説明

歯用自己粘着フィルム

本発明は、口腔への使用のための、単層または多層のフィルム型粘着性製剤に関する。前記製剤は、少なくとも1種の美容および/または医薬活性物質に加え、少なくとも1種のポリメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリ酢酸ビニルと脂肪酸ビニルアルコールエステルとの少なくとも1種の共重合体を含む。本発明は、また前記タイプの製剤の製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯、歯肉または口腔粘膜に感圧粘着性であり、歯、特に歯頸および歯肉の美容または医療処置に適している、フィルム型製剤に関する。さらに、本発明は、かかるフィルム型製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
口の洗浄、および活性物質の送達のための、ペースト、クリームまたはマウスリンスの形態を有する製品は、以前から知られ、市場で入手可能である。これらの製品は、洗浄効果を有し、虫歯を防ぎ、感覚を鈍くし、または漂白効果を有する練り歯磨きおよびクリームを含む。局所的な疾病および疾患を処置するために、口部に適用されるクリーム、ゲルおよび軟膏、例えば抗炎症治療薬、鎮痛薬および/または強壮剤(tonics)なども知られている。
【0003】
ここ数年、フィルム型、フラット型またはストリップ型の経口適用形態も市販され、美容または治療目的で使用されている。これらの適用形態は、例えば、PfizerによるListerine Pocket-Paks(登録商標)またはProcter & Gambleによる「Teeth Whitestrips」などを含む。そのような適用形態は、概して使用するとかなり早く崩壊する、水溶性ポリマーで構成されるフィルムに基づいているため、持続的な処置には適さなかった。
【0004】
さらに、US 6,582,708に開示されているように、複数の層からなる製品が知られているが、これは柔軟性のある層を一枚だけ含み、3mmまである全体の厚さのために、口の中では邪魔で不快である。
【0005】
周知のフィルム型適用形態の製造に用いられる処方および方法の大部分は、水から、または水含有アルコールポリマー溶液から開始する。ここにおける不利点は、親油性の難水溶性活性物質または水に感受性の活性物質の、完全に溶解した製剤を調製することに限界があることである。
【発明の開示】
【0006】
したがって、本発明の目的は、歯、歯肉または口腔粘膜に優れた粘着性を有し、活性物質担体として適し、わずか数秒で崩れることのない、単層または多層の、水溶性または少なくとも部分的に水膨潤性の、フィルム型材料を提供することである。より具体的には、水不溶性または水感受性(water-sensitive)活性物質の投与を可能にする、前述のタイプのフィルム型材料を提供することが目的である。
【0007】
この目的は、少なくとも1種の美容および/または医薬活性物質に加え、少なくとも1種のポリメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリ酢酸ビニルと脂肪酸のビニルアルコールエステルとの少なくとも1種の共重合体を含む、単層または多層の感圧粘着性フィルム型製剤を提供することにより達成される。
【0008】
好ましくは、フィルム型感圧粘着性製剤中の、ポリメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体の含量は、5〜35重量%である。
フィルム型感圧粘着性製剤における、ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリ酢酸ビニルと脂肪酸のビニルアルコールエステルとの共重合体(1種または2種以上)の含量は、好ましくは、合計4〜35重量%である。
【0009】
フィルム型感圧粘着性製剤は、さらに疾病の特性や美容ニーズによって決定される、少なくとも1種の美容および/または医薬活性物質を有する。該活性物質は、好ましくは難水溶性活性物質または水感受性活性物質である。
【0010】
用語「難水溶性活性物質」は、1g/lよりも低い水への溶解性を有する活性物質を意味すると理解される。これらは、例えばグリセオフルビン、エストラジオールおよびビタミンDを含む。
【0011】
水感受性活性物質は、その水溶液が、該活性物質の分解が原因で、室温で24時間以内に、その活性物質含有量の0.1%以上を失う活性物質を含む。水感受性活性物質は、例えばアセチルサリチル酸およびヨウ素を含む。
【0012】
特に好ましい態様において、フィルム型感圧粘着性製剤は、さらにカルボキシメチルセルロースおよび/またはその塩の1つを含む。本製剤におけるカルボキシメチルセルロースまたはその塩の1つの含量は、合計5〜35重量%である。
【0013】
歯、歯肉、または口腔粘膜に感圧粘着性であるフィルム型製剤を製造するために、様々な水溶性および/または水膨潤性ポリマーを少なくとも1種の活性物質と、有機溶媒を主成分とする溶液中で混合する。基材を被覆するためにこの混合物を用い、被覆された基材を、任意に加熱して、乾燥する。本発明の利点は、特にポリメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体と、ポリ酢酸ビニルまたはポリ酢酸ビニルと脂肪酸のビニルアルコールエステルとの共重合体との混合物が使用される場合に生じる。
【0014】
ポリメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体の含量は、好ましくは5〜35重量%であり、ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリ酢酸ビニルと脂肪酸のビニルアルコールエステルとの共重合体(1種または2種以上)の含量は、好ましくは4〜35重量%であり、いずれの場合も、固形分に対する含量である。
【0015】
ISP社より「Gantrez(登録商標)」の名で販売されている、ポリメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、およびWacker Polymer Systems社、Burghausenの「VINNAPAS(登録商標)」と称するポリ酢酸ビニルまたは脂肪酸のビニルアルコールエステルとのその共重合体は、本発明に特に適していることが示された。
【0016】
発明の方法において、溶液にその主成分として含まれる有機溶媒として、ポリメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体およびポリ酢酸ビニルまたは脂肪酸のビニルアルコールエステルとのその共重合体を溶解する任意の溶媒を使用してもよい。これらの溶媒のうち、水とも混合するものが好ましく用いられるが、これは、少量、例えば1〜5重量%の水を加えることにより、ポリマーおよび1種または2種以上の活性物質に対する溶解力を所定の要件に適応させることができるためである。エタノール中またはエタノール−水混合物中に溶解した活性物質の添加が可能な有機溶媒が特に好ましい。とりわけ好ましい有機溶媒は、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エタノール、アセトンおよびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0017】
エタノールおよびメチルエチルケトンの混合割合を変更することにより、結果として生じるフィルム型製剤のコンシステンシー(consistency)および/または粘着性を、製品に対する要求に適応させることができる。溶媒全体に対して、5〜20重量%のエタノール部分を含む溶媒混合物が好都合であることが示された。
【0018】
歯、歯肉および/または口腔粘膜へのフィルム型製剤の特に良好な粘着を可能にする、好ましい態様を製造するために、カルボキシメチルセルロースおよび/または少なくとも1種のその塩をポリマー混合物へ加える。
好ましくは、固形分に対して、5〜35重量%のカルボキシメチルセルロースまたは少なくとも1種のその塩をポリマー混合物へ加える。
【0019】
本発明の製剤を製造するために、少なくとも1種のポリメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体およびポリ酢酸ビニル、および/または酢酸ビニルと脂肪酸のビニルアルコールエステルとの少なくとも1種の共重合体を、少なくとも1種の活性物質および、任意に、カルボキシメチルセルロースおよび/または少なくとも1種のその塩と共に、1種または複数種の有機溶媒をその主成分として含む溶液中で混合する。結果として生じる配合物を液体形態で支持体に適用し、溶媒混合物を除去することにより、4〜2000μm、好ましくは40〜500μm、特に好ましくは60〜250μmの層厚さを有するフィルムが得られる。
【0020】
例えば、製剤の歯への向上した粘着を達成することが可能な、多層の感圧粘着性フィルム型製剤は、例えばホットラミネート加工、既存層を単層フィルムの製造に関連して上記に説明したとおりに溶媒を含むさらなる配合物で被覆すること、または当業者に知られている他の方法によって、作製することができる。
【0021】
次に、それぞれ所定の目的に適したサイズを有する断片を、フィルムまたはラミネートから型抜きする。
本発明に記載の方法は、歯、歯肉、または口腔粘膜に粘着し、わずか数秒で崩れることのないフィルム型製剤をもたらし、これにより、水不溶性活性物質、さらには水感受性活性物質でさえも投与することができる。これらの製剤は、医療または美容処置に有利に用いることができる。
【0022】
例:
メチルエチルケトン中の酢酸ビニルベースのポリマーの33.3%溶液(重量%)5g、および酢酸エチル中のポリメチルビニルエーテル−無水マレイン酸(=メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との重合体)の15%溶液(重量%)3gを共に加え、均質化した。その結果溶液が得られ、これを様々なコーティング厚で広げ、続けて乾燥した。これにより、口腔粘膜および歯の両方に粘着する、柔軟なフィルムが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の美容および/または医薬活性物質に加え、少なくとも1種のポリメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリ酢酸ビニルと脂肪酸のビニルアルコールエステルとの少なくとも1種の共重合体を含む、口部、特に歯への適用のための、単層または多層のフィルム型感圧粘着性製剤。
【請求項2】
ポリメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体の含量が、5〜35重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリ酢酸ビニルと脂肪酸のビニルアルコールエステルとの1種または2種以上の共重合体の含量が、合計4〜35重量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
活性物質が、水に難溶性であるか、または水に感受性であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の製剤。
【請求項5】
カルボキシメチルセルロースおよび/または少なくとも1種のその塩をさらに含有していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の製剤。
【請求項6】
カルボキシメチルセルロースおよび/またはその塩の含量が、5〜35重量%であることを特徴とする、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
製剤が、4〜2000μm、好ましくは40〜500μm、特に好ましくは60〜250μmの層厚さを有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の製剤。
【請求項8】
請求項1に記載の製剤の製造方法であって、
−少なくとも1種の美容および/または医薬活性物質に加えて、少なくとも1種のポリメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリ酢酸ビニルと脂肪酸のビニルアルコールエステルとの少なくとも1種の共重合体を、1種または2種以上の有機溶媒を主成分として含む溶媒中で混合すること;
−得られた混合物で基材を被覆すること、および
−乾燥によって溶媒を除去すること
を特徴とする、前記方法。
【請求項9】
ポリメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体の含量が、固形分に対して5〜35重量%であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリ酢酸ビニルと脂肪酸のビニルアルコールエステルとの1種または2種以上の共重合体の含量が、固形分に対して4〜35重量%であることを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
溶媒が、1〜5重量%の水を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
活性物質が、水に難溶性であるか、または水に感受性であることを特徴とする、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
有機溶媒が、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エタノール、アセトンおよびそれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項8〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
有機溶媒が、エタノールとメチルエチルケトンとの混合物であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
混合物が、5〜20重量%のエタノールを含有することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
カルボキシメチルセルロースおよび/または少なくとも1種のその塩を、配合物を支持体に広げる前に、該配合物に加えることを特徴とする、請求項8〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
カルボキシメチルセルロースおよび/またはその塩の含量が、固形分に対して5〜35重量%であることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
被覆物の乾燥の後に、ホットラミネート加工、または1または2以上の既存層を1または2以上の溶媒含有配合物で被覆することにより、1または2以上のさらなる層を既に存在する1または2以上の層に設けることを特徴とする、請求項8〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
乾燥後に、4〜2000μm、好ましくは40〜500μm、特に好ましくは60〜250μmの層厚さが得られるように、配合物を支持体に適用することを特徴とする、請求項8〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
口部の美容および/または医薬処置、特に歯または歯肉の処置のための、請求項1〜7のいずれかに記載の製剤の使用。

【公表番号】特表2008−515944(P2008−515944A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536049(P2007−536049)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010749
【国際公開番号】WO2006/040059
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】