説明

歯磨剤組成物

【解決手段】(A)デキストラナーゼ、
(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜30モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、
(C)炭素鎖長が14〜18のアルキル鎖長で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が3〜8モルのポリオキシエチレンアルキルエーテル、
(D)両性界面活性剤、及び
(E)ラウリル硫酸ナトリウム
を含有し、(E)成分/(D)成分の質量比が1〜5であることを特徴とする歯磨剤組成物。
【効果】本発明の歯磨剤組成物は、製剤中でのデキストラナーゼの安定性に優れ、起泡速度が速く、更に歯牙表面への歯垢再付着抑制効果に優れ、苦味のないものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デキストラナーゼ、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜30モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、炭素鎖長が14〜18のアルキル鎖長でエチレンオキサイドの平均付加モル数が3〜8モルのポリオキシエチレンアルキルエーテル、両性界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウムを含有してなる歯磨剤組成物であり、製剤中でのデキストラナーゼの安定性に優れ、起泡速度が速く、更に歯牙表面への歯垢再付着抑制効果に優れた苦味のない歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
デキストラナーゼは、プラークを分解することでう蝕予防効果が得られることから、口腔用組成物に有効成分として配合されている。一方、口腔用組成物には使用感、使用性の観点から界面活性剤が配合されており、とりわけ、歯磨剤組成物には研磨剤が多量に配合されていることから、十分な発泡性確保のためラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤が配合されている。
【0003】
このため、製剤中において酵素であるデキストラナーゼを安定化する技術が不可欠であり、安定化には特定の非アニオン性界面活性剤を配合するのが有用であることが知られている。例えば、カルボン酸型両性界面活性剤(特許文献1:特開昭58−225007号公報)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(特許文献2:特開昭61−176518号公報)、グリセリン脂肪酸エステル(特許文献3:特開平3−181413号公報)、脂肪酸アルカノールアミド(特許文献4:特開2005−187360号公報)などを配合した例が挙げられる。
【0004】
しかしながら、これらの技術手段では、ラウリル硫酸ナトリウムのタンパク変性作用はある程度改善される場合もあるものの、ノニオン性界面活性剤を多量に配合すると、アニオン性界面活性剤による優れた起泡性が低下すると共に、製剤の口腔分散性が十分確保されず、殺菌剤などの他の有効成分の効果を阻害するおそれがある。
【0005】
また、グルカナーゼとラウリル硫酸ナトリウムを含有する口腔用組成物において、ラウリル硫酸ナトリウムの良好な発泡量を確保しつつ、酵素安定性を確保することができる歯磨剤組成物を提供する方法として、グルカナーゼ及びラウリル硫酸ナトリウムを含有する歯磨剤組成物に、炭素数14〜18のアルキル基を有し、エチレンオキサイドの付加モル数が3〜8であるポリオキシエチレンアルキルエーテルと、エチレンオキサイドの付加モル数が10〜80であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とを予め混合分散させる技術が開示されている(特許文献5:特開2005−41787号公報)。
【0006】
しかしながら、上記提案においては、十分な泡立ち速度を確保することができない場合もあり、また歯磨剤の使用感に大きく影響を与える発泡量と発泡速度を同時に維持する点で劣る場合がある。
【0007】
更に、上記提案においては、歯垢除去後の歯面上に再度付着する歯垢の生成を抑制する効果を発揮する点で必ずしも十分ではなく、従って、デキストラナーゼの安定性が高く、起泡性などの使用感に優れ、かつ歯垢再付着抑制効果が得られる歯磨剤組成物が求められていた。
【0008】
一方、両性界面活性剤は、皮膚や眼に対して刺激性が少なく、高い増泡力と泡安定性を持つことから発泡剤として各種分野で利用されている。口腔分野においても口中の刺激緩和作用があることが知られている(特許文献6:特開昭57−171909号公報)。しかし、この方法では両性界面活性剤特有の苦味のために歯磨剤の味が悪くなるという問題があった。
【0009】
【特許文献1】特開昭58−225007号公報
【特許文献2】特開昭61−176518号公報
【特許文献3】特開平3−181413号公報
【特許文献4】特開2005−187360号公報
【特許文献5】特開2005−41787号公報
【特許文献6】特開昭57−171909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、起泡速度や使用感を損なわずにデキストラナーゼを安定化配合することにより、優れた歯垢除去効果を示すと共に、歯面上への歯垢再付着抑制効果を有する、苦味のない歯磨剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、製剤中でのデキストラナーゼの安定性に優れ、起泡速度が速く、更に歯牙表面への歯垢再付着抑制効果に優れる苦味のない歯磨剤組成物を開発することを目的に鋭意検討を進めた結果、(A)デキストラナーゼ、(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜30モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)炭素鎖長が14〜18のアルキル鎖長でエチレンオキサイドの平均付加モル数が3〜8モルのポリオキシエチレンアルキルエーテル、(D)両性界面活性剤、(E)ラウリル硫酸ナトリウムを含有し、(E)成分/(D)成分の質量比を1〜5とした歯磨剤組成物が、上記目的を効果的に達成するものであることを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
即ち、本発明は(A)デキストラナーゼ、(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜30モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)炭素鎖長が14〜18のアルキル鎖長でエチレンオキサイドの平均付加モル数が3〜8モルのポリオキシエチレンアルキルエーテル、(D)両性界面活性剤、(E)ラウリル硫酸ナトリウムを含有し、(E)成分/(D)成分の質量比が1〜5であることを特徴とする歯磨剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の歯磨剤組成物は、製剤中でのデキストラナーゼの安定性に優れ、起泡速度が速く、更に歯牙表面への歯垢再付着抑制効果に優れ、苦味のないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の歯磨剤組成物は、(A)デキストラナーゼ、(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜30モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)炭素鎖長が14〜18のアルキル鎖長でエチレンオキサイドの平均付加モル数が3〜8モルのポリオキシエチレンアルキルエーテル、(D)両性界面活性剤、(E)ラウリル硫酸ナトリウムを含有するものである。
【0015】
(A)成分のデキストラナーゼとしては、ケトミウム属、ペニシリウム属、アスペルギルス属、スピカリア属、ラクトバチルス属、セルビブリオ属等に属する公知のデキストラナーゼ生産菌より公知の方法により得られるデキストラナーゼのほか、他の微生物より生産されたデキストラナーゼも使用することができ、市販品としては三共株式会社製のものなどを用いることができる。
【0016】
上記デキストラナーゼの配合量は、2〜200単位/g歯磨剤組成物であり、特に10〜50単位/gが好ましい。2単位/gより少ないと、十分なプラーク除去効果及び再付着抑制効果が得られない場合があり、200単位/gを超えると、安定性が十分でなくなるおそれがある。ここで、デキストラナーゼ1単位とは、デキストランを基質として反応を行った場合に、1分間あたりにグルコース1μmolに相当する遊離還元糖を生じるデキストラナーゼの量である。通常、13000単位/gのものを使用すると配合量は0.0154〜1.54質量%である。
【0017】
次に、(B)成分のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、歯垢の再付着抑制効果とデキストラナーゼの安定化効果の点で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜30モル、好ましくは20〜30モルのものを使用する。エチレンオキサイドの平均付加モル数が10モル未満では十分なプラーク再付着抑制効果が得られず、外観が劣化し、また、平均付加モル数が30モルを超えると、デキストラナーゼの安定化効果に劣る。このようなポリオキシエチレン硬化ヒマシ油として、例えば、日光ケミカルズ株式会社のHCO−10,HCO−20,HCO−30、日本エマルジョン株式会社のHC−10,HC−20,HC−30、青木油脂工業株式会社のBLAUNON RCW−20(ポリオキシエチレン20モル)などが挙げられる。
【0018】
上記ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の配合量は、組成物全体の0.3〜5%(質量%、以下同じ)、特に0.5〜2%とすることが好適である。配合量が0.3%未満であるとデキストラナーゼの安定性が低下する場合があり、5%を超えると起泡速度が遅くなり、使用感に問題が生じる場合がある。
【0019】
本発明の歯磨剤組成物で用いる(C)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、下記式(1)
R−O−(EO)nH (1)
(但し、Rは炭素数14〜18のアルキル基、nは3〜8、EOは酸化エチレンを表す。)
で示されるものが使用される。
【0020】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、起泡速度とデキストラナーゼの安定性の点から炭素数14〜18、好ましくは炭素数16〜18のアルキル基を有するものを使用する。アルキル基の炭素数が14未満では十分な起泡性が得られず、またアルキル基の炭素数が18を超える場合にはデキストラナーゼの安定性が劣る。
【0021】
また、上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキサイド平均付加モル数は、デキストラナーゼの安定性と起泡速度の点から、3〜8モル、好ましくは5〜8モルの範囲である。平均付加モル数が3モルより低い場合には、歯磨製剤中に液分離が生じ、デキストラナーゼの安定性に劣る。また、8モルを超えると起泡速度が遅くなる。
【0022】
このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルとして具体的には、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等が挙げられ、特にポリオキシエチレンステアリルエーテルが好適である。このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、日本エマルジョン株式会社の製品中、ポリオキシエチレン(3)セチルエーテル(EMALEX 103)、ポリオキシエチレン(5)セチルエーテル(EMALEX 105)、ポリオキシエチレン(7)セチルエーテル(EMALEX 107)、ポリオキシエチレン(3)ステアリルエーテル(EMALEX 603)、ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル(EMALEX 605)、ポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル(EMALEX 606)、ポリオキシエチレン(8)ステアリルエーテル(EMALEX 608)などが挙げられる。これらの中でも、デキストラナーゼの安定性及び起泡速度の点から、エチレンオキサイド平均付加モル数が5〜8モルであり、アルキル鎖の炭素鎖長が16〜18であるものが特に好ましい。
【0023】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量は、組成物全体の0.3〜5%、特に0.5〜2%とすることが好適である。配合量が0.3%未満だとデキストラナーゼの安定性が低下する場合があり、5%を超えると起泡速度が遅くなり、使用感に問題が生じる場合がある。
【0024】
更に、本発明では、上記したポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(B)とポリオキシエチレンアルキルエーテル(C)との配合比[(B)/(C)]を質量比で1:5〜5:1、特に1:3〜3:1の範囲とすることが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油との配合比が1:5より小さいと、十分なデキストラナーゼの安定性が確保されない場合があり、配合比が5:1より大きい場合もデキストラナーゼの安定化効果が劣ることがある。
【0025】
(D)成分の両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0026】
上記両性界面活性剤のアルキル鎖長としては、いずれの場合も起泡速度や歯垢再付着抑制効果の点から、好ましくはアルキル鎖長C8〜C20、より好ましくはC10〜C18である。アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインの例としては、商品名NIKKOL AM−301として日光ケミカルズ株式会社より販売されているラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液等が用いられる。脂肪酸アミドプロピルベタインの例としては、商品名TEGO BetainCKやTEGO BetainF50、TEGO BetainZFとしてDegussa.社より販売されているヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン水溶液等が用いられる。また、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインとしては、商品名エナジコールC−40Hとしてライオン株式会社より販売されているN−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン水溶液等が用いられるが、いずれの場合も上記に限ったものではない。
【0027】
これらの両性界面活性剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、その合計配合量は、純分換算として組成物全量に対して、起泡速度や歯垢再付着抑制効果の点から好ましくは0.05〜1.5%、より好ましくは0.1〜1.2%である。0.05%未満では十分な起泡速度と歯垢再付着抑制効果が得られず、1.5%を超えると両性界面活性剤特有の苦味が生じる場合がある。
【0028】
本発明の歯磨剤組成物に用いる(E)成分のラウリル硫酸ナトリウムとしては、東邦化学工業(株)製、第一製薬(株)製等が挙げられる。
【0029】
ラウリル硫酸ナトリウムの配合量は、組成物全体の0.3〜1.5%とすることが好ましく、特に0.5〜1.2%の範囲であることが好ましい。配合量が0.3%未満では十分な起泡速度が得られない場合があり、1.5%を超える場合にはデキストラナーゼの安定性が劣る場合がある。
【0030】
また、デキストラナーゼの安定性、起泡速度、プラーク再付着抑制効果及び苦味のなさの点で、両性界面活性剤(D)に対するラウリル硫酸ナトリウム(E)の質量比[(E)/(D)]が1〜5、好ましくは2〜4の割合で配合することが必要である。1未満では歯磨剤に苦味が生じる。5を超える場合は十分なプラーク再付着抑制効果を得ることができず、またデキストラナーゼの安定性に劣る。
【0031】
本発明の歯磨剤組成物は、上記必須成分に加えて本発明の効果を損なわない範囲で任意成分としてその他の添加剤を配合できる。例えば、研磨剤、粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、有効成分、色素、香料等を配合でき、これら成分と水とを混合し、製造できる。
【0032】
研磨剤としては、第2リン酸カルシウム2水和物、第2リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、2酸化チタン、結晶性ジルコニウムシリケ−ト、ポリメチルメタアクリレート、不溶性メタリン酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、第8リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケートなどが挙げられる。これらの研磨剤の中ではデキストラナーゼの安定性の観点からシリカ系研磨剤及び水酸化アルミニウムを研磨剤として用いることが好ましい。通常、これら研磨剤の配合量の合計は、約10〜50%である。
【0033】
粘稠剤としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコ−ル、分子量200〜6000のポリエチレングリコ−ル、エチレングリコ−ル、還元でんぷん糖化物等の多価アルコール等の1種又は2種以上が使用できる。通常、これらの粘稠剤の配合量の合計は約10〜40%である。
【0034】
粘結剤としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロ一ス、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロ−ス、ポリアクリル酸ナトリウム、キサンタンガム、カ−ボポール、グアガム、ゼラチン、アビセル、それにモンモリロナイト、カオリン、ベントナイト等の無機粘結剤等が挙げられる。通常、これら粘結剤の配合量の合計は、約0.5〜3%である。
【0035】
界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、両性界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウムに加え、必要に応じて他の界面活性剤を添加することができる。例えば、アニオン性界面活性剤としてはラウロイルサルコシン塩、ミリスチルサルコシン塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、N−ラウロイルタウリン塩、α−オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。ノニオン活性剤としては、例えばアルキル鎖長C8〜C16であるアルキルグリコシド、ショ糖モノ及びジラウレート等の脂肪酸基の炭素数が12〜18であるショ糖脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ステアリン酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ラウロイルジエタノールアミド等のアルキロイルエタノールアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ラウリン酸デカグリセリル等が挙げられる。これら界面活性剤は1種又は2種以上を組み合わせて配合することができ、配合量は通常、組成物全量に対して5%以下、特に4%以下である。
【0036】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパラテ−ム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ぺリラルチン等、防腐剤としては、ブチルパラベン、エチルパラベン等のパラベン類、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0037】
各種有効成分としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、酢酸dl−トコフェロール、ジヒドロコレステロール、α−ビサボロール、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、アズレン、グリチルレチン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェ−トなどのキレート性リン酸化合物、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼトニウム、塩化ナトリウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物などが挙げられる。
【0038】
防腐剤としては、各種パラベンのほか安息香酸ナトリウム、トリクロサン等の非イオン性抗菌剤、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等のカチオン性抗菌剤、精油成分等が配合可能である。
【0039】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1.2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ、実施例の香料に限定されない。
【0040】
また、配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、製剤組成中に0.000001〜1量%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料としては、製剤組成中に0.1〜2.0%使用するのが好ましい。
【0041】
着色剤としては、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号が例示される。なお、これら成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実験例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
【0043】
[実験例]
(1)試験歯磨剤組成物の調製
デキストラナーゼ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、両性界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリウムを含有する歯磨剤組成物を調製し、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mmのラミネートチューブに50g充填し、デキストラナーゼの安定性、起泡性、プラークの付着抑制効果、苦味のなさを評価した。
【0044】
歯磨剤組成物の調製は、精製水にカチオン性殺菌剤、サッカリンナトリウム、ソルビット液等の水溶性物質を溶解させた後、アルギン酸ナトリウムなどの粘結剤を分散させたプロピレングリコール液を加え、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、両性界面活性剤を添加して撹拌した。その後、香料、研磨剤、デキストラナーゼ、ラウリル硫酸ナトリウムの順に加え、更に減圧下(40mmHg)で撹拌し、歯磨剤組成物を得た。なお、製造にはユニミキサー(FM−SR−25、POWEREX CORPORATION社)を用いた。
【0045】
これらの歯磨剤組成物の調製には、デキストラナーゼ(三共(株))、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン(株)、EMALEX HC−20)、ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン(株)、EMALEX HC−5)、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン(株)、EMALEX HC−40)、ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル(日本エマルジョン(株)、EMALEX 605)、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(日本エマルジョン(株)、EMALEX 602)、ポリオキシエチレン(11)ステアリルエーテル(日本エマルジョン(株)、EMALEX 611)、ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル(日本エマルジョン(株)、EMALEX 505H)、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(日光ケミカルズ(株)、NIKKOL AM−301)、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(ライオン(株)、エナジコールC−40H)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(Degussa.社、TEGO BetainCK)、ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株))を用いた。エナジコールC−40Hは30%水溶液であるが、実施例及び比較例のN−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン配合量は純分換算した値を示した。その他、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビット、水酸化アルミニウム、無水ケイ酸、プロピレングリコール、サッカリンナトリウム、水は化粧品原料基準規格品を用い、モノフルオロリン酸ナトリウムは医薬部外品原料規格品を用いた。ソルビットについては、70%水溶液品を用いて歯磨剤を調製しており、70%水溶液の配合量を示した。
【0046】
(2)デキストラナーゼの安定化効果の評価方法
歯磨剤組成物を最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mmのラミネートチューブに50g充填し、40℃で1ヶ月間保存した後、歯磨製剤0.6gを0.1Mリン酸緩衝液15mLで懸濁し、その遠心上清を被検液とした。この被検液1mLを1%デキストラン溶液2mLに加え、35℃の恒温槽で正確に10分間反応させ、生じた還元糖量をソモギーネルソン法を用いて測定した。デキストラナーゼ1単位は、1分間あたりにグルコース1μmolに相当する遊離還元糖を生じるデキストラナーゼの量とし、繰り返し3回の平均値を以下の基準で評価した。
◎:デキストラナーゼ残存率90%以上
○:デキストラナーゼ残存率80%以上90%未満
△:デキストラナーゼ残存率60%以上80%未満
×:デキストラナーゼ残存率60%未満
【0047】
(3)歯磨時の起泡速度の評価方法
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。歯磨剤1gを市販品歯ブラシ上にのせて3分間ブラッシングを行い、口中での起泡速度を以下の基準で官能評価し、その平均点を求めた。
4点:起泡速度が速い
3点:起泡速度がやや速い
2点:起泡速度がやや遅い
1点:起泡速度が遅い
10名の評価結果を平均し、以下の基準で◎及び○の起泡速度が確保されるものを、良好な歯磨時の起泡速度が得られる歯磨剤組成物であると判断した。
◎:口腔内での起泡速度が3.5点以上4.0点以下
○:口腔内での起泡速度が3.0点以上3.5点未満
△:口腔内での起泡速度が2.0点以上3.0点未満
×:口腔内での起泡速度が2.0点未満
【0048】
(4)プラーク再付着抑制効果の評価方法
歯磨剤組成物を人工唾液(50mM KCl,1mM KH2PO4,1mM CaCl2,0.1mM MgCl2)で4倍希釈した遠心上清を試料サンプル液とし、直径7mm×高さ3.5mmのハイドロキシアパタイト(HA)板を37℃で3分間浸漬した。試料サンプル液からHA板を取り出し、S.mutans10449菌を約1×107個/mLを添加した、1%サッカロースを含む液体培地(BHI)へ移し、37℃で6時間嫌気培養した。HAP板を蒸留水で3回洗浄し、歯垢染色液で3分間染色後、蒸留水で3回洗い、風乾させた。HAP表面を色差計にて測定し、Δa値をプラーク形成量の指標として測定した。繰り返し3回の平均値を求め、以下の判断基準で○以上の結果となるものをプラーク再付着抑制効果が高いと判断した。
◎:Δa値が0以上15未満
○:Δa値が15以上30未満
△:Δa値が30以上45未満
×:Δa値が45以上
【0049】
(5)苦味のなさの評価方法
専門家パネラー10人を用いた官能試験により評価した。歯磨剤約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、使用中に感じた苦味を、<1>全くない、<2>殆どない、<3>ややある、<4>ある、の4段階で回答を得た。この回答のうち、<1>全くないを4点、<2>殆どないを3点、<3>ややあるを2点、<4>あるを1点として、10名の評価結果を平均し、以下の基準で◎及び○の評価が確保されるものを、苦味のない歯磨剤組成物であると判断した。
◎:3.5点以上4.0点以下
○:3.0点以上3.5点未満
△:2.0点以上3.0点未満
×:2.0点未満
【0050】
[実施例1及び比較例1〜13]
表1に示す組成の歯磨剤組成物を常法により調製し、上記に示した試験を行い、デキストラナーゼの安定化効果、歯磨剤組成物の起泡速度、歯面上への歯垢再付着抑制効果、苦味のなさを上記の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】


*1:30%品を用い、表中の値は純分換算した配合量を示した。
デキストナラーゼ(13000単位/g品)(三共(株):デキストラナーゼ)
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン(株):EMALEX HC−20)
ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン(株):EMALEX HC−5)
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン(株):EMALEX HC−40)
ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル(日本エマルジョン(株):EMALEX 605)
ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル(日本エマルジョン(株):EMALEX 602)
ポリオキシエチレン(11)ステアリルエーテル(日本エマルジョン(株):EMALEX 611)
ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル(日本エマルジョン(株):EMALEX 505H)
N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(ライオン(株):エナジコールC−40H)
ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学(株):ラウリル硫酸ナトリウム)
【0052】
[実施例2〜14]
表2に示す組成の歯磨剤組成物を常法により調製し、上記と同様に試験を行い、デキストラナーゼの安定化効果、歯磨剤組成物の起泡速度、歯面上への歯垢再付着抑制効果、苦味のなさを評価した。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】


*1:30%品を用い、表中の値は純分換算した配合量を示した。
*2:35%品を用い、表中の値は純分換算した配合量を示した。
デキストナラーゼ(13000単位/g品)(三共(株):デキストラナーゼ)
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン(株):EMALEX HC−20)
ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン(株):EMALEX HC−10)
ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン(株):EMALEX HC−30)
ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル(日本エマルジョン(株):EMALEX 605)
ポリオキシエチレン(5)セチルエーテル(日本エマルジョン(株):EMALEX 705)
ポリオキシエチレン(3)ステアリルエーテル(日本エマルジョン(株):EMALEX 603)
ポリオキシエチレン(8)ステアリルエーテル(日本エマルジョン(株):EMALEX 608)
N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(ライオン(株):エナジコールC−40H)
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(日光ケミカルズ(株):NIKKOL AM−301)
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(Degussa.社:TEGO BetainZF)
ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学(株):ラウリル硫酸ナトリウム)
ポリアクリル酸ナトリウム(日本純薬(株):レオジック250H)
【0054】
表1及び表2の結果から、(A)デキストラナーゼ、(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜30モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、(C)炭素鎖長が14〜18のアルキル鎖長でエチレンオキサイドの平均付加モル数が3〜8モルのポリオキシエチレンアルキルエーテル、(D)両性界面活性剤、(E)ラウリル硫酸ナトリウムを含有し、(E)成分/(D)成分の質量比が1〜5である歯磨剤組成物は、デキストラナーゼの安定化効果を有するのみではなく、起泡速度が速く、かつ歯面上への歯垢再付着抑制効果に優れ、苦味がないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)デキストラナーゼ、
(B)エチレンオキサイドの平均付加モル数が10〜30モルのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、
(C)炭素鎖長が14〜18のアルキル鎖長で、エチレンオキサイドの平均付加モル数が3〜8モルのポリオキシエチレンアルキルエーテル、
(D)両性界面活性剤、及び
(E)ラウリル硫酸ナトリウム
を含有し、(E)成分/(D)成分の質量比が1〜5であることを特徴とする歯磨剤組成物。
【請求項2】
(B)成分:(C)成分の質量比が1:5〜5:1である請求項1記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
(D)成分の両性界面活性剤が、それぞれアルキル鎖長が炭素数8〜20であるアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインから選ばれるものである請求項1又は2記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
(A)成分の配合量が2〜200単位/g歯磨剤組成物であり、(B)成分の配合量が組成物全体の0.3〜5質量%であり、(C)成分の配合量が組成物全体の0.3〜5質量%であり、(D)成分の配合量が組成物全体の0.05〜1.5質量%であり、(E)成分の配合量が組成物全体の0.3〜1.5質量%である請求項1、2又は3記載の歯磨剤組成物。

【公開番号】特開2007−145740(P2007−145740A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340332(P2005−340332)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】