説明

欠陥検出装置

【課題】電子写真用クリーニングブレード等の板状体の欠陥をより高速で検出する。
【解決手段】光路2に置かれた透明または半透明の板状体1の欠陥を検出するために、カメラ(A)11に内蔵するプリズムからの反射光を、カメラ(B)12によって撮像し、カメラ(B)12のプリズムからの反射光を、カメラ(A)11によって撮像する。カメラ(A)11とカメラ(B)12の光軸が、各カメラが撮像する視野長の70〜90%分、カメラの中央部位に配置した板状体1の長手方向にずれるように配置することで、カメラ1台の場合に比べて2倍近い速度の欠陥検出を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用クリーニングブレード等の透明又は半透明の板状体に光を照射して、板状体の欠陥を検出する欠陥検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板状体の欠陥を判別する方法として、従来では人手で行う方法、あるいは検査装置を用いて行う方法があった。人手で行う方法は、製品の高精度化に伴い、より微小な欠陥を発見する必要があり、そのために長時間集中しなければならない根気のいる作業となり、精神的な負担も大きくなり疲労も倍増することになる。加えて、視覚による検査は、検査員の主観的な検査判定であって、検査員の判断に依存し、検査員が異なる場合や、同じ検査員であっても、検査時間の推移によって、基準が変化する可能性がある。
【0003】
また、大量生産された板状体の検査をする必要が生じた場合には、検査速度が生産速度に追いつかない可能性が生じるようになった。
【0004】
検査員に代わる方法として、特許文献1に開示されたように、CCDカメラを用いた電子撮像装置による外観検査方法等が知られている。これらは、透明体に光を照射し、透明体に欠陥があった場合には、その欠陥部分で光の乱反射が起こることを利用するもので、透過光を撮像装置により撮影し、映像信号化し、その映像信号を処理する。そして、透過させる光の光量を逐次変化させることにより、その変化量に基づいて欠陥を検出する。
【0005】
しかし、より高速に欠陥の判定するためには、これまでの技術では不十分であり、さらなる技術的ブレークスルーを必要としていた。
【特許文献1】特開平4−305144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光量を逐次変化させることにより欠陥部を検出するという方式は、1回の撮影においてカメラの撮影領域内に入るような微小な製品に対しては検査時間が掛からず有効な手段である。しかし、大量生産された板状体の検査をする必要が生じた場合には、検査速度が生産速度に追いつかないため、整合性のある装置構成を必要とする。
【0007】
本発明は上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、電子写真用クリーニングブレード等の板状体の欠陥をより高速で検出することのできる欠陥検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の欠陥検出装置は、透明又は半透明の板状体の欠陥を検出する欠陥検出装置において、第1のプリズムを内蔵する第1のカメラと、第2のプリズムを内蔵する第2のカメラと、前記第1及び前記第2のカメラにそれぞれ入光する第1及び第2の投光装置と、前記第1のプリズムからの反射光により前記第2のプリズムを経て前記第2のカメラによって撮像された前記板状体の画像と、前記第2のプリズムからの反射光により前記第1のプリズムを経て前記第1のカメラによって撮像された前記板状体の画像とを画像処理する画像処理手段と、を有し、前記第1のカメラと前記第2のカメラの光軸が、各カメラが撮像する視野長の70〜90%に等しい距離だけ前記板状体の長手方向にずれるように、前記第1及び前記第2のカメラが配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
電子写真用クリーニングブレード等の板状体を、その長手方向が2つのカメラの光軸に直角になるように、カメラ間のほぼ中央に配置し、相対する2つのカメラの光軸を約2画面分ずらして板状体の被測定部を撮像する。各カメラはプリズムを内蔵し、プリズムの反射光によって撮像する約2画像分の板状体表面の欠陥を同時に画像処理することで、より高速で簡略かつ信頼性の高い効率的な製品検査を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1の(a)に示すように、透明又は半透明の板状体1の被測定部であるエッジ部1aの欠陥を第1のカメラ(A)11及び第2のカメラ(B)12を用いて検出する。すなわち、カメラ(A)11に内蔵する第1のプリズムからの反射光をカメラ(B)12によって受光し、カメラ(B)12に内蔵する第2のプリズムからの反射光をカメラ(A)11によって受光する。
【0012】
また、カメラ(A)11に入光する第1の投光装置と、カメラ(B)12に入光する第2の投光装置を有する。そして、カメラ(A)11、カメラ(B)12の反射光の光路2の中央部にエッジ部1aが位置するように板状体1を配置する。
【0013】
各カメラに内蔵するプリズムの反射面は、30〜70%の透過率を有する透過面である。
【0014】
また、カメラ(A)11及びカメラ(B)12と投光装置、又は板状体1を、視野長の2倍の70〜90%の長さ(間隔)で板状体1の長手方向(Y方向)に1タクト移動(間欠移動)させる移動機構が設けられる。
【0015】
図2に示すように、検査ステージ上の透明又は半透明の板状体1を挟んでカメラ(A)11の受光面13とカメラ(B)12の受光面14を配置する。後述するように、2つのカメラ11、12は、撮像する視野における板状体1の長手方向にほぼ長さ分に相当する距離だけ、光軸をずらしておく。
【0016】
図3は、カメラ(B)12に内蔵するプリズム3を示す。カメラ(B)12に内蔵するプリズム3に、投光装置から光4を照射すると、光4はプリズム3により90度曲がって反射される。その反射光5が板状体1のエッジ部1aを経てカメラ(A)11に内蔵されたプリズムを透過して、カメラ(A)11によって撮像される。同時にカメラ(A)11の投光装置から、カメラ(A)11のプリズムに光を照射すると、照射された光が90度曲がって、反射光が板状体1のエッジ部1aを経てカメラ(B)12に内蔵するプリズム3を透過し、透過光6がカメラ(B)12によって撮像される。
【0017】
図4の(a)に示すように、カメラ(A)11とカメラ(B)12の光軸11a、12aの撮像幅(視野長)の70〜90%に相当するΔYだけ板状体1の長手方向にずらしてある。このようなオーバ−ラップシフトを設けることで、1回の撮像で従来の約2倍の画像処理が可能となる。
【0018】
なお、プリズムを経て撮像されるので、少なくともプリズムで反射される光量に近い光量の透過光が必要である。このため、各カメラに内蔵するプリズムの反射面は透過率30〜70%の透過面とする。
【0019】
視野長の重なり部分は、1つの視野長に等しく重なる場合から、重なり無く2つ分の視野長まで考えられるが、等しく重なるのでは、2系列のカメラ及び投光装置を使用する意味が無い。また、キッチリ2つ分の視野のズレを維持しつつ、撮像部位をずらしていくことは撮像しない部位の発生が考えられるため望ましくない。従って、撮像幅(視野長)の2倍長の70〜90%分ずらすように設定するが、ずらし幅は、2系列のカメラと投光装置を同時に被検体である板状体1に対して相対的にその長手方向に1タクト移動(間欠移動)させる移動機構の機械的な精度に依存する。極めて機械的精度が高ければ、撮像幅(視野長)の2倍長分ずらしつつ撮像できるが、高速での検査を考えた場合の安全性を考慮すると90〜95%までずらすことが可能である。高速性を優先し機械的精度を犠牲にした設計であれば、ずらし幅を十分に取る必要があるので、70%程度と考えられる。
【0020】
本実施形態に使用する各部品要素の具体例を説明する。
【0021】
カメラは、シーアイエス社製のエリアセンサカメラであり、プリズムは、モリテックス社製のものである。投光装置は、モリテックス社製のハロゲン投光装置であり、100W出力のハロゲンランプを用い、色温度3、100K、光量出力は0〜100%に設定可能な装置である。
【0022】
カメラの入射光、反射光、投光装置からの入光の口は、3方向設けられており、2つのカメラの相対する光軸は、約2枚の撮像幅(画角とも言う)分ずらして配置固定されている。
【0023】
板状体の被測定部を連続的に観察するためには2つのカメラの固定システムを撮像幅分ずらす移動機構と連動させるか、あるいは、板状体をずらす移動機構を設ける。板状体の固定は、例えばクレーニングブレードのブレード部材を支持する支持部を把持して行う。板状体をずらす移動機構としては、板状体の支持部を把持した状態で、その全体をずらす機構や、支持部の把持とスライド式に支持部を小刻みにずらす機構が考えられる。
【0024】
欠陥検出の対象とする板状体は、電子写真装置において使用するクリーニングブレード、現像ブレード等であり、ブレード部材としてはウレタンやシリコーンゴムを主材とするものである。
【0025】
本実施形態の欠陥検査(ブレードとしての機能の保持の1つとしての外観を観察するので、機能検査ともいう)の動作フローの一例を図5に基づいて説明する。
【0026】
まず、初期設定状態を確認する(ステップ101)。
【0027】
投入のオートハンドを下降させワーク(クリーニングブレード)をクランプする(ステップ102〜ステップ104)。
【0028】
投光装置から光が照射され、検査を開始し、ワークを把持したスライダが、撮像タイミングで検査部位をスライドする(ステップ105)。
【0029】
検査完了のシグナルを受け、オートハンドが上昇し、検査完了品置き場に受け渡す(ステップ106、ステップ107)。このとき、検査品、OK、NGの判断に従い、置き場が異なる。
【0030】
同時に、表示板に結果が表示される(ステップ108)。そして、始めの動作に戻る。
【0031】
本実施形態において、各プリズムは投光装置からの光を受光する部位に配置され、もう一方のカメラに向けて反射されるよう設定される。もう一方のカメラに配置されたプリズムで、1部は反射されるが、1部はカメラの撮像部に照射され、カメラ間に板状体の被測定部が配置されているので、2つのカメラによって撮像される。
【0032】
従って、プリズムの面は全反射せず、他方のカメラに光が投射される面構成である。反射面は、面精度1/4λで、出射面にはマルチコートされているものを選択する。これらの面をそれぞれ重ねて、キューブ型にすることにより、光の分離を可能にさせるように設計されている。
【0033】
また、板状体の特徴的な欠陥画像を取り込めるよう、カメラにはレンズが組み込まれてもよい。レンズ倍率、レンズ光量絞り、投光装置の光量、投光装置からの光の周波数、光源装置の照射範囲等を調整する。
【0034】
例えば1つのカメラの撮像幅(画角)が約2.4mmになるようにし、2つのカメラの光軸をずらす配置にすることで、0.5mm程度重なるように設定する。これによって、1つのカメラのシステムなら1回の撮像で2.4mmの距離を移動するところを、1回で3.8mmの間隔で間欠移動するので、約6割の高速処理が可能になる。
【実施例】
【0035】
図1に示すように、カメラ(A)11とのカメラ(B)12のほぼ中央に、板状体(クリーニングブレード)1を、そのエッジ部1aが撮像できるように配置する。エッジ位置は光路2内になるように設定する。
【0036】
カメラ(A)11、カメラ(B)12のそれぞれの被写界深度が合う位置に板状体1を配置する。被写界深度は0.3mmのものを選択したが、エッジ位置を撮影可能であればこの距離に限定されない。
【0037】
またエッジ位置を撮影するため、カメラ(A)11、カメラ(B)12はそれぞれ45度傾けて設定した。この角度は、エッジ位置を撮影可能な角度であればこれに限定するものではない。
【0038】
2つの投光装置よりの光が、カメラ(A)11、カメラ(B)12のプリズムに入射する。プリズムより90度に反射された光が相対する位置に配置されたカメラに向かった方向の光路2に照射され、カメラに入射する。入射した光はプリズムを透過し、カメラによって板状体1の画像が撮像される。
【0039】
このとき、2つのカメラの光軸は1画像分弱ずらして配置されているので、1回で約2画像分の処理ができる。撮像された画像は、記憶・処理装置(画像処理手段)に転送され、転送された画像番号は記憶・処理装置に記憶される。
【0040】
投光装置とカメラは、ほぼ同じ面上に配置されており、板状体は、その端部の測定部位が長手方向に順次撮像され、欠陥の有無が評価される。長手方向への送り出しはステップモーター(移動機構)により、カメラの撮像範囲の約2倍量を1回の撮像ごとに行い全長を検査する。
【0041】
本実施例では、1撮像幅(視野長)として、2.4mm、光軸のズレによる2撮像幅(視野長)の重なりを0.5mmに設定して行った。
【0042】
カメラは、1画像に付き約30万画素の能力のものを採用したが、板状体(クリーニングブレード)の欠陥を検出可能であればこのカメラ仕様に限定されるものではない。
【0043】
記憶・処理装置は、駆動制御装置(移動機構)と連動させ、設定した計測分解能に従い駆動モータ(不図示)を制御し、検査位置を順次変えて撮像し、製品の良否を判定し、表示装置に表示する。
【0044】
比較例として、カメラシステムを1系列のみとした装置を用いて、同様の欠陥検査を行った。各構成要素の機能は同じであるから、結果の判定能力は同じであった。しかし、処理時間は約2倍であった。
【0045】
この結果より、本実施例における欠陥検出装置は、比較例に比べて約2倍の速度の処理が可能であることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】一実施例による欠陥検出装置を示す模式図である。
【図2】図1の装置による撮像状態を示す説明図である。
【図3】プリズムを説明する図である。
【図4】カメラ光軸のずれを説明するものであり、(a)は2つのカメラの光軸位置を示す模式図、(b)は(a)の円Cで示す部位を拡大して示す図である。
【図5】板状体の欠陥を検出する工程を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
1 板状体
2 光路
3 プリズム
4 投光装置による入光する光
5 反射光
6 透過光
11 カメラ(A)
12 カメラ(B)
13 カメラ(A)の受光面
14 カメラ(B)の受光面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明又は半透明の板状体の欠陥を検出する欠陥検出装置において、
第1のプリズムを内蔵する第1のカメラと、
第2のプリズムを内蔵する第2のカメラと、
前記第1及び前記第2のカメラにそれぞれ入光する第1及び第2の投光装置と、
前記第1のプリズムからの反射光により前記第2のプリズムを経て前記第2のカメラによって撮像された前記板状体の画像と、前記第2のプリズムからの反射光により前記第1のプリズムを経て前記第1のカメラによって撮像された前記板状体の画像とを画像処理する画像処理手段と、を有し、
前記第1のカメラと前記第2のカメラの光軸が、各カメラが撮像する視野長の70〜90%に等しい距離だけ前記板状体の長手方向にずれるように、前記第1及び前記第2のカメラが配置されていることを特徴とする欠陥検出装置。
【請求項2】
各プリズムの反射面が、30〜70%の透過率を有する透過面であることを特徴とする請求項1記載の欠陥検出装置。
【請求項3】
前記カメラと前記投光装置、又は前記板状体を、前記視野長の2倍の70〜90%の間隔で、前記板状体の長手方向に間欠移動させる移動機構を有することを特徴とする請求項1又は2記載の欠陥検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−298497(P2008−298497A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142806(P2007−142806)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】