説明

欠陥識別方法

【課題】繰り返しパターン上に存在する凹み状欠陥と突起状欠陥を識別する方法を提供する。
【解決手段】繰返しパターンを有する基板を撮像して得られる濃淡画像中に含まれる欠陥を識別する方法であって、注目画素と代表的な繰返しピッチ分だけ離れた比較画素群の輝度を比較演算する比較演算処理を行う事により、パターン背景が除去された比較処理画像を取得し、該比較処理画像に2値化処理を施して明欠陥および暗欠陥の2値画像を得、得られた明欠陥2値画像と暗欠陥2値画像に膨張処理を施し、前記膨張処理を行った2つの画像のAND演算処理を行い,前記AND演算処理を行ったAND演算処理画像から凹み状欠陥と突起状欠陥を識別することを特徴とする欠陥識別方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル、プラズマディスプレイ等に使用されるデバイスに形成される繰返しパターン中の欠陥検査を行う際の欠陥識別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶パネル、プラズマディスプレイ、半導体ウェハ等などのデバイスは、部分的なパターンと同じものが全体に繰返し形成されているものが多く、その繰返しパターン中に含まれる欠陥を対象として検出する場合、例えば次のような処理により欠陥を検出していた。
【0003】
まず、画像入力した繰返しパターンを有する原画像の各画素(x、y)を次式の処理を行う。
【0004】
g(x、y)=Min{|f(x、y)−f(x+Δx、y)|、|f(x、y)−f(x、y−Δy)|、|f(x、y)−f(x−Δx、y)|、|f(x、y)−f(x、y+Δy)|}+A・・・・・(1)
(1)の処理を行い、パターン消去を行う。ここで、g(x、y)は処理後の位置(x、y)における輝度、f(x、y)は処理前(原画像)の位置(x、y)における輝度、Δx、Δyはx方向、y方向の繰返し周期であり、例えば、|f(x、y)−f(x+Δx、y)|は、注目画素(処理前(原画像)の位置(x、y)の画素f(x、y))と、注目画素からx方向にΔxだけ離れた位置における画素の輝度の差の絶対値を意味する。Minは各要素の最小のものを選択しすることを示している。Aは処理後画像において基準濃度として加えられる定数であり、8ビット256階調の場合はその中央値である128とすることが多い。したがって、式(1)は、注目画素の輝度と、±Δxだけ離れた左右方向の比較画素群および±Δyだけ離れた上下方向の比較画素群の輝度との差の絶対値を取得し、その最小値に128を加えた値を処理後の位置(x、y)における輝度とする処理であることを意味する。
【0005】
繰返しパターン中に含まれる欠陥画像にこのような処理を施すことによって、図1に示すように繰返しパターン中に含まれる欠陥画像は、輝度値約128の無地上に存在する欠陥画像(以下、比較処理画像)に変換することができ、比較処理画像に対して128を基準とした適当な閾値を設けて2値化処理を施すことにより、明欠陥、暗欠陥を抽出することができる。
【0006】
しかし、前述のような従来の方法では、明欠陥、暗欠陥を抽出することはできても、欠陥種類を識別するには限界があるため、その欠陥の発生要因を特定することが困難で、製造工程に適切な対策が講じられることは稀であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みなされたものであり、その課題とするところは、液晶パネル、プラズマディスプレイ等の繰返しパターンが形成されている検査対象物に含まれる欠陥種類を識別する欠陥識別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明は、繰返しパターンを有する基板を撮像して得られる濃淡画像中に含まれる欠陥を識別する方法であって、注目画素と代表的な繰返しピッチ分だけ離れた比較画素群の輝度を比較演算する比較演算処理を行う事により、パターン背景が除
去された比較処理画像を取得し、該比較処理画像に2値化処理を施して明欠陥および暗欠陥の2値画像を得、得られた明欠陥2値画像と暗欠陥2値画像に膨張処理を施し、前記膨張処理を行った2つの画像のAND演算処理を行い,前記AND演算処理を行ったAND演算処理画像から凹み状欠陥と突起状欠陥を識別することを特徴とする欠陥識別方法である。
【0009】
本発明の請求項2に係る発明は、前記膨張処理は、明欠陥2値画像に施す膨張処理の方向と、暗欠陥2値画像に施す膨張処理の方向を反対方向とすることによって、さらに前記明欠陥2値画像に施す膨張処理の方向と前記暗欠陥2値画像に施す膨張処理の方向を反対方向とすることをによって凹み状欠陥と突起状欠陥を識別することを特徴とする請求項1記載の欠陥識別方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液晶パネル、プラズマディスプレイ等に使用されるデバイスに形成される繰返しパターン中の欠陥検査を行う際に欠陥の種類を識別することができるので、その発生要因を特定し、製造工程に適切な対策を促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。図2は、本発明の繰返しパターンを有する基板の検査方法の実施形態を示した図である。本発明の検査方法は、搬送手段1により繰返しパターンを有する基板2を等速でY方向に搬送する。基板2に向け反射照明3が照射され、その正反射光をラインセンサカメラ4で捕らえる。また、基板2に向け透過照明6が照射され、その透過光をラインセンサカメラ7で捕らえる。ラインセンサカメラ4の映像信号は反射画像処理ユニット5に送られ、ラインセンサカメラ7の映像信号は透過画像処理ユニット8に送られる。反射画像処理ユニット5は画像入力部51、注目画素と代表的な繰返しピッチ分だけ離れた比較画素群の輝度を比較演算処理する比較演算処理処理により、パターンが消去された比較処理画像を得る比較処理部52、該比較処理画像に2値化処理を施して明欠陥、暗欠陥の候補を抽出する2値画像処理部53、および演算処理を行うラベリング処理部54を具備する。透過画像処理ユニット8についても同様である。
【0012】
繰返しパターンを有する基板2を等速で搬送しつつ、ラインセンサカメラ4および7を駆動するとによって、各Y座標毎にX座標方向のライン画像が順次撮像され、反射画像入力部51および透過画像入力部81に送られる。以下、図3を用いて反射画像処理ユニット5について説明する。
【0013】
図3(a)は、反射照明3と反射撮像用ラインセンサカメラ4で凹み状欠陥を撮像する場合の概略図である。図の矢印の向きに基板が搬送される場合、図示したように凹み状欠陥の先頭部31の曲面部においてラインセンサカメラに照射される照明の反射光の強度は、正反射光がラインセンサカメラに直接入射するために、凹み状欠陥の後方部32におけるそれに比べ、著しく強くなる。
【0014】
一方、図3(b)は、反射照明3と反射撮像用ラインセンサカメラ4で突起状欠陥を撮像する場合の概略図である。図の矢印の向きに基板が搬送される場合、図示したように突起状欠陥の後方部32の曲面部においてラインセンサカメラに照射される照明の反射光の強度は、正反射光がラインセンサカメラに直接入射するために、突起状欠陥の先頭部31におけるそれに比べ、著しく強くなる。
【0015】
図4は撮像された原画像を注目画素と代表的な繰返しピッチ分だけ離れた比較画素群の輝度を比較演算処理する比較演算処理処理により、パターンが消去された比較処理画像に
2値化処理を施して明欠陥、暗欠陥の候補を抽出した画像を模式的に示したもので、前記反射照明3と反射撮像用ラインセンサカメラ4によって、凹み状欠陥12は明欠陥15に続いて暗欠陥16が対になって撮像され、一方、突起状欠陥13では暗欠陥16に続いて明欠陥15が対になって撮像される。また、透過照明6および透過撮像用ラインセンサカメラ7によって(突起状欠陥、凹み状欠陥ではない)通常の明欠陥10、および(突起状欠陥、凹み状欠陥ではない)通常の暗欠陥11が撮像された図を示す。ここで、矢印19は画像を取り込む時間軸を示し、画像取り込みは図4の上から下に向かって取り込むものとする。
【0016】
次に、検査方法を詳しく説明する。図6を用いて凹み状欠陥の検出を例として説明する。図6(a)は図5の原画像をパターン背景を除去し、明欠陥を2値化処理したもので、図6(b)は図5の原画像をパターン背景を除去し、暗欠陥を2値化処理した画像を示す。ここで、前記2値化処理された明欠陥10および15と暗欠陥11および16は共に論理1で背景を論理0とする。
【0017】
図6(c)は図6(a)の明欠陥2値画像を膨張処理したもので図8(a)に示す下方向(ここで云う下方向とは画像の取り込み時刻が遅い時刻)に行われる。
【0018】
図6(d)は暗欠陥2値画像を膨張処理したもので図8(b)に示す上方向(ここで云う上方向とは画像の取り込み時刻が早い時刻)に行われる。
【0019】
ここで云う膨張処理とは、図8に示す3×6サイズの膨張処理を行っているが、適用する膨張処理のサイズは3×6に限定されるものではなく、m×nサイズと一般化できることはいうまでもない。また、注目画素の位置についても図示した位置に限定されるものではなく、任意に選択可能であるものとする。
【0020】
さらに前記膨張処理によって得られた図6(c)の明欠陥膨張処理画像22と図6(d)の暗欠陥膨張処理画像23のAND演算処理を行い、その結果図6(e)のAND演算処理画像24−1および24−2を得る。
【0021】
ここで、前記AND処理画像24−2は突起状欠陥13の一部が残っているがサイズとしては極小であるので、通常用いられている細線除去技術を使って除去する。結果として図6(e)の凹み状欠陥図のAND処理画像24−1が、凹み状欠陥12として識別される。
【0022】
また、次の方法によっても凹み欠陥は検出できる。図6(c)と図6(d)のNAND演算処理によってNAND演算処理画像を得た後、前記NAND処理画像と図6(a)とのAND演算処理画像(AND演算処理画像1)を得、さらに図6(a)と前記AND演算処理画像1の引き算処理することによって凹み欠陥が検出できる。同様に、前記NAND処理画像と図6(b)とのAND演算処理画像(AND演算処理画像2)を得、さらに図6(b)と前記AND演算処理画像2の引き算処理することによって凹み欠陥が検出できる。
【0023】
さらに次の方法によっても凹み欠陥は検出できる。すなわち図6の(e)のAND処理画像24−1およびAND処理画像24−2を論理0、背景を論理1に反転し、該反転画像と図6(a)のAND演算処理を行ってAND処理画像(AND処理画像3)を得、図6(a)と前記得られたAND処理画像(3)の引き算を行い、その結果得られた画像を凹み欠陥と識別することもできる。あるいは該反転画像と図6(b)のAND演算処理を行ってAND処理画像(AND処理画像4)を得、図6(b)と前記得られたAND処理画像(4)の引き算を行い、その結果得られた画像を凹み欠陥と識別することもできる。
【0024】
次に、図7を用いて突起状欠陥の検出を例として説明する。図7(a)は図6(a)と同じく図5の原画像をパターン背景を除去し、明欠陥を2値化処理したもので、図7(b)は図5の原画像をパターン背景を除去し、暗欠陥を2値化処理した画像を示す。ここで、前記2値化処理された明欠陥10および15と暗欠陥11および16は共に1で背景を0とする。
【0025】
図7(c)は図7(a)の明欠陥2値画像を膨張処理したもので図8(a)に示す方向とは逆に、図9(a)に示す上方向(ここで云う上方向とは画像の取り込み時刻が早い時刻)に行われる。
【0026】
図7(d)は暗欠陥2値画像を膨張処理したもので図9(b)に示す下方向(ここで云下方向とは画像の取り込み時刻が遅い時刻)に行われる。
【0027】
さらに前記膨張処理によって得られた図7(c)の明欠陥膨張処理画像25と図7(d)の暗欠陥膨張処理画像26のAND演算処理を行い、その結果図7(e)のAND演算処理画像27−1および27−2を得る。
【0028】
ここで、前記AND処理画像27−2は凹み状欠陥12の一部が残っているがサイズとしては極小であるので、通常用いられている細線除去技術を使って除去する。結果として図7(e)の突起状欠陥のAND処理画像27−1が、突起状欠陥13として識別される。
【0029】
突起状欠陥の検出においても、上記凹み状欠陥の検出の別の方法で述べたと同様に前記検出とは別の方法で検出できる。
【0030】
図6(e)の凹み状欠陥のAND処理画像24−1および図7(e)突起状欠陥のAND画像27−1は共に凹み状欠陥12、突起状欠陥13そのものではないが、欠陥が発生している位置を示している。
【0031】
また、通常の明欠陥10および通常の暗欠陥は図6(a)および図6(b)から(または図7(a)および図7(b)から欠陥のサイズが凹み状欠陥12、突起状欠陥13よりもはるかに大きいことから検出が容易に行える。
【0032】
以上のように、本発明の方法によれば、凹み状欠陥と突起状欠陥の種類を識別することができ、製造工程に適切な対策が講じられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】明欠陥、暗欠陥を抽出する方法の説明図
【図2】本発明に係る基板の検査方法を示した図。
【図3】本発明に係る凹み状欠陥および突起状欠陥を撮像する方法を示す概略図。
【図4】本発明に係る明欠陥、暗欠陥の候補を抽出した画像を示す図。
【図5】本発明に係る凹み状欠陥と突起状欠陥を検出する方法を説明するための撮影さ れた原画像を模式的に示した図。
【図6】本発明に係る凹み状欠陥を検出する方法を示す説明図。(a)は原画像の明欠陥二値化画像を示す。(b)は原画像の暗欠陥二値化画像を示す。(c)は明欠陥の膨張処理を示す。(d)は暗欠陥の膨張処理を示す。(e)は(c)と(d)のAND演算処理を行い、検出された凹み状欠陥を示す。
【図7】本発明に係る突起状欠陥を検出する方法を示す説明図。
【図8】本発明に係る膨張処理を示す図で暗欠陥を上方向に、明欠陥を下方向に膨張することを示す説明図。
【図9】本発明に係る膨張処理を示す図で明欠陥を上方向に、暗欠陥を下方向に膨張することを示す説明図。
【符号の説明】
【0034】
1・・・ 搬送手段
2・・・ 繰返しパターンを有する基板
3・・・ 反射照明
4・・・ 反射撮像用ラインセンサカメラ
5・・・ 反射画像処理ユニット
6・・・ 透過照明
7・・・ 透過撮像用ラインセンサカメラ
8・・・ 透過画像処理ユニット
31・・・欠陥の先頭部
32・・・欠陥の後方部
10・・・通常の明欠陥
11・・・通常の暗欠陥
12・・・凹み状欠陥
13・・・突起状欠陥
15・・・明欠陥
16・・・暗欠陥
17・・・画像を取り込む時間軸
22・・・明欠陥の膨張処理
23・・・暗欠陥の膨張処理
24−1・・・22と23の画像のAND演算処理後の画像
24−2・・・22と23の画像のAND演算処理後の画像のうち突起状欠陥の一部
27−1・・・25と26の画像のAND演算処理後の画像
27−2・・・25と26の画像のAND演算処理後の画像のうち凹み状欠陥の一部
25・・・明欠陥の膨張処理(22とは逆方向)
26・・・暗欠陥の膨張処理(23とは逆方向)
52・・・比較処理部
53・・・2値画像処理部
54・・・ラベリング処理部
81・・・画像入力部
82・・・比較処理部
83・・・2値画像処理部
84・・・ラベリング処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰返しパターンを有する基板を撮像して得られる濃淡画像中に含まれる欠陥を識別する方法であって、注目画素と代表的な繰返しピッチ分だけ離れた比較画素群の輝度を比較演算する比較演算処理を行う事により、パターン背景が除去された比較処理画像を取得し、該比較処理画像に2値化処理を施して明欠陥および暗欠陥の2値画像を得、得られた明欠陥2値画像と暗欠陥2値画像に膨張処理を施し、前記膨張処理を行った2つの画像のAND演算処理を行い,前記AND演算処理を行ったAND演算処理画像から凹み状欠陥と突起状欠陥を識別することを特徴とする欠陥識別方法。
【請求項2】
前記膨張処理は、明欠陥2値画像に施す膨張処理の方向と、暗欠陥2値画像に施す膨張処理の方向を反対方向とすることによって、さらに前記明欠陥2値画像に施す膨張処理の方向と前記暗欠陥2値画像に施す膨張処理の方向を反対方向とすることをによって凹み状欠陥と突起状欠陥を識別することを特徴とする請求項1記載の欠陥識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−85238(P2010−85238A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254313(P2008−254313)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】