説明

欠陥検出装置

【課題】出来るだけ簡易な処理を用いて、表面粗さに差異を生じる表面欠陥を高速かつ効率的に検出する欠陥検出装置を提供すること。
【解決手段】被検査体Tに照射光を照射するアレイ状の光源3と、照射光が被検査体Tの表面で反射した反射光を検出する撮像手段2と、を備え、被検査体Tの表面に存在し正常面と粗度が異なる表面欠陥Dを検出する欠陥検出装置1において、アレイ状の光源3は、異なる特性を有する少なくとも3種類の照射光を照射するものであり、撮像手段2は、表面欠陥Dが鏡面状である場合、表面欠陥Dで反射した少なくとも3種類の照射光のうち特定の1種類又は2種類の照射光の受光量が残りの照射光の受光量よりも大きくなるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の表面に光を照射して表面欠陥を検出する欠陥検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば圧延材など、金属材料からなる被検査体の表面に存在する疵(以下、表面欠陥という)を精度良く検出しようとする技術が、従来から数多く開発されてきた。この表面欠陥を検出する技術として、光源を用いた欠陥検出方法がある。この欠陥検出方法では、被検査体の表面に光を照射すると共に、被検査体の表面で反射した反射光を画像としてカメラで撮像(検出)する。その上で、撮像された画像内の輝度値分布を検出し、検出した輝度分布に基づいて表面欠陥の位置が検出される。例えば、光源には、白色光や、赤色や青色の特定波長光、又は偏光を発するものが用いられている。
【0003】
このように光源を用いて被検査体の表面欠陥を検出する技術として、特許文献1及び特許文献2に開示の技術がある。
特許文献1に開示の欠陥検査装置は、金属試料表面を3つの異なる仰角位置から照明する照明手段と、該照明手段の各位置からの反射照明による画像を上方より撮影する撮影手段と、各位置からの反射照明による撮影画像に、それぞれR、G、Bを割当て、各画像を入力する入力手段と、入力された各画像を合成した合成画像に基づいて欠陥を検出する画像処理手段とを備えた金属試料表面の欠陥検査装置であって、最大仰角位置の照明手段により照明して、前記撮影手段により撮影した画像を抜き出す手段と、抜き出した画像を通常の金属試料表面の輝度より高い閾値で2値化する手段と、作成された2値化画像に基づいて欠陥を判定する手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0004】
また、特許文献2に開示の金属表面検査装置は、同一の金属表面を、高角度、中角度及び低角度の各照明を行なう照明手段と、前記高角度、中角度及び低角度の各照明の下で、前記金属表面を上方より撮影する撮影手段と、撮影して得られた各画像データに、R、G、Bのいずれかをそれぞれ割り当てた3つの画像データを合成する合成手段と、合成されたRGBカラー画像に基づいて、金属の表面状態を検出する金属表面検査装置において、前記中角度及び低角度の両照明下における反射強度が大きい中・低角度照明反射部のみの存在から、エッジを有する欠陥を識別し、前記高角度照明下における反射強度が表面部より大きい高角度照明反射部のみの存在から接触疵を識別すると共に、前記中・低角度照明反射部及び前記高角度照明反射部の近接存在から付着異物を識別する手段を備えていることを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−162150号公報
【特許文献2】特開2001−21500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に開示の技術は、正常面と比較して表面形状が大きく変化するような表面欠陥に対しては、光源からの照明光の反射角が大きく変動するので有効である。しかし、正常面とは表面形状の差が小さく、表面の粗さが異なるだけの表面欠陥の場合は、エリアセンサカメラに入射する反射照明光の総光量はほとんど変化しない。その場合は、カメラでの撮像画像で十分なコントラストを得ることができず、従って表面欠陥を検出することは困難となる。
【0007】
また、上記特許文献とは別に、一般的に、被検査体表面の粗さ変化を検出する検査手法として偏光を用いる方法もある。しかし、被検査体が金属のように異方性のある反射面を有する場合には、偏光方向が変わってしまい十分に効果的な検査ができない場合がある。これに加えて、偏光を用いる方法では、カメラ視野端など角度がついた部分に対応する画像では感度に差が出るという欠点もあるということを、本願発明者らは実験を通じて知見している。
【0008】
上記特許文献の検査手法では検出が困難であると説明した表面粗さが異なるだけの表面欠陥に関して、表面欠陥以外の正常部分が粗面であれば、異常部分である表面欠陥は鏡面に近いことが多い。よって、被検査体表面で反射した照射光の一部である正反射だけを検出するように光源とカメラの位置を限定することで、表面欠陥の検出は可能になると考えられる。
【0009】
実際に、一般的な検査手法では検出できなかった金属表面の粗さが変化する表面欠陥に対して、カメラレンズのF値を極力小さくし(明るいカメラレンズを用い)、光源をF値にあわせた小さなものを用いることで表面欠陥の検出は可能となっている。しかしながら、F値と光源を小さくしたことによってカメラの有効視野が限られ、カメラの台数及び光源の数を増加しなくてはならず検査装置が複雑化かつ大型化してしまう。よって、当該検査装置のインラインへの適用は、非常に困難となる。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みて、出来るだけ簡易な処理を用いて、表面粗さに差異を生じる表面欠陥を高速かつ効率的に検出する欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の技術的手段を採用した。
本発明に係る欠陥検出装置は、被検査体に照射光を照射するアレイ状の光源と、前記照射光が被検査体の表面で反射した反射光を検出する撮像手段と、を備え、前記被検査体の表面に存在し正常面と粗度が異なる表面欠陥を検出する欠陥検出装置であって、前記アレイ状の光源は、異なる特性を有する少なくとも3種類の照射光を照射するものであり、前記撮像手段は、前記表面欠陥が鏡面状である場合、前記表面欠陥で反射した少なくとも3種類の照射光のうち特定の1種類又は2種類の照射光の受光量が残りの照射光の受光量よりも大きくなるように配置されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る欠陥検出装置は、被検査体に照射光を照射するアレイ状の光源と、前記照射光が被検査体の表面で反射した反射光を検出する撮像手段と、を備え、前記被検査体の表面に存在し正常面と粗度が異なる表面欠陥を検出する欠陥検出装置であって、前記アレイ状の光源は、異なる特性を有する少なくとも3種類の照射光を照射するものであり、前記撮像手段は、前記正常面が鏡面状である場合、前記正常面で反射した少なくとも3種類の照射光のうち特定の1種類又は2種類の照射光の受光量が残りの照射光の受光量よりも大きくなるように配置されていることを特徴とする。
【0013】
ここで、好ましくは、前記アレイ状の光源は、3種類の照射光に対応する照射光源を、隣り合う照射光が同種類とならないように順次配置することで構成され、前記撮像手段は、前記照射光源の光源幅W’との間で次式の関係を満たす視野幅Wを有するとよい。
【0014】
【数1】

【0015】
また、好ましくは、前記撮像手段は、前記照射光が鏡面で反射するときの散乱角φとの間で次式の関係を満たすような有効開口θを有するとよい。
【0016】
【数2】

【0017】
また、好ましくは、前記少なくとも3種類の照射光は、赤色、緑色、青色の3種類の照射光であるとよい。
また、好ましくは、前記撮像手段は、前記照射光が鏡面で反射するときの散乱角φとの間で次式の関係を満たすような有効開口θを有し、前記被検査体の鏡面以外の粗面で反射した反射照射光を白色として検出するとよい。
【0018】
【数3】

【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、出来るだけ簡易な処理を用いて、表面粗さに差異を生じる表面欠陥を高速かつ効率的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態による欠陥検出装置の概略構成を示す図であり、(a)は撮像カメラ及びアレイ光源の配置を示す図、(b)はアレイ光源の構成を示す図である。
【図2】アレイ光源からの照射光の反射特性を示す図であり、(a)は粗面での反射特性を示す図、(b)は鏡面での反射特性を示す図である。
【図3】撮像カメラ及びアレイ光源の光学的な配置を示す概略図である。
【図4】本実施形態による欠陥検出装置のシミュレーション結果を示す図であり、(a)は正常面が粗面で表面欠陥が完全鏡面である場合の結果を示す図、(b)は正常面が粗面で表面欠陥が若干粗面である場合の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づき説明する。なお、以下の説明では、同一の構成要素には同一の符号を付している。また、同一の構成要素に関しては、名称も機能も同じである。したがって、同一のものについての詳細な説明は繰返さない。
図1(a)を参照して、本発明の実施形態による欠陥検出装置1の構成について説明する。図1(a)は、被検査体Tと、被検査体Tの上方に配置された欠陥検出装置1の撮像手段2(撮像カメラ2A、撮像レンズ2B)及びアレイ光源3とを示している。なお、被検査体Tの表面において白抜きで示される部分は、アレイ光源3からの照射光が照射された範囲を示している。
【0022】
被検査体Tは、例えば、表面加工が施された圧延材などの金属材料であって、その表面は、酸処理又はブラスト処理等により粗面となるように加工されている。被検査体Tにおいて、粗面に加工された面は正常面であるが、被検査体Tの加工工程で、この正常面に押し込み疵などの表面欠陥Dが形成されることがある。押し込み疵は、粗面を上方から押しつぶすように押さえつけることで形成される疵であるため、ほぼ鏡面をなす(鏡面状の)表面欠陥Dとなっている。
【0023】
以下に説明する欠陥検出装置1は、正常面が粗面となるように加工された被検査体Tに形成された鏡面状の表面欠陥Dを効率よく検出することができる。これに限らず、本実施形態による欠陥検出装置1は、粗面内に形成された鏡面の疵、及び鏡面内に形成された粗面の疵など、正常面に対して粗さが変化する疵(表面欠陥)を効率良く検出するものである。
【0024】
なお、本明細書の最後で述べるが、本願発明の技術は、正常面が鏡面で表面欠陥が粗面である場合にも適用できる。
欠陥検出装置1は、被検査体T上に配置された撮像手段2(撮像カメラ2A、撮像レンズ2B)と、アレイ光源3と、撮像手段2及びアレイ光源3の動作を制御する制御部(図示せず)とを有している。
【0025】
制御部は、アレイ光源3を点灯させて被検査体Tに照射光を照射し、撮像カメラ2Aによって被検査体Tで反射した反射照射光を撮像する。さらに制御部は、撮像カメラ2Aで撮像した反射照射光の画像から、画像処理によって表面欠陥Dを検出する。この制御部の動作については、アレイ光源3及び撮像カメラ2Aなど、欠陥検出装置1の構成を説明した後に詳しく説明する。
【0026】
図1(b)は、アレイ光源3の構成を示す図である。アレイ光源3は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3つの色(特性)の発光セル4(4R,4G,4B)が、所定の配列単位で周期的に繰り返し直線状に配置されて構成される。本実施形態において、各発光セル4R,4G,4Bの幅(光源幅)W’は、例えば10mmである。
図1(b)に示すように、アレイ光源3の発光セル4は、紙面に向かって左側からR,G,Bの順番を繰り返して配列されている。本実施形態においてアレイ光源3は、このR,G,Bの順番での発光セル4R,4G,4Bの組み合わせを所定の配列単位として、当該配列単位が3回繰り返されて構成されている。このため、アレイ光源3は、R,G,Bの発光セル4R,4G,4Bがそれぞれ3個ずつ用いられて、合計9個の発光セル4で構成されている。本実施形態によるアレイ光源3において、3種類の照射光に対応する照射光源は、隣り合う照射光が同種類とならないように順次配置され、同色(同種)の照射光を発する発光セル4が隣り合わないように配列されている。
【0027】
各発光セル4は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれかの光を発する発光ダイオード(LED)で構成されている。しかし、赤色、緑色、青色の各色のフィルムを用意し、それらフィルタに白色光を透過させることによっても、R,G,B各色の発光セル4R,4G,4Bを構成することができる。
図1(a)に戻って、このように構成されたアレイ光源3は、アレイ光源3の長手方向が被検査体Tの表面に形成された表面欠陥Dを横切るように、被検査体Tから高さLの位置で各発光セル4を被検査体Tに向けて配置される。被検査体Tが、製造ラインにおいて長手方向に連続的に搬送される場合、アレイ光源3は、アレイ光源3の長手方向が被検査体Tの搬送方向を横切るように配置されるとよい。
【0028】
また、被検査体Tの表面に圧延痕や研磨痕のように1方向に沿って筋状の模様(スジ模様)がある場合は、スジ模様を横切る方向にアレイ光源3を配置するとよい。しかし、被検査体Tが、紙や、酸処理・ブラスト処理された金属表面などで、形成される表面欠陥Dの方向が特定の向きに限られない場合、アレイ光源3を配置する方向は特に限定されない。
【0029】
撮像カメラ2Aは、例えば、赤色、緑色、青色を識別可能な固体撮像素子であるCCDイメージセンサを備えた一般的なカラーカメラであって、被検査体Tに撮像レンズ2Bを向けてアレイ光源3に隣接するように設けられている。
撮像カメラ2Aに備えられた撮像レンズ2Bは、例えば、レンズ径が20mm、焦点距離fが8mm、レンズの明るさを示すF値が10の一般的なレンズである。このレンズは、絞りの値を変更することによってF値を変更することができ、後に説明するレンズの有効NA(開口)θを変更することができる。
【0030】
図2(a),(b)を参照しながら、アレイ光源3に対する撮像カメラ2Aの配置位置について、詳細に説明する。図2(a),(b)においては、説明を簡潔に行うために、アレイ光源3の一つの配列単位だけを示している。図2(a),(b)に示す観測点は、撮像カメラ2Aの撮像レンズ2Bの位置であるが、実際の撮像レンズ2B(撮像カメラ2A)の配置は、紙面のアレイ光源3に向かって手前側である。しかし、被検査体TへのR,G,Bの照射光の入射角度と被検査体Tでの反射照射光の反射角度を紙面上に平面的に記載するために、便宜上アレイ光源3及び観測点(撮像レンズ2B)の配置を紙面上に示している。
【0031】
なお、アレイ光源3及び観測点の下に描かれている凹凸面は、被検査体Tの表面である。また、以下の説明及び参照する図面において、アレイ光源3のR,G,Bの各発光セル4から照射される照射光を便宜的に直線(実線、破線、及び鎖線)として表現している。しかしこの表現は、照射光がレーザ光であることを意味しているのではなく、照射光の散乱成分を除いた主成分を直線で示すという意図によるものである。
【0032】
図2(a)は、アレイ光源3から照射された照射光が被検査体Tの粗面で様々な方向に反射(乱反射)する状態を示している。被検査体Tの粗面で反射した反射照射光の一部は、R,G,Bともほぼ均等に観測点である撮像レンズ2Bに入るので、撮像カメラ2Aは、被検査体Tの粗面を白色の画像として撮像する。
図1を参照しながら上述したように、撮像カメラ2Aをアレイ光源3に隣接するように設ければ、被検査体Tの粗面を白色の画像として撮像することができる。本実施形態では、効果的に表面欠陥Dを撮像することができるように、撮像カメラ2Aの配置が、図2(b)に示すような配置となるように工夫している。
【0033】
図2(b)は、アレイ光源3からのR,G,Bの各照射光が被検査体Tの鏡面部分(表面欠陥D)で反射する状態を示している。押し込み疵等である表面欠陥Dの表面はほぼ鏡面であるので、表面欠陥Dで反射したR,G,Bの各照射光は、図2(a)と比較して、乱反射しにくくなる。つまり、鏡面状の表面欠陥Dでは、R,G,Bの各照射光の反射光は、ほぼ正反射成分のみで構成されることとなる。図2(b)では、R,G,Bの各照射光とそれらの正反射成分を、実線、破線、及び鎖線の直線で示している。
【0034】
図2(b)に示すように、本実施形態における撮像カメラ2Aは、R,G,Bの各照射光のうち、R(赤色)の照射光の正反射成分のみが撮像レンズ2Bに入射する位置に配置される。このように、R,G,Bの各照射光が鏡面で反射した際に、Rの正反射成分だけが撮像レンズ2Bに入射するような位置に撮像カメラ2Aを配置すると、撮像カメラ2Aは、粗面を白色として撮像し、鏡面を赤色として撮像することができる。
【0035】
なお、図2(b)では、Rの正反射成分だけが撮像レンズ2Bに入射する場合を説明した。しかし、各照射光の主成分の角度条件によっては、Gの正反射成分だけが撮像レンズ2Bに入射する位置に、また、Bの正反射成分だけが撮像レンズ2Bに入射する位置に撮像カメラ2Aを配置することもできる。その場合、撮像カメラ2Aは、粗面を白色として撮像し、鏡面を緑色又は青色として撮像することができる。
【0036】
以上の説明をまとめる。つまり、撮像カメラ2Aは、粗面からの反射光がR,G,Bともほぼ均等に撮像レンズ2Bに入射するので、被検査体Tの粗面の部分をほぼ白色として撮像する。また、撮像カメラ2Aは、鏡面である表面欠陥Dからは主に赤色(R)の正反射成分が撮像レンズ2Bに入射するので、被検査体Tの表面欠陥Dの部分をほぼ赤色として撮像することができる。
【0037】
しかし、現実には、R,G,Bのうちの1色の正反射成分だけが撮像レンズ2Bに入射するように撮像カメラ2Aを配置することよりも、R,G,Bのうちの少なくとも1色の正反射成分が撮像レンズ2Bに入射しにくい位置に撮像カメラ2Aを配置するほうが容易な場合もある。撮像カメラ2Aをこのように配置した場合は、表面欠陥Dの部分がR,G,Bのうち2色の混合色として撮像されることとなるが、粗面がR,G,Bの3色の混合色として撮像されるので、混合色同士の比較によって、表面欠陥Dの位置を特定することは可能である。
【0038】
さらに述べると、撮像カメラ2Aは、鏡面状の表面欠陥Dで反射したR,G,Bの3色の照射光のうち特定の1色又は2色の照射光の受光量が残りの照射光の受光量よりも大きくなるように配置されているといえる。
上述のように撮像カメラ2Aを配置した上で、さらに撮像レンズ2Bの有効NA(開口)を調整する。
【0039】
図3を参照しながら、有効NA(開口)を調整する方法について説明する。図3は、アレイ光源3、表面欠陥D、及び撮像レンズ2Bの光学的な位置関係を平面で示している。
まず、図3には、アレイ光源3の全体と撮像レンズ2Bの開口が、表面欠陥D(被検査体Tの表面)を挟んで上下に示されている。図3において、一点鎖線は撮像レンズ2Bの光軸を示し、実線は撮像レンズ2Bの有効NAとアレイ光源3上での視野幅Wとの関係を示している。
【0040】
本実施形態における撮像レンズ2Bの有効NAとは、撮像レンズ2Bの開口径のうち撮像レンズ2Bに入射した光を実際に透過させることが可能な範囲のことであり、レンズの絞りを調整することで撮像レンズ2Bの光軸を中心とした径を調整することのできる開口である。この有効NAに関して、図3における、撮像レンズ2Bの有効NAと視野幅Wとの関係を示す実線と、一点鎖線で示す撮像レンズ2Bの光軸とがなす角を有効NAθとしている。
【0041】
このとき、撮像レンズ2Bの視野幅W、アレイ光源3の被検査体Tからの高さ(距離)L、及び有効NAθの関係は、式(1)で示される。
【0042】
【数4】

【0043】
つまり、すでに配置されたアレイ光源3および撮像カメラ2Aにおいては、アレイ光源3の被検査体Tからの高さ(距離)Lは固定値であるので、有効NAθを調整することで、式(1)に従って視野幅Wを調整する。この視野幅Wは、発光セル4の幅(光源幅)W’を基準として調整される。
ここで、視野幅WがW=3W’の関係を満たすように有効NAθが調整されれば、鏡面におけるR,G,Bの3色の正反射成分が全て撮像レンズ2Bに入射してしまい、表面欠陥Dの部分も白く撮像されてしまう。よって、有効NAθは、視野幅WがW<3W’の関係を満たすように調整されなくてはならない。
【0044】
この上でさらに、視野幅WがW<2W’の関係を満たす程度に有効NAθが調整されれば、鏡面におけるR,G,Bの正反射成分のうち2色を超える正反射成分が撮像レンズ2Bに入射することは困難となる。
ここで、鏡面状の表面欠陥DにおけるR,G,Bの正反射成分のうち、可能な限り1色の正反射成分だけが撮像レンズ2Bに入射するように撮像カメラ2Aの視野幅Wを調整するには、視野幅Wが光源幅W’よりも小さく(W<W’)なるように有効NAθを小さくすればよい。そうすれば、鏡面状の表面欠陥DにおけるR,G,Bの正反射成分のうち1色又は2色の正反射成分だけを、より確実に撮像レンズ2Bに入射させることができる。
【0045】
続いて、反射照射光の散乱(拡散)の影響を考慮した有効NAθの調整方法について説明する。
反射照射光は、正反射方向を中心に拡散しながら進行するので、拡散成分のうち正反射成分を基準として輝度が半分になる拡散成分の拡散角度を、拡散角度(散乱角)φとして定義する。なお、拡散角度φは、被検査体Tの表面粗度や照射光の波長などに依存する固定値であるので、被検査体Tごとの拡散角度φを予め把握しておくことが必要である。
【0046】
本実施形態では、被検査体Tの表面形状として、粗面としての正常面と、鏡面としての表面欠陥Dを想定して説明しているが、予め把握しておくべき拡散角度φは、白色として撮像すべき粗面での拡散角度φなので、本実施形態では、正常面での拡散角度φを予め把握しておく。しかし、正常面が鏡面で表面欠陥Dが粗面である場合は、白色として撮像すべき表面欠陥Dでの拡散角度φを予め把握しておかなくてはならない。
【0047】
本実施形態において、拡散角度φに対する有効NAθの望ましい範囲は、φ>θである。有効NAθを拡散角度φよりも小さい範囲に設定すれば、R,G,Bの隣り合う正反射光の拡散成分が撮像レンズ2Bへ入射するのを抑制することができ、正常面である粗面を、拡散成分の色をあまり含まない白色として撮像することができる。また、拡散角度φに対する有効NAθの範囲を、φ>2θ(φ/2>θ)とすれば、隣り合う正反射光の拡散成分が撮像レンズ2Bへ入射するのをさらに抑制することができる。
【0048】
例えば、図1の構成において、被検査体Tがアルミの圧延材であって、当該アルミの圧延面(拡散角度φ=6〜10°)の上方200mm(L=200mm)のところにアレイ光源3を配置し、撮像レンズ2BのF値が10である場合を考える。
この場合、F=10=1/(2sinθ)より、θ=2.86°程度となり、拡散角度φに対する有効NAθの範囲は、φ>2θの関係を満たしている。拡散角度φに対してこのように有効NAθが設定されれば、正常面である粗面を、拡散成分の少ないR,G,Bがほぼ等しく混ざった白色として撮像することができる。
【0049】
このとき、既に述べたように、拡散角度φは被検査体Tの表面形状に依存する固定値であるので、被検査体Tからのアレイ光源3の高さ(距離)L、及び撮像レンズ2BのF値を適宜選択することによって、上述の条件(φ>θ、又はφ/2>θ)を満たす有効NAθを実現すればよい。その上でさらに、既に述べたように、視野幅WがW<3W’の関係を満たすように有効NAθを調整すれば、正常面である粗面を白として、且つ表面欠陥Dである鏡面を1色又は2色の混合色として、本実施形態では赤色として撮像することができる。これによって、被検査体Tの表面の粗さが変化する正常面と表面欠陥Dとのコントラストを明瞭にすることができ、表面欠陥Dを確実に検出することができる。
【0050】
以上のような構成のアレイ光源3及び撮像手段2を用いて撮像した被検査体Tの画像から、表面欠陥Dを抽出するための画像処理について説明する。
本実施形態では、粗さの変化する正常面と表面欠陥Dは、異なる色で撮像されるように欠陥検出装置1が構成されている。つまり、粗面である正常面は白色として、鏡面を呈する表面欠陥Dは赤色として撮像されるようにアレイ光源3及び撮像カメラ2Aが構成されているので、被検査体Tの画像色に基づいて表面欠陥Dを検出することができる。
【0051】
表面の粗さがあまり変化しない疵の検出のみであれば、被検査体Tの画像における輝度を考慮してもよいが、被検査体Tの画像から輝度情報を欠落させることで、確実に粗さが変化した表面欠陥Dを抽出することができる。このための画像処理には、従来から広く用いられている色抽出手法を適用することができる。
この色抽出手法では、R,G,Bを直交ベクトルとした座標系において、各画素の位置ベクトル(色の位置ベクトル)を算出し、基準位置との距離をそれぞれ算出する。この方法において、算出した位置ベクトルを単位ベクトルに変換した後で基準位置からの距離を算出すれば、輝度の影響が無くなる。
【0052】
基準位置として採用できるサンプルがない場合には、撮像された被検査体Tの画像を10個程度の領域に分け、各領域の位置ベクトルの重心位置を算出する。その上で、算出された10個の重心位置の平均又は中央値を基準位置として採用する。この基準位置の決め方は、撮像カメラ2Aとしてエリアセンサを用いる場合に有効である。
ここで、基準位置P0の座標を(R0,G0,B0)、正常位置P1の座標を(R1,G1,B1)、欠陥位置P2の座標を(R2,G2,B2)とし、各ベクトルの大きさMnを式(2)で求める。
【0053】
【数5】

【0054】
このとき、基準位置P0の単位ベクトル(基準位置ベクトル)から各画素信号の単位ベクトルまでの距離Snに関して、基準位置ベクトルから正常位置P1の単位ベクトルまでの距離S1は式(3)、基準位置ベクトルから欠陥位置P2の単位ベクトルまでの距離S2は式(4)のようになる。
【0055】
【数6】

【0056】
【数7】

【0057】
この上で、例えば正常位置P1の距離S1の100×50画素分の平均値を距離S1aとして式(5)でオフセット値S’を求め、撮像された被検査体Tの画像をオフセット補正して背景パターンの影響をキャンセルすると、表面欠陥Dを明瞭に検出することができる。また、ベクトルを単位ベクトルとして扱うことにより、測定対象の反射率や光源の輝度ムラにより生じる輝度の影響をキャンセルすることができる。
【0058】
【数8】

【0059】
これら上述の画像処理は、先に述べた制御部によって、撮像カメラ2A及びアレイ光源3の動作制御と共に実行される。
図4を参照しながら、本実施形態の欠陥検出装置1の検出精度についてのシミュレーション結果について説明する。
図4(a)は、被検査体Tの正常面が粗面で、且つ表面欠陥Dが完全に鏡面である場合の結果を表しており、R,G,Bの強度を直交ベクトル(R,G,B)とした色ベクトルの座標系において、白色(1,1,1)と表面欠陥Dの各画素の色ベクトルとがなす角度を相対値で表したグラフである。
【0060】
言い換えれば、図4(a)の縦軸は、白色(1,1,1)と、赤色(1,0,0)、緑色(0,1,0)及び青色(0,0,1)となす角度を最大値1とし、白色(1,1,1)と一致する場合の角度を最小値0としている。つまり、縦軸の最大値1に近づくほど、R,G,Bのいずれかの単色に近く、最小値0に近づくほど白色に近いといえる。また、図4(a)の横軸は、表面欠陥D上の各位置を示している。
【0061】
なお、図4(a)のグラフは、視野幅Wを10mm(=W’)、20mm(=2W’)、30mm(=3W’)としたときの結果をそれぞれ示している。
視野幅Wが10mmであるとき、グラフの振幅は約0.85から約0.95の間に収まっており、表面欠陥Dはほぼ単色で検出されることがわかる。視野幅Wが20mmであるとき、グラフの振幅は約0.55から約0.85の間に収まっており、表面欠陥Dは白以外の混合色で検出されることがわかる。表面欠陥Dの測定環境によって上下20%程度値にバラツキがあっても、グラフの最小値は約0.4程度であるので正常面の白色と表面欠陥Dとを区別することは十分に可能である。なお、縦軸の値が0.2となる位置を破線で強調しているが、この破線は、グラフの値が破線より下、つまり0.2より小さくなると表面欠陥Dの識別が困難になることから、下限値の目安として表示している。
【0062】
視野幅Wが30mmであるとき、グラフの値は、表面欠陥Dの位置によらず0となっており、表面欠陥Dは白色として検出されている。従って、表面欠陥Dを正常面の白色と区別することは困難である。
また、図4(b)は、被検査体Tの正常面が粗面で、且つ表面欠陥Dが反射光を若干散乱させる面であって、散乱角φ’が有効NAθの半分である場合(散乱角φ’=θ/2)の結果を表している。
【0063】
視野幅Wが10mmであるとき、グラフの振幅は約0.55から約0.65の間に収まっており、表面欠陥Dは白以外の混合色で検出されることがわかる。視野幅Wが20mmであるときは、グラフの振幅は約0.3から約0.38の間に収まっており、目安となる0.2よりも大きな値となっている。そのため、正常面の白色と表面欠陥Dとを区別することは可能であるが、表面欠陥Dの測定環境によって上下20%程度のバラツキがあれば、わずかにではあるが、目安となる0.2を下回ってしまう可能性もある。
【0064】
視野幅Wが30mmであるときは、図4(a)と同様に、グラフの値は、表面欠陥D上の位置によらず0となっており、表面欠陥Dは白色として検出されている。従って、表面欠陥Dを正常面の白色と区別することは困難である。
図4(a)及び図4(b)に示す結果をまとめると、次のように言うことができる。
まず、正常面が粗面で表面欠陥Dが鏡面であるなど、表面の粗さが明確に異なる場合は、視野幅Wを適切に調整することで、非常に精度良く表面欠陥Dを検出することができる。
また、正常面と表面欠陥Dの粗さが明確には異なっていない場合でも、散乱角φ’に対して有効NAθを適切に設定することで、表面欠陥Dを検出することができる。
【0065】
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、動作条件や測定条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0066】
例えば、上述の実施形態では、アレイ光源3として、LED照明などにより赤、緑、青の色の異なる3種類の光を実現していた。しかし、回折格子などの分光素子を利用することや、偏光方向の異なる光を採用することで、異なる特性を有する少なくとも3種類の照射光を実現することも可能である。
また、上述の実施形態において、被検査体Tの正常面が粗面あって且つ表面欠陥Dが鏡面である場合について説明したが、これとは逆に、正常面が鏡面であって且つ表面欠陥Dが粗面である場合にも、本願発明を適用することができる。その場合は、正常面が有色、表面欠陥Dが白色として検出される。
【0067】
本願発明の欠陥検出装置1は、被検査体Tの表面の粗さの変化を検出するものであるともいえるので、例えば、被検査体Tを紙とした場合に、糊やテープなどの表面の付着物を検出することができる。また、欠陥検出装置1は、被検査体Tの表面が被膜でコーティングされている場合、被膜の剥離などの欠陥を検出することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 欠陥検出装置
2 撮像手段
2A 撮像カメラ
2B 撮像レンズ
3 アレイ光源
4(4R,4G,4B) 発光セル
D 表面欠陥
T 被検査体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体に照射光を照射するアレイ状の光源と、前記照射光が被検査体の表面で反射した反射光を検出する撮像手段と、を備え、前記被検査体の表面に存在し正常面と粗度が異なる表面欠陥を検出する欠陥検出装置であって、
前記アレイ状の光源は、異なる特性を有する少なくとも3種類の照射光を照射するものであり、
前記撮像手段は、前記表面欠陥が鏡面状である場合、前記表面欠陥で反射した少なくとも3種類の照射光のうち特定の1種類又は2種類の照射光の受光量が残りの照射光の受光量よりも大きくなるように配置されていることを特徴とする欠陥検出装置。
【請求項2】
被検査体に照射光を照射するアレイ状の光源と、前記照射光が被検査体の表面で反射した反射光を検出する撮像手段と、を備え、前記被検査体の表面に存在し正常面と粗度が異なる表面欠陥を検出する欠陥検出装置であって、
前記アレイ状の光源は、異なる特性を有する少なくとも3種類の照射光を照射するものであり、
前記撮像手段は、前記正常面が鏡面状である場合、前記正常面で反射した少なくとも3種類の照射光のうち特定の1種類又は2種類の照射光の受光量が残りの照射光の受光量よりも大きくなるように配置されていることを特徴とする欠陥検出装置。
【請求項3】
前記アレイ状の光源は、3種類の照射光に対応する照射光源を、隣り合う照射光が同種類とならないように順次配置することで構成され、
前記撮像手段は、前記照射光源の光源幅W’との間で次式の関係を満たす視野幅Wを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の欠陥検出装置。
【数9】

【請求項4】
前記撮像手段は、前記照射光が鏡面で反射するときの散乱角φとの間で次式の関係を満たすような有効開口θを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の欠陥検出装置。
【数10】

【請求項5】
前記少なくとも3種類の照射光は、赤色、緑色、青色の3種類の照射光であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の欠陥検出装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、前記照射光が鏡面で反射するときの散乱角φとの間で次式の関係を満たすような有効開口θを有し、前記被検査体の鏡面以外の粗面で反射した反射照射光を白色として検出することを特徴とする請求項5に記載の欠陥検出装置。
【数11】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−44635(P2013−44635A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182443(P2011−182443)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】