフィルタ内の中心の画素およびこれに隣接する画素を除く範囲で、比較対象画素の位置を自由に設定することができる。よって、比較対象画素の設定の自由度を広げて、種々の検査対象物に対応することができる。
【0023】
つぎに、第4の態様では、設定情報を登録する処理において、設定情報の候補となる情報の入力を受け付けるステップと、欠陥を含むモデルの画像に入力された情報を設定情報として適用して、前記欠陥を表す画素を特定するための一連の処理を実行するステップと、欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を表示するステップとを、画像の表示に対して確定操作が行われるまで繰り返し実行する。そして確定操作が行われたとき、最新の入力情報(最新の表示画像の生成に使用された入力情報)を設定情報として登録する。
【0024】
上記の態様では、ユーザが設定情報の候補となる情報を入力する都度、その入力情報を用いて本処理と同様の処理を実行し、欠陥の検出結果を表す画像を表示する。すなわち、モデルの画像を1画素ずつ走査して、毎時の注目画素につき、入力された情報を適用して少なくとも1つの比較対象画素を設定し、設定された比較対象画素の中に注目画素に対する画像データの差が所定の許容範囲に入る画素が存在するか否かを判定するとともに、画像データの差が許容範囲に入る比較対象画素は存在しないとする判定をしたとき、当該注目画素を欠陥を表す画素として特定する。そして、欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を表示する。
【0025】
上記の態様によれば、ユーザは、自身が入力した情報が設定情報として適切であるか否かを容易に判断することができる。よって、欠陥検出の原理をよく理解できていないユーザでも、適切な設定情報を登録する作業を容易に行うことが可能になる。
【0026】
つぎに、第5の態様では、設定情報とともに、注目画素と比較対象画素との画像データの差に関する許容範囲を示す情報をコンピュータに登録する。このようにすれば、検査対象画像の画像データのばらつきに応じて許容範囲を変更することができるから、欠陥の検出精度を高めることができる。
【0027】
つぎに、本発明による視覚検査装置は、検査対象物を撮像するための撮像手段と、この撮像手段により生成された画像を処理して、検査対象物の外観上の欠陥を検出する検査実行手段と、画像中の注目画素から1画素以上離れ、かつ注目画素に対して特定の位置関係にある画素を、当該注目画素の比較対象画素として設定することを前提として、比較対象画素を設定するための設定情報の入力を受け付ける入力手段と、入力された設定情報を登録する登録手段とを具備する。さらに検査実行手段には、以下の欠陥画素特定手段および出力手段が設けられる。
【0028】
欠陥画素特定手段は、撮像手段により生成された検査対象物の画像を1画素ずつ走査して、毎時の注目画素につき、それぞれ登録手段に登録された設定情報を適用して少なくとも1つの比較対象画素を設定し、設定された比較対象画素の中に注目画素に対する画像データの差が所定の許容範囲に入る画素があるか否かを判定する。さらに、画像データの差が許容範囲に入る比較対象画素はないとする判定をしたとき、その時点における注目画素を欠陥を表す画素として特定する。出力手段は、画像に対する操作が終了したとき、欠陥を表すものとして特定された画素の有無、または欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を出力する。
【0029】
上記構成の視覚検査装置によれば、ユーザが、比較対象画素の設定情報として適切な情報を入力することによって、欠陥を高速かつ精度良く検出することが可能になる。また検査対象物が変更された場合にも、設定情報を変更することにより容易に対応することができる。
【0030】
第1の態様の欠陥検出方法が適用された視覚検査装置では、欠陥画素特定手段は、毎時の注目画素に対し、登録された設定情報により設定された比較対象画素を当該注目画素に順に組み合わせて、組み合わせられた画素間の画像データの差を算出するステップと、算出した差の値が前記許容範囲に入るか否かを判定するステップとを、差の値が許容範囲に入ると判定するか、全ての組み合わせに対する処理が終了するまで繰り返し実行する。そして、差の値が許容範囲に入るという判定をしたときは注目画素は欠陥を表す画素ではないと判定する一方、差の値が許容範囲に入るという判定をする前に全ての組み合わせに対する処理を終了したときは、注目画素を欠陥を表す画素として特定する。
【0031】
第2の態様の欠陥検出方法が適用された視覚検査装置では、入力手段は、注目画素から最も近い比較対象画素までの距離Iと、注目画素から最も遠い比較対象画素までの距離Jと、これらの距離I,Jが適用される方位を示す情報とを、それぞれ入力する。また欠陥画素特定手段は、毎時の注目画素に対し、それぞれ登録手段に登録された方位および各距離I,Jを適用することにより、少なくとも一方位において、注目画素から距離Iを隔てた位置から注目画素から距離Jを隔てた位置までの範囲に存在する複数の画素を、比較対象画素として設定する。
【0032】
上記構成において、距離I,Jを入力するための構成は、I,Jの具体的な数値を入力するものに限らず、欠陥を含むモデルの画像上で欠陥に対応する範囲や通常パターンの間隔に対応する範囲を指定する操作を受け付けて、指定された範囲からI,Jの値を自動抽出するものでもよい。
【0033】
第3の態様の欠陥検出方法が適用された視覚検査装置では、入力手段は、個々の画素にそれぞれ当該画素が比較対象画素であるか否かを示すフラグデータを対応づけたマスクフィルタを設定する操作を、少なくとも中央の画素および中央の画素に隣接する画素に比較対象画素でないことを示すフラグデータを対応づけることを条件として受け付ける手段として構成される。また欠陥画素特定手段は、毎時の注目画素に対し、それぞれ登録手段に登録されたマスクフィルタを、その中心を注目画素に合わせた状態で設定し、このフィルタ内の各フラグデータとの対応関係に基づき所定数の画素を比較対象画素として設定する。
【0034】
上記の入力手段は、たとえば、フィルタサイズを設定する操作や、各画素にフラグデータを設定する操作を受け付ける手段として構成することができる。または、あらかじめ装置に登録された複数種のマスクフィルタの構成を表示して、その中の1つを選択する操作を受け付ける手段として構成してもよい。
【0035】
第4の態様の欠陥検出方法が適用された視覚検査装置では、入力手段は、設定情報の候補となる情報の入力を受け付ける手段と、この手段が入力した情報を確定する操作を受け付ける手段とを具備する。さらにこの装置には、撮像手段により欠陥を含むモデルの画像が生成され、入力手段より設定情報の候補となる情報が入力されたことに応じて、モデルの画像に前記入力された設定情報の候補を適用して判定手段および欠陥画素特定手段による処理を実行し、欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を表示するテスト実行手段と、テスト実行手段による画像表示に対して入力手段が確定操作を受け付けたとき、最新の入力情報を設定情報として登録手段に登録する登録処理手段とが、設けられる。
【0036】
第5の態様の欠陥検出方法が適用された視覚検査装置では、入力手段は、注目画素と比較対象画素との画像データの差に関する許容範囲を示す情報の入力を受け付ける手段を、さらに含む。また登録手段は、比較対象領域の設定情報および画像データの差に関する許容範囲につき入力手段が受け付けた入力情報を登録する手段として、構成される。
【発明の効果】
【0037】
上記の欠陥検出方法および視覚検査装置によれば、検出したい欠陥の大きさや、検査対象画像の特性に応じて比較対象画素の設定情報を調整して登録することにより、欠陥を精度良く検出することが可能になる。また、欠陥検出のアルゴリズムが簡単であるため処理を高速化することができ、多数の検査対象物を検査する場合のタクトタイムを短縮できるなど、ユーザにとっての利便性を高めることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、視覚検査装置の構成例を示す。
この視覚検査装置は、検査対象のワークを撮像し、生成された画像を処理することによって、検査対象物の良否を判定するもので、検査に関する一連の処理を実行する本体部1、撮影用のカメラ2、表示部3、操作部4などにより構成される。表示部3は、たとえば液晶モニタにより構成され、操作部4には、マウスやキーボードが含まれる。
【0039】
本体部1は、CPUを含む制御部10を主体とする汎用のコンピュータ装置(パーソナルコンピュータ)であって、主記憶部11(たとえばハードディスク)や画像メモリ12(たとえばRAMボード)が組み込まれる。本体部1には、さらに、撮像インターフェース13、表示用インターフェース14、入力用インタフェース15、外部インターフェース16、外部ディスク用読取部17などが設けられる。
【0040】
本体部1では、プログラムが格納された記憶媒体18(たとえばCDまたはDVD)を外部ディスク用読取部17にセットし、読み取られたプログラムを主記憶部11にインストールするようにしている。この主記憶部11にインストールされたプログラムによって、制御部10に、一連の画像処理や判定処理を実行する機能が設定される。また制御部10には、後記する設定画面を介して操作部4からの設定入力を受け付けるグラフィカルユーザインターフェースの機能も設定される。
【0041】
撮像インターフェース13は、制御部10からの撮像制御信号をカメラ2に与えて撮像を行わせ、カメラ2から出力された画像信号をディジタル画像データに変換する。変換後の画像データは、画像メモリ12に格納され、制御部10により処理される。
【0042】
表示用インターフェース14は、制御部10からの指令に基づき、表示部3への画像表示を制御し、入力用インターフェース15は、操作部4による操作を受け付けて、その操作内容を示すデータを制御部10に出力する。外部インターフェース16は、図示しない外部機器に、検査結果を出力する場合に使用される。
【0043】
上記構成の視覚検査装置では、主記憶部11にインストールするプログラムによって、検査対象物(ワーク)の種類や検査目的に応じた種々の手法により検査を実行することができる。以下では、これらの検査のうち、ワークの表面に汚れやキズなどの外観上の欠陥が生じていないかどうかを判定する検査に関して、好適な実施例を説明する。
【0044】
図2は、1つのワークに対して実行される検査の概略手順を示すフローチャートである。以下、この図の流れに沿って説明すると、まずステップAでは、検査対象のワークを撮像する。この撮像により生成された画像は、撮像インターフェース13によりディジタル変換され、変換後の画像が検査対象画像として画像メモリ12に格納される。
【0045】
つぎのステップBでは、上記の検査対象画像を対象に欠陥検出処理を実施する。この処理では、後で詳細に説明するように、検査対象画像の各画素に順に注目して注目画素が欠陥を表す画素か否かを判定し、その判定結果を示す情報として、欠陥を表す画素を「1」とし、欠陥でない画素を「0」とする2値画像を生成する。以下、この画像を「欠陥検出画像」という。
【0046】
つぎのステップCでは、上記の欠陥検出画像を用いて欠陥の有無を判定する。具体的には、欠陥検出画像の中で値が「1」になっている画素を計数して、その計数値を所定のしきい値と比較する。そして、計数値がしきい値を上回れば「欠陥あり」と判定し、計数値がしきい値以下であれば「欠陥なし」と判定する。
【0047】
この後は、欠陥検出画像および欠陥の有無判定の結果を表示部3に表示し(ステップD)、さらに、欠陥の有無判定の結果を外部の装置に出力して(ステップE)、ワークに対する検査を終了する。以後も、カメラ2の視野にワークが送り込まれる都度、上記のステップA〜Eを繰り返し実行する。
【0048】
図3および図4は、それぞれ検査対象画像の具体例と、当該検査対象画像に図2のステップBを実行することにより生成された欠陥検出画像とを対応づけて示す。
【0049】
図3の検査対象画像は、回路パターンが形成されたプリント基板を撮像することにより生成されたもので、画像の中央付近に、周囲とは異なる濃度の欠陥F0が現れている。図4の検査対象画像は、縦縞模様のパッケージを撮像することにより生成されたもので、模様部分とは異なる濃度を持つ3つの欠陥F1,F2,F3が現れている。
なお、以下では、欠陥F3のような細長形状の欠陥を「線状欠陥」といい、欠陥F0,F1,F2のように比較的狭い範囲に生じた欠陥を「局所欠陥」という。
【0050】
図3,4に示す欠陥検出画像では、各欠陥F0,F1〜F3が黒画素(値が「1」の画素)により表される一方、原画像に現れていた欠陥以外のパターン(以下、「正常パターン」という。)は、すべて白画素(値が「0」の画素)に変換されている(白、黒の表示は逆であってもよい。)。このように欠陥を周囲の正常パターンから切り分けて検出するための原理について、以下、詳細に説明する。
【0051】
図5は、図2のステップBで具体的に実行される処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートにおいて、(x,y)は注目画素の座標であり、Lxはx座標の最大値、Lyはy座標の最大値である。またG(x,y)は、欠陥検出画像の中の注目画素に対応する画素のデータである。図示例では、座標(0,0)から座標(Lx,Ly)までの範囲で注目画素を1画素ずつ変更することにより(ステップB1,B2およびステップB9〜B12)、画像全体を走査して、毎時の注目画素に対し以下の処理を実行する。
【0052】
まず注目画素に対し、あらかじめ登録された設定情報に基づき所定数の比較対象画素を設定し(ステップB3)、ステップB4〜B6のループに入る。このループでは、設定された比較対象画素を注目画素と順に組み合わせて、組み合わせられた画素間の濃度差Dを算出し、算出された濃度差Dの絶対値(以下、「濃度絶対値」という。)を所定のしきい値dhと比較する。ここで濃度絶対値がdhを下回るという判定が得られた場合には、ループを抜けて、G(x,y)の値を0に設定する(ステップB8)。
【0053】
これに対し、いずれの比較対象画素との組み合わせにおいても、濃度絶対値がdh以上となった場合には、ステップB4〜B6のループを最後まで実行してステップB7に進み、G(x,y)の値を1に設定する。
【0054】
上記のステップB4〜B6は、ステップB3で設定された比較対象画素の中に、注目画素との濃度差がしきい値dhが示す許容範囲に入る画素があるか否かを判定する処理に相当する。設定された比較対象画素をすべて処理するまで(ステップB6が「YES」となるまで)ループが実行されるということは、現在の注目画素に対しては、濃度差が許容範囲に入る比較対象画素はないと判定されたことを意味する。そして、この場合にG(x,y)の値を1に設定する処理は、現在の注目画素が欠陥を表す画素であると判定する処理に相当する。
【0055】
上記の処理に用いられる比較対象画素の設定情報や濃度絶対値を照合するためのしきい値dhは、あらかじめユーザにより定められ、主記憶部11内に登録される。これらの登録情報を適切なものに設定して図5の手順を実行することにより、先の図3,4の例に示したような精度の良い欠陥検出画像を得ることができる。
【0056】
図6は、比較対象画素の設定例を模式的に示す。
図中の20は注目画素であり、21,22は比較対象画素である。図示例では、注目画素20から見て上・下・左・右の4方位、およびこれらの方位を45度回転させた4方位の計8方位において、それぞれ注目画素20から距離I離れた位置にある画素21、および注目画素20から距離J離れた位置にある画素22、ならび画素21,22の間に存在する所定数の画素(図示せず。)を比較対象画素とする。なお、I,Jは画素数により表され、2≦I<Jの関係になることを前提とする。また、注目画素を0番目として一方向に沿って並ぶ画素を順に数えたとき、I番目にある画素を画素21とし、J番目にある画素を画素22とする。
【0057】
この実施例では、あらかじめ比較対象画素を設定する方位と、各方位に適用するI,Jの値とを定めて、これらを図5のステップB3で使用する設定情報として登録する。これにより、毎時の注目画素20に対し、所定数の比較対象画素がそれぞれ特定の位置関係をもって設定され、各比較対象画素が注目画素20に順に組み合わせられて、ステップB4〜B6の処理が実行される。
【0058】
なお、画像の端縁の近傍など、全ての方位に比較対象画素を設定することができない場所に注目画素が設定された場合には、その位置で設定可能な比較対象画素のみを設定して、ステップB4〜B6を実行すればよい。または、図5の例のように画像全体を走査するのではなく、設定情報を適用することが可能な範囲に絞り込んで走査を行ってもよい。
【0059】
つぎに、図7を用いて、上記の設定と図5に示した処理により欠陥と欠陥以外の部位とを識別できる理由を説明する。
まず図7(1)の例では、欠陥Fに注目画素20が設定され、この注目画素20に対し、距離Iに基づき設定した比較対象画素21が、いずれも欠陥Fの外側に位置している。このように、注目画素20に最も近い比較対象画素21がすべて欠陥Fより外側に位置する状態が成立すれば、いずれの比較対象画素でも注目画素20に対する濃度絶対値がしきい値dhを上回るようになり、注目画素20を欠陥として検出することができる。
【0060】
図7(1)では、各画素20,21の欠陥Fに対する相対的な大きさを誇張して示しているが、実際には、注目画素20を1画素ずつ移動させることにより、欠陥F内でも、注目画素20の移動が相当数実施される。この場合に、欠陥Fの最大の幅長さの半分より大きい値がIに設定されていれば、少なくとも欠陥Fの中心位置に注目画素20が設定されたときに、図7(1)に示す状態が成立し、欠陥Fの中心位置を検出することが可能になる。さらに、欠陥Fの最大の幅長さより大きい値をIに設定すれば、欠陥Fの周縁部に注目画素が設定された場合にも、図7(1)に示す状態を成立させることができるから、欠陥のほぼ全体を検出することが可能になる。
【0061】
つぎに図7(2)の例では、欠陥Fの外側に注目画素20が設定され、注目画素20に最も近い比較対象画素21が欠陥F上に設定されている。したがって、この場合の注目画素20と比較対象画素21との濃度絶対値はしきい値dh以上となる。
【0062】
しかし、この例では、注目画素20から最も離れた位置にある比較対象画素22や、画素21,22の間に位置する比較対象画素23など、欠陥Fの外側に相当数の比較対象画素が設定される。よって、欠陥Fの外側の比較対象画素の中に注目画素20との濃度絶対値がしきい値dhより小さくなる画素が1つでもあれば、注目画素20が欠陥として検出されることはない。
【0063】
欠陥Fのない箇所では、仮に細かい模様や正常パターンによる濃度のばらつきがあっても、注目画素20と同様の濃度の箇所が全く存在しないとは考えにくい。したがって、検査対象画素の特性に応じて比較対象画素を設定する方位や設定される画素数を調整すれば、いずれかの比較対象画素を注目画素20との濃度差が許容範囲になる位置に設定することが可能になり、注目画素20が欠陥として検出されるのを回避することができる。
【0064】
つぎに図7(3)の例では、欠陥Fとほぼ同じ大きさの正常パターンP1,P2が所定の距離Lを隔てて位置しており、一方の正常パターンP1に注目画素20が設定され、正常パターンP1より外側に、距離Iに基づく比較対象画素21が設定されている。また、図示していない方位の比較対象画素21も同様に、正常パターンP1の外側に設定されるから、各比較対象画素21と正常パターンP1との関係は、図7(1)に示したものと同様になる。
【0065】
しかしながら、この例では、注目画素20から最も遠い比較対象画素22までの距離Jが正常パターンP1,P2間の距離Lより大きく設定されているため、画素21,22の間の所定位置にある比較対象画素23が正常パターンP2に位置合わせされる(L=Jとなって比較対象画素22が正常パターンP2に位置合わせされる場合もある。)。したがって、この比較対象画素23と注目画素20との濃度絶対値がしきい値dhより小さくなれば、注目画素20が欠陥として検出されることはない。
【0066】
また、正常パターンP2に注目画素20が設定された場合にも、図7の例とは反対の関係を成立させることができるので、同様に、正常パターンP2が欠陥として検出されるのを回避することができる。
【0067】
上記のとおり、この実施例によれば、欠陥の大きさや正常パターン間の距離に応じて、I,Jの値を調整することにより、欠陥と正常パターンとを高い確度で見分けて、欠陥を精度良く検出することができる。ただし、1つの検査対象画像中に複数の欠陥が生じる可能性がある場合には、これらの欠陥の間に図7(3)に示したような関係が生じることがないように、距離Jの設定値や比較対象画素を設定する方位を考慮する必要がある。
【0068】
また、図5のフローチャートによれば、注目画素に対する濃度絶対値がしきい値dh以下となる比較対象画素が1つ見つかった時点で、ステップB4〜B6のループを打ち切ってG(x,y)の値を定め、次の画素に注目位置を移すので、欠陥検出に要する処理時間を短縮して、処理を高速化することができる。
【0069】
なお、図6の例では、各方位につき同様の条件で比較対象画素を設定したが、これに限らず、たとえば、各方位を、上下、左右、斜めの3グループに分けて、グループ毎に、I,Jの値を個別に設定してもよい。
【0070】
また、後記するように、比較対象画素を設定する方位は適宜選択できるようにするのが望ましい。たとえば、図4の例のような縞状の正常パターンを含む画像を処理する場合であれば、正常パターンの長さ方向に対応する方位(図4の例では上と下)を選択すれば、正常パターンの間隔の影響を受けずに、欠陥を精度良く検出することが可能になる。
【0071】
一方で、正常パターンの配置に規則性がない画像を処理するような場合には、比較対象画素がより密に設定されるように、図8に示すようなマスクフィルタ25を、比較対象画素の設定情報として登録してもよい。この例のマスクフィルタ25は、図中の斜線をひいた範囲の画素に、それぞれ当該画素が比較対象画素であることを示すデータ「1」を設定し、中央の画素20Aを含む白抜き部分にある各画素に、それぞれ当該画素が比較対象画素でないことを示すデータ「0」を設定したものである。マスクフィルタ25のサイズや、各画素に対するデータは、図8の例に限らず、ユーザが自由に設定することができる。ただし、注目画素に対応づける中央の画素20Aおよびこの画素20Aに隣接する画素には、「1」の値を設定できないようにしている。
【0072】
上記のマスクフィルタ25を用いて検査を行う場合には、検査対象画素上のマスクフィルタ25の設定位置を1画素ずつ変更して、毎回、マスクフィルタ25の中央の画素20Aに対応する画素を注目画素とし、フィルタ内のデータ「1」の設定位置に対応する画素を比較対象画素とする。よって、多数の比較対象画素を設定する場合でも、簡単に各比較対象画素の設定位置を特定することができる。
【0073】
つぎに、この実施例の視覚検査装置には、比較対象画素の設定情報や濃度絶対値のしきい値dhなどの検査に使用する情報(以下、「検査情報」という。)をユーザが設定しなければならない点に鑑み、適切な検査情報を簡単に設定するためのユーザインターフェースが組み込まれている。以下、この機能について詳細に説明する。
【0074】
図9は、表示部3に表示される検査情報の設定画面の例を示す。
この設定画面には、画像の表示領域100のほか、「サーチモード選択」を行うための領域101、「欠陥検出条件」を設定するための領域102、開始位置自動抽出ボタン103、画像表示切替ボタン104、OKボタン105、キャンセルボタン106などが設けられる。
【0075】
画像表示領域100には、欠陥を有するワークのモデルの濃淡画像(以下、「欠陥モデル画像」という。ここでは、先の図4に示した画像が表示された例を示す。)が表示されている。この表示は、後記する図12,13に示すように、欠陥検出画像の表示に切り替えることができる。画像表示切替ボタン104は、この表示の切替を行うためのボタンである。また、図9には示していないが、画像表示領域100内には、画像の表示倍率を選択するためのコンボボックスが設けられている。
【0076】
「サーチモード選択」の領域101は、ユーザにとっては、欠陥を検索する手法または検索方向を選択するという意味合いを持つが、実際には、比較対象画素の設定方法を選択するためのものである。この実施例では、先の図6に示した8つの方位のうちの上および下を「縦方向」とし、右および左を「横方向」とし、注目画素から見て斜め45度の各方位を「斜め方向」として、それぞれグループ分けし、これらのグループに基づき、「縦方向」「横方向」「縦・横方向」「縦・横・斜め方向」の4つのサーチモードを設定し、各サーチモードの名称をチェックボックス107とともに表示している。
【0077】
さらに、この実施例の領域101には、「マスク使用」というサーチモードが、「マスク作成」ボタン108とともに設けられている。このサーチモードは、マスクフィルタ25を用いて比較対象画素を設定する旨を示すものである。この実施例でユーザが「マスク使用」のチェックボックス107と「マスク作成」ボタン108をクリックすると、別の設定ウィンドウ(図示せず。)が開き、そのウィンドウ内でマスクフィルタ25のサイズやフィルタ内の各画素のデータの設定操作を受け付ける。また、設定に不慣れなユーザのために、別途、複数の標準のマスクフィルタ25を表す模式図を表示して、その中の1つを選択させるようにしたウィンドウを呼び出すこともできる。
【0078】
「欠陥検出条件」の設定領域102には、「開始位置」「終了位置」「濃度差」の各パラメータについて、それぞれ具体的な数値を入力するための入力ボックス109やスライダ110を含む設定部111が設けられる。
【0079】
「開始位置」は、注目画素20から最も近い比較対象画素21までの距離Iに相当し、「終了位置」は、注目画素20から最も遠い比較対象画素22までの距離Jに相当する。また「濃度差」は、濃度絶対値を照合するためのしきい値dhに相当する。これら3種類のパラメータについて、ユーザは、それぞれスライダ110の上下動または入力ボックス109への数値入力により値を設定することができる。
【0080】
なお、領域102が図9に示すように構成されるのは、「マスク使用」以外のサーチモードが選択された場合である。「マスク使用」が選択された場合の領域102には、「濃度差」の設定用の入力ボックス109および設定部111のみが設けられる。
【0081】
つぎに、開始位置自動抽出ボタン103は、画像表示領域100に表示されている欠陥モデル画像を用いて、開始位置、すなわち距離Iを自動設定するためのものである。具体的には、ユーザがこのボタン103を操作すると、画像表示領域100内での範囲指定操作が可能となり、範囲指定操作を行うと、その指定に応じて距離Iの値が自動設定される。また領域102の「開始位置」の入力ボックス109の表示やスライダ110の位置も、この設定値に対応したものとなる。
【0082】
図10は、上記の機能を利用する場合の欠陥モデル画像に対する範囲指定の具体例を示す。これらの例は、いずれも図9の画像表示領域100内の表示の一部を拡大して、欠陥に対応する箇所を指定したものである。
【0083】
図10(1)は、局所欠陥F1を対象にした範囲指定の例であって、欠陥F1の全体が含まれるような矩形領域cが設定されるように、領域cの対角の頂点となる2点a1,a2を指定している。この範囲指定により、指定範囲の幅として、矩形領域cの長い方の辺の長さが計測される。なお、局所欠陥に対しては、円状の領域による範囲指定を行って、指定された円の直径を計測することもできる。
【0084】
図10(2)は線状欠陥F3を対象にした範囲指定の例であって、欠陥F3を横切るように2点b1,b2を指定している。この場合には、指定範囲の幅として、点b1,b2間の距離を計測する。
【0085】
このようにユーザの行った範囲指定操作に応じて指定範囲の幅を計測すると、その計測値にあらかじめ定めた数値を加えた値を距離Iに設定する。よって、ユーザが画像中の検出したい欠陥を含む範囲を適切に指定すれば、その欠陥の検出に必要な「開始位置」を自動設定することが可能になる。
【0086】
さらに、この実施例の視覚検査装置では、上記の設定画面の表示下で図11に示すような手順を実行することにより、ユーザが自身の設定した検査情報が適切であるか否かを、容易に判断できるようにしている。
【0087】
以下、図11に示す処理について説明する。
この実施例では、まず、カメラ2により生成された欠陥モデル画像を入力し、画像表示領域100に表示する(ステップS1)。つぎに、ユーザが「サーチモード」や「欠陥検出条件」を設定して、画像表示切替ボタン104を操作すると、ステップS2が「YES」となり、設定された各種情報に基づき欠陥検出処理を実行する(ステップS3)。なお、このステップS3の詳細は、図5に示した手順と同様である。
【0088】
欠陥検出処理が終了すると、その処理により生成された欠陥検出画像を、それまでの欠陥モデル画像に置き換えて表示する(ステップS4)。さらにこの表示状態下で、ユーザが何らかの設定変更を行うと、ステップS5が「YES」となり、ステップS3,S4が再び実行される。以下、同様に、設定変更操作がある都度、ステップS3,S4を実行することにより、変更された設定に基づく欠陥検出処理が実行され、欠陥検出画像の表示も切り替えられる。
【0089】
前述したように、この実施例の欠陥検出処理は高速で実行可能であるので、上記の処理によれば、設定変更操作の都度、その操作に連動して欠陥検出画像の表示を切り替えることができる。よって、ユーザは、毎時の設定変更に対する欠陥検出画像により設定内容が適切であるか否かを確認し、適切であると判断した時点で確定操作(OKボタン105の操作)を行うことができる。この操作が行われると、ステップS6が「YES」となって、現在設定されている情報を確定して登録し(ステップS7)、処理を終了する。
【0090】
図12は、図9に示した設定内容で画像表示切替ボタンが操作されたときの設定画面の表示例を示す。さらに図13は、図12の設定画面で「開始位置」の値を変更した後の表示例を示す。これらの画面に表示されている欠陥検出画像を図9に示した欠陥モデル画像と比較すると、図12の例では、局所欠陥F2や線状欠陥F3は実際のものに近い状態で検出されているが、大きい方の局所欠陥F1は、実際より小さな状態で検出されている。これに対し、図13の例では、「開始位置」を大きな値に変更したことにより、いずれの欠陥とも、実際のものに近い状態で検出されている。
【0091】
上記したように、ユーザが設定内容を変更する都度、その設定内容を反映した欠陥検出画像が表示されるので、一般ユーザでも容易に欠陥検出に適した検査情報を設定することが可能になる。
【0092】
なお、「サーチモード選択」について、「縦方向」や「横方向」など比較対象画素を設定する方位を絞り込んだ場合には、検査においては、検査対象画像中の正常パターンの並び方向が選択したサーチモードに適合するように、画像を補正してから検査を行うのが望ましい。たとえば、図9の例のように縦縞パターンの画像を処理するために「縦方向」を選択した場合には、検査対象画像中のエッジ画素毎に濃度勾配方向を表す角度データを算出して、これらの角度のヒストグラムを作成し、その中のピークに対応する角度と縦方向(y軸方向)との角度差を導出する。そしてこの角度差に基づき検査対象画像を回転補正することによって、検査対象画像中の正常パターンの長さ方向を縦方向に合わせた後に図5に示した手順を実行する。このような処理により、カメラ2の視野に入るワークの姿勢にばらつきがあっても、検査対象画像を欠陥検出に適した状態に補正して、欠陥を精度良く検出することが可能になる。
【0093】
また、上記では、濃淡画像を検査対象画像とした処理を説明したが、カラー画像を対象に、注目画素と比較対象画素との間の色差を算出するようにして図6と同様の手順を実行することによって、色彩欠陥を検出することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】視覚検査装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】検査の概略手順を示すフローチャートである。
【図3】検査対象画像および欠陥検出画像の具体例を示す図である。
【図4】検査対象画像および欠陥検出画像の具体例を示す図である。
【図5】欠陥検出処理の詳細手順を示すフローチャートである。
【図6】比較対象画素の設定例を示す図である。
【図7】欠陥と欠陥以外の部位とを識別することができる理由を説明する図である。
【図8】マスクフィルタの構成例を示す図である。
【図9】検査情報の設定画面の例を示す図である。
【図10】欠陥の範囲指定の例を示す図である。
【図11】検査情報の設定時の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】ユーザの設定操作に応じて画像表示が切り替えられた例を示す図である。
【図13】ユーザの設定変更操作に応じて欠陥検出画像の表示が変化した例を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
1 本体部
2 カメラ
3 表示部
4 操作部
10 制御部
11 主記憶部
20 注目画素
21,22,23 比較対象画素
100 画像表示領域
F,F1〜F2 欠陥
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の画像をコンピュータにより処理することによって、前記検査対象物の外観上の欠陥を検出する方法であって、
検査対象の画像中の注目画素から1画素以上離れ、かつ注目画素に対して特定の位置関係にある画素を、当該注目画素の比較対象画素として設定するための設定情報を、あらかじめ登録し、
前記画像を1画素ずつ走査して、毎時の注目画素につき、それぞれ前記登録された設定情報を適用して少なくとも1つの比較対象画素を設定し、設定された比較対象画素の中に注目画素に対する画像データの差が所定の許容範囲に入る画素があるか否かを判定するとともに、前記画像データの差が前記許容範囲に入る比較対象画素はないという判定をしたとき、その時点における注目画素を欠陥を表す画素として特定し、
前記画像に対する走査が終了したとき、欠陥を表すものとして特定された画素の有無、または前記欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を出力する、
ことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項2】
前記毎時の注目画素に対する処理として、前記登録された設定情報により設定された比較対象画素を当該注目画素に順に組み合わせて、組み合わせられた画素間の画像データの差を算出するステップと、算出した差の値が前記許容範囲に入るか否かを判定するステップとを、前記差の値が許容範囲に入ると判定するか、全ての組み合わせに対する処理が終了するまで繰り返し実行し、前記差の値が許容範囲に入るという判定をしたときは前記注目画素は欠陥を表す画素ではないと判定する一方、前記差の値が許容範囲に入るという判定をする前に全ての組み合わせに対する処理を終了したときは、前記注目画素を欠陥を表す画素として特定する、
請求項1に記載された欠陥検出方法。
【請求項3】
前記設定情報として、注目画素から最も近い比較対象画素までの距離Iと、注目画素から最も遠い比較対象画素までの距離Jと、これらの距離I,Jが適用される方位を示す情報とを登録し、
前記毎時の注目画素に対して比較対象画素を設定する際には、注目画素に前記設定情報が示す方位および各距離I,Jを適用することにより、少なくとも一方位において、注目画素から距離Iを隔てた位置から注目画素から距離Jを隔てた位置までの範囲に存在する複数の画素を、比較対象画素として設定する、
請求項1または2に記載された欠陥検出方法。
【請求項4】
前記設定情報として、個々の画素にそれぞれ当該画素が比較対象画素であるか否かを示すフラグデータを対応づけたマスクフィルタとして、少なくとも中央の画素および中央の画素に隣接する画素に比較対象画素でないことを示すフラグデータを対応づけたマスクフィルタを登録し、
前記毎時の注目画素に対して比較対象画素を設定する際には、前記登録されたマスクフィルタを、その中心を前記注目画素に合わせた状態で設定し、このフィルタ内の各フラグデータとの対応関係に基づき所定数の画素を比較対象画素として設定する、
請求項1または2に記載された欠陥検出方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載された方法において、
前記設定情報を登録する処理では、設定情報の候補となる情報の入力を受け付けるステップと、欠陥を含むモデルの画像に前記入力された情報を設定情報として適用して、前記欠陥を表す画素を特定するための一連の処理を実行するステップと、欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を表示するステップとを、前記画像の表示に対して確定操作が行われるまで繰り返し実行し、前記確定操作が行われたとき、最新の入力情報を設定情報として登録する、欠陥検出方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載された方法において、
前記設定情報とともに、注目画素と比較対象画素との画像データの差に関する許容範囲を示す情報を前記コンピュータに登録する、欠陥検出方法。
【請求項7】
検査対象物を撮像するための撮像手段と、この撮像手段により生成された画像を処理して、前記検査対象物の外観上の欠陥を検出する検査実行手段を具備する装置であって、
検査対象の画像中の注目画素から1画素以上離れ、かつ注目画素に対して特定の位置関係にある画素を、当該注目画素の比較対象画素として設定することを前提として、前記比較対象画素を設定するための設定情報の入力を受け付ける入力手段と、入力された設定情報を登録する登録手段とを、さらに具備し、
前記検査実行手段は、
前記撮像手段により生成された検査対象物の画像を1画素ずつ走査して、毎時の注目画素につき、それぞれ前記登録手段に登録された設定情報を適用して少なくとも1つの比較対象画素を設定し、設定された比較対象画素の中に注目画素に対する画像データの差が所定の許容範囲に入る画素があるか否かを判定するとともに、前記画像データの差が前記許容範囲に入る比較対象画素はないという判定をしたとき、その時点における注目画素を欠陥を表す画素として特定する欠陥画素特定手段と、
前記画像に対する走査が終了したとき、欠陥を表すものとして特定された画素の有無、または欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を出力する出力手段とを、
具備することを特徴とする視覚検査装置。
【請求項8】
前記欠陥画素特定手段は、前記毎時の注目画素に対し、前記登録された設定情報により設定された比較対象画素を当該注目画素に順に組み合わせて、組み合わせられた画素間の画像データの差を算出するステップと、算出した差の値が前記許容範囲に入るか否かを判定するステップとを、前記差の値が許容範囲に入ると判定するか、全ての組み合わせに対する処理が終了するまで繰り返し実行し、前記差の値が許容範囲に入るという判定をしたときは前記注目画素は欠陥を表す画素ではないと判定する一方、前記差の値が許容範囲に入るという判定をする前に全ての組み合わせに対する処理を終了したときは、前記注目画素を欠陥を表す画素として特定する、
請求項7に記載された視覚検査装置。
【請求項9】
前記入力手段は、前記注目画素から最も近い比較対象画素までの距離Iと、注目画素から最も遠い比較対象画素までの距離Jと、これらの距離I,Jが適用される方位を示す情報とを、それぞれ入力し、
前記欠陥画素特定手段は、毎時の注目画素に対し、それぞれ前記登録手段に登録された方位および各距離I,Jを適用することにより、少なくとも一方位において、注目画素から距離Iを隔てた位置から注目画素から距離Jを隔てた位置までの範囲に存在する複数の画素を、比較対象画素として設定する、
請求項7または8に記載された視覚検査装置。
【請求項10】
前記入力手段は、個々の画素にそれぞれ当該画素が比較対象画素であるか否かを示すフラグデータを対応づけたマスクフィルタを設定する操作を、少なくとも中央の画素および中央の画素に隣接する画素に比較対象画素でないことを示すフラグデータを対応づけることを条件として受け付ける手段として構成され、
前記欠陥画素特定手段は、毎時の注目画素に対し、それぞれ前記登録手段に登録されたマスクフィルタを、その中心を前記注目画素に合わせた状態で設定し、このフィルタ内の各フラグデータとの対応関係に基づき所定数の画素を比較対象画素として設定する、
請求項7または8に記載された視覚検査装置。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載された装置において、
前記入力手段は、前記設定情報の候補となる情報の入力を受け付ける手段と、この手段が入力した情報を確定する操作を受け付ける手段とを具備し、
前記撮像手段により欠陥を含むモデルの画像が生成され、前記入力手段より設定情報の候補となる情報が入力されたことに応じて、前記モデルの画像に前記入力された設定情報の候補を適用して前記欠陥画素特定手段による処理を実行し、欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を表示するテスト実行手段と、
前記テスト実行手段による画像表示に対して前記入力手段が確定操作を受け付けたとき、最新の入力情報を設定情報として登録手段に登録する登録処理手段とを、
さらに具備する視覚検査装置。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載された装置において、
前記入力手段は、前記注目画素と比較対象画素との画像データの差に関する許容範囲を示す情報の入力を受け付ける手段を、さらに含み、
前記登録手段は、前記比較対象領域の設定情報および画像データの差に関する許容範囲につき入力手段が受け付けた入力情報を登録する手段として、構成される、視覚検査装置。
【請求項1】
検査対象物の画像をコンピュータにより処理することによって、前記検査対象物の外観上の欠陥を検出する方法であって、
検査対象の画像中の注目画素から1画素以上離れ、かつ注目画素に対して特定の位置関係にある画素を、当該注目画素の比較対象画素として設定するための設定情報を、あらかじめ登録し、
前記画像を1画素ずつ走査して、毎時の注目画素につき、それぞれ前記登録された設定情報を適用して少なくとも1つの比較対象画素を設定し、設定された比較対象画素の中に注目画素に対する画像データの差が所定の許容範囲に入る画素があるか否かを判定するとともに、前記画像データの差が前記許容範囲に入る比較対象画素はないという判定をしたとき、その時点における注目画素を欠陥を表す画素として特定し、
前記画像に対する走査が終了したとき、欠陥を表すものとして特定された画素の有無、または前記欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を出力する、
ことを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項2】
前記毎時の注目画素に対する処理として、前記登録された設定情報により設定された比較対象画素を当該注目画素に順に組み合わせて、組み合わせられた画素間の画像データの差を算出するステップと、算出した差の値が前記許容範囲に入るか否かを判定するステップとを、前記差の値が許容範囲に入ると判定するか、全ての組み合わせに対する処理が終了するまで繰り返し実行し、前記差の値が許容範囲に入るという判定をしたときは前記注目画素は欠陥を表す画素ではないと判定する一方、前記差の値が許容範囲に入るという判定をする前に全ての組み合わせに対する処理を終了したときは、前記注目画素を欠陥を表す画素として特定する、
請求項1に記載された欠陥検出方法。
【請求項3】
前記設定情報として、注目画素から最も近い比較対象画素までの距離Iと、注目画素から最も遠い比較対象画素までの距離Jと、これらの距離I,Jが適用される方位を示す情報とを登録し、
前記毎時の注目画素に対して比較対象画素を設定する際には、注目画素に前記設定情報が示す方位および各距離I,Jを適用することにより、少なくとも一方位において、注目画素から距離Iを隔てた位置から注目画素から距離Jを隔てた位置までの範囲に存在する複数の画素を、比較対象画素として設定する、
請求項1または2に記載された欠陥検出方法。
【請求項4】
前記設定情報として、個々の画素にそれぞれ当該画素が比較対象画素であるか否かを示すフラグデータを対応づけたマスクフィルタとして、少なくとも中央の画素および中央の画素に隣接する画素に比較対象画素でないことを示すフラグデータを対応づけたマスクフィルタを登録し、
前記毎時の注目画素に対して比較対象画素を設定する際には、前記登録されたマスクフィルタを、その中心を前記注目画素に合わせた状態で設定し、このフィルタ内の各フラグデータとの対応関係に基づき所定数の画素を比較対象画素として設定する、
請求項1または2に記載された欠陥検出方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載された方法において、
前記設定情報を登録する処理では、設定情報の候補となる情報の入力を受け付けるステップと、欠陥を含むモデルの画像に前記入力された情報を設定情報として適用して、前記欠陥を表す画素を特定するための一連の処理を実行するステップと、欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を表示するステップとを、前記画像の表示に対して確定操作が行われるまで繰り返し実行し、前記確定操作が行われたとき、最新の入力情報を設定情報として登録する、欠陥検出方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載された方法において、
前記設定情報とともに、注目画素と比較対象画素との画像データの差に関する許容範囲を示す情報を前記コンピュータに登録する、欠陥検出方法。
【請求項7】
検査対象物を撮像するための撮像手段と、この撮像手段により生成された画像を処理して、前記検査対象物の外観上の欠陥を検出する検査実行手段を具備する装置であって、
検査対象の画像中の注目画素から1画素以上離れ、かつ注目画素に対して特定の位置関係にある画素を、当該注目画素の比較対象画素として設定することを前提として、前記比較対象画素を設定するための設定情報の入力を受け付ける入力手段と、入力された設定情報を登録する登録手段とを、さらに具備し、
前記検査実行手段は、
前記撮像手段により生成された検査対象物の画像を1画素ずつ走査して、毎時の注目画素につき、それぞれ前記登録手段に登録された設定情報を適用して少なくとも1つの比較対象画素を設定し、設定された比較対象画素の中に注目画素に対する画像データの差が所定の許容範囲に入る画素があるか否かを判定するとともに、前記画像データの差が前記許容範囲に入る比較対象画素はないという判定をしたとき、その時点における注目画素を欠陥を表す画素として特定する欠陥画素特定手段と、
前記画像に対する走査が終了したとき、欠陥を表すものとして特定された画素の有無、または欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を出力する出力手段とを、
具備することを特徴とする視覚検査装置。
【請求項8】
前記欠陥画素特定手段は、前記毎時の注目画素に対し、前記登録された設定情報により設定された比較対象画素を当該注目画素に順に組み合わせて、組み合わせられた画素間の画像データの差を算出するステップと、算出した差の値が前記許容範囲に入るか否かを判定するステップとを、前記差の値が許容範囲に入ると判定するか、全ての組み合わせに対する処理が終了するまで繰り返し実行し、前記差の値が許容範囲に入るという判定をしたときは前記注目画素は欠陥を表す画素ではないと判定する一方、前記差の値が許容範囲に入るという判定をする前に全ての組み合わせに対する処理を終了したときは、前記注目画素を欠陥を表す画素として特定する、
請求項7に記載された視覚検査装置。
【請求項9】
前記入力手段は、前記注目画素から最も近い比較対象画素までの距離Iと、注目画素から最も遠い比較対象画素までの距離Jと、これらの距離I,Jが適用される方位を示す情報とを、それぞれ入力し、
前記欠陥画素特定手段は、毎時の注目画素に対し、それぞれ前記登録手段に登録された方位および各距離I,Jを適用することにより、少なくとも一方位において、注目画素から距離Iを隔てた位置から注目画素から距離Jを隔てた位置までの範囲に存在する複数の画素を、比較対象画素として設定する、
請求項7または8に記載された視覚検査装置。
【請求項10】
前記入力手段は、個々の画素にそれぞれ当該画素が比較対象画素であるか否かを示すフラグデータを対応づけたマスクフィルタを設定する操作を、少なくとも中央の画素および中央の画素に隣接する画素に比較対象画素でないことを示すフラグデータを対応づけることを条件として受け付ける手段として構成され、
前記欠陥画素特定手段は、毎時の注目画素に対し、それぞれ前記登録手段に登録されたマスクフィルタを、その中心を前記注目画素に合わせた状態で設定し、このフィルタ内の各フラグデータとの対応関係に基づき所定数の画素を比較対象画素として設定する、
請求項7または8に記載された視覚検査装置。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれかに記載された装置において、
前記入力手段は、前記設定情報の候補となる情報の入力を受け付ける手段と、この手段が入力した情報を確定する操作を受け付ける手段とを具備し、
前記撮像手段により欠陥を含むモデルの画像が生成され、前記入力手段より設定情報の候補となる情報が入力されたことに応じて、前記モデルの画像に前記入力された設定情報の候補を適用して前記欠陥画素特定手段による処理を実行し、欠陥を表す画素の特定結果を表す画像を表示するテスト実行手段と、
前記テスト実行手段による画像表示に対して前記入力手段が確定操作を受け付けたとき、最新の入力情報を設定情報として登録手段に登録する登録処理手段とを、
さらに具備する視覚検査装置。
【請求項12】
請求項7〜11のいずれかに記載された装置において、
前記入力手段は、前記注目画素と比較対象画素との画像データの差に関する許容範囲を示す情報の入力を受け付ける手段を、さらに含み、
前記登録手段は、前記比較対象領域の設定情報および画像データの差に関する許容範囲につき入力手段が受け付けた入力情報を登録する手段として、構成される、視覚検査装置。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図9】
【図10】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−133744(P2010−133744A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307926(P2008−307926)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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