説明

止血用包帯

本発明は、吸収性材料および/または凝固タンパク質を含有する複数の層を含む止血用包帯に関する。特に、本発明は、トロンビン層が第1のフィブリノゲン層と第2のフィブリノゲン層の間にはさまれ、第1のフィブリノゲン層および/または第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない、包帯を含む。この止血用包帯は、傷ついた組織の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.発明の分野
本発明は、吸収性材料および/または凝固タンパク質を含有する複数の層を含む止血用包帯に関する。この止血用包帯は、傷ついた組織の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
II.発明の背景
出血(hemorrhage)(出血(bleeding))の処置は、応急手当および野外での外傷の治療における重要な段階である。残念なことに、接触可能な部位からの過度の出血または致命的な出血が起こることは珍しいことではない(J.M.Rocko et al.,J.Traunia 22:635(1982))。ベトナム戦争の死亡率データから、戦闘による死亡の10%が四肢出血の未処置によるものであったことが分かる(SAS/STAT Users Guide,4th ed.(Cary,NC:SAS Institute Inc;1990))。有効な野外出血処置法を用いることによって、ベトナム戦争間の失血死の1/3までを防ぐことができただろう(SAS/STAT Users Guide,4th ed.(Cary,NC:SAS Institute Inc;1990))。
【0003】
一般市民の外傷死亡率統計値は、病院搬送前の四肢出血死の正確な数を示していないが、症例報告および対照試験によらない個々の症例に基づいた報告は、同様のことが起こったことを示している(J.M.Rocko et al.,J.Trauma 22:635(1982))。これらのデータは、病院搬送前に簡単かつ効果的な出血処置法を用いることによって、生存者を大幅に増やすことができることを示唆している。
【0004】
手術室における出血処置の助けになるものとして、液状フィブリン密封剤が用いられている(J.L.Garza et al.,J.Trauma 30:512-513(1990);H.B.Kram et al.,J.Trauma 30:97-101(1990);M.G.Ochsner et al.,J.Trauma 30:884-887(1990);T.L.Matthew et al.,Ann.Thorac.Surg.50:40-44(1990);H.Jakob et al.,J.Vasc.Surg.,1:171-180(1984))。フィブリノゲンおよびトロンビンの広範囲の使用は第二次世界大戦の最後の年には珍しいものでなかったが、肝炎の伝播のために断念された(D.B.Kendrick,Blood Program in WW II(Washington,DC:Office of the Surgeon General,Department of Army;1989),363-368)。
【0005】
単一ドナーフィブリン密封剤が出血処置だけでなく様々な外科的状況でも臨床に広く用いられている(W.D.Spotnitz,Thromb.Haemost.74:482-485(1995);R.Lerner et al.,J.Surg.Res.48:165-181(1990))。アメリカ赤十字(American Red Cross)およびその他は、肝炎のリスクを排除するように思われる血漿タンパク質精製法を開発している(Reiss et al.,Trans.Med.Rev.10:85-92(1996))。
【0006】
欧州の多くの国々では、手術室で使用するために乾燥フィブリノゲン-トロンビン包帯(タココウム(TACHOCOMB)(商標),ハフスランドニコメッドファーマ(Hafslund Nycomed Pharma),Linz,Austria)も利用することができる(Schiele et al.,Clin.Materials 9:169-177(1992))。この包帯の現在の処方物はウシトロンビンを使用している。このフィブリノゲン-トロンビン包帯は使用前の混合を必要とせず、使いやすいが、4℃での保管が要求され、創傷への適用前に生理食塩水で予め湿らすことが必要とされるので、その使用は限られている。
【0007】
トロンビン層がフィブリノゲン層の間にはさまれた止血用サンドイッチ包帯が述べられている(例えば、PCT/US99/10952を参照のこと,これは参照として本明細書に組み入れられる)。このような包帯は、傷ついた組織を治療する方法において使用することができるが、このような従来のサンドイッチ包帯は層が剥離し、それにより、包帯の層の端がもはや互いにくっつかなくなることがある。このような層間剥離は包帯成分層の相互作用を減少させて、出血防止における包帯の有効性を低下させる可能性がある。
【発明の開示】
【0008】
III.発明の概要
本発明は、第1のフィブリノゲン層と第2のフィブリノゲン層の間にはさまれたトロンビン層を含み、トロンビン層は第1のフィブリノゲン層および/または第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない、止血用包帯(例えば、絆創膏)を提供する。このような止血用包帯は創傷を治療するのに有用であり、トロンビン層が第1のフィブリノゲン層全体および第2のフィブリノゲン層全体と同一の広がりを有する包帯と比較して、層の層間剥離を阻害するという思いもよらない利点をもたらす。
【0009】
従って、本発明は、(i)第1のフィブリノゲン層;(ii)第1のフィブリノゲン層に隣接するトロンビン層;および(iii)トロンビン層に隣接する第2のフィブリノゲン層を含み、トロンビン層が止血用包帯の第1のフィブリノゲン層および/または第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない、止血用包帯を提供する。
【0010】
本発明の関連する包帯は、(i)吸収性材料層;(ii)吸収性材料層に隣接する第1のフィブリノゲン層;(iii)第1のフィブリノゲン層に隣接するトロンビン層;および(iv)トロンビン層に隣接する第2のフィブリノゲン層を含み、トロンビン層は、止血用包帯の第1のフィブリノゲン層および/または第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない。
【0011】
別の態様において、止血用包帯は、(i)第1のフィブリノゲン層;(ii)第1のフィブリノゲン層に隣接する吸収性材料層;(iii)吸収性材料層に隣接するトロンビン層;および(iv)トロンビン層に隣接する第2のフィブリノゲン層を含み、トロンビン層は、止血用包帯の第1のフィブリノゲン層および/または第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない。
【0012】
本発明はまた、患者の傷ついた組織を治療する方法であり、本明細書に記載の新規の止血用包帯のいずれかを傷ついた組織に適用する段階を含む方法を含む。このような方法において、止血用包帯は、傷ついた組織に外因性の液体で水和されてもよく、止血用包帯は、傷ついた組織に内因性の液体で水和されてもよい。
【0013】
第1のフィブリノゲン層を準備し、トロンビン層を第1のフィブリノゲン層に適用し、第2のフィブリノゲン層をトロンビン層に適用することによって止血用包帯を作成する方法であり、トロンビン層が第1のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さず、および/または第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない方法も本発明に含まれる。
【0014】
同様に、本発明は、第1のフィブリノゲン層が接着された吸収性裏層または非吸収性裏層を準備し、トロンビン層を、第1のフィブリノゲン層の、吸収性裏層または非吸収性裏層が接着された側とは反対のフィブリノゲン層側に適用し、第2のフィブリノゲン層をトロンビン層に適用ことによって止血用包帯を作成する方法であり、トロンビン層が第1のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さず、および/または第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない方法を含む。
【0015】
様々な態様において、トロンビン層は、第1のフィブリノゲン層および第2のフィブリノゲン層の5%〜95%(例えば、20〜50%)とそれぞれ同一の広がりを有する。トロンビン層は様々な任意の形状およびパターンで構成することができる。例えば、トロンビン層は、トロンビンを含む点の配列として構成されてもよく、トロンビンを含む1個の点として構成されてもよいが、これに限定されない。または、トロンビン層は、トロンビンを含む複数の線として構成されてもよい。
【0016】
止血用包帯の各層は、選択的に、1種類またはそれ以上の種類の適切な賦形剤、結合剤、および/または可溶化剤も含んでよい。さらに、止血用包帯の各々は、選択的に、剥離剤を含む剥離層および/または裏材料もさらに含んでもよい。
【0017】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は両方とも例示かつ説明にすぎず、請求された本発明のさらなる説明を目的とすることが理解されるべきである。
【0018】
特別の定めのない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載の全ての特許、特許出願、および刊行物は参照として本明細書に組み入れられる。
【0019】
本明細書で使用する、フィブリノゲン層と「同一の広がりを有さない」と言われるトロンビン層は、トロンビン層が、独立して、止血用包帯の第1のフィブリノゲン層の表面積のわずか約5%〜約95%と同一の広がりを有するように、および/または止血用包帯の第2のフィブリノゲン層の表面積のわずか約5%〜約95%と同一の広がりを有するように、トロンビン層の二次元での空間範囲がフィブリノゲン層の一方または両方の空間範囲より小さいトロンビン層である。例えば、トロンビン層は、独立して、第1のフィブリノゲン層および第2のフィブリノゲン層の表面積の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、または90%と同一の広がりを有してもよい。フィブリノゲン層と「同一の広がりを有する」トロンビン層はフィブリノゲン層を完全に覆い、フィブリノゲン層の表面積の100%と同一の広がりを有する。例えば、異なる総表面積または形状を有するフィブリノゲン層を用いることによって、トロンビン層は第1のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さないが、第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有してもよく、またはその逆でもよい。
【0020】
本明細書で使用する「患者」は、医療および/または治療を必要とするヒトまたは動物個体を意味する。
【0021】
本明細書で使用する「創傷」は、循環系から血液が失われる、患者の任意の組織への任意の損傷を意味する。組織は臓器または血管などの内部組織でもよく、皮膚などの外部組織でもよい。血液の喪失は内部での喪失(例えば、破裂した臓器からの喪失)でもよく、外部での喪失(例えば、裂傷からの喪失)でもよい。創傷は、臓器などの軟部組織にあってもよく、骨などの硬組織にあってもよい。損傷は、外傷、感染、または外科的介入を含む任意の因子または原因によって引き起こされたものでもよい。損傷は命にかかわるものでもよく、命にかかわらないものでもよい。
【0022】
本明細書で使用する「吸収性材料」は、創傷治癒および/または組織再生を著しく妨害しないように、かつ大きな代謝障害を引き起こさずに消費または排泄される成分に、自然に、および/または哺乳動物の体によって分解される材料を意味する。
【0023】
本明細書で使用する「安定性」は、活性および/または機能を決定する材料の特徴の保持を意味する。
【0024】
本明細書で使用する「結合剤」は、止血用包帯のある層と1つもしくはそれ以上の異なる層との付着および/またはある特定の層の成分とその層の他の成分との付着を改善する化合物または化合物の混合物を意味する。
【0025】
本明細書で使用する「可溶化剤」は、水性溶媒への1種類またはそれ以上の種類のタンパク質の溶解を改善する化合物または化合物の混合物を意味する。
【0026】
本明細書で使用する「賦形剤」は、止血用包帯の1つまたはそれ以上の層に嵩高性および/または多孔性をもたらす化合物または化合物の混合物を意味する。
【0027】
本明細書で使用する「剥離剤」は、製造用の型から止血用包帯の取り外しを容易にする化合物または化合物の混合物を意味する。
【0028】
本明細書で使用する「発泡剤」は、適切な条件下で水和されると気体を生じる化合物または化合物の混合物を意味する。
【0029】
本明細書で使用する「約」は示された値の±約10%を意味する。
【0030】
本発明の止血用包帯は従来の包帯と比較して様々な利点をもたらす。フィブリノゲン層の一方または両方と同一の広がりを有さないトロンビン層を使用することによって、本発明の包帯は端で層間剥離する可能性が低く、従って、従来の包帯より耐久性が高く、扱いやすい。さらに、このような包帯は大規模な製造に適しており、包帯に調剤されるトロンビンの量をより的確に制御することができる。
【0031】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【0032】
発明の詳細な説明
本発明の例示的な態様は、(i)第1のフィブリノゲン層;(ii)第1のフィブリノゲン層に隣接するトロンビン層;および(iii)トロンビン層に隣接する第2のフィブリノゲン層を含み、トロンビン層が第1のフィブリノゲン層および/または第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない、止血用包帯(例えば、患者の傷ついた組織を治療するための止血用包帯)に関する。
【0033】
本発明の別の態様は、(i)吸収性材料層;(ii)吸収性材料層に隣接する第1のフィブリノゲン層;(iii)第1のフィブリノゲン層に隣接するトロンビン層;および(iv)トロンビン層に隣接する第2のフィブリノゲン層を含み、トロンビン層が第1のフィブリノゲン層および/または第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない、止血用包帯に関する。
【0034】
本発明のさらに別の態様は、(i)第1のフィブリノゲン層;(ii)第1のフィブリノゲン層に隣接する吸収性材料層;(iii)吸収性材料層に隣接するトロンビン層;および(iv)トロンビン層に隣接する第2のフィブリノゲン層を含み、トロンビン層が第1のフィブリノゲン層および/または第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない、患者の傷ついた組織を治療するための止血用包帯に関する。
【0035】
止血用包帯の各層はまた、選択的に、1種類またはそれ以上の種類の適切な賦形剤(例えば、スクロース)を含んでもよい。
【0036】
止血用包帯の各層はまた、選択的に、1種類またはそれ以上の種類の適切な結合剤(例えば、スクロース)を含んでもよい。
【0037】
止血用包帯の各層はまた、選択的に、1種類またはそれ以上の種類の適切な可溶化剤(例えば、スクロース)を含んでもよい。
【0038】
止血用包帯の各層はまた、選択的に、1種類またはそれ以上の種類の適切な発泡剤(例えば、クエン酸および重炭酸ナトリウムの混合物)を含んでもよい。
【0039】
止血用包帯のそれぞれはまた、選択的に、剥離剤を含む剥離層をさらに含んでもよい。例示的な剥離剤はスクロースである。
【0040】
止血用包帯のそれぞれはまた、包帯が用いられている時に、創傷に面する側とは反対の包帯側に裏材料をさらに含んでもよい。裏材料は生理学的に許容される接着剤で貼り付けられてもよく、(例えば、表面静電荷を有することによって)それ自身で接着してもよい。裏材料は吸収性材料でもよく、シリコーンパッチまたはプラスチックなどの非吸収性材料でもよい。
【0041】
止血用包帯に用いられるフィブリノゲンは、フィブリノゲン複合体もしくは任意のフィブリノゲンでもよく、または所望であれば、その誘導体もしくは代謝産物(例えば、フィブリノペプチドAおよびフィブリノペプチドB)を使用することができる。フィブリノゲンはまた第XIII因子を含んでもよい。
【0042】
フィブリノゲン複合体は、精製およびウイルス不活化されているヒト血漿タンパク質の混合物でもよい。例示的なフィブリノゲン複合体水溶液は100〜130mg/mLの総タンパク質を含み、このうち少なくとも80%はフィブリノゲンである。フィブリノゲン複合体の他の構成成分として、アルブミン(一般的に、約5〜25mg/mL);プラスミノゲン(一般的に、約5μg/mL未満);第XIII因子(一般的に、約10〜40単位/mL);およびポリソルベート80(一般的に、3%未満)を挙げることができる。フィブリノゲン複合体のpHは、一般的に、7.1〜7.5である。適切なフィブリノゲン複合体はまたフィブロネクチンを含んでもよい。
【0043】
包帯の層を形成するために適用されるフィブリノゲンの濃度は、一般的に、1mg/cm2〜60mg/cm2(例えば、少なくとも5mg/cm2、10mg/cm2、15mg/cm2、20mg/cm2、30mg/cm2、40mg/cm2、50mg/cm2)である。第1のフィブリノゲン層および第2のフィブリノゲン層は同じ大きさでもよい(例えば、一般的に、第2のフィブリノゲン層が第1のフィブリノゲン層と同一の広がりを有するような大きさである)。または、第1のフィブリノゲン層は第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さなくてもよく、第2のフィブリノゲン層は第1のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さなくてもよい。従って、第1のフィブリノゲン層は第2のフィブリノゲン層の大きさの100%まででもよく、第2のフィブリノゲン層は第1のフィブリノゲン層の大きさの100%まででもよい。
【0044】
止血用包帯に用いられるトロンビンは、精製およびウイルス不活化されているヒト血漿タンパク質の凍結乾燥混合物でもよい。本発明の包帯は、一般的に、約1〜160国際単位(IU)/cm2(例えば、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、100、125、150IU/cm2)の効力のトロンビンを含む。任意の構成成分として、アルブミン(一般的に、約5mg/mL)およびグリシン(一般的に、約0.3M±0.05M)が挙げられる。トロンビンのpHは、一般的に、6.5〜7.1である。
【0045】
トロンビン層は、第1のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さないように第1のフィブリノゲン層に適用され、および/または第2のフィブリノゲン層が適用された際には第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない。例えば、トロンビン層は、第1のフィブリノゲン層の表面積の約5%〜約95%を占めてもよく、および/または第2のフィブリノゲン層の表面積の約5%〜約95%を占めてもよい。トロンビンはフィブリノゲン層に1個の点として適用されてもよく、トロンビンの点の総表面積が第1のフィブリノゲン層の表面積の約5%〜約95%を占めるように、および/または第2のフィブリノゲン層の表面積の約5%〜約95%を占めるようにフィブリノゲン層に一連の点として適用されてもよい。
【0046】
このような1個またはそれ以上のトロンビンの点は任意の幾何学的形状(例えば、充填されたまたは充填されていない円、長方形、三角形、線、無定形の形状、またはこの組み合わせ)を有してもよい。このような点は、第1のフィブリノゲン層に、順序良く配置されたパターンで適用されてもよく、ランダムなパターンで適用されてもよい。トロンビンの総表面積が第1のフィブリノゲン層の表面積の約5%〜約95%であれば、および/または第2のフィブリノゲン層の表面積の約5%〜約95%であれば、複数の点は任意の様々な形状およびパターン(例えば、配列、格子、一連の同心の点(例えば、同心の円もしくは三角形)、重複する一連の点(例えば、重複する円)、軸から発するスポーク、または任意の他の配置)をなしてもよい。一般的に、少数の大きな点より多数の小さな点が好ましい。例えば、同じ総表面積を占めるのであれば、一般的に、20×20配列の点が10×10配列の点より好ましい。しかしながら、トロンビンの総表面積が第1のフィブリノゲン層の表面積の約5%〜約95%であれば、および/または第2のフィブリノゲン層の表面積の約5%〜約95%であれば、点は任意の大きさのものでよい。例えば、包帯の全体の大きさに応じて、点の直径、幅、または長さは、少なくとも0.01、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10cmまたはそれ以上でもよいが、これに限定されない。1つの態様において、例えば、4個の円形の点(それぞれの直径は2〜3mmである)が包帯の1平方センチメートルを占めてもよい。様々な他の配置が本発明の範囲内であり、当業者により容易に使用することができる。
【0047】
包帯は、様々な任意の大きさおよび形状として作成することができる。一般的に、包帯は、当業者により容易に取り扱うことができる大きさおよび形状(一般的に、任意の側面に沿った長さが12インチ未満(例えば、1インチ×1インチ、1インチ×2インチ、4インチ×4インチなど))の包帯である。包帯の水分濃度は、一般的に、8%未満(例えば、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%%未満)である。
【0048】
当業者に周知の任意の様々な吸収性材料を本発明において使用することができる。例えば、吸収性材料はタンパク質物質(例えば、フィブリン、ケラチン、コラーゲン、および/またはゼラチン)でもよく、炭水化物物質(例えば、アルギン酸塩、キチン、セルロース、プロテオグリカン(例えば、ポリ-N-アセチルグルコサミン)、グリコール酸ポリマー、乳酸ポリマー、またはグリコール酸/乳酸コポリマー)でもよい。例えば、吸収性材料は炭水化物物質でもよい。吸収性材料の例示的な例は、商品名ビクリル(VICRYL)(商標)およびデクソン(DEXON)(商標)で売られている。
【0049】
一般的に、止血用包帯の様々な層は、当業者に周知のおよび利用可能な任意の手段によって互いに貼りつけることができる。一般的に、1つまたはそれ以上のフィブリノゲン層および/またはトロンビン層は、一連の急速冷凍された水溶液層として適用され、その後に、(例えば、それぞれの層が適用された後に、および包帯全体が組み立てられた時に)凍結乾燥またはフリーズドライされる。これらの層は、噴霧、ピペッティング(例えば、マルチチャンネルピペッターを使用する)、散水、マスクの使用、静電気沈着、マイクロシリンジアレイシステムの使用、または高密度配列を生成するための穴を備える分配用マニホルドを使用した分配を含む任意の様々な技法によって適用することができる。
【0050】
本発明のある態様において、包帯が型を用いて作成される場合、包帯の第1の層が適用される前に、スクロースなどの剥離剤が型に適用される。このような態様において、止血用包帯は、剥離剤を含む剥離層をさらに含む。
【0051】
または、生理学的に許容される接着剤が吸収性材料および/または裏材料(存在する場合)に適用されてもよく、その後に、接着剤に1つまたはそれ以上のフィブリノゲン層および/またはトロンビン層が貼りつけられてもよい。
【0052】
包帯の1つの態様において、生理学的に許容される接着剤は、傷ついた組織に包帯が適用された後に、吸収性材料および/または裏材料がフィブリノゲン層から分離できるような剪断強さおよび/または構造を有する。別の態様において、生理学的に許容される接着剤は、傷ついた組織に包帯が適用された後に、吸収性材料および/または裏材料がフィブリノゲン層から分離できないような剪断強さを有する。
【0053】
適切なフィブリノゲンおよびトロンビンは、当業者に周知のおよび利用可能な任意の精製方法によってヒトもしくは哺乳動物の血漿から得られてもよく;標準的な組換えDNA法に従って導入された、ヒトもしくは哺乳動物の血漿タンパク質を発現する遺伝子を含む組換え組織培養物、ウイルス、酵母、細菌などの上清もしくはペーストから得られてもよく;または標準的なトランスジェニック法に従って導入された、ヒトフィブリノゲンおよび/もしくはヒトトロンビンを発現する遺伝子を含むトランスジェニック動物の液体(例えば、血液、乳、リンパ、尿など)から得られてもよい。
【0054】
一般的に、止血用包帯に使用するためのフィブリノゲンおよび/またはトロンビンの純度は、これらのタンパク質の効力および安定性につながるような、関連分野の当業者に周知の適切な純度である。製造、保存、および/または使用の間にフィブリノゲンおよび/またはトロンビンを断片化、活性化、および/または分解する可能性のある物質を除去するために、フィブリノゲンおよび/またはトロンビンは複数のクロマトグラフィー精製段階(例えば、アフィニティクロマトグラフィーおよびイムノアフィニティクロマトグラフィー)に供することができる。精製によって除去することができるこのような物質の例示的な例として、タンパク質汚染物質(例えば、プラスミノゲン、インターアルファトリプシンインヒビター、およびプレアルファトリプシンインヒビター);非タンパク質汚染物質(例えば、脂質);ならびにタンパク質汚染物質および非タンパク質汚染物質の混合物(例えば、リポプロテイン)が挙げられる。
【0055】
止血用包帯が使用されている間、傷ついた組織に包帯が適用されている時に、フィブリノゲンおよびトロンビンは、出血している創傷から流れた患者の内因性液体(例えば、血液)によって活性化することができる。または、傷ついた組織からの液体の喪失が、タンパク質層の十分な水和をもたらすのに不十分な場合では、傷ついた組織に止血用包帯が適用される前または適用される際に、生理学的に許容される液体(例えば、水、緩衝液、生理食塩水)(選択的に、任意の必要な補因子および/または酵素を含む)を適用することによって、フィブリノゲンおよび/またはトロンビンは活性化することができる。
【0056】
さらに、1種類またはそれ以上の種類の補助物質(例えば、増殖因子などの薬物、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体ならびに他の化合物)も、止血用包帯の1つまたはそれ以上の層に含めることができる。このような補助物質の例示的な例として、抗生物質(例えば、テトラサイクリンおよびシプロフロキサシン、アモキシシリン、ならびにメトロニダゾール);抗凝血物質(例えば、活性化プロテインC、ヘパリン、プロストラサイクリン(prostracyclin)(PGI2)、プロスタグランジン、ロイコトリエン、抗トロンビンIII、ADPase、およびプラスミノゲンアクチベーター);ステロイド(例えば、デキサメタゾン、プロスタサイクリン阻害剤、プロスタグランジン、ロイコトリエン、および/または炎症を阻害するキニン);心血管薬(例えば、カルシウムチャンネルブロッカー、血管拡張剤、および血管収縮剤);化学誘引物質;局所麻酔薬(例えば、ブピバカイン);ならびに抗増殖/抗腫瘍薬物(例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、タキソールおよび/またはタキソテール);抗ウイルス剤(例えば、ガングシクロビル(gangcyclovir)、ジドブジン、アマンチジン(amantidine)、ビダラビン、リバラビン(ribaravin)、トリフルリジン(trifluridine)、アシクロビル、ジデオキシウリジン、ならびにウイルスの成分もしくは遺伝子産物に対する抗体);サイトカイン(例えば、αまたはβまたはγインターフェロン、αまたはβ腫瘍壊死因子、およびインターロイキン);コロニー刺激因子;エリスロポエチン;抗真菌剤(例えば、ジフルカン、ケタコニゾール(ketaconizole)、およびナイスタチン);抗寄生虫剤(例えば、ペンタミジン);抗炎症剤(例えば、α-1-抗トリプシンおよびα-1-抗キモトリプシン);麻酔薬(例えば、ブピバカイン);鎮痛薬;防腐剤;ならびにホルモンが挙げられるが、これに限定されない。他の例示的な補助物質として、ビタミンおよび他の栄養補助物質;糖タンパク質;フィブロネクチン;ペプチドおよびタンパク質;炭水化物(単純糖質および/または複合糖質);プロテオグリカン;抗アンギオゲニン;抗原;脂質またはリポソーム;ならびにオリゴヌクレオチド(センスおよび/またはアンチセンスDNAおよび/またはRNA)が挙げられるが、これに限定されない。
【0057】
以下の実施例は例示にすぎず、添付の特許請求の範囲によって限定される本発明の範囲を限定することを目的としない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の方法に様々な変更および変化を加えることができることは当業者に明らかであろう。従って、本発明の変更および変化が添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内にあれば、本発明は本発明の変更および変化を含むことが意図される。
【0058】
本明細書で言及された全ての特許および刊行物は参照としてはっきりと組み入れられる。
【0059】
実施例
実施例1
以下に示した実施例は、トロンビン層が第1のフィブリノゲン層および第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない包帯を作成することによって、包帯の層間剥離を減少できることを証明する。この実施例において、トロンビンは、2種類の配置のいずれかで第1のフィブリノゲン層の上に分配される。従来の包帯では、トロンビンは第1のフィブリノゲン層を完全に覆っていた(この配置は本明細書では「完全」被覆と呼ばれる)。本発明の包帯では、トロンビンは、第1のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない1個の円として第1のフィブリノゲン層の上に配置された(この配置は本明細書では「円形」被覆と呼ばれる)。
【0060】
包帯を作成するために、フィブリノゲンを従来のように処方した: 35mg/ml総タンパク質(TP)が、緩衝液D(100mM NaCl、1.1mM CaCl2・H2O、10mM TrisHCl、10mMクエン酸ナトリウム、2%スクロース、2.8mg/mlアルブミン、0.52mg/ml TWEEN-80,pH7.2)(80mg/g TPアルブミンおよび15mg/g TPポリソルベートを含む)に含まれる。トロンビン溶液が2000IU/mlとなるように、効力が4745IU/mlのトロンビン濃縮物を4種類の緩衝液のそれぞれに溶解して処方した。4種類の緩衝液は表1に記載した。包帯を手作業で製造し、4種類のトロンビン処方物および被覆タイプのそれぞれについて18個の包帯を作成して、合計144個の包帯を得た。包帯を凍結乾燥し、乾燥剤と共に包装し、次いで、外観、水分含有率、γ二量体化、および凝固タンパク質パーセントについてインビトロアッセイで、ならびにエクスビボブタ動脈切開アッセイで試験した。
【0061】
外観
外観アッセイにおいて、全ての包帯の層間剥離を試験した。包帯のフィブリノゲン層が4つ全ての端に沿って互いにくっついていれば、包帯は合格しているとみなされた。包帯層が層間剥離すると、包帯は扱いにくくなり、層の表面にひび割れも入ると、断片化しやすくなる。表1に示したように、層間剥離試験(すなわち、外観試験)において、トロンビン層が円形被覆で適用された包帯(群2、4、6、および8)の合格率は、トロンビン層が完全被覆で適用された包帯(群1、3、5、および7)より高い。トロンビンが完全被覆で適用された包帯は外観試験に不合格になる傾向があるのに対して、トロンビンが円形被覆で適用された包帯のほぼ100%が外観試験に合格した。
【0062】
【表1】

【0063】
トロンビンが処方された緩衝液に関係なく、層間剥離に対する耐性の改善が観察された。従って、CaCl2はトロンビンの活性化に必要とされるが、緩衝液処方物のいくつかからCaCl2を除去してもクロット形成には影響しなかった。これらの結果は、トロンビン活性化を促進するのに十分なCaCl2がフィブリノゲン処方物(1.1mM)に存在したことを示している。同様に、固形物含有量(リジン)の増加は重大な影響を及ぼさなかった。
【0064】
水分含有率は、各群からの包帯の1つに対して測定された。包帯の水分含有率は平均0.98%であり、群の全体にわたって0.80〜1.16%で非常に一定していた。この水分含有率レベルは、このような包帯に典型的なものである。
【0065】
γ-γ二量体化を従来のアッセイで測定するために、各群からの1つの包帯が用いられた。Okude et al.,Biol.Pharm.Bull.16:448-452に記載のように、γ-γ二量体アッセイは、トロンビンがフィブリノゲンのγ鎖を架橋する能力、従って、クロットを形成する能力を測定する。一般的に、このアッセイを行うために、それぞれの包帯を低湿度チャンバーの中ですりつぶして均一で微細な粉末にし、2つの均等な部分に分ける。一方の部分には0.9%生理食塩水500μLを添加し、他方の部分にはオクデ溶解溶液(Okude Dissolving Solution)(ODS)(10M尿素、1%SDS、0.1%β-メルカプトエタノール、0.01%ブロモフェノールブルー)500μLを添加する。両方を短時間ボルテックスし、40℃で5分間インキュベートする。これにより、生理食塩水試料ではクロットが形成されるのに対して、ODSに含まれる変性剤はクロット形成を阻止する。両方の試料を5倍量のODSに懸濁し、40℃で1時間インキュベートし、βメルカプトエタノールを含むラエミリ(Laemmli)サンプルバッファーに溶解し、SDS-PAGEゲルにおいて電気泳動する。タンパク質を視覚化するために、ゲルをクマシーブルーで染色する。表1に示すように、全ての包帯が、凝固後に高い二量体化パーセントを示し、非凝固包帯では低い二量体化パーセントを示した。これは、トロンビンとフィブリノゲンの相互作用は包帯製造中には起こらなかったことを示している。
【0066】
凝固タンパク質
また、包帯に含まれる凝固タンパク質のパーセントを測定するために、各群から2つの包帯を試験した。このアッセイでは、包帯を湿らし、凝固したタンパク質を遠心分離によって沈殿させた。トロンビン処方物のいくつかからCaCl2を除去しても、クロット形成には大きく影響しなかった。前記の二量体化アッセイと同様に、これらの結果は、トロンビン活性化を促進するのに十分なCaCl2がフィブリノゲン処方物(1.1mM)に存在したことを示している。
【0067】
エクスビボブタ動脈切開包帯性能試験
模擬的に作られた傷において包帯が十分な圧力を維持できるか確かめるために、いくつかの群からの止血用包帯のうちの12個をエクスビボブタ動脈切開アッセイにおいて試験した。表1に示すように、トロンビン層がフィブリノゲン層と同一の広がりを有さないように円形被覆で製造された包帯は、このアッセイにおいて十分な圧力を維持することができた。
【0068】
標準的なエクスビボブタ動脈切開アッセイは以下のように行うことができる。凍結したブタ大動脈を入手し、解凍する。大動脈は4℃で一晩解凍してもよく、一つ一つ包装して37℃の水浴の中に入れてもよい。大動脈の先端の約11cmから余分な結合組織を取り除く、通常、先端の5〜5.5cmには側副血管が無い。次の5〜5.5cmには1〜2個より多い側副枝は無いはずである。これらは、シアノアクリレート接着剤で容易に封止または補強することができる。
【0069】
大動脈を2個の5.5cm断片に切断する。止血鉗子または尖っていない鉗子を用いて大動脈をひっくりかえして、内側を暴露する。血管の内側および外側を37℃のPBS 1〜5mLで洗浄する。約0.6cm(0.25インチ)の穴が片側にあけられた20ccシリンジの上に、Oリングを伸ばしてはめる。指または止血鉗子を用いて、シリンジの上に血管を引っ張り込む。同じ大きさの別のOリングを下部にはめ込む。
【0070】
弯曲のある止血鉗子を用いて、2つのOリングを血管の上部で注意深く固定する。2つのOリングの距離は3.5cmにすべきである。動脈はぴったりフィットし、所定の位置にしっかりと保持されていなければならない。シリンジの穴がOリング間の距離の中間にあるように、固定された血管を配置する。
【0071】
シリンジに37℃のPBSを満たし、プランジャーが固定された位置で保持されるように、シリンジの外側を通ってプランジャーに入るネジを配置する。シリンジの上にある動脈を37℃のPBS 1〜2mlで洗浄する。16ゲージ針を用いて、中心(それぞれのOリングから約1.75cm)にある、シリンジの穴の上部で穴をあける。12回使用したごとに、16ゲージ針は交換しなければならない。
【0072】
包帯が入っている密封した袋をひらき、直ぐに包帯を切開の上に配置する(どちらのOリングにも触れないように、それぞれのOリングから約0.5cmの場所に配置する)。全ての包帯は使用する前に一つ一つ包装されていなければならない。
【0073】
P-1000ピペットマンを使用して、包帯を37℃のPBSで湿らす。15mg/cm2の包帯の場合は、800μLを使用し、8mg/cm2の包帯の場合は、500μLを使用する。どちらのOリングにも触れないように、包帯の上部にシリンジシールドを直ぐに配置する。軽く押して固定する。
【0074】
シリンジおよびその全ての構成要素を動かないようにするために保持用の箱を用いて、シリンジを37℃のインキュベーターに入れる。プラスチックカバーで覆い、上に200gのおもりをしっかりと固定して配置する。重さの均一な分散を確かなものにする。シリンジを37℃で5分間インキュベートする。
【0075】
シリンジをインキュベーターから取り出す。包帯を覆っているシールドを注意深く取り外す。蠕動ポンプに接続しているチューブにシリンジを取り付ける。チューブは、ポンプを通って、反対側のY接合部に接続されるように配置されなければならない。Y接合部は2個の出口を作る。これにより、一方の場所にあるシリンジにPBSがポンプで注入され、それと同時に、他方の場所に背圧が発生する。この背圧はインライン圧力変換器-分析器を用いて直接測定され、DMSI-200/1ソフトウェアを用いて記録される。
【0076】
37℃のPBSをシリンジにポンプで注入し、発生した圧力のモニタリングを直ぐに開始する。初期流速が約0.3mL/minになるように、30秒スローランプ(slow ramp)を起動する(E229での注入の場合、1×速度で4に設定する。E132での注入の場合、1×速度で7.5に設定する)。
【0077】
30秒後に、流速を約3mL/minに上げる(両設定とも10×速度)。200mmHgの圧力が得られるまで、これを行わなければならない。200mmHgに達したら、タイマーを2分間起動させる。
【0078】
200mmHgが得られたらポンプを止める。発生した圧力をモニターする。圧力が低下し始めたら、十分な圧力が得られるまで、ポンプを戻す。これは、2分間隔の間に必要に応じて何度も行われるかもしれない(通常の条件下では、圧力は200〜215mmHgの間に維持しなければならない)。さらに、漏れおよびその位置に注意する。漏れが生じたら、漏れた瞬間の最大時間および破裂圧を記録する。以下の合格/不合格基準に基づいて包帯の性能を判断する。
【0079】
漏れが全く発生せずに、包帯がかなり一定した200mmHgの圧力を2分間維持した場合に合格とみなされる。極めてわずかな漏れ(例えば、ゆっくりとした浸出またはひとりでに封じ直してしまった漏れ)が発生して、包帯がかなり一定した200mmHgの圧力を2分間維持した場合でも合格とみなされる。
【0080】
包帯が激しい漏れのために十分な圧力を維持できない場合に不合格とみなされる。これは、不十分な付着による漏れ、ならびに製造不備による漏れを含む。このアッセイにおいて不合格とみなされ得る包帯は、それにもかかわらず、重篤でない創傷を治療するのに使用することができる。
【0081】
実施例2
下記の表2に示したデータは、層間剥離が第1のフィブリノゲン層へのトロンビン層(または緩衝液)の完全被覆に起因する可能性があることを証明している。トロンビン層が第1のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さないようにトロンビンが適用されて作成された包帯は、一般的に、層間剥離外観試験に合格した(表2の群9〜11および13〜16)。同様に、中間層なしで作成された(すなわち、2つのフィブリノゲン層のみを有する)包帯は一般的に層間剥離せず、フィブリノゲン層は互いにしっかりとくっついた。
【0082】
この実施例では、フィブリノゲンは前記のように処方し、トロンビンは表2に記載のように処方した。フィブリノゲン層(約1.2mL)を、設定可能なピペットを用いて適用し、包帯を本明細書に記載のように手作業で製造した。包帯の中間層(すなわち、トロンビンまたはフィブリノゲン)は、エアブラシを用いて噴霧することによって、またはピペッティングによって適用した。それぞれの処方物および適用方法について4種類の中間層量を適用した。120μlは「標準的な」量とみなされる。中間層を噴霧によって適用した時には、噴霧時間を長くして適用量を増やした。トロンビンを噴霧した全ての群において、第1のフィブリノゲン層の完全被覆が行われた。中間層をピペッティングによって適用した時には、1000μlの中間層を適用した場合にのみ、第1のフィブリノゲン層の完全被覆が得られた。トロンビン層がフィブリノゲン層と同一の広がりを有さないようにトロンビン層を適用することによって層間剥離が阻害されることを証明するために、さらに少量の中間層が用いられた。各群において6つの包帯を試験した。群1は対照として用いられ、水分含有率、γ-γ二量体化、凝固タンパク質パーセント、および外観(すなわち、層間剥離)について評価された。この対照包帯は、1.3%の水分レベル、凝固時の良好な二量体化(82%)、非凝固試料の低い二量体化(1%)、および少ないが許容可能な凝固タンパク質パーセント(68%)を示した。全ての包帯の層間剥離を評価した。合格した包帯の数を表2に示す。
【0083】
表2に示したデータから、フィブリノゲン層の完全被覆で中間層を適用した場合(群1〜8および12)、全ての包帯がその端で層間剥離したことが分かる。部分的な被覆が行われた場合、概して、包帯は外観に合格した。ピペットで適用された場合に、トロンビン中間層の量が増加するにつれて、包帯の層間剥離が増加するという観察から、層間剥離は、包帯の製造中に中間層が凍結する速度の関数というより、被覆および中間層の組成物の関数であることが分かる。従って、フィブリノゲン層と同一の広がりを有さないトロンビン層を有する包帯は、層間剥離を阻害する。
【0084】
【表2】

【0085】
他の態様
本発明は、前述の本発明の詳細な説明および好ましい態様を参照して説明されたが、前述の説明は例示を目的とし、本発明を限定することを目的としない。本発明は添付の特許請求の範囲によって定義される。他の局面、利点、および変更は以下の特許請求の範囲の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、止血用包帯:
(i)第1のフィブリノゲン層;
(ii)該第1のフィブリノゲン層に隣接するトロンビン層;および
(iii)該トロンビン層に隣接する第2のフィブリノゲン層であって、該トロンビン層が、該第1のフィブリノゲン層および/または該第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有していない、第2のフィブリノゲン層。
【請求項2】
以下を含む、止血用包帯:
(i)吸収性材料層;
(ii)該吸収性材料層に隣接する第1のフィブリノゲン層;
(iii)該第1のフィブリノゲン層に隣接するトロンビン層;および
(iv)該トロンビン層に隣接する第2のフィブリノゲン層であって、該トロンビン層は、該第1のフィブリノゲン層および/または該第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有していない、第2のフィブリノゲン層。
【請求項3】
以下を含む、止血用包帯:
(i)第1のフィブリノゲン層;
(ii)該第1のフィブリノゲン層に隣接する吸収性材料層;
(iii)該吸収性材料層に隣接するトロンビン層;および
(iv)該トロンビン層に隣接する第2のフィブリノゲン層であって、該トロンビン層は、該第1のフィブリノゲン層および/または該第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有していない、第2のフィブリノゲン層。
【請求項4】
トロンビン層が第1のフィブリノゲン層の5%〜95%と同一の広がりを有している、請求項1〜3のいずれか一項記載の止血用包帯。
【請求項5】
トロンビン層が第1のフィブリノゲン層の20〜50%と同一の広がりを有している、請求項4記載の止血用包帯。
【請求項6】
トロンビン層が第2のフィブリノゲン層の5%〜95%と同一の広がりを有している、請求項1〜3のいずれか一項記載の止血用包帯。
【請求項7】
トロンビン層が第2のフィブリノゲン層の20〜50%と同一の広がりを有している、請求項6記載の止血用包帯。
【請求項8】
トロンビン層が、トロンビンを含む点の配列として構成される、請求項1〜3のいずれか一項記載の止血用包帯。
【請求項9】
トロンビン層が、トロンビンを含む1個の点として構成される、請求項1〜3のいずれか一項記載の止血用包帯。
【請求項10】
トロンビン層が、トロンビンを含む複数の線として構成される、請求項1〜3のいずれか一項記載の止血用包帯。
【請求項11】
裏材料をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の止血用包帯。
【請求項12】
吸収性材料がグリコール酸ポリマー、乳酸ポリマー、およびグリコール酸/乳酸コポリマーからなる群より選択される、請求項2記載の止血用包帯。
【請求項13】
1つまたはそれ以上の層が可溶化剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の止血用包帯。
【請求項14】
1つまたはそれ以上の層が賦形剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の止血用包帯。
【請求項15】
1つまたはそれ以上の層が結合剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項記載の止血用包帯。
【請求項16】
傷ついた組織を治療する方法であり、以下の段階を含む方法:
請求項1〜3のいずれか一項記載の止血用包帯を該傷ついた組織に適用する段階。
【請求項17】
止血用包帯を、傷ついた組織に外因性の液体で水和する段階をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
止血用包帯を、傷ついた組織に内因性の液体で水和する段階をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
以下の段階を含む、止血用包帯を作成する方法:
第1のフィブリノゲン層を準備する段階;
トロンビン層を該第1のフィブリノゲン層に適用する段階;および
第2のフィブリノゲン層を該トロンビン層に適用する段階であって、該トロンビン層は、該第1のフィブリノゲン層および/または該第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない、段階。
【請求項20】
トロンビン層が第1のフィブリノゲン層の5%〜95%と同一の広がりを有している、請求項19記載の方法。
【請求項21】
トロンビン層が第2のフィブリノゲン層の5%〜95%と同一の広がりを有している、請求項19記載の方法。
【請求項22】
以下の段階を含む、止血用包帯を作成する方法:
第1のフィブリノゲン層が接着された吸収性裏層または非吸収性裏層を準備する段階;
トロンビン層を、該第1のフィブリノゲン層の、吸収性裏層または非吸収性裏層が接着された側とは反対のフィブリノゲン層側に適用する段階;および
第2のフィブリノゲン層を該トロンビン層に適用する段階であり、該トロンビン層は、該第1のフィブリノゲン層および/または該第2のフィブリノゲン層と同一の広がりを有さない、段階。
【請求項23】
トロンビン層が第1のフィブリノゲン層の5%〜95%と同一の広がりを有している、請求項22記載の方法。
【請求項24】
トロンビン層が第2のフィブリノゲン層の5%〜95%と同一の広がりを有している、請求項22記載の方法。

【公表番号】特表2006−503612(P2006−503612A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−536153(P2004−536153)
【出願日】平成15年9月9日(2003.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2003/028100
【国際公開番号】WO2004/024195
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(500255007)アメリカン ナショナル レッド クロス (5)
【Fターム(参考)】