説明

歯の美白用セット

【解決手段】(A)ラクトフェリンと、(B)ラクトフェリンの分解物及び/又は(C)下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、MはNa又はKを示し、n≧2である。)
で表される直鎖状のポリリン酸塩及び下記一般式(2)
(MPO3m (2)
(但し、MはNa又はKを示し、m≧3である。)
で表される環状のポリリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上のポリリン酸塩とを含有する歯の美白用組成物と、この組成物を歯に保持、固定するための歯に脱着可能に装着される適用用具とを備えたことを特徴とする歯の美白用セット。
【効果】本発明の歯の美白用セットは、使用感が良好で、食物の飲食、喫煙、口腔内細菌の産生する有色物質等により付着する、外因性の歯の着色汚れ(ステイン)を簡単かつ確実に除去し、新たなステインの付着を抑制でき、歯の白さを長時間保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯を白くして長時間保つために用いる歯の美白用セットに関し、更に記述すると、食物の飲食、喫煙、口腔内細菌の産生する有色物質等により付着する、外因性の歯の着色汚れ(ステイン)を効果的に除去すると共に、新たなステインの付着を抑制して、歯の白さを長時間保つことができる美白用組成物を、歯に保持、固定するための歯に脱着可能に装着される適用用具と組み合わせた歯の美白用セットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯に付着したステインを除去する手段として、従来の歯磨剤、歯ブラシを用い、歯磨剤に含まれる研磨成分で研磨することによる物理的方法や、過酸化物による酸化漂白方法などに加え、近年、ステインを化学的に溶解、分解、あるいは歯面から剥離して除去する成分を含む歯牙美白用組成物を、歯牙表面に長時間保持する用具と組み合わせて適用する方法が提案されている。例えば、水溶性高分子及びコウジ酸等の白色化成分を含む粘着層と支持体よりなる口腔貼付材(特許文献1;特開平10−17448号公報)や、ポリリン酸塩とアニオン性界面活性剤及び/又は炭素数3以下の低級アルコールを含む組成物を、水不溶性のマウスピース、シート等の歯牙保持、固定用具と併用する歯の美白用セット(特許文献2;特開2000−281548号公報)、ポリリン酸塩とシトラール等の香料成分を併用した組成物を、水不溶性のマウスピース、シート等の歯牙保持、固定用具と併用する歯の美白用セット(特許文献3;特開2001−247438号公報)、ハイドロキシアパタイトを含む組成物を、水不溶性のマウスピース、シート等の歯牙保持、固定用具と併用する歯の美白用セット(特許文献4;特開2002−193775号公報)などが提案されている。
【0003】
しかし、これらの技術は歯に強く付着したステインを取り除く力は強いものの、新たなステインの歯への付着を防ぐ効果が弱く、より長時間白い歯を保つためには、製剤の使用頻度を多くしなければならない場合がある。更に、上述した成分の中には特有の味や刺激があるものも含まれるため、口腔内が敏感な人には高い濃度で使い難い場合があり、また装着中の不快感から短い時間しか歯に適用できず、ステインを落とす効果が十分に発揮できない場合があった。
【0004】
一方、ステインを落とす以外に歯を白くする方法として、過酸化物などの刺激の強い化学反応を伴わずに、エナメル質部分の光学特性を変化させることで歯を元の色より白くする方法(特許文献5;国際公開第03/030851号パンフレット)や、金属酸化物で歯の表面をコーティングする方法(特許文献6;特開2003−183142号公報)も提案されている。
【0005】
しかしながら、歯を白くするレベルについては、このような元の歯の色を変える要望も徐々に高まりつつあるものの、現状ではステインを落として元の歯の色を取り戻し、これを維持したいという願望のほうが高い割合を占めており、従って、より簡便に、違和感なく高い効果でステインを除去し、新たな付着を防ぐことができる技術の開発が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−17448号公報
【特許文献2】特開2000−281548号公報
【特許文献3】特開2001−247438号公報
【特許文献4】特開2002−193775号公報
【特許文献5】国際公開第03/030851号パンフレット
【特許文献6】特開2003−183142号公報
【特許文献7】特開2003−137809号公報
【特許文献8】特表平08−506098号公報
【特許文献9】特開平03−220130号公報
【特許文献10】特開平07−300425号公報
【特許文献11】特開平05−320067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、使用感が良好で、歯に付着したステインを簡単かつ確実に除去し、かつ新たなステインの付着をも抑制できる歯の美白用セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(A)ラクトフェリンと、(B)ラクトフェリンの分解物及び/又は(C)下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、MはNa又はKを示し、n≧2である。)
で表される直鎖状のポリリン酸塩及び下記一般式(2)
(MPO3m (2)
(但し、MはNa又はKを示し、m≧3である。)
で表される環状のポリリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上のポリリン酸塩とを含有する組成物を、口中で唾液等に希釈されたり、咬合、咀嚼等の機械的な力により除去されることなく歯に良好に保持、固定させるための適用用具と組み合わせて使用することにより、ステイン(歯に付着した茶渋、タバコヤニ等)を除去する効果と、新たなステインの歯への付着を防ぐ効果の両方に優れ、しかも、組成物の使用感が良好で、より長時間歯に装着できて高い効果を発揮できることを知見した。
【0009】
なお、従来、ラクトフェリンは抗菌作用を有する天然素材として、口腔用組成物への応用が提案されている。例えば口腔洗浄・疾患予防用粉末組成物への配合(特許文献7;特開2003−137809号公報)、ラクトフェリンとアルブミン、リゾチーム、プロテアーゼ阻害剤を含む歯周炎並びに歯及び口腔内組織の疾患予防製剤(特許文献8;特表平08−506098号公報)が提案されている。更に、ラクトフェリンの分解物は高い抗菌活性を有するとして、これを含む病原菌の抗菌作用や付着抑制作用を有する製剤(特許文献9;特開平03−220130号公報、特許文献10;特開平07−300425号公報)、ラクトフェリン分解物を金属結合性物質と併用して抗菌性を増強した製剤(特許文献11;特開平05−320067号公報)などが提案されている。
【0010】
しかし、本発明においては、ラクトフェリンをその分解物及び/又は特定のポリリン酸塩と併用することで、ラクトフェリンが適度な分解をすることによりキレート部位が適切な形で露出し、金属キレート力が向上して、優れた歯の着色物(ステイン)除去及び新たな付着の防止効果が発揮されることを見出したもので、このことは本発明者らの新知見である。
【0011】
更に、上記成分を併用した美白用組成物を通常の口腔用組成物の剤型として提案されている練歯磨、水歯磨、液状歯磨、洗口液等の剤型に適用した場合、口中で組成物が唾液により希釈、溶解されるため、歯に10秒間以上高濃度で保持させることは困難であり、ステインの除去、抑制効果が十分に発揮され難い。そこで、本発明者らは、ラクトフェリンとラクトフェリンの分解物及び/又は特定のポリリン酸塩を含む組成物を、唾液の浸入を防いで歯に保持、固定できる専用の適用用具と組み合わせて使用することにより、これら課題をも解決して、使用感が良好で、歯に付着したステインを簡単かつ確実に除去し、新たなステインの付着を抑制できる歯の美白用セットを得ることができることを見い出し、本発明をなすに至ったものである。
【0012】
従って、本発明は、(A)ラクトフェリンと、(B)ラクトフェリンの分解物及び/又は(C)下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、MはNa又はKを示し、n≧2である。)
で表される直鎖状のポリリン酸塩及び下記一般式(2)
(MPO3m (2)
(但し、MはNa又はKを示し、m≧3である。)
で表される環状のポリリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上のポリリン酸塩とを含有する歯の美白用組成物と、この組成物を歯に保持、固定するための歯に脱着可能に装着される適用用具とを備えたことを特徴とする歯の美白用セットを提供する。
【0013】
上記美白用組成物は、更に炭素数3以下の低級アルコールを併用することで、ラクトフェリンとラクトフェリンの分解物及び/又はポリリン酸塩とのステイン内部への浸透性が高まり、より強力なステイン除去効果を発揮することができるため、より好ましい。
【0014】
また、歯に適用する用具としては、水不溶性の素材で作製されたテープ、シート、フィルム、ストリップ、パッチ、アップリケ、歯科用トレー、マウストレー、マウスピース、スポンジ、印象材、パック材、歯列に成型した歯のカバー、又は歯列に成型した歯牙接触面に多数の突起物を有するチューイングブラシが好ましく使用される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の歯の美白用セットは、使用感が良好で、食物の飲食、喫煙、口腔内細菌の産生する有色物質等により付着する、外因性の歯の着色汚れ(ステイン)を簡単かつ確実に除去し、新たなステインの付着を抑制でき、歯の白さを長時間保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の歯の美白用セットは、(A)ラクトフェリンと、(B)ラクトフェリンの分解物及び/又は(C)下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、MはNa又はKを示し、n≧2である。)
で表される直鎖状のポリリン酸塩及び下記一般式(2)
(MPO3m (2)
(但し、MはNa又はKを示し、m≧3である。)
で表される環状のポリリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上のポリリン酸塩とを含有する歯の美白用組成物と、この組成物を歯に保持、固定するための歯に脱着可能に装着される適用用具とを備えたものである。
【0017】
本発明において使用するラクトフェリンとしては、市販のラクトフェリンや、哺乳類(例えば、人、牛、羊、山羊、馬等)の初乳、移行乳、常乳、末期乳等、又はこれらの乳の処理物である脱脂乳、ホエー等から常法(例えば、イオン交換クロマトグラフィー)により分離したラクトフェリン、それらを塩酸、クエン酸等により脱鉄したアポラクトフェリンなどが使用でき、それらの混合物であってもよい。
ラクトフェリンの分離法としては、いくつかの技術が開示されているが、工業的な実用性を考慮すれば、硫酸エステル化した多糖類担体を利用する方法が最も好ましく用いられる。
【0018】
本発明の美白用組成物に配合されるラクトフェリンの組成物全体に占める配合量は、好ましくは0.05〜20質量%の範囲であり、特に好ましくは0.1〜10質量%の範囲である。0.05質量%未満の場合は効果が発現されない場合があり、20質量%より多い場合には味に支障が生じたり、口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の適用が困難になることがある。
【0019】
また、本発明でラクトフェリンと併用するラクトフェリンの分解物としては、上記したラクトフェリンと同種又は異種のラクトフェリンを酸又は酵素で加水分解することによって得ることができるものを使用することができる。
【0020】
ここで、酸による加水分解は、例えばラクトフェリンを0.1〜20質量%、望ましくは5〜15質量%の濃度で水又は精製水等に溶解し、得られた溶液に塩酸、リン酸等の無機酸、又はクエン酸等の有機酸を添加し、溶液のpHを1〜4、望ましくは2〜3に調整する。このようにして得られた溶液は、調整されたpHに応じて、適度な温度で所定時間加熱して加水分解することが好ましい。例えば、pHが1〜2に調整された場合には80〜130℃、望ましくは90〜120℃で、pH2〜4に調整された場合には100〜130℃、望ましくは100〜120℃で、それぞれ1〜120分間、望ましくは5〜60分間加熱することが好ましい。
【0021】
また、酵素により加水分解する場合には、ラクトフェリンを0.5〜20質量%、望ましくは5〜15質量%の濃度になるように水、精製水等に溶解し、得られた溶液を使用される酵素の至適pHに調整して加水分解することが望ましい。
【0022】
使用される酵素は特に制限はなく、具体的にはトリプシン、キモトリプシン、パパイン、ペプシン、酸性プロテアーゼ、パンクレアチン、微生物起源プロテアーゼ、サーモリシン、アルカラーゼ、プロナーゼなどを例示することができる。
【0023】
上記酵素は市販品を使用でき、例えば市販の酵素であるモルシンF(登録商標、盛進製薬社製、至適pH2.5〜3.0)、豚ペプシン(和光純薬社製、至適pH2〜3)、スミチームAP(登録商標、新日本化学社製、至適pH3.0)、アマノM(登録商標、アマノ製薬社製、至適pH3.0)、アマノA(登録商標、アマノ製薬社製、至適pH7.0)、トリプシン(ノボ社製、至適pH8.0)等を単独で又は2種以上を任意に併用してもよい。これらに加えて、例えば市販のエキソペプチダーゼを含有する醤油酵素(田辺製薬社製)を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
使用する酵素の総量は、基質に対して0.1〜5.0質量%の範囲、特に0.5〜3.0質量%の範囲が望ましい。
【0025】
酵素による加水分解条件は、酵素の種類、ラクトフェリンの濃度、pH、温度などによって適宜調整され、具体的には、ラクトフェリンのpHを、使用する酵素の至適pHに応じて調整し、所定の酵素を所望の量添加した後、得られた溶液の温度を15〜55℃、望ましくは30〜50℃で、30〜600分間、望ましくは60〜300分間保持してラクトフェリンを加水分解する。次いで、この溶液をそのまま又は中和した後、酵素を常法により加熱失活することで、加水分解物を得ることができる。
例えばトリプシンでは、ラクトフェリンを1質量%の濃度となるように水に溶解し、0.01質量%のトリプシンを加え、10分〜数時間分解すればよい。加水分解終了後は、トリプシンインヒビターで酵素活性を止めてもよいが、加熱して失活させてもよい。
【0026】
上記方法によって得られた反応液は、常法により冷却し、必要に応じて中和、脱塩、脱色し、得られた溶液をそのまま、又は濃縮して液状製品とし、あるいは濃縮後乾燥して粉末製品とすることができる。
【0027】
なお、上述の加水分解の条件は、厳密なものではなく、製造コスト、例えば、温度、時間、酸又は酵素の種類及び量、反応装置(加圧の有無)等を考慮して適宜条件を設定できる。
【0028】
上記方法によって得られたラクトフェリン分解物は、熱及びpHの変化に対して極めて安定な、種々の分子量を有する分解物の混合物である。
【0029】
上記ラクトフェリン分解物は、ラクトフェリンと併用したときに金属イオン(特に鉄イオン)に対するキレート力を向上させるために好適な分解度を有することが望ましく、具体的にはホルモール滴定による分解度が3〜40質量%、特に5〜20質量%の範囲であることが望ましい。ラクトフェリン分解物としてこのような分解度を有するものを使用することで、本発明の作用効果、特にステイン除去及び新たなステイン付着防止の優れた効果を満足に発揮させることができる。分解度が3質量%未満の場合はラクトフェリンのキレート力を向上させる効果が発現されない場合があり、また40質量%より多い場合にはラクトフェリン分解物自身のキレート力が低下して効果を損なう場合がある。
【0030】
なお、上記分解度(%)は、ケルダール法により試料の全窒素量を、またホルモール滴定法により試料のホルモール態窒素量を測定し、これらの値から次式により算出した値である。
分解度(%)=(ホルモール態窒素量/全窒素量)×100
【0031】
このようなラクトフェリン分解物として、市販品、例えば森永乳業社製bLF−H(F100)などを使用することもできる。
【0032】
ラクトフェリン分解物の組成物全体に占める配合量は、好ましくは0.03〜15質量%の範囲であり、特に好ましくは0.05〜10質量%の範囲である。0.03質量%未満の場合はラクトフェリンのキレート力を向上させる効果が発現されない場合があり、また15質量%より多い場合には味に支障が生じたり、口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の適用が困難になることがある。
【0033】
また、本発明でラクトフェリンと併用するポリリン酸塩としては、下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、MはNa又はKを示し、n≧2である。)
で示されるもの、即ち、重合度n=2のピロリン酸ナトリウムやピロリン酸カリウム、n=3のトリポリリン酸ナトリウムやトリポリリン酸カリウム、n=4のテトラポリリン酸ナトリウムやテトラポリリン酸カリウム、高重合度のメタリン酸ナトリウムやメタリン酸カリウムなどの直鎖状のポリリン酸塩、並びに下記一般式(2)
(MPO3m (2)
(但し、MはNa又はKを示し、m≧3である。)
で示されるもの、即ち、重合度m=3のトリメタリン酸ナトリウムやトリメタリン酸カリウム、m=4のテトラメタリン酸ナトリウムやテトラメタリン酸カリウム、m=6のヘキサメタリン酸ナトリウムやヘキサメタリン酸カリウムなどの環状のポリリン酸塩が使用される。
これらポリリン酸塩は、その1種を単独で又は2種以上を混合して使用し得るが、これらの中では上記式(1)で示される直鎖状のポリリン酸塩が好ましく、特に重合度3≦n≦50の上記式(1)で示される直鎖状のポリリン酸塩がより好適である。
【0034】
上記ポリリン酸塩の組成物全体に占める配合量は、好ましくは0.05〜10質量%の範囲であり、特に好ましくは0.1〜8質量%の範囲である。0.05質量%未満の場合は、ラクトフェリンのキレート力を向上させる効果が発現されない場合があり、また10質量%より多い場合には刺激を感じたり、口中での溶け出しによる違和感が生じて長時間の適用が困難になることがある。
【0035】
更に、本発明の美白用組成物には、更に炭素数3以下の低級アルコールを配合することで、ラクトフェリンとラクトフェリンの分解物及び/又は特定のポリリン酸塩との歯への浸透性が向上して美白効果をより高めることができる。
【0036】
この場合、炭素数3以下の低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールが用いられ、特にエチルアルコール又はプロピルアルコールが好適に使用される。
【0037】
炭素数3以下の低級アルコールの組成物全体に占める配合量は、0.1〜20質量%、特に1〜15質量%が好適である。配合量が0.1質量%に満たないと、ラクトフェリンとラクトフェリンの分解物及び/又は特定のポリリン酸塩とをステインに浸透させる効果が弱く、汚れの除去効果が十分に発揮されないことがあり、20質量%を超えると、適用用具を併用して使用してもなお微量な溶出に伴う不快な使用感や粘膜に刺激を感じる場合がある。
【0038】
本発明の美白用組成物には、上述した成分に加えて、その他のステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤、歯を元の色より白くする歯牙白色化剤、う蝕予防・修復剤、知覚過敏予防・抑制剤、口臭予防・除去・隠蔽剤、歯肉炎予防・改善剤、歯周病予防・改善剤から選ばれる1種又は2種以上の有効成分、薬用成分又は機能性素材を含むことができる。
【0039】
この場合、その他のステイン予防・除去剤、歯石予防・除去剤は、効果を持つ既知の薬剤が使用でき、ステイン又は歯石予防・除去剤としては、ピロリン酸二水素二ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸三ナトリウムなどのリン酸又はその塩、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸などのヒドロキシカルボン酸又はその塩、EDTA、EHDP、コウジ酸又はその塩類、フィチン酸又はその塩類、アスコルビン酸又はその塩類などのキレート剤、ポリビニルピロリドン、フェニル基又はフェノキシ基を持つ総炭素数7〜15のアルコール、炭素数10以下のグリコール、平均分子量200〜20,000のポリエチレングリコール(#200〜20,000)、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、炭酸アパタイト、第三リン酸カルシウム、第四リン酸カルシウム及び第八リン酸カルシウム、ゼオライト、オリゴ糖、bis−O−カルボキシフェニルコハク酸、アミノグアニジン、塩基性ペプチド、ポリオキシエチレン(2モル)アルキル(C=12〜14)スルホコハク酸二ナトリウム、ラウリルスルホコハク酸ナトリウムが好ましく用いられるが、タバコヤニや茶渋汚れに対する除去力や安定性の面から、特に、ピロリン酸二水素二ナトリウム、クエン酸、コウジ酸、フィチン酸、ゼオライトが好適である。
これらのステイン又は歯石予防・除去剤の組成物全体に占める配合量は、好ましくは0.005〜20質量%の範囲で、特に好ましくは0.01〜10質量%の範囲である。配合量が0.005質量%未満の場合は効果が発現されない場合があり、20質量%より多いと、味に支障が生じたり、口中での溶け出しによる違和感が生じて口腔内への長時間の適用が困難になることがある。
【0040】
歯牙白色化剤としては、平均分子量200〜800のポリエチレングリコール(#200〜800)、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコールで代表されるアルコール類、過酸化尿素、過酸化水素等の過酸化物、酸化チタン、タルク、酸化アルミニウム等の白色微粉末無機化合物、シェラック、エチルセルロース、メチルセルロース、オイドラギット等の水不溶性被膜剤が挙げられるが、使用感、安定性の点から、ポリエチレングリコール(#200〜800)、1,3−ブチレングリコール、グリセリンが好ましい。
なお、上記ポリエチレングリコールの平均分子量は化粧品原料基準(第2版注解)記載の平均分子量を示し、平均分子量200〜800のポリエチレングリコール(#200〜800)としては、例えばポリエチレングリコール200(平均分子量190〜210)、ポリエチレングリコール300(平均分子量280〜320)、ポリエチレングリコール400(平均分子量380〜420)、ポリエチレングリコール600(平均分子量570〜630)などが挙げられる。商品によっては、例えばポリエチレングリコール#200等のように、ポリエチレングリコールと数値の間に#がつく場合がある。
【0041】
この場合、組成物全体に占める歯牙白色化剤の配合量は、組成物から歯牙白色化成分が溶出すれば特に制限されないが、上記ポリオール又はアルコール系白色化剤の場合は、溶媒及び/又は保湿剤と兼ねる場合があるため、白色化剤と溶媒及び/又は保湿剤の合計で組成物全体の50〜95質量%、特に80〜95質量%であることが好ましい。過酸化物の場合は、組成物全体の0.1〜30質量%が好ましい。白色微粉末無機化合物と水不溶性被膜剤は単独もしくは組み合わせて使用されるが、いずれの場合も組成物全体の0.1〜80質量%が好ましい。
いずれの歯牙白色化成分においても、上記配合量より少ないと効果が発現されない場合があり、配合量より多いと味に支障が生じたり、異物感や口中での溶け出しによる違和感が生じて口腔内への長時間の適用が困難になることがある。
【0042】
また、ステイン予防・除去効果あるいは歯石予防・除去効果を有する成分と、歯牙白色化効果の両効果を有する成分を配合する場合には、それぞれの目的に応じた量を配合することが望ましいが、両方の効果を発揮させる場合には、各成分ごとに上述した歯牙白色化に好適な配合量の範囲内で配合するのが好ましい。
【0043】
う蝕予防・修復剤としては、効果を持つ既知の薬剤が使用でき、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化錫、フッ化銀などのフッ素イオン供給化合物、更には塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、水酸化カルシウムなどの無機性カルシウム化合物や、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、マロン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセリン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、フィチン酸カルシウムなどの有機性カルシウム化合物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチームなどの酵素剤、クロルヘキシジン、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウムなどの既知の殺菌・抗菌剤を1種又は2種以上組み合わせて使用することができるが、安定性の点からフッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、デキストラナーゼが好ましい。
これらの薬剤のうち、フッ素イオン供給物やカルシウム化合物は、健全な歯に用いる場合には脱灰抑制によるう蝕予防効果、脱灰を受け既に初期う蝕を有する歯に用いる場合には、再石灰化によるう蝕修復効果を発揮する。また、酵素や殺菌・抗菌剤は、う蝕の原因となる歯垢を分解除去する効果を発揮する。
【0044】
上記う蝕予防・修復剤の配合量は、好ましくは組成物全体の0.005〜20質量%の範囲で、特に好ましくは0.05〜10質量%の範囲である。0.005質量%未満の場合は効果が発現されない場合があり、また20質量%より多い場合には口中での溶け出しによる違和感が生じて口腔内への長時間の適用が困難になることがある。
【0045】
知覚過敏予防・抑制剤としては、効果を持つ既知の成分が使用でき、乳酸アルミニウム、硝酸カリウム、塩化亜鉛、塩化ストロンチウム、フッ化ジアミン銀、ホルムアルデヒド、ピロクトンオラミンなどの薬剤を1種又は2種以上組み合わせて配合できるが、安定性の点で乳酸アルミニウム、硝酸カリウムが好ましい。これらの成分は健全な歯に用いる場合には、知覚過敏予防効果、象牙細管が露出・開口した歯に用いる場合には、知覚過敏抑制効果を発揮する。
知覚過敏予防・抑制剤の配合量は、好ましくは組成物全体の0.1〜20質量%の範囲で、特に好ましくは0.5〜10質量%の範囲である。0.1質量%未満の場合は効果が発現されないことがあり、20質量%より多い場合には味に支障が生じたり、口中での溶け出しによる違和感が生じて口腔内への長時間の適用が困難になることがある。
【0046】
口臭予防・除去・隠蔽剤としては、効果を持つ既知の成分が使用でき、クロルヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールなどの殺菌・抗菌剤、ローズマリー、チョウジ、セージ、タイム、オウゴンなどの生薬抽出物、グルコン酸銅、クエン酸銅、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛などの銅、亜鉛化合物、メントール、アネトール、ペパーミント油、スペアミント油などの香料成分を1種又は2種以上組み合わせて使用できるが、効果と安定性の点でトリクロサン、ローズマリー、グルコン酸銅、メントールが好ましい。
殺菌・抗菌剤は口臭の原因菌を取り除いて口臭を予防する効果があり、生薬抽出物や銅、亜鉛化合物は予防効果に加えて臭い物質を分解、消臭する効果を発揮する。また、香料成分には殺菌・抗菌効果に加えて不快な臭いをマスキングする効果を発揮する。
【0047】
口臭予防・除去・隠蔽剤の配合量は、好ましくは組成物全体の0.001〜10質量%の範囲で、特に好ましくは0.005〜5質量%の範囲である。0.001質量%未満の場合は効果が発現されないことがあり、10質量%より多い場合には強い臭いや味、口中での溶け出しによる違和感が生じて口腔内への長時間の適用が困難になることがある。
【0048】
歯に適用して歯肉炎や歯周炎などの歯周疾患を予防・改善する薬用成分としては、歯面から流出し歯周ポケットに浸入して効果を持つ既知の成分が使用でき、クロルヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールなどの殺菌・抗菌剤、トラネキサム酸、ε−アミノカプロン酸、オオバク抽出物、アラントイン、ジヒドロコレスタノール、グリチルリチン酸類、グリチルレチン酸、ビサボロール、塩化ナトリウムなどの抗炎症、止血剤を1種又は2種以上組み合わせて使用することができるが、歯頸部近辺の歯肉組織への有効性の点から塩化セチルピリジニウム、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサンが好ましい。
上記薬用成分の配合量は、組成物全体の好ましくは0.001〜5質量%の範囲で、特に好ましくは0.005〜3質量%の範囲である。0.001質量%未満の場合は効果が発現されない場合があり、5質量%より多い場合には口中での溶け出しによる違和感が生じて口腔内への長時間の適用が困難になることがある。
【0049】
本発明の歯の美白用セットは、上述の有効成分、薬用成分又は機能性素材等を含む歯牙美白用組成物を、ぺースト状、クリーム状、ゲル状、ジェル状、ゾル状、液状、泡状、粉末状等の各種剤型に調製し、これを歯に確実に適用、固定することができ、かつ、使用中に組成物が唾液等により希釈されたり、咬合、咀嚼、ブラッシング等の機械的な力により歯から除去されることを防ぐための専用の適用用具に固定して調製されるものであるが、本発明にかかわる上記美白用組成物には、更にその形態等に応じて、上述した成分に加えて適宜な他の任意成分を配合することができる。
【0050】
例えば、美白用組成物をゲル化、ぺースト化して歯への塗布性を高めたり、あるいは歯との粘着性を高める目的で各種のゲル化剤が使用される。この場合、ゲル化剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ジェランガム、ネイティブジェランガムなどのガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイドなどの合成粘結剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガム、ラポナイトなどの無機粘結剤等の1種又は2種以上を配合し得る。
【0051】
この場合、口中での粘りや溶け出しが少なく使用感に優れたゲル化剤として、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、キサンタンガム、ネイティブジェランガム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンが好適に使用される。特に、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カラゲナン、キサンタンガム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンが望ましい。
【0052】
上記ゲル化剤の配合量は、美白用組成物の固定力だけで適用用具が歯に付着、固定することが望ましいため、組成物全体の0.1〜15質量%が好適であり、特に0.5〜10質量%が望ましい。0.1質量%未満の場合には粘着力が発揮されず、適用用具に固定しにくく、15質量%より多いとゲル化剤が十分に溶けきらず、組成物が不均一になるだけでなく、有効成分、薬用成分又は機能性素材の効果発現を阻害する場合がある。
【0053】
更に、美白用組成物の乾燥を防ぐと共に、使用感を高める目的で、保湿剤として、ソルビット、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール等の1種又は2種以上を配合し得る。なお、保湿剤の中には、歯牙白色化効果を有する成分も含まれており、その場合は両方の効果を発揮させることもできる。上記保湿剤の配合量は、組成物全体の0.5〜95質量%、特に1〜90質量%とすることができる。
【0054】
また、歯の洗浄効果を高めたり、香料などの乳化、分散などの目的で、界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上を併用することもできる。
【0055】
この場合、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウムなどのN−アシルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウムなどのN−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルPOE硫酸ナトリウム、ラウリルPOE酢酸ナトリウム、ラウリルPOEリン酸ナトリウム、ステアリルPOEリン酸ナトリウム等が用いられる。
【0056】
ノニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセリル、ラウリン酸デカグリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ミリスチン酸モノ又はジエタノールアミドなどの脂肪酸エタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、C12〜20のアルキルグルコシド等が用いられる。
【0057】
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシンなどのN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が用いられる。
【0058】
なお、界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.05〜30質量%、特に0.1〜10質量%が好ましい。
【0059】
本発明の美白用組成物には、更に、メントール、アネトール、カルボン、ペパーミント油、スペアミント油などの香料、安息香酸又はそのナトリウム塩、パラベン類などの防腐剤、赤色3号、赤色104号、黄色4号、青色1号、緑色3号、雲母チタン、弁柄などの色素又は着色剤、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、グリチルリチン、アスパルテームなどの甘味剤等を配合し得る。なお、これら任意成分の配合量は本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0060】
また、本発明の美白用組成物は、歯へ適用後にそのままブラッシングすることで歯磨剤として使用することもできる。このような歯磨剤として使用する場合には、研磨剤を配合することが好ましい。かかる研磨剤としては、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、ベントナイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化チタン、結晶セルロース、ポリメタクリル酸メチル、その他の合成樹脂等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上が使用される。研磨剤の配合量は組成物全体の0.5〜70質量%、特に1〜50質量%が好ましい。
【0061】
また、本発明の歯の美白用セットの適用前に、研磨剤入りの歯磨剤でブラッシングして歯牙表面の軽微な汚れを落とすことは、美白用組成物中の有効成分、薬用成分又は機能性素材の歯牙表面への密着、浸透性がより促進されるため、特に好ましい用法である。この場合、本発明の歯の美白用セットの適用前のブラッシングに使用する歯磨剤は、研磨剤が入っていれば歯磨剤の成分は特定されるものではないが、本発明の歯の美白用セットの使用形態が、使用時に美白用組成物を適用用具に固定させてから歯に着用する用法の場合には、上記研磨剤を本発明にかかわる美白用組成物に配合することにより、この研磨剤を配合した美白用組成物を、本発明の歯の美白用セットの適用前のブラッシングに使用する歯磨剤として兼用することもできる。
【0062】
なお、本発明にかかわる美白用組成物のpHは、口腔内及び人体に安全性の上で問題ない範囲であれば、特に限定されるものではないが、望ましくはpH4〜10であり、更に望ましくは5.5〜9である。pH4未満の場合には適用時間によっては脱灰の懸念があり、pH10を超える場合には、皮膚や粘膜に触れた場合、炎症を起こすなどの懸念がある。pH調整剤として、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等を適量配合し得る。
【0063】
本発明の歯の美白用セットは、予め美白用組成物を塗布、塗膏、接着、吸着、積層、含浸、噴霧などの手段により、水不溶性素材で作られたテープ、シート、フィルム、マウストレー、ストリップ等の用具に固定させて、そのまま歯に着用できるようにした方式、美白用組成物とマウスピース、スポンジ、印象材、パック材、歯列に成型した歯のカバー等の適用用具を別途用意して、使用時に組成物を用具に固定した後に歯に着用する方式、美白用組成物を歯に付着させた後に用具で被覆する方式などのいずれにおいても、目的を達成することができる。
【0064】
美白用組成物を歯に保持、固定するための歯に脱着可能に装着される適用用具は、上記美白用組成物の歯への確実な適用、固定を補助するとともに、使用中の美白用組成物の歯肉、舌及び口腔粘膜への溶出を抑え、不快な使用感や唾液の誘発を防ぎ、更に唾液の浸入や咬合、咀嚼、その他物理的な刺激による美白用組成物の希釈や歯からの離脱を防ぐ目的で使用される。用具の素材及び形状については、上記目的を達成できるものであれば特に限定されるものではないが、水不溶性の素材で作られたテープ、シート、フィルム、ストリップ、パッチ、アップリケ、歯科用トレー、マウストレー、マウスピース、スポンジ、印象材、パック材、歯列に成型した歯のカバー、又は歯列に成型した歯牙接触面に多数の突起物を有するチューイングブラシが好適に用いられる。
【0065】
上記適用用具の厚みは、口腔着用時に違和感のない0.01〜5mmが好ましく、特にテープ、シート、フィルム、ストリップ、パッチ、アップリケについては、厚みが0.01〜2mmであることが望ましい。
【0066】
上記適用用具の素材については、口腔適用時のフィット感に優れ、唾液の発生を抑えることで美白用組成物の長時間適用を可能にするポリエチレン、発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン、パルプ、綿、絹、紙、金属箔等の1種又は2種以上を用いるのが好ましく、特にポリエチレン、発泡ポリエチレン、ポリプロピレン、発泡ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨンがよい。
更に、口腔粘膜及び舌と接する側の材質を親水性、吸水性の高い素材、例えばレーヨン、パルプ、綿、絹、紙等を使った織布又は不織布で構成することにより、唾液を吸収し、保持できるため、使用感に優れることから好ましい。この場合、歯に貼付される美白用組成物を保持する側には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン等の水不透過性フィルムを組み合わせることで、美白用組成物の適用用具への吸着、浸透を防ぐこともできる。
【0067】
一方、シリコーンゴム、天然ゴム等の可塑性樹脂や酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂からなるトレー及びマウスピースは、変形の自由度が高く、使用者の歯列、歯型にフィットさせ易いため、密着性、固定性に優れており、より長時間の歯牙貼付用ゲル組成物の歯への適用を目的とする場合に適している。
【0068】
なお、本発明の歯の美白用セットの歯への適用回数、時間等は適宜選定されるが、通常、1日1〜4回、特に1〜2回で、1回1〜120分、特に1〜60分であることが好ましいが、就寝中に適用することも可能である。
【実施例】
【0069】
以下、調製例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に制限されるものではない。なお、各例中の%はいずれも質量%である。また、下記の例で、PEはポリエチレン、PPはポリプロピレン、PETはポリエチレンテレフタレートを示し、平均分子量は重量平均分子量である。
【0070】
[調製例1]ラクトフェリン分解物の調製
牛乳から分離したままの市販のラクトフェリン(ベルギーのオレオフィナ製)を5%の濃度で精製水に溶解し、1M塩酸を添加してpHを4に調整し、60℃で60分間加熱して加水分解を行い、次いで溶液を冷却し、1M水酸化ナトリウム溶液でpHを7に調整し、凍結乾燥して粉末状のラクトフェリン分解物を得た。
【0071】
上記ラクトフェリン分解物の分解率(%)は、下記方法により算出した。
当該ラクトフェリン分解物の0.1%水溶液5mLを試料として、ケルダール法により、指示薬にブロモクレゾールグリーン・メチルレッド混合試液を用いて0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液で滴定して、当該ラクトフェリン分解物中の全窒素量を測定した。次に、同じラクトフェリン分解物の0.1%水溶液10mLを試料として、ホルモール滴定法により、試料液及びブランク液のpHを8.4にするのに要する0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液の滴定量(mL)を測定して、当該ラクトフェリン分解物中のホルモール態窒素量を算出し、両者の結果から、当該ラクトフェリン分解物中の全窒素量に対する百分率を、次式から算出した。得られたラクトフェリン分解物の分解度は4%であった。
分解率(%)=100×(A/B)
ここで、Aはホルモール態窒素量、Bは全窒素量を示す。
【0072】
[調製例2]ラクトフェリン分解物の調製
牛乳から分離したままの市販のラクトフェリン(ベルギーのオレオフィナ製)を5%の濃度で精製水に溶解し、1M塩酸を添加してpHを3に調整し、130℃で5分間加熱して加水分解を行い、次いで溶液を冷却し、1M水酸化ナトリウム溶液でpHを7に調整し、凍結乾燥して粉末状のラクトフェリン分解物を得た。このラクトフェリン分解物の分解度は6%であった(調製例1と同一の方法により測定)。
【0073】
[調製例3]ラクトフェリン分解物の調製
牛乳から分離したままの市販のラクトフェリン(ベルギーのオレオフィナ製)を5%の濃度で精製水に溶解し、1M塩酸を添加してpHを2に調整し、120℃で15分間加熱して加水分解を行い、後に冷却して、ラクトフェリン分解物溶液(ラクトフェリン分解物濃度:5%)を得た。このラクトフェリン分解物の分解度は9%であった(調製例1と同一の方法により測定)。
【0074】
[調製例4]ラクトフェリン分解物の調製
牛乳から分離したままの市販のラクトフェリン(ベルギーのオレオフィナ製)1kgを精製水9kgに溶解し、2Mクエン酸水溶液を添加してpHを2.5に調整し、市販の豚ペプシン(1:10,000。和光純薬工業社製)30g(基質に対する酵素量3質量%)を添加して均一に混合し、37℃に180分間保持し、85℃で10分間加熱して酵素を失活させ、後に冷却して、ラクトフェリン分解物溶液(ラクトフェリン分解物濃度:10%)約10kgを得た。このラクトフェリン分解物の分解度は11.3%であった(調製例1と同一の方法により測定)。
【0075】
[調製例5]ラクトフェリン分解物の調製
乳糖から分離したままの市販のラクトフェリン(ベルギーのオレオフィナ製)150gを精製水850gに溶解し、得られた溶液に1Mクエン酸水溶液を添加してpHを3に調整し、130℃で60分間加熱して加水分解を行った。次いで溶液を冷却し、1M水酸化ナトリウム溶液でpHを7に調整した後、濾過し、脱塩し、凍結乾燥して、粉末状のラクトフェリン分解物約45gを得た。このラクトフェリン分解物の分解度は12%であった(調製例1と同一の方法により測定)。
【0076】
[調製例6]ラクトフェリン分解物の調製
牛乳から分離したままの市販のラクトフェリン(ベルギーのオレオフィナ製)80gを精製水1,000gに溶解し、1M塩酸を添加してpHを2に調整し、115℃で10分間加熱して加水分解を行い、次いで溶液を冷却し、1M水酸化ナトリウム溶液でpHを7に調整し、凍結乾燥して粉末状のラクトフェリン分解物約77gを得た。このラクトフェリン分解物の分解度は15%であった(調製例1と同一の方法により測定)。
【0077】
[調製例7]ラクトフェリン分解物の調製
牛乳から分離したままの市販のラクトフェリン(ベルギーのオレオフィナ製)150gを精製水1,000gに溶解し、1M水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを6に調整した後、60℃で10分間加熱殺菌した。この溶液を50℃に冷却保持し、市販のトリプシン(ノボ社製)を15g及びペプチターゼを含有する市販の醤油酵素(田辺製薬社製)30g(基質に対する総酵素量30質量%)を添加して5時間反応させた。次いで、80℃で10分間加熱して酵素を失活させ、凍結乾燥して、粉末状のラクトフェリン分解物約145gを得た。このラクトフェリン分解物の分解度は38%であった(調製例1と同一の方法により測定)。
【0078】
[実施例1〜20、比較例1〜24]
表1に示す組成の歯牙美白用組成物1〜20及び比較用組成物21〜24を下記方法で調製した。
ラクトフェリン、ラクトフェリン分解物、ポリリン酸塩、サッカリンナトリウム、pH調整剤を水に常温で撹拌溶解させ、別途、ポリエチレングリコール400にキサンタンガムを分散した液を投入して常温で均一になるまで混合した後に、エタノール、香料、ラウリル硫酸ナトリウムを加えて4kPaまで減圧して、均一混合する方法にて調製した。
この組成物を厚さ0.3mmのPP製不織布(出光石油化学(株)製RN2030)の表面に、ステンレス製のヘラで製剤の厚みが約1mmになるように製剤を塗膏して、製剤の塗膏された不織布を1cm×1cmの正方形にカットして、表2に示す実施例1〜20の歯牙貼付剤及び比較例1〜4の歯牙貼付剤を作製した。また、上述の方法で調製した歯牙美白用組成物(実施例1〜20)のそれぞれについて、貼付剤に加工せずにゲル製剤のまま以下の試験に使用したものを、表3に示す比較例5〜24とした。
【0079】
実施例及び比較例の歯牙貼付剤について、下記方法で評価を行った。結果を表2,3に示す。
【0080】
[歯の着色汚れ除去及び着色汚れ再付着抑制効果の試験方法(モデル試験)]
未処置のハイドロキシアパタイトペレット(直径7mm×高さ3mm、ペンタックス(株)製APP−735)表面の色を基準色として色差計(日本電色工業(株)製SE2000)で測定、その値をL0とした。このペレットを30分間,37℃で唾液に浸漬した後、イオン交換水で洗浄し、表面の水分を取り除いた。予め調製したカルシウムイオン0.74mM、リン酸イオン2.59mM、NaCl 50mMを混合した再石灰化液で次に示す3種類の浸漬液を作り、先のペレットに対し、0.3%アルブミン再石灰化溶液→1%日本茶+1%紅茶再石灰化溶液→0.3%クエン酸鉄アンモニウム再石灰化溶液で1時間ずつ繰り返し浸漬する操作を30回繰り返し、常温で1日風乾した後、流水で洗浄し、再び風乾して完成した着色ペレット表面の色を測定し、その値をL1とした。この着色ペレットの表面に、実施例1〜20及び比較例1〜4の歯牙貼付剤、及び比較例5〜24のゲル製剤を、手指を使い50gfの力で貼付又は塗布して、37℃の恒温水槽中で10分間浸漬させたのち、貼付剤を剥がして、ペレット上に残った製剤を流水で洗浄、乾燥させ、再度色を測定し、その値をL2とし、次式により着色汚れ除去率を算出し、着色汚れ除去効果を評価した。
着色汚れ除去率(%)=[(L1−L2)/(L1−L0)]×100
こうして得られた除去率をもとに、下記基準による評点付けを行った。
着色汚れ除去率(%) ステイン除去効果
85%以上 ◎
70〜84% ○
69%以下 ×
【0081】
また、30分間、37℃で唾液に浸漬した後、イオン交換水で洗浄し、表面の水分を取り除いた未処置のペレットに対し、a)実施例1〜20及び比較例1〜4の歯牙貼付剤、及び比較例5〜24のゲル製剤を、手指を使い50gfの力で貼付又は塗布して、37℃の恒温水槽中で10分間浸漬させたのち、貼付剤を剥がして、ペレット上に残った製剤を流水で軽く洗浄→b)0.3%アルブミン再石灰化溶液→c)1%日本茶+1%紅茶再石灰化溶液→d)0.3%クエン酸鉄アンモニウム再石灰化溶液で各1時間ずつ繰り返し浸漬するa)〜d)の操作を30回繰り返し、常温で1日風乾した後、流水で洗浄し、再び風乾して完成した着色ペレット表面の色を測定し、その値をL3とし、次式により着色汚れ再付着抑制率を算出し、着色汚れ再付着抑制効果を算出した。
着色汚れ再付着抑制率(%)=100−[(L3−L0)/(L0)]×100
こうして得られた抑制率をもとに、下記基準による評点付けを行った。
着色汚れ再付着抑制率(%) ステイン防止効果
80%以上 ◎
70〜79% ○
69%以下 ×
【0082】
歯牙美白用組成物1〜20及び比較用組成物21〜24の各組成を表1に示し、これらを歯牙貼付剤に加工してペレットに適用した実施例1〜20及び比較例1〜4のステイン除去効果及びステイン防止効果を表2に示す。
【0083】
更に、表1に示す組成の歯牙美白用組成物1〜20を、貼付剤に加工せずにゲル製剤のままペレットに適用した比較例5〜24のステイン除去効果及びステイン防止効果の結果を表3に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
表2の結果より、ラクトフェリンとラクトフェリン分解物及び/又はポリリン酸塩とを併用した歯牙貼付剤(実施例1〜20)は、口腔内適用時の唾液による組成物の希釈や流出を想定した、ステイン除去及び新たなステインの付着抑制試験において、ラクトフェリン分解物及びポリリン酸塩を含まない歯牙貼付剤(比較例1)、ラクトフェリンを含まない歯牙貼付剤(比較例2,3)、ラクトフェリン、ラクトフェリン分解物及びポリリン酸塩のいずれをも含まない歯牙貼付剤(比較例4)に比べて、ステインの除去及び付着抑制効果が高く、更に、その効果は、例えば実施例13と14の比較、及び実施例18と19の比較から明らかなように、低級アルコールを併用すると一層高まることが確認できた。
【0088】
また、実施例1〜20に使用した歯牙美白用組成物(表1のNo.1〜20)を、貼付剤に加工せずにゲル製剤のまま適用した場合(比較例5〜24)には、十分なステイン除去及び付着抑制効果が得られないことを、併せて確認した。
【0089】
[実施例21、比較例25]
表1に示す組成の歯牙美白用組成物9を、ラクトフェリン、ラクトフェリン分解物、ポリリン酸塩、サッカリンナトリウム、pH調整剤を水に常温で撹拌溶解させ、別途、ポリエチレングリコール400にキサンタンガムを分散した液を投入して常温で均一になるまで混合した後に、エタノール、香料、ラウリル硫酸ナトリウムを加えて4kPaまで減圧して、均一混合する方法にて調製した。この組成物を厚さ0.3mmのPP製不織布(出光石油化学(株)製RN2030)と、厚さ50μmのPET製フェイシングフィルム(商品名:セラピールBK、東洋メタライジング(株)製)の間に挟み、のし棒でフェイシングフィルムを含む歯牙貼付剤全体の厚みが約1.0mmになるよう組成物を展延して幅60mm(上辺)、45mm(下辺)×高さ25mmの台形にカットし、実施例21の歯牙貼付剤を作製した。
比較例として、表1の比較用組成物24を同じ方法で調製し、実施例21と同じPP製不織布とPET製フェイシングフィルムを使い、実施例21と同様の方法で同じサイズ、形状に加工した比較例25の歯牙貼付剤を作製した。
得られた歯牙貼付剤を下記方法で評価した。
【0090】
[ヒト使用による歯牙ステイン除去効果の評価]
上顎中切歯及び側切歯の計4本が全て健常歯であり、唇側に外因性のステインと思われる褐色〜黒褐色の汚れが付着している喫煙者10人をパネルに選別し、予め市販の歯磨剤を使い、各自の方法により歯磨きを行い、この着色汚れ(ステイン)が除去できないことを確認した。その直後に、上顎中切歯及び側切歯の計4本の歯に付いた水分をティッシュペーパーで軽くふき取り、唇面の色調を色差計(日本電色工業(株)製SE2000+口径4mmペンセンサー)を使った色差Lab測色法によるL値で測定し、4本の歯の平均値を貼付剤使用前の個人の歯の色調(L00)とした。
10人のパネルを5人ずつ、L00の平均値が等しくなるように2つの群に層別し、それぞれ試験群21、比較群25とした。
【0091】
試験群21のパネルは実施例21の貼付剤を、比較群25のパネルは比較例25の貼付剤を、それぞれ15分間、上顎前歯4本に貼付(貼付剤の半分の高さで折り返して対象歯の表裏両面に貼付)した後に、貼付剤を剥がして、ブラッシングを行わずに水洗口のみ行い、歯に残った製剤を取り除いた。更に、歯の表面に付いた水分をティッシュペーパーで軽くふき取り、唇面の色調を、貼付剤使用前と同様に色差計で測定し、4本の歯の平均値を貼付剤使用後の個人の歯の色調(L11)とし、下式によりパネルごとの貼付剤使用前後の歯の色調の変化(△L)を算出した。
△L=L11−L00
こうして得られた、試験群21及び比較群25の各パネル5人の△L値を平均化した値を、各群ごとの歯牙ステイン除去効果として、下記基準による評点付けを行った。
△L値(平均値) 歯牙ステイン除去効果
7.0以上 ○
3.5〜6.9 △
3.4以下 ×
実施例21及び比較例25の使用による歯牙ステイン除去効果の結果を表4に示す。
【0092】
【表4】

【0093】
以上の結果から、ラクトフェリンとラクトフェリン分解物を含む歯牙貼付剤は、これらを含まない貼付剤を使った場合に比べて、ヒト使用試験で歯に付着したステインを除去して歯を白くする効果が高いことを確認した。
【0094】
次に、下記実施例22〜33の歯の美白用セットを上記と同様に調製して評価した結果、歯の着色汚れ除去及び着色汚れ再付着抑制効果に優れ、かつ歯に付着したステインを除去して歯を白くする効果が高いことが確認された。
【0095】
[実施例22]
下記に示す歯牙美白用組成物(A)を、厚さ0.35mmの発泡PE製シート(欧州ALVEO社製TEE#040035)に塗膏させた歯牙貼付用歯磨剤(使用方法:貼付後に剥がしてブラッシング)
歯牙美白用組成物(A)
ラクトフェリン(森永乳業社製MLF1) 20.0%
ラクトフェリン分解物 0.03
(森永乳業社製bLF−H(F100)、分解度10%)
エタノール(日本薬局方無水エタノール) 0.1
グリセリン 25.0
無水ケイ酸 15.0
プロピレングリコール 3.0
ラウリル硫酸ナトリウム 2.0
ヒドロキシエチルセルロース 1.5
アルギン酸ナトリウム 1.5
メチルパラベン 0.5
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
精製水 バランス
計 100.0%
【0096】
[実施例23]
下記に示す歯牙美白用組成物(B)を、厚さ0.4mmのレーヨン製不織布(日本バイリーン社製TP−104N)に塗膏させた歯牙貼付用シート(使用方法:そのまま歯にシートを貼付して適用)
歯牙美白用組成物(B)
ラクトフェリン(森永乳業社製MLF1) 0.05%
ラクトフェリン分解物(調製品、分解度6%) 15.0
エタノール(日本薬局方無水エタノール) 1.0
ソルビット 20.0
グリセリン 20.0
ゼオライト 10.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 2.0
N−ラウロイルサルコシンナトリウム 1.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
安息香酸ナトリウム 0.5
メチルパラベン 0.1
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
精製水 バランス
計 100.0%
【0097】
[実施例24]
下記に示す歯牙美白用組成物(C)を、厚さ0.05mmのPE製フィルム(東セロ社製トーセロTUX)に塗膏した歯牙貼付用シート(使用方法:そのまま歯にフィルムを貼付して適用)
歯牙美白用組成物(C)
ラクトフェリン(森永乳業社製MLF1) 10.0%
ピロリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製) 0.05
プロピルアルコール 1.0
ソルビット 30.0
酸化アルミニウム 5.0
プロピレングリコール 3.0
カラゲナン 3.0
ポリオキシエチレン(100モル)硬化ヒマシ油 2.0
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
イソプロピルメチルフェノール 0.05
香料 1.2
サッカリンナトリウム 0.1
精製水 バランス
計 100.0%
【0098】
[実施例25]
下記に示す歯牙美白用組成物(D)を、厚さ0.4mmのPET製不織布(シンワ社製7840−P)に塗布した歯牙貼付用シート(使用方法:そのまま歯にシートを貼付して適用)
歯牙美白用組成物(D)
ラクトフェリン(森永乳業社製MLF1) 1.0%
トリポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製) 0.1
エタノール 17.0
プロピルアルコール 3.0
グリセリン 20.0
キサンタンガム 2.0
カラゲナン 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
N−ラウロイルサルコシンナトリウム 0.5
ミリスチン酸ジエタノールアミド 0.5
グルコン酸クロロヘキシジン 0.01
香料 1.5
サッカリンナトリウム 0.1
精製水 バランス
計 100.0%
【0099】
[実施例26]
下記に示す歯牙美白用組成物(E)を、厚さ0.5mmのPP/PEフィルム/レーヨン製3層不織布(出光石油化学(株)RN2030/厚さ20μm低密度PEフィルム/日本バイリーン社製試作レーヨン不織布、貼り合せ加工:シンコーラミ工業社)に塗布した歯牙貼付用シート(使用方法:そのまま歯にシートを貼付して適用)
歯牙美白用組成物(E)
ラクトフェリン(森永乳業社製MLF1) 8.0%
ラクトフェリン分解物(調製品、分解度6%) 5.0
トリメタリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製) 5.0
エタノール 1.0
キシリトール 10.0
ポリオキシエチレン(60モル)硬化ヒマシ油 1.0
キサンタンガム 1.0
フッ化ナトリウム 0.2
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
精製水 バランス
計 100.0%
【0100】
[実施例27]
下記に示す液状歯牙美白用組成物(F)を、含浸させた厚さ0.8mmのPET/PEフィルム/レーヨン+PP3層不織布製歯型カバー(日本バイリーン社製LMW−9004/厚さ30μm低密度PEフィルム/日本バイリーン社製EW−4070、成型加工:ニッポー社)(使用方法:そのまま歯にカバーをはめ込んで適用)
液状歯牙美白用組成物(F)
ラクトフェリン(森永乳業社製MLF1) 2.0%
トリポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製) 10.0
エタノール 5.0
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン 1.0
グリコール(プルロニックF−127、PO:EO=67:196)
キサンタンガム 1.0
塩化セチルピリジニウム 0.05
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
精製水 バランス
計 100.0%
【0101】
[実施例28]
下記に示す歯牙美白用組成物(G)と、厚さ0.3mmのPP製フィルム(東セロ社製トーセロOP)との組み合わせ(使用方法:使用時にぺースト状組成物を歯に塗布し、その上からフィルムシートで被覆して適用)
歯牙美白用組成物(G)
ラクトフェリン(森永乳業社製MLF1) 2.0%
ラクトフェリン分解物(調製品、分解度3%) 7.0
ソルビット 30.0
無水ケイ酸 20.0
プロピレングリコール 3.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 2.0
ヒドロキシエチルセルロース 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
トリクロサン 0.1
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
精製水 バランス
計 100.0%
【0102】
[実施例29]
下記に示す液状歯牙美白用組成物(H)を含浸させた歯列形に切込みを入れたスポンジ(使用方法:そのまま歯にスポンジをはめ込むか、スポンジを咬んで適用)
液状歯牙美白用組成物(H)
ラクトフェリン(森永乳業社製MLF1) 18.0%
ラクトフェリン分解物 15.0
(森永乳業社製bLF−H(F100)、分解度10%)
エタノール 15.0
ソルビット 20.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
N−ラウロイルサルコシンナトリウム 1.0
過酸化水素 1.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5
香料 0.5
サッカリンナトリウム 0.1
精製水 バランス
計 100.0%
【0103】
[実施例30]
下記に示す泡状歯牙美白用組成物(I)と、シリコーンゴム製マウストレー(米国Cramer Products社製Mouthpiece)との組み合わせ(使用方法:使用時に泡状組成物をマウストレーに盛り上げ、咬んで適用)
泡状歯牙美白用組成物(I)
ラクトフェリン(森永乳業社製MLF1) 1.0%
ラクトフェリン分解物 1.0
(森永乳業社製bLF−H(F100)、分解度10%)
エタノール 3.0
ラウリル硫酸ナトリウム 3.0
ミリスチン酸ジエタノールアミド 1.0
カルボキシビニルポリマー 0.5
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7
香料 1.0
ステビオサイド 0.5
精製水 バランス
計 100.0%
【0104】
[実施例31]
下記に示す練歯磨状歯牙美白用組成物(非水系)(J)と、個人の歯型に成型して使う熱可塑性エチレン−酢酸ビニル共重合体製マウストレー(ニッポー(株)試作品)との組み合わせ(使用方法:使用時に練歯磨状組成物をマウストレーに充填し、咬んで適用)
練歯磨状歯牙美白用組成物(非水系)(J)
ラクトフェリン(森永乳業社製MLF1) 8.0%
ラクトフェリン分解物 2.0
(森永乳業社製bLF−H(F100)、分解度10%)
濃グリセリン 43.0
ポリエチレングリコール400 23.5
無水ケイ酸 15.0
ハイドロキシアパタイト(平均粒径10μm) 5.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 3.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.3
香料 0.2
計 100.0%
【0105】
[実施例32]
下記に示す歯牙美白用組成物(非水系)(K)を埋没させた天然ゴム製チューイングブラシ(新日本ゴム(株)製チューイングブラシA)(使用方法:そのまま歯でチューイングブラシを咬んで適用)
歯牙美白用組成物(非水系)(K)
ラクトフェリン(森永乳業社製MLF1) 0.05%
ラクトフェリン分解物 0.03
(森永乳業社製bLF−H(F100)、分解度10%)
ピロリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製) 0.01
エタノール 0.1
ポリエチレングリコール400 57.81
1、3−ブチレングリコール 26.0
ヒドロキシプロピルセルロース−L 15.0
ポリビニルピロリドン 1.0
計 100.0%
【0106】
[実施例33]
下記に示す粉末状歯牙美白用組成物(L)を練り込んだ粘土状のアルギン酸印象材(ニッシン社製アルフレックス)(使用方法:そのまま歯で印象材を咬んで適用)
粉末状歯牙美白用組成物(L)
ラクトフェリン(森永乳業社製MLF1) 20.0%
ラクトフェリン分解物(調製品、分解度4%) 15.0
トリポリリン酸ナトリウム(太平化学産業(株)製) 10.0
無水ケイ酸 20.0
粉末香料 3.0
粉末エタノール(エタノール分:30.5%) バランス
(佐藤食品工業社製ウォッカタイプ)
計 100.0%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ラクトフェリンと、(B)ラクトフェリンの分解物及び/又は(C)下記一般式(1)
n+2n3n+1 (1)
(但し、MはNa又はKを示し、n≧2である。)
で表される直鎖状のポリリン酸塩及び下記一般式(2)
(MPO3m (2)
(但し、MはNa又はKを示し、m≧3である。)
で表される環状のポリリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上のポリリン酸塩とを含有する歯の美白用組成物と、この組成物を歯に保持、固定するための歯に脱着可能に装着される適用用具とを備えたことを特徴とする歯の美白用セット。
【請求項2】
歯の美白用組成物が、更に炭素数3以下の低級アルコールを含む請求項1記載の歯の美白用セット。
【請求項3】
適用用具が、水不溶性の素材で作製されたテープ、シート、フィルム、ストリップ、パッチ、アップリケ、歯科用トレー、マウストレー、マウスピース、スポンジ、印象材、パック材、歯列に成型した歯のカバー、又は歯列に成型した歯牙接触面に多数の突起物を有するチューイングブラシである請求項1又は2記載の歯の美白用セット。

【公開番号】特開2008−81424(P2008−81424A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261735(P2006−261735)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】