説明

歯牙美白用組成物

【課題】ペリクルを効果的に剥離・除去する歯牙美白用組成物の提供。
【解決手段】(A)下記一般式(1)又は(2)で示される直鎖状又は環状の水溶性ポリリン酸塩の1種又は2種以上と、 Mn+2n3n+1 (1)(MPO3m (2) (式中、MはNa又はKを示し、nは2以上、mは3以上の整数である。)(B)下記一般式(3)及び/又は(4)で表される単量体からなる高分子化合物、又はジメチルジアリルアンモニウム塩を含む単量体混合物からなる高分子化合物、とを含有する歯牙美白用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペリクルを効果的に除去することができる歯牙美白用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステイン等の着色汚れやプラーク等の歯面汚れは、唾液中の蛋白質が歯表面に吸着しペリクルと呼ばれる皮膜が形成され、このペリクルを足場として着色成分が付着する。さらに、この着色汚れが積層・石灰化することで、ブラッシングでは落としにくいステインが形成すると考えられる。
【0003】
従来、着色汚れを除去するには、下記のような機械的作用による方法又は化学的作用により除去する方法がとられている。例えば、特定の有機ペルオキシドを配合した口腔用組成物(特許文献1:米国特許第3,988,433号公報)、カチオン性活性剤とリンゴ酸とを併用した口腔用組成物(特許文献2:米国特許第4,183,916号公報)、芳香族環を有するエステルを配合した口腔用組成物(特許文献3:特公昭48−43869号公報)、Fe>Caの安定度係数をもつキレート剤を配合した口腔用組成物(特許文献4:特開昭51−108029号公報)、ポリリン酸塩と多価金属陽イオンとを併用した口腔用組成物(特許文献5:特開昭52−108029号公報)、フィチン酸と有機酸を併用した口腔用組成物(特許文献6:特開昭56−18911号公報)、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ−n−酪酸、ジヒドロキシマロン酸を配合した口腔用組成物(特許文献7:特開昭60−41117号公報)、カルボン、アネトール又は3−オクタノールとゲンゲ属植物の溶媒抽出物とを併用した口腔用組成物(特許文献8:特開昭61−286315号公報)、2−オクタノールを配合した口腔用組成物(特許文献9:特開昭62−151498号公報)、特定のモノテルペンを配合した口腔用組成物(特許文献10:特開昭62−181212号公報)、全炭素数7〜11の脂肪族エステルを配合した口腔用組成物(特許文献11:特開昭62−189233号公報)、クエン酸とポリリン酸塩と非イオン性界面活性剤を配合した口腔用組成物(特許文献12:特開平7−126131号公報)、ポリリン酸とオルトリン酸塩とアニオン界面活性剤を配合した口腔用組成物(特許文献13:特開平09−012437号公報)、ポリリン酸とオルトリン酸塩と両性界面活性剤を配合した口腔用組成物(特許文献14:特開平09−012438号公報)、スルホコハク酸系活性剤を含有する口腔用組成物(特許文献15:特開平10−17444号公報)、アミノ酸系界面活性剤を含有する口腔用組成物(特許文献16:特開平10−17444号公報)。
【0004】
しかしながら、上記効果はその大部分が機械的な作用に依存しており、また効果は必ずしも十分なものではなかった。以上のことから、ペリクルを効果的に除去しることにより、ステイン、プラーク等の歯面汚れを化学的作用で効果的に除去できる歯牙美白用組成物が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,988,433号公報
【特許文献2】米国特許第4,183,916号
【特許文献3】特公昭48−43869号公報
【特許文献4】特開昭51−108029号公報
【特許文献5】特開昭52−108029号公報
【特許文献6】特開昭56−18911号公報
【特許文献7】特開昭60−41117号公報
【特許文献8】特開昭61−286315号公報
【特許文献9】特開昭62−151498号公報
【特許文献10】特開昭62−181212号公報
【特許文献11】特開昭62−189233号公報
【特許文献12】特開平7−126131号公報
【特許文献13】特開平09−012437号公報
【特許文献14】特開平09−012438号公報
【特許文献15】特開平10−17444号公報
【特許文献16】特開平10−17444号公報
【特許文献17】特開2001−342123号公報
【特許文献18】特開2002−187829号公報
【特許文献19】特開2005−179230号公報
【特許文献20】特開昭58−196300号公報
【特許文献21】特開平6−65189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、ペリクルを効果的に剥離・除去する歯牙美白用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)下記一般式(1)又は(2)示される直鎖状又は環状のポリリン酸塩の1種又は2種以上と、(B)下記一般式(3)及び/又は(4)で表される単量体を重合してなる高分子化合物、又はジメチルジアリルアンモニウム塩を含む単量体混合物を重合してなる高分子化合物とを併用することにより、ペリクルを化学的作用で効果的に剥離・除去することにより、ステイン、プラーク等の歯面汚れを効果的に除去し、歯面の美白効果を得ることができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は、
[1].下記(A)及び(B)を含有することを特徴とする歯牙美白用組成物、
(A)下記一般式(1)又は(2)
n+2n3n+1 (1)
(MPO3m (2)
(式中、MはNa又はKを示し、nは2以上、mは3以上の整数である。)
で示される直鎖状又は環状の水溶性ポリリン酸塩の1種又は2種以上と、
(B)下記一般式(3)及び/又は(4)で表される単量体を重合してなる高分子化合物、又はジメチルジアリルアンモニウム塩を含む単量体混合物を共重合してなる高分子化合物
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基、Yは酸素原子又はNHを示し、R2は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Xはハロゲン原子を示す。)
[2].(B)成分が、一般式(3)及び(4)中のYが酸素原子であり、一般式(3)及び/又は(4)で表される単量体を重合してなる高分子化合物である[1]記載の歯牙美白用組成物、
[3].(B)成分が、ヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩、又はジメチルジアリルアンモニウム塩とアクリル系ビニルモノマーとの共重合体である[1]記載の歯牙美白用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ペリクルを効果的に剥離・除去する歯牙美白用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の歯牙美白用組成物は、下記(A)及び(B)を含有するものである。
(A)成分は、下記一般式(1)又は(2)
n+2n3n+1 (1)
(MPO3m (2)
(式中、MはNa又はKを示し、nは2以上、mは3以上の整数である。)
で示される直鎖状又は環状のポリリン酸塩の1種又は2種以上であり、水溶性のものが好適に用いられる。
【0011】
一般式(1)で表されるポリリン酸塩としては、重合度n=2のピロリン酸ナトリウムやピロリン酸カリウム、n=3のトリポリリン酸ナトリウムやトリポリリン酸カリウム、n=4のテトラポリリン酸ナトリウムやテトラポリリン酸カリウム、高重合度のメタリン酸ナトリウムやメタリン酸カリウム等の直鎖状のポリリン酸塩等が挙げられる。
【0012】
一般式(2)で表されるポリリン酸塩としては、重合度m=3のトリメタリン酸ナトリウムやトリメタリン酸カリウム、m=4のテトラメタリン酸ナトリウムやテトラメタリン酸カリウム、m=6のヘキサメタリン酸ナトリウムやヘキサメタリン酸カリウム等の環状ポリリン酸塩が挙げられる。
【0013】
一般式(1)又は(2)で表されるポリリン酸塩は1種単独で又は2種以上を混合して使用されるが、これらの中では、一般式(1)で表される直鎖状のポリリン酸が好ましく、特にピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウムが好ましい。
【0014】
(A)成分の配合量は、歯牙美白用組成物全体に対して0.1〜10%(質量百分率、以下同じ)が好ましく、より好ましくは1〜7%である。配合量が0.1%に満たないと効果が劣る場合があり、10%を超えると、味が悪くなる場合がある。
【0015】
(B)成分は、(i)下記一般式(3)及び/又は(4)で表される単量体を重合してなる高分子化合物、又は(ii)ジメチルジアリルアンモニウム塩を含む単量体混合物を重合してなる高分子化合物であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。これらのカチオン性高分子化合物を(A)成分と併用することにより、ペリクルを化学的作用で効果的に除去し、歯牙美白効果を得ることができる。
【化2】

(式中、R1は水素原子又はメチル基、Yは酸素原子又はNHを示し、R2は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Xはハロゲン原子を示す。)
【0016】
一般式(3)で表される単量体としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジプロピルアミノエチルメタクリレート、ジプロピルアミノエチルアクリレート等のジアルキルアミノアルキルメタクリレート化合物又はジアルキルアミノアルキルアクリレート化合物が挙げられる。一般式(4)で表される単量体としては、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロライド塩、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド塩、ジエチルアミノエチルメタクリレートメチルクロライド塩、ジエチルアミノエチルアクリレートメチルクロライド塩、ジプロピルアミノエチルメタクリレートメチルクロライド塩、ジプロピルアミノエチルアクリレートメチルクロライド塩等のジアルキルアミノアルキルメタクリレートメチルクロライド塩化合物又はジアルキルアミノアルキルアクリレートメチルクロライド塩化合物等が挙げられる。高分子化合物としては、一般式(3)又は(4)で表される単量体を重合してなるホモポリマー、一般式(3)及び(4)で表される単量体を共重合してなるコポリマー(共重合体)が挙げられる。この中でも、一般式(3)及び(4)中のYが酸素原子であり、一般式(3)及び/又は(4)で表される単量体を重合してなる高分子化合物が好ましく、ジメチルアミノエチルメタクリレートのホモポリマーであるポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロライド塩のホモポリマーであるポリジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロライド塩が好ましい。
【0017】
ジメチルジアリルアンモニウム塩を含む単量体混合物を重合してなる高分子化合物としては、ヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩、ジメチルジアリルアンモニウム塩のホモポリマーであるポリジメチルジアリルアンモニウム塩、ジメチルジアリルアンモニウム塩とアクリル系ビニルモノマーとからなる単量体混合物を共重合してなる高分子化合物が好ましい。アクリル系ビニルモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド等が挙げられる。塩を形成する対イオンとしては、塩素イオン等のハロゲンイオンやメトサルフェートイオン等が挙げられる。
【0018】
ヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩とは、ヒドロキシエチルセルロースにジメチルジアリルアンモニウム塩をグラフト重合して得られるカチオン性ポリマーである。窒素含有量としては、0.1〜3%であり、より好ましくは0.5〜2.5%である。このようなヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩としては日本エヌエスシー(株)から市販されているセルコートL−200、セルコートH−100等が挙げられる。これらの対イオンは塩素イオンである。
【0019】
ポリジメチルジアリルアンモニウム塩とは、ジメチルジアリルアンモニウム塩を重合させたホモポリマーであり、ナルコジャパン(株)製のマーコート100が挙げられる。ジメチルジアリルアンモニウム塩とアクリル系ビニルモノマーとからなる単量体混合物を共重合してなる高分子化合物としては、ジメチルジアリルアンモニウム塩とアクリル酸とのコポリマー(共重合体)であるマーコート280、ジメチルジアリルアンモニウム塩とアクリルアミドとのコポリマー(共重合体)であるマーコート550等が挙げられる。
【0020】
(B)成分の高分子化合物の平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは1,000〜1,000,000である。その測定方法は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、略してGPCと称す)にて、臭化リチウム10mmol/Lを混合したジメチルホルムアミド(以下、略してDMFと称す)を移動相とし、ポリスチレンを標準として、分子量を換算する方法である。
【0021】
(B)成分の配合量は、歯牙美白用組成物全体に対して0.001〜2%が好ましく、より好ましくは0.005〜1%、さらに好ましくは0.01〜0.5%である。配合量が0.001%に満たないと効果が劣る場合があり、2%を超えると溶解性、使用感に問題が生じる場合がある。
【0022】
本発明の歯牙美白用組成物は、練歯磨、液状歯磨等の歯磨類、デンタルクリーム、デンタル美白パック、洗口剤、デンタル美白液、チューイングガム等として適用できるが、本発明の歯牙美白用組成物には、その種類に応じた任意成分を本発明の効果を損ねない範囲で使用し、常法に基づいて調製することができる。任意成分としては、研磨剤、粘結剤、湿潤剤、界面活性剤、香料成分等が挙げられる。
【0023】
研磨剤としては、シリカゲル、沈降シリカ、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム2水和物及び無水和物、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、その他の合成樹脂等の1種又は2種以上を配合し得る。
【0024】
粘結剤としては、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール等のアルギン酸誘導体、キサンタンガム、ジュエランガム、トラガントガム、カラヤガム等のガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー等の合成粘結剤、シリカゲル、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(商品名ビーガム;三洋化成工業社製)、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウム(商品名ラポナイト;東ソー・シリカ社製)等の無機粘結剤等の1種又は2種以上を配合し得る。
【0025】
湿潤剤としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット等の多価アルコールの1種又は2種以上を配合し得る。
【0026】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を配合し得、具体的には、ラウリル硫酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−アシルサルコシネート、N−アシルグルタメート、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N−アシルタウレート、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、プロピレンオキサイド−エチレンオキサイドブロックポリマー(商品名プルロニック;BASF社製)等が挙げられる。
【0027】
香料成分としては、メントール、アネトール、カルボン、オイゲノール、リモネン、n−デシルアルコール、シトロネロール、α−テルピネオール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、ペパーミント油、スペアミント油、ウインターグリーン油、カシア油、クローブ油、丁字油、ユーカリ油等の香料を単独で又は組み合わせて配合し得るほか、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、グリチルリチン、ペリラルチン、ソーマチン等の甘味料を配合し得る。
【0028】
また、本発明においては、クロルヘキシジンベンゼトニウムクロライド、ベンザルコニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、デカニウムクロライド等の陽イオン性殺菌剤、トリクロサン、ヒノキチオール、イソプロピルメチルフェノール等のフェノール性化合物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素、スーパーオキサイドディスムターゼ等の酵素、ビタミンE、ビタミンB6等のビタミン類、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロリン酸塩、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキスルアラントイン、ジヒドロコレスタノール、グリチルリチン酸類、グリチルレチン酸、ビサボロール、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、水溶性無機リン酸化合物等の公知の有効成分を1種又は2種以上配合し得る。
【0029】
本発明の歯牙美白用組成物のpH(25℃)は口腔内及び人体に安全性上問題ない範囲であれば、特に限定されるものではないが、pH5〜9が好ましく、より好ましくはpH6〜8である。好ましいpH調整剤として、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等を配合し得る。
【0030】
本発明の歯牙美白用組成物は、優れたペリクル除去効果を有し、ペリクル除去用組成物として好適である。また、この効果により、ステイン、プラーク等の歯面汚れを、機械的ではなく、化学的作用で効果的に除去し、ブラシの届かない部分をも清掃することができる。従って、優れた歯牙美白効果を示し、口腔内での化学的清掃効果を著しく向上させることができる。
【実施例】
【0031】
以下、調製例、試験例、実施例、及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%を示す。
【0032】
[調製例1:合成ポリマー1]
ポリジメチルアミノエチルメタクリレート(以下、pDMと略す)の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計、モノマー滴下口、開始剤滴下口、及び窒素の導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、エタノール160gを加え、85℃の湯浴で加温を始めるとともに、窒素導入管より窒素の導入を開始した。
一方、300mL容のビーカーに、ジメチルアミノエチルメタクリレート80g、エタノール96gを秤取り、かき混ぜて均一なモノマー溶液を調製した。
また、100mLのビーカーに2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.978gを秤取り、エタノール64gを加えて溶解し、開始剤溶液を調製した。
次に、前記セパラブルフラスコの内温が78℃になった時点で、滴下ポンプを用いて、
開始剤溶液、モノマー溶液を2時間かけて添加し、さらに5時間撹拌を続け、重合を終了した。
冷却後、反応溶媒を除去、乾燥することでポリマー(重合体)を得た。GPCにて、臭化リチウム10mmol/Lを混合したジメチルホルムアミド(以下、略してDMFと称す)を移動相とし、ポリスチレンを標準として、分子量を換算したところ、重量平均分子量は7万であった。単量体構成単位を下記式(5)に示す。
【0033】
[調製例2:合成ポリマー2]
ポリジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロライド塩(以下、pDMCと略す)の調製
撹拌機、還流冷却管、温度計、モノマー滴下口、開始剤滴下口、及び窒素の導入管を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、エタノール160gを加え、85℃の湯浴で加温を始めるとともに、窒素導入管より窒素の導入を開始した。
一方、300mL容のビーカーに、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロライド塩80g、エタノール96gを秤取り、かき混ぜて均一なモノマー溶液を調製した。
また、100mLのビーカーに2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.741gを秤取り、エタノール64gを加えて溶解し、開始剤溶液を調製した。
次に、前記セパラブルフラスコの内温が78℃になった時点で、滴下ポンプを用いて、
開始剤溶液、モノマー溶液を2時間かけて添加し、さらに5時間撹拌を続け、重合を終了した。
冷却後、反応溶媒を除去、乾燥することでポリマー(重合体)を得た。GPCにて、臭化リチウム10mmol/Lを混合したジメチルホルムアミド(以下、略してDMFと称す)を移動相とし、ポリスチレンを標準として、分子量を換算したところ、重量平均分子量は7万であった。単量体構成単位を下記式(6)に示す。
【0034】
【化3】

【0035】
[他ポリマー例]
マーコート100(ナルコジャパン(株)製):ジメチルジアリルアンモニウムのホモポリマー
マーコート280(ナルコジャパン(株)製):ジメチルジアリルアンモニウム塩とアクリル酸とのコポリマー(共重合体)
マーコート550(ナルコジャパン(株)製):ジメチルジアリルアンモニウム塩とアクリルアミドとのコポリマー(共重合体)
セルコートL−200、H−100(日本エヌエスシー(株)製):ヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウムクロライド塩
レオガードXE(ライオン(株)製):α=0.2、α=0.6(カチオン化セルロース)
【0036】
[試験例1]
溶液調整
ピロリン酸カリウム3.0gをサンプル瓶にとり、そこに水を加えて全量を100gとし、3.0%ピロリン酸カリウム溶液を調整した。さらに、表1に示す各カチオン性高分子化合物0.01gをサンプル瓶にとり、そこに9.99gの水又は3.0%ピロリン酸カリウム溶液を加え溶解し、表1に示す各成分を表中に示す濃度で配合した水溶液を調整した。このサンプルについてペリクル剥離性を評価した。なお、各カチオン性高分子化合物としては、上記調製例で得られた合成ポリマー1,2、及び市販のポリマーを使用した。
【0037】
モデル歯牙表面のペリクル剥離性評価
ハイドロキシアパタイト粉(HAP粉)(太平化学製:比表面積6.4g/m2)0.1gを秤量したコニカルチューブ中に、ヒトの吐出唾液5mLを添加し、37℃・回転数30rpmで1時間処理した。処理後、遠心分離(1000G・3分)で上清の唾液を除去し、イオン交換水5gを添加し混合した。さらに遠心分離(1000G・3分)で上清の溶液を除去することで、洗浄を行い、ペリクル化HAPを作製した。
得られたペリクル化HAPに、表1のサンプル5gを添加し、2時間回転処理(30rpm)をした。処理後、遠心分離(1000G・3分)をし、上澄みを採取した。
回収した上澄みの全炭素濃度(TOC)を、(TOC−VCSH/CSN(島津製作所製))を用いて測定し、下記式に基づいてペリクル剥離量を算出した。
ペリクル剥離量=処理後上澄み溶液TOC濃度−初期サンプルTOC濃度
ペリクル剥離量から、ペリクル剥離性を下記評価基準に基づいて示す。
<ペリクル剥離性の評価基準>
×:Ta−Tsが0ppm未満
△:Ta−Tsが0ppm以上50ppm未満
○:Ta−Tsが50ppm以上100ppm未満
◎:Ta−Tsが100ppm以上
初期サンプル(表1に示す組成のサンプル)TOC濃度:Ts
処理後上澄み溶液TOC濃度:Ta
【0038】
紅茶着色汚れ洗浄性評価
ヒドロキシアパタイト板(HAP板)(φ7mm×3.5mm、ペンタックス製)の表面を、研磨機(ECOMET3、BUEHILER社製)及び耐水研磨紙♯240で研磨した。この荒削りHAP板をヒトの吐出唾液で30分間処理した後、紅茶−鉄水溶液(紅茶中に塩化鉄0.05%含有)中で30秒振とうさせ、さらに同様の操作を2度繰り返した。その後、イオン交換水300mLで洗浄、乾燥し、着色汚れHAP板を作製した。この着色汚れHAP板の初期の色差と、着色汚れHAP板を、表1のサンプル中でブラッシングを30回行い、取り出して色差を測定した。評価判定は、色差計(色彩色差計 CR−300 ミノルタ製)にて、色差計ΔE値を測定した。
着色汚れ洗浄率(%)を下記式に基づき算出した。
着色汚れ洗浄率(%)=(初期の色差ΔE値−ブラッシング後の色差ΔE値)/初期の色差ΔE値×100
得られた着色汚れ洗浄率(%)から、着色汚れ洗浄性を下記評価基準に基づいて示す。
<着色汚れ洗浄性の評価基準>
×:着色汚れ洗浄率が10%未満
△:着色汚れ洗浄率が10%以上30%未満
○:着色汚れ洗浄率が30%以上50%未満
◎:着色汚れ洗浄率が50%以上
【0039】
【表1】

【0040】
[実施例8〜16]
下記組成の歯牙美白用組成物を調製した。
【0041】
[実施例8]
歯磨剤
組成 %
ポリオキシエチレン(平均付加モル数30)硬化ヒマシ油 1.0
(NIKKOL(登録商標) HCO−30、日光ケミカルズ(株)製)
無水ケイ酸 15.0
ポリアクリル酸ナトリウム(レオジック250H、日本純薬(株)製) 0.8
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.8
(CMCダイセル(登録商標)1350、ダイセル化学工業(株)製)
アルギン酸ナトリウム(IL−6G、(株)キミカ製) 0.3
pDMC(調製例2) 0.3
酸化チタン 0.5
酸化アルミニウム 1.0
70%ソルビット液 30.0
キシリトール 5.0
プロピレングリコール 3.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.2
フッ化ナトリウム 0.21
ピロリン酸カリウム 3.0
香料 1.0
精製水 残部
計 100.0
【0042】
[実施例9]
歯磨剤
組成 %
ポリオキシエチレン(平均付加モル数30)硬化ヒマシ油 1.5
(EMALEX(登録商標) HC−30、日本エマルジョン(株)製)
無水ケイ酸 18.0
ポリビニルピロリドン(K−30、BASFジャパン製) 0.2
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.5
(CMCダイセル(登録商標)1260、ダイセル化学工業(株)製)
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L、日本曹達(株)製) 0.5
マーコート100 0.3
酸化チタン 0.5
70%ソルビット液 22.0
キシリトール 10.0
プロピレングリコール 3.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.3
フッ化ナトリウム 0.21
ピロリン酸カリウム 3.0
香料 1.1
精製水 残部
計 100.0%
【0043】
[実施例10]
洗口剤
組成 %
ポリオキシエチレン(平均付加モル数40)硬化ヒマシ油 1.0
(EMALEX HC−40、日本エマルジョン(株)製)
pDMC(調製例2) 0.3
クエン酸 0.01
クエン酸3ナトリウム 0.3
塩化ベンザルコニウム 0.01
サッカリンナトリウム 0.1
キシリトール 5.0
ピロリン酸カリウム 3.0
0.1%緑色3号 0.8
香料 0.3
精製水 残部
計 100.0%
【0044】
[実施例11]
洗口剤
組成 %
ポリオキシエチレン(平均付加モル数80)硬化ヒマシ油 1.5
(NIKKOL(登録商標) HCO−80、日光ケミカルズ(株)製)
マーコート100 0.3
クエン酸 0.01
クエン酸3ナトリウム 0.3
塩化ベンザルコニウム 0.01
サッカリンナトリウム 0.1
キシリトール 5.0
ピロリン酸カリウム 3.0
0.1%緑色3号 0.8
香料 0.3
精製水 残部
計 100.0%
【0045】
[実施例12]
洗口剤
組成 %
ポリオキシエチレン(平均付加モル数60)硬化ヒマシ油 2.0
(NIKKOL(登録商標) HCO−60、日光ケミカルズ(株)製)
マーコート100 0.3
フッ化ナトリウム 0.05
イソプロピルメチルフェノール 0.05
エタノール 3.0
クエン酸 0.01
クエン酸3ナトリウム 0.3
サッカリンナトリウム 0.1
ピロリン酸カリウム 3.0
0.1%緑色3号 0.8
香料 0.3
精製水 残部
計 100.0%
【0046】
[実施例13]
洗口剤
組成 %
ポリオキシエチレン(平均付加モル数50)硬化ヒマシ油 1.3
(EMALEX HC−50、日本エマルジョン(株)製)
pDMC(調製例2) 0.3
フッ化ナトリウム 0.05
トリクロサン 0.05
エタノール 3.0
クエン酸 0.01
クエン酸3ナトリウム 0.3
サッカリンナトリウム 0.1
0.1%緑色3号 0.8
ピロリン酸ナトリウム 2.0
香料 0.3
精製水 残部
計 100.0%
【0047】
[実施例14]
チューイングガム
組成 %
ポリオキシエチレン(平均付加モル数40)硬化ヒマシ油 0.2
(EMALEX HC−40、日本エマルジョン(株)製)
ポリオキシエチレン(平均付加モル数50)硬化ヒマシ油 0.3
(EMALEX HC−50、日本エマルジョン(株)製)
pDMC(調製例2) 0.3
ガム基材 25.0
ソルビット粉末 34.6
マンニトール粉末 15.0
マルチトール粉末 10.0
ピロリン酸ナトリウム 2.0
香料 1.5
グリセリン 3.5
サッカリン 0.1
精製水 残部
計 100.0%
【0048】
[実施例15]
チューイングガム
組成 %
ポリオキシエチレン(平均付加モル数60)硬化ヒマシ油 1.5
(NIKKOL(登録商標) HCO−60、日光ケミカルズ(株)製)
マーコート100 0.3
ガム基材 25.0
ソルビット粉末 30.0
マンニトール粉末 15.0
マルチトール粉末 10.0
ピロリン酸ナトリウム 3.0
香料 1.5
グリセリン 3.5
サッカリン 0.1
精製水 残部
計 100.0%
【0049】
[実施例16]
チューイングガム
組成 %
ポリオキシエチレン(平均付加モル数50)硬化ヒマシ油 1.8
(EMALEX HC−50、日本エマルジョン(株)製)
マーコート100 0.3
ガム基材 30.0
ソルビット粉末 54.6
マンニトール粉末 15.0
マルチトール粉末 10.0
ピロリン酸ナトリウム 3.0
香料 1.3
グリセリン 6.0
アスパルテーム 0.05
精製水 残
計 100.0%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)及び(B)を含有することを特徴とする歯牙美白用組成物。
(A)下記一般式(1)又は(2)
n+2n3n+1 (1)
(MPO3m (2)
(式中、MはNa又はKを示し、nは2以上、mは3以上の整数である。)
で示される直鎖状又は環状の水溶性ポリリン酸塩の1種又は2種以上と、
(B)下記一般式(3)及び/又は(4)で表される単量体を重合してなる高分子化合物、又はジメチルジアリルアンモニウム塩を含む単量体混合物を重合してなる高分子化合物。
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基、Yは酸素原子又はNHを示し、R2は水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基、R3はそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Xはハロゲン原子を示す。)
【請求項2】
(B)成分が、一般式(3)及び(4)中のYが酸素原子であり、一般式(3)及び/又は(4)で表される単量体を重合してなる高分子化合物である請求項1記載の歯牙美白用組成物。
【請求項3】
(B)成分が、ヒドロキシエチルセルロース・ジメチルジアリルアンモニウム塩、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩、又はジメチルジアリルアンモニウム塩とアクリル系ビニルモノマーとの共重合体である請求項1記載の歯牙美白用組成物。

【公開番号】特開2008−201704(P2008−201704A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38793(P2007−38793)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】