説明

欠陥検査装置

【課題】被検体(ガラス板)の表面の欠陥を内部や裏面よりも高精度に検出する。
【解決手段】投光器から投光された検査光17の一部に遮蔽部材20を挿入することにより回折光19を生成する。遮蔽部材20の外側を通過した検査光17はガラス板11の表面11a上の検査範囲14を照明し、回折光19はガラス板11の裏面11cの検査範囲22と内部の検査範囲23を照明する。回折光19は、検査光17よりも光強度が弱く、裏面11cに近くなるほど更に弱くなる。CCDラインセンサカメラ15は、検査範囲14,22,23に欠陥が存在する場合、各欠陥からの散乱光を受光する。検査範囲14の欠陥からの散乱光は強いから、微細な欠陥でも検出される。検査範囲23の欠陥からの散乱光は弱いから、大きな欠陥のみが検出される。検査範囲22の欠陥からの散乱光は検査範囲23の欠陥からの散乱光よりも更に弱いから、より大きな欠陥のみが検出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を透過する板状の被検体の表面等にある欠陥を検出する欠陥検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置やプラズマ表示装置等のフラットパネルディスプレイに用いる透明なガラス基板やフォトファブリケーション用のガラス板(プリント基板作成用等のフォトマスク)では、薄膜や透明電極などを形成する上で支障があるため、表面や裏面の破れ泡や内部の泡の他、表面に付着した異物や異物跡などの欠陥を検査する必要がある。
【0003】
このようなガラス板の欠陥を検査する欠陥検査装置としては、特許文献1,2に記載されたものが知られている。特許文献1記載の装置では、被検体であるガラス板に対して光束を投射し、ガラス板の表面または裏面に存在する欠陥での散乱光をCCDイメージセンサ(エリア(2次元)センサ)が受光する。そして、欠陥の映像をCCDイメージセンサの複数の素子に結像しその映像出力に基づいて、各欠陥の信号強度と面積とを求め、信号強度及び面積が各閾値以上か否かによって、透明電極などの形成に影響しない無害な欠陥(良欠陥)か、影響する有害な欠陥(不良欠陥)かを判別する。
【0004】
特許文献2記載の装置では、ガラス板の表面に検査光を照射し、検出カメラが続けて2回の散乱光を検出した場合、表面にある欠陥で散乱光が発生し、この散乱光がガラス板の内部を伝搬して裏面で反射したと見做して、ガラス板の表面に欠陥があると判断し、検出カメラが1回のみの散乱光を検出した場合、ガラス板の表面では散乱せずに内部に入射した検査光が裏面の欠陥で散乱したと見做して、裏面に欠陥があると判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−267858号公報
【特許文献2】特開2006−71284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の装置では、CCDイメージセンサを用いて欠陥の信号強度と面積とを求めるので、欠陥の検出に要する時間が長くなるとともに、CCDイメージセンサを用いるので、製造コストが高くなる。また、上記特許文献2記載の装置では、ガラス板の表面での欠陥が大きい場合は問題ないが、小さい場合には、表面の欠陥での散乱光がガラス板の内部を伝搬する間に減衰し、裏面での反射光が非常に弱くなる。このため、表面の欠陥であるにも係わらず、2度目の散乱光が検出されずに、裏面の欠陥であると誤判断される場合がある。
【0007】
また、液晶表示装置などに用いられるガラス板の場合、ガラス板の表面の方が裏面よりも重要であるため、表面の欠陥を確実に検出したいという要望が強いが、上記特許文献1,2記載のいずれの装置でも、裏面の欠陥も表面の欠陥と同じレベルで検出するため、過剰品質となり、得率低下となるという問題点がある。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、光透過性を有する板状の被検体(ガラス板や樹脂板など)の表面については微細な欠陥をも検出できるとともに被検体の内部や裏面については大きな欠陥のみを検出する比較的簡単な構成でローコストな欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の欠陥検査装置は、光透過性を有する板状の被検体の表面に対して斜めの方向から検査光を投光し、この検査光により前記被検体の表面上に設定された細長い第1検査範囲を照明する投光手段と、前記検査光内に挿入して検査光の一部を遮ることにより回折光を生成し、この回折光により、前記第1検査範囲に対峙する被検体の裏面側の第2検査範囲と、前記第1検査範囲と第2検査範囲との間の被検体の内部である第3検査範囲とを照明する遮蔽部材と、前記検査光が第1検査範囲にある欠陥にて散乱することにより生じる散乱光、前記回折光が第2,3検査範囲にある欠陥にて散乱することにより生じる散乱光をそれぞれ前記被検体の表面に対して前記投光手段よりも垂直に近い方向から受光する受光手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
前記被検体は、第1検査範囲の長手方向に対して直交する方向に搬送されることが好ましい。また、前記受光手段は、その受光視野の長手方向が第1検査範囲の長手方向と平行になるように配置されたラインセンサカメラであることが好ましい。
【0011】
前記遮蔽部材は、前記検査光の照射方向に沿って移動自在に設置され、前記被検体との距離が変更可能であることが好ましい。
【0012】
前記遮蔽部材は、その長手方向が第1検査範囲の長手方向に平行に長いほぼ長方形をしており、前記検査光内に挿入される長手方向の一方の端部は、先端の厚み方向に尖った形状をしていることが好ましい。
【0013】
前記遮蔽部材の前記検査光内に挿入される端部は、前記検査光の中心線に近接するように検査光内に挿入されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光透過性を有する板状の被検体に向けて投光手段から投光された検査光の一部に遮蔽部材を挿入することにより回折光を生成し、遮蔽部材の外側を通過した検査光で被検体の表面上に設定された細長い第1検査範囲を照明し、回折光で被検体の裏面側の第2検査範囲と内部の第3検査範囲を照明し、第1〜第3検査範囲に欠陥が存在する場合、欠陥からの散乱光を受光手段が受光するようにしたので、比較的簡単な構成でローコストでありながら、被検体の表面については微細な欠陥をも検出するとともに被検体の内部や裏面については大きな欠陥のみを検出することができる。
【0015】
被検体を第1検査範囲の長手方向に対して直交する方向に搬送するので、被検体の搬送に伴って被検体の全体にわたって検査を実施することができる。また、受光手段としてラインセンサカメラを用いるので、ローコスト化に寄与できる。
【0016】
遮蔽部材の被検体との距離を変更可能としたので、第2,3検査範囲に照射される回折光の光強度を調整することができる。
【0017】
遮蔽部材の端部は、先端の厚み方向に尖った形状をしているので、回折光を効率よく生成することができる。
【0018】
遮蔽部材の端部を検査光の中心線に近接するように配置したので、最も光強度が強い検査光の中心線は遮蔽されずに第1検査範囲を照明するとともに、中心線から離れるにつれてなだらかに光強度が弱くなる回折光を生成することができる。この回折光により第2検査範囲から第3検査範囲にかけて徐々に光強度が弱くなる光を照射することになるので、第2,第3検査範囲については小さな欠陥は検出せず、大きな欠陥のみを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る欠陥検査装置の主な構成を概略的に示す外観斜視図である。
【図2】遮蔽部材により回折光が生成される様子を示すとともにガラス板の表面,裏面,内部の各検査範囲を示す説明図である。
【図3】回折光の回折縞(光強度分布)ついての説明図である。
【図4】ガラス板に照射される検査光及び回折光の光強度分布についての説明図である。
【図5】ガラス板の表面の検査範囲に存在する欠陥を検出する様子を示す説明図である。
【図6】ガラス板の内部の検査範囲に存在する欠陥を検出する様子を示す説明図である。
【図7】ガラス板の裏面の検査範囲に存在する欠陥を検出する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の欠陥検査装置10の外観を示す図1において、欠陥検査装置10は、投光器、遮蔽部材、CCDラインセンサカメラという比較的簡単な構成でローコストでありながら、光透過性を有する板状の被検体である透明なガラス板11の表面11aについては微細な欠陥をも検出するとともに、ガラス板11の内部11bや裏面11cについては微細な欠陥は検出せず、大きな欠陥のみを検出する。これにより、表面11aにある欠陥と同じレベルで内部11bや裏面11cにある欠陥を検出する過剰品質が防止される。
【0021】
ガラス板11は、例えば1mm以上の一定の厚みを有する。ガラス板11の欠陥とは、ガラス板11の表面や裏面の破れ泡や内部の泡の他、表面や裏面に付着した異物や異物跡をいう。
【0022】
ガラス板11は、ベルトコンベア等の搬送手段により、表面11aを上向きにした状態で矢印12にて示す一定の方向に等速度で搬送される。ガラス板11の搬送ラインの上方には、ガラス板11の搬送方向と直交する方向に長い受光視野を持つCCDラインセンサカメラ15(受光手段)が設けられている。
【0023】
CCDラインセンサカメラ15は、表面11aに対して例えばガラス面に対して垂直な方向から、ガラス板11の搬送方向と直交する方向に長いライン状の検査範囲14(第1検査範囲)に存在する欠陥を検出する。検査範囲14は、CCDラインセンサカメラ15による表面11a上の検査範囲を表わす。CCDラインセンサカメラ15は、表面11a上の検査範囲14にフォーカスしており、検査範囲14に存在する欠陥からの散乱光を最も効率よく受光する。欠陥からの散乱光とは、後述する検査光が欠陥に照射された際に、欠陥によって検査光が乱反射することによって生じる。
【0024】
CCDラインセンサカメラ15は、図示しないパーソナルコンピュータに接続されている。パーソナルコンピュータは、CCDラインセンサカメラ15からの出力信号の強弱に基づいて、欠陥の有無を判定する。
【0025】
ガラス板11の搬送方向と直交する方向に細長く、前記検査範囲14を含む照明範囲16(ハッチングを施した部分)に向けて検査光17を投光する投光器18(投光手段)が設けられている。この投光器18は、例えば、ライン状に並べられた多数のLED(図示せず)と、その前方に配置されたシリンドリカルレンズ(図示せず)とからなり、幅はガラス板11の幅より僅かに広く厚みが薄いほぼ平行な検査光17を照明範囲16へ向かって放射する。なお、照明範囲16は、検査光17だけでなく、後述する回折光による照明範囲をも含む。
【0026】
投光器18から放射された検査光17の途中に、先が尖った形状をした端部20aが挿入され、検査光17の一部を遮蔽して回折光19を生成する遮蔽部材20が設けられている。この遮蔽部材20は、詳しくは後述するように検査光17の幅方向の中心線17aに沿って移動自在に設けられており、ガラス板11との距離を変更することができる。
【0027】
図2に示すように、検査光17は、ガラス板11の表面11aに対して角度θ(例えばθ=45°)をなしており、検査光17の厚み方向で最も光強度が強い中心線17aが検査範囲14の中心線14aに一致し、検査範囲14が検査光17の最も光強度が強い部分で照明されるように構成されている。
【0028】
遮蔽部材20の端部20aは、検査光17の中心線17aに近接した位置、例えば中心線17aまで2mmの距離まで検査光17内に挿入されている。遮蔽部材20の端部20aの外を通過した検査光17は、最も光強度が強いままガラス板11の表面11aに到達し、検査範囲14を含むガラス板11の幅方向に細長い領域を照明する。
【0029】
遮蔽部材20の端部20aにより生成される回折光19は、ハッチングで示すように、表面11aの検査範囲14に対峙する裏面11cの検査範囲22(第2検査範囲)と、検査範囲14と検査範囲22とに挟まれたガラス板11の内部11bの検査範囲23とを照明する。
【0030】
回折光19の光強度は、中心線17aから離れるにつれてなだらかに低下し、内部11bの検査範囲23よりも裏面11cの検査範囲22を照明する光の方が弱くなる。この点について、図3及び図4を参照して説明する。
【0031】
図3(A)に示すように、光を波動として扱う際、媒質中を伝わる波動に対し障害物(遮蔽部材25)が存在すると、波がその障害物の背景など、一見すると幾何学的には到達できない領域に回り込んで伝わっていく。ホイヘンスの原理では、伝搬する波動の次の瞬間の波面を、その波面それぞれの点から球面状の二次波が出ていると考える。この二次波の包絡面が次の瞬間の新たな波面を形成する。遮蔽部材25によって波動が回り込む。その際、伝搬距離によって同図(B)に示すような回折縞26が生じる。この回折縞26が、遮蔽部材25による回折光の光強度分布に該当する。回折縞26のピークから遮蔽部材25の端部までの幅X0は、次の数式1で表わされる。
【0032】
〔数1〕
X0=√(λz/π)
【0033】
例えば、z(遮蔽部材の端部からガラス板の表面までの距離)=50mm、平均的な波長λ=600nmとすると、X0の値は次のようになる。
X0≒0.1mm
【0034】
光強度が回折縞26のピークからなだらかに減衰してゆき、光強度がほぼゼロになる幅は、X0の約2倍の幅αと考えると、約0.2mmになる。しかしながら、これは遮蔽部材25の端部の形状が理想的なナイフエッジ形状である場合を仮定した理論値であって、実際には遮蔽部材25の端部のシャープネスが甘く、この端部での散乱光も生じるため、理論値の約10倍とし、約2mmと見做す。したがって、本実施形態に係る遮蔽部材20の端部とガラス板11との距離zが50mmの場合、ガラス板11の表面11a上で約2.8mmの幅となる(検査光の入射角が45°なので√2倍)。
【0035】
図4に示すように、回折光がガラス板11の内部に入り、CCDラインセンサカメラ15の受光光軸27を横切っていく。図中に仮想線にて示すように、回折光の光強度分布28はなだらかに光強度が低下していく形状なので、受光光軸27上において、ガラス板11の表面11aで光強度が最も強く、裏面11cに近づくにつれて光強度が低下する。この結果、内部11bの欠陥(異物等)が存在する位置が裏面11cに近づくほど、回折光による欠陥からの散乱光の強度が弱くなるから、CCDラインセンサカメラ15による欠陥の検出力が弱くなり、裏面11c上に存在する欠陥の検出力が最も弱くなる。また、裏面11c上に存在する欠陥の検出力が最も弱くなるように、回折光の端が受光光軸27が裏面11cと交差する近傍になるようにしている。
【0036】
遮蔽部材20は、破線で示す遮蔽部材24のように、検査光17の中心線17aに沿って移動自在に構成されており、ガラス板11の表面11aとの距離zを所定の範囲内で変更することができる。距離zを変更することにより、回折光19が検査範囲22,23を照明する光強度を調整することができ、距離zが小さいほど、検査範囲22,23に照射される回折光19の光強度は弱くなる。
【0037】
遮蔽部材20の移動機構は、どのような構成でもよく、例えば、中心線17aに平行に設置された細長いネジで遮蔽部材20を保持し、このネジを回転させることにより、遮蔽部材20をは中心線17aに平行に移動させるようにしてもよい。ネジの回転は、手動でもモータ駆動でもよい。
【0038】
このように構成された欠陥検査装置10の作用について説明する。検査範囲14,22,23のいずれにも欠陥が無い場合、図2に示すように、検査光17及び回折光19は、ガラス板11の表面11a及び裏面11cで正反射し、CCDラインセンサカメラ15に入射することが無い。したがって、CCDラインセンサカメラ15から検出信号は出力されない。
【0039】
図5に示すように、ガラス板11の表面11aの検査範囲14に破れ泡,異物,汚れ、傷などの欠陥30があれば、光強度が強い検査光17が欠陥30に当たり、欠陥30での散乱光がCCDラインセンサカメラ15に入射するから、CCDラインセンサカメラ15から高出力の検出信号が出力される。したがって、欠陥30が検査範囲14に存在する場合、欠陥30が微細であっても検出される。
【0040】
図6に示すように、内部11bの検査範囲23に気泡や異物等の欠陥31がある場合、検査光17よりも光強度が非常に弱い回折光19が欠陥31に当たるため、欠陥31での散乱光はかなり弱いものとなる。したがって、欠陥31は、かなり大きなサイズのものでない限り、CCDラインセンサカメラ15によって検出されることがなく、検査範囲23の欠陥が過剰検出されることがない。
【0041】
図7に示すように、裏面11cの検査範囲22に破れ泡,異物,汚れ、傷などの欠陥32がある場合、内部11bの検査範囲23に照射される回折光19よりも更に光強度が弱い回折光19が欠陥32に当たるため、欠陥32での散乱光は欠陥31での散乱光よりも更に弱いものとなる。したがって、欠陥32は、かなり大きなサイズのものでない限り、CCDラインセンサカメラ15によって検出されることがなく、検査範囲22の欠陥が過剰検出されることがない。
【0042】
検査範囲22,23での欠陥検出感度は、遮蔽部材20を検査光17の中心線17aに沿って移動させ、ガラス板11の表面11aからの距離zを変更することにより所定の範囲内で調整可能である。
【0043】
遮蔽部材20を設けない場合〔条件1〕、距離zを50mmとした場合〔条件2〕、距離zを20mmとした場合〔条件3〕のそれぞれについて実験を行なった結果を下記の表1〜3に示す。遮蔽部材20の検査光17に挿入される端部20aは、先端の厚み方向の角度が80度以下に尖った形状とした。投光器18から検査範囲14の中心までの距離を100mmとし、投光器18から放出された検査光17が遮蔽部材20によって遮光される遮光量が30%〜50%となるようにした。また、CCDラインセンサカメラ15の分解能を検査範囲14の中心で約20μm/画素に設定した。また、ガラス板11としては、厚み5mm、屈折率1.5のものを使用した。
【0044】
欠陥(異物)の存在部位として、表面,内部(ガラス板厚みのほぼ中央部),裏面の各々について、検出能力を評価した。評価結果指標は、下記のとおりである。
○:散乱光の受光信号が十分で欠陥を安定検出
△:散乱光の受光信号が確認できるも十ではなく欠陥を検出するかしないかの限界
×:散乱光の受光信号が確認できず欠陥を検出しない
【0045】
〔条件1〕による結果(遮蔽部材なし)
【表1】

【0046】
〔条件2〕による結果(距離z=50mm)
【表2】

【0047】
〔条件3〕による結果(距離z=20mm)
【表3】

【0048】
このように距離zを調整することにより、表面11aに存在する欠陥30の検出精度に影響を与えることなく、内部11bや裏面11cに存在する欠陥31,27の検出精度を変化させることができる。これにより、検査対象である被検体の用途に応じて、内部や裏面に存在する欠陥を過剰に検出することを防止したり、逆にできるだけ検出するようにできる。なお、本発明は、本実験での数値に限定されないのは勿論である。
【0049】
以上説明した実施形態では、回折光を生成するために端部を尖った形状に形成した遮蔽部材を用いたが、本発明はこれに限定されることなく、例えばスリットを形成した遮蔽部材を用いることもできる。
【0050】
上記実施形態では、被検体として透明なガラス板を検査する場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、例えばある程度の光透過性を有する樹脂製の板など、完全には透明でない板状の被検体も検査することができる。
【符号の説明】
【0051】
10 欠陥検査装置
11 ガラス板
14,22,23 検査範囲
15 CCDラインセンサカメラ
16 照明範囲
17 検査光
18 投光器
19 回折光
20,25 遮蔽部材
28 光強度分布
27 受光光軸
30〜32 欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する板状の被検体の表面に対して斜めの方向から検査光を投光し、この検査光により前記被検体の表面上に設定された細長い第1検査範囲を照明する投光手段と、
前記検査光内に挿入して検査光の一部を遮ることにより回折光を生成し、この回折光により、前記第1検査範囲に対峙する被検体の裏面側の第2検査範囲と、前記第1検査範囲と第2検査範囲との間の被検体の内部である第3検査範囲とを照明する遮蔽部材と、
前記検査光が第1検査範囲にある欠陥にて散乱することにより生じる散乱光、前記回折光が第2,3検査範囲にある欠陥にて散乱することにより生じる散乱光をそれぞれ前記被検体の表面に対して前記投光手段よりも垂直に近い方向から受光する受光手段と
を備えたことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記被検体は、第1検査範囲の長手方向に対して直交する方向に搬送されることを特徴とする請求項1記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記受光手段は、その受光視野の長手方向が第1検査範囲の長手方向と平行になるように配置されたラインセンサカメラであることを特徴とする請求項1または2記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、前記検査光の照射方向に沿って移動自在に設置され、前記被検体との距離が変更可能であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記遮蔽部材は、その長手方向が第1検査範囲の長手方向に平行に長いほぼ長方形をしており、前記検査光内に挿入される長手方向の一方の端部は、先端の厚み方向に尖った形状をしていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記遮蔽部材の前記検査光内に挿入される端部は、前記検査光の中心線に近接するように検査光内に挿入されることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載の欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−203081(P2011−203081A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70059(P2010−70059)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】