説明

正逆回転動作による流体圧一流路切替式拡大ヘッド

【課題】拡大翼の拡縮駆動手段として、流体圧シリンダを使用し、作業ロッドの継足し接続部の簡略化、小型化を可能とすると共に、拡大翼の開度を自由確実に保持する。
【解決手段】掘削作業ロッド下端部のヘッドロッド4内に、流体圧シリンダを内蔵すると共に、上記シリンダに外部から圧力流体を供給すべき1系統の流体流路を上記掘削作業ロッドに縦通し、上記ヘッドロッドの外周部に、上記流体圧シリンダの駆動により拡縮される拡大翼5,5を設けた構成において、ヘッドロッドの回転方向により揺動する抵抗板9を設け、該抵抗板の揺動により上記シリンダへの流体流路切替用切替弁10を作動させ拡大翼を拡縮する。また、上記1系統の流体流路に上記シリンダへの流入量を計測する流量計を設け、この流量により拡大翼5を任意の開度で拡縮可能にする。更に作動流体として水を用い環境に配慮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削スクリューロッド、掘削撹拌ロッド等の掘削作業ロッドの下端部に装備される拡大ヘッドであって、流体圧シリンダにより拡縮される拡大翼を有する拡大ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、知られる拡大ヘッドとして、スクリューロッド下端の掘削羽根の外周部に拡大翼を拡縮方向に回転自在に軸支し、そしてスクリューロッドの正回転による掘削時には周囲の土圧により拡大翼を閉縮させるが、拡大掘削のときはスクリューロッドを逆回転させて周囲の土圧により拡大翼を拡開させるものがある。(特許文献1参照)
【0003】
しかし、上記の従来ヘッドでは、拡縮動作の信頼性に乏しいばかりでなく、逆転回転時に拡大翼が一気に最大開度に拡開するため、回転駆動部に過大な負荷が加わり、特に硬質地盤の拡大掘削において、スクリューロッドが回転不能に至ることがしばしばあった。
【0004】
これを改善するため、油圧シリンダにより拡開するものが開発され、そのうちヘッドロッド内に複動式油圧シリンダを内蔵すると共に該シリンダに油圧を給排すべき2系統の油流路をスクリューロッド内に縦通したもの(特許文献1参照)では、スクリューロッドの継足し接続部の構造が複雑で大型化し、その結果スクリューロッド接続部外周での掘削土砂の通過面積が狭くなり、排土機能を低下させる難点があった。(特許文献2参照)
【0005】
上記難点を改良する他の例として、ヘッドロッド内に、スプリングを内装した単動式油圧シリンダを内蔵すると共に、1系統の油流路をスクリューロッド内に縦通したもの(特許文献2参照)が提案されたが、拡大ヘッドの上下動時に土圧抵抗、掘削抵抗等に抗して拡大翼の位置を保持するものはシリンダ内のスプリング力であるため、時には拡大翼が予定外の拡縮を行うことがあり、これを防止するには、上記スプリングの強大化、大型化が必要となる問題が残されていた。
【0006】
これらの理由から、特許文献4の方法が提案されたが、この方法はバッテリーをヘッドロッド内に内蔵させ、シリンダを作動させる圧力流体の圧を感知し、その信号で圧力流体を電磁切替弁により流路を切替え、拡大翼の拡縮を行うため、バッテリーの保守取替えが面倒であるだけでなく、振動や湿潤環境という過酷な作業条件で使用されるため、電気回路の不調、漏電等のトラブルが生じることがあった。(特許文献4参照)
【特許文献1】特開2003−239669
【特許文献2】特開2002−322890
【特許文献3】実公昭62−35745
【特許文献4】特開2006−009540
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願第1の発明は、拡大翼の拡縮駆動手段として、スプリング無しの流体圧シリンダを使用し、該シリンダを作業ロッドに縦通した1系統の流体圧流路によって駆動し、それにより作業ロッドの継足し接続部の簡略化、小型化が可能であり、更に、メンテナンスが容易な、拡大ヘッドを提供することを課題とし、
【0008】
本願第2の発明は、上記第1発明の課題に加え、拡大ヘッドの上下動時にも拡大翼の任意開度の拡縮を行うことのできる拡大ヘッドを提供することを課題とする。
【0009】
本願第3の発明は、上記第1及び第2の発明の課題に加え、流体の放出が環境問題を起こさぬ拡大ヘッドを提供することを課題とする。
【課題を解決しようとする手段】
【0010】
本願第1発明は掘削作業ロッド下端部のヘッドロッド内に、流体圧シリンダを内蔵すると共に、上記シリンダに外部から圧力流体を供給すべき1系統の流体流路を上記掘削作業ロッドに縦通し、上記ヘッドロッドの外周部に、上記流体圧シリンダの駆動により拡縮される拡大翼を設けた構成において、
上記ヘッドロッドの回転方向により揺動する抵抗板を設け、該抵抗板の揺動により機械式にて、上記流体圧シリンダへの流体流路切替用切替弁を作動させ、拡大翼を拡縮させるようにしたことを特徴とする拡大ヘッドにある。
【0011】
また、本願第2の発明は、上記1系統の流体流路が外部に配置された流体圧ポンプ及び少なくとも流体圧シリンダへの流体流路切替用切替弁を含む流体圧回路と接続され、
上記1系統の流体流路に、上記流体圧シリンダへの流体量を計測する流量計を設け、この流量により上記拡大翼の任意開度の拡縮を行えるようにしたことを特徴とする請求項1の拡大ヘッドにある。
【0012】
更に、本願第3の発明は、水を流体とすることを特徴とする請求項1及び請求項2の拡大ヘッドにある。
【発明の効果】
【0013】
本願第1発明の正逆回転動作により機械的に切替を行う拡大ヘッドは、従来のスプリングを内装した単動式油圧シリンダを、掘削作業ロッドに縦通された1系統の流体流路を通じて供給される流体圧により一方向に駆動し、他方向への駆動は上記スプリングによって行う拡大ヘッドと異なり、流体圧シリンダへの流体流入出ラインを抵抗板の揺動動作により流体流路切替用切替弁を作動させ、拡大翼の拡縮を行わせるものであり、従来ヘッドと同様に掘削作業ロッドの接続部を簡単な構造で小型化することが可能となり、拡縮の切替を機械的に行わせるためメンテナンスが容易となる。
【0014】
本願第2発明の拡大ヘッドは、上記第1の発明における1系統の流体通路に、上記流体圧シリンダへの流体量を計測する流量計を設け、この流量により、上記第1の発明に加え、拡大翼を任意開度に拡縮させることができるので、所望開度の拡大掘削を行うことができると共に、徐々に拡大翼の拡縮を行うことにより過大な負荷によるトラブルを忌避できる。
【0015】
本願第3の発明として、水を流体として用いることにより、原地盤中に放出しても問題が発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図面に示す実施の形態を参照して説明する。
【0017】
図1は本発明を実施するに用いる正逆回転動作により機械的切替機構を有する拡大ヘッドの一実施形態を示すもので、一般的な掘削スクリューロッド1下端部に取り付ける、水圧によって作動する拡大ヘッド2に実施した例で、本体ロッド3の下端に中空のヘッドロッド4を同一軸線上に接続し、該ヘッドロッド4の外周部に一対の拡大翼5、5を設けると共に、ヘッドロッド4内部に、拡大翼5,5を拡縮すべき水圧シリンダ16を内装してある。
そして、拡大翼5、5はピストンロッド15が上方へ移動したとき拡開し、下方へ移動したとき閉縮する構成であり、一対の拡大翼5,5は、上記ヘッドロッド4の外周面における垂直方向に相対する位置に突設されたブラケット30、30に、翼基端部において、該ヘッドロッド4の軸心線を通る平面上で揺動自在に軸31、31により支持し、更に上記シリンダ16の下端部外周面における直径方向に対する位置に両端部が突設した拡大翼拡縮用ブラケット32を、上記ヘッドロッド4の周壁に開設された母線方向の長孔33、33を通して突出している該ブラケット32突出部に作動リンク34、34の一端部を軸35、35により夫々揺動自在に連結すると共に、該作動リンク34、34の他端部を上記拡大翼5、5の中間部基端寄りの位置に軸36、36によりそれぞれ揺動自在に連結されている。
【0018】
また、図1のXX矢視断面図を図2に示したように、ヘッドロッド4外周に内側に窪み22部分を有する揺動ブラケット7が、揺動自在に外挿されており、そのブラケット7には抵抗板9が固着され、ヘッドロッド4側には抵抗板9、9の回転揺動を規制するストッパー8、・・が固着されている。
そして、水圧ユニット17からの圧力水を水圧シリンダ16のピストン14上部又は下部へ送込む流路切替弁10が、ヘッドロッド4の内部にバネ23支持により摺動自在に埋め込まれ、ブラケット7の窪み22内に流路切替弁10の切替用ピン24が突き出るようになっており、ヘッドロッド4の逆回転で抵抗板9、9にかかる土圧にてブラケット7が左側から右側のストッパー8、・・まで移動するようになっている。このとき、流路切替弁10の切替用ピン24部の状態はブラケット7の窪み21部分(図2−1)から窪み21のない部分(図2−2)に移り、切替用ピン24はヘッドロッド4の内部に押込まれ、それによって流路を切替るように構成されている。尚、水圧ユニット17からの水圧シリンダ16への送水で送り出されるシリンダ16内の水は切替弁10からD流路を通りチャッキ弁13から放出されるようになっている。
【0019】
尚、図3に示したように、水圧ユニット17には水圧ポンプ18、圧水吐出ラインAの異常高圧回避用リリーフ弁21、送水弁20及び拡大翼5の開度決定用流量計19が設けられている。
また、流路切替弁10から水圧シリンダ16の圧水流路B、C間に双方の流路圧にて作動するパイロットチェック弁11、12が配置されている.
【0020】
次に上記実施の形態の作用を図1、図2及び図3を参照して説明する。
【0021】
先ず、拡大翼5、5を閉縮した状態(図3の(イ))にて縦掘削を行い、掘削の途中または所定深さ掘削終了時に拡大翼5、5を拡開するとき、そのままヘッドロッド4を回転させながら、水圧ユニット17の送水弁20を開にして水圧ポンプ18を駆動し、予め作成した開度(掘削径)−圧送水量表から、所望の拡大翼5、5開度に相当する圧水を流量計19にて計測送水する。このとき、水圧ユニット17からの圧水は流路A、切替弁10、パイロットチャッキ弁11を経由して水圧シリンダ16の下側に送水され、ピストン14を押し上げる(図3の(ロ))。そして、水圧シリンダ16上部に予め充填されていた水の内ピストン14の押し上げにより排除される分はB流路に圧が掛かることによってパイロットチャッキ弁12が開きC流路、切替弁10、D流路を経由してチャッキ弁13から地中に放出される。このとき、本例では、流体として水を使用しているので地中に放出しても環境問題を起こすことがない。そして、圧送水量が所定の水量に達した時点で、水圧ユニット17内の送水弁20を閉にして水圧ポンプ18を停止する。
【0022】
この操作を繰り返すことにより、拡大翼5、5は急拡大することなく徐々に拡大でき、任意の場所で所望開度での拡大掘削が行えることとなる。尚、図3の(ハ)は、送水によりピストン14が最上部まで押し上げられた状態即ち、拡大翼5、5が最大開度の状態を示している。
【0023】
実際の拡幅掘削は、縦掘削した所望の位置にて、水圧ユニット17内の送水弁20を開にして後、上記の方法で拡大翼5、5を途中開度固定状態に拡開し送水弁20を閉にして、第一段階拡幅掘削を行い、次に再度送水弁20を開にして拡大翼5、5の開度を前述の方法で更に上げてから送水弁20を閉にして、次段階の拡幅掘削という操作を所定回繰り返すことにより、徐々に拡幅掘削が行えるので、拡大翼5、5が一気に最大開度に拡開して回転駆動部に過大な付加が加わりスクリューロッドが回転不能に至るというようなことがない。
【0024】
このようにして、所望の拡幅掘削または途中拡幅掘削が終了した時点で、本体ロッド3の回転を逆回転させる。こうすることにより、抵抗板9、9かかる土圧にてブラケット7が左側から右側のストッパー8、・・まで移動するので、ブラケット7の窪み22も右側に移動するため、ブラケット7窪み22内に突出ていた流路切替弁10のピン24はヘッドロッド4内に押込められ、切替弁10の流路が切替わる(図2の(2−2)、図3の(ニ))。この状態で、水圧ユニット17内の送水弁20を開として流路Aから流路Cを経由してシリンダ16の上部へ圧水を送り込むことにより、ピストン14を押し下げられ拡大翼5、5は閉縮する。このとき、水圧シリンダ16下部に充填されていた水の内ピストン14の押し下げにより排除される分はC流路に圧が掛かることによってパイロットチャッキ弁11が開きB流路、切替弁10、D流路を経由してチャッキ弁13から地中に放出される。
【0025】
また、途中拡幅掘削を行い、拡大翼5、5を閉縮させて閉縮掘削を続け、再度拡幅掘削を行う場合は、所望の拡幅位置に来たところで、本体ロッド3の回転を逆回転させる。こうすることにより、抵抗板9、9かかる土圧にてブラケット7が右側から左側のストッパー8、・・まで移動するので、ヘッドロッド4内に押込められていた切替弁10のピン24は、現れたブラケット7の窪み22に突出ることとなり(図2の(2−1)、図3の(イ))、切替弁10の流路が切替わる。その時点で、水圧ユニット17の送水弁20を開にして水圧ポンプ18を駆動し、予め作成した開度(掘削径)−圧送水量表から、所望の拡大翼5、5開度に相当する圧水を流量計19にて計測送水することで、再度拡幅掘削が行えることとなる。
【0026】
そして、最終的に同様の方法にて、拡大翼5,5を閉縮した状態にし、本体ロッド3を地上に引き揚げ、拡幅掘削が完了となる。
【0027】
このようにして、所望の拡大掘削が課題に掲げた種々の問題を伴うことなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 本発明における拡大ヘッドの一実施形態を示す縦断正面図。
【図2】 図1のXX矢視断面図である。
【図3】 本発明説明用の拡大翼駆動用水圧回路及びその状態図であり、(イ)は拡大翼閉縮状態(ロ)は部分拡開状態、(ハ)は全開状態、(ニ)は閉縮切替時の水圧回路図である。
【符号の説明】
【0029】
1 スクリューロッド
2 拡大ヘッド
3 本体ロッド
4 ヘッドロッド
5 拡大翼
6 流路
7 揺動ブラケット
8 ストッパー
9 抵抗板
10 切替弁
11、12 パイロットチャッキ弁
13 チャッキ弁
14 ピストン
15 ピストンロッド
16 シリンダ
17 水圧ユニット
18 水圧ポンプ
19 水量計
20 送水弁
21 リリーフ弁
22 窪み
23 バネ
24 ピン
30 ブラケット
31 軸
32 拡縮用ブラケット
33 長孔
34 作動リンク
35 軸
36 軸
A、B、C、D 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削作業ロッド下端部のヘッドロッド内に、流体圧シリンダを内蔵すると共に、上記シリンダに外部から圧力流体を供給すべき1系統の流体流路を上記掘削作業ロッドに縦通し、上記ヘッドロッドの外周部に、上記流体圧シリンダの駆動により拡縮される拡大翼を設けた構成において、
上記ヘッドロッドの回転方向により揺動する抵抗板を設け、該抵抗板の揺動により上記流体圧シリンダへの流体流路切替用切替弁を作動させ、拡大翼を拡縮させるようにしたことを特徴とする拡大ヘッド。
【請求項2】
上記1系統の流体流路は、外部に配置された流体圧ポンプ及び少なくとも流体圧シリンダへの流体流路切替用切替弁を含む流体圧回路と接続され、
上記1系統の流体流路に、上記流体圧シリンダへの流体量を計測する流量計を設け、この流量により上記拡大翼の任意開度の拡縮を行えるようにしたことを特徴とする請求項1の拡大ヘッド。
【請求項3】
水を流体として用いることを特徴とする請求項1及び請求項2の拡大ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−202376(P2008−202376A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67477(P2007−67477)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【Fターム(参考)】