説明

欠陥検査装置

【課題】
レンズに汚れが付着した場合でも欠報を発生させることなく誤報を減らして、安定的に欠陥を検出する手法、及び装置を提供することである。
【解決手段】
フレーム間の欠陥候補位置フレーム座標比較手段に加えフレーム間の欠陥候補位置3D座標比較手段を有し、同一箇所を最低でも2回以上撮影して、欠陥候補については別のフレームで同一の3D座標を持つ欠陥候補が存在しない場合に該欠陥候補がレンズ汚れであると判定する欠陥マスク情報生成手段とレンズ汚れ警報生成手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
画像処理を行い欠陥検出をする欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、カメラで撮影した画像を画像処理して対象物表面の欠陥を検出することは一般的に行われている。しかし、機械加工現場などでは切子,油,水滴などがレンズなどに付着して、これを欠陥と誤認識するという問題がある。
【0003】
特許文献1には、このようなレンズに付着した汚れを画像処理で検知して、この汚れが欠陥検知において誤報(実際には欠陥ではないにも拘らず欠陥として扱ってしまう)の原因となるのを回避する手法を開示してある。ここでは検査対象を撮影するカメラで連続して撮影した2フレームの画像を比較して、2フレーム共に同じ位置(フレーム座標)において欠陥が検出されているとき、これはレンズ汚れであると判定して、警報を発したり、以後この位置において検知された欠陥はレンズ汚れによる誤報と解釈してマスク(欠陥として扱わない)している。
【0004】
【特許文献1】特開平6−148083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示してある手法では、レンズ汚れで隠れた部分に真の欠陥が存在していた場合に欠報(真の欠陥を見逃してしまう)が発生してしまう。
【0006】
また、連続したフレームで偶然同じフレーム座標に真の欠陥が存在している場合、これらをレンズ汚れと認識して欠報が発生する。さらに、レンズ汚れと認識された部分は、その後欠陥がマスクされるためこのフレーム座標に写った欠陥については以後欠陥と扱われず欠報となってしまう。
【0007】
多くの欠陥検査システムでは誤報よりも欠報の方が問題であり、欠陥の見逃しは欠陥検査システムにとって致命的である。レンズ汚れの検知では、欠報の増加を抑制しつつ、誤報を減らすことが課題である。
【0008】
本発明の目的は、レンズに汚れが付着した場合でも欠報を発生させることなく誤報を減らして、安定的に欠陥を検出する欠陥検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、撮像手段で撮像した1フレーム毎の画像データから欠陥候補を検出する欠陥検出手段と、検出された欠陥候補を記憶する欠陥候補記憶手段と、欠陥候補記憶手段で記憶された前フレームの画像データから検出された欠陥候補と現フレームの画像データから検出された欠陥候補とを二次元座標で比較し、欠陥候補の同一性を判定し、判定結果として二次元座標比較結果情報を生成する欠陥候補比較手段と、欠陥候補記憶手段で記憶された欠陥候補と現フレームの画像データから検出された欠陥候補とを三次元座標で比較し、欠陥候補の同一性を判定し、判定結果として三次元座標比較結果情報を生成する三次元欠陥候補比較手段と、二次元座標比較結果情報と三次元座標比較結果情報とに基づいて欠陥候補が撮像手段の汚れであると判定された場合、撮像手段欠陥警報信号を生成し、出力する撮像手段欠陥警報信号生成手段と、二次元座標比較結果情報と三次元座標比較結果情報とに基づいて欠陥候補が検査対象物の欠陥であると判定された場合、欠陥警報信号を生成し、出力する欠陥警報信号生成手段と、を有する構成とする。
【発明の効果】
【0010】
レンズに汚れが付着した場合でも欠報を発生させることなく誤報を減らして、安定的に欠陥を検出する欠陥検査装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図2は本発明に係わる欠陥検査装置の一実施例の外観を表している。
【0012】
検査対象物は円筒11の内面である。固定された円筒11にスコープヘッド12を挿入しながら円筒11の内面を撮影する。スコープヘッド12の移動や撮影に関する制御信号や画像情報は制御信号線14を通してPC13とやり取りされる。スコープヘッド12の移動や撮影のタイミングはPC13で制御され、取り込まれた画像はPC13に送られ、PC13において画像処理によって欠陥検出などが行われる。
【0013】
図3は欠陥検査装置のPC以外の部分を詳細に表したものである。
【0014】
スコープヘッド12はリニアモータの可動子17と固定されており、台座などに固定されたリニアモータのレール18に対して前後に指定された長さだけ正確に移動させることが出来る。このリニアモータの移動に関する制御は位置制御信号を介してPC13が行う。リニアモータが指定の動作を完了すると位置制御応答信号によってPCは動作の完了を知ることが出来る。
【0015】
スコープヘッド12の先端にはLED照明15と撮像素子であるディジタルカメラ16が取り付けられており、LEDで円筒内部を照らして円筒内面をカメラで撮影することが出来る。撮影のタイミングは撮影制御信号を介してPCから制御できるようになっている。また、撮影した画像情報はPC13に送られて画像処理される。
【0016】
PC13はこれら一連の制御信号を使ってスコープヘッド12を移動させ、移動が完了したら撮影を行い画像を取得して、またスコープヘッド12を動かすといったシーケンスを実行することが出来る。
【0017】
図4はスコープヘッド12の先端を正面から見たときの構造を表している。
【0018】
スコープヘッド12の円筒中央部にディジタルカメラ16が、その周りに数個のLED照明15が環状に配置されている。LED照明15の前や周囲には必要に応じて拡散フィルタや遮光板などを配置して円筒内を一様な明るさで照明できるようにすることも出来る。
【0019】
図5はスコープヘッド12先端の一例を表している。ディジタルカメラ16の前面にはレンズ19が剥き出しで配置されている。
【0020】
図6はスコープヘッド12先端の別の一例を表している。ディジタルカメラ16のレンズ19は剥き出しにはなっておらず、スコープヘッド12を囲い込むように透明なカバー20が配置されている。
【0021】
図7はスコープヘッド12先端の別の一例を表している。レンズ19の前面には円錐形のミラー21が配置されており、ミラーが反射した円筒内面の画像をディジタルカメラ
16で取り込むようになっている。
【0022】
この発明が対象とするレンズ汚れとは単にレンズに付着した汚れだけではなく、ディジタルカメラ16で撮影する時のカバー20やミラー21などの光学系を全て含んだものである。また、汚れも油や切粉などの付着物だけではなく、レンズ19の傷など正常な撮影を妨げる要因全体を表している。したがって、カバー20に付着した油滴やミラー21の傷なども本発明が対象とするレンズ汚れの範疇である。
【0023】
図8は本欠陥検査装置における円筒内部の撮影方法を表している。
【0024】
立体図は円筒11とスコープヘッド12を横から見たものである。(a),(b),
(c)は長さdだけカメラを進ませながら撮影しているところである。フレーム画像
(a′),(b′),(c′)は立体図の(a),(b),(c)のそれぞれの位置で撮影された画像である。カメラは視野23に写った対象物を画像として取得するが、カメラから遠くの対象物は小さく写り解像度は低くなってしまう。したがって画像処理を行う上で都合の良い高解像度な情報を得るためにはカメラを動かし、カメラから近い状態で撮影する必要がある。
【0025】
本欠陥検査装置ではカメラから一定の距離にある幅dの円筒内面を画像情報として使用する。スコープヘッド12を長さdで送って(移動させて)いるため、これら幅dの円筒内面の画像情報を繋ぎ合わせれば円筒内面全体の画像を取得することが出来る。
【0026】
フレーム画像では(a′)〜(c′)とカメラが進んでゆくに従い、穴底24の輪郭の形状がだんだん大きな半径の円となってきているが、幅dの画像取込み部分は一定の半径と幅を持ったリングとして撮影される。
【0027】
このように取り込まれた複数のフレーム画像は画像取込み部分22の情報だけを切り出して、幾何学的な変換を施しつなぎ合わせて展開図を生成する。展開図は仮想的に円筒内面に送り方向に切れ目を入れ、円周方向に開いた画像である。各フレーム画像のリング状の画像取込み部分22は全て幅がdで長さが円筒内面の円周に等しい短冊状の画像に変換される。
【0028】
この展開図の作成方法については特開平11−66316号公報に詳細に説明してある。
【0029】
図9は本欠陥検査装置における円筒内部の別の撮影方法を表している。
【0030】
記号などは図8と同様であるが、図9が図8と異なる点は、送り幅がdと変わっていないのに対して、画像取込み部分22の幅が2dと2倍になっているところである。画像取込み部分22の幅が送り幅の2倍になったことで(a)と(b)或いは(b)と(c)の画像取込み部分22に重複が生じ、円筒11内面の全ての点が連続する2フレームの画像取込み部分22の両方に含まれるようになっている。
【0031】
このようにして得られたフレーム画像の画像取込み部分22を短冊状に展開すると、幅が2dの短冊となり、送り幅のdずつずらしながら貼り合わせると全ての点で2枚の短冊が重なるようになる。重なった2枚の短冊の同一部分は幾何学的には同一の画像情報を持ち、ぴったりと(画像のズレがなく)重なる。しかし、照明条件の関係でカメラに近い側が明るく写り、遠い側が暗く写るため輝度差が生じている。
【0032】
図8のように送り幅と取込み幅を等しくしていると、短冊に重なり代がなく、各短冊が送り方向に輝度差を持っているため、繋ぎ合わせたときにつなぎ目に輝度の落差による横線が生じる。この横線は後の画像処理で悪影響を及ぼす可能性がある。しかし、図9のように短冊に重なり代があると、2つの短冊の輝度を連続的に変化するブレンド率でブレンドすることで輝度の落差による横線のない良好な画像を得ることが出来る。
【0033】
図10は本欠陥検査装置で撮像手段であるレンズの汚れがあった場合(ここではカバーの汚れ26を意味している)に取得した画像について説明している。
【0034】
撮影条件はカバー20がついていることとカバーに汚れがあることを除けば図9と同じである。ここではカバー20は光学的に何の作用も持たないものとする。即ち、カバー
20によって光が屈折や反射などして画像が歪んだり、照明が映り込んだりすることは考えない。
【0035】
カバー20に付着したカバーの汚れ26はフレーム画像中では円筒内面にある欠陥と区別し辛く、フレーム画像1枚だけでは、これが欠陥なのかレンズ汚れなのか判定できない。したがって、このようにフレーム画像中に欠陥のように写りこんだ対象を欠陥候補と呼ぶことにする。また、もし欠陥候補が欠陥ではなくレンズ汚れだった場合は、レンズ汚れと重なる円筒内面に偽欠陥25が存在すると考える。立体図上でこの偽欠陥25は白く表される。それに対して真の欠陥は黒く表すこととする。
【0036】
図11はスコープヘッド12を送り方向に移動させながら撮影を行ったときの偽欠陥
25の挙動について表したものである。
【0037】
レンズ汚れのカメラとの相対位置は変化しないので、フレーム画像上では偽欠陥25はカメラの動きによって移動しない。立体図で考えると、偽欠陥25はカメラを送った分だけ前進するように見える。
【0038】
従来技術として取り上げた特許文献1において連続するフレームでフレーム座標(フレーム画像における位置)が変化しない欠陥候補をレンズ汚れと判断しているのはこの原理に基づいている。
【0039】
図12はスコープヘッド12を送り方向に移動させながら撮影を行ったときの真欠陥
27の挙動について表したものである。
【0040】
真欠陥27はカメラと共に動くことはないので、立体図における真欠陥27の位置は不変である。フレーム画像における真の欠陥位置はカメラを送り方向に移動させると送り方向とは逆に(即ち画面の外側に)移動する。
【0041】
図13は真欠陥27と偽欠陥25が重なっているときに、スコープヘッド12を送り方向に移動させながら撮影を行った場合のそれぞれの挙動について表したものである。
【0042】
図中で真欠陥27と偽欠陥25が重なった部分は網掛けで表している。真欠陥27と偽欠陥25が重なっているということはレンズ汚れと真欠陥27がフレーム画像上で同一の位置に写っていることを意味している。
【0043】
しかし、真欠陥27と偽欠陥25が重なっている場合はカメラを送ることで両者は分離する。即ち、あるフレームで両者が重なっていても、別の位置から撮影すると真欠陥27と偽欠陥25は別の位置に捕らえられる。真欠陥27は送り方向とは逆に移動し、偽欠陥25は移動しない。
【0044】
このような場合、従来技術として取り上げた特許文献1の手法では移動しない偽欠陥
25をマスクすることで重なっていた真欠陥27もマスクしてしまい、欠報を発生させてしまうことになる。
【0045】
しかし、このような場合でも真欠陥27が別のフレーム(この例では次のフレーム)に偽欠陥25と分離した状態で捉えられているので、別フレームの情報を利用することでこの欠報を阻止することは可能である。
【0046】
図14はスコープヘッド12を送り方向に移動させながら撮影を行ったとき、偶然に2つの真欠陥27が連続フレームの同じ場所に移ってしまった場合を表している。
【0047】
このような場合も、連続するフレームでフレーム座標(フレーム画像における位置)が変化しない欠陥候補が存在するため、特許文献1の手法ではこれらの欠陥をマスクしてしまう。またこのフレーム座標には実際にはレンズ汚れが存在しないにも拘らず、この位置に写る欠陥は以後マスクされてしまい、欠報を発生させてしまうことになる。
【0048】
このような場合でも、それぞれの真欠陥27が写った別フレーム(この例では次とその次のフレーム)を見ることで、真欠陥27を見逃しなく検出することが出来る。
【0049】
図1は本発明の欠陥検査装置における処理の構成とデータの流れを表したものである。
【0050】
検査対象物である円筒内面に撮像手段であるカメラ1をずらしながら撮像し、その撮影されたフレーム毎の画像データは欠陥検出手段2に送られる。
【0051】
欠陥検出手段2はカメラ1で撮影されたフレーム毎の画像データに対して様々な画像処理を施し欠陥候補を検出する。具体的には、画像に重畳したノイズを除去するためにガウシャンフィルタなどのローパスフィルタ、或いはミディアムフィルタなどを施し、次にソーベルフィルタやラプラシアンフィルタなどでエッジを強調して、適当な閾値で2値化し、連結成分毎にラベリングして、ある程度の大きさを持った塊(連結成分)を欠陥候補とする、などの処理が一般的である。欠陥検出の手法は様々なものが提案されており、対象画像に応じて適切な手法を用いれば良い。特に本発明において欠陥検出の手法を限定するものではない。欠陥検出の結果としては欠陥候補の位置座標、即ちフレーム座標や3D座標(立体図における3次元座標)、場合によっては欠陥の形状情報、即ち大きさ,モーメント、又は欠陥の局所的な画像情報などが含まれる。これらの情報の中には必ずしも欠陥検出手段2で求まる必要のないものも含まれる。例えば、3D座標はカメラの位置情報とフレーム座標が分かっていれば後から計算することが出来る。また、欠陥の局所的な画像情報から欠陥の大きさやモーメントも計算できる。このような情報をどこで生成するかは計算量などを勘案して設計者が決めればよい。
【0052】
欠陥候補記憶手段であるフレームごと欠陥情報記憶手段3では欠陥検出手段2で検出された欠陥候補に関する情報を記憶する。記憶の仕方の一例を図15に示す。表中の欠陥候補No.は欠陥候補を識別するためのもので、異なる欠陥候補には異なる番号が振られるが、フレーム間に渡る同一性の判定はこの段階では行わないため、同一の欠陥候補が複数フレームで異なる番号を有している。フレームNo.は各フレームに付与された番号で、欠陥候補が存在しているフレームを識別するためのものである。フレーム座標は、上述したが二次元座標上で欠陥候補が存在するフレーム座標情報であり、3D座標は、三次元座標上で欠陥候補が存在する三次元座標情報である。欠陥情報には欠陥候補の真欠陥か偽欠陥か、或いはまだ判定されていない場合は保留が記述された情報である。その他のプロパティには欠陥の形状に関する情報や同一の欠陥候補をフレーム間に渡ってグルーピングするための情報などが必要に応じて保存される。欠陥候補の同一性については真の欠陥の場合は3D座標の一致で、レンズ汚れの場合は(つまり同一のレンズ汚れとしての認識は)フレーム座標の一致で判定する。
【0053】
このように欠陥に関する情報を関連付けて纏めたテーブルを欠陥テーブルと呼ぶことにする。フレームごと欠陥情報記憶手段3は欠陥テーブルに保存する情報のうち、フレーム内で求めることの出来る情報を書き込む。
【0054】
欠陥候補比較手段であるフレーム間の欠陥候補位置フレーム座標比較手段4は欠陥候補ごとに、フレームごと欠陥情報記憶手段3で記憶された前フレームの各欠陥候補と現フレームで検出された欠陥候補とを二次元のフレーム座標を比較して、欠陥候補において同一性を判定(同一座標のものがあるかどうかを判定)し、その判定結果として、二次元座標比較結果情報を生成して出力する。欠陥テーブルに欠陥の形状情報が保存されている場合は、座標の比較のみでなく、形状の比較を行うことも出来る。この形状の比較結果は後で真欠陥と偽欠陥の判定を行う際に、より精度の高い判定を行うのに役立つ。具体的には、欠陥候補のフレーム画像における同一性の判定(同一のレンズ汚れか否か)を行う際に、座標だけでなく形状情報も使うことでより確度の高い同一性の判定が可能となる。また、欠陥テーブルのレンズ汚れをフレーム間に渡ってグルーピングするための情報は、フレーム間の欠陥候補位置フレーム座標比較手段で書き込まれる。
【0055】
三次元欠陥候補比較手段であるフレーム間の欠陥候補位置3D座標比較手段7は、欠陥候補ごとに、フレームごと欠陥情報記憶手段3で記憶された各欠陥候補と現フレームで検出された欠陥候補とを三次元の3D座標を比較して、欠陥候補において同一性を判定(同一三次元座標のものがあるかどうかを判定)し、その判定結果として、三次元座標比較結果情報を生成して出力する。具体的には、別フレームでその欠陥候補が既に撮影されているか、更に、その撮影された別フレームにおいて欠陥候補であったかどうかを検索する。欠陥テーブルに欠陥の形状情報が保存されている場合は、座標の比較のみでなく、形状の比較を行うことも出来る。この形状の比較結果は後で真欠陥と偽欠陥の判定を行う際に、より精度の高い判定を行うのに役立つ。具体的には、欠陥候補の立体図における同一性の判定(同一の欠陥か否か)を行う際に、座標だけでなく形状情報も使うことでより確度の高い同一性の判定が可能となる。形状情報を欠陥候補の立体図における同一性の判定に使用する場合は、フレーム画像における形状ではなく展開図にしたときの形状、即ち立体的に欠陥に正対したときに見える形状を使用するほうが望ましい。なぜならば、同一の欠陥でもフレーム座標で写っている場所によって形状が変化するためである。また、欠陥テーブルの真の欠陥をフレーム間に渡ってグルーピングするための情報はフレーム間の欠陥候補位置3D座標比較手段7で書き込まれる。
【0056】
欠陥マスク情報生成手段5は前記2つの座標比較手段から出力される二次元座標比較結果情報及び三次元座標比較結果情報に基づき、欠陥検出手段2でレンズ汚れがある位置における欠陥候補の発生を抑止するものである。レンズ汚れか否かの判定は欠陥候補ごとに欠陥テーブルを参照しながら行っているので、欠陥マスク情報生成手段5は必ずしも必要なものではないが、設けることで欠陥の判定(偽欠陥か真の欠陥か)の処理を削減することが出来る。しかし、これを設けることで欠報が増加する可能性がある。これを回避するため工夫として、欠陥マスク情報生成手段5は欠陥検出手段2でレンズ汚れがある位置における欠陥候補の発生を抑止するのではなく、同一の3D座標を持つ欠陥候補が別フレームに存在したときは欠陥と判定するようにするなどの方法が挙げられる。
【0057】
撮像手段欠陥警報信号生成手段であるレンズ汚れ警報生成手段6は、前記2つの座標比較手段から出力される二次元座標比較結果情報及び三次元座標比較結果情報に基づき、欠陥候補が撮像手段であるカメラのレンズの汚れであると判定された場合、撮像手段欠陥警報信号であるレンズ汚れ警報を生成する。具体的には欠陥候補をレンズ汚れと判定したとき、レンズ汚れ警報手段に警報の指示出す。撮像手段欠陥警報手段であるレンズ汚れ警報手段8は、レンズ汚れがあると判定されたとき、レンズ汚れ警報生成手段6で生成されたレンズ汚れ警報をレンズ汚れの存在をユーザに伝えるために出力する。具体的にはブザーや点灯などで知らせる。或いは、展開画像を表示してレンズ汚れと判定された欠陥候補はレンズ汚れの可能性が高いことがユーザに分かるように色など変えて表示する。或いは、ユーザに知らせるのではなく、レンズ汚れと判定された欠陥候補があるフレームはレンズ汚れ付近の画像を使わず別フレームの画像だけを使って展開画像を作成してユーザにレンズ汚れを感じさせないという方法もある。また、自動でレンズなどの洗浄を開始するようにすることも出来る。
【0058】
欠陥警報信号生成手段である欠陥警報生成手段10は、前記2つの座標比較手段から出力される二次元座標比較結果情報及び三次元座標比較結果情報に基づき、欠陥候補が検査対象物である円筒内面の欠陥であると判定された場合、欠陥警報信号を生成し、欠陥警報手段9に欠陥警報生成手段10で生成された欠陥警報信号を出力して警報の指示を出す。欠陥警報手段9は、欠陥の存在をユーザに知らせるために各種欠陥警報信号を発する。具体的にはブザーや点灯などで知らせる。或いは、展開画像を表示して欠陥と判定された欠陥候補は欠陥の可能性が高いことがユーザに分かるように色など変えて表示する。また、自動で欠陥のある製品を排除するようにすることも出来る。
【0059】
図16は本発明の欠陥検査装置における処理の流れを表したものである。
【0060】
まず、欠陥検出手段2により、カメラ1で撮像したフレーム毎の画像データからフレーム内の欠陥候補を検出する。ここで欠陥候補が検出されない場合は、その検査対象物である円筒は欠陥無しと判定する。以下欠陥候補が検出できたことを前提に説明する。また以下の処理は欠陥候補ごとに行われる。例えば欠陥候補数分のループ処理となる。「フレーム座標と3D座標を算出」は欠陥検出手段2において行っても良いし、前述したように
3D座標の算出は後の処理で3D座標の比較を行うまでに行われれば良い。
【0061】
「前フレームの各欠陥候補とフレーム座標を比較」はフレーム間の欠陥候補位置フレーム座標比較手段4で行われる。比較の結果である二次元座標比較結果情報が、前フレームにフレーム座標の一致した欠陥候補がないとの情報の場合は、その欠陥候補は欠陥(真の)と判定し、検査対象物の円筒内面に欠陥があると判定される。
【0062】
二次元座標比較結果情報が一致した欠陥候補があるとの情報の場合にはフレーム間の欠陥候補位置3D座標比較手段7において「別フレームで同一な3D座標の欠陥候補を検索」を行った結果により、別フレームで撮影済みでない場合にはこのフレームでの判定を保留して、判定を後のフレームに委ねる。撮影済みの場合は、三次元座標比較結果情報が同一な3D座標の欠陥候補がある場合には検査対象物である円筒内部に欠陥があると判定して、ない場合には撮像手段であるレンズの汚れがあると判定する。
【0063】
前フレームにフレーム座標が同じ欠陥候補がない場合については、欠陥と判定しない方が良い場合もある。最初に汚れが付着したフレームではその前のフレームにはフレーム座標が一致する欠陥候補は存在しないため、必ず欠陥と判定されることになるからである。このとき、欠陥と判定しないのであれば判定を保留にしておけばよい。しかし、この場合は欠陥ではなくレンズ汚れと判定される割合が多くなるため、欠報が増える可能性もある。どちらの方が良いかは誤報がどれくらい許容できるかに依存する。逆に、レンズ汚れを厳しく判定するのであれば、連続する2フレームではなく所定のNフレームで同一フレーム座標に欠陥候補が存在した時にのみレンズ汚れと判定するようにすることも出来る。
【0064】
なお、前フレームの画像データが欠陥候補記憶手段に記憶されていないときは、比較することができないの、欠陥判定を保留として次フレームまで待って欠陥検査を行う。
【0065】
本発明では、このように、円筒内部の欠陥があるか否かをレンズ汚れによる欠陥がどうかを考慮しながら判定できるため、レンズに汚れが付着した場合でも欠報を発生させることなく誤報を減らして、安定的に欠陥を検出する欠陥検査装置を提供できる。
【0066】
なお、欠陥マスク情報生成手段5,レンズ汚れ警報生成手段6,欠陥警報生成手段10はそれぞれ欠陥候補の判定方法を独立に選んでも問題はない。各々の役割に応じて適切に選ぶべきである。
【0067】
図17,図18,図19は取込み幅を送り幅の2倍にしてもうまくいかない例を示している。
【0068】
図17はdの間隔で真欠陥が並んでいる。図18は偽欠陥がdの間隔にあるように見える位置にレンズ汚れがある。図19はdの間隔で真欠陥が並んでいて、その1つと重なるようにレンズ汚れが存在している。
【0069】
上記の処理ではどれも真の欠陥と判定して誤報を挙げてしまうことになる。このようなケースは以上に稀だと考えられるが、図17,図18,図19で2dのところを3dと変えて全ての欠陥候補が3フレームで撮影されるようにすると、旨く行かないケースは更に激減する。取込み幅を送り幅の何倍に設定するかは要求される欠陥候補の判定精度に応じて適切に決めるべきである。
【0070】
本実施例では円筒内面の検査装置を取り上げている。この場合は全ての観察部位をN回以上撮影して3D座標が一致する別フレームの欠陥候補を探索するのが容易である。しかし、一般の検査対象、例えば特許文献1にあるような自動車のボディの欠陥検査のような場合でも同様の処理が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る欠陥検査装置の一実施例の処理構成とデータの流れを示す図である。
【図2】本発明に係る欠陥検査装置の一実施例の外観を示す図である。
【図3】本発明に係る欠陥検査装置の一実施例の詳細を説明する図である。
【図4】本発明に係る欠陥検査装置のスコープヘッドの正面を示す図である。
【図5】本発明に係る欠陥検査装置のスコープヘッドの一詳細例を示す図である。
【図6】本発明に係る欠陥検査装置のスコープヘッドの他の詳細例を示す図である。
【図7】本発明に係る欠陥検査装置のスコープヘッドの他の詳細例を示す図である。
【図8】本発明に係る欠陥検査装置の撮影方法の一例を示す図である。
【図9】本発明に係る欠陥検査装置の撮影方法の他例を示す図である。
【図10】本発明に係る欠陥検査装置の撮影方法でのレンズ汚れがある場合の一画像例を示す図である。
【図11】本発明に係る欠陥検査装置の撮影方法での偽欠陥の挙動を説明する図である。
【図12】本発明に係る欠陥検査装置の撮影方法での真欠陥の挙動を説明する図である。
【図13】本発明に係る欠陥検査装置の撮影方法での真欠陥と偽欠陥が重なっている場合の挙動を説明する図である。
【図14】本発明に係る欠陥検査装置の撮影方法での2つの真欠陥がある場合の挙動を説明する図である。
【図15】本発明に係る欠陥検査装置の欠陥テーブルの一例を示す図である。
【図16】本発明に係る欠陥検査装置の欠陥判定処理の流れの一例を示す図である。
【図17】本発明に係る欠陥検査装置の欠陥判定不可能な一実施例を説明する図である。
【図18】本発明に係る欠陥検査装置の欠陥判定不可能な他の実施例を説明する図である。
【図19】本発明に係る欠陥検査装置の欠陥判定不可能な他の実施例を説明する図である。
【符号の説明】
【0072】
1 カメラ
2 欠陥検出手段
3 フレームごと欠陥情報記憶手段
4 フレーム間の欠陥候補位置フレーム座標比較手段
5 欠陥マスク情報生成手段
6 レンズ汚れ警報生成手段
7 フレーム間の欠陥候補位置3D座標比較手段
8 レンズ汚れ警報手段
9 欠陥警報手段
10 欠陥警報生成手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物である円筒内面を撮像手段をずらしながら撮像して欠陥を検出する欠陥検査装置において、
撮像手段で撮像した1フレーム毎の画像データから欠陥候補を検出する欠陥検出手段と、
検出された前記欠陥候補を記憶する欠陥候補記憶手段と、
前記欠陥候補記憶手段で記憶された前フレームの画像データから検出された欠陥候補と現フレームの画像データから検出された欠陥候補とを二次元座標で比較し、前記欠陥候補の同一性を判定し、判定結果として二次元座標比較結果情報を生成する欠陥候補比較手段と、
前記欠陥候補記憶手段で記憶された欠陥候補と現フレームの画像データから検出された欠陥候補とを三次元座標で比較し、前記欠陥候補の同一性を判定し、判定結果として三次元座標比較結果情報を生成する三次元欠陥候補比較手段と、
前記二次元座標比較結果情報と前記三次元座標比較結果情報とに基づいて前記欠陥候補が撮像手段の汚れであると判定された場合、撮像手段欠陥警報信号を生成し、出力する撮像手段欠陥警報信号生成手段と、
前記二次元座標比較結果情報と前記三次元座標比較結果情報とに基づいて前記欠陥候補が検査対象物の欠陥であると判定された場合、欠陥警報信号を生成し、出力する欠陥警報信号生成手段と、を有する欠陥検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の欠陥検査装置において、
前記欠陥警報信号生成手段は、前記二次元座標比較結果情報が同一な欠陥候補がないとの情報の場合は、検査対象物に欠陥があると判定し、欠陥警報信号を生成する欠陥検査装置。
【請求項3】
請求項1記載の欠陥検査装置において、
前記欠陥警報信号生成手段は、前記二次元座標比較結果情報が同一な欠陥候補があるとの情報の場合、且つ前記三次元座標比較結果情報が同一な欠陥候補があるとの情報の場合は、検査対象物に欠陥があると判定し、欠陥警報信号を生成する欠陥検査装置。
【請求項4】
請求項1記載の欠陥検査装置において、
前記撮像手段欠陥警報信号生成手段は、前記二次元座標比較結果情報が同一な欠陥候補があるとの情報の場合、且つ前記三次元座標比較結果情報が同一な欠陥候補がないとの情報の場合は、撮像手段に汚れがあると判定し、撮像手段欠陥警報信号を生成する欠陥検査装置。
【請求項5】
請求項1記載の欠陥検査装置において、
前記欠陥候補記憶手段は、欠陥候補を識別する欠陥候補番号と、フレーム番号と、二次元座標上で欠陥候補が存在するフレーム座標情報と、三次元座標上で欠陥候補が存在する三次元座標情報と、欠陥候補の真,偽,保留の判定が記述された欠陥情報とが、関連付けられた欠陥テーブルが記憶されている欠陥検査装置。
【請求項6】
請求項1記載の欠陥検査装置において、
前記欠陥候補比較手段は、前記欠陥候補記憶手段で記憶された前フレームの画像データから検出された欠陥候補と現フレームの画像データから検出された欠陥候補とを二次元座標及び形状で比較し、前記欠陥候補の同一性を判定し、判定結果として二次元座標比較結果情報を生成する欠陥検査装置。
【請求項7】
請求項1記載の欠陥検査装置において、
前記三次元欠陥候補比較手段は、前記欠陥候補記憶手段で記憶された欠陥候補と現フレームの画像データから検出された欠陥候補とを三次元座標及び形状で比較し、前記欠陥候補の同一性を判定し、判定結果として三次元座標比較結果情報を生成する欠陥検査装置。
【請求項8】
請求項1記載の欠陥検査装置において、
前記欠陥候補比較手段及び前記三次元欠陥候補比較手段において、比較する前フレームの画像データが前記欠陥候補記憶手段に記憶されていない場合は、欠陥判定を保留とし、次フレームまで待つ欠陥検査装置。
【請求項9】
請求項1記載の欠陥検査装置において、
前記欠陥検出手段において、欠陥候補が検出できない場合は、検査対象物に欠陥がないと判定する欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−241650(P2008−241650A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86331(P2007−86331)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】