説明

歪補償増幅器

【課題】携帯電話用中継器等に用いられる歪補償増幅器に関し、特に遅延素子の遅延線を短くして低損失とすると共に小形化を図るものである。
【解決手段】増幅対象となる信号を第1の増幅器14aで増幅し、さらに当該第1の増幅器で発生する歪成分を検出する歪検出ループと、該歪検出ループにより検出される歪成分を除去する歪除去ループとを有する歪補償増幅器において、前記第1の増幅器14aで増幅された歪成分を含む信号と、前記歪検出ループにより検出された歪成分は、前記歪除去ループのそれぞれ異なる系に入力され、前記歪成分を含む信号は第2の増幅器14bを経由して増幅し、前記歪成分は第3の増幅器19を経由して増幅し、各々増幅された信号を合成して出力することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話用中継器等に用いられる多周波信号を同時に増幅する歪補償増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多周波信号を同時に増幅する場合のフィードフォワード方式の歪補償増幅器を図3のブロック回路図に基づき説明する。図3において11は入力信号を分配する分配器、12は可変位相器、13は可変減衰器、14は主増幅器、15は遅延線、16は分配合成器、17は可変位相器、18は可変減衰器、19は誤差増幅器、20は遅延線、21は合成器を示す。次に図3により動作を説明する。分配器11の入力端子aへの入力信号は、分配器11で端子b,cに分配され、端子b側に分配された信号は可変位相器12,可変減衰器13を介して主増幅器14で増幅され、増幅された信号成分と歪成分は分配合成器16の端子dに入力される。また、端子c側に分配された信号は遅延線15を介して分配合成器16の端子eに入力される。
【0003】
分配合成器16は主増幅器14の出力信号を分配して、その一方を端子fから遅延線20に出力し、他方は遅延線15で時間を合わせて合成すると共に、可変位相器12、可変減衰器13を調整して入力信号を相殺させて歪成分を抽出して端子gから可変位相器17に出力する。即ち、分配器11と分配合成器16との間の第1ループで歪成分を抽出する。分配合成器16の端子fに分配された信号成分と歪成分との出力信号は遅延線20を介して合成器21の端子hに入力される。分配合成器16で合成して端子gに抽出された歪成分は、可変位相器17,可変減衰器18を介して誤差増幅器19で増幅され、増幅された歪成分は合成器21の端子iに入力される。
【0004】
この合成器21の端子hと端子iに入力される信号は、遅延線20で時間を合わせると共に、可変位相器17、可変減衰器18を調整して歪信号を相殺させて信号成分のみを抽出して端子jに出力される。即ち、分配合成器16と合成器21の間の第2ループで歪成分の除去を行うものである。
この歪補償増幅器は、主増幅器14で発生した歪を利用するため、歪の改善量が大きく、現在の多周波信号を同時に増幅する歪補償増幅器の主力方式となっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−48345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来のフィードフォワード方式の歪補償増幅器は、第2ループの遅延線20が1〜2m程度の長さの同軸ケーブル或いはHFケーブルを必要とすることから損失が大きく、電源効率が上がらないという問題がある。またケーブル自体のロスを低減するため、当該ケーブルを大きくする必要があり実装上において問題がある。また、遅延線15,20に代えて低損失フィルタにより遅延線を構成する場合もあるが、低損失フィルタの使用により高価格になるという問題がある。
本発明は、従来のフィードフォワード方式の歪補償増幅器の歪除去で用いている遅延線20を無くして、経済的であって高効率の歪補償増幅器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による歪補償増幅器は、増幅対象となる信号を第1の増幅器で増幅し、さらに当該第1の増幅器で発生する歪成分を検出する歪検出ループと、該歪検出ループにより検出される歪成分を除去する歪除去ループとを有する歪補償増幅器において、前記第1の増幅器で増幅された歪成分を含む信号と、前記歪検出ループにより検出された歪成分は、前記歪除去ループのそれぞれ異なる系に入力され、前記歪成分を含む信号は第2の増幅器を経由して増幅し、前記歪成分は第3の増幅器を経由して増幅し、各々増幅された信号を合成して出力することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、前述した構成を採ることにより、歪除去の回路の誤差増幅器の遅延時間に対応して設けられた遅延線を短くでき、また出力増幅器の入力側に設けることができたため、高出力,高効率の特性を得ることができると共に、遅延線の実装スペースが少なくて済むため、装置の小型化が図られ、かつコストの低減をも図ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(実施例)
本発明に係る歪補償増幅器の一実施例を図1に示した回路図により説明する。従来のフィードフォワード方式の歪補償増幅器について説明した図3のブロック回路図の主増幅器14を、本発明においては複数の増幅器から構成するものであり、例えば図2に示すように2つの主増幅器14a,14bから構成し、主増幅器14aは図3の従来例に示した主増幅器14に代えて設けると共に、主増幅器14bは図3の従来例に示した遅延線20に代えて設けられている。
この主増幅器14a,14bは、出力の異なる増幅素子で構成されるが、信号が増幅される動作点では歪の発生が同じような増幅素子により構成されると共に、主増幅器14aの出力レベルより主増幅器14bの出力レベルが大きくなるよう構成されている。
なお、一般的に高出力増幅素子は、基本的な増幅素子を並列に接続しており、並列数の大小により出力レベルを決めている。従って、主増幅器14aと主増幅器14bとは出力レベル以外の基本特性は同じである。
【0009】
次に、図1のブロック回路図の動作を説明する。まず、分配器11と分配合成器16との間での歪成分を抽出する第1ループの構成は、主増幅器14が主増幅器14aに代わったほかは図3のブロック回路図と同じであり、動作もほぼ同じである。但し、分割された主増幅器14aに代わったことにより、遅延時間が短縮され遅延線15はその分短くすることができる。分配合成器16と合成器21との間での歪成分を除去する第2ループの構成は、前述したように遅延線20に代えて主増幅器14bを設けたことである。この主増幅器14bの遅延時間は、可変位相器17から誤差増幅器19のルートの遅延時間と同じになるよう設定する。また、誤差増幅器19は、第1ループにおいて抽出された主増幅器14aの歪成分と主増幅器14bによって生じる歪成分との両者の歪成分を相殺するように、第1ループにおいて抽出された歪成分を増幅するものである。歪成分と相殺するには可変位相器17及び可変減衰器18で位相・振幅を調整する。
【0010】
なお、主増幅器14bの遅延時間と誤差増幅器19の遅延時間とが相違する場合は、遅延時間を合わせるために、主増幅器14b側のライン又は誤差増幅器19側のラインに遅延線を挿入する必要が生じるが、その遅延時間差は微小であるため、その遅延線の長さは極めて短いもので足りる。主増幅器14bのライン側に遅延線が必要な場合は、出力損を減らすため主増幅器14bの入力側に挿入ので、殆ど遅延線がない場合と効率は変わらない。またこの場合の遅延線は多少ロスが大きくても細いケーブルを使用するので実装上の問題はない。当然、誤差増幅器19のラインに遅延線を挿入する場合も小信号部分に挿入する。
また、前述したように、主増幅器14aの歪成分と主増幅器14bの歪成分を、誤差増幅器19の出力で相殺するものであるため、完全に歪除去を行い得ない場合も生じ、歪改善量は若干低下するが、その差は極めて微小であり、前述した作用効果との比較において十分にカバーし得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明による歪補償増幅器は、自動車電話システムや携帯電話システム等の中継器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の歪補償増幅器の一実施例を示すブロック回路図である。
【図2】本発明の歪補償増幅器の主要部の主増幅器の構成を説明するブロック回路図である。
【図3】従来の歪補償増幅器の一例を示すブロック回路図である。
【符号の説明】
【0013】
11 分配器
12,17 可変位相器
13,18 可変減衰器
14 主増幅器
14a,14b 主増幅器
15,20 遅延線
16 分配合成器
19 誤差増幅器
21 合成器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅対象となる信号を第1の増幅器で増幅し、さらに当該第1の増幅器で発生する歪成分を検出する歪検出ループと、該歪検出ループにより検出される歪成分を除去する歪除去ループとを有する歪補償増幅器において、
前記第1の増幅器で増幅された歪成分を含む信号と、前記歪検出ループにより検出された歪成分は、前記歪除去ループのそれぞれ異なる系に入力され、前記歪成分を含む信号は第2の増幅器を経由して増幅し、前記歪成分は第3の増幅器を経由して増幅し、各々増幅された信号を合成して出力することを特徴とする歪補償増幅器。
【請求項2】
請求項1記載の歪補償増幅器において、前記第2の増幅器の出力レベルは、前記第1の増幅器の出力レベルより大きいことを特徴とする歪補償増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−13997(P2006−13997A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189299(P2004−189299)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】