止水処理方法および絶縁被覆電線
【課題】止水処理によって、回路基板等への水の移動(浸入)を簡単、確実に防止可能にする。
【解決手段】芯線41は、その一端が絶縁被覆42から露出し、且つ、絶縁被覆42が剥離され絶縁被覆42から露出した露出部Aが該芯線41の一端から他端までの任意の箇所にて形成され、止水剤48が、露出部Aから芯線41の他端に向かって充填されている。
【解決手段】芯線41は、その一端が絶縁被覆42から露出し、且つ、絶縁被覆42が剥離され絶縁被覆42から露出した露出部Aが該芯線41の一端から他端までの任意の箇所にて形成され、止水剤48が、露出部Aから芯線41の他端に向かって充填されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド電線の端末から引き出されるドレイン線と接続される絶縁被覆電線およびこの絶縁被覆電線の止水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンルーム内に配設されるワイヤーハーネスには、絶縁被覆電線とともにドレイン線を併設したシールド線が用いられる。このドレイン線の設置によって、絶縁被覆電線の芯線に流れる信号へのノイズの混入をより効果的に防止することができる。また、ドレイン線はシールド用の編組線等に電気的に接続させる必要があるため、ドレイン線自体には絶縁被覆が施されていない。
【0003】
ところが、このようなシールド線が被水領域に配置されている場合に、例えばエンジンルームの洗浄を行った場合に、被水によってドレイン線に付着した水滴等がそのドレイン線を伝わって移動し、そのドレイン線に繋がる回路基板上の回路や回路素子に付着し、これらに短絡事故などのダメージを与える虞がある。
【0004】
これに対して、ドレイン線に低コストで止水処理を施したシールド線が、特許文献1に提案されている。これは図6乃至図8に示す通りであり、シールド線10が自動車のエンジンルームの被水領域に配線され、シールド線10の端末をコネクタ30に接続し、コネクタ30を被水領域に配置するEFI(電子制御式燃料噴射)用のECU(図示せず)のコネクタ収容部に嵌合するものである。前記シールド線10の皮剥ぎ端末から引き出されるドレイン線11に止水処理を施している。
【0005】
シールド線10は、図7に示すように、2本の信号線となる絶縁被覆電線12(以下、コア線12と称す)とドレイン線11とを内包し、このドレイン線11とコア線12を金属箔からなるシールド層13およびシース14で順次被覆し、シールド層13にドレイン線11を接触させて導通している。前記シールド線10は、先端から40mm程度の最短寸法Lでシース14およびシールド層13を切断剥離してドレイン線11とコア線12とを引き出している。
【0006】
前記シールド線10の端末から引き出されるドレイン線11は、複数の素線を撚った撚り線からなり、図8に示すように、ドレイン線11の端末側と皮剥ぎ端側に非防水熱収縮チューブ15A、15Bを被せて熱収縮すると共に、これら非防水熱収縮チューブ15Aと15B間のドレイン線11の素線間にホットメルトチューブを加熱溶融したホットメルト16’を浸透させて充填し固化させている。
【0007】
また、ドレイン線11の端末側の非防水熱収縮チューブ15Aから皮剥ぎ端側の非防水熱収縮チューブ15Bにかけて、ホットメルト16’の充填位置全体を覆うように防水熱収縮チューブ17を被せて熱収縮させている。防水熱収縮チューブ17の内周面には、予め熱溶融性止水剤18(以下、「止水剤18」と称す)が塗布されており、該止水剤18を加熱収縮時に溶融して、ホットメルト16’の充填位置とその軸線方向両側の外周に充填している。
【0008】
ホットメルト16’を充填する箇所のドレイン線11は撚り線をより戻してホットメルト16’が素線間に浸透しやすくしている。また、非防水熱収縮チューブ15Aの先端と端子20の圧着部との境界部分にはゴム栓21を取り付けている。ゴム栓21は他のコア線12と端子20との境界部分にも装着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−234974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に記載のシールド電線の止水構造にあっては、皮剥ぎ端から露出させた裸のドレイン線の外周を、非防水熱収縮チューブ、ホットメルトチューブおよび防水熱収縮チューブを重ね合わせて覆う構成となり、使用するチューブの種類と数量が多いために、ワイヤーハーネスの小型化および軽量化の阻害要因となる。そこで、シールド電線のドレイン線には止水処理を施さない一方で、そのシールド電線とは別に止水処理が施された電線を用意し、そのシールド電線のドレイン線と、別に用意した電線と、をジョイント端子を介して連結することで、止水処理に伴うシールド電線の大型化を防ぐとともに、ドレイン線を伝わる水滴が別に用意した電線によって止水されるようにする組み合わせが考えられる。
【0011】
前記止水剤としては、滴下直後の初期状態では流動性を有し、滴下後は固化するも柔軟性、弾性を持ち、シール特性の良好なものが望ましい。例えば、自然硬化特性や光硬化特性を持つシリコン樹脂、あるいはエポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ポリブタジエンのアクリレートのような多官能性モノマー等を用いることができる。本実施形態では、後述のように、気密室内気圧に変化するときに、芯線上に滴下された止水材を各芯線間に浸透させることが必要であり、このために前述のように止水材は所定時間に亘って流動性を保持することが必要になる。
【0012】
上述したシールド電線のドレイン線と、別に用意した電線と、をジョイント端子を介して連結する構成の場合、その別に用意した電線の芯線に対する止水処理は、止水剤がジョイント端子と芯線との導通や連結強度を妨げないように注意されなければならない。すなわち、別に用意した電線の芯線に止水剤を充填する際、ジョイント端子と接触する箇所には止水剤が充填されないようにしなければならない。
【0013】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シールド電線のドレイン線と、止水処理が施された絶縁被覆電線と、をジョイント端子を介して連結する場合に、絶縁被覆電線に芯線とジョイント端子の導通や連結強度を妨げることのない止水処理を施すための止水処理方法、およびその止水処理が施された絶縁被覆電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するために、本発明に係る止水処理方法は、下記(1)および(2)を特徴としている。
(1) 他端にアース端子を接続可能な絶縁被覆電線の絶縁被覆を2箇所で剥離することによって、前記絶縁被覆電線の他端側の第1の鞘部と、前記絶縁被覆電線の一端側の第2の鞘部と、前記第1の鞘部および前記第2の鞘部に挟まれる第3の鞘部と、に前記絶縁被覆を分断する被覆分断工程と、
前記第3の鞘部を芯線に沿わせて前記絶縁被覆電線の一端側に向けて移動することによって、前記第1の鞘部と前記第3の鞘部の間から前記芯線の一部を露出させた露出部を前記絶縁被覆電線に形成する芯線露出工程と、
前記絶縁被覆電線の前記露出部から前記絶縁被覆電線の一端までを密閉容器の内に収容し、且つ、前記絶縁被覆電線の他端を前記密閉容器の外に配置した状態で、前記密閉容器内を加圧する加圧工程と、
前記露出部から露出する前記芯線の一部に止水剤を滴下させる止水剤滴下工程と、
前記第2の鞘部が抜き去られて前記絶縁被覆から露出する前記絶縁被覆電線の一端にジョイント端子を接続する接続工程と、
を有すること。
(2) 他端にアース端子を接続可能な絶縁被覆電線の絶縁被覆を2箇所で剥離することによって、前記絶縁被覆電線の他端側の第1の鞘部と、前記絶縁被覆電線の一端側の第2の鞘部と、前記第1の鞘部および前記第2の鞘部に挟まれる第3の鞘部と、に前記絶縁被覆を分断する被覆分断工程と、
前記第3の鞘部を芯線に沿わせて前記絶縁被覆電線の一端側に向けて移動することによって、前記第1の鞘部と前記第3の鞘部の間から前記芯線の一部を露出させた露出部を前記絶縁被覆電線に形成する芯線露出工程と、
前記絶縁被覆電線の前記露出部から前記絶縁被覆電線の一端までを密閉容器の外に配置し、且つ、前記絶縁被覆電線の他端を前記密閉容器の内に収容した状態で、前記密閉容器内を減圧する減圧工程と、
前記露出部から露出する前記芯線の一部に止水剤を滴下させる止水剤滴下工程と、
前記第2の鞘部が抜き去られて前記絶縁被覆から露出する前記絶縁被覆電線の一端にジョイント端子を接続する接続工程と、
を有すること。
【0015】
上記(1)または(2)の構成の止水処理方法によれば、芯線の一部を露出させた露出部に滴下された止水剤が、ジョイント端子が接続される絶縁被覆電線の一端とは反対側の他端に向けて浸透するため、ジョイント端子と接触する絶縁被覆電線の芯線の一部に止水剤が付着することがない。したがって、止水剤が芯線とジョイント端子の導通や連結強度を妨げることを防ぐことができる。
【0016】
前述した目的を達成するために、本発明に係る絶縁被覆電線は、下記(3)を特徴としている。
(3) 芯線と、前記芯線を覆う絶縁被覆と、を備える絶縁被覆電線であって、
前記芯線は、その一端が前記絶縁被覆から露出し、且つ、前記絶縁被覆が剥離され前記絶縁被覆から露出した露出部が該芯線の一端から他端までの任意の箇所にて形成され、
止水剤が、前記露出部から前記芯線の他端に向かって充填されている、
こと。
【0017】
上記(3)の構成の絶縁被覆電線によれば、ジョイント端子と接触する絶縁被覆電線の芯線の一部に止水剤が付着していないため、止水剤が芯線とジョイント端子の導通や連結強度を妨げることがない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の止水処理方法および絶縁被覆電線によれば、シールド線の端末から引き出されるドレイン線等から絶縁被覆電線のアース端子側に水が浸入することを回避できる。従って絶縁被覆電線を通して回路基板等の回路や電子部品への水の移動(浸入)を簡単、確実に防止でき、結果として、その回路や電子部品等の絶縁劣化や短絡事故を簡単、軽量な構成にて確実に回避することができる。
さらに、芯線の一部を露出させた露出部に滴下された止水剤が、ジョイント端子が接続される絶縁被覆電線の一端とは反対側の他端に向けて浸透するため、ジョイント端子と接触する絶縁被覆電線の芯線の一部に止水剤が付着することがない。したがって、止水剤が芯線とジョイント端子の導通や連結強度を妨げることを防ぐことができる。
【0019】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る絶縁被覆電線の実施形態を概念的に示す正面図である。
【図2】図1に示す絶縁被覆電線をドレイン線に接続した状態の正面図である。
【図3】図2に示した絶縁被覆電線およびドレイン線を収束テープで覆った状態の正面図である。
【図4A】(a)〜(d)は、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す手順を示す説明図である。
【図4B】(e)〜(g)は、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す手順を示す説明図である。
【図4C】(h)、(i)は、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す手順を示す説明図である。
【図5A】(a)〜(d)は、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す別の手順を示す説明図である。
【図5B】(e)〜(g)は、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す別の手順を示す説明図である。
【図5C】(h)、(i)は、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す別の手順を示す説明図である。
【図6】従来のシールド線を示す正面図である。
【図7】図6に示すシールド線の斜視図である。
【図8】図6におけるドレイン線の止水処理構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態にかかる絶縁被覆電線およびその止水処理方法の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、絶縁被覆電線が一端にアース端子を有するものを例にして説明する。
【0022】
ここで、図1は本発明に係る絶縁被覆電線の実施形態を概念的に示す正面図、図2は、図1に示す絶縁被覆電線をドレイン線に接続した状態の正面図、図3は、図2に示した絶縁被覆電線およびドレイン線を収束テープで覆った状態の正面図、図4A〜図4Cは、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す手順を示す説明図、図5A〜図5Cは、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す別の手順を示す説明図である。
【0023】
本発明の実施形態に係る絶縁被覆電線は、例えば車両におけるエンジンルームの被水領域に配置されたシールド線の皮剥ぎ端末からコア線とともに引き出されたドレイン線に接続される。ドレイン線は多数本の導電性の素線からなり、絶縁被覆がなされておらず、金属編組のチューブや金属箔からなるシールド層と接触されている。なお、このドレイン線には止水処理が施されていない。
【0024】
絶縁被覆電線40は芯線(内部導体)41の外周に絶縁被覆42を被せたものからなり、この絶縁被覆42の一端である皮剥ぎ端末から芯線(内部導体)41の所定長分が引き出されている。この引き出された芯線41にアース端子43が接続されている。このアース端子43の芯線41に対する接続を行うために、まず、アース端子43の導体バレル44、45、46が開いた状態で、これらの導体バレル44、45間に絶縁被覆電線40の絶縁被覆42が除去された側の芯線41がセットされる。また、導体バレル46には絶縁被覆42がセットされる。そして、これらのセット後に、前記導体バレル44、45、46を閉じる方向に変形させる処理が行われ、各バレル44、45およびバレル46がそれぞれ芯線41および絶縁被覆42を加締める。
【0025】
一方、絶縁被覆電線40の一端部(アース端子43の接続側とは反対側の端部)が分断されて、鞘部47が形成されており、この鞘部47が芯線41に沿って絶縁被覆電線40の一端部方向に位置がずらされている。この鞘部47の位置ずれによって、このずれた部位で芯線41が絶縁被覆42の外へ露出することとなる。この芯線41が露出する露出部Aからは、後述のように液状の止水剤48が芯線41と絶縁被覆42との間隙に圧入され、絶縁被覆電線40のアース端子43側に向けて浸透した後固化されて、絶縁被覆電線40の止水処理がなされている。図1では、止水剤48が絶縁被覆電線40の長さDに亘って充填され、かつ固化された様子を示す。
【0026】
このように止水処理された絶縁被覆電線40の芯線41のアース端子43方向とは反対側の一端部に、図2に示すように、ジョイント端子49を用いてシールド線のドレイン線50に加締め接続されている。ジョイント端子49は長手方向に2組のバレル51、52を有し、一方の組のバレル51は芯線41の端部に、また他方の組のバレル52はドレイン線50の端部に、それぞれ加締めつけられている。
【0027】
また、図2に示すような絶縁被覆電線40に対しては、さらに絶縁被覆42、露出部A、鞘部47、ジョイント端子49およびドレイン線50が、肉薄で軽量の収束テープ(保護テープ)により、図3に示すように外周が覆われている。この収束テープによって被覆されてはいるが、防水性は無いため、前記分断部付近からドレイン線50までが水に晒されると、水はドレイン線に浸入する。しかしながら、絶縁被覆電線は止水剤48によって止水処理されていることから、ドレイン線50側からアース端子43側への水の浸入が阻止される。従って、これらのアース端子43やドレイン線50に繋がる回路基板や電子部品の絶縁劣化や短絡事故を、小形、軽量な構成で確実に実行できる。
【0028】
次に、絶縁被覆電線40の止水処理手順について説明する。ここでは、この止水手順を、一端にアース端子43を有する絶縁被覆電線40に適用した場合について述べる。
まず、アース端子43を一端に接続した、図4A(a)に示すような所定長の絶縁被覆電線40を用意する。この絶縁被覆電線40は一端(アース端子43側)から芯線(内部導体)41が所定長、引き出されたものであり、この引き出された芯線41にアース端子43が接続されている。このアース端子43の芯線41に対する接続は、アース端子43を構成するバレル44、45の芯線41に対する加締めによって行われる。また、バレル46は絶縁被覆42の端部を圧着するように加締められる。
【0029】
次に、絶縁被覆電線40の一端部(アース端子43の接続側とは反対側の端部)において、絶縁被覆42のみを輪切りにするように2箇所で分断し、図4A(b)に示すように、3つの所定長の鞘部47、53、57を形成する(被覆分断工程)。この分断された鞘部47、53、57のうち、絶縁被覆電線40の一端部(アース端子43の接続側とは反対側の端部)側から2つの鞘部47、53は芯線41に沿って摺動操作可能な長さとする。そして、これらの鞘部47、53を芯線41に沿って、アース端子43側とは反対方向へ移動する(位置をずらせる)。この鞘部47、53の移動によって、芯線41の一部が2つの露出部A、Bで露出する(芯線露出工程)。
【0030】
これらの露出部A、Bのうち露出部Aの露出幅は後述の止水剤(止水液)の滴下および絶縁被覆42内への浸透(浸入)が円滑に行える間隔であり、液滴サイズより大き目とされる。また、露出部Bは必ずしも設ける必要はない。また、鞘部53は、後述の止水処理の終了後に、芯線41の他端から抜き取られて廃棄されるものである。
【0031】
次に、図4A(c)に示すように、加圧型の密閉容器54を用意する。この密閉容器54には止水剤滴下ノズル55および圧縮空気の吸気ノズル56が設けられている。止水剤滴下ノズル55の先端部は密閉容器54内に臨んで、下方に向って止水剤(止水液)を滴下するように機能する。一方、圧縮空気の吸気ノズル56の先端部もまた密閉容器54内に臨み、密閉容器54の側方から密閉容器54内に高圧の空気を送り込むように機能する。
【0032】
上述した密閉容器54に対して、絶縁被覆電線40の露出部Aから絶縁被覆電線40の一端(アース端子43の接続側とは反対側の端部)までを密閉容器の内に収容するとともに、絶縁被覆電線40の一端(アース端子43の接続側)を前記密閉容器の外に配置するよう、絶縁被覆電線40を配置する。絶縁被覆電線40が密閉容器54の側壁を貫通する部位にはシール材(図示しない)を設ける。
【0033】
さらに、前記鞘部53側が高い位置に来るように、絶縁被覆電線40を傾斜させるように所定位置で屈曲させ、一方、アース端子43側を低い位置に保持させる。そして、この状態で、吸気ノズル56から高圧の圧縮空気を密閉容器54内に送り込む(加圧工程)。こうして密閉容器54内に送り込まれた空気は、前記芯線41の露出部Aからこの露出部Aに分断面が臨む芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙に送り込まれる。また、この間隙に送り込まれた空気はアース端子43の固定部側の絶縁被覆電線40端から流出する。
【0034】
続いて、止水剤タンク(図示しない)から止水剤滴下ノズル55に止水剤を送り出し、この止水剤滴下ノズル55の先端から液状の止水剤48aを図4A(d)に示すように滴下させる(止水剤滴下工程)。この滴下された止水剤48aは、図4B(e)に示すように、芯線41の露出部A上に一旦水滴状態に載せられ、直ちに芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙に浸透して、図4B(f)中の矢印P方向に吸い込まれる。
【0035】
このような芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙へ止水剤48aが所定量(所定長に亘って)充填された場合には、図4B(g)に示すように、前記止水滴下ノズル55による前記止水剤48aの滴下を停止するとともに、吸気ノズル56からの前記吸気も停止する。そして、前記芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙における止水剤48aの完全固化を待って、吸気ノズル56により密閉容器54内の脱気を矢印方向に行わせる(減圧工程)。これにより密閉容器54内は減圧されて、常圧(大気圧)に戻る。
【0036】
そこで、前記密閉容器54から止水処理された絶縁被覆電線40を取り出して、図4C(h)に示すように、これを屈曲させてた部分を真直ぐに延ばす。そして、真直ぐに延ばされた絶縁被覆電線40の先端にある2つの鞘部53を、芯線41から抜き去って廃棄し、図4C(i)に示すように鞘部47のみを残す。
【0037】
そして、この鞘部53を抜き去った部位の芯線41と、別途用意されたドレイン線50の一端とを、図2に示すように、ジョイント端子49を用いて連結する。この図2に示す止水処理済みの絶縁被覆電線にあっては、ドレイン線50が被水状態にあっても、ドレイン線50側から絶縁被覆電線を通過して水がアース端子43に到達するというようなことはない。従って、このアース端子が接続される回路基板やコネクタなどの回路部品、電子部品の絶縁劣化や短絡事故を招くことはない。
【0038】
次に、絶縁被覆電線40の他の止水処理手順について、図5A〜図5Cを参照しながら説明する。ここでも、一端にアース端子43を有する絶縁被覆電線40に止水処理を施す場合について説明する。
まず、アース端子43を一端に接続した、図5A(a)に示すような所定長の絶縁被覆電線40を用意する。この絶縁被覆電線40は一端(アース端子43側)から芯線(内部導体)41が所定長、引き出されたものであり、この引き出された芯線41にアース端子43が接続されている。このアース端子43の芯線41に対する接続は、アース端子43を構成するバレル44、45の芯線41に対する加締めによって行われる。また、バレル46は絶縁被覆42の端部を圧着するように加締められる。
【0039】
次に、絶縁被覆電線40の一端部(アース端子43の接続側とは反対側の端部)において、絶縁被覆42のみを輪切りにするように2箇所で分断し、図5A(b)に示すように、3つの所定長の鞘部47、53、57を形成する(被覆分断工程)。この分断された鞘部47、53、57のうち、絶縁被覆電線40の一端部(アース端子43の接続側とは反対側の端部)側から2つの鞘部47、53は芯線41に沿って摺動操作可能な長さとする。そして、これらの鞘部47、53を芯線41に沿って、アース端子43側とは反対方向へ移動する(位置をずらせる)。この鞘部47、53の移動によって、芯線41の一部が2つの露出部A、Bで露出する(芯線露出工程)。
【0040】
これらの露出部A、Bのうち露出部Aの露出幅は後述の止水剤(止水液)の滴下および絶縁被覆42内への浸透(浸入)が円滑に行える間隔であり、液滴サイズより大き目とされる。また、露出部Bは必ずしも設ける必要はない。また、鞘部53は、後述の止水処理の終了後に、芯線41の他端から抜き取られて廃棄されるものである。
【0041】
次に、図5A(c)に示すように、減圧型の密閉容器61を用意する。この密閉容器61の外部には止水剤滴下ノズル55が設けられ、密閉容器61には排気(減圧)ノズル62が取り付けられている。止水剤滴下ノズル55の先端部は下方に向って止水剤(止水液)を滴下するように機能する。一方、排気ノズル62の一端部は密閉容器61内に臨み、密閉容器61の側方から密閉容器61内の空気を密閉容器61外へ排出する(吸い出す)ように機能する。
【0042】
上述した密閉容器61に対して、絶縁被覆電線40の露出部Aから絶縁被覆電線40の一端(アース端子43の接続側とは反対側の端部)までを密閉容器の外に配置するとともに、絶縁被覆電線40の一端(アース端子43の接続側)を前記密閉容器の内に収容するよう、絶縁被覆電線40を配置する。絶縁被覆電線40が密閉容器54の側壁を貫通する部位にはシール材(図示しない)を設ける。このとき前記露出部Aを止水剤滴下ノズル55の直下に位置させる。
【0043】
さらに、前記鞘部53側が高い位置に来るように、絶縁被覆電線40を所定位置から傾斜するように屈曲させ、アース端子43側を低い位置に保持させる。そして、この状態で、排気ノズル62から密閉容器61内の空気を排出(吸引)させる(減圧工程)。このため、密閉容器61外に位置する露出部Aの分断面側から芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙を通って、絶縁被覆42内を外気が前記アース端子43側に向って流れ、さらに前記排気ノズル62内から密閉容器61外へ導かれる。
【0044】
一方、止水剤タンク(図示しない)から止水剤滴下ノズル55に止水剤を送り出す。すると、この止水剤滴下ノズル55の先端から液状の止水剤48aが図5A(d)に示すように滴下される(止水剤滴下工程)。この滴下された止水剤48aは、図5B(e)に示すように、芯線41の露出部A上に一旦水滴状態となって載せられるが、直ちに芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙に、前記空気の流れに従って浸透して、図5B(f)中の矢印P方向に吸い込まれる。
【0045】
こうして芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙への止水剤48aが所定量(所定長に亘って)充填された場合には、図5B(g)に示すように、前記止水剤滴下ノズル55による止水剤48aの滴下を停止するとともに、排気ノズル62による密閉容器61内の排気(吸気)動作も停止する。そして、前記芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙における止水剤48aの完全固化を待って、排気ノズル62を通じて密閉容器61内への吸気を矢印方向に行い(加圧工程)、密閉容器61内を常圧(大気圧)に戻す。
【0046】
そこで、密閉容器61から止水処理された絶縁被覆電線40を取り出して、図5C(h)に示すように、前記折曲させた部分を真直ぐに延ばす。そして、真直ぐに延ばされた絶縁被覆電線40の先端にある鞘部53を、芯線41から抜き去って廃棄し、図5C(i)に示すように、鞘部47のみを残す。
【0047】
そして、この鞘部53を抜き去った部位の芯線41と、別途用意されたドレイン線50の一端とを、図2に示すように、ジョイント端子49を用いて連結する。この図2に示す止水処理済みの絶縁被覆電線にあっては、ドレイン線50が被水状態にあっても、ドレイン線50側から絶縁被覆電線を通過して水がアース端子43に到達するというようなことはない。従って、このアース端子が接続される回路基板やコネクタなどの回路部品、電子部品の絶縁劣化や短絡事故を招くことはない。
【0048】
以上説明してきたように、本実施形態の絶縁被覆電線によれば、ドレイン線50の接続に用いられるアース端子付きの絶縁被覆電線を、芯線41に外装された絶縁被覆42内に止水剤48を充填したものとすることで、シールド線内のドレイン線が被水状態にあっても、絶縁被覆電線を通じてのアース端子への水の移動、浸入が阻止され、このアース端子が接続される回路基板や回路素子の絶縁劣化や短絡事故を未然に回避することができる。
【0049】
さらに、芯線の一部を露出させた露出部Aに滴下された止水剤が、ジョイント端子49が接続される絶縁被覆電線40の一端とは反対側の他端に向けて浸透するため、ジョイント端子49と接触する絶縁被覆電線40の芯線41の一部に止水剤が付着することがない。したがって、止水剤が芯線とジョイント端子の導通や連結強度を妨げることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0050】
40 絶縁被覆電線
41 芯線
42 絶縁被覆
43 アース端子
44、45、46 バレル
47、53 鞘部
49 ジョイント端子
50 ドレイン線
51、52 バレル
54、61 密閉容器
55 止水剤滴下ノズル
56 吸気ノズル
62 排気ノズル
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド電線の端末から引き出されるドレイン線と接続される絶縁被覆電線およびこの絶縁被覆電線の止水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンルーム内に配設されるワイヤーハーネスには、絶縁被覆電線とともにドレイン線を併設したシールド線が用いられる。このドレイン線の設置によって、絶縁被覆電線の芯線に流れる信号へのノイズの混入をより効果的に防止することができる。また、ドレイン線はシールド用の編組線等に電気的に接続させる必要があるため、ドレイン線自体には絶縁被覆が施されていない。
【0003】
ところが、このようなシールド線が被水領域に配置されている場合に、例えばエンジンルームの洗浄を行った場合に、被水によってドレイン線に付着した水滴等がそのドレイン線を伝わって移動し、そのドレイン線に繋がる回路基板上の回路や回路素子に付着し、これらに短絡事故などのダメージを与える虞がある。
【0004】
これに対して、ドレイン線に低コストで止水処理を施したシールド線が、特許文献1に提案されている。これは図6乃至図8に示す通りであり、シールド線10が自動車のエンジンルームの被水領域に配線され、シールド線10の端末をコネクタ30に接続し、コネクタ30を被水領域に配置するEFI(電子制御式燃料噴射)用のECU(図示せず)のコネクタ収容部に嵌合するものである。前記シールド線10の皮剥ぎ端末から引き出されるドレイン線11に止水処理を施している。
【0005】
シールド線10は、図7に示すように、2本の信号線となる絶縁被覆電線12(以下、コア線12と称す)とドレイン線11とを内包し、このドレイン線11とコア線12を金属箔からなるシールド層13およびシース14で順次被覆し、シールド層13にドレイン線11を接触させて導通している。前記シールド線10は、先端から40mm程度の最短寸法Lでシース14およびシールド層13を切断剥離してドレイン線11とコア線12とを引き出している。
【0006】
前記シールド線10の端末から引き出されるドレイン線11は、複数の素線を撚った撚り線からなり、図8に示すように、ドレイン線11の端末側と皮剥ぎ端側に非防水熱収縮チューブ15A、15Bを被せて熱収縮すると共に、これら非防水熱収縮チューブ15Aと15B間のドレイン線11の素線間にホットメルトチューブを加熱溶融したホットメルト16’を浸透させて充填し固化させている。
【0007】
また、ドレイン線11の端末側の非防水熱収縮チューブ15Aから皮剥ぎ端側の非防水熱収縮チューブ15Bにかけて、ホットメルト16’の充填位置全体を覆うように防水熱収縮チューブ17を被せて熱収縮させている。防水熱収縮チューブ17の内周面には、予め熱溶融性止水剤18(以下、「止水剤18」と称す)が塗布されており、該止水剤18を加熱収縮時に溶融して、ホットメルト16’の充填位置とその軸線方向両側の外周に充填している。
【0008】
ホットメルト16’を充填する箇所のドレイン線11は撚り線をより戻してホットメルト16’が素線間に浸透しやすくしている。また、非防水熱収縮チューブ15Aの先端と端子20の圧着部との境界部分にはゴム栓21を取り付けている。ゴム栓21は他のコア線12と端子20との境界部分にも装着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−234974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に記載のシールド電線の止水構造にあっては、皮剥ぎ端から露出させた裸のドレイン線の外周を、非防水熱収縮チューブ、ホットメルトチューブおよび防水熱収縮チューブを重ね合わせて覆う構成となり、使用するチューブの種類と数量が多いために、ワイヤーハーネスの小型化および軽量化の阻害要因となる。そこで、シールド電線のドレイン線には止水処理を施さない一方で、そのシールド電線とは別に止水処理が施された電線を用意し、そのシールド電線のドレイン線と、別に用意した電線と、をジョイント端子を介して連結することで、止水処理に伴うシールド電線の大型化を防ぐとともに、ドレイン線を伝わる水滴が別に用意した電線によって止水されるようにする組み合わせが考えられる。
【0011】
前記止水剤としては、滴下直後の初期状態では流動性を有し、滴下後は固化するも柔軟性、弾性を持ち、シール特性の良好なものが望ましい。例えば、自然硬化特性や光硬化特性を持つシリコン樹脂、あるいはエポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、ポリブタジエンのアクリレートのような多官能性モノマー等を用いることができる。本実施形態では、後述のように、気密室内気圧に変化するときに、芯線上に滴下された止水材を各芯線間に浸透させることが必要であり、このために前述のように止水材は所定時間に亘って流動性を保持することが必要になる。
【0012】
上述したシールド電線のドレイン線と、別に用意した電線と、をジョイント端子を介して連結する構成の場合、その別に用意した電線の芯線に対する止水処理は、止水剤がジョイント端子と芯線との導通や連結強度を妨げないように注意されなければならない。すなわち、別に用意した電線の芯線に止水剤を充填する際、ジョイント端子と接触する箇所には止水剤が充填されないようにしなければならない。
【0013】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シールド電線のドレイン線と、止水処理が施された絶縁被覆電線と、をジョイント端子を介して連結する場合に、絶縁被覆電線に芯線とジョイント端子の導通や連結強度を妨げることのない止水処理を施すための止水処理方法、およびその止水処理が施された絶縁被覆電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するために、本発明に係る止水処理方法は、下記(1)および(2)を特徴としている。
(1) 他端にアース端子を接続可能な絶縁被覆電線の絶縁被覆を2箇所で剥離することによって、前記絶縁被覆電線の他端側の第1の鞘部と、前記絶縁被覆電線の一端側の第2の鞘部と、前記第1の鞘部および前記第2の鞘部に挟まれる第3の鞘部と、に前記絶縁被覆を分断する被覆分断工程と、
前記第3の鞘部を芯線に沿わせて前記絶縁被覆電線の一端側に向けて移動することによって、前記第1の鞘部と前記第3の鞘部の間から前記芯線の一部を露出させた露出部を前記絶縁被覆電線に形成する芯線露出工程と、
前記絶縁被覆電線の前記露出部から前記絶縁被覆電線の一端までを密閉容器の内に収容し、且つ、前記絶縁被覆電線の他端を前記密閉容器の外に配置した状態で、前記密閉容器内を加圧する加圧工程と、
前記露出部から露出する前記芯線の一部に止水剤を滴下させる止水剤滴下工程と、
前記第2の鞘部が抜き去られて前記絶縁被覆から露出する前記絶縁被覆電線の一端にジョイント端子を接続する接続工程と、
を有すること。
(2) 他端にアース端子を接続可能な絶縁被覆電線の絶縁被覆を2箇所で剥離することによって、前記絶縁被覆電線の他端側の第1の鞘部と、前記絶縁被覆電線の一端側の第2の鞘部と、前記第1の鞘部および前記第2の鞘部に挟まれる第3の鞘部と、に前記絶縁被覆を分断する被覆分断工程と、
前記第3の鞘部を芯線に沿わせて前記絶縁被覆電線の一端側に向けて移動することによって、前記第1の鞘部と前記第3の鞘部の間から前記芯線の一部を露出させた露出部を前記絶縁被覆電線に形成する芯線露出工程と、
前記絶縁被覆電線の前記露出部から前記絶縁被覆電線の一端までを密閉容器の外に配置し、且つ、前記絶縁被覆電線の他端を前記密閉容器の内に収容した状態で、前記密閉容器内を減圧する減圧工程と、
前記露出部から露出する前記芯線の一部に止水剤を滴下させる止水剤滴下工程と、
前記第2の鞘部が抜き去られて前記絶縁被覆から露出する前記絶縁被覆電線の一端にジョイント端子を接続する接続工程と、
を有すること。
【0015】
上記(1)または(2)の構成の止水処理方法によれば、芯線の一部を露出させた露出部に滴下された止水剤が、ジョイント端子が接続される絶縁被覆電線の一端とは反対側の他端に向けて浸透するため、ジョイント端子と接触する絶縁被覆電線の芯線の一部に止水剤が付着することがない。したがって、止水剤が芯線とジョイント端子の導通や連結強度を妨げることを防ぐことができる。
【0016】
前述した目的を達成するために、本発明に係る絶縁被覆電線は、下記(3)を特徴としている。
(3) 芯線と、前記芯線を覆う絶縁被覆と、を備える絶縁被覆電線であって、
前記芯線は、その一端が前記絶縁被覆から露出し、且つ、前記絶縁被覆が剥離され前記絶縁被覆から露出した露出部が該芯線の一端から他端までの任意の箇所にて形成され、
止水剤が、前記露出部から前記芯線の他端に向かって充填されている、
こと。
【0017】
上記(3)の構成の絶縁被覆電線によれば、ジョイント端子と接触する絶縁被覆電線の芯線の一部に止水剤が付着していないため、止水剤が芯線とジョイント端子の導通や連結強度を妨げることがない。
【発明の効果】
【0018】
本発明の止水処理方法および絶縁被覆電線によれば、シールド線の端末から引き出されるドレイン線等から絶縁被覆電線のアース端子側に水が浸入することを回避できる。従って絶縁被覆電線を通して回路基板等の回路や電子部品への水の移動(浸入)を簡単、確実に防止でき、結果として、その回路や電子部品等の絶縁劣化や短絡事故を簡単、軽量な構成にて確実に回避することができる。
さらに、芯線の一部を露出させた露出部に滴下された止水剤が、ジョイント端子が接続される絶縁被覆電線の一端とは反対側の他端に向けて浸透するため、ジョイント端子と接触する絶縁被覆電線の芯線の一部に止水剤が付着することがない。したがって、止水剤が芯線とジョイント端子の導通や連結強度を妨げることを防ぐことができる。
【0019】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る絶縁被覆電線の実施形態を概念的に示す正面図である。
【図2】図1に示す絶縁被覆電線をドレイン線に接続した状態の正面図である。
【図3】図2に示した絶縁被覆電線およびドレイン線を収束テープで覆った状態の正面図である。
【図4A】(a)〜(d)は、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す手順を示す説明図である。
【図4B】(e)〜(g)は、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す手順を示す説明図である。
【図4C】(h)、(i)は、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す手順を示す説明図である。
【図5A】(a)〜(d)は、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す別の手順を示す説明図である。
【図5B】(e)〜(g)は、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す別の手順を示す説明図である。
【図5C】(h)、(i)は、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す別の手順を示す説明図である。
【図6】従来のシールド線を示す正面図である。
【図7】図6に示すシールド線の斜視図である。
【図8】図6におけるドレイン線の止水処理構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態にかかる絶縁被覆電線およびその止水処理方法の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、絶縁被覆電線が一端にアース端子を有するものを例にして説明する。
【0022】
ここで、図1は本発明に係る絶縁被覆電線の実施形態を概念的に示す正面図、図2は、図1に示す絶縁被覆電線をドレイン線に接続した状態の正面図、図3は、図2に示した絶縁被覆電線およびドレイン線を収束テープで覆った状態の正面図、図4A〜図4Cは、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す手順を示す説明図、図5A〜図5Cは、図1に示す絶縁被覆電線に止水処理を施す別の手順を示す説明図である。
【0023】
本発明の実施形態に係る絶縁被覆電線は、例えば車両におけるエンジンルームの被水領域に配置されたシールド線の皮剥ぎ端末からコア線とともに引き出されたドレイン線に接続される。ドレイン線は多数本の導電性の素線からなり、絶縁被覆がなされておらず、金属編組のチューブや金属箔からなるシールド層と接触されている。なお、このドレイン線には止水処理が施されていない。
【0024】
絶縁被覆電線40は芯線(内部導体)41の外周に絶縁被覆42を被せたものからなり、この絶縁被覆42の一端である皮剥ぎ端末から芯線(内部導体)41の所定長分が引き出されている。この引き出された芯線41にアース端子43が接続されている。このアース端子43の芯線41に対する接続を行うために、まず、アース端子43の導体バレル44、45、46が開いた状態で、これらの導体バレル44、45間に絶縁被覆電線40の絶縁被覆42が除去された側の芯線41がセットされる。また、導体バレル46には絶縁被覆42がセットされる。そして、これらのセット後に、前記導体バレル44、45、46を閉じる方向に変形させる処理が行われ、各バレル44、45およびバレル46がそれぞれ芯線41および絶縁被覆42を加締める。
【0025】
一方、絶縁被覆電線40の一端部(アース端子43の接続側とは反対側の端部)が分断されて、鞘部47が形成されており、この鞘部47が芯線41に沿って絶縁被覆電線40の一端部方向に位置がずらされている。この鞘部47の位置ずれによって、このずれた部位で芯線41が絶縁被覆42の外へ露出することとなる。この芯線41が露出する露出部Aからは、後述のように液状の止水剤48が芯線41と絶縁被覆42との間隙に圧入され、絶縁被覆電線40のアース端子43側に向けて浸透した後固化されて、絶縁被覆電線40の止水処理がなされている。図1では、止水剤48が絶縁被覆電線40の長さDに亘って充填され、かつ固化された様子を示す。
【0026】
このように止水処理された絶縁被覆電線40の芯線41のアース端子43方向とは反対側の一端部に、図2に示すように、ジョイント端子49を用いてシールド線のドレイン線50に加締め接続されている。ジョイント端子49は長手方向に2組のバレル51、52を有し、一方の組のバレル51は芯線41の端部に、また他方の組のバレル52はドレイン線50の端部に、それぞれ加締めつけられている。
【0027】
また、図2に示すような絶縁被覆電線40に対しては、さらに絶縁被覆42、露出部A、鞘部47、ジョイント端子49およびドレイン線50が、肉薄で軽量の収束テープ(保護テープ)により、図3に示すように外周が覆われている。この収束テープによって被覆されてはいるが、防水性は無いため、前記分断部付近からドレイン線50までが水に晒されると、水はドレイン線に浸入する。しかしながら、絶縁被覆電線は止水剤48によって止水処理されていることから、ドレイン線50側からアース端子43側への水の浸入が阻止される。従って、これらのアース端子43やドレイン線50に繋がる回路基板や電子部品の絶縁劣化や短絡事故を、小形、軽量な構成で確実に実行できる。
【0028】
次に、絶縁被覆電線40の止水処理手順について説明する。ここでは、この止水手順を、一端にアース端子43を有する絶縁被覆電線40に適用した場合について述べる。
まず、アース端子43を一端に接続した、図4A(a)に示すような所定長の絶縁被覆電線40を用意する。この絶縁被覆電線40は一端(アース端子43側)から芯線(内部導体)41が所定長、引き出されたものであり、この引き出された芯線41にアース端子43が接続されている。このアース端子43の芯線41に対する接続は、アース端子43を構成するバレル44、45の芯線41に対する加締めによって行われる。また、バレル46は絶縁被覆42の端部を圧着するように加締められる。
【0029】
次に、絶縁被覆電線40の一端部(アース端子43の接続側とは反対側の端部)において、絶縁被覆42のみを輪切りにするように2箇所で分断し、図4A(b)に示すように、3つの所定長の鞘部47、53、57を形成する(被覆分断工程)。この分断された鞘部47、53、57のうち、絶縁被覆電線40の一端部(アース端子43の接続側とは反対側の端部)側から2つの鞘部47、53は芯線41に沿って摺動操作可能な長さとする。そして、これらの鞘部47、53を芯線41に沿って、アース端子43側とは反対方向へ移動する(位置をずらせる)。この鞘部47、53の移動によって、芯線41の一部が2つの露出部A、Bで露出する(芯線露出工程)。
【0030】
これらの露出部A、Bのうち露出部Aの露出幅は後述の止水剤(止水液)の滴下および絶縁被覆42内への浸透(浸入)が円滑に行える間隔であり、液滴サイズより大き目とされる。また、露出部Bは必ずしも設ける必要はない。また、鞘部53は、後述の止水処理の終了後に、芯線41の他端から抜き取られて廃棄されるものである。
【0031】
次に、図4A(c)に示すように、加圧型の密閉容器54を用意する。この密閉容器54には止水剤滴下ノズル55および圧縮空気の吸気ノズル56が設けられている。止水剤滴下ノズル55の先端部は密閉容器54内に臨んで、下方に向って止水剤(止水液)を滴下するように機能する。一方、圧縮空気の吸気ノズル56の先端部もまた密閉容器54内に臨み、密閉容器54の側方から密閉容器54内に高圧の空気を送り込むように機能する。
【0032】
上述した密閉容器54に対して、絶縁被覆電線40の露出部Aから絶縁被覆電線40の一端(アース端子43の接続側とは反対側の端部)までを密閉容器の内に収容するとともに、絶縁被覆電線40の一端(アース端子43の接続側)を前記密閉容器の外に配置するよう、絶縁被覆電線40を配置する。絶縁被覆電線40が密閉容器54の側壁を貫通する部位にはシール材(図示しない)を設ける。
【0033】
さらに、前記鞘部53側が高い位置に来るように、絶縁被覆電線40を傾斜させるように所定位置で屈曲させ、一方、アース端子43側を低い位置に保持させる。そして、この状態で、吸気ノズル56から高圧の圧縮空気を密閉容器54内に送り込む(加圧工程)。こうして密閉容器54内に送り込まれた空気は、前記芯線41の露出部Aからこの露出部Aに分断面が臨む芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙に送り込まれる。また、この間隙に送り込まれた空気はアース端子43の固定部側の絶縁被覆電線40端から流出する。
【0034】
続いて、止水剤タンク(図示しない)から止水剤滴下ノズル55に止水剤を送り出し、この止水剤滴下ノズル55の先端から液状の止水剤48aを図4A(d)に示すように滴下させる(止水剤滴下工程)。この滴下された止水剤48aは、図4B(e)に示すように、芯線41の露出部A上に一旦水滴状態に載せられ、直ちに芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙に浸透して、図4B(f)中の矢印P方向に吸い込まれる。
【0035】
このような芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙へ止水剤48aが所定量(所定長に亘って)充填された場合には、図4B(g)に示すように、前記止水滴下ノズル55による前記止水剤48aの滴下を停止するとともに、吸気ノズル56からの前記吸気も停止する。そして、前記芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙における止水剤48aの完全固化を待って、吸気ノズル56により密閉容器54内の脱気を矢印方向に行わせる(減圧工程)。これにより密閉容器54内は減圧されて、常圧(大気圧)に戻る。
【0036】
そこで、前記密閉容器54から止水処理された絶縁被覆電線40を取り出して、図4C(h)に示すように、これを屈曲させてた部分を真直ぐに延ばす。そして、真直ぐに延ばされた絶縁被覆電線40の先端にある2つの鞘部53を、芯線41から抜き去って廃棄し、図4C(i)に示すように鞘部47のみを残す。
【0037】
そして、この鞘部53を抜き去った部位の芯線41と、別途用意されたドレイン線50の一端とを、図2に示すように、ジョイント端子49を用いて連結する。この図2に示す止水処理済みの絶縁被覆電線にあっては、ドレイン線50が被水状態にあっても、ドレイン線50側から絶縁被覆電線を通過して水がアース端子43に到達するというようなことはない。従って、このアース端子が接続される回路基板やコネクタなどの回路部品、電子部品の絶縁劣化や短絡事故を招くことはない。
【0038】
次に、絶縁被覆電線40の他の止水処理手順について、図5A〜図5Cを参照しながら説明する。ここでも、一端にアース端子43を有する絶縁被覆電線40に止水処理を施す場合について説明する。
まず、アース端子43を一端に接続した、図5A(a)に示すような所定長の絶縁被覆電線40を用意する。この絶縁被覆電線40は一端(アース端子43側)から芯線(内部導体)41が所定長、引き出されたものであり、この引き出された芯線41にアース端子43が接続されている。このアース端子43の芯線41に対する接続は、アース端子43を構成するバレル44、45の芯線41に対する加締めによって行われる。また、バレル46は絶縁被覆42の端部を圧着するように加締められる。
【0039】
次に、絶縁被覆電線40の一端部(アース端子43の接続側とは反対側の端部)において、絶縁被覆42のみを輪切りにするように2箇所で分断し、図5A(b)に示すように、3つの所定長の鞘部47、53、57を形成する(被覆分断工程)。この分断された鞘部47、53、57のうち、絶縁被覆電線40の一端部(アース端子43の接続側とは反対側の端部)側から2つの鞘部47、53は芯線41に沿って摺動操作可能な長さとする。そして、これらの鞘部47、53を芯線41に沿って、アース端子43側とは反対方向へ移動する(位置をずらせる)。この鞘部47、53の移動によって、芯線41の一部が2つの露出部A、Bで露出する(芯線露出工程)。
【0040】
これらの露出部A、Bのうち露出部Aの露出幅は後述の止水剤(止水液)の滴下および絶縁被覆42内への浸透(浸入)が円滑に行える間隔であり、液滴サイズより大き目とされる。また、露出部Bは必ずしも設ける必要はない。また、鞘部53は、後述の止水処理の終了後に、芯線41の他端から抜き取られて廃棄されるものである。
【0041】
次に、図5A(c)に示すように、減圧型の密閉容器61を用意する。この密閉容器61の外部には止水剤滴下ノズル55が設けられ、密閉容器61には排気(減圧)ノズル62が取り付けられている。止水剤滴下ノズル55の先端部は下方に向って止水剤(止水液)を滴下するように機能する。一方、排気ノズル62の一端部は密閉容器61内に臨み、密閉容器61の側方から密閉容器61内の空気を密閉容器61外へ排出する(吸い出す)ように機能する。
【0042】
上述した密閉容器61に対して、絶縁被覆電線40の露出部Aから絶縁被覆電線40の一端(アース端子43の接続側とは反対側の端部)までを密閉容器の外に配置するとともに、絶縁被覆電線40の一端(アース端子43の接続側)を前記密閉容器の内に収容するよう、絶縁被覆電線40を配置する。絶縁被覆電線40が密閉容器54の側壁を貫通する部位にはシール材(図示しない)を設ける。このとき前記露出部Aを止水剤滴下ノズル55の直下に位置させる。
【0043】
さらに、前記鞘部53側が高い位置に来るように、絶縁被覆電線40を所定位置から傾斜するように屈曲させ、アース端子43側を低い位置に保持させる。そして、この状態で、排気ノズル62から密閉容器61内の空気を排出(吸引)させる(減圧工程)。このため、密閉容器61外に位置する露出部Aの分断面側から芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙を通って、絶縁被覆42内を外気が前記アース端子43側に向って流れ、さらに前記排気ノズル62内から密閉容器61外へ導かれる。
【0044】
一方、止水剤タンク(図示しない)から止水剤滴下ノズル55に止水剤を送り出す。すると、この止水剤滴下ノズル55の先端から液状の止水剤48aが図5A(d)に示すように滴下される(止水剤滴下工程)。この滴下された止水剤48aは、図5B(e)に示すように、芯線41の露出部A上に一旦水滴状態となって載せられるが、直ちに芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙に、前記空気の流れに従って浸透して、図5B(f)中の矢印P方向に吸い込まれる。
【0045】
こうして芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙への止水剤48aが所定量(所定長に亘って)充填された場合には、図5B(g)に示すように、前記止水剤滴下ノズル55による止水剤48aの滴下を停止するとともに、排気ノズル62による密閉容器61内の排気(吸気)動作も停止する。そして、前記芯線41の各素線間や芯線41と絶縁被覆42との間隙における止水剤48aの完全固化を待って、排気ノズル62を通じて密閉容器61内への吸気を矢印方向に行い(加圧工程)、密閉容器61内を常圧(大気圧)に戻す。
【0046】
そこで、密閉容器61から止水処理された絶縁被覆電線40を取り出して、図5C(h)に示すように、前記折曲させた部分を真直ぐに延ばす。そして、真直ぐに延ばされた絶縁被覆電線40の先端にある鞘部53を、芯線41から抜き去って廃棄し、図5C(i)に示すように、鞘部47のみを残す。
【0047】
そして、この鞘部53を抜き去った部位の芯線41と、別途用意されたドレイン線50の一端とを、図2に示すように、ジョイント端子49を用いて連結する。この図2に示す止水処理済みの絶縁被覆電線にあっては、ドレイン線50が被水状態にあっても、ドレイン線50側から絶縁被覆電線を通過して水がアース端子43に到達するというようなことはない。従って、このアース端子が接続される回路基板やコネクタなどの回路部品、電子部品の絶縁劣化や短絡事故を招くことはない。
【0048】
以上説明してきたように、本実施形態の絶縁被覆電線によれば、ドレイン線50の接続に用いられるアース端子付きの絶縁被覆電線を、芯線41に外装された絶縁被覆42内に止水剤48を充填したものとすることで、シールド線内のドレイン線が被水状態にあっても、絶縁被覆電線を通じてのアース端子への水の移動、浸入が阻止され、このアース端子が接続される回路基板や回路素子の絶縁劣化や短絡事故を未然に回避することができる。
【0049】
さらに、芯線の一部を露出させた露出部Aに滴下された止水剤が、ジョイント端子49が接続される絶縁被覆電線40の一端とは反対側の他端に向けて浸透するため、ジョイント端子49と接触する絶縁被覆電線40の芯線41の一部に止水剤が付着することがない。したがって、止水剤が芯線とジョイント端子の導通や連結強度を妨げることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0050】
40 絶縁被覆電線
41 芯線
42 絶縁被覆
43 アース端子
44、45、46 バレル
47、53 鞘部
49 ジョイント端子
50 ドレイン線
51、52 バレル
54、61 密閉容器
55 止水剤滴下ノズル
56 吸気ノズル
62 排気ノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他端にアース端子を接続可能な絶縁被覆電線の絶縁被覆を2箇所で剥離することによって、前記絶縁被覆電線の他端側の第1の鞘部と、前記絶縁被覆電線の一端側の第2の鞘部と、前記第1の鞘部および前記第2の鞘部に挟まれる第3の鞘部と、に前記絶縁被覆を分断する被覆分断工程と、
前記第3の鞘部を芯線に沿わせて前記絶縁被覆電線の一端側に向けて移動することによって、前記第1の鞘部と前記第3の鞘部の間から前記芯線の一部を露出させた露出部を前記絶縁被覆電線に形成する芯線露出工程と、
前記絶縁被覆電線の前記露出部から前記絶縁被覆電線の一端までを密閉容器の内に収容し、且つ、前記絶縁被覆電線の他端を前記密閉容器の外に配置した状態で、前記密閉容器内を加圧する加圧工程と、
前記露出部から露出する前記芯線の一部に止水剤を滴下させる止水剤滴下工程と、
前記第2の鞘部が抜き去られて前記絶縁被覆から露出する前記絶縁被覆電線の一端にジョイント端子を接続する接続工程と、
を有することを特徴とする止水処理方法。
【請求項2】
他端にアース端子を接続可能な絶縁被覆電線の絶縁被覆を2箇所で剥離することによって、前記絶縁被覆電線の他端側の第1の鞘部と、前記絶縁被覆電線の一端側の第2の鞘部と、前記第1の鞘部および前記第2の鞘部に挟まれる第3の鞘部と、に前記絶縁被覆を分断する被覆分断工程と、
前記第3の鞘部を芯線に沿わせて前記絶縁被覆電線の一端側に向けて移動することによって、前記第1の鞘部と前記第3の鞘部の間から前記芯線の一部を露出させた露出部を前記絶縁被覆電線に形成する芯線露出工程と、
前記絶縁被覆電線の前記露出部から前記絶縁被覆電線の一端までを密閉容器の外に配置し、且つ、前記絶縁被覆電線の他端を前記密閉容器の内に収容した状態で、前記密閉容器内を減圧する減圧工程と、
前記露出部から露出する前記芯線の一部に止水剤を滴下させる止水剤滴下工程と、
前記第2の鞘部が抜き去られて前記絶縁被覆から露出する前記絶縁被覆電線の一端にジョイント端子を接続する接続工程と、
を有することを特徴とする止水処理方法。
【請求項3】
芯線と、前記芯線を覆う絶縁被覆と、を備える絶縁被覆電線であって、
前記芯線は、その一端が前記絶縁被覆から露出し、且つ、前記絶縁被覆が剥離され前記絶縁被覆から露出した露出部が該芯線の一端から他端までの任意の箇所にて形成され、
止水剤が、前記露出部から前記芯線の他端に向かって充填されている、
ことを特徴とする絶縁被覆電線。
【請求項1】
他端にアース端子を接続可能な絶縁被覆電線の絶縁被覆を2箇所で剥離することによって、前記絶縁被覆電線の他端側の第1の鞘部と、前記絶縁被覆電線の一端側の第2の鞘部と、前記第1の鞘部および前記第2の鞘部に挟まれる第3の鞘部と、に前記絶縁被覆を分断する被覆分断工程と、
前記第3の鞘部を芯線に沿わせて前記絶縁被覆電線の一端側に向けて移動することによって、前記第1の鞘部と前記第3の鞘部の間から前記芯線の一部を露出させた露出部を前記絶縁被覆電線に形成する芯線露出工程と、
前記絶縁被覆電線の前記露出部から前記絶縁被覆電線の一端までを密閉容器の内に収容し、且つ、前記絶縁被覆電線の他端を前記密閉容器の外に配置した状態で、前記密閉容器内を加圧する加圧工程と、
前記露出部から露出する前記芯線の一部に止水剤を滴下させる止水剤滴下工程と、
前記第2の鞘部が抜き去られて前記絶縁被覆から露出する前記絶縁被覆電線の一端にジョイント端子を接続する接続工程と、
を有することを特徴とする止水処理方法。
【請求項2】
他端にアース端子を接続可能な絶縁被覆電線の絶縁被覆を2箇所で剥離することによって、前記絶縁被覆電線の他端側の第1の鞘部と、前記絶縁被覆電線の一端側の第2の鞘部と、前記第1の鞘部および前記第2の鞘部に挟まれる第3の鞘部と、に前記絶縁被覆を分断する被覆分断工程と、
前記第3の鞘部を芯線に沿わせて前記絶縁被覆電線の一端側に向けて移動することによって、前記第1の鞘部と前記第3の鞘部の間から前記芯線の一部を露出させた露出部を前記絶縁被覆電線に形成する芯線露出工程と、
前記絶縁被覆電線の前記露出部から前記絶縁被覆電線の一端までを密閉容器の外に配置し、且つ、前記絶縁被覆電線の他端を前記密閉容器の内に収容した状態で、前記密閉容器内を減圧する減圧工程と、
前記露出部から露出する前記芯線の一部に止水剤を滴下させる止水剤滴下工程と、
前記第2の鞘部が抜き去られて前記絶縁被覆から露出する前記絶縁被覆電線の一端にジョイント端子を接続する接続工程と、
を有することを特徴とする止水処理方法。
【請求項3】
芯線と、前記芯線を覆う絶縁被覆と、を備える絶縁被覆電線であって、
前記芯線は、その一端が前記絶縁被覆から露出し、且つ、前記絶縁被覆が剥離され前記絶縁被覆から露出した露出部が該芯線の一端から他端までの任意の箇所にて形成され、
止水剤が、前記露出部から前記芯線の他端に向かって充填されている、
ことを特徴とする絶縁被覆電線。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−96567(P2011−96567A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250786(P2009−250786)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】
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