説明

歪調整治具用ジャッキ部材

【課題】メンテナンス費用の低減、運搬作業も容易にできる歪調整治具用のジャッキ部材を提供する。
【解決手段】歪調整治具に使用するシャッキ部材9は、ラム26の先端部がエレクションピースに当接して上下位置を調整するラムシリンダ27と、ラムシリンダ27に作動油を供給するシリンダ29と、シリンダ29をラムシリンダ27に連結し、作動油を上記ラムシリンダ27に供給する供給路19aを備えた連結部19とから構成される。上記シリンダ29には、タンク室32を挟んで配置され、シリンダ29内において相対回転不能で上下動可能な一対のピストン部30,31と、先端が操作部33としてシリンダ29から突出し、上下一対のピストン部30,31に対して螺合されたロッド体34とを備え、上下一対のピストン部30,31はロッド体34の一方向への回動によって互いに近接し、他方向への回動によって互いに離間するようねじ部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨柱の建て入れ調整や、鉄骨柱と鉄骨梁とを接合した鉄骨架構の歪み直し調整、或いは橋梁の組立てなどの歪み調整時に使用する歪調整治具に係わり、詳しくはその歪調整治具に好適なジャッキ部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の歪調整治具のうち、重量部材である鉄骨柱と鉄骨梁とをボルトで仮止めした鉄骨架構を、相手部材である既設の鉄骨柱に溶接で接合する場合に使用する歪調整治具としては、特許文献1に示すものを例示することができる。
【0003】
この歪調整治具は、いわゆる、柱建入調整治具と言われるものであって、以下に説明する構造のもとに取り付けられるものである。
【0004】
すなわち、図6に示すように、所定の隙間dを空けて対向した鉄骨架構5の両側の鉄骨柱51及び両側の鉄骨柱6(いずれも片側のみ図示)に、それぞれ別体のプレート53,53を互いに適宜な間隔を空けて取り付け、これらのプレート53,53の片面側又は両面側に短冊状の接合板54を当てて、プレート53,53と接合板54とをボルト55(1個のみ図示)及びナットで、一定の締め付け力となるように接合する。
【0005】
これによって、鉄骨架構5と鉄骨柱6とを一定以上の力で移動自在に仮止め固定する。このとき、接合板54のボルト孔56は、片方のプレート53に対応する部分を丸孔にし、他方のプレート53に対応する部分を長孔にしておく。
【0006】
また、上記プレート53,53の一部を側方に突出させていわゆるエレクションピースE1,E1を設け、これらのエレクションピースE1,E1間に上記柱建入調整治具7を取り付ける。
【0007】
この柱建入調整治具7は、図7に示すように、上下端部に二股状のブラケットB1,B2を有しており、これらのブラケットB1,B2がエレクションピースE1,E2に連結ピンなどの連結具Cで着脱自在に取り付けられている。
【0008】
柱建入調整治具7の本体部分は、図8に示すように、シリンタ体71と、このシリンダ体71に対して出没可能なロッド体72とを有する油圧シリンダ構造を有している。シリンダ体71には、上述のブラケットB1が設けられ、ロッド体72にはブラケットB2が設けられている。
【0009】
また、シリンダ体71の側部には、図6に示すように、柱建入調整治具7を運搬するときに使用するハンドルHが設けられている。このハンドルH内には、油を貯めるタンクTが形成されている。
【0010】
このシリンダ体71は、図8に示すように、その内部に圧力室R1及び背圧室R2が設けられている。これらの圧力室R1及び背圧室R2は、摺動可能なピストン73によって区画されている。このピストン73は、ロッド体72に連設されている。
【0011】
また、シリンダ体71には、油圧給排機構74が一体的に設けられている。この油圧給排機構74は、圧力室R1又は背圧室R2の何れか一方に対して、選択的に油圧を供給又は排出するようになっている。
【0012】
油圧給排機構74は、シリンダ体71に連設されているハンドルH内に形成されているタンクTと、このタンクTからの油圧をシリンダ体71内の圧力室R1及び背圧室R2に供給するポンプPとを有している。ポンプPは、外部からの人力操作でポンピング作用をするようになっている。
【0013】
また、この油圧給排機構74においては、ポンプPからの油圧をシリンダ体71内の圧力室R1に供給し、又は圧力室R1の油を排出する圧力室制御弁75と、ポンプPからの油圧をシリンダ体71の背圧室R2に供給し、又は背圧室R2内の油を排出する背圧室制御弁76を有している。
【0014】
この油圧給排機構74は、図9に示すように、ポンプPからの油圧が、ポンプPの下流側でタンクTに連通するドレン通路D中に接続されたリリーフ弁77で設定される。また、圧力室制御弁75及び背圧室制御弁76は、それぞれ外部操作で切り替わる供給ポジション75a,76aと、排出ポジション75b,76bとを有している。
【0015】
供給ポジション75a,76aは、ポンプPからの油圧を圧力室R1又は背圧室R2に供給できるように設定されている。排出ポジション75b,76bは、ポンプPからの油圧が圧力室R1又は背圧室R2側に流れる油圧を阻止するチェック弁75c,76cと、これらのチェック弁75c,76cに並列していて、圧力室R1又は背圧室R2からの油圧がタンクTに流出するのを許容する可変絞り75d,76dを有している。
【0016】
また、ポンプPとタンクTとの間には、チェック弁C1が接続され、ポンプPからの油圧がタンクT側に流れるのを阻止している。
【0017】
さらには、ポンプPと圧力室制御弁75及び背圧室制御弁76との間にチェック弁C2が接続され、各制御弁75,76からの油圧がポンプPに逆流するのを阻止している。
【0018】
このように構成された柱建入調整治具7の作用を説明する。
【0019】
上記鉄骨架構5の鉄骨柱6に対する相対的な歪みを修正する場合には、両方の柱建入調整治具7を作動させるが、その作動方向は、鉄骨架構5の歪みを修正したと想定したときに、隙間dが拡大される側の柱建入調整治具7を伸長させ、隙間dが縮小される方の柱建入調整治具7を縮小させる。
【0020】
すなわち、図6に示す左側の柱建入調整治具7を所定の寸法だけ伸長させると共に、図示しない右側の柱建入調整治具7を所定の寸法だけ縮小させることにより、鉄骨架構5の上部側が右に所定量だけ旋回して、鉄骨柱6に対する相対的な歪みが修正される。
【0021】
上記した柱建入調整治具7を伸長させる場合は、図9に示すように、圧力室制御弁75を供給ポジション75aの状態に維持すると共に、背圧室制御弁76を排出ポジション76bの状態に維持する。そして、この状態のまま、ポンプPを人力で操作して、ポンピング作用を行わせる。
【0022】
柱建入調整治具7を縮小する場合には、圧力室制御弁75を排出ポジション75bに切り替えると共に、背圧室制御弁76を供給ポジション76aに切り替えた後、ポンプPのポンピング作用を行う。
【0023】
これによって、タンクTからの油圧が供給ポジション76aにある背圧室制御弁76介して、シリンダ体71内の背圧室R2に供給され、背圧室R2が膨張する。
【0024】
このとき、シリンダ体1内の圧力室R1における油は、排出ポジション75bにある圧力室制御弁75介して、すなわち、可変絞り75dを介してタンクTに排出され、圧力室R1が収縮する。この結果、伸縮手段7が収縮する。
【0025】
そして、伸縮手段7が修正に必要な量だけ収縮した後、ポンプPにおけるポンピング作用を停止し、圧力室制御弁75を供給ポジション75aに切り替える。背圧室制御弁76は、供給ポジション76aのまま維持する。
【0026】
このようにして、鉄骨架構5の鉄骨柱6に対する相対的な歪みを修正した後、プレート53,53と接合板54とをボルト55で強固に締結し、鉄骨架構5の鉄骨柱51と鉄骨柱6の接合部を溶接すれば、上記鉄骨架構5と鉄骨柱6とが歪を修正された状態で接合されることになる。
【特許文献1】特開2003−27748号公報(図1〜図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上記のように構成された柱建入調整治具7は、特に問題がある訳ではないが、以下のような更なる課題が発生する場合が想定される。
【0028】
すなわち、油圧給排機構74を備えたシリンダ体71が、本発明のジャッキ部材となって柱建入調整治具7自体を構成しているため、例えば、油圧給排機構74を構成する圧力室制御弁75や背圧室制御弁76が破損したり、油圧配管部分から油漏れを起こしたりした場合には、柱建入調整治具7自体の修理が必要となる。
【0029】
したがって、柱建入調整治具7としてのメンテナンス費用が嵩むと言う問題点が発生する。
【0030】
また、上記柱建入調整治具7では、この柱建入調整治具7を運搬するときにときに使用するハンドルH内に、油を貯めるタンクTが設けられるので、タンクTに十分な容量を確保するためには、構造上、ハンドルH自体を太くするか或いは長くする必要がある。ハンドルHを太くすると、運搬する際に持ち難いと言うデメリットがあるので、太さにはある程度制約があり、一般にはハンドルHを長くする。
【0031】
このとき、上記ハンドルHは、その基端部においてシリンダ71体に連結されているので、どうしてもシリンダ体71からの張り出しが大きくなり、作業現場等を持ち運ぶ際、長尺状のハンドルHが他の部材に引っ掛からないように注意しながら運搬する必要がある。
【0032】
そこで、本発明の目的は、歪調整治具に使用した際にメンテナンス費用を低く抑えることが出来るばかりでなく、歪調整治具の運搬作業も容易にできる歪調整治具用のジャッキ部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記の目的を達成するため、本発明は、一方部材のエレクションピースが挿入される一方側挿入孔と、他方部材のエレクションピースが挿入される他方側挿入孔と、上記一方側挿入孔に連通する連通孔を有するジャッキ取付孔とを備えた治具本体と、このジャッキ取付孔に着脱可能に取り付けられると共に、上記連通孔を介して一方部材のエレクションピースに当接し、その上下方向の位置調整を行うジャッキ部材とから構成され、一方側挿入孔には、上記ジャッキ部材と相俟って治具本体に対するエレクションピースの上下方向の位置決め固定を行う一方側上下方向位置決め部材が設けられると共に、他方側挿入孔には、この挿入孔の内壁と相俟って治具本体に対する他方部材のエレクションピースの上下方向の位置決め固定を行う他方側上下方向位置決め部材が設けられている歪調整治具に使用する上記ジャッキ部材であって、このシャッキ部材は、ラムの先端部が上記一方部材のエレクションピースに当接してその上下位置を調整するラムシリンダと、このラムシリンダに作動油を供給する作動油供給部と、この作動油供給部の略中央部から突出して上記ラムシリンダに連結すると共に、作動油供給部からの作動油を上記ラムシリンダに供給する供給路を備えた連結部とから構成され、上記作動油供給部は、シリンダと、このシリンダ内のタンク室を挟んで配置されると共に、シリンダ内において相対回転不能で上下動可能な上下一対のピストン部と、先端が操作部としてシリンダから突出すると共に、上記一対のピストン部に対して螺合されたロッド体とを備え、このロッド体と、上記一対のピストン部とはロッド体の一方向への回動によって互いに近接し、他方向への回動によって互いに離間するようねじ部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0034】
本発明のジャッキ部材は、歪調整治具に使用した際、治具本体から着脱可能となっているので、例えば、従来例で示したようなジャッキ部分の故障に対しても、このジャッキ部分のみを取り外して修理することができるため、歪調整治具としてのメンテナンス性を向上させ、その費用を削減することができる。
【0035】
また、作動油供給部の中央部にラムシリンダへの連結部を設けたので、この作動油供給部を、歪調整治具を持ち運ぶ際の把持部とすることができると共に、その場合、重量バランスが良くて運び易いばかりでなく、治具本体からの張り出しを少なくでき、作業現場等を持ち運ぶ際、上記シリンダが他の部材に引っ掛かることを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に、本発明を、建築物の一方部材である鉄骨上柱を他方部材である既設の鉄骨下柱に溶接で接合する場合に使用する歪調整治具のジャッキ部材に具体化した実施例ついて図面に基づいて説明する。
【0037】
図1に示すように、この歪調整治具3は、いわゆる柱建入調整治具と言われるものであって、上記上柱1に形成された上側エレクションピース1aが挿入される上側挿入孔4と、下柱2に形成された下側エレクションピース2aが挿入される下側挿入孔5と、上記上側挿入孔4と同一径で一体的に形成された連通孔(符示なし)及びジャッキ取付孔7とを備えた治具本体8と、このジャッキ取付孔7に着脱可能に取り付けられると共に、上記連通孔を介して上側エレクションピース1aに当接し、その上下方向の位置調整を行うジャッキ部材9とから構成され、上側挿入孔4には、上記ジャッキ部材9と相俟って治具本体8に対する上側エレクションピース1aの上下方向の位置決め固定を行う一方側上下方向位置決め部材と、同じく治具本体8に対する上側エレクションピース1aの左右方向の位置決め固定を行う左右一対の側部ボルト12,13とが設けられ、下側挿入孔5には、この挿入孔5の内壁と相俟って治具本体8に対する下側エレクションピース2aの上下方向の位置決め固定を行う他方側上下方向位置決め部材と、治具本体8に対して下側エレクションピース2aを固定する下側側部ボルト21とが設けられている。
【0038】
また、上記ジャッキ部材9は、図4、5に示すように、ラム26の先端部が上記一方部材のエレクションピース1aに当接してその上下位置を調整するラムシリンダ27と、このラムシリンダ27に作動油を供給する作動油供給部18と、この作動油供給部18の略中央部から突出して上記ラムシリンダ27に連結すると共に、作動油供給部18からの作動油を上記ラムシリンダ27に供給する供給路19aを備えた連結部19とから構成されており、上記作動油供給部18は、シリンダ29と、このシリンダ29内のタンク室32を挟んで配置されると共に、シリンダ29内において相対回転不能で上下動可能な上下一対のピストン部30,31と、先端が操作部33としてシリンダ29から突出すると共に、上記一対のピストン部30,31に対して螺合されたロッド体34とを備え、このロッド体34と、上記一対のピストン部30,31とはロッド体34の一方向への回動によって互いに近接し、他方向への回動によって互いに離間するようねじ部が形成されている。
【0039】
以下、更に詳述すると、上記上側挿入孔4に設けられた上側上下方向位置決め部材は、図2に示すように、上記治具本体8の上部から上側挿入孔4内に螺入された上部ボルト11であり、この上部ボルト11の捻じ込み量を調整することで、上部ボルト11の先端を上側挿入孔内4へ侵入又は退出させ、上側エレクションピース1aの上面に当接して後述するジャッキ部材9と相俟って治具本体8に対する上下方向の相対位置が調整可能となっている。
【0040】
上側挿入孔4に設けられた左右方向位置決め部材は、図3に示すように、治具本体8の側部から上側挿入孔4内に螺入された左右一対の側部ボルト12,13であり、右側部ボルト12の先端に設けた連結ピン12aが左側部ボルト13に設けられた連結孔13a内に挿入可能となっている。
【0041】
したがって、上側挿入孔4内に上側エレクションピース1aを挿入し、この上側エレクションピース1aに穿設された長孔1bを介して右側部ボルト12の連結ピン12aを左側部ボルト13の連結孔13a内に挿入して挟持することで、上側エレクションピース1aの上側挿入孔4からの抜け止めがなされるようになっている。
【0042】
このとき、右側部又は左側部ボルト12,13の治具本体8に対する捻じ込み量を調整することで、左右一対の側部ボルト12,13で挟持された上側エレクションピース1aの治具本体8に対する左右方向の相対位置が調整可能となっているため、上記上柱1をセットしたときの下柱2との芯ずれを修正することができるようになっている。
【0043】
上記ジャッキ部材9は、図4,5に示すように、ラムシリンダ27と、連結部19と、シリンダ29が一体的に形成され、シリンダ29内のタンク室32は連結部19の供給路19aを介してラムシリンダ27の下部からその油室27aに連通すると共に、ラムシリンダ27の開口端には軸封部材28が図示しないねじ等によって固定されている。
【0044】
シリンダ29内のタンク室32を挟んで配置された上下一対のピストン部30,31は、その外周に縦溝30a,31aが形成されると共に、シリンダ29内周には上記縦溝30a,31a内に嵌合される固定ピン36が設けられている。
【0045】
したがって、上記縦溝30a,31a内に固定ピン36が嵌合するようにシリンダ29内に上下一対のピストン部30,31を挿入すると、これらのピストン部30,31がシリンダ29に対して相対回転不能で上下動可能に配置されるようになっている。
【0046】
上下一対のピストン部30,31に対して螺合されたロッド体34は、図4,5中上側となる上部ピストン部30に対して螺合する上部螺合部34aに右ねじが形成され、同じく下側となる下部ピストン部31に対して螺合する下部螺合部34bに左ねじが形成されており、上記ロッド体34と上下ピストン部30,31とは、操作部33の一方向への回動によって互いに近接し、他方向への回動によって互いに離間するようになっている。
【0047】
したがって、上下一対のピストン部30,31が互いに近接する場合には、図4に示すように、タンク室32の容積が縮小されることで作動油がラムシリンダの油室27aに送られてラム26を上昇させると共に、上下一対のピストン部30,31が互いに離間する場合には、図5に示すように、タンク室32の容積が拡大されることで上記油室27a内の作動油がタンク室32に戻されて上記ラム26を下降させるようになっている。
【0048】
また、上記ねじ部のピッチを変更することで、上記ラム26の上昇速度や、操作部33の操作力を任意に変更することができる。
【0049】
そして、このようなラム26の上下動によって、ラム26が上記上側エレクションピース1aの下面に当接し、治具本体8に対する上下方向の相対位置が調整されるようになっている。
【0050】
また、作動油供給部が棒状のシリンダ29で形成されており、上記柱建入調整治具を持ち運ぶ際の把持部の役割を果たすと共に、その中央部にラムシリンダ27への連結部19が設けられているので、治具本体8からの張り出しを少なくでき、作業現場等を持ち運ぶ際、上記シリンダ29が他の部材に引っ掛かることが防止されるようになっている。
【0051】
なお、上下一対のピストン部30,31には、その外周面にシリンダ内周面との間をシールする複数のシール部材(符示なし)が設けられている。
【0052】
また、図3に示すように、上記治具本体8の両側部から上記ジャッキ取付孔7内に螺入する左右一対の固定ボルト14を設けると共に、この固定ボルト14のジャッキ部材9側面に対する圧接により、上記ジャッキ部材9が治具本体8に着脱可能に取り付けられている。
【0053】
また、上記下側側部ボルト21は、治具本体8の一側部から下側挿入孔5内に螺入されており、下側側部ボルト21の先端に設けられた連結ピン21aが反対側の本体治具8に設けられた連結孔23内に挿入可能となっている。
【0054】
したがって、下側挿入孔5内に下側エレクションピース2aを挿入し、この下側エレクションピース2aに穿設された長孔2bを介して下側側部ボルト21の連結ピン21aを上記連結孔23内に挿入することで、下側挿入孔5から下側エレクションピース2aが抜け止め保持されるようになっている。
【0055】
そして、上記下側側部ボルト21は、連結ピン21aが突出形成されているねじ部の端面21bが大径状に形成されており、この端面21bを下側エレクションピース2aの側面に当接させるようにしているので、安定した状態で固定することができる。
【0056】
なお、上記左右一対の側部ボルト12,13も、連結ピン12aが突出形成されている右側ボルト12のねじ部の端面12bと、連結孔13aが形成された左側ボルト13の端面13bが大径状に形成されており、上記と同様に上側エレクションピース1aを安定した状態で固定することができるようになっている。
【0057】
上記下側挿入孔4に設けられた下側上下方向位置決め部材は、上記治具本体8の下部から下側挿入孔4内に螺入された下部ボルト22であり、この下部ボルト22の捻じ込み量を調整することで、下部ボルト22の先端を下側エレクションピース2aの下面に当接させ、下側挿入孔5の上面側内壁との間で下側エレクションピース2aを挟持して上下方向の位置決め固定を行うようになっている。
【0058】
上記治具本体8における上側及び下側挿入孔のエレクションピース挿入側4,5とは反対となる開口端部には、図1に示すように、各エレクションピース1a,2a挿入時に先端が当接する位置決めプレート24が設けられており、各エレクションピース1a,2aの長孔1b、2bと、左右一対の側部ボルト12,13及び下側側部ボルト21との位置決めが容易に行えるようになっている。
【0059】
以上のように構成された柱建入調整治具の作用を説明する。
【0060】
先ず、図1に示すように、治具本体8に設けられた上側及び下側挿入孔4,5内に、上側及び下側エレクションピース1a,1bを挿入し、その先端部分を上記位置決めプレート24に当接させる。
【0061】
この状態では、図2、3に示すように、各エレクションピース1a,2aの長孔1b,2bと、左右一対の側部ボルト12,13及び下側側部ボルト21との位置決めがなされているので、先ず、治具本体8に螺入された下側側部ボルト21を捻じ込む。
【0062】
このとき、上記連結ピン21aが下側エレクションピース2aの長孔2bを介して上記連結孔23内に挿入されると共に、ねじ部の大径の端面21bが下側エレクションピース2aの側面に当接する。
【0063】
同時に、上記下部ボルト22の捻じ込み量を調整することで、下部ボルト22の先端を下側エレクションピース2aの下面に当接させて下側挿入孔5の上面側内壁との間で下側エレクションピース2aを挟持して治具本体8に対する上下方向の位置決め固定をする。
【0064】
一般に、建入調整をする際には、下側エレクションピース2aが治具本体8に対して確実に固定される必要があるため、これらの捻じ込みを強固に行うことで、下側エレクションピース2aを治具本体8に対して安定した状態で抜け止め固定する。
【0065】
次いで、治具本体8に螺入された上記左右一対の側部ボルト12,13を捻じ込むと、その連結ピン12aが上側エレクションピース1aの長孔1bを介して左側ボルト13の連結孔13a内に挿入される。
【0066】
このとき、上記連結ピン12aが上側エレクションピース1aの長孔1bを介して上記連結孔13a内に挿入されると共に、右側ボルト12のねじ部の大径の端面12bと、左側ボルト13の挿入孔13aを有する端面13bが上側エレクションピース1aの側面に当接する。
【0067】
しかしながら、建入調整時には、上記シャッキ部材9のロッド体16の当接によって上側エレクションピース1aが治具本体8に対して上下方向に相対移動しなければならないため、上記左右一対の側部ボルト12,13による上側エレクションピース1aの締め付け力は、この上側エレクションピース1aが相対移動可能となる程度の力とする。
【0068】
この状態で、図5に示すように、上記ジャッキ部材9の操作部を回動させてラムシリンダ27からラム16を出没させることで、このラム16が下面に当接する上側エレクションピース1aの治具本体8に対する上下方向の位置調整を行い、建入調整する。
【0069】
次いで、上記上部ボルト11を捻じ込み、上部ボルト11の先端を上側エレクションピース1aの上面に当接させ、上記ロッド体16と相俟って治具本体8に対する上下方向の位置決めを行う。従って、上記上部ボルト11は上記建入調整時には、上側エレクションピース1aに接触しない上側挿入孔4の上面内壁部分に退避させてある。
【0070】
その後、上記左右一対の側部ボルト12,13の治具本体8に対する捻じ込み量を調整し、治具本体8に対する上側エレクションピース1aの左右方向の位置決め固定を行うことで、上記上柱1をセットしたときの下柱2との芯ずれを修正する。
【0071】
以上、詳述したように、本実施の形態によれば、上記ジャッキ部材9が固定ボルト14によって治具本体8から着脱可能となっているので、例えば、従来例で示したようなジャッキ部分の故障に対しても、このジャッキ部分のみを取り外して修理することができるため、柱建入調整治具としてのメンテナンス性を向上させ、その費用を削減することができる。
【0072】
また、作動油供給部18を棒状のシリンダ29で形成して上記柱建入調整治具を持ち運ぶ際の把持部とすると共に、その中央部にラムシリンダ27への連結部19を設けたので、重量バランスが良くて運び易いばかりでなく、治具本体8からの張り出しを少なくでき、作業現場等を持ち運ぶ際、上記シリンダ29が他の部材に引っ掛かることを防止できる。
【0073】
また、治具本体8に設けた上側挿入孔1aに、上記ジャッキ部材9と相俟って上側エレクションピース1aの上下方向の位置決め固定を行う上部ボルト11と、治具本体8に対する上側エレクションピース1aの左右方向の位置決め固定を行う左右一対の側部ボルト12,13とを設けると共に、下側挿入孔5には、この挿入孔5の内壁と相俟って治具本体8に対する下側エレクションピース2aの上下方向の位置決め固定を行う下部ボルト22と、治具本体8に対して下側エレクションピース2aを固定する下側側部ボルト21を設けたので、従来例で示したような、柱建入調整治具以外に、エレクションピースの片面側又は両面側に短冊状の接合板を当ててエレクションピースと接合板とをボルト及びナットで接合することを不要にでき、その分、部品点数を減らして、コストを削減することができる。
【0074】
また、治具本体8の側部から上側挿入孔4内に螺入された左右一対の側部ボルト12,13で上側エレクションピース1aを挟持するようにしたので、これら左右一対の側部ボルト12,13の治具本体8に対する捻じ込み量を調整することで、治具本体8に対する上側エレクションピース1aの左右位置が調整可能となり、上記上柱1をセットしたときの下柱2との芯ずれも容易に修正することができる。
【0075】
なお、本実施の形態では、上側及び下側のエレクションピース1a,2aに対して長孔1b,2bを設け、この長孔1b,2b内に左右一対の側部ボルト12,13や、固定ボルト14を挿入して抜け止めを兼ねた固定を行っているが、必ずしも長孔1b,2bである必要はなく、長溝でも良く、場合によっては、この長孔1b,2bや長溝がなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明のジャッキ部材を使用した歪調整治具の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】図1の歪調整治具の縦断面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1のジャッキ部材において、一対のピストン部が互いに近接した状態を示す断面図である。
【図5】図1のジャッキ部材において、一対のピストン部が互いに離間した状態を示す断面図である。
【図6】従来例の歪調整治具を示す側面図である。
【図7】図6の歪調整治具の斜視図である。
【図8】図6の歪調整治具の断面図である。
【図9】図6の歪調整治具の油圧回路図である。
【符号の説明】
【0077】
1 鉄骨上柱(一方部材)
1a 上側エレクションピース
2 鉄骨下柱(他方部材)
2a 下側エレクションピース
3 歪調整治具
4 上側挿入孔(一方側挿入孔)
5 下側挿入孔(他方側挿入孔)
7 シャッキ取付孔
8 治具本体
9 ジャッキ部材
11 上部ボルト(一方側上下方向位置決め部材)
15 シリンダ体
16 ロッド体
17 シリンダ本体
18 作動油供給部
19 連結部
22 下部ボルト(他方側上下方向位置決め部材)
27 ラム
28 ラムシリンダ
29 シリンダ(作動油供給部)
30 上部ピストン部
31 下部ピストン部
32 タンク室
33 操作部
34 ロッド体
36 固定ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方部材のエレクションピースが挿入される一方側挿入孔と、他方部材のエレクションピースが挿入される他方側挿入孔と、上記一方側挿入孔に連通する連通孔を有するジャッキ取付孔とを備えた治具本体と、このジャッキ取付孔に着脱可能に取り付けられると共に、上記連通孔を介して一方部材のエレクションピースに当接し、その上下方向の位置調整を行うジャッキ部材とから構成され、一方側挿入孔には、上記ジャッキ部材と相俟って治具本体に対するエレクションピースの上下方向の位置決め固定を行う一方側上下方向位置決め部材が設けられると共に、他方側挿入孔には、この挿入孔の内壁と相俟って治具本体に対する他方部材のエレクションピースの上下方向の位置決め固定を行う他方側上下方向位置決め部材が設けられている歪調整治具に使用する上記ジャッキ部材であって、このシャッキ部材は、ラムの先端部が上記一方部材のエレクションピースに当接してその上下位置を調整するラムシリンダと、このラムシリンダに作動油を供給する作動油供給部と、この作動油供給部の略中央部から突出して上記ラムシリンダに連結すると共に、作動油供給部からの作動油を上記ラムシリンダに供給する供給路を備えた連結部とから構成され、上記作動油供給部は、シリンダと、このシリンダ内のタンク室を挟んで配置されると共に、シリンダ内において相対回転不能で上下動可能な上下一対のピストン部と、先端が操作部としてシリンダから突出すると共に、上記一対のピストン部に対して螺合されたロッド体とを備え、このロッド体と、上記一対のピストン部とはロッド体の一方向への回動によって互いに近接し、他方向への回動によって互いに離間するようねじ部が形成されていることを特徴とする歪調整治具用ジャッキ部材。
【請求項2】
シリンダ内の油室を挟んで配置された上下一対のピストン部は、その外周に縦溝が形成されると共に、シリンダ内周には上記縦溝内に嵌合される固定ピンが設けられていることを特徴とする請求項1記載の歪調整治具用ジャッキ部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−121367(P2010−121367A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296465(P2008−296465)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】