歯の構造をモニタリングする方法および装置
本発明の歯の構造をモニタリングする方法は、少なくとも3つの電極を備えた電極キャリアを、歯に隣接して配置し、歯の咬合面、隣接面、または開放平滑面のうちの少なくとも1つに電極を接触させ、キャリアの電極の複数のペアを選択し、選択されたペアのうちの一方を接触電極とし、他方を対極電極として、選択された各電極ペアに対して、電極間に交流電流を流し、電極および少なくとも該電極の間にある歯の各部分により回路を形成し、該回路について電気的応答をモニタリングし、各電極ペアについてモニタリングされた応答を処理して、前記歯の各部分に関する構造情報を決定する、ことからなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯の構造をモニタリングするための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
十分に立証されているように、歯は、長期間にわたって、圧力および摩耗に対して高度に耐えることが必要であるため、動物および人体の中で極度に特殊化された構造となっている。かかる特性は、非常に硬く、その下の象牙質材料を覆う、外側のエナメル質により、主として提供される。歯の中心には、歯髄という柔らかい組織が、血管および神経を収容している。歯の構成要素、特にエナメル質の組成および微細構造は、歯の歴史を示し、使用される間の将来の動きを予測するのに非常に重要な要素であり、また、所定の病状をも示す。
【0003】
歯に最も頻繁に生ずる問題は、齲歯または齲食病変としても知られる虫歯である。長年にわたり、虫歯は、器具や目視検査で歯を調べることによりモニタリングされてきた。しかし、これらは普及しているもかかわらず、かなり不正確であり、また、目視では、虫歯を比較的後期の段階になるまで検出できないことが多くある。虫歯は、隣接面(歯の間)および咬合面で、最も発生しやすい。例外はあるが、虫歯は残りの開放された平滑な表面(口の外側および内側に面した)での発生は一般的ではない。本発明者も含めて、多数の研究者が、虫歯による構造の変化を含む、歯の構造を決定しうる代替手段について活発に研究している。
【0004】
このようなアプローチの1つに、プローブまたは接触電極を用いて交流電流を歯に流すことがある。対極電極を身体の遠位位置に接触させるように配置して、接触電極と対極電極との間に交流電流を流す。その回路の電気的応答が形成され、該応答が測定される。歯自体は、電流の流れに対して大きなインピーダンスとなるだけなので、実質的に形成された回路の応答により検証されるのは、歯における電流の動きである。
【0005】
WO97/42909で公開された国際出願特許では、かかる技術が検討され、接触電極を複数のそのような電極で置き換えることが記載されている。
【特許文献1】国際公開WO97/42909
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、かかる技術をさらに発展させて、より迅速で実用的であって、さらには、研究者や歯科医などの施術者によって使用される際に、より正確で有益な情報が得られるシステムが提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、
少なくとも3つの電極を備えた電極キャリアを、歯に隣接して配置し、歯の咬合面、隣接面、または開放平滑面のうちの少なくとも1つに電極を接触させ、
キャリアの電極の複数のペアを選択し、選択されたペアのうちの一方を接触電極とし、他方を対極電極として、
選択された各電極ペアに対して、電極間に交流電流を流し、電極および少なくとも該電極の間にある歯の各部分により回路を形成し、該回路について電気的応答をモニタリングし、
各電極ペアについてモニタリングされた応答を処理して、前記歯の各部分に関する構造情報を決定する、
ことからなる歯の構造をモニタリングする方法が提供される。
【0008】
複数の電極を有する電極キャリアを使用すること、および、歯の各領域に交流電流を印加するためにこれらの電極のペアを使用することが顕著な効果をもたらすとの知見が得られた。この効果の1つは、追加的な分離した対極電極を完全に不要となることであり、これによりシステムが簡略化され、従ってコストを低減できる。さらに、電極キャリア内の電極のペアを使用することにより、キャリア内の電極がその位置に従って選択可能となるため、増加した量の情報の提供が可能となり、問題となる歯のインピーダンスに関する改善された情報が提供される。
【0009】
このため、通常、電極のペアは、すべての選択されたペアにおいて、電極が共有されないように選択される。どの特定の電極も1つのペアで接触電極として、他のペアでの対極電極として機能でき、これにより、同じ方法の中で使用される電極の組合せが多くなり、増加した量の情報が得られる。各電極が他のそれぞれの電極とペアを形成することが好ましい。
【0010】
交流電流は、通常、シヌソイド波形電圧を使用して印加されるが、矩形波形、三角波形なども使用できる。好ましくは、交流電流の周波数は100Hz〜1MHzの間であるが、さらに好ましくは、200Hz〜100kHzの間である。低い周波数では、適用される動物または人間の健康に不利益となる傾向があり、一方、高い周波数では、応答性が低くなる傾向がある。本発明の適用において、単一の周波数の使用でも十分な場合もあるが、大部分の場合には、前記範囲で異なった周波数の交流電流を適用することが好ましい。一般的には、周波数の数は5〜100の範囲内である。
【0011】
各電極ペアに対して、複数の周波数の交流電流が、所定の順序に従って、あるいは、同時に印加される。同時に印加することにより、全体としてより迅速に実行できる点で有利である。この場合、複数の周波数を印加するために必要とされる時間は、原則として、その最も低い周波数によってのみ制限される。モニタリングされる測定結果の精度を改善するために、電流の印加は、好ましくは各電極に対して、各印加の間に短いインターバルをおいて、複数回、例えば5回、繰り返される。
【0012】
この方法を使用するための電極キャリアは複数の異なる構成を採ることができるが、一般的には、キャリアが歯に隣接した位置にある場合に、電極はその歯の少なくとも1つの面にある所定の配置を採る。従って、一般的には、使用中、前記少なくとも1つの歯の面の実質的に所定の位置に配置される。用途に応じて、電極を、歯の3面、4面ないしは全5面と接触させる。歯の構成要素の性質により、一般的には電気的応答には、実数成分と虚数成分が含まれる。
【0013】
電極キャリアは少なくとも6個の電極を備え、かつ、キャリアはその電極が歯の少なくとも2つの面に接触するように配置されることが、特に好ましい。従って、1つのペアの電極は、単に対向または隣接する異なる面に配置される。このようにして、歯の3次元構造を計算することができる。この情報は、例えば、歯にある虫歯の範囲を測定するために使用される。
【0014】
モニタリングされた応答を処理するステップは、一般的には、前記応答を、歯の所定のモデルにデータとして入力し、該モデルに従って、各電極に対するインピーダンスの値を算出することにより行われる。計算の回数は、使用されるモデルの複雑さに、そして電極ペアの数および印加される電流の周波数により実質的に決定される。
【0015】
好ましくは、歯のモデルは、電極に対応するインピーダンスの星形状モデルであり、電極ペアの間で形成された回路が2個の対応するインピーダンスを直列に構成する。このモデルにより、その後の計算に対して簡単な組み合わせが提供され、該モデルは物理的な歯の構造に良く近似する。星型状のインピーダンスモデルは、仮定の等価回路の形を採る。この回路は、該回路が、低周波数のインピーダンスおよびキャパシタンス(または一定の位相要素)との並列の組合せと直列に接続され、高周波数を受けたときに生ずるインピーダンスを含む。
【0016】
高周波数および低周波数のインピーダンスは、複数の印加された周波数における各回路の応答を解析することにより、高周波数および低周波数の抵抗(インピーダンスの実数成分)として決定される。これはZ′−Z″プロットを使用して達成される。
【0017】
このモデルを使用する場合、次の処理ステップは、高周波数抵抗および低周波数抵抗の各々に対する各電極ペアの間の抵抗値を表わす方程式のマトリクスを形成することからなる。次いで、対応する高周波数および低周波数のそれぞれのマトリクスを解き、高周波数および低周波数での各電極に対する抵抗値が付与される。種々の方法、例えば、特異値分解(SVD)が、これを達成するために使用できる。
【0018】
各電極に対する抵抗値が得られれば、歯の構造が電気的応答に影響すると評価されることから、それらの抵抗値は歯の構造パラメータに関連づけられる。構造情報の1つは、存在する虫歯の程度と関連づけられる品質パラメータ「T」である。パラメータTは、エナメル質の品質の数値表現である。高品質のエナメル質には、虫歯によるダメージがほとんどないか全くないが、一方、低品質のエナメル質には、大きなダメージがある。この場合、処理ステップは、電極に対する抵抗の計算値を使用して、その電極における、歯のエナメル質の品質パラメータTの値を算出することにより、構造情報を決定することをさらに含む。
【0019】
同様に、エナメル質の厚さ「d」が計算される。この場合、処理ステップは、電極に対する抵抗の計算値を使用することにより、電極における歯のエナメル質の厚さdの値を算出することにより、構造情報を決定することをさらに含む。高周波数および低周波数での抵抗値と関連づけられるため、Tおよびdの各々の値が算出される。低周波数の抵抗値は、Tをdで乗じた値に比例し、高周波数の抵抗値は、dをTで除した値に比例する。このことは、品質および厚さの解析(デコンボリューション)が提供されるため、臨床的に有利である。
【0020】
dおよび/またはTのような構造情報が、電極が位置する歯に対して決定されると、次いで、その他の位置の歯に対する構造情報が算出されることが好ましい。これは、多くの方法で達成できる。1つの方法は、歯のモデルを仮定し、それに応じて適切な関数、例えば、電流経路を考慮し、当該位置からの電極の距離に基づいた、異なる電極位置からの値の寄与を追加した関数を使用することによって、その値を割り当てることである。しかし、好ましくは、歯のエナメル質の抵抗値、エナメル品質、および歯の幾何形状の間の実験的関係に基づいた関数が使用される。このような関数は、実際の歯の薄く切った部分を測定することによって導かれる。このような関数の複雑さが、かかる計算の精度に影響すると考えられる。
【0021】
これらの電極が位置していない位置における値が算出されると、緩和法を、この構造値に対して1回以上適用することが好ましい。
【0022】
次いで、この構造を示す計算値をグラフィックで表示することが好ましい。多くのグラフィック表示が想定される。品質パラメータTの場合、Tの値は、歯の3次元表示の表面に表示される。この3次元表示は、単純な円筒でもよく、またはもっとリアルな表示でもよい。厚さの値が表示される場合は、これらは、厚さが視認できるような空洞構造を有する3次元表示に表示されることが好ましい。また、該3次元表示は、視認効果を高めるために、部分的に透明に提供される。
【0023】
決定された構造情報が、その歯に存在する虫歯の程度に関連づけられることはもちろん利点である。しかし、虫歯になっていないが、それでも、例えば妊婦であるといった、その他の因子で影響される構造を有している歯の物理的構造を決定することにも利点があると考えられる。完全に健康な歯の構造についての情報も研究に役立ち、本発明では、これらの構造を解析するために歯を抜いたり損壊したりする必要がないので、この場合でも利点を見いだすことができる。
【0024】
本発明の第二の態様よれば、
歯の構造をモニタリングするための装置であって、
少なくとも3つの電極を備え、使用時に、歯に隣接して配置される場合に、電極が咬合面、隣接面、または開放平滑面の中のうちの少なくとも1つと接触するようになっている電極キャリアと、
キャリアの電極の複数のペアを選択し、選択されたペアのうちの一方を接触電極とし、他方を対局電極とし、
選択された各電極ペアに対して、電極間に交流電流を流し、電極および少なくとも該電極の間にある歯の各部分により回路を形成し、
各選択されたペアの回路について電気的応答をモニタリングする、
機能を実行するように構成されている制御装置と、
各電極ペアについてモニタリングされた応答をモニタリングして、前記歯の各部分に関する構造情報を決定するように構成された処理装置と、
を備える歯のモニタリング装置が提供される。
【0025】
従って、この装置は、本発明の第一の態様に従う方法を実行するために使用される。
【0026】
好ましくは、制御装置は内部電源を装備し、該制御装置は、電極キャリアと接続され(制御装置と電極の間に電気回路が備えられ)、制御装置は、他の装置および/または他の装置の使用時における電源から物理的に分離される。これは、安全性の理由から重要である。これにより、装置の取り扱いが面倒でなくなり、また、当該方法や装置に慣れていない患者に与える不安を減じさせることができる。
【0027】
装置は、自立式の小さなユニットであるが、少なくとも制御装置は携帯型のものであることが好ましい。モニタリングした電気的応答を定義する情報は、制御装置とプロセッシング装置の間で、電磁波によって伝達されるのが好ましく、これにより物理的電線数が減少され、さらに制御装置を分離することができる。これは、赤外線またはBluetooth(登録商標)などのシステムに基づいた無線通信を使用して達成できる。一例では、制御およびプロセッシング装置は、一般的なハウジング内に設置される。
【0028】
制御装置は、単一の周波数の電流印加でも使用できるが、一般的には、各電極に対して、多周波の電流が順番に印加される。電流自体は、所定の順序で、または同時に印加される。従って、制御装置は、一般的に、信号発生器、マルチプレクサ、および、回路の応答をモニタリングするためのアナライザを備える。アナライザとしては、「ロックイン」アンプ、周波数応答アナライザ、または高速フーリエ変換システムを用いることができる。
【0029】
好ましくは、電極キャリアは、リード線により制御装置と取り外し可能に接続される。生体内測定のために、適切なコネクタにより、対象となる人間や動物の口に隣接した位置での使用が可能となる。衛生的配慮から、電極キャリアは、使い捨てキャリアであることが好ましい。
【0030】
様々な電極キャリアの構成が考えられる。多くの場合、ポリマ基板を含み、ポリマ基板は、電極と電気信号をやり取りするためのリード線を備える。電極は、一般的には金属製であり、カーボンでコーティングされる。カーボンは、導電性を備えるため、歯との電気接触を可能にすると共に、医療用途の使用において適切な材料である。
【0031】
この明細書で記述される本発明は、例えば、研究用、獣医用、医療用または歯科用のような業務現場で生体測定に関して主に論じられるが、該測定は、生体外でも実行されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明に従った方法および装置の実施例について、添付する図面を参照しながら、説明する。
【0033】
歯の構造をモニタリングするためのシステムの例を、図1に概略的に示す。該システムは、総括的に1で示される。システムは、可搬性ユニット2を備え、ラップトップ型コンピュータとほぼ同様の大きさである。ユニット2は、内部制御装置3および内部コンピュータ4を備える。ユニット2は、ディスプレイスクリーン5およびキーパッド6などの入力コントロールを内蔵する。ユニット2は、再充電可能な内部バッテリで作動し、電磁誘導レシーバ7と結合しており、対応するクレイドル充電器8の上に置くことで、物理的接続のための電線を全く必要とせずに、ユニット2の電源に充電することが可能となっている。
【0034】
制御装置は、コンピュータと2方向通信でき、またユニットコネクタ9と接続している。使用時に、リード線10をコネクタ9に差し込む。このリード線は、離れた電極との間で電流を通ずるのに適切な電線を備える(以下、詳述する)。
【0035】
リード線10の他方の遠位末端には、電極キャリアコネクタ11が備えられ、電極アセンブリ12がリード線10に取り外し可能に接続される。電極アセンブリ12には、プラグ13が取り付けられた短い配線部14があり、電極キャリアコネクタ11と接続可能となっている。プラグ13から遠位側にある配線部14の他方端に、電極キャリア15が備えられる。電極キャリア15は、構造を測定する予定の歯の隣接または周辺に配置される。電極キャリア15は、歯に接触するための複数(3つ以上)の電極16を備え、各電極は個別の電線に結合され、リード線10および各コネクタを経由して、制御ユニット3と電気的に結合される。
【0036】
図2は、システムの別の構成を示し、1′で示される。図2に示される構成要素の大部分は、図1のものと同様であり、それらはプライム記号付き参照番号で番号付けされる。両実施例の主な差異は、制御ユニット3が分離したユニット20の中に内蔵され、ユニット20が歯の構造を調べる予定の患者の手で保持できるように構成されていることである。この場合、制御装置3とコンピュータ4の間の通信は、発信機/受信機21の間の短波無線回線経由で行われる。従って、携帯ユニット20は電源を備える。
【0037】
他の例として、少なくともコンピュータ4の部分も同様に携帯ユニット20の中に内蔵させることが想定される。代替的に、フレキシブルなリード線10および10′を用いるよりも、構成要素2および12または20および12を、電極接続部を有する多少剛性のある付設コネクタから直接伸長する電極と組み合わせたハウジングに収納してもよい。かかる構成は、ハンドルおよび取り換え可能なヘッド部の間に電気的並びに機械的な接続がある点を除いて、バッテリ駆動の電動ハブラシといくらか類似している。ユニット2、2′は、例えばパーソナルコンピュータ、プリンタおよびディスプレイのような別の装置とさらに接続できる。しかし、安全性への配慮から、少なくとも歯の構造を測定する作業中には、ユニット2、2′または9′のいずれかが主電源と物理的に接続しないようにすることが重要である。さもないと、誤作動の場合に、歯を解析中の対象に危害をもたらす可能性が生ずる。
【0038】
図2に示したシステムの実施例は、携帯ユニット20により、使用中の煩雑さがより少ない装置が提供されるので、特に有益である。
【0039】
以下に、図1の第1の実施例のシステムの構成要素を参照して記述するが、明確な区別が示されない限り、図2の第2の実施例のシステムの類似の構成要素に対しても、同様の参照が適用される。
【0040】
図3に、電極キャリア15の一例を示すが、該電極キャリア15は、概して「T」形状(図中逆さになっている)の形態からなり、「T」の横部材には、その片面に電極の配列が配置されている。電極キャリア15は、例えば商品名「カプトン」で販売されているポリイミドまたは生物学的に不活性な同種の材料からなる適切な基板で形成される。
【0041】
図3に示すように、電極16は、4つのライン上に、同様の(水平の)横部材位置にある、隣り合っていないラインをペアとして、「T」横部材に対して2つの位置をとるように配置される。複数の銅線25が電極キャリア15の材料中に埋め込まれ、個々の電極16のそれぞれに対して電気接続が提供される。銅線は「T」の底部、配線部14に通過してコネクタ13に至る。リード線10の中にある対応する電線により、制御装置3との電気接続がなされる。
【0042】
本実施例では、各電極16は、鉛フリーのスズの微小点26で形成され、カーボン層で被覆されて、生物学的に不活性な電気接触を提供する。
【0043】
図4には、図面と平行な平面に咬合面がある小臼歯30の概略図が示される。図示のように、「T」のアーム(横部材)は、各電極16が歯の各面と接触するように、小臼歯30の開放平滑面および隣接面近くを覆う。
【0044】
電極アセンブリ12をこの位置に配し、システム1の他の部分に接続した状態で、コンピュータ4を作動させて、一連の交流信号(シヌソイド形)を電極16の様々なペアの間に流すように、制御装置3を制御させる。歯30の電気的応答がこれら各電極について測定され、次いで、その結果がコンピュータ4により処理されて、所望の構造的決定が得られる。
【0045】
図5に、制御装置3をより詳細に示す。制御装置3は、複数周波数帯の波形発生器40を備え、該波形発生器40はマルチプレクサ41に接続され、その次に電線42が備えられ、リード線10を介して、各電極16との間に電気回路が形成される。マルチプレクサ41により、電極のペアを選択する手段が与えられ、波形発生器40の出力を切り替えることによって、異なる電線42の間で回路が形成される。マルチプレクサ41に接続されたアナライザ43が備えられ、電線42および電極16と、歯の各部分とで形成された回路の応答が解析される。アナライザ43としては、ロックインアンプ、周波数応答アナライザ、または高速フーリエ変換装置(FET)を用いることができる。本実施例の場合、多重周波数のモニタリングに最も有効である高速フーリエ変換装置が使用される。
【0046】
図6を参照して、装置の操作方法を記述する。これにより、歯の構造の測定が得られ、グラフィック表示される。
【0047】
図6のステップ100でシステムが初期化され、被験者が適切な位置に配置され、電極アセンブリ12がユニット2(または20)に接続され、セットアップされる。電極キャリア15により、モニタリングされる構造である歯30の表面の周りを覆い、電極16が歯30の各面と接触するように配置される。小臼歯の場合には、それぞれの表面は、2つの隣接面と2つの開放平滑面である。アセンブリは、弾性のバンドを使用して歯と接触して保持される。計算により得られた構造を実際の歯の構造と関連づけるために、電極および所定の歯面との間の概略の接触位置を、予め決定しておくか、(後の計算で入力するために)モニタリングの間に書き留めておく必要がある。
【0048】
ステップ100には、1つ以上のテスト信号を電極16に供給し、システムが全体として正しく構成され、適切な電気接触が電極と歯の表面との間に十分に与えられているかを確認することも含まれる。特定の電極の不具合または電気的な接触確立の失敗がある場合、システムの操作者にそのことが示されるようにすべきである。ただし、(十分な数の電極が正常に作動していることを条件として、)このような場合でも、システムを操作でき、かかる不具合を考慮に入れて、最終的な計算において調整することは可能である。ただし、結果的に、その様な領域における結果の精度は減少する。
【0049】
ステップ101において、システムの操作者(例えば、人間が被験者である場合の歯科医または動物が対象である場合の獣医)は、コンピュータ4をキーボード6によって操作して、モニタリングの進行を開始する。代替的に、コンピュータ4が手の届かない場合の容易な操作性のために、スタートボタンをキャリアアセンブリ自体またはリード線10の末端に備えることができる。次いで、コンピュータにより制御装置3を操作するソフトウエアが実行される。
【0050】
ステップ101において、ソフトウエアにより、マルチプレクサ41が電極の第1ペアを選択する。図3において、この電極の第1ペアを、AおよびBとすることができる。これらの電極のうち、例えば、Aを接触電極とし、Bを対極電極とする。
【0051】
ステップ102において、多重周波数電流が、波形発生器40によってマルチプレクサ41に供給される。電流は、マルチプレクサ41を経由して、選択された電線42、対応するリード線10、10′、電極AおよびB、および、それらの間にある各歯の構成要素により形成された回路に印加される。
【0052】
電流は、多重周波数信号の形を取り、これらの周波数はモニタリングが全体としてできるだけ迅速に実行できるように、同時に印加される。各々の周波数の波形は、本実施例においてはシヌソイダル形である。合計で10の異なった周波数が、300Hzから100kHzの間の周波数において、均等な間隔で適用される。
【0053】
次いで、電極AおよびBの間に形成された回路の電気的応答(電圧、電流およびそれらの個々の位相)は、ステップ103で、アナライザ43によりモニタリングされる。応答の情報は、出力データとしてデジタル的に記憶される。
【0054】
ステップ102および103の手順は、実験的な誤差を低減するためにさらに4回繰り返される。結果として、電極の各ペアに対して、総計5回の回路の応答測定が行われる。
【0055】
ステップ105において、例えば電極AおよびCの電極の第2のペアが選択される。次いで、ステップ102から105までが、この電極ペアに対して実行される。このステップ106は、電極のすべての組合せに対する測定が実行されるまで、多数回繰り返される。例えば、測定は電極A−B、A−C、A−D、A−E・・・、B−C、B−D、B−E・・・、C−D、C−E・・・に対して実行される。従って、第1の電極について、他の15個の電極と回路が形成され、第2の電極については、他の14個の電極と回路が形成され、第3の電極ついては、他の13個の電極と回路が形成される。各組合せについて5回測定されるので、例えばA−B測定を行えば、その後に、同じ回路であるB−A測定を実行する必要はない。
【0056】
各電極ペアに対して5回モニタリングを実行した後、データはコンピュータ4に送られる。図2のシステムが使用される場合、データは各ペアに対する各測定が終わるごとに送信してもよく、またはユニット20の中でローカルに記憶され、その後に一緒に発信機/受信機装置21を使用して送信するようにしてもよい。
【0057】
図6のステップ107において、コピュータ4により、各電極ペアについての、電圧および電流の応答、さらにはそれぞれの相対位相に関する受信情報が処理される。
【0058】
回路の応答に関するデータが得られれば、次いで、このデータを電気インピーダンスの値に転換し、次いで歯の構造に関連づけさせることが望まれる。これを実行するために、歯の成分のモデルを仮定する必要がある。本実施例で使用される、このようなモデルの1つについて説明する。
【0059】
インピーダンスの星形接続がモデルとして仮定され、これは図7に例示される。16個の電極(A〜Pで示される)は、中央のハブに電気的に接続され、各電極は対応するインピーダンスZAなどを有するとみなす。従って、2つの電極の間にあるいかなる接続においても、直列で2個のインピーダンスが含まれる。電極AおよびDを例にすれば、電極AおよびDを使用して形成された回路は、インピーダンスZAとインピーダンスZDを直列で有する。
【0060】
これは物理的には、図8に示すように、2個の電極AおよびDが歯のエナメル質45の表面上に設置されていると考えられる。歯のエナメル質の下に象牙質層46がある。仮定された電極AおよびDの間の電流経路は47で図示される。象牙質層46内では、インピーダンスはエナメル質45のインピーダンスに関して無視できると考えられる。各電極の直下のエナメル質の厚さは、電極AおよびDに対して、それぞれdAおよびdDで表される。エナメル質の厚さ、その化学的組成および微細構造が各電極でのインピーダンスに影響を及ぼすことが認識される。電極Aに関連するインピーダンスが図8に示され、これは電流モデルにおいて電極およびエナメル質45の直下の象牙質層の間にある。
【0061】
モデル上のインピーダンスZA、ZB・・・の各々は、例えば電極Aについて、図9に示すような構成要素を使用して表示できると考えられる。ここで、インピーダンスZAは、高周波数での回路のインピーダンスZA,highと、低周波数での回路のインピーダンスZA,lowおよびキャパシタンスCAの並列結合との、直列結合として示される。これはインピーダンスZAを決定する目的の仮定モデルであることに留意すべきである。
【0062】
図10は、歯の構造の計算においてモデルがどのように使用されるかを示すフローチャートである。
【0063】
ステップ200において、電極の各ペアに対する5セットのデータが平均化され、平均化データセットを決定し、計算の精度が高められる。平均化されたデータの値は、後述する処理で使用される。
【0064】
上記モデルは、一般化されたインピーダンスの観点から記述されている。しかし、本実施例では、大きい範囲の多重周波数が使用されるので、インピーダンスの実数値、すなわち抵抗値は、各電極に対して計算でき、これらは電極Aに対してZA,highおよびZA,lowである。概括的には、これらはRhighおよびRlowのセット値である。これは、図10のステップ201で実行される。
【0065】
RhighおよびRlowの値は、図11に示される様にZ′−Z″グラフから決定される。各電極に対して、多重周波数の応答は、Z′−Z″グラフの上にプロットされ、これらは曲線を形成する。この曲線が組み込まれ、実数(Z′)軸との交点が計算される。曲線は、実際には実数軸と二点で交差し、原点に最も近いものが無限大周波数での抵抗値Rhighに相当し、原点から最も遠いものが周波数ゼロの抵抗値Rlow(直流として考えられる)である。曲線の形状は、インピーダンスの値であると共に、歯の構造、特にエナメル質の厚さおよび構造の関数である。なお、誘電損失が低いことおよび分散がないことが仮定されている。
【0066】
計算ステップ201の結果は、電極の各ペアの間で形成された回路に対応する、一連の無限大周波数に対する抵抗値Rhighおよびゼロ周波数に対する抵抗値Rlowである。しかし、各値のRhighまたはRlowは、図9を参照して先に例示したモデルによる抵抗値成分を含む。従って、
RAD,high=RA,high+RD,high
RAD,low=RA,low+RD,low
である。
【0067】
RAD,highは、電極AおよびDの間の回路の全抵抗値であり、図9の仮定回路モデルで直列であるから、これは電極AおよびD個々の抵抗値の合計である。このことは、低周波数抵抗値RAD,lowにも適用される。
【0068】
従って、電極の組合せにより形成される多数の回路により、多数の高周波数の抵抗値および低周波数の抵抗値が決定される。
【0069】
ステップ202において、二つの独立したマトリックスが異なった電極回路に対して、高周波数および低周波数のデータをそれぞれ使用して形成される。一例として、以下の表1に示す。表1は、16個の電極プローブを使用した交流インピーダンス結果に対するデータマトリックスのフォーマットを示す。各々の値は、電極1から16に番号付けされた電極間の測定抵抗値を示す。「−1」は値が出なかったことを意味する。
【表1】
【0070】
従って表1のデータは、一連の連立方程式を表わし、これよりRA,highおよびRA,lowタイプの値が各電極に対して計算される必要がある。従って、2個のそれぞれのマトリックスについて、各所定の電極に従って、低周波数および高周波数の抵抗値を決定するために、図10のステップ202において、特異値分解(SVD)解析が実行される。
【0071】
歯のエナメル質の品質は総称Tにより表わされ、これは組織(エナメル質)のパラメータである。Tの高い値はエナメル質の高品質を表わし、一方、低い値は(虫歯のような)損傷エナメル質を表わす。
【0072】
低周波数の抵抗値は、組織パラメータTを当該電極でのエナメル質の厚さdで乗じた値に比例し、一方、高周波数の抵抗値は、エナメル質の厚さdを組織パラメータTで除した値に比例する。このことは、電極Aを例にとると、以下のように表わされる。
【0073】
RA,low∝T・dA
RA,high∝dA/T
この式を使用して、ステップ203において、高周波数および低周波数のデータは、各所定の電極下でのTおよび厚さdに対応する値に変換される。
【0074】
これらの値を決定した後、次いでエナメル質の構造の表示が提示できる。これは本実施例においてグラフィックで実行される。
【0075】
図12に、図10によって得られたデータを、例えばコンピュータ4に付設しているディスプレイ5を使用して、グラフィックで表示する方法を示す。
【0076】
この方法のステップ300において、計算分解能の選択がなされ、これは解析に使用される電極の数に依存する。本実施例では、電極で接触された歯の接続表面を表わすために長方形が使用される。この例における長方形は、長さ方向で200ポイントに、そして幅方向に100ポイントに分割される。200ポイントは、隣接面および開放平滑面(全部で4個)のポイントを表わし、100ポイントは、各表面における歯の高さを表す。解像度の選択により、長方形中に20,000の位置が得られる。
【0077】
ステップ301において、電極の位置は長方形の幾何学形状に関連づけられる。本実施例の電極は、4個の電極の4列で配置されており、長方形の対応する位置に移動される。長方形は結果的に歯の幾何学的形状に関連づけられているので、構造の局部的領域が識別でき、実際の歯に関連づけられるように、長方形のポイントと歯の上のポイントの対応を理解することが重要である。本実施例では、特定の歯の表面に対する電極の相対的方位決定は、使用時にアセンブリを最初に位置決めする方法により明らかとなる。
【0078】
ステップ302において、組織パラメータTの値が、長方形上の各々の電極位置に割り当てられる。これらの値は、モニタリングの結果として、計算を代表するので固定される。
【0079】
ステップ303において、Tの値が長方形上のその他19984(20000―16)個のポイントの各々に対して割り当てされる。これらのTの値は、経験的関数を使用して計算される。経験的関数は、その上でインピーダンス測定が行われた歯を薄切片にスライスし、インピーダンスの値を顕微鏡観察により決定されるエナメル質の品質と関連付けして、オフラインで導き出される。同様の解析を、後述されるエナメル質の厚さに対しても行うことができる。この目的のために、多くの異なる関数を使用できるが、これらは、実験、モデル化、またはそれらの組み合わせによって導き出される。
【0080】
長方形の各ポイントに対してエナメル質の品質値が指定されると、ステップ304において、Tの値の間に滑らかな遷移を与えるために「緩和」手順が実行される。これは、16個のモニタリングした値以外の長方形中のすべてのT値に対するものであり、問題となるT値が隣接するT値の平均値により置き換えられることを意味する。この手順は、ステップ304において、その値が所定の平滑性を得るまで、繰り返し実行される。
【0081】
ステップ305において、データは、種々の品質値Tに色を割り当てて、ディスプレイにグラフィカルにプロットされる。例えば、最高品質のT値には鮮明な緑色が、最低品質のT値には鮮明な赤色が、そして中間の値にはこれら2個の両極端の間にあるスペクトルに従った色が、それぞれ割り当てられる。
【0082】
エナメル質の品質の表示は、例えば電極の位置を示す、平らな2次元長方形の形式でなされる。代替的に、コンピュータ4の使用者によって回転させうる回転可能な円筒表面に表示することもできる。実際の歯の表面上にある電極の位置が認識できるようにして、使用者が長方形上の計算値が実際の歯のエナメル質のどの部分に関連するかを決定できるようにする。
【0083】
図13AからCに、グラフィック出力の例が示される。図13AからCにおいて、上記長方形はT値によって赤から緑の着色で図示される。赤い領域は低品質のエナメル質を、一方緑の領域は高品質のエナメル質を示す。典型的な赤い領域はRでマークされ、そして典型的な緑の領域はGでマークされ、より暗い影は色が品質スペクトルの赤端に近いことを示している。図13AからCの各々の長方形の真下に、(水平な)歯の断面図が例示され、これは長方形を通した水平線に沿って取り出し歯の部分を円形のように直して図示したものである。図13Aでは、断面は、電極5、8、9および10(長方形の上部部分にある)に沿って取り出されている。同様に、図13Cでは、断面は、電極4、7、12および13に沿ったラインで取り出されている。図13Bでは、そのラインは、図13Aおよび13Cの電極から等距離にあるラインで取り出されている。
【0084】
前述のように、品質因子Tに加えて、各電極の下のエナメル質の厚さが計算される。これらの各々は、高周波数および低周波数の抵抗値についてモニタリングした値を含む方程式の中では未知数である。
【0085】
従って、Tの計算に記述されたのと同様な方法が、電極の直下ではないポイントにおけるエナメル質の厚さを計算するのに使用できる。図12を参照すると、図の右手側に、追加ステップ306から309が図示される。ステップ306において、「d」値は電極の位置における長方形上にプロットされる。ステップ307において、「d」値は長方形中のその他のすべてのポイントに対して計算される。実際の歯のエナメル質の薄切片部分からの情報は、それらのd値が計算できる経験的関数を導き出すために使用される。厚さパラメータに関しても、理論的モデルまたはこれら技術の組合せを使用できる。
【0086】
ステップ308において、値の緩和がステップ304におけるのと同様な方式で実行され、ステップ309で代替的な3次元のグラフィック出力が提示される。これにより、厚さに関係する情報とエナメル質品質に関係する情報の組合せが表示される。これは、図14AからCに示される。エナメル質の品質および厚さに関係するデータがプロットされ、品質データは前述と同様に色として提示されるが、今回の場合、算出された厚さの値dに従って、構造の壁に局所的厚さを持たせた3次元構造体(近似的に円筒状)の表面にプロットされる。これを図14Aから14Cに示すが、異なった部分のエナメル質が図示され、電極位置はドットでマークして示されている。
【0087】
厚さデータをもっと明確に図示するために、3次元構造体にある程度の透明性をもたせることもできる。例えば、15Aには透明性がないが、図15Bには低レベルの透明性があり、そして図15Cには高レベルの透明性がある。いずれの場合も、外側表面に色がプロットされたまま残してある。同様に、より暗い影は色が品質スペクトルの赤端に近いことを示している。
【0088】
エナメル質の品質および/または厚さのデータをプロットする方法は多くあり、ここで記載したものは一例である。上記の色は、混同の可能性がほとんどないというメリットを有するが、色の選択は任意である。
【0089】
円筒により、歯の簡便な近似表示が与えられるが、計算された値に従って制御された構造の相対的厚さを持ったグラフィック表示において、歯の3次元構造を使用することも、本発明の範囲内にあると考えられる。この場合、エナメル質の品質もビットマップ技術によって簡単にプロットできる。
【0090】
本発明の効果の例証として、図16に、上記の計算の結果として決定された歯の断面構造が示される。これは、歯の顕微鏡写真への差込である。それぞれの場合で、電極位置がマークされ、そして「De」のラベルをつけた領域は歯の脱ミネラル化を表わし、虫歯を示す。本発明により、現実を正確に表わす構造決定が提供されることがわかる。
【0091】
さらなる例として、上述のものに対してより単純化した方法を説明する。図1または2を参照して説明したものと同様の装置が使用される。このベーシックな例においては、3つの電極16がキャリア15に備えられ、各々が同様に接触領域を有する。必要に応じて、異なる接触領域を有する電極のインピーダンス値に与える影響に関して仮定をなすこともできる。ただし、本実施例において、これは不必要である。
【0092】
3個の電極の中で、第1の電極「1」は、作動電極または接触電極であり、該第1の電極の下のエナメル質のインピーダンスを得ることが望ましい。第2および第3の電極もまた、システムの3個の電極を構成する。第2および第3の電極は、対象となる歯の表面に互いに近接して配置され、その結果、これらが接触するエナメル質はそれぞれについて同様のインピーダンスを有するという理にかなった仮定が可能である。
【0093】
次に、システムを作動し、次のように形成される回路の電気的応答を測定する。
【0094】
a)電極1および2または電極1および3、すなわち、例えば Z12=Z1+Z2、および
b)電極2および3、すなわち、Z23=Z2+Z3
図7の星形状のインピーダンスモデルが、ここでも仮定される。
【0095】
電極2および3は同一のインピーダンスを有すると仮定されるので、(上記から)作動電極1に伴うインピーダンス(Z1)は、式 Z1=Z12−(Z23/2)で決定される。
【0096】
Z1の値を測定するために、単一周波数の測定が使用される場合、前述の技術の幾つかを組み合わせると、電極1が位置する歯における虫歯の範囲に関する情報が提供される。多重周波数の測定では、虫歯の拡がりおよびエナメル質の厚さが決定できる。
【0097】
いずれの場合においても、Z1に対する所望の値が提供される。従って、この実施例は、1つ以上の歯の表面にある多数の電極に対する、インピーダンスの測定、さらには構造の決定にも拡張できることが理解される。これには、例えば電極2および3のような、他の電極を作動電極および/または対極電極として使用することが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】第1の実施例によるシステムを示す図である。
【図2】第2の実施例によるシステムを示す図である。
【図3】電極の配置を示す図である。
【図4】歯の周囲に配置された電極キャリアアセンブリの概略図である。
【図5】制御ユニットをより詳細に示す図である。
【図6】第1の実施例または第2の実施例のシステムを使用する方法のフローチャートである。
【図7】仮定された電極インピーダンスモデルを示す図である。
【図8】電流の流れの仮定されたモデルを示す図である。
【図9】各電極に対して仮定されたインピーダンス等価回路を示す図である。
【図10】エナメル質の厚さおよび品質のパラメータの算出を示すフローチャートである。
【図11】Z′−Z″の概略図である。
【図12】算出データのグラフ表示への変換を示すフローチャートである。
【図13】Aは、品質パラメータを、着色長方形および電極の上部ラインに沿った水平断面として、グラフィック出力した図である。 Bは、品質パラメータを、着色長方形および2つの電極ラインの間の水平断面として、グラフィック出力した図である。 Cは、品質パラメータを、着色長方形および第2の電極ラインに沿った水平断面として、グラフィック出力した図である。
【図14】Aは、3次元円筒としてプロットした厚さおよび品質のパラメータを示す図である。 Bは、Aの部分を示す。 Cは、1つの電極に関するAの円筒を通る断面を示す図である。
【図15】Aは、透明性のない構造の上にプロットした厚さと品質のパラメータを示す図である。 Bは、透明性の低い構造の上にプロットした厚さと品質のパラメータを示す図である。 Cは、透明性の高い構造の上にプロットした厚さと品質のパラメータを示す図である。
【図16】歯の顕微鏡写真および対応する歯の脱ミネラル化の計算領域を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯の構造をモニタリングするための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
十分に立証されているように、歯は、長期間にわたって、圧力および摩耗に対して高度に耐えることが必要であるため、動物および人体の中で極度に特殊化された構造となっている。かかる特性は、非常に硬く、その下の象牙質材料を覆う、外側のエナメル質により、主として提供される。歯の中心には、歯髄という柔らかい組織が、血管および神経を収容している。歯の構成要素、特にエナメル質の組成および微細構造は、歯の歴史を示し、使用される間の将来の動きを予測するのに非常に重要な要素であり、また、所定の病状をも示す。
【0003】
歯に最も頻繁に生ずる問題は、齲歯または齲食病変としても知られる虫歯である。長年にわたり、虫歯は、器具や目視検査で歯を調べることによりモニタリングされてきた。しかし、これらは普及しているもかかわらず、かなり不正確であり、また、目視では、虫歯を比較的後期の段階になるまで検出できないことが多くある。虫歯は、隣接面(歯の間)および咬合面で、最も発生しやすい。例外はあるが、虫歯は残りの開放された平滑な表面(口の外側および内側に面した)での発生は一般的ではない。本発明者も含めて、多数の研究者が、虫歯による構造の変化を含む、歯の構造を決定しうる代替手段について活発に研究している。
【0004】
このようなアプローチの1つに、プローブまたは接触電極を用いて交流電流を歯に流すことがある。対極電極を身体の遠位位置に接触させるように配置して、接触電極と対極電極との間に交流電流を流す。その回路の電気的応答が形成され、該応答が測定される。歯自体は、電流の流れに対して大きなインピーダンスとなるだけなので、実質的に形成された回路の応答により検証されるのは、歯における電流の動きである。
【0005】
WO97/42909で公開された国際出願特許では、かかる技術が検討され、接触電極を複数のそのような電極で置き換えることが記載されている。
【特許文献1】国際公開WO97/42909
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、かかる技術をさらに発展させて、より迅速で実用的であって、さらには、研究者や歯科医などの施術者によって使用される際に、より正確で有益な情報が得られるシステムが提供されることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、
少なくとも3つの電極を備えた電極キャリアを、歯に隣接して配置し、歯の咬合面、隣接面、または開放平滑面のうちの少なくとも1つに電極を接触させ、
キャリアの電極の複数のペアを選択し、選択されたペアのうちの一方を接触電極とし、他方を対極電極として、
選択された各電極ペアに対して、電極間に交流電流を流し、電極および少なくとも該電極の間にある歯の各部分により回路を形成し、該回路について電気的応答をモニタリングし、
各電極ペアについてモニタリングされた応答を処理して、前記歯の各部分に関する構造情報を決定する、
ことからなる歯の構造をモニタリングする方法が提供される。
【0008】
複数の電極を有する電極キャリアを使用すること、および、歯の各領域に交流電流を印加するためにこれらの電極のペアを使用することが顕著な効果をもたらすとの知見が得られた。この効果の1つは、追加的な分離した対極電極を完全に不要となることであり、これによりシステムが簡略化され、従ってコストを低減できる。さらに、電極キャリア内の電極のペアを使用することにより、キャリア内の電極がその位置に従って選択可能となるため、増加した量の情報の提供が可能となり、問題となる歯のインピーダンスに関する改善された情報が提供される。
【0009】
このため、通常、電極のペアは、すべての選択されたペアにおいて、電極が共有されないように選択される。どの特定の電極も1つのペアで接触電極として、他のペアでの対極電極として機能でき、これにより、同じ方法の中で使用される電極の組合せが多くなり、増加した量の情報が得られる。各電極が他のそれぞれの電極とペアを形成することが好ましい。
【0010】
交流電流は、通常、シヌソイド波形電圧を使用して印加されるが、矩形波形、三角波形なども使用できる。好ましくは、交流電流の周波数は100Hz〜1MHzの間であるが、さらに好ましくは、200Hz〜100kHzの間である。低い周波数では、適用される動物または人間の健康に不利益となる傾向があり、一方、高い周波数では、応答性が低くなる傾向がある。本発明の適用において、単一の周波数の使用でも十分な場合もあるが、大部分の場合には、前記範囲で異なった周波数の交流電流を適用することが好ましい。一般的には、周波数の数は5〜100の範囲内である。
【0011】
各電極ペアに対して、複数の周波数の交流電流が、所定の順序に従って、あるいは、同時に印加される。同時に印加することにより、全体としてより迅速に実行できる点で有利である。この場合、複数の周波数を印加するために必要とされる時間は、原則として、その最も低い周波数によってのみ制限される。モニタリングされる測定結果の精度を改善するために、電流の印加は、好ましくは各電極に対して、各印加の間に短いインターバルをおいて、複数回、例えば5回、繰り返される。
【0012】
この方法を使用するための電極キャリアは複数の異なる構成を採ることができるが、一般的には、キャリアが歯に隣接した位置にある場合に、電極はその歯の少なくとも1つの面にある所定の配置を採る。従って、一般的には、使用中、前記少なくとも1つの歯の面の実質的に所定の位置に配置される。用途に応じて、電極を、歯の3面、4面ないしは全5面と接触させる。歯の構成要素の性質により、一般的には電気的応答には、実数成分と虚数成分が含まれる。
【0013】
電極キャリアは少なくとも6個の電極を備え、かつ、キャリアはその電極が歯の少なくとも2つの面に接触するように配置されることが、特に好ましい。従って、1つのペアの電極は、単に対向または隣接する異なる面に配置される。このようにして、歯の3次元構造を計算することができる。この情報は、例えば、歯にある虫歯の範囲を測定するために使用される。
【0014】
モニタリングされた応答を処理するステップは、一般的には、前記応答を、歯の所定のモデルにデータとして入力し、該モデルに従って、各電極に対するインピーダンスの値を算出することにより行われる。計算の回数は、使用されるモデルの複雑さに、そして電極ペアの数および印加される電流の周波数により実質的に決定される。
【0015】
好ましくは、歯のモデルは、電極に対応するインピーダンスの星形状モデルであり、電極ペアの間で形成された回路が2個の対応するインピーダンスを直列に構成する。このモデルにより、その後の計算に対して簡単な組み合わせが提供され、該モデルは物理的な歯の構造に良く近似する。星型状のインピーダンスモデルは、仮定の等価回路の形を採る。この回路は、該回路が、低周波数のインピーダンスおよびキャパシタンス(または一定の位相要素)との並列の組合せと直列に接続され、高周波数を受けたときに生ずるインピーダンスを含む。
【0016】
高周波数および低周波数のインピーダンスは、複数の印加された周波数における各回路の応答を解析することにより、高周波数および低周波数の抵抗(インピーダンスの実数成分)として決定される。これはZ′−Z″プロットを使用して達成される。
【0017】
このモデルを使用する場合、次の処理ステップは、高周波数抵抗および低周波数抵抗の各々に対する各電極ペアの間の抵抗値を表わす方程式のマトリクスを形成することからなる。次いで、対応する高周波数および低周波数のそれぞれのマトリクスを解き、高周波数および低周波数での各電極に対する抵抗値が付与される。種々の方法、例えば、特異値分解(SVD)が、これを達成するために使用できる。
【0018】
各電極に対する抵抗値が得られれば、歯の構造が電気的応答に影響すると評価されることから、それらの抵抗値は歯の構造パラメータに関連づけられる。構造情報の1つは、存在する虫歯の程度と関連づけられる品質パラメータ「T」である。パラメータTは、エナメル質の品質の数値表現である。高品質のエナメル質には、虫歯によるダメージがほとんどないか全くないが、一方、低品質のエナメル質には、大きなダメージがある。この場合、処理ステップは、電極に対する抵抗の計算値を使用して、その電極における、歯のエナメル質の品質パラメータTの値を算出することにより、構造情報を決定することをさらに含む。
【0019】
同様に、エナメル質の厚さ「d」が計算される。この場合、処理ステップは、電極に対する抵抗の計算値を使用することにより、電極における歯のエナメル質の厚さdの値を算出することにより、構造情報を決定することをさらに含む。高周波数および低周波数での抵抗値と関連づけられるため、Tおよびdの各々の値が算出される。低周波数の抵抗値は、Tをdで乗じた値に比例し、高周波数の抵抗値は、dをTで除した値に比例する。このことは、品質および厚さの解析(デコンボリューション)が提供されるため、臨床的に有利である。
【0020】
dおよび/またはTのような構造情報が、電極が位置する歯に対して決定されると、次いで、その他の位置の歯に対する構造情報が算出されることが好ましい。これは、多くの方法で達成できる。1つの方法は、歯のモデルを仮定し、それに応じて適切な関数、例えば、電流経路を考慮し、当該位置からの電極の距離に基づいた、異なる電極位置からの値の寄与を追加した関数を使用することによって、その値を割り当てることである。しかし、好ましくは、歯のエナメル質の抵抗値、エナメル品質、および歯の幾何形状の間の実験的関係に基づいた関数が使用される。このような関数は、実際の歯の薄く切った部分を測定することによって導かれる。このような関数の複雑さが、かかる計算の精度に影響すると考えられる。
【0021】
これらの電極が位置していない位置における値が算出されると、緩和法を、この構造値に対して1回以上適用することが好ましい。
【0022】
次いで、この構造を示す計算値をグラフィックで表示することが好ましい。多くのグラフィック表示が想定される。品質パラメータTの場合、Tの値は、歯の3次元表示の表面に表示される。この3次元表示は、単純な円筒でもよく、またはもっとリアルな表示でもよい。厚さの値が表示される場合は、これらは、厚さが視認できるような空洞構造を有する3次元表示に表示されることが好ましい。また、該3次元表示は、視認効果を高めるために、部分的に透明に提供される。
【0023】
決定された構造情報が、その歯に存在する虫歯の程度に関連づけられることはもちろん利点である。しかし、虫歯になっていないが、それでも、例えば妊婦であるといった、その他の因子で影響される構造を有している歯の物理的構造を決定することにも利点があると考えられる。完全に健康な歯の構造についての情報も研究に役立ち、本発明では、これらの構造を解析するために歯を抜いたり損壊したりする必要がないので、この場合でも利点を見いだすことができる。
【0024】
本発明の第二の態様よれば、
歯の構造をモニタリングするための装置であって、
少なくとも3つの電極を備え、使用時に、歯に隣接して配置される場合に、電極が咬合面、隣接面、または開放平滑面の中のうちの少なくとも1つと接触するようになっている電極キャリアと、
キャリアの電極の複数のペアを選択し、選択されたペアのうちの一方を接触電極とし、他方を対局電極とし、
選択された各電極ペアに対して、電極間に交流電流を流し、電極および少なくとも該電極の間にある歯の各部分により回路を形成し、
各選択されたペアの回路について電気的応答をモニタリングする、
機能を実行するように構成されている制御装置と、
各電極ペアについてモニタリングされた応答をモニタリングして、前記歯の各部分に関する構造情報を決定するように構成された処理装置と、
を備える歯のモニタリング装置が提供される。
【0025】
従って、この装置は、本発明の第一の態様に従う方法を実行するために使用される。
【0026】
好ましくは、制御装置は内部電源を装備し、該制御装置は、電極キャリアと接続され(制御装置と電極の間に電気回路が備えられ)、制御装置は、他の装置および/または他の装置の使用時における電源から物理的に分離される。これは、安全性の理由から重要である。これにより、装置の取り扱いが面倒でなくなり、また、当該方法や装置に慣れていない患者に与える不安を減じさせることができる。
【0027】
装置は、自立式の小さなユニットであるが、少なくとも制御装置は携帯型のものであることが好ましい。モニタリングした電気的応答を定義する情報は、制御装置とプロセッシング装置の間で、電磁波によって伝達されるのが好ましく、これにより物理的電線数が減少され、さらに制御装置を分離することができる。これは、赤外線またはBluetooth(登録商標)などのシステムに基づいた無線通信を使用して達成できる。一例では、制御およびプロセッシング装置は、一般的なハウジング内に設置される。
【0028】
制御装置は、単一の周波数の電流印加でも使用できるが、一般的には、各電極に対して、多周波の電流が順番に印加される。電流自体は、所定の順序で、または同時に印加される。従って、制御装置は、一般的に、信号発生器、マルチプレクサ、および、回路の応答をモニタリングするためのアナライザを備える。アナライザとしては、「ロックイン」アンプ、周波数応答アナライザ、または高速フーリエ変換システムを用いることができる。
【0029】
好ましくは、電極キャリアは、リード線により制御装置と取り外し可能に接続される。生体内測定のために、適切なコネクタにより、対象となる人間や動物の口に隣接した位置での使用が可能となる。衛生的配慮から、電極キャリアは、使い捨てキャリアであることが好ましい。
【0030】
様々な電極キャリアの構成が考えられる。多くの場合、ポリマ基板を含み、ポリマ基板は、電極と電気信号をやり取りするためのリード線を備える。電極は、一般的には金属製であり、カーボンでコーティングされる。カーボンは、導電性を備えるため、歯との電気接触を可能にすると共に、医療用途の使用において適切な材料である。
【0031】
この明細書で記述される本発明は、例えば、研究用、獣医用、医療用または歯科用のような業務現場で生体測定に関して主に論じられるが、該測定は、生体外でも実行されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明に従った方法および装置の実施例について、添付する図面を参照しながら、説明する。
【0033】
歯の構造をモニタリングするためのシステムの例を、図1に概略的に示す。該システムは、総括的に1で示される。システムは、可搬性ユニット2を備え、ラップトップ型コンピュータとほぼ同様の大きさである。ユニット2は、内部制御装置3および内部コンピュータ4を備える。ユニット2は、ディスプレイスクリーン5およびキーパッド6などの入力コントロールを内蔵する。ユニット2は、再充電可能な内部バッテリで作動し、電磁誘導レシーバ7と結合しており、対応するクレイドル充電器8の上に置くことで、物理的接続のための電線を全く必要とせずに、ユニット2の電源に充電することが可能となっている。
【0034】
制御装置は、コンピュータと2方向通信でき、またユニットコネクタ9と接続している。使用時に、リード線10をコネクタ9に差し込む。このリード線は、離れた電極との間で電流を通ずるのに適切な電線を備える(以下、詳述する)。
【0035】
リード線10の他方の遠位末端には、電極キャリアコネクタ11が備えられ、電極アセンブリ12がリード線10に取り外し可能に接続される。電極アセンブリ12には、プラグ13が取り付けられた短い配線部14があり、電極キャリアコネクタ11と接続可能となっている。プラグ13から遠位側にある配線部14の他方端に、電極キャリア15が備えられる。電極キャリア15は、構造を測定する予定の歯の隣接または周辺に配置される。電極キャリア15は、歯に接触するための複数(3つ以上)の電極16を備え、各電極は個別の電線に結合され、リード線10および各コネクタを経由して、制御ユニット3と電気的に結合される。
【0036】
図2は、システムの別の構成を示し、1′で示される。図2に示される構成要素の大部分は、図1のものと同様であり、それらはプライム記号付き参照番号で番号付けされる。両実施例の主な差異は、制御ユニット3が分離したユニット20の中に内蔵され、ユニット20が歯の構造を調べる予定の患者の手で保持できるように構成されていることである。この場合、制御装置3とコンピュータ4の間の通信は、発信機/受信機21の間の短波無線回線経由で行われる。従って、携帯ユニット20は電源を備える。
【0037】
他の例として、少なくともコンピュータ4の部分も同様に携帯ユニット20の中に内蔵させることが想定される。代替的に、フレキシブルなリード線10および10′を用いるよりも、構成要素2および12または20および12を、電極接続部を有する多少剛性のある付設コネクタから直接伸長する電極と組み合わせたハウジングに収納してもよい。かかる構成は、ハンドルおよび取り換え可能なヘッド部の間に電気的並びに機械的な接続がある点を除いて、バッテリ駆動の電動ハブラシといくらか類似している。ユニット2、2′は、例えばパーソナルコンピュータ、プリンタおよびディスプレイのような別の装置とさらに接続できる。しかし、安全性への配慮から、少なくとも歯の構造を測定する作業中には、ユニット2、2′または9′のいずれかが主電源と物理的に接続しないようにすることが重要である。さもないと、誤作動の場合に、歯を解析中の対象に危害をもたらす可能性が生ずる。
【0038】
図2に示したシステムの実施例は、携帯ユニット20により、使用中の煩雑さがより少ない装置が提供されるので、特に有益である。
【0039】
以下に、図1の第1の実施例のシステムの構成要素を参照して記述するが、明確な区別が示されない限り、図2の第2の実施例のシステムの類似の構成要素に対しても、同様の参照が適用される。
【0040】
図3に、電極キャリア15の一例を示すが、該電極キャリア15は、概して「T」形状(図中逆さになっている)の形態からなり、「T」の横部材には、その片面に電極の配列が配置されている。電極キャリア15は、例えば商品名「カプトン」で販売されているポリイミドまたは生物学的に不活性な同種の材料からなる適切な基板で形成される。
【0041】
図3に示すように、電極16は、4つのライン上に、同様の(水平の)横部材位置にある、隣り合っていないラインをペアとして、「T」横部材に対して2つの位置をとるように配置される。複数の銅線25が電極キャリア15の材料中に埋め込まれ、個々の電極16のそれぞれに対して電気接続が提供される。銅線は「T」の底部、配線部14に通過してコネクタ13に至る。リード線10の中にある対応する電線により、制御装置3との電気接続がなされる。
【0042】
本実施例では、各電極16は、鉛フリーのスズの微小点26で形成され、カーボン層で被覆されて、生物学的に不活性な電気接触を提供する。
【0043】
図4には、図面と平行な平面に咬合面がある小臼歯30の概略図が示される。図示のように、「T」のアーム(横部材)は、各電極16が歯の各面と接触するように、小臼歯30の開放平滑面および隣接面近くを覆う。
【0044】
電極アセンブリ12をこの位置に配し、システム1の他の部分に接続した状態で、コンピュータ4を作動させて、一連の交流信号(シヌソイド形)を電極16の様々なペアの間に流すように、制御装置3を制御させる。歯30の電気的応答がこれら各電極について測定され、次いで、その結果がコンピュータ4により処理されて、所望の構造的決定が得られる。
【0045】
図5に、制御装置3をより詳細に示す。制御装置3は、複数周波数帯の波形発生器40を備え、該波形発生器40はマルチプレクサ41に接続され、その次に電線42が備えられ、リード線10を介して、各電極16との間に電気回路が形成される。マルチプレクサ41により、電極のペアを選択する手段が与えられ、波形発生器40の出力を切り替えることによって、異なる電線42の間で回路が形成される。マルチプレクサ41に接続されたアナライザ43が備えられ、電線42および電極16と、歯の各部分とで形成された回路の応答が解析される。アナライザ43としては、ロックインアンプ、周波数応答アナライザ、または高速フーリエ変換装置(FET)を用いることができる。本実施例の場合、多重周波数のモニタリングに最も有効である高速フーリエ変換装置が使用される。
【0046】
図6を参照して、装置の操作方法を記述する。これにより、歯の構造の測定が得られ、グラフィック表示される。
【0047】
図6のステップ100でシステムが初期化され、被験者が適切な位置に配置され、電極アセンブリ12がユニット2(または20)に接続され、セットアップされる。電極キャリア15により、モニタリングされる構造である歯30の表面の周りを覆い、電極16が歯30の各面と接触するように配置される。小臼歯の場合には、それぞれの表面は、2つの隣接面と2つの開放平滑面である。アセンブリは、弾性のバンドを使用して歯と接触して保持される。計算により得られた構造を実際の歯の構造と関連づけるために、電極および所定の歯面との間の概略の接触位置を、予め決定しておくか、(後の計算で入力するために)モニタリングの間に書き留めておく必要がある。
【0048】
ステップ100には、1つ以上のテスト信号を電極16に供給し、システムが全体として正しく構成され、適切な電気接触が電極と歯の表面との間に十分に与えられているかを確認することも含まれる。特定の電極の不具合または電気的な接触確立の失敗がある場合、システムの操作者にそのことが示されるようにすべきである。ただし、(十分な数の電極が正常に作動していることを条件として、)このような場合でも、システムを操作でき、かかる不具合を考慮に入れて、最終的な計算において調整することは可能である。ただし、結果的に、その様な領域における結果の精度は減少する。
【0049】
ステップ101において、システムの操作者(例えば、人間が被験者である場合の歯科医または動物が対象である場合の獣医)は、コンピュータ4をキーボード6によって操作して、モニタリングの進行を開始する。代替的に、コンピュータ4が手の届かない場合の容易な操作性のために、スタートボタンをキャリアアセンブリ自体またはリード線10の末端に備えることができる。次いで、コンピュータにより制御装置3を操作するソフトウエアが実行される。
【0050】
ステップ101において、ソフトウエアにより、マルチプレクサ41が電極の第1ペアを選択する。図3において、この電極の第1ペアを、AおよびBとすることができる。これらの電極のうち、例えば、Aを接触電極とし、Bを対極電極とする。
【0051】
ステップ102において、多重周波数電流が、波形発生器40によってマルチプレクサ41に供給される。電流は、マルチプレクサ41を経由して、選択された電線42、対応するリード線10、10′、電極AおよびB、および、それらの間にある各歯の構成要素により形成された回路に印加される。
【0052】
電流は、多重周波数信号の形を取り、これらの周波数はモニタリングが全体としてできるだけ迅速に実行できるように、同時に印加される。各々の周波数の波形は、本実施例においてはシヌソイダル形である。合計で10の異なった周波数が、300Hzから100kHzの間の周波数において、均等な間隔で適用される。
【0053】
次いで、電極AおよびBの間に形成された回路の電気的応答(電圧、電流およびそれらの個々の位相)は、ステップ103で、アナライザ43によりモニタリングされる。応答の情報は、出力データとしてデジタル的に記憶される。
【0054】
ステップ102および103の手順は、実験的な誤差を低減するためにさらに4回繰り返される。結果として、電極の各ペアに対して、総計5回の回路の応答測定が行われる。
【0055】
ステップ105において、例えば電極AおよびCの電極の第2のペアが選択される。次いで、ステップ102から105までが、この電極ペアに対して実行される。このステップ106は、電極のすべての組合せに対する測定が実行されるまで、多数回繰り返される。例えば、測定は電極A−B、A−C、A−D、A−E・・・、B−C、B−D、B−E・・・、C−D、C−E・・・に対して実行される。従って、第1の電極について、他の15個の電極と回路が形成され、第2の電極については、他の14個の電極と回路が形成され、第3の電極ついては、他の13個の電極と回路が形成される。各組合せについて5回測定されるので、例えばA−B測定を行えば、その後に、同じ回路であるB−A測定を実行する必要はない。
【0056】
各電極ペアに対して5回モニタリングを実行した後、データはコンピュータ4に送られる。図2のシステムが使用される場合、データは各ペアに対する各測定が終わるごとに送信してもよく、またはユニット20の中でローカルに記憶され、その後に一緒に発信機/受信機装置21を使用して送信するようにしてもよい。
【0057】
図6のステップ107において、コピュータ4により、各電極ペアについての、電圧および電流の応答、さらにはそれぞれの相対位相に関する受信情報が処理される。
【0058】
回路の応答に関するデータが得られれば、次いで、このデータを電気インピーダンスの値に転換し、次いで歯の構造に関連づけさせることが望まれる。これを実行するために、歯の成分のモデルを仮定する必要がある。本実施例で使用される、このようなモデルの1つについて説明する。
【0059】
インピーダンスの星形接続がモデルとして仮定され、これは図7に例示される。16個の電極(A〜Pで示される)は、中央のハブに電気的に接続され、各電極は対応するインピーダンスZAなどを有するとみなす。従って、2つの電極の間にあるいかなる接続においても、直列で2個のインピーダンスが含まれる。電極AおよびDを例にすれば、電極AおよびDを使用して形成された回路は、インピーダンスZAとインピーダンスZDを直列で有する。
【0060】
これは物理的には、図8に示すように、2個の電極AおよびDが歯のエナメル質45の表面上に設置されていると考えられる。歯のエナメル質の下に象牙質層46がある。仮定された電極AおよびDの間の電流経路は47で図示される。象牙質層46内では、インピーダンスはエナメル質45のインピーダンスに関して無視できると考えられる。各電極の直下のエナメル質の厚さは、電極AおよびDに対して、それぞれdAおよびdDで表される。エナメル質の厚さ、その化学的組成および微細構造が各電極でのインピーダンスに影響を及ぼすことが認識される。電極Aに関連するインピーダンスが図8に示され、これは電流モデルにおいて電極およびエナメル質45の直下の象牙質層の間にある。
【0061】
モデル上のインピーダンスZA、ZB・・・の各々は、例えば電極Aについて、図9に示すような構成要素を使用して表示できると考えられる。ここで、インピーダンスZAは、高周波数での回路のインピーダンスZA,highと、低周波数での回路のインピーダンスZA,lowおよびキャパシタンスCAの並列結合との、直列結合として示される。これはインピーダンスZAを決定する目的の仮定モデルであることに留意すべきである。
【0062】
図10は、歯の構造の計算においてモデルがどのように使用されるかを示すフローチャートである。
【0063】
ステップ200において、電極の各ペアに対する5セットのデータが平均化され、平均化データセットを決定し、計算の精度が高められる。平均化されたデータの値は、後述する処理で使用される。
【0064】
上記モデルは、一般化されたインピーダンスの観点から記述されている。しかし、本実施例では、大きい範囲の多重周波数が使用されるので、インピーダンスの実数値、すなわち抵抗値は、各電極に対して計算でき、これらは電極Aに対してZA,highおよびZA,lowである。概括的には、これらはRhighおよびRlowのセット値である。これは、図10のステップ201で実行される。
【0065】
RhighおよびRlowの値は、図11に示される様にZ′−Z″グラフから決定される。各電極に対して、多重周波数の応答は、Z′−Z″グラフの上にプロットされ、これらは曲線を形成する。この曲線が組み込まれ、実数(Z′)軸との交点が計算される。曲線は、実際には実数軸と二点で交差し、原点に最も近いものが無限大周波数での抵抗値Rhighに相当し、原点から最も遠いものが周波数ゼロの抵抗値Rlow(直流として考えられる)である。曲線の形状は、インピーダンスの値であると共に、歯の構造、特にエナメル質の厚さおよび構造の関数である。なお、誘電損失が低いことおよび分散がないことが仮定されている。
【0066】
計算ステップ201の結果は、電極の各ペアの間で形成された回路に対応する、一連の無限大周波数に対する抵抗値Rhighおよびゼロ周波数に対する抵抗値Rlowである。しかし、各値のRhighまたはRlowは、図9を参照して先に例示したモデルによる抵抗値成分を含む。従って、
RAD,high=RA,high+RD,high
RAD,low=RA,low+RD,low
である。
【0067】
RAD,highは、電極AおよびDの間の回路の全抵抗値であり、図9の仮定回路モデルで直列であるから、これは電極AおよびD個々の抵抗値の合計である。このことは、低周波数抵抗値RAD,lowにも適用される。
【0068】
従って、電極の組合せにより形成される多数の回路により、多数の高周波数の抵抗値および低周波数の抵抗値が決定される。
【0069】
ステップ202において、二つの独立したマトリックスが異なった電極回路に対して、高周波数および低周波数のデータをそれぞれ使用して形成される。一例として、以下の表1に示す。表1は、16個の電極プローブを使用した交流インピーダンス結果に対するデータマトリックスのフォーマットを示す。各々の値は、電極1から16に番号付けされた電極間の測定抵抗値を示す。「−1」は値が出なかったことを意味する。
【表1】
【0070】
従って表1のデータは、一連の連立方程式を表わし、これよりRA,highおよびRA,lowタイプの値が各電極に対して計算される必要がある。従って、2個のそれぞれのマトリックスについて、各所定の電極に従って、低周波数および高周波数の抵抗値を決定するために、図10のステップ202において、特異値分解(SVD)解析が実行される。
【0071】
歯のエナメル質の品質は総称Tにより表わされ、これは組織(エナメル質)のパラメータである。Tの高い値はエナメル質の高品質を表わし、一方、低い値は(虫歯のような)損傷エナメル質を表わす。
【0072】
低周波数の抵抗値は、組織パラメータTを当該電極でのエナメル質の厚さdで乗じた値に比例し、一方、高周波数の抵抗値は、エナメル質の厚さdを組織パラメータTで除した値に比例する。このことは、電極Aを例にとると、以下のように表わされる。
【0073】
RA,low∝T・dA
RA,high∝dA/T
この式を使用して、ステップ203において、高周波数および低周波数のデータは、各所定の電極下でのTおよび厚さdに対応する値に変換される。
【0074】
これらの値を決定した後、次いでエナメル質の構造の表示が提示できる。これは本実施例においてグラフィックで実行される。
【0075】
図12に、図10によって得られたデータを、例えばコンピュータ4に付設しているディスプレイ5を使用して、グラフィックで表示する方法を示す。
【0076】
この方法のステップ300において、計算分解能の選択がなされ、これは解析に使用される電極の数に依存する。本実施例では、電極で接触された歯の接続表面を表わすために長方形が使用される。この例における長方形は、長さ方向で200ポイントに、そして幅方向に100ポイントに分割される。200ポイントは、隣接面および開放平滑面(全部で4個)のポイントを表わし、100ポイントは、各表面における歯の高さを表す。解像度の選択により、長方形中に20,000の位置が得られる。
【0077】
ステップ301において、電極の位置は長方形の幾何学形状に関連づけられる。本実施例の電極は、4個の電極の4列で配置されており、長方形の対応する位置に移動される。長方形は結果的に歯の幾何学的形状に関連づけられているので、構造の局部的領域が識別でき、実際の歯に関連づけられるように、長方形のポイントと歯の上のポイントの対応を理解することが重要である。本実施例では、特定の歯の表面に対する電極の相対的方位決定は、使用時にアセンブリを最初に位置決めする方法により明らかとなる。
【0078】
ステップ302において、組織パラメータTの値が、長方形上の各々の電極位置に割り当てられる。これらの値は、モニタリングの結果として、計算を代表するので固定される。
【0079】
ステップ303において、Tの値が長方形上のその他19984(20000―16)個のポイントの各々に対して割り当てされる。これらのTの値は、経験的関数を使用して計算される。経験的関数は、その上でインピーダンス測定が行われた歯を薄切片にスライスし、インピーダンスの値を顕微鏡観察により決定されるエナメル質の品質と関連付けして、オフラインで導き出される。同様の解析を、後述されるエナメル質の厚さに対しても行うことができる。この目的のために、多くの異なる関数を使用できるが、これらは、実験、モデル化、またはそれらの組み合わせによって導き出される。
【0080】
長方形の各ポイントに対してエナメル質の品質値が指定されると、ステップ304において、Tの値の間に滑らかな遷移を与えるために「緩和」手順が実行される。これは、16個のモニタリングした値以外の長方形中のすべてのT値に対するものであり、問題となるT値が隣接するT値の平均値により置き換えられることを意味する。この手順は、ステップ304において、その値が所定の平滑性を得るまで、繰り返し実行される。
【0081】
ステップ305において、データは、種々の品質値Tに色を割り当てて、ディスプレイにグラフィカルにプロットされる。例えば、最高品質のT値には鮮明な緑色が、最低品質のT値には鮮明な赤色が、そして中間の値にはこれら2個の両極端の間にあるスペクトルに従った色が、それぞれ割り当てられる。
【0082】
エナメル質の品質の表示は、例えば電極の位置を示す、平らな2次元長方形の形式でなされる。代替的に、コンピュータ4の使用者によって回転させうる回転可能な円筒表面に表示することもできる。実際の歯の表面上にある電極の位置が認識できるようにして、使用者が長方形上の計算値が実際の歯のエナメル質のどの部分に関連するかを決定できるようにする。
【0083】
図13AからCに、グラフィック出力の例が示される。図13AからCにおいて、上記長方形はT値によって赤から緑の着色で図示される。赤い領域は低品質のエナメル質を、一方緑の領域は高品質のエナメル質を示す。典型的な赤い領域はRでマークされ、そして典型的な緑の領域はGでマークされ、より暗い影は色が品質スペクトルの赤端に近いことを示している。図13AからCの各々の長方形の真下に、(水平な)歯の断面図が例示され、これは長方形を通した水平線に沿って取り出し歯の部分を円形のように直して図示したものである。図13Aでは、断面は、電極5、8、9および10(長方形の上部部分にある)に沿って取り出されている。同様に、図13Cでは、断面は、電極4、7、12および13に沿ったラインで取り出されている。図13Bでは、そのラインは、図13Aおよび13Cの電極から等距離にあるラインで取り出されている。
【0084】
前述のように、品質因子Tに加えて、各電極の下のエナメル質の厚さが計算される。これらの各々は、高周波数および低周波数の抵抗値についてモニタリングした値を含む方程式の中では未知数である。
【0085】
従って、Tの計算に記述されたのと同様な方法が、電極の直下ではないポイントにおけるエナメル質の厚さを計算するのに使用できる。図12を参照すると、図の右手側に、追加ステップ306から309が図示される。ステップ306において、「d」値は電極の位置における長方形上にプロットされる。ステップ307において、「d」値は長方形中のその他のすべてのポイントに対して計算される。実際の歯のエナメル質の薄切片部分からの情報は、それらのd値が計算できる経験的関数を導き出すために使用される。厚さパラメータに関しても、理論的モデルまたはこれら技術の組合せを使用できる。
【0086】
ステップ308において、値の緩和がステップ304におけるのと同様な方式で実行され、ステップ309で代替的な3次元のグラフィック出力が提示される。これにより、厚さに関係する情報とエナメル質品質に関係する情報の組合せが表示される。これは、図14AからCに示される。エナメル質の品質および厚さに関係するデータがプロットされ、品質データは前述と同様に色として提示されるが、今回の場合、算出された厚さの値dに従って、構造の壁に局所的厚さを持たせた3次元構造体(近似的に円筒状)の表面にプロットされる。これを図14Aから14Cに示すが、異なった部分のエナメル質が図示され、電極位置はドットでマークして示されている。
【0087】
厚さデータをもっと明確に図示するために、3次元構造体にある程度の透明性をもたせることもできる。例えば、15Aには透明性がないが、図15Bには低レベルの透明性があり、そして図15Cには高レベルの透明性がある。いずれの場合も、外側表面に色がプロットされたまま残してある。同様に、より暗い影は色が品質スペクトルの赤端に近いことを示している。
【0088】
エナメル質の品質および/または厚さのデータをプロットする方法は多くあり、ここで記載したものは一例である。上記の色は、混同の可能性がほとんどないというメリットを有するが、色の選択は任意である。
【0089】
円筒により、歯の簡便な近似表示が与えられるが、計算された値に従って制御された構造の相対的厚さを持ったグラフィック表示において、歯の3次元構造を使用することも、本発明の範囲内にあると考えられる。この場合、エナメル質の品質もビットマップ技術によって簡単にプロットできる。
【0090】
本発明の効果の例証として、図16に、上記の計算の結果として決定された歯の断面構造が示される。これは、歯の顕微鏡写真への差込である。それぞれの場合で、電極位置がマークされ、そして「De」のラベルをつけた領域は歯の脱ミネラル化を表わし、虫歯を示す。本発明により、現実を正確に表わす構造決定が提供されることがわかる。
【0091】
さらなる例として、上述のものに対してより単純化した方法を説明する。図1または2を参照して説明したものと同様の装置が使用される。このベーシックな例においては、3つの電極16がキャリア15に備えられ、各々が同様に接触領域を有する。必要に応じて、異なる接触領域を有する電極のインピーダンス値に与える影響に関して仮定をなすこともできる。ただし、本実施例において、これは不必要である。
【0092】
3個の電極の中で、第1の電極「1」は、作動電極または接触電極であり、該第1の電極の下のエナメル質のインピーダンスを得ることが望ましい。第2および第3の電極もまた、システムの3個の電極を構成する。第2および第3の電極は、対象となる歯の表面に互いに近接して配置され、その結果、これらが接触するエナメル質はそれぞれについて同様のインピーダンスを有するという理にかなった仮定が可能である。
【0093】
次に、システムを作動し、次のように形成される回路の電気的応答を測定する。
【0094】
a)電極1および2または電極1および3、すなわち、例えば Z12=Z1+Z2、および
b)電極2および3、すなわち、Z23=Z2+Z3
図7の星形状のインピーダンスモデルが、ここでも仮定される。
【0095】
電極2および3は同一のインピーダンスを有すると仮定されるので、(上記から)作動電極1に伴うインピーダンス(Z1)は、式 Z1=Z12−(Z23/2)で決定される。
【0096】
Z1の値を測定するために、単一周波数の測定が使用される場合、前述の技術の幾つかを組み合わせると、電極1が位置する歯における虫歯の範囲に関する情報が提供される。多重周波数の測定では、虫歯の拡がりおよびエナメル質の厚さが決定できる。
【0097】
いずれの場合においても、Z1に対する所望の値が提供される。従って、この実施例は、1つ以上の歯の表面にある多数の電極に対する、インピーダンスの測定、さらには構造の決定にも拡張できることが理解される。これには、例えば電極2および3のような、他の電極を作動電極および/または対極電極として使用することが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】第1の実施例によるシステムを示す図である。
【図2】第2の実施例によるシステムを示す図である。
【図3】電極の配置を示す図である。
【図4】歯の周囲に配置された電極キャリアアセンブリの概略図である。
【図5】制御ユニットをより詳細に示す図である。
【図6】第1の実施例または第2の実施例のシステムを使用する方法のフローチャートである。
【図7】仮定された電極インピーダンスモデルを示す図である。
【図8】電流の流れの仮定されたモデルを示す図である。
【図9】各電極に対して仮定されたインピーダンス等価回路を示す図である。
【図10】エナメル質の厚さおよび品質のパラメータの算出を示すフローチャートである。
【図11】Z′−Z″の概略図である。
【図12】算出データのグラフ表示への変換を示すフローチャートである。
【図13】Aは、品質パラメータを、着色長方形および電極の上部ラインに沿った水平断面として、グラフィック出力した図である。 Bは、品質パラメータを、着色長方形および2つの電極ラインの間の水平断面として、グラフィック出力した図である。 Cは、品質パラメータを、着色長方形および第2の電極ラインに沿った水平断面として、グラフィック出力した図である。
【図14】Aは、3次元円筒としてプロットした厚さおよび品質のパラメータを示す図である。 Bは、Aの部分を示す。 Cは、1つの電極に関するAの円筒を通る断面を示す図である。
【図15】Aは、透明性のない構造の上にプロットした厚さと品質のパラメータを示す図である。 Bは、透明性の低い構造の上にプロットした厚さと品質のパラメータを示す図である。 Cは、透明性の高い構造の上にプロットした厚さと品質のパラメータを示す図である。
【図16】歯の顕微鏡写真および対応する歯の脱ミネラル化の計算領域を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つの電極を備えた電極キャリアを、歯に隣接して配置し、歯の咬合面、隣接面、または開放平滑面のうちの少なくとも1つに電極を接触させ、
キャリアの電極の複数のペアを選択し、選択されたペアのうちの一方を接触電極とし、他方を対極電極として、
選択された各電極ペアに対して、電極間に交流電流を流し、電極および少なくとも該電極の間にある歯の各部分により回路を形成し、該回路について電気的応答をモニタリングし、
各電極ペアについてモニタリングされた応答を処理して、前記歯の各部分に関する構造情報を決定する、
ことからなる歯の構造をモニタリングする方法。
【請求項2】
前記電極のペアは、すべての選択されたペアにおいて、電極が共有されないように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各電極が他のそれぞれの電極とペアを形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
電極キャリアが少なくとも6つの電極を備え、かつ、該電極が歯の少なくとも2つの面と接触するように、電極キャリアが配置される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
選択された電極のペアに、2つの電極が歯の異なった面にあるペアが含まれるようにする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各ペアに対して、電流の印加が複数回繰り返される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
キャリアの電極が、歯の少なくとも1つの面に接触するときに、予め定められた配置をとるようにする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
電極が、使用時に、歯の少なくとも1つの面の予め定められた位置に配置される、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
電気的応答が、実数成分および虚数成分を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
電極が、歯の3面、4面ないしは5面と接触する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
印加される交流電流が、100Hz〜1MHzの範囲にある周波数を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記周波数が、200Hz〜100kHzの範囲にある、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
交流電流が、各ペアに対して、前記範囲内における異なった周波数で印加される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
交流電流が、5〜100の範囲にある複数の異なる周波数で印加される、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
各電極ペアに対して、所定の順序に従って、複数の周波数で交流電流が印加されることをさらに含む、請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
交流電流が、複数の周波数で同時に印加される、請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記モニタリングされた応答を処理するステップが、
前記応答を、歯の所定のモデルにデータとして入力し、
該モデルに従って、各電極に対するインピーダンスの値を算出することからなる、請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記歯のモデルが、電極に対応するインピーダンスの星形状モデルであり、電極ペアの間で形成された回路が2個の対応するインピーダンスを直列に構成する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記星形状モデルのインピーダンスが、低周波数のインピーダンスおよびキャパシタンスとの並列の組合せに、直列に接続された、高周波数のインピーダンスと仮定される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
高周波数および低周波数のインピーダンスが、複数の印加された周波数における各回路の応答を解析することにより、高周波数および低周波数の抵抗値として決定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記処理ステップが、高周波数抵抗および低周波数抵抗の各々に対する各電極ペアの間の抵抗値を表わす方程式のマトリクスを形成することを含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記処理ステップが、高周波数および低周波数のマトリクスを解き、高周波数および低周波数での各電極に対する抵抗値を付与することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記マトリックスが、特異値分解を使用して解かれる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記処理ステップが、電極に対して算出された抵抗値を使用して、該電極における、歯のエナメル質の品質パラメータTの値を算出することにより、前記構造情報を決定することをさらに含む、請求項17〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記処理ステップが、電極に対して算出された抵抗値を使用して、該電極における、歯のエナメル質の厚さdの値を算出することにより、前記構造情報を決定することをさらに含む、請求項17〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
低周波数抵抗値が、Tをdで乗じた値に比例し、高周波数抵抗値が、dをTで除した値に比例する、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
電極が位置していない歯の部分に対する構造情報を決定することをさらに含む、請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
電極が位置していない歯の部分に対する構造情報が、実際の歯のモデル化および/または実測に基づいた、歯の構造を記述する関数を使用して決定される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
算出された値に対して、1回以上の緩和法を適用することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
決定された構造情報をグラフィックで表示することをさらに含む、請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記Tの値が、歯の3次元表示の表面に表示される、請求項24に従属する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記dの値が、歯の3次元表示の表面に表示される、請求項25に従属する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記3次元表示が部分的に透明である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記決定された構造情報が、歯に存在する虫歯の程度に関連する、請求項1〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
少なくとも一つの電極ペアが歯の表面に相対的に近接して配置され、該ペアの各電極に関する歯のインピーダンスが等しいと仮定し、各電極に対するインピーダンスが、各回路の電気的応答から直接的に決定され、該決定されたインピーダンスが少なくともさらに1つの電極に対するインピーダンスを算出するために使用される、請求項1〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
歯の構造をモニタリングするための装置であって、
少なくとも3つの電極を備え、使用時に、歯に隣接して配置される場合に、電極が咬合面、隣接面、または開放平滑面の中のうちの少なくとも1つと接触するようになっている電極キャリアと、
キャリアの電極の複数のペアを選択し、選択されたペアのうちの一方を接触電極とし、他方を対局電極とし、
選択された各電極ペアに対して、電極間に交流電流を流し、電極および少なくとも該電極の間にある歯の各部分により回路を形成し、
各選択されたペアの回路について電気的応答をモニタリングする、
機能を実行するように構成されている制御装置と、
各電極ペアについてモニタリングされた応答をモニタリングして、前記歯の各部分に関する構造情報を決定するように構成された処理装置と、
を備える歯のモニタリング装置。
【請求項37】
前記制御装置は、内部電源を備え、かつ、電極キャリアに接続するように構成され、他の装置および/または使用時の電源から物理的に分離される、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記制御装置は、携帯装置である、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
モニタリングされた電気的応答を定義する情報が、制御装置と処理装置の間で、電磁波によって送信される、請求項36〜38のいずれかに記載の装置。
【請求項40】
前記制御装置および処理装置が、共有のハウジング内に配置される、請求項36〜38のいずれかに記載の装置。
【請求項41】
前記制御装置が、所定の順序で、または同時に、複数の周波数で電流を印加するように構成されている、請求項36〜40のいずれかに記載の装置。
【請求項42】
前記制御装置が、信号発生器、マルチプレクサ、および、回路の応答を解析するための装置を備える、請求項36〜41のいずれかに記載の装置。
【請求項43】
前記電極キャリアが、リード線により制御装置と取り外し可能に接続できる、請求項36〜42のいずれかに記載の装置。
【請求項44】
前記電極キャリアが、使い捨てキャリアである、請求項36〜43のいずれかに記載の装置。
【請求項45】
前記電極キャリアが、ポリマ基板、電極との間で電気信号をやり取りするための導線、および、歯に電気接触を提供するためにカーボンでコーティングされた金属製電極を備える、請求項36〜44のいずれかに記載の装置。
【請求項46】
各電極における歯との接触面積が同一である、請求項36〜45のいずれかに記載の装置。
【請求項1】
少なくとも3つの電極を備えた電極キャリアを、歯に隣接して配置し、歯の咬合面、隣接面、または開放平滑面のうちの少なくとも1つに電極を接触させ、
キャリアの電極の複数のペアを選択し、選択されたペアのうちの一方を接触電極とし、他方を対極電極として、
選択された各電極ペアに対して、電極間に交流電流を流し、電極および少なくとも該電極の間にある歯の各部分により回路を形成し、該回路について電気的応答をモニタリングし、
各電極ペアについてモニタリングされた応答を処理して、前記歯の各部分に関する構造情報を決定する、
ことからなる歯の構造をモニタリングする方法。
【請求項2】
前記電極のペアは、すべての選択されたペアにおいて、電極が共有されないように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各電極が他のそれぞれの電極とペアを形成する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
電極キャリアが少なくとも6つの電極を備え、かつ、該電極が歯の少なくとも2つの面と接触するように、電極キャリアが配置される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
選択された電極のペアに、2つの電極が歯の異なった面にあるペアが含まれるようにする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
各ペアに対して、電流の印加が複数回繰り返される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
キャリアの電極が、歯の少なくとも1つの面に接触するときに、予め定められた配置をとるようにする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
電極が、使用時に、歯の少なくとも1つの面の予め定められた位置に配置される、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
電気的応答が、実数成分および虚数成分を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
電極が、歯の3面、4面ないしは5面と接触する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
印加される交流電流が、100Hz〜1MHzの範囲にある周波数を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記周波数が、200Hz〜100kHzの範囲にある、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
交流電流が、各ペアに対して、前記範囲内における異なった周波数で印加される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
交流電流が、5〜100の範囲にある複数の異なる周波数で印加される、請求項11〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
各電極ペアに対して、所定の順序に従って、複数の周波数で交流電流が印加されることをさらに含む、請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
交流電流が、複数の周波数で同時に印加される、請求項11〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記モニタリングされた応答を処理するステップが、
前記応答を、歯の所定のモデルにデータとして入力し、
該モデルに従って、各電極に対するインピーダンスの値を算出することからなる、請求項11〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記歯のモデルが、電極に対応するインピーダンスの星形状モデルであり、電極ペアの間で形成された回路が2個の対応するインピーダンスを直列に構成する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記星形状モデルのインピーダンスが、低周波数のインピーダンスおよびキャパシタンスとの並列の組合せに、直列に接続された、高周波数のインピーダンスと仮定される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
高周波数および低周波数のインピーダンスが、複数の印加された周波数における各回路の応答を解析することにより、高周波数および低周波数の抵抗値として決定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記処理ステップが、高周波数抵抗および低周波数抵抗の各々に対する各電極ペアの間の抵抗値を表わす方程式のマトリクスを形成することを含む、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記処理ステップが、高周波数および低周波数のマトリクスを解き、高周波数および低周波数での各電極に対する抵抗値を付与することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記マトリックスが、特異値分解を使用して解かれる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記処理ステップが、電極に対して算出された抵抗値を使用して、該電極における、歯のエナメル質の品質パラメータTの値を算出することにより、前記構造情報を決定することをさらに含む、請求項17〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記処理ステップが、電極に対して算出された抵抗値を使用して、該電極における、歯のエナメル質の厚さdの値を算出することにより、前記構造情報を決定することをさらに含む、請求項17〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
低周波数抵抗値が、Tをdで乗じた値に比例し、高周波数抵抗値が、dをTで除した値に比例する、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
電極が位置していない歯の部分に対する構造情報を決定することをさらに含む、請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
電極が位置していない歯の部分に対する構造情報が、実際の歯のモデル化および/または実測に基づいた、歯の構造を記述する関数を使用して決定される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
算出された値に対して、1回以上の緩和法を適用することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
決定された構造情報をグラフィックで表示することをさらに含む、請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記Tの値が、歯の3次元表示の表面に表示される、請求項24に従属する請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記dの値が、歯の3次元表示の表面に表示される、請求項25に従属する請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記3次元表示が部分的に透明である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記決定された構造情報が、歯に存在する虫歯の程度に関連する、請求項1〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
少なくとも一つの電極ペアが歯の表面に相対的に近接して配置され、該ペアの各電極に関する歯のインピーダンスが等しいと仮定し、各電極に対するインピーダンスが、各回路の電気的応答から直接的に決定され、該決定されたインピーダンスが少なくともさらに1つの電極に対するインピーダンスを算出するために使用される、請求項1〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
歯の構造をモニタリングするための装置であって、
少なくとも3つの電極を備え、使用時に、歯に隣接して配置される場合に、電極が咬合面、隣接面、または開放平滑面の中のうちの少なくとも1つと接触するようになっている電極キャリアと、
キャリアの電極の複数のペアを選択し、選択されたペアのうちの一方を接触電極とし、他方を対局電極とし、
選択された各電極ペアに対して、電極間に交流電流を流し、電極および少なくとも該電極の間にある歯の各部分により回路を形成し、
各選択されたペアの回路について電気的応答をモニタリングする、
機能を実行するように構成されている制御装置と、
各電極ペアについてモニタリングされた応答をモニタリングして、前記歯の各部分に関する構造情報を決定するように構成された処理装置と、
を備える歯のモニタリング装置。
【請求項37】
前記制御装置は、内部電源を備え、かつ、電極キャリアに接続するように構成され、他の装置および/または使用時の電源から物理的に分離される、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
前記制御装置は、携帯装置である、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
モニタリングされた電気的応答を定義する情報が、制御装置と処理装置の間で、電磁波によって送信される、請求項36〜38のいずれかに記載の装置。
【請求項40】
前記制御装置および処理装置が、共有のハウジング内に配置される、請求項36〜38のいずれかに記載の装置。
【請求項41】
前記制御装置が、所定の順序で、または同時に、複数の周波数で電流を印加するように構成されている、請求項36〜40のいずれかに記載の装置。
【請求項42】
前記制御装置が、信号発生器、マルチプレクサ、および、回路の応答を解析するための装置を備える、請求項36〜41のいずれかに記載の装置。
【請求項43】
前記電極キャリアが、リード線により制御装置と取り外し可能に接続できる、請求項36〜42のいずれかに記載の装置。
【請求項44】
前記電極キャリアが、使い捨てキャリアである、請求項36〜43のいずれかに記載の装置。
【請求項45】
前記電極キャリアが、ポリマ基板、電極との間で電気信号をやり取りするための導線、および、歯に電気接触を提供するためにカーボンでコーティングされた金属製電極を備える、請求項36〜44のいずれかに記載の装置。
【請求項46】
各電極における歯との接触面積が同一である、請求項36〜45のいずれかに記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16】
【公表番号】特表2008−514327(P2008−514327A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534077(P2007−534077)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003734
【国際公開番号】WO2006/037956
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(505394622)アイディーエムオーエス ピーエルシー (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003734
【国際公開番号】WO2006/037956
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(505394622)アイディーエムオーエス ピーエルシー (2)
【Fターム(参考)】
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