説明

歯科治療ユニット

【課題】歯科治療椅子が上昇して、患者の大腿部等がスピットン鉢の下部と治療椅子の間に挟まれた時に、安全スイッチにて直ちに治療椅子の上昇を止めたり、ユニットの作動を停止することなく、停止する前の初期段階で警告を発生するようにして、患者及び術者に予め危険を知らせ、更には、作業中の術者に、作業停止の準備をさせ、治療をスムーズに行えるようにする。
【解決手段】上下動可能な歯科治療椅子1と、該歯科治療椅子1の側方に固定配設されたスピットン装置3とから成り、うがい時、スピットン鉢4がうがい位置に移動された後、前記歯科治療椅子1が上昇されて患者がうがいし易い位置に調整される。スピットン鉢4の下部に可撓性の空気圧室20及び該空気圧室内の圧力を検出する圧力センサ22を有し、該空気圧室内の圧力が所定圧力に達した時に警告を発生し、該空気圧室内の圧力が更に高い所定圧力に達した時に歯科治療椅子の上昇を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療ユニット、より詳細には、上下動可能な歯科治療椅子と、該歯科治療椅子の側方に固定配設されたスピットン装置とから成り、うがい時、スピットン鉢がうがい位置に移動された後、前記歯科治療椅子が上昇されて患者がうがいし易い位置に調整されるようにした歯科治療ユニットにおいて、スピットン鉢を患者がうがいし易い位置(具体的には、患者の前)に移動した後、患者が座っている歯科治療椅子を上昇させて、患者がうがいし易いようにした歯科治療ユニットにおいて、歯科治療椅子に座っている患者の大腿部等がスピットン鉢と歯科治療椅子との間に挟まれてしまった時に、歯科治療椅子の上昇を直ちに停止するのではなく、停止させる前に警告等を発生するようにして、換言すれば、歯科治療椅子の上昇を直ちに停止させることなく、まず、警告を発生し、その後、しばらくの時間経過をもって停止させるようにし、警告発生後、しばらくの間診断を継続できるようにし、患者及び術者に危険を知らせるとともに、診療をスムーズに中断できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
図2は、本発明が適用される歯科用治療ユニットの一例を示す全体構成図で、図中、1は、安頭台1a、バックレスト1b、コンターシート1c等からなる歯科治療椅子、2はワークテーブル、3は給排水ボックス、4はスピットン鉢、5は無影灯、6はインスツルメントホルダ、7はフットスイッチ、8はアシスタント用インスツルメントホルダで、インスツルメントホルダ6には、歯科治療において使用する種々のインスツルメント9が収納されており、周知のように、歯科治療に当り、患者は歯科治療椅子1に座り、頭を安頭台1aに固定して治療を受ける。治療中、術者は歯科治療椅子1を上下動,倒起動,傾斜動等させて、患者を治療しやすい姿勢にして治療を行なう。この場合、スピットン鉢4を矢印A方向に回動可能にしておく時は、うがい時、該スピットン鉢4を図示位置に回動して、該スピットン鉢4を患者の前に移動させ、患者がうがいし易い状態にするようにすることが行われている。
【0003】
図3は、スピットン鉢4をスピットン装置(給排水ボックス)3内に取り付けた例を示す図で、この例の場合、スピットン鉢4は給排水ボックス3に軸3aを中心に回動自在に取り付けられており、通常は、図3(A)にて示すように、給排水ボックス3内に収納されており、うがい時、図3(B)に示すように、軸3aを中心に回転されてうがいができる状態にされる。
【0004】
図4は、スピットン鉢4を給排水ボックス3内に取り付けるようにした他の例を示す図で、この例の場合、スピットン鉢4は、給排水ボックス3に対して直線的(回転でなく)に移動可能に出し入れ可能に取り付けられており、通常は、図4(A)に示すように、給排水ボックス3内に収納されており、うがい時、図4(B)に示すように、給排水ボックス3から引き出されてうがいできる状態にされるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、スピットン鉢が、うがい時、患者の前に移動される場合、スピットン鉢が患者の前に移動されてから、歯科治療椅子を上昇させて、患者をうがいし易い高さ位置に調整するようにすると、場合によっては、患者の大腿部が該スピットン鉢の下部と治療椅子の間に挟まれて危険である。そのため、従来は、スピットン鉢の下部等に安全スイッチ等を設けておき、該安全スイッチに患者の大腿部が当って該安全スイッチが作動した時に、治療椅子の上昇を停止し、或いは、歯科治療ユニット全体の動作を止めてしまう等の手段が採られていた。
【0006】
しかし、上述のように、いきなり治療椅子の上昇を停止させてしまったり、いきなりユニットの動作を止めてしまうと、患者は突然の異変に驚き、不安を感じ、また、術者は、作業中の動作が突然不能になってしまい、作業中の動作をスムーズに中断させることができない等の問題があった。
【0007】
本発明は、上述のごとき問題を解決するためになされたもので、歯科治療椅子が上昇して、患者の大腿部等がスピットン鉢の下部と治療椅子の座部の間に挟まれた時に、安全スイッチにて直ちに治療椅子の上昇を止めたり、ユニットの作動を停止することなく、停止する前の初期段階でしばらくの間警告を発生するようにして、患者及び術者に予め危険を知らせ、更には、作業中の術者に、作業停止の準備をさせ、治療をスムーズに行えるようにすることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、上下動可能な歯科治療椅子と、該歯科治療椅子の側方に固定配設されたスピットン装置とから成り、うがい時、スピットン鉢がうがい位置に移動された後、前記歯科治療椅子が上昇されて患者がうがいし易い上昇位置に調整されるようにした歯科治療ユニットにおいて、前記スピットン鉢の下部に可撓性の密閉空気室及び該空気室内の圧力を検出する圧力センサを有し、該密閉空気室内の圧力が第1の所定圧力に達した時に警告を発生し、該密閉空気室内の圧力が更に高い第2の所定圧力に達した時に前記歯科治療椅子の上昇を停止させるようにしたことを特徴としたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第1の所定圧力に達した時にある色の発光をし、第2の所定圧力に達して前記ある色とは異なる他の色を発光するものであることを特徴としたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記可撓性の密閉空気室は、薄肉のビニールチューブから成り、該チューブが環状或いは渦巻状に前記スピットン鉢の下部に配設されているものであることを特徴としたものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記歯科治療椅子の上昇を停止後、所定時間経過後に、歯科治療ユニットの全作動を停止させるようにしたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、スピットン鉢と上昇する歯科治療椅子の間に患者の大腿部等が挟み込まれた時に、直ちに治療椅子の上昇を停止したり、歯科治療ユニットの機能を停止させるようなことなく、停止させる前にしばらくの間警告を発生するようにし、歯科治療椅子が停止するまでの間に猶予期間を設けたので、患者に前もって危険をうながすことができ、また、術者には、作業中の動作を余裕をもって中断させることができ、スムーズに治療を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明による歯科治療ユニットの一実施例を説明するための図で、図1(A)は、歯科治療椅子1と給排水ボックス3との関係を示す図で、本発明においては、歯科治療椅子1に対して給排水ボックス3は、図2乃至図4に示した例と同様に、別体に構成され、かつ、スピットン鉢4は給排水ボックス3に一体的にかつ移動可能に取り付けられている。うがい時、スピットン鉢4は、前述のように、患者の前に移動されるが、その後に、歯科治療椅子1が上昇されると、患者の大腿部がスピットン鉢4の下部に当り、そのまま歯科治療椅子1を上昇し続けると危険である。そのため、スピットン鉢4の下部に安全スイッチ等を設けておき、該安全スイッチが作動した時に、歯科治療椅子1の上昇を停止させ、更には、歯科治療ユニットに備えられている他の機器等の作動を全て停止させるようにしている。
【0014】
しかし、従来の安全スイッチは、患者の大腿部がスピットン鉢4の下部に当っても直ちに作動するものではなく、その後、ある程度歯科治療椅子1が上昇して、安全スイッチにある程度(所定)の力が加わって始めて作動するものであり、患者は、大腿部がスピットン鉢に当ったことを感じた後でもしばらくの間治療椅子が上昇し続けるので、その間、歯科治療椅子の上昇が止まるかどうか判らず、不安であった。
【0015】
また、歯科治療椅子の上昇が、何の前触れもなく停止し、更には、歯科治療ユニットに備えられている歯科治療機器等の作動が急に停止するので、歯科治療ユニットに備えられている機器を使用して作業をしている術者にとって、その作業を区切りの良い状態で中断させることができず、歯科治療作業をスムーズに行うことができない等の問題があった。
【0016】
本発明は、上述のごとき課題を解決するためになされたもので、図1(B)に示すように、スピットン鉢4の下部に可撓性(伸縮性)の外被21からなる空気圧室20を設けるとともに、該空気圧室20内の空気圧を検出する圧力センサ22を設けておき、この圧力センサ22によって検出される圧力(電気信号)に基いて、まず、警告を発生し、更には、この警告を段階的に行い、最終的に歯科治療椅子を停止し或いは歯科治療ユニット全体の作動を停止するようにしたものである。
【0017】
圧力センサ22の電気的出力は、リード線23を通して歯科治療ユニットの制御部へ伝達され、出力電圧が小さい間(圧力上昇が小さい間)は、例えば、黄色ランプを点灯させること等により警告を発生し、圧力が上昇するにつれて、例えば、橙色ランプを点灯し、最終的には、赤色ランプを点灯させて、歯科治療椅子1の上昇を停止し、更には、歯科治療ユニット全体の作動を停止させる。
【0018】
なお、図1(B)には、可撓性(伸縮性)の空気圧室20として袋状の空気圧室を示したが、このようにすると、袋状の空気圧室20が内部空気圧によって略球状に膨張するため、該空気圧室20がスピットン鉢4の下部に大きく膨出するため、歯科治療椅子1の上昇ストロークに対して空気圧室20内の圧力変化が小さく、警告を発生してから歯科治療椅子を停止するまでに時間的余裕があって効果的であるが、その一方、該空気圧室20が下方に大きく膨らみ、スピットン鉢4の操作の邪魔になり、或いは、他の物に当って破損してしまう等の欠点がある。そのため、好ましくは、薄肉のビニールチューブ等を用い、該ビニールチューブを環状に或いは渦巻き状にしてスピットン鉢4の下部に取り付けるようにすれば、歯科治療椅子の上昇ストロークに対する余裕は小さくなるが、圧力室を薄くすることができ、スピットン鉢4の操作が容易になり、圧力室が破損されるようなこともなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による歯科治療ユニットの一実施例を説明するための図である。
【図2】本発明が適用される歯科用治療ユニットの一例を示す全体構成図である。
【図3】スピットン鉢をスピットン装置(給排水ボックス)内に取り付けた例を示す図である。
【図4】スピットン鉢を給排水ボックス内に取り付けるようにした他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1…歯科治療椅子、1a…安頭台、1b…バックレスト、1c…コンターシート、2…ワークテーブル、3…給排水ボックス、3a…軸、4…スピットン鉢、5…無影灯、6…インスツルメントホルダ、7…フットスイッチ、8…アシスタント用インスツルメントホルダ、9…インスツルメント、20…空気圧室、21…外被、22…圧力センサ、23…リード線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動可能な歯科治療椅子と、該歯科治療椅子の側方に固定配設されたスピットン装置とから成り、うがい時、スピットン鉢がうがい位置に移動された後、前記歯科治療椅子が上昇されて患者がうがいし易い上昇位置に調整されるようにした歯科治療ユニットにおいて、前記スピットン鉢の下部に可撓性の密閉空気室及び該空気室内の圧力を検出する圧力センサを有し、該密閉空気室内の圧力が第1の所定圧力に達した時に警告を発生し、該密閉空気室内の圧力が更に高い第2の所定圧力に達した時に前記歯科治療椅子の上昇を停止させるようにしたことを特徴とする歯科治療ユニット。
【請求項2】
前記第1の所定圧力に達した時にある色の発光をし、第2の所定圧力に達して前記ある色とは異なる他の色を発光するものであることを特徴とする請求項1に記載の歯科治療ユニット。
【請求項3】
前記可撓性の密閉空気室は、薄肉のビニールチューブから成り、該チューブが環状或いは渦巻状に前記スピットン鉢の下部に配設されているものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科治療ユニット。
【請求項4】
前記歯科治療椅子の上昇を停止後、所定時間経過後に、歯科治療ユニットの全作動を停止させるようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の歯科治療ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−136604(P2008−136604A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324365(P2006−324365)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000150671)株式会社長田中央研究所 (194)
【Fターム(参考)】