説明

止水構造

【課題】 本発明は、優れた止水性能を有する止水構造を提供する。
【解決手段】 本発明の止水構造Aは、構造物1に形成された貫通孔11がシール部材2によって閉塞されてなる止水構造であって、上記シール部材2は、独立気泡発泡ゴムシート21とこの独立気泡発泡ゴムシート21に積層された補強部材22とを含み、上記独立気泡発泡ゴムシート21が上記構造物1の貫通孔11の開口端面に加圧状態で密着していることを特徴とし、独立気泡発泡ゴムシート21は、圧縮柔軟性が高く且つ反発応力が強く、従って、シール部材2は、構造物1の貫通孔11の開口端面に強固に密着して、構造物1の貫通孔11を確実に封止し、止水構造Aは、優れた防止性能を有して強い水圧下においても高い防水性能を確実に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた止水性を有する止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、建築物、電気製品などの筐体には、吸気孔、排気孔、電気配線用貫通孔などが形成されており、これらの貫通孔に部品を挿入できるように構成されている。そして、筐体の貫通孔部分を防水する場合、筐体の貫通孔とこの貫通孔に挿入される部品との対向面間にシール部材を配設して止水している。
【0003】
そして、特許文献1には、ワイヤーハーネス止水構造が開示されているが、強い水圧が加わるような環境下においては、止水性能が不充分であるといった問題点がある。
【0004】
【特許文献1】特開2008−17638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた止水性能を有する止水構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の止水構造は、構造物に形成された貫通孔がシール部材によって閉塞されてなる止水構造であって、上記シール部材は、独立気泡発泡ゴムシートとこの独立気泡発泡ゴムシートに積層された補強部材とを含み、上記独立気泡発泡ゴムシートが上記構造物の貫通孔の開口端面に加圧状態で密着していることを特徴とする。
【0007】
又、上記止水構造において、構造物の貫通孔の開口端面に圧接させている独立気泡発泡ゴムシートの表面の表面粗さRaが100μm以下であることを特徴とする。
【0008】
そして、上記止水構造において、独立気泡発泡ゴムシートがゴム系樹脂を含有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の止水構造は、構造物に形成された貫通孔がシール部材によって閉塞されてなる止水構造であって、上記シール部材は、独立気泡発泡ゴムシートとこの独立気泡発泡ゴムシートに積層された補強部材とを含み、上記独立気泡発泡ゴムシートが上記構造物の貫通孔の開口端面に加圧状態で密着していることを特徴とし、独立気泡発泡ゴムシートは、圧縮柔軟性が高く且つ反発応力が強い。従って、シール部材は、構造物の貫通孔の開口端面に強固に密着して、構造物の貫通孔を確実に封止し、止水構造は、優れた防止性能を有して強い水圧下においても高い防水性能を確実に維持する。
【0010】
又、シール部材は、独立気泡発泡ゴムシートを含み、この独立気泡発泡ゴムシートはゴム系樹脂を含有しているので、表面は粘着剤に似た密着性を有している。従って、シール部材は、構造物の貫通孔の開口端面に対して長期間に亘って強固な密着状態を確実に維持し、止水構造は長期間に亘って優れた止水性能を維持する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の止水構造の一例を図面を参照しつつ説明する。図1に示したように、構造物1には貫通孔11が形成されている。なお、構造物1としては、例えば、エンジン、マフラー、ランプを配設するための貫通孔を備えた自動車の車体、ガラスを配設するための貫通孔が形成されたドア材、配管のための貫通孔が形成された建築物、電気配線を引き出すための貫通孔が形成された電気機器の筐体などが挙げられる。
【0012】
構造物1の貫通孔11を構成している材料としては、特に限定されず、例えば、鉄、銅、アルミニウム、チタンなどの金属、ガラス、コンクリート、シリコンなどの無機物、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂などの合成樹脂が挙げられる。
【0013】
構造物1の貫通孔11は、この貫通孔11の開口面積よりも大きな大きさを有するシール部材2によって閉塞されている。このシール部材2は、一定厚みを有する独立気泡発泡ゴムシート21とこの独立気泡発泡ゴムシート21に積層された補強部材22とを含んでいる。
【0014】
そして、独立気泡発泡ゴムシート21の外周縁部を構造物1の貫通孔11の開口端面に圧力を加えた状態で密着させることによって構造物1の貫通孔11が水密的に閉止されて止水構造Aが構成されている。
【0015】
具体的には、図1に示したように、貫通孔31が形成された押圧板3を用意し、この押圧板3と構造物1とによってシール部材2を挟み、押圧板3と構造物1との対向面間の間隔を狭めることによってシール部材2の独立気泡発泡ゴムシート21にその厚み方向に圧縮力を加え、独立気泡発泡ゴムシート21の圧縮に対する復元力によって、独立気泡発泡ゴムシート21の外周縁部を構造物1の貫通孔11の開口端面に圧力を加えた状態で密着させている。押圧板3の貫通孔31と構造物1の貫通孔11とは互いに重なり合った状態とすることが好ましい。
【0016】
なお、押圧板3と構造物1との対向面間の間隔を狭める要領としては、特に限定されず、(1)図示しないボルトを押圧板3及び構造物1に貫通させ、このボルトにナットを取付け、このナットを締め付けることによって、押圧板3と構造物1との対向面間の間隔を狭める方法、(2)押圧板3に構造物1に近接する方向に押圧力を加えて、押圧板3と構造物1との対向面間の間隔を狭める方法などが挙げられる。
【0017】
シール部材2の独立気泡発泡ゴムシート21はゴム系樹脂を含んでおり、このゴム系樹脂としては、室温でゴム弾性(rubber elasticity)を有するものであればよい。ゴム系樹脂としては、特に限定されず、例えば、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどが挙げられ、独立気泡発泡ゴムシートのクッション性や耐久性に優れていることから、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)が好ましく、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)がより好ましい。なお、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)は、ニトリルゴムやアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムと呼ばれている合成ゴムも包含する。スチレン−ブタジエンゴム(SBR)は、ブタジエンとスチレンの共重合ゴムを意味し、スチロールゴムと呼ばれているゴムも包含する。
【0018】
ゴム系樹脂がニトリル−ブタジエンを含有している場合、構造物1の貫通孔11の開口端面を形成している材料と化学的に反応する。特に、構造物1の貫通孔11の開口端面を形成している材料が鉄である場合は、上記化学的な反応が顕著である。従って、シール部材2の独立気泡発泡ゴムシート21が構造物1の貫通孔11の開口端面に強固に密着するので、毛細管現象による水の進入も殆ど防止することができる。
【0019】
シール部材2を構成している独立気泡発泡ゴムシート21は、独立気泡のみから構成されている必要はなく、連続気泡が含有されていてもよい。独立気泡発泡ゴムシート21の独立気泡率は、低いと、止水構造の防水性能に優れているので、80%以上が好ましく、85〜100%がより好ましい。
【0020】
ここで、独立気泡発泡ゴムシート21の独立気泡率は、下記の要領で測定されたものをいう。先ず、独立気泡発泡ゴムシートから一辺が5cmの平面正方形状で且つ一定厚みの試験片を切り出す。そして、試験片の厚みを測定して試験片の見掛け体積V1を算出すると共に、試験片の重量W1を測定する。
【0021】
次に、気泡の占める体積V2を下記式に基づいて算出する。なお、試験片を構成している樹脂の密度はρg/cm3とする。
気泡の占める体積V2=V1−W1/ρ
【0022】
続いて、試験片を23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に15kPaの圧力を3分間に亘って加える。しかる後、試験片を水中から取り出して試験片の表面に付着した水分を除去して試験片の重量W2を測定し、下記式に基づいて連続気泡率F1及び独立気泡率F2を算出する。
連続気泡率F1(%)=100×(W2−W1)/V2
独立気泡率F2(%)=100−F1
【0023】
そして、独立気泡発泡ゴムシートは、構造物1の貫通孔11の開口端面に接触しているが、貫通孔11の開口端面に接触している独立気泡発泡ゴムシート21の表面は、表面粗さRaが100μm以下、好ましくは80μm以下のスキン層から形成されている。なお、スキン層とは、その表面に気泡断面を有しない密度が0.9g/cm3以上の層をいう。
【0024】
このように表面粗さRaが100μm以下のスキン層が構造物1の貫通孔11の開口端面に接触しているので、シール部材2は、構造物1の貫通孔11を確実に閉塞し優れた止水性能を発揮する。
【0025】
なお、独立気泡発泡ゴムシート21のスキン層の表面粗さRaは下記の要領で測定される。独立気泡発泡ゴムシートのスキン層の表面を非接触式のレーザー顕微鏡を用いて表面高さをデータとして取り込み、JIS B0601に準拠して表面粗さを計算すればよい。
【0026】
なお、独立気泡発泡ゴムシート21のスキン層の表面粗さRaは、例えば、キーエンス社から市販されているVK形状解析装置、商品名が「VK−8500」のレーザー顕微鏡、及び、その解析ソフト(商品名「VK−PC」)を用いて下記手順で測定することができる。
【0027】
具体的には、独立気泡発泡ゴムシートから試験片を切り出し、この試験片を平滑な金属板上に配設、固定する。試験片のスキン層に焦点を合わせる。なお、測定範囲を一辺が2mmの正方形よりも大きな大きさとする。
【0028】
次に、レーザー光の上下限を設定した後、試験片のスキン層上にレーザー光を照射してスキン層の表面の高さをレーザーによってスキャンする。そして、画像データを解析ソフトに取り込み、JIS B0601に準拠してスキン層の表面粗さRaを解析すればよい。
【0029】
次に、シール部材2の独立気泡発泡ゴムシート21の製造要領について説明する。独立気泡発泡ゴムシート21の製造方法としては、表面粗さRaが5μm以下である冷却面を有する冷却部材を用意し、この冷却部材の冷却面を発泡直後の独立気泡発泡ゴムシートの表面に押圧して急速に独立気泡発泡ゴムシートの表面を冷却することによって、表面粗さRaが100μm以下のスキン層を有する独立気泡発泡ゴムシートを得ることができる。なお、冷却部材の冷却面の表面粗さRaの測定方法は、上述したスキン層の表面粗さRaの測定方法と同様であるのでその説明を省略する。
【0030】
そして、冷却部材としては、特に限定されず、表面粗さRaが5μm以下である表面を冷却面とした金属板や、表面粗さRaが5μm以下である周面を冷却面とした冷却ロールなどが挙げられる。
【0031】
冷却部材の冷却面の温度は、低いと、独立気泡発泡ゴムシートの収縮が大きく且つ変動しやすいため、独立気泡発泡ゴムシートの厚み精度が低下することがあり、高いと、スキン層の表面粗さRaが大きくなることがあるので、0〜40℃が好ましく、10〜20℃がより好ましい。
【0032】
なお、独立気泡発泡ゴムシートを製造する要領は、従来公知の方法が用いられ、例えば、ゴム系樹脂、架橋剤及び熱分解型発泡剤に、必要に応じて充填剤等が添加されてなる発泡性原料組成物を必要に応じてバンバリーミキサーや加圧ニーダなどの混練り機で混練した後、カレンダー、押出機、コンベアベルトキャスティングなどにより連続的に混練して発泡性シートを製造し、この未架橋の発泡性シートを加熱して架橋しつつ或いは架橋後に発泡させて独立気泡発泡ゴムシートを製造する方法、ゴム系樹脂及び熱分解型発泡剤に、必要に応じて充填剤等が添加されてなる発泡性原料組成物を必要に応じてバンバリーミキサーや加圧ニーダなどの混練り機で混練した後、カレンダー、押出機、コンベアベルトキャスティングなどにより連続的に混練して発泡性シートを製造し、この発泡性シートに電離性放射線を照射して発泡性シートを架橋した後、発泡性シートを加熱して発泡させて独立気泡発泡ゴムシートを製造する方法などが挙げられる。
【0033】
上記架橋剤としては、例えば、有機過酸化物、硫黄、硫黄化合物等が挙げられ、有機過酸化物が好ましい。電離性放射線としては、例えば、光、γ線、電子線などが挙げられる。上記有機過酸化物としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、クミルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルパーオキシクメンなどが挙げられ、上記硫黄化合物としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、一塩化硫黄、二塩化硫黄などが挙げられる。
【0034】
又、発泡性原料組成物中における架橋剤の含有量は、ゴム系樹脂100重量部に対して0.05〜10重量部が好ましく、0.1〜7重量部がより好ましい。これは、発泡性原料組成物中における架橋剤の含有量が少ないと、発泡性原料組成物のゲル分率(架橋度)が発泡に適したものとならずに破泡してしまい、ゴム系樹脂発泡シートを得ることできないことがあるからである。一方、発泡性原料組成物中における架橋剤の含有量が多いと、発泡性原料組成物のゲル分率(架橋度)が上がりすぎて、発泡性原料組成物が発泡しないことがあるからである。
【0035】
上記熱分解型発泡剤とは加熱により分解して発泡ガスを発生させるものをいい、このような熱分解型発泡剤としては、特に限定されず、例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等が挙げられる。これらの熱分解型発泡剤は単独で用いられてもよく2種以上が併用されてもよい。上記発泡性原料組成物中における熱分解型発泡剤の配合量は、ゴム系樹脂100重量部に対して1〜30重量部が好ましい。
【0036】
発泡性原料組成物中における熱分解型発泡剤の含有量は、ゴム系樹脂100重量部に対して3〜25重量部が好ましく、5〜20重量部がより好ましい。これは、発泡性原料組成物中における熱分解型発泡剤の含有量が少ないと、ゴム系樹脂発泡シートの発泡倍率が上がらずに見掛け密度が高くなってしまい、ゴム系樹脂発泡シートの反発力が高くなることがあるからである。一方、発泡性原料組成物中における熱分解型発泡剤の含有量が多いと、ゴム系樹脂発泡シートの見掛け密度が低くなり、圧縮永久歪みが大きくなり、独立気泡発泡ゴムシートの形状回復性が低下して、長期間に亘って止水性を維持することができないことがあるからである。
【0037】
なお、電離性放射線の照射量としては、ゴム系樹脂の特性によって適宜、調整すればよく、0.5〜10Mradが好ましく、0.7〜5.0Mradがより好ましい。
【0038】
そして、独立気泡発泡ゴムシート21におけるJIS K6850に準拠して測定された剪断剥離強度は、アクリル板に対する20kPaの圧力で1時間養生後した後において、1kPa以上が好ましい。
【0039】
又、独立気泡発泡ゴムシート21に積層させている補強部材22としては、独立気泡発泡ゴムシート21が水圧によって変形するのを防止することできれば、特に限定されず、例えば、カーボン繊維、金属繊維、ポリエステル繊維などからなる織布、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの合成樹脂シート又は合成樹脂発泡シート、金属板などが挙げられる。
【0040】
更に、図2に示したように、シール部材2にその両面に亘って貫通する円形状の貫通孔2aを形成し、この貫通孔2aに棒状部材4を貫通させた状態に配設してもよい。この際、シール部材2の貫通孔2aの直径を棒状部材4の外径よりも小さくし、棒状部材4をシール部材2の貫通孔2aに貫通させた状態において、独立気泡発泡ゴムシート21が圧縮に伴う復元力によって棒状部材4の外周面に密着するようにすればよい。そして、棒状部材4の外周面においてもシール部材2の独立気泡発泡ゴムシート21が強固に密着しており優れた止水性を発揮する。なお、棒状部材4の外径とは、棒状部材をその長さ方向に直交する方向に切断した断面において、この断面を包囲し得る最小径の真円の直径をいう。棒状部材4としては、管体、複数本の配線を束ねた結束体などが挙げられる。
【0041】
そして、シール部材2に棒状部材4を貫通させる場合には、シール部材2への棒状部材4の挿入が容易であることから、補強部材22は合成樹脂発泡板であることが好ましい。
【0042】
又、棒状部材4を構成している材料としては、特に限定されず、例えば、鉄、銅、アルミニウム、チタンなどの金属、ガラス、コンクリート、シリコンなどの無機物、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂などの合成樹脂が挙げられる。
【実施例】
【0043】
(実施例1)
ニトリル−ブタジエンゴム(NBR、密度:960kg/m3)100重量部、アゾジカルボンアミド(大塚化学社製 商品名「SO−L」)14重量部及びフェノール系酸化防止剤(アデカスタブ社製 商品名「アデカスタブ AO−60」)0.5重量部を押出機に供給して溶融混練して押出機から押出して厚みが1.8mmの発泡性ゴム系樹脂シートを得た。
【0044】
得られた発泡性ゴム系樹脂シートに加速電圧500keVにて電子線を1.8Mrad照射することによって発泡性ゴム系樹脂シートを架橋した。しかる後、発泡性ゴム系樹脂シートを発泡炉内に供給し240℃に加熱して発泡性ゴム系樹脂シートを発泡させて独立気泡発泡ゴムシートを製造した。
【0045】
一方、クロムメッキされ且つ表面粗さRaが0.05μmである表面を冷却面とした一対の冷却用鏡面板を用意した。一対の冷却用鏡面板の冷却面が独立気泡発泡ゴムシート側となるようにして、発泡直後の厚みが5.2mmの独立気泡発泡ゴムシートを表面温度が15℃に保持された一対の冷却用鏡面板で挟持して5分間に亘って急冷して、見掛け密度が50kg/m3で且つ厚さが5mmの独立気泡発泡ゴムシートを得た。独立気泡発泡ゴムシートの両面にはスキン層が形成されており、これらスキン層の表面粗さRaは共に55μmであった。独立気泡発泡ゴムシートの独立気泡率は94%であった。
【0046】
そして、独立気泡発泡ゴムシートを直径125mmの平面円形状に裁断し、この平面円形状の独立気泡発泡ゴムシート21の片面に、厚さが0.5mmで且つ直径が125mmの平面円形状のポリ塩化ビニル樹脂シート22を積層してシール部材2を作製した。
【0047】
又、直径75mmの円形状の貫通孔11が形成された厚さが0.8mmの鉄板を二枚用意し、一方の鉄板を構造物1とし、他方の鉄板を押圧板3とした。そして、構造物1の貫通孔11を閉塞するようにシール部材2をその独立気泡発泡ゴムシート21が構造物1に対向した状態となるように配設した後、シール部材2上に押圧板3を重ね合わせて、シール部材2を構造物1と押圧板3とで挟んだ。
【0048】
しかる後、ボルトを構造物1及び押圧板3に貫通させ、このボルトにナットを取り付けて締め付けることによって、シール部材2を構造物1と押圧板3との対向面によって厚み方向に圧縮し、シール部材2の独立気泡発泡ゴムシート21を構造物1の貫通孔11の開口端面に加圧状態にて密着させることによって止水構造Aを形成した。なお、構造物1と押圧板3との対向面間の距離は3mmであった。
【0049】
(実施例2)
発泡性ゴム系樹脂シートの厚みを1.4mmとしたこと以外は実施例1と同様にして見掛け密度が50kg/m3で且つ厚さが4mmの独立気泡発泡ゴムシートを得た。独立気泡発泡ゴムシートの両面にはスキン層が形成されており、これらスキン層の表面粗さRaは共に60μmであった。独立気泡発泡ゴムシートの独立気泡率は92%であった。
【0050】
そして、独立気泡発泡ゴムシートを直径125mmの平面円形状に裁断し、この平面円形状の独立気泡発泡ゴムシート21の片面に、厚さが6mmで且つ直径が125mmの平面円形状のポリエチレン発泡シート(独立気泡率:99%、密度:33kg/m3)22を積層してシール部材2を作製した。
【0051】
又、直径75mmの円形状の貫通孔11が形成された厚さが0.8mmの鉄板を二枚用意し、一方の鉄板を構造物1とし、他方の鉄板を押圧板3とした。そして、構造物1の貫通孔11を閉塞するようにシール部材2をその独立気泡発泡ゴムシート21が構造物1に対向した状態となるように配設した後、シール部材2上に押圧板3を重ね合わせて、シール部材2を構造物1と押圧板3とで挟んだ。
【0052】
しかる後、ボルトを構造物1及び押圧板3に貫通させ、このボルトにナットを取り付けて締め付けることによって、シール部材2を構造物1と押圧板3との対向面によって厚み方向に圧縮し、シール部材2の独立気泡発泡ゴムシート21を構造物1の貫通孔11の開口端面に加圧状態にて密着させることによって止水構造Aを形成した。なお、構造物1と押圧板3との対向面間の距離は5mmであった。更に、シール部材2の中央部にその両面間に貫通する直径が5mmの円形状の貫通孔2aを形成し、この貫通孔2aに外径が10mmの銅製の管体を挿入した。
【0053】
(実施例3)
実施例1と同様にして独立気泡発泡ゴムシートを製造した。そして、独立気泡発泡ゴムシートを直径125mmの平面円形状に裁断し、この平面円形状の独立気泡発泡ゴムシート21の片面に、厚さが2mmで且つ直径が125mmの平面円形状のポリプロピレンシート(独立気泡率:98%、密度:50kg/m3)22を積層してシール部材2を作製した。
【0054】
又、直径75mmの円形状の貫通孔11が形成された厚さが0.8mmの鉄板を二枚用意し、一方の鉄板を構造物1とし、他方の鉄板を押圧板3とした。そして、構造物1の貫通孔11を閉塞するようにシール部材2をその独立気泡発泡ゴムシート21が構造物1に対向した状態となるように配設した後、シール部材2上に押圧板3を重ね合わせて、シール部材2を構造物1と押圧板3とで挟んだ。
【0055】
しかる後、ボルトを構造物1及び押圧板3に貫通させ、このボルトにナットを取り付けて締め付けることによって、シール部材2を構造物1と押圧板3との対向面によって厚み方向に圧縮し、シール部材2の独立気泡発泡ゴムシート21を構造物1の貫通孔11の開口端面に加圧状態にて密着させることによって止水構造Aを形成した。なお、構造物1と押圧板3との対向面間の距離は3mmであった。更に、シール部材2の中央部にその両面間に貫通する直径が3mmの円形状の貫通孔2aを形成し、この貫通孔2aに外径が8mmのポリ塩化ビニルで被覆された電気コードを挿入した。
【0056】
(比較例1)
シール部材として、直径125mm、厚さ10mmの円形状のポリウレタン発泡シート(密度:50kg/cm3、独立気泡率:3%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして止水構造を形成した。
【0057】
(比較例2)
シール部材として、直径125mm、厚さ20mmの円形状のポリウレタン発泡シート(密度:50kg/cm3、独立気泡率:3%)を用いたこと以外は実施例2と同様にして止水構造を形成した。
【0058】
(比較例3)
発泡性ゴム系樹脂シートの厚みを2.2mmとしたこと以外は実施例1と同様にして見掛け密度が50kg/m3で且つ厚さが6mmの独立気泡発泡ゴムシートを得た。独立気泡発泡ゴムシートの両面にはスキン層が形成されており、これらスキン層の表面粗さRaは共に60μmであった。独立気泡発泡ゴムシートの独立気泡率は92%であった。
【0059】
この独立気泡発泡ゴムシートを用いたこと、ポリエチレン発泡シートを用いなかったこと、構造物1と押圧板3との対向面間の距離を3mmとしたこと以外は実施例2と同様にして止水構造を形成した。
【0060】
得られた止水構造の止水性を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0061】
(止水性1)
JIS D 0203 R1に規定されている試験方法と同様の要領で散水試験を行った。試験時間は24時間とした。板の貫通孔において、散水側とは反対側の開口部に漏水が確認されるまでの時間を測定した。
【0062】
(止水性2)
高圧洗車機(ケルヒャー社製 商品名「K5.20Mプラス」、吐出水圧:8MPa、水量)370リットル/時間)を用いて、止水構造の独立気泡発泡ゴムシートから30cm離れた位置から、独立気泡発泡ゴムシートに対して180秒間に亘って扇状高圧散水し、放水側とは反対側の貫通孔の開口部に漏水が確認されるまでの時間を測定した。
【0063】
(止水性3)
止水構造の円シール部材から10cm離れた位置から、内径15mmのホースより10リットル/分の流量で独立気泡発泡ゴムシートに対して180秒間に亘って放水し、放水側とは反対側の貫通孔の開口部に漏水が確認されるまでの時間を測定した。
【0064】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の止水構造の一例を示した縦断面図である。
【図2】本発明の止水構造の一例を示した縦断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 構造物
2 シール部材
21 独立気泡発泡ゴムシート
22 補強部材
3 押圧板
4 棒状部材
A 止水構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に形成された貫通孔がシール部材によって閉塞されてなる止水構造であって、上記シール部材は、独立気泡発泡ゴムシートとこの独立気泡発泡ゴムシートに積層された補強部材とを含み、上記独立気泡発泡ゴムシートが上記構造物の貫通孔の開口端面に加圧状態で密着していることを特徴とする止水構造。
【請求項2】
構造物の貫通孔の開口端面に密着させている独立気泡発泡ゴムシートの表面の表面粗さRaが100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の止水構造。
【請求項3】
独立気泡発泡ゴムシートがゴム系樹脂を含有していることを特徴とする請求項1に記載の止水構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−88148(P2010−88148A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251067(P2008−251067)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】