説明

歯槽膿漏の治療薬及び予防用品

【課題】 歯槽膿漏の原因は細菌説が有力でありながら未だ解明されておらず、末期的には抜歯するしかないというのが歯科治療の現状で、歯槽膿漏の治療薬は何も無い。
しかし、歯槽膿漏には細菌が関与していても何百種類といわれる口内常在菌を強力な殺菌薬で全部殺すことには問題があるといわれており、治療薬は罹患した歯1本1本を個別に殺菌処理できるもので、しかも人間が口内へ入れても人体が安全でなければならない。
【解決手段】 故に本発明は、人体に安全な食品類の中の香辛料が含有する殺菌性成分又は抗菌性成分を歯槽膿漏の治療薬とするもので、この歯槽膿漏の治療薬には食品類が含有する殺菌性成分又は抗菌成分と同一の合成成分であってもよいものと考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯槽膿漏の治療薬及び歯槽膿漏の予防用品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いまや歯周病は、「八〇二〇運動」(厚生労働省と日本歯科医師会が唱える、80歳で20本の自歯を残そうという運動)が物語るように、「国民病」とまで呼ばれてその対策が急がれている。(非特許文献1,P.5参照)。
【0003】
二十余年にわたって、歯科こそは予防医療が大事との観点から、理解ある複数の患者を対象に月に一度「歯石」を取りつづけ、それがもたらした成果は、レントゲン写真やカルテそのものが証明する真実である。みずからの臨床経験をもって辿りついた確信は、単なる「説」や「論」ではない。すなわち、私の歯科医としての経歴は、「歯槽膿漏の元凶は歯石である。歯磨きだけでは守れない」という結論に達するまでの闘いの歴史と言ってよいと思う。(非特許文献1,P.5参照)。
【0004】
又、常在菌の一種であるカンジダ菌が原因であるという「カンジダ」説が、90年代に入って神奈川県の開業医、河北正先生によって発表された。(非特許文献1,P.46参照)。
【0005】
カンジダ菌が歯槽膿漏の原因だとは断定できないが、治療を行なう過程で無視できない存在である。抗生物質に強いカンジダ菌にも弱点があって、アムホテリシンBをはじめとする抗真菌剤が非常に有効である。(非特許文献1,P.47参照)。
【0006】
歯槽膿漏の原因は細菌説が有力ながら、これという決定的なものは解明されていない。従って、治療法も確立されておらず、末期のそれは抜歯するしかない、というのが大方の現状である。(非特許文献1,P.66参照)。
【0007】
歯周病(歯槽膿漏)は、細菌の感染によって発症する。口の中には数百種類の細菌が存在しているが、この中で特に歯周病の原因菌とされているものとして、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(A・A菌)、ポルフィロモナス・ジンジバーリス(P.G菌)、プレボテーラ・インテルメディア(P・I菌)、スピロヘータなどがある。この歯周病菌が毒素や酵素を出して歯肉への攻撃を開始し、歯の歯周組織に炎症を起こすのが歯周病の始まりといわれている。(非特許文献1,P.67参照)。
【0008】
歯槽膿漏の原因とみなされる細菌は、非特許文献1,P.67に記載されている通りであるが、今日では約30種類に絞られてきた。世界中の研究者が日夜研究しているにもかかわらず、未だにこれが歯周病菌といわれる細菌が特定されていないのが現状である。歯周病は、特定の細菌によって発症する特殊性炎ではなく、口腔内に通常生息している日和見感染だと考える。(非特許文献1,P.140参照)
【0009】
最近の治療効果報道として、「歯周病で特効薬か?アメリカで新薬!アメリカで、”At−ridox”という徐放性の抗生物質が認可されたようだ。徐放性の抗生物質といえば日本ではペリオクリンである。ペリオクリンは確かに効く薬ではあるが、特効薬ではなかった」。(非特許文献1,P.185参照)。
【非特許文献1】 2004年9月20日新潮社刊・歯学博士河田克之氏著・新潮新書086「さらば歯周病」。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上述べたように、現在は歯槽膿漏の治療法は確定していない。従って、歯槽膿漏の治療薬といわれるものは無く、予防も一部の歯科医が歯石の除去で対応しているのが実情である。
【0011】
歯槽膿漏には細菌が関与していることは認められているが、数百種類といわれる口内常在菌を殺菌薬で全部殺してしまうことには問題がある。
【0012】
歯槽膿漏は口内の病気であり、殺菌性成分なら何でも使用するということはできない。
【0013】
従って、歯槽膿漏の治療薬は殺菌性成分又は抗菌性成分であって、人間が口内へ入れて消化器官へ流入しても人体には害が無く、その安全性が確立されたものでなければならない。
【0014】
人間が口から入れて、消化器官へ流入しても安全で無害が証明されているものには食品しか無い。
【0015】
故に、人体に安全で安心して使用できる歯槽膿漏の治療薬が求められているが、要求を満足する治療薬が無い。
【0016】
食品でない物質から歯槽膿漏の治療薬を量産可能にするのには、治験に長い年月を必要し、治療薬の開発に多額の費用を必要とする。
【課題を解決する手段】
【0017】
本発明は、上記の目的を達成するため、「食品類が含有する殺菌性成分又は抗菌性成分を用いることを特徴とする歯槽膿漏の治療薬及び歯槽膿漏の予防用品」の提供。
【0018】
第2の解決手段は、「殺菌性成分又は抗菌性成分が請求項1に記載する殺菌性成分又は抗菌性成分と同一の合成成分である歯槽膿漏の治療薬及び歯槽膿漏の予防用品」の提供。
【0019】
第3の解決手段として、「殺菌性成分又は抗菌性成分の種類の異なった2種以上の成分を混ぜたことを特徴とする請求項1又は請求項2の何れかの一つに記載の歯槽膿漏の治療薬及び歯槽膿漏の予防用品」の」提供。
【0020】
第4の解決手段として、「エチルアルコール液を基剤とし、基剤に請求項1乃至請求項3の中の何れかの一つに記載の成分を加えたことを特徴とする歯槽膿漏の治療薬及び歯槽膿漏の予防用品」の提供。
【0021】
第5の解決手段として、「過酸化水素液を基剤とし、基剤に請求項1乃至請求項3の中の何れかの一つに記載の成分を加えたことを特徴とする歯槽膿漏の治療薬及び歯槽膿漏の予防用品」の提供。
【0022】
食品類が含有する殺菌性成分又は抗菌性成分(以下、両者をまとめて単に殺菌性成分と略称する)とは、主として各種香辛料の多くが含有するもので、その他に一般食物である梅干やニンニク等が含有する成分であるが、これ等は日常食用品として長い使用の歴史が有り、人体に対する安全性が十分確立している。
【発明の効果】
【0023】
上記のように、長い使用による人体安全の歴史がある食品類が含有する殺菌性成分を使用することによって、安全な治療薬を即時に提供することができる。
【0024】
60歳以上の人は百%近く罹患するといわれる、我国の国民病である歯槽膿漏の治療薬が、天然又は合成によって容易に生産できると同時に安全性も確認できる。
【0025】
国内優先出願にともない、発明の効果の見直し結果を重ねて記載する。
【0026】
長い使用の歴史がある食品類が含有する殺菌性成分を利用することによって、人体安全の確認に必要な治験期間を短縮し、短期間に治療薬や予防用品の提供が可能となった。
【0027】
食品類から歯槽膿漏の治療薬や予防用品の製造をするには大量の実物原料が必要となるが、同一の合成成分を使用することによって治療薬や予防用品のの量産が可能となる。
【0028】
食品類が含有する殺菌性成分を複合させて使用することによって薬効が強化されて、治療や予防効果が上がった。しかし、本治療薬を使用しても口内細菌を全部殺す程強力なものではない。
【0029】
食品類が含有する殺菌性成分を歯槽膿漏の治療薬とする場合、注射薬が望ましいと考えられるが、患部への塗布だけでも完治させる治療薬の開発の見通しが立った。
【0030】
辛味成分の強い殺菌性成分が使用できない子供にも使用可能な患部へ塗布する歯槽膿漏の治療薬の開発の見通しが立った。
【0031】
私自身3本の歯が歯槽膿漏に患かったが、その内2本は早期に完治させた。残りの1本は完治させずに悪化と治療を反復して薬効を確かめた結果、歯茎の中の大きな化膿と膿の拡散によって周辺に広く拡大した化膿性炎症の完治が可能であることが確認できた。
【0032】
当該殺菌性成分の含有物質の口内での使用によって、虫歯の進行が止まったように思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、食品類が含有する殺菌性成分を歯槽膿漏の治療医薬品として利用するものであるが、食品類の中でも殺菌性成分が食品に由来するものと、香辛料に由来するものとがある。以下、食品に由来するものと、各種香辛料に由来するものとについて試用結果の考察を述べる。
【実施例1】
【0034】
最初に歯槽膿漏に罹患したのは右下顎の中切歯で、歯がグラグラして浮いた感じがして固い物が噛めない状態だったので、身近な食品類で殺菌性成分を含有する香辛料であるショウガの薄切り片を歯茎の患部に当てて昼夜残置した結果、化膿が無い段階での処置だったため数日で完治し、歯のグラグラも無くなり固い物も噛めるようになって以後の再発は無い。
【実施例2】
【0035】
次に歯槽膿漏に罹患したのは左下顎の中切歯で、歯がグラグラして浮いた感じがして固い物が噛めない状態だったので、これもショウガの薄切り片を昼夜歯茎の患部に当てて残置した結果、化膿が無い段階での処置だったため数日で完治し、歯のグラグラも無くなり固い物も噛めるようになって以後の再発は無い。
【実施例3】
【0036】
三回目に歯槽膿漏になったのは左下顎の側切歯で、種々の香辛料を試用した結果、効果は認めながらも辛味の性質と多量のテスト材料の入手困難の関係から連続の使用ができず、大きく化膿してきたためショウガに切り替えて薄片を患部に当てて治療したが、化膿は縮小しても容易に完治するには至らなかった。(そこで、患部を切開して排膿を繰り返したり、後述の「実施例16、17、18」の助けを借りて治療した結果、化膿は消滅して歯のグラグラも無くなり固い物も噛めるようになって完治に至ったものである)。
【実施例4】
【0037】
食品類中、各種香辛料の殺菌性成分の効果の有無は一晩使用すれば傾向は分かるが、辛味の性質上実験にはショウガの辛味が一番口当たりが良く試用に便利であったため用いたもので、香辛料の中でショウガの治療効果が必ずしも最良の形態だということではない。
【実施例5】
【0038】
上記の食品類の殺菌性成分は歯周ポケットから浸透するのはもとよりであるが、歯茎の表面には無数の毛細血管が走っていて、これが吸収して殺菌性成分を歯根部に送って作用しているように感じられた。それでないと口中の食物が噛めない原因である歯根部の改善は起きないはずであり、局部を切開すると改善が早いことがその証左である。
【実施例6】
【0039】
故に、歯茎の表面にショウガの薄片を単に貼っておくよりも、歯茎の表面を歯科医療的に僅かでも切開して塗布又は貼付するか、あるいは注射薬として少量でも局部に直接注射したほうが治療効果が大きいと判断した。
【実施例7】
【0040】
効果の有無の傾向が早く分かるのは、その殺菌性成分が極めて有効であるとの証拠である。
【実施例8】
【0041】
食品類中他の香辛料を試用した結果について述べると、まず最初に着目したのはワサビであった。
ワサビには治療効果はあるように感じたが、少量でも連用すると下痢を起こす結果となって長続きせず、又、辛味が強く長くは口中に残置できないこともあって十分な効果の確認ができなかった。しかし、有用性は高いと認められるので、片面だけのワンポイントの貼り薬とすることも考えられるが、注射薬にするのが最良の形態と考えられる。
【実施例9】
【0042】
又、芥子も試用した結果有用性はあると判断したが、練り芥子は唾液で流れるため患部への残留が難しく、効果の十分な確認には至らなかった。
【実施例10】
【0043】
次に試用したのは山椒の実である。山椒の実も治療効果はあるように感じ、有用性はあると判断したが、山椒の実が入手できなかったことから継続テストができず、最初は十分な効果の確認には至らなかった。しかし、近年実が多く着く山椒が開発されて農家で栽培されるようになった。
【実施例11】
【0044】
他に試用してみたのは胡椒で、クリームシチュウーに入れて食した結果治療効果はあるように感じたが、試用食事の頻度が低く連用も難しいため効果の確認には至らなかった。
【実施例12】
【0045】
更に、カレーライスの香辛料にも治療効果があるように感じたが、カレー粉には多くの種類の香辛料が混合されているため、どの香辛料に治療効果があるのか特定が難しいので今後個別の香辛料の効果把握が必要である。
【実施例13】
【0046】
唐辛子は、普通に調味料として使用する程度では予防効果も治療効果もあるとは認められないが、成分を抽出して局部の注射薬品とすれば効果はあるものと考える。しかし、韓国の方の歯槽膿漏の発生状況までは調査確認が至らなかった。
【実施例14】
【0047】
その他に、食物である梅干しやニンニクには殺菌作用や抗菌作用があり有用性はあるものと考えるが、梅干しもニンニクも長時間入れておくと粘膜に炎症を起こして使用量の調節に多くの時間を要し、治療の対象が私一人の3本の歯であったため、使用効果の傾向を掴むだけで、多くの香辛料のテストを行なう必要性から効果の完全な確認には至らなかった。
【実施例15】
【0048】
本発明の殺菌性成分の第一は食品類に含まれる天然の殺菌性成分であるが、合成した殺菌性成分であっても同一の合成成分には同一の薬効があり安全で有用性があると考えられるので、治療薬の量産が可能となる。
【実施例16】
【0049】
上記実施例は、食品それぞれに含まれる殺菌性成分を単独で使用するものであったが、それぞれの成分は歯槽膿漏の化膿段階や口内粘膜の炎症状態によって効果が異なるため、本実施例はそれらの成分を2以上複合させて用いるもので、代表的実験としては山椒の実とショウガを用いたものである。
【実施例17】
【0050】
本実施例は乾燥した山椒の実やショウガ片をアルコール液に浸すものである。アルコール自体にも殺菌効果があるが、このように山椒の実やショウガをアルコール液に浸すと、アルコール液自体と同時に山椒の実やショウガ片の辛味が共に増強されたように感じた。この場合、山椒の実とショウガ片を同時に浸してもよい。
【0051】
ショウガよりもワサビの方が殺菌効果は高いと考えられるが、ワサビの乾燥品の準備が間に合わなかったため、練りワサビをアルコール液で粘膜を傷めない程度に薄めて患部に塗布して試用したところ、治療結果は極めて良好であった。
【0052】
上記の使用要領は、成分が浸出したアルコール液を綿棒に浸ませて患部の歯の裏表の生え際を拭くとよい。又、当該アルコール液を綿花の小片に浸ませて歯茎と唇の間に挟んで置いてもよい。しかし、濃度が濃すぎると歯茎の表面や唇の内側の粘膜を傷めるので、薄いものから段々濃くして適当な濃さを数値的に把握する必要がある。
【実施例18】
【0053】
上記の実施例は、成分を含有するアルコール液を使用した場合であるが、アルコール液に浸した山椒の実自体を使用してもよい。すなわち、アルコール液に浸した山椒の実を噛んで患部の歯茎と唇の間に入れると同様の効果がある。この場合も量が多過ぎると歯茎の粘膜や唇の内側の粘膜を傷めるため、傷めないためには2〜3粒を限度とする。
【0054】
前項の実施例のようにアルコール液を基剤とすると辛味成分が強くなって子供には使用できないため、過酸化水素液に山椒の実やショウガ片を乾燥して浸すとよい。過酸化水素液を使用すると、過酸化水素液・山椒の実・ショウガ片共々辛味が減少するが、治療塗布薬としての効果は失われない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上の試用結果から患部への局部塗布薬でも完治可能であることを確認したが、患部への表面塗布は内部への浸透力が弱いため、強力な治療効果を期待するには有効成分を抽出して注射液として歯科医師による早期の治療を行なえば、切開の必要もなく殺菌性成分は直接患部の歯根部のみに到達するため、他の口内細菌に影響を及ぼすことがない。
【0056】
又、注射薬は、殺菌性成分により舌の味蕾や口内粘膜を傷めることもなく、胃腸障害を起こす心配が無いため、極めて安全で即効的な治療薬とすることが出来る。加えて、食品類が含有する殺菌性成分は、長い間人体が経口使用した歴史によって安全性は確立している。
【0057】
更に、この食品類が含有する殺菌性成分は、抽出した成分か乾燥した粉末を歯磨剤に配合することによって歯槽膿漏の予防用品とすることが可能である。
【0058】
尚、私は歯垢は自分で取っているが、歯垢は1日で着くものであるから、歯槽膿漏に罹患してから治療薬品に頼ることなく歯科医で除去してもらうことが大切である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品類が含有する殺菌性成分又は抗菌性成分を用いることを特徴とする歯槽膿漏の治療薬及び歯槽膿漏の予防用品。
【請求項2】
殺菌性成分又は抗菌性成分が請求項1に記載する殺菌性成分又は抗菌性成分と同一の合成成分である歯槽膿漏の治療薬及び歯槽膿漏の予防用品。
【請求項3】
殺菌性成分又は抗菌性成分の異なった2種以上の成分を混ぜたことを特徴とする請求項1又は請求項2の何れかの一つに記載の歯槽膿漏の治療薬及び歯槽膿漏の予防用品。
【請求項4】
エチルアルコール液を基剤とし、基剤に請求項1乃至請求項3の中の何れかの一つに記載の成分を加えたことを特徴とする歯槽膿漏の治療薬及び歯槽膿漏の予防用品。
【請求項5】
過酸化水素液を基剤とし、基剤に請求項1乃至請求項3の中の何れかの一つに記載の成分を加えたことを特徴とする歯槽膿漏の治療薬及び歯槽膿漏の予防用品。

【公開番号】特開2007−119464(P2007−119464A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288082(P2006−288082)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000191940)
【Fターム(参考)】